IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新東工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電源制御回路及び電源制御方法 図1
  • 特開-電源制御回路及び電源制御方法 図2
  • 特開-電源制御回路及び電源制御方法 図3
  • 特開-電源制御回路及び電源制御方法 図4
  • 特開-電源制御回路及び電源制御方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146613
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】電源制御回路及び電源制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/56 20060101AFI20231004BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
G05F1/56
H02J1/00 309P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053879
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】山田 務
【テーマコード(参考)】
5G165
5H420
【Fターム(参考)】
5G165BB07
5G165CA01
5G165EA01
5G165HA01
5G165HA07
5G165LA01
5G165LA02
5G165MA09
5G165NA01
5G165NA02
5G165NA04
5G165NA06
5G165NA10
5H420BB02
5H420BB12
5H420BB13
5H420CC02
5H420DD02
5H420EB19
5H420EB37
5H420FF03
5H420FF04
5H420FF25
5H420HJ05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】定電流定電圧電源をターンオフする際に発生する電流のアンダーシュートを改善する電源制御回路及び電源制御方法を提供する。
【解決手段】電源回路1において、パワー部に制御値を出力する制御部は、電源の電圧測定値を電圧目標値にする制御値を出力する電圧制御モードで動作する電圧制御部と、電源の電流測定値を電流目標値にする制御値を出力する電流制御モードで動作する電流制御部と、各制御部の出力側に接続され、両制御モードの何れか一方で制御値を出力する選択部23と、所定の電流指令値と電流測定値との誤差を小さくするように制御値を出力する補助電流制御モードで動作する補助電流制御部24と、選択部及び補助電流制御部の出力側に接続され、電源のターンオンの際には選択部によって出力された制御モードで制御値をパワー部へ出力し、電源のターンオフの際には補助電流制御モードで制御値をパワー部へ出力する合成部25と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源のパワー部に制御値を出力する電源制御回路であって、
前記電源の電圧測定値が電圧目標値となるように前記制御値を出力する電圧制御モードで動作する電圧制御部と、
前記電源の電流測定値が電流目標値となるように前記制御値を出力する電流制御モードで動作する電流制御部と、
前記電圧制御部及び前記電流制御部の出力側に接続され、前記電圧制御モード及び前記電流制御モードの何れか一方で前記制御値を出力する選択部と、
所定の電流指令値と前記電流測定値との誤差を小さくするように前記制御値を出力する補助電流制御モードで動作する補助電流制御部と、
前記選択部及び前記補助電流制御部の出力側に接続され、前記電源のターンオンの際には前記選択部によって出力された制御モードで前記制御値を前記パワー部へ出力し、前記電源のターンオフの際には前記補助電流制御モードで前記制御値を前記パワー部へ出力する合成部と、
を備える、電源制御回路。
【請求項2】
前記選択部は、
前記電圧制御部の出力側に接続された抵抗と、
前記電流制御部の出力側に出力と逆方向の向きに接続されたダイオードと、
前記抵抗の出力側及び前記ダイオードの出力側に接続された出力端と、
を有する、請求項1に記載の電源制御回路。
【請求項3】
前記合成部は、
前記選択部の出力側に接続された抵抗と、
前記補助電流制御部の出力側に出力と同一方向の向きに接続されたダイオードと、
前記抵抗の出力側及び前記ダイオードの出力側に接続された出力端と、
を有する、請求項1に記載の電源制御回路。
【請求項4】
前記電圧制御部及び前記電流制御部の出力側に設けられ、前記電圧制御部の前記制御値と前記電流制御部の前記制御値との差分を打ち消す消失部をさらに備える、請求項1~3の何れか1項に記載の電源制御回路。
【請求項5】
電源のパワー部に制御値を出力する電源制御回路を制御する電源制御方法であって、
電流指令値の出力を開始する第1のステップと、
電圧指令値の出力を開始する第2のステップと、
OFFリミット値の出力を開始する第3のステップと、
電圧指令値の出力を停止する第4のステップと、
電流指令値の出力を停止する第5のステップと、
OFFリミット値の出力を停止する第6のステップと、
を備える電源制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源制御回路及び電源制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、定電流(CC:Constant Current)制御から定電圧(CV:Constant Voltage)制御又はCV制御からCC制御に制御が切り替わる際の操作量の変更に起因して制御が不安定となるという課題に対して、選択された操作量に対してフィルタをかけることにより、制御が切り替わる際の安定性を確保することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-17890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の装置においては、電圧及び電流の両方が正出力である場合、又は、電圧及び電流の両方が負出力である場合に操作量(制御値)の制御が可能となる。このため、例えば定電流定電圧電源をターンオフする際に電圧が正出力で電流が負の方向に流れてしまう場合、電流の制御ができなくなり、電流のアンダーシュート(マイナス電流が流れる現象)が発生するおそれがある。定電流定電圧電源をターンオフすることは、定電流定電圧電源に対して通電をやめること、又は、定電流定電圧電源を切ることを指す。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施の形態の一態様においては、電源のパワー部に制御値を出力する電源制御回路は、電源の電圧測定値が電圧目標値となるように制御値を出力する電圧制御モードで動作する電圧制御部と、電源の電流測定値が電流目標値となるように制御値を出力する電流制御モードで動作する電流制御部と、電圧制御部及び電流制御部の出力側に接続され、電圧制御モード及び電流制御モードの何れか一方で制御値を出力する選択部と、所定の電流指令値と電流測定値との誤差を小さくするように制御値を出力する補助電流制御モードで動作する補助電流制御部と、選択部及び補助電流制御部の出力側に接続され、電源のターンオンの際には選択部によって出力された制御モードで制御値をパワー部へ出力し、電源のターンオフの際には補助電流制御モードで制御値をパワー部へ出力する合成部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、定電流定電圧電源をターンオフする際に発生する電流のアンダーシュートを改善できる技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施の形態による電源制御回路が備わる電源回路の一例を示す図である。
図2】電圧電流制御の制御可能な範囲を示す図である。
図3】比較例に係る電源制御回路が備わる電源回路の一例を示す図である。
図4】比較例及び実施例における電圧電流制御の測定結果である。
図5】指令処理に関する処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本実施の形態)
以下、図面を参照して、本実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は繰り返さない。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。「上」「下」「左」「右」の語は、図示する状態に基づくものであり、便宜的なものである。
【0009】
図1は、本実施の形態による電源制御回路が備わる電源回路1の一例を示す図である。図1に示す電源回路1は、一定の電圧及び一定の電流を印加可能な定電圧定電流電源(以下、これを単に電源と呼んでもよい)を制御する回路である。
【0010】
電源回路1は、制御部2(電源制御回路の一例)及びパワー部3を備える。図1に示す例では、電源回路1は、疑似ワークとして負荷4に一定の電圧及び一定の電流を印加する。
【0011】
制御部2は、定電圧定電流電源のパワー部3に制御値を出力する。制御値は、一例として電圧値である。パワー部3は、制御部2から出力された制御値に基づいて定電圧定電流電源を動作させ、出力電圧Voutを負荷4に印加する。
【0012】
負荷4に印加される電圧は、電圧計で計測される。負荷4に印加される電流は、電流計で計測される。計測された電圧及び電流に基づいて、制御部2において制御値が調整される。これにより、負荷4の負荷が変化した場合であっても、定電流及び定電圧が印加される。
【0013】
制御部2は、電圧制御部21、電流制御部22、選択部23、ターンオフ時電流制御部24、及び、合成部25を備える。ターンオフ時電流制御部24は、ターンオフの際の電流制御を補助する補助電流制御部の一例として挙げている。
【0014】
電圧制御部21は、定電圧定電流電源の電圧測定値が電圧目標値となるように制御値を出力する電圧制御モードで動作する。電圧制御部21は、電圧指令値Vref1と電圧測定値Vreal1との誤差を打ち消すように調整された制御値を出力する。
【0015】
電圧制御部21は、電圧指令値Vref1を入力する第1の入力端、第1の入力端に接続された第1の抵抗R1、電圧測定値Vreal1を入力する第2の入力端、第2の入力端に接続された第2の抵抗R2及びエラーアンプである第1の演算増幅器U1を有する。
【0016】
例えば、第1の演算増幅器U1と、第1の演算増幅器U1に並列に接続されたコンデンサと、第1の演算増幅器U1に直列に接続された第1の抵抗R1又は第2の抵抗R2とでPI(Proportional-Integral)制御のようなフィードバック制御が行われる。
【0017】
図1のように第1の演算増幅器U1に並列に接続されたコンデンサには直列に抵抗が接続されていてもよい。例えば、フィードバック制御とは、入力値をもとに出力される出力値を目標値(本実施の形態のターンオフの際は例えば0)と比較して入力値に反映させる制御のことを指す。第1の演算増幅器U1に並列に接続されたコンデンサに直列に接続される抵抗は定電流定電圧電源のターンオン又はターンオフなどに要する時間を調整するために接続される。定電流定電圧電源をターンオンするとは、定電流定電圧電源に対して通電を始めること、又は、定電流定電圧電源を入れることを指す。
【0018】
電圧指令値Vref1は定電圧定電流電源の目標電圧値である。電圧指令値Vref1は、定電圧定電流電源の性能範囲内で任意の値に設定される。電圧測定値Vreal1は、負荷4に接続された電圧計によって計測された電圧値である。第1の抵抗R1及び第2の抵抗R2のそれぞれの出力側は、第1の演算増幅器U1の非反転入力端子(-)に接続される。
【0019】
第1の入力端及び第2の入力端が、第1の抵抗R1及び第2の抵抗R2を介して、第1の演算増幅器U1の非反転入力端子(-)に接続されるため、電圧指令値Vref1及び電圧測定値Vreal1の偏差が第1の演算増幅器U1の非反転入力端子(-)に入力される。第1の演算増幅器U1の反転入力端子(+)は接地される。
【0020】
電圧指令値Vref1及び電圧測定値Vreal1の偏差が第1の演算増幅器U1の非反転入力端子(-)に入力されるため、電圧指令値Vref1及び電圧測定値Vreal1の偏差が増幅され、偏差の逆特性の制御値が出力される。第1の演算増幅器U1には、位相補償のために抵抗及びコンデンサが接続される。
【0021】
電流制御部22は、定電圧定電流電源の電流測定値が電流目標値となるように制御値を出力する電流制御モードで動作する。電流制御部22は、電流指令値Iref1と電流測定値Ireal1との誤差を打ち消すように調整された制御値を出力する。
【0022】
電流制御部22は、電流指令値Iref1を入力する第3の入力端、第3の入力端に接続された第3の抵抗R3、電流測定値Ireal1を入力する第4の入力端、第4の入力端に接続された第4の抵抗R4、及びエラーアンプである第2の演算増幅器U2を有する。
【0023】
例えば、第2の演算増幅器U2と、第2の演算増幅器U2に並列に接続されたコンデンサと、第2の演算増幅器U2に直列に接続された第3の抵抗R3又は第4の抵抗R4とでPI(Proportional-Integral)制御のようなフィードバック制御が行われる。
【0024】
図1のように第2の演算増幅器U2に並列に接続されたコンデンサには直列に抵抗が接続されていてもよい。第2の演算増幅器U2に並列に接続されたコンデンサに直列に接続される抵抗は定電流定電圧電源のターンオン又はターンオフなどに要する時間を調整するために接続される。
【0025】
電流指令値Iref1は定電圧定電流電源の目標電流値である。電流指令値Iref1は、定電圧定電流電源の性能範囲内で任意の値に設定される。電流測定値Ireal1は、負荷4に接続された電流計によって計測された電流値である。
【0026】
第3の抵抗R3及び第4の抵抗R4のそれぞれの出力側は、第2の演算増幅器U2の非反転入力端子(-)に接続される。第3の入力端及び第4の入力端が、第3の抵抗R3及び第4の抵抗R4を介して、第2の演算増幅器U2の非反転入力端子(-)に接続されるため、電流指令値Iref1及び電流測定値Ireal1の偏差が第2の演算増幅器U2の非反転入力端子(-)に入力される。第2の演算増幅器U2の反転入力端子(+)は接地される。
【0027】
電流指令値Iref1及び電流測定値Ireal1の偏差が第2の演算増幅器U2の非反転入力端子(-)に入力されるため、電流指令値Iref1及び電流測定値Ireal1の偏差が増幅され、偏差の逆特性の制御値が出力される。第2の演算増幅器U2には、位相補償のために抵抗及びコンデンサが接続される。
【0028】
選択部23は、電圧制御部21及び電流制御部22の出力側に接続され、電圧制御モード及び電流制御モードの何れか一方で制御値を出力する。選択部23は、電圧制御部21及び電流制御部22を並列接続する。
【0029】
選択部23は、第5の抵抗R5、第1のダイオードD1及び第2のダイオードD2を有する。例えば、選択部23は、制御値の絶対値がより小さくなるように、電圧制御モード及び電流制御モードのうちの何れか一方のモードで制御値を出力するようにする。例えば、制御値は電圧に換算されたうえで計算されるものとする。
【0030】
第5の抵抗R5の入力端は、電圧制御部21の第1の演算増幅器U1の出力側に接続される。第1のダイオードD1及び第2のダイオードD2は、電流制御部22の第2の演算増幅器U2の出力側に並列に接続される。
【0031】
第1のダイオードD1が第2の演算増幅器U2の出力と逆方向の向きに接続されることで、第1のダイオードD1のカソードが第2の演算増幅器U2の出力に向くように第2の演算増幅器U2の出力側に接続される。
【0032】
第2のダイオードD2が第2の演算増幅器U2の出力と正方向の向きに接続されることで、第2のダイオードD2のカソードが第2の演算増幅器U2の出力と同一方向に向くように第2の演算増幅器U2の出力側に接続される。
【0033】
第1のダイオードD1及び第2のダイオードD2は、スイッチにより何れか一方が第2の演算増幅器U2の出力側に接続される。第2の演算増幅器U2の出力が正出力の際に、第1のダイオードD1が第2の演算増幅器U2の出力側に接続され、かつ、第2の演算増幅器U2の出力が負出力の際、第2のダイオードD2が第2の演算増幅器U2の出力側に接続される。第1のダイオードD1及び第2のダイオードD2は、電流制御部22の出力側に出力と逆方向の向きに接続される。
【0034】
選択部23においては、電圧制御部21の出力側に第5の抵抗R5が接続され、電流制御部22の出力側に第1のダイオードD1及び第2のダイオードD2の何れか一方が接続される。
【0035】
選択部23は、第5の抵抗R5の出力側、第1のダイオードD1及び第2のダイオードD2の出力側に接続された出力端を有することで、電圧制御部21及び電流制御部22を並列接続し、電圧制御部21及び電流制御部22の何れか一方を動作させる、いわゆるダイオードOR接続を構成する。
【0036】
ダイオードOR接続の場合、電圧制御部21による電圧制御モードで制御値が出力される際には、電流制御部22の第2の演算増幅器U2の出力が回路電源(不図示)の電圧に飽和している。
【0037】
回路電源とは電源回路1に電圧もしくは電流を提供する電流源又は電圧源を指す。電流制御部22による電流制御モードで制御値が出力される際には、電圧制御部21の第1の演算増幅器U1の出力が回路電源の電圧に飽和している。選択部23を備える場合、電源制御回路は、ダイオードを有する回路によって電圧制御モードと電流制御モードとを切り替えて動作する。
【0038】
選択部23の出力端は、第10の抵抗R10を介してパワー部3に接続される。後述するように定電圧定電流電源のターンオンの際においては、選択部23の出力端から出力された制御値に応じてパワー部3が駆動し、負荷4に制御値に応じた電圧及び電流を印加する。
【0039】
パワー部3は、一例として、第6の抵抗R6、第7の抵抗R7、第3の演算増幅器U3及び第4の演算増幅器U4を有する。選択部23の出力側は、第3の演算増幅器U3の反転入力端子(+)に接続される。
【0040】
第3の演算増幅器U3の非反転入力端子(-)には、第6の抵抗R6及び第7の抵抗R7によって設定された電圧が入力される。第3の演算増幅器U3の出力側は、第4の演算増幅器U4の非反転入力端子(-)に接続される。第4の演算増幅器U4の反転入力端子(+)は接地される。
【0041】
パワー部3は、選択部23から出力された制御値に応じてパルス幅を変調するPWM方式などによって駆動パルスを生成し、図示せぬドライバに送信する。パワー部3が駆動パルスをドライバに送信することで、負荷4に制御値に応じた電圧及び電流が印加される。
【0042】
制御部2は、定電圧定電流電源のターンオンの際における電圧のオーバーシュートを打ち消すような改善をするために、消失部を備えてもよい。消失部は、電圧制御モードと電流制御モードとの電位差を小さくする機能を有する。
【0043】
具体的には、例えば、消失部は、電圧制御部21の制御値と電流制御部22の制御値との差分を打ち消す。さらに具体的には、例えば、消失部は、1組(例えば、後述の第1の電位差消失部211及び第2の電位差消失部)であって、それぞれの消失部が、正出力の際に動作するトランジスタ(例えば、後述の第1のトランジスタQ1又は第3のトランジスタQ3など)と負出力の際に動作するトランジスタ(例えば、後述の第2のトランジスタQ2又は第4のトランジスタQ4など)とを備えることで、電圧制御部21の制御値と電流制御部22の制御値との差分を打ち消す。
【0044】
消失部が電圧制御モードと電流制御モードとの電位差を小さくするため、電源制御回路は、例えば電源のターンオンの際において制御値の変動を小さくできる。これにより、例えば、電源制御回路は、電源のターンオンの際において発生する電圧のオーバーシュートを改善できる。
【0045】
図1に示す例では、制御部2は、消失部として第1の電位差消失部211及び第2の電位差消失部221を有する。第1の電位差消失部211及び第2の電位差消失部221は、電圧制御部21及び電流制御部22の出力側に設けられ、電圧制御部21の制御値と電流制御部22の制御値との差分を打ち消すように構成される。
【0046】
第1の電位差消失部211は、電圧制御部21の出力側に設けられる。具体的な一例として、第1の電位差消失部211は、第1のトランジスタQ1及び第2のトランジスタQ2を有する。
【0047】
第1のトランジスタQ1は、PNPトランジスタである。第1のトランジスタQ1のベースは、第5の抵抗R5と第10の抵抗R10との間に接続される。第1のトランジスタQ1のコレクタは、第1の演算増幅器U1と第5の抵抗R5との間に接続される。
【0048】
第1のトランジスタQ1のエミッタは、第1の抵抗R1及び第2の抵抗R2と第1の演算増幅器U1との間に接続される。第2のトランジスタQ2は、NPNトランジスタである。第2のトランジスタQ2のベース、コレクタ及びエミッタの接続先は、第1のトランジスタQ1と同一である。
【0049】
第1のトランジスタQ1及び第2のトランジスタQ2は、並列接続されており、スイッチにより何れか一方が接続される。第1の演算増幅器U1の出力が正出力の際に、第1のトランジスタQ1が接続され、第1の演算増幅器U1の出力が負出力の際に、第2のトランジスタQ2が接続される。第2の電位差消失部221は、電流制御部22の出力側に設けられる。第2の電位差消失部221の構成は、第1の電位差消失部211と同一である。
【0050】
電圧制御部21の出力側の電圧(制御値)と電流制御部22の出力側の電圧(制御値)との間に電位差(偏差)がある場合、第1の電位差消失部211のベースエミッタ間に電流が流れることによって、コレクタエミッタ間で電流が流れ、第1の演算増幅器U1の非反転入力端子(-)の入力が増加する。
【0051】
第1の演算増幅器U1の非反転入力端子(-)の入力が増加することにより、電圧制御部21及び電流制御部22の偏差が小さくなる方向に第1の演算増幅器U1の制御値が調整される。第2の電位差消失部221も同様であり、電圧制御部21の出力側の電圧と電流制御部22の出力側の電圧との間に電位がある場合、第2の演算増幅器U2の制御値が調整される。
【0052】
制御部2のターンオフ時電流制御部24は、定電圧定電流電源のターンオフの際における電流のアンダーシュートを改善する。ターンオフ時電流制御部24は、所定の電流指令値と電流測定値との誤差を小さくするように制御値を出力する補助電流制御モードで動作する。
【0053】
ターンオフ時電流制御部24は、所定のOFFリミット値OFFMref1と電流測定値Ireal1との誤差を打ち消すように調整された制御値を出力する。ターンオフ時電流制御部24は、OFFリミット値OFFMref1を入力する第5の入力端、第5の入力端に接続された第8の抵抗R8、電流測定値Ireal1を入力する第6の入力端、第6の入力端に接続された第9の抵抗R9及びエラーアンプである第5の演算増幅器U5を有する。
【0054】
例えば、第5の演算増幅器U5と、第5の演算増幅器U5に並列に接続されたコンデンサと、第5の演算増幅器U5に直列に接続された第5の抵抗R5又は第6の抵抗R6とでPI(Proportional-Integral)制御のようなフィードバック制御が行われる。
【0055】
図1のように第5の演算増幅器U5に並列に接続されたコンデンサには直列に抵抗が接続されていてもよい。第5の演算増幅器U5に並列に接続されたコンデンサに直列に接続される抵抗は定電流定電圧電源のターンオン又はターンオフなどに要する時間を調整するために接続される。
【0056】
OFFリミット値OFFMref1は、ターンオフの際の定電圧定電流電源の目標電流値である。OFFリミット値OFFMref1は、定電圧定電流電源の性能範囲内で任意の値に設定される。電流測定値Ireal1は、負荷4に接続された電流計によって計測された電流値である。
【0057】
第8の抵抗R8及び第9の抵抗R9のそれぞれの出力側が第5の演算増幅器U5の非反転入力端子(-)に接続されることで、OFFリミット値OFFMref1及び電流測定値Ireal1の偏差が第5の演算増幅器U5の非反転入力端子(-)に入力される。第5の演算増幅器U5の反転入力端子(+)は接地される。
【0058】
OFFリミット値OFFMref1及び電流測定値Ireal1の偏差が第5の演算増幅器U5の非反転入力端子(-)に入力されるため、OFFリミット値OFFMref1及び電流測定値Ireal1の偏差が増幅され、偏差の逆特性の制御値が出力される。なお、第5の演算増幅器U5には、位相補償のために抵抗及びコンデンサが接続される。
【0059】
合成部25は、選択部23及びターンオフ時電流制御部24の出力側に接続される。合成部25は、定電圧定電流電源のターンオンの際には選択部23によって出力された制御モードで制御値をパワー部3へ出力する。
【0060】
合成部25は、定電圧定電流電源のターンオフの際には補助電流制御モードで制御値をパワー部3へ出力する。合成部25は、ターンオフの際のみ補助電流制御モードで動作する。
【0061】
合成部25は、電圧制御部21及び電流制御部22と、ターンオフ時電流制御部24とを並列接続する。合成部25は、第10の抵抗R10、第3のダイオードD3、第4のダイオードD4、第5のダイオードD5及び第6のダイオードD6を有する。
【0062】
第10の抵抗R10の入力端は、第5の抵抗R5の出力側(選択部23の出力側)に接続される。第5のダイオードD5及び第6のダイオードD6は、ターンオフ時電流制御部24の第5の演算増幅器U5の出力側に並列に接続される。第5のダイオードD5は、第5の演算増幅器U5の出力と正方向の向き(同一方向)に接続される。
【0063】
第5のダイオードD5のカソードが第5の演算増幅器U5の出力と同一方向に向くように第5の演算増幅器U5の出力側に接続される。第6のダイオードD6は、第5の演算増幅器U5の出力と逆方向の向きに接続される。つまり、第6のダイオードD6のカソードが第5の演算増幅器U5の出力と逆方向に向くように第5の演算増幅器U5の出力側に接続される。
【0064】
第5のダイオードD5及び第6のダイオードD6は、スイッチにより何れか一方が第5の演算増幅器U5の出力側に接続される。第5の演算増幅器U5の出力が正出力の際に、第5のダイオードD5が第5の演算増幅器U5の出力側に接続され、第5の演算増幅器U5の出力が負出力の際に、第6のダイオードD6が第5の演算増幅器U5の出力側に接続される。第5のダイオードD5及び第6のダイオードD6は、電流制御部22の出力側に出力と同一の方向の向きに接続される。
【0065】
第3のダイオードD3及び第4のダイオードD4は、ターンオフ時電流制御部24の第5の演算増幅器U5と並列に接続される。第3のダイオードD3は、第5の演算増幅器U5の出力と正方向の向きに接続される。
【0066】
第3のダイオードD3のカソードが第5の演算増幅器U5の出力と同一方向に向くように接続される。第4のダイオードD4は、第5の演算増幅器U5の出力と逆方向の向きに接続される。第4のダイオードD4のカソードが第5の演算増幅器U5の出力と逆方向に向くように接続される。
【0067】
第3のダイオードD3及び第4のダイオードD4は、スイッチにより何れか一方が第5の演算増幅器U5の出力側に接続される。第5の演算増幅器U5の出力が正出力の際に、第3のダイオードD3が第5の演算増幅器U5の出力側に接続され、第5の演算増幅器U5の出力が負出力の際に、第4のダイオードD4が第5の演算増幅器U5の出力側に接続される。
【0068】
第3のダイオードD3及び第4のダイオードD4は、電流制御部22の出力側に出力と同一の方向の向きに接続される。なお、合成部25は、第3のダイオードD3及び第4のダイオードD4を有していなくてもよい。
【0069】
合成部25においては、第5の抵抗R5の出力側に第10の抵抗R10が接続され、ターンオフ時電流制御部24の出力側に第5のダイオードD5及び第6のダイオードD6の何れか一方が接続される。
【0070】
合成部25は、第10の抵抗R10の出力側、第5のダイオードD5及び第6のダイオードD6の出力側に接続された出力端を有する。つまり、合成部25は、電圧制御部21及び電流制御部22と、ターンオフ時電流制御部24とを並列接続し、電圧制御部21(又は電流制御部22)と、ターンオフ時電流制御部24との何れか一方を動作させる。
【0071】
上述のような合成部25によれば、電源のターンオンの際、電流制御部22の出力端の電圧及び電圧制御部21の出力端の電圧の何れか一方でパワー部3が制御され、補助電流制御部の出力端の電圧(制御値)はほぼ0となる。
【0072】
電源のターンオフの際においては、電圧制御部及び電流制御部の出力端の電圧がほぼ0になるとともに、補助電流制御部の出力端の電圧によってパワー部が制御される補助電流制御モードで動作する。合成部25を備える場合、電源制御回路は、電源のターンオフの際において、ダイオードを有する回路によって補助電流制御モードで動作する。
【0073】
図2は、電圧電流制御の制御可能な範囲を示す図である。図2の(A)に示すように、電圧制御モード及び電流制御モードでは、電圧及び電流の両方が正出力である場合、又は、電圧及び電流の両方が負出力である場合に、制御値の制御が可能となる。
【0074】
例えば、定電流定電圧電源をターンオフする際に電圧が正出力で電流が負の方向に流れてしまう場合、電流の制御ができなくなり、電流のアンダーシュートが発生するおそれがある。
【0075】
ターンオフ時電流制御部24は、ターンオフの際に、所定のOFFリミット値OFFMref1と電流測定値Ireal1との誤差を打ち消すように調整された制御値を出力するため、電圧制御モード及び電流制御モードでは制御不能であった範囲も、制御可能となる。
【0076】
例えば、図2の(B)に示すように、第2象限、第4象限も制御可能な範囲となるため、電圧が正出力で電流が負の方向に流れてしまう場合であっても、電流を正方向に流すように制御できるので、電流のアンダーシュートを改善できる。
【0077】
制御部2においては、定電圧定電流電源がターンオンされている間は、選択部23によって電圧制御モード及び電圧制御モードの何れか一方の制御モードで制御値が出力される。例えば、電圧制御モードは、電圧測定値が電圧目標値となるように制御値を出力する定電圧制御モードとする。
【0078】
例えば、電流制御モードは、電流測定値が電流目標値となるように制御値を出力する定電流制御モードとする。各制御モードが定電圧定電流電源の、電圧を一定に保つ機能である定電圧機能又は電流を一定に保つ機能である定電流機能を実現している。定電圧定電流電源がターンオフされた際、制御値は補助電流制御モードで出力される。
【0079】
制御部2は、例えば電圧が正出力の際に負電流が流れる場合であっても、電流が電流指令値となるように制御できる。よって、制御部2は、定電流定電圧電源をターンオフする際に発生する電流のアンダーシュートを改善できる。
【0080】
上述した本実施の形態による制御部2は本発明に係る制御部の一例を示すものである。本発明による制御部2は、本実施の形態による制御部2に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、本実施の形態による制御部2を変形し、又は、他のものに適用したものであってもよい。
【0081】
図3を用いて本実施の形態による電源回路1を用いた際の電圧のオーバーシュート及び電流のアンダーシュートの詳細について説明する。図3は、比較例に係る電源制御回路が備わる電源回路の一例を示す図である。
【0082】
図3に示す電源回路10は、電源回路1と比較して、第1の電位差消失部211、第2の電位差消失部221、ターンオフ時電流制御部24及び合成部25を備えていない点で相違し、その他は同一である。
【0083】
図4は、比較例及び本実施の形態における電圧電流制御の測定結果である。図4の(A)は、比較例に係る電圧制御及び電流制御の制御値であり、図3の第1の位置P1及び第2の位置P2で測定された結果である。
【0084】
図4の(A)に示すように、開始から1msで電圧制御モードの制御値が14V付近に飽和し、電流制御モードが支配的に制御した。そして、12msのタイミングで、電流制御モードの制御値が電圧制御モードの制御値を上回った(第1の範囲A1)。
【0085】
電流制御モードの制御値が急激に低下するとともに電流制御モードの制御値が14V付近に飽和し、電圧制御と電流制御の切り替わりの際において制御値に差が生じていることが確認できる。
【0086】
図4の(B)は、比較例の電圧電流制御を実行した場合に負荷4に印加された電圧及び電流の測定値である。測定箇所は図3の第4の位置P4及び第5の位置P5である。図4の(B)に示すように、ターンオンの際においては電圧がオーバーシュートし(第2の範囲A2)、ターンオフの際においては電流がアンダーシュートすることが確認できる(第3の範囲A3)。
【0087】
図4の(C)は、実施例に係る電圧制御、電流制御、電流負制御の制御値であり、図1の第1の位置P1、第2の位置P2、及び第3の位置P3で測定された結果である。電流負制御は上述した補助電流制御モードである。
【0088】
図4の(C)に示すように、第1の電位差消失部211及び第2の電位差消失部221によって、電圧制御と電流制御の切り替わりの際において制御値に差が生じることが回避された(第4の範囲A4)。さらに、ターンオフ時電流制御部24によって、ターンオフの際において電流値を制御できていることが確認できる(第5の範囲A5)。
【0089】
図4の(D)は、実施例の電圧電流制御を実行した場合に負荷4に印加された電圧及び電流の測定値である。測定箇所は図1の第4の位置P4及び第5の位置P5である。図4の(D)に示すように、ターンオンの際においては電圧のオーバーシュートが改善し(第6の範囲A6)、ターンオフの際においては電流のアンダーシュートを完全に除去することはできないものの改善されていることが確認できる(第3の範囲A3、第7の範囲A7)。さらに、電圧が正出力の際に負電流が流れる場合であっても制御できていることが確認できる(第8の範囲A8)。
【0090】
本発明は上述の実施の形態には限らない。例えば、補助電流制御部は、ターンオフの際の電流制御を補助する回路などであればよく、例えば、電圧を制御することでターンオフの際の電流制御を補助するような電圧制御回路であってもよい。補助電流制御部を電圧制御回路とする場合、補助電流制御部は、例えば電圧制御部21と電流制御部22とを入れ替えたような回路とする。
【0091】
補助電流制御部を電圧制御回路とする場合、図2の(C)に示すように、第2象限、第4象限も制御可能な範囲となるため、電圧が負出力で電流が正の方向に流れてしまう場合であっても、電圧を正出力とするように制御できるので、電圧のアンダーシュートを改善できる。
【0092】
例えば、補助電流制御部は、電圧及び電流の両方を制御することでターンオフの際の電流制御を補助するような電流制御回路及び電圧制御回路であってもよい。例えば、エラーアンプによるフィードバック制御はPI制御に限らずPID(Proportional-Integral-Differential)制御などでもよいものとする。
【0093】
電源回路1は、制御部2に電圧指令値Vref1、電流指令値Iref1、又はOFFリミット値OFFMref1といった指令51を出すような司令部5を備えてもよい。例えば、司令部5は、1又は複数のFPGA(Field-Programmable Gate Array)のような回路で構成されるものとする。
【0094】
司令部5は、例えば、電流指令値Iref1又は電圧指令値Vref1の終了よりも後までOFFリミット値OFFMref1を出力するものとする。なお、例えば、司令部5は、図5に示すような指令処理のような処理手順で処理を実行する。
【0095】
図5は、電源制御方法である指令処理に関する処理手順を示すフローチャートである。例えば、司令部5は、まず、電流指令値Iref1の出力を開始し(ステップS1)、電圧指令値Vref1の出力を開始し(ステップS2)、OFFリミット値OFFMref1の出力を開始する(ステップS3)。
【0096】
次に、司令部5は、電圧指令値Vref1の出力を停止し(ステップS4)、電流指令値Iref1の出力を停止し(ステップS5)、OFFリミット値OFFMref1の出力を停止する(ステップS6)。
【0097】
なお、例えば、ステップS1とステップS2とステップS3との順番は、それぞれ入れ替わってもよいものとする。またステップS4とステップS5との順番も入れ替わってもよいものとする。
【符号の説明】
【0098】
1…電源回路、2…制御部(電源制御回路の一例)、3…パワー部、21…電圧制御部、22…電流制御部、23…選択部、24…ターンオフ時電流制御部(補助電流制御部の一例)、25…合成部、211…第1の電位差消失部(消失部の一例)、221…第2の電位差消失部(消失部の一例)。
図1
図2
図3
図4
図5