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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146623
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】クレーン
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/22 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
B66C13/22 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053902
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】503002732
【氏名又は名称】住友重機械搬送システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】亀井 智一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 一隆
(72)【発明者】
【氏名】谷口 伸二
(72)【発明者】
【氏名】前田 雅彦
【テーマコード(参考)】
3F204
【Fターム(参考)】
3F204AA02
3F204BA06
3F204DA03
3F204DB06
3F204DB09
3F204DC06
(57)【要約】
【課題】位置計測にかかる時間を短縮させることができるクレーンを提供する。
【解決手段】一実施形態に係るクレーン1は、コイルCを吊ることで保持する吊部6と、吊部6を水平方向に移動させる走行装置7及び横行装置8と、保持対象となるコイルCの位置を計測する複数の3Dライダー13と、を備え、複数の3Dライダー13は互いに異なる場所に配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を吊ることで保持する吊部と、
前記吊部を水平方向に移動させる移動部と、
保持対象となる前記対象物の位置を計測する複数の3Dライダーと、
を備え、
複数の前記3Dライダーは互いに異なる場所に配置されている、
クレーン。
【請求項2】
各前記3Dライダーは、計測した前記対象物の位置を示す座標情報を複数の前記3Dライダーが用いる共通の座標情報に変換する、
請求項1に記載のクレーン。
【請求項3】
走行方向に移動可能なガーダと、
前記ガーダ上で前記走行方向と直交する横行方向に移動可能なトロリと、をさらに備え、
前記吊部は前記トロリに吊り下げられており、
複数の前記3Dライダーは、前記トロリに固定され、前記吊部を挟む位置に配置される、
請求項1又は2に記載のクレーン。
【請求項4】
各前記3Dライダーは、前記対象物にレーザー光線を照射すると共に前記レーザー光線を二次元方向に走査させることによって前記対象物を計測する、
請求項1~3のいずれか一項に記載のクレーン。
【請求項5】
走行方向に移動可能なガーダと、
前記ガーダ上で前記走行方向と直交する横行方向に移動可能なトロリと、をさらに備え、
各前記3Dライダーは、長手方向、及び前記長手方向に直交する短手方向について前記レーザー光線で前記対象物を走査可能であって、前記長手方向の走査角度は前記短手方向の走査角度よりも大きく、
各前記3Dライダーは、前記横行方向に前記長手方向が一致する向きに配置される、
請求項4に記載のクレーン。
【請求項6】
各前記3Dライダーは、前記対象物にレーザー光線を照射して前記対象物を計測し、
前記横行方向から見た前記レーザー光線の密度は、前記走行方向から見た前記レーザー光線の密度とは異なる、
請求項3に記載のクレーン。
【請求項7】
複数の前記3Dライダーは、第1の3Dライダー及び第2の3Dライダーを含んでおり、
前記第1の3Dライダーは、前記横行方向から見たときにおける前記レーザー光線の密度が、前記走行方向から見たときにおける前記レーザー光線の密度より大きくなる向きに配置され、
前記第2の3Dライダーは、前記走行方向から見たときにおける前記レーザー光線の密度が、前記横行方向から見たときにおける前記レーザー光線の密度より大きくなる向きに配置される、
請求項6に記載のクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物を吊ることで保持する吊部と、吊部を水平方向に移動させる移動部と、位置の計測を行う位置計測部と、を備えるクレーンが知られている(例えば、特許文献1参照)。このクレーンは、保持対象となるコイルの目標位置へ移動する際、走行中に位置計測部による位置計測を行う。クレーンは、位置計測部の計測結果に基づいて、正確に目標位置へ到達する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-52019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のクレーンでは、走行中に位置計測部による位置計測を行うため、計測時間が長くなる場合がある。従って、位置計測にかかる時間を短縮させることが求められる。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、位置計測にかかる時間を短縮させることができるクレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るクレーンは、対象物を吊ることで保持する吊部と、吊部を水平方向に移動させる移動部と、保持対象となる対象物の位置を計測する複数の3Dライダーと、を備え、複数の3Dライダーは互いに異なる場所に配置されている。
【0007】
このクレーンによれば、吊部による保持対象となる対象物の位置を計測する複数の3Dライダーが設けられる。複数の3Dライダーは互いに異なる場所に配置されている。複数の3Dライダーが互いに異なる場所に配置されていることにより、複数の3Dライダーからのレーザー光線の向きを互いに異ならせることができる。また、3Dライダーの数が複数であることにより、3Dライダーの数が単数である場合と比較して3Dライダーによる計測で得られる対象物の点群の数が増えるので、対象物の計測時間を短縮させることができる。
【0008】
各3Dライダーは、計測した対象物の位置を示す座標情報を複数の3Dライダーが用いる共通の座標情報に変換してもよい。この場合、対象物の位置を示す座標情報を複数の3Dライダーが用いる共通の座標情報に変換することができる。
【0009】
クレーンは、走行方向に移動可能なガーダと、ガーダ上で走行方向と直交する横行方向に移動可能なトロリと、をさらに備え、吊部はトロリに吊り下げられており、複数の3Dライダーは、トロリに固定され、吊部を挟む位置に配置されてもよい。この場合、複数の3Dライダーが吊部を挟むように配置されるので、複数の3Dライダーからのレーザー光線の向きを一層異ならせることができる。そのため、対象物の位置計測にかかる時間をより短縮させることができる。
【0010】
各3Dライダーは、対象物にレーザー光線を照射すると共にレーザー光線を二次元方向に走査させることによって対象物を計測してもよい。この場合、各3Dライダーがレーザー光線を二次元方向に走査させながら対象物を計測することにより、対象物の計測精度をより高めることができる。
【0011】
クレーンは、走行方向に移動可能なガーダと、ガーダ上で走行方向と直交する横行方向に移動可能なトロリと、をさらに備え、各3Dライダーは、長手方向、及び長手方向に直交する短手方向についてレーザー光線で対象物を走査可能であって、長手方向の走査角度は短手方向の走査角度よりも大きく、各3Dライダーは、横行方向に長手方向が一致する向きに配置されてもよい。
【0012】
各3Dライダーは、対象物にレーザー光線を照射して対象物を計測し、横行方向から見たレーザー光線の密度は、走行方向から見たレーザー光線の密度とは異なってもよい。この場合、向きによってレーザー光線の密度が異なる3Dライダーを用いることができる。
【0013】
複数の3Dライダーは、第1の3Dライダー及び第2の3Dライダーを含んでおり、第1の3Dライダーは、横行方向から見たときにおけるレーザー光線の密度が、走行方向から見たときにおけるレーザー光線の密度より大きくなる向きに配置され、第2の3Dライダーは、走行方向から見たときにおけるレーザー光線の密度が、横行方向から見たときにおけるレーザー光線の密度より大きくなる向きに配置されてもよい。この場合、第1の3Dライダー及び第2の3Dライダーによるレーザー光線の密度を互いに補完できるので、向きによらずに高精度且つ高速で対象物の計測を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、位置計測にかかる時間を短縮させることができるクレーンを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るクレーンの概略正面図である。
図2】本発明の実施形態に係るクレーンの概略側面図である。
図3】(a)は、3Dライダーの概略側面図である。(b)は、3Dライダーの概略平面図である。
図4】(a)は、側面視の一方側から見たときにおける第1の3Dライダーのレーザー光線を模式的に示す図である。(b)は、側面視の他方側から見たときにおける第1の3Dライダーのレーザー光線を模式的に示す図である。
図5】(a)は、側面視の一方側から見たときにおける複数の3Dライダーのレーザー光線を模式的に示す図である。(b)は、側面視の他方側から見たときにおける複数の3Dライダーのレーザー光線を模式的に示す図である。
図6】走行装置の構成を示すブロック図である。
図7】クレーンシステムのシステム構成を示すブロック図である。
図8】コイルヤードの様子を示す概念図である。
図9】速度の遷移を示すグラフである。
図10】クレーンシステムの作業工程を示す工程図である。
図11】3Dマップを作成するときの処理内容を示すフローチャートである。
図12】入庫作業における処理内容を示すフローチャートの前半である。
図13】入庫作業における処理内容を示すフローチャートの後半である。
図14】コイルヤード内のコイルの配置を替える作業における処理内容を示すフローチャートの前半である。
図15】複数の3Dライダーによるコイルの位置計測を説明するための図である。
図16】(a)は、第2実施形態に係る3Dライダーを側面視の一方側から見た側面図である。(b)は、第2実施形態に係る3Dライダーを側面視の他方側から見た側面図である。
図17】第2実施形態に係る3Dライダーがレーザー光線を二次元方向に移動させている状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係るクレーン1の概略構成図である。図2は、本発明の実施形態に係るクレーン1の概略側面図である。図1及び図2に示すように、クレーン1は、天井クレーンである。クレーン1は、対象物として、例えば、円筒状に巻かれた鋼板であるコイルCを保持してコイルCを移動させるものである。
【0017】
(第1実施形態)
例えば、クレーン1は、コイルヤードY(図8参照)に対するコイルCの入庫、出庫、及びコイルヤードYにおけるコイルCの配置替えを行う。なお、クレーン1は、天井クレーンに限定されず、橋形クレーン、又はダブルリンク式ジブクレーン等であってもよい。また、対象物は、コイルに限定されず、スラブ、又は結束棒鋼等であってもよい。
【0018】
図1に示すように、クレーン1は、レール2、ガーダ3、トロリ4、吊部6、走行装置7、横行装置8、巻上装置9、旋回装置11、開閉装置12、複数の3Dライダー13、及び監視部14を備える。
【0019】
レール2は、ガーダ3及びトロリ4を介した吊部6の走行方向D1への移動をガイドする部材である。レール2は、横行方向D2に互いに離隔すると共に、走行方向D1に平行に延びる一対のガイド部材である。レール2は、コイルヤードYの建屋の天井に固定されている。ガーダ3は、トロリ4を介した吊部6の横行方向D2への移動をガイドする部材である。ガーダ3は、走行方向D1に互いに離隔すると共に(図2参照)、一対のレール2に架け渡されるように横行方向D2に平行に延びるガイド部材である。ガーダ3は、走行装置7によってレール2に沿って走行方向D1へ走行可能である。トロリ4は、ガーダ3に支持された状態で吊部6を吊り下げる。トロリ4は、横行装置8によってガーダ3に沿って横行方向D2へ横行可能である。
【0020】
走行装置7は、ガーダ3をレール2に沿って走行させるための装置である。走行装置7は、ガーダ3の横行方向D2の両端側に設けられた車輪36を有する。図6に示すように、車輪36には、車輪36に駆動力を付与するモータ37と、制動力を付与するブレーキ38とが設けられている。モータ37はインバータ39に接続されている。インバータ39は、速度指令の信号に対応した速度でガーダ3が走行するようにモータ37に指令信号を送信する。ブレーキ38はブレーキ制御部40に接続されている。ブレーキ制御部40が信号を送信することによってブレーキ38が車輪36から離隔した状態となる。ブレーキ制御部40が信号の送信を停止すると、ブレーキ38に設けられたバネの弾性力によってブレーキ38が車輪36に押し当てられる。
【0021】
図1に示すように、横行装置8は、トロリ4をガーダ3に沿って横行させるための装置である。横行装置8は、トロリ4に設けられた車輪45を有する。横行装置8は、走行装置7と同様、モータ、ブレーキ、インバータ及びブレーキ制御部を有する。走行装置7及び横行装置8によって、吊部6を水平方向に移動させる移動部が構成される。
【0022】
吊部6は、保持の対象物であるコイルCを吊ることによってコイルCを保持する。例えば、吊部6は、一対のアーム部31と、各アーム部31に設けられた爪部32とを有する(図2参照)。吊部6は、ワイヤ33によってトロリ4から吊り下げられている。吊部6は、トロリ4に設けられた巻上装置9とワイヤ33を介して接続されている。従って、巻上装置9は、ワイヤ33を巻き上げることによって吊部6を上昇させることができる。アーム部31は、コイルCを両端側から挟み込むように設けられている。一対の爪部32のそれぞれは、各アーム部31の下端部に互いに近づくように延びた状態で設けられる。爪部32は、コイルCを保持するときにアーム部31から突出することが可能であり、コイルCの保持を解除するときにアーム部31に入り込むことが可能である。
【0023】
アーム部31は、開閉装置12の両端側に設けられており、開閉装置12の駆動によって開閉される。吊部6は、旋回装置11を介してワイヤ33に接続されている。従って、吊部6は、ワイヤ33周りに旋回可能である。吊部6がコイルCを保持するときには、巻上装置9及び旋回装置11が吊部6を移動させることにより、爪部32をコイルCの貫通孔の位置まで降ろす。この状態で開閉装置12がアーム部31を閉じることにより、爪部32がコイルCの貫通孔に挿入される。そして、吊部6は、ワイヤ33を介して巻上装置9によって巻き上げられる。これにより、吊部6は、コイルCを吊り下げてコイルCを保持することができる。
【0024】
クレーン1は、互いに異なる位置に配置された複数の3Dライダー13を備える。複数の3Dライダー13のそれぞれは、コイルヤードYにおける各種物体の位置を計測する機器である。各3Dライダー13は、下方を向いた状態でトロリ4に設けられる。複数の3Dライダー13は、第1の3Dライダー13A及び第2の3Dライダー13Bを含む。図1及び図2において、各3Dライダー13の計測範囲DE(第1の3Dライダー13Aの計測位置DE1、及び第2の3Dライダー13Bの計測位置DE2)は、ハッチングが付された領域によって示されている。3Dライダー13の計測範囲DEは、コイルC及び吊部6の双方を含む。
【0025】
複数の3Dライダー13は、コイルCを吊部6によって保持するときにコイルCの位置、及び吊部6の位置を同時に計測することが可能である。また、複数の3Dライダー13は、保持したコイルCを降ろすときに、コイルCを降ろす位置、及び吊部6の位置を同時に計測することができる。複数の3Dライダー13は、コイルヤードY及びトレーラT(図8参照)上に存在するスキッド80の位置を計測することができる。スキッド80は、床面にコイルCを配置するときにコイルCの転動を防止する部材である。これにより、後述する3Dマップを作成するときにスキッド80の位置を加味することができる。
【0026】
複数の3Dライダー13は、トロリ4に固定されている。そのため、複数の3Dライダー13は、トロリ4と共に走行方向D1及び横行方向D2に移動する。例えば、第1の3Dライダー13Aは吊部6から見て横行方向D2の一方側に設けられ、第2の3Dライダー13Bは吊部6から見て横行方向D2の他方側に設けられる。複数の3Dライダー13は、ワイヤ33を挟む位置に配置されてもよい。より好ましくは、複数の3Dライダー13は、吊部6を挟む位置に配置されてもよい。走行方向D1から見た状態では、各3Dライダー13の中心線CL2は、吊部6の中心線CL1から横行方向D2にシフトした位置に設けられる。横行方向D2から見た状態では、各3Dライダー13の中心線CL2は、例えば、吊部6の中心線CL1と同一の位置に設けられている。これにより、コイルCと吊部6との位置合わせを行うときに横行方向D2へのずれだけを考慮すればよい。
【0027】
図3は、3Dライダー13の模式図である。3Dライダー13は、ある方向にレーザー送受信センサを旋回させることで、レーザー光線Lをある方向に広範囲に照射する。図3(a)は、3Dライダー13のレーザー送受信センサの旋回軸と直交する方向から見た図である。図3(b)は、3Dライダー13のレーザー送受信センサの旋回軸方向から見た図である。便宜上、レーザー送受信センサの旋回軸方向を非走査方向X1、非走査方向X1と直交する方向を走査方向X2と呼ぶ。3Dライダー13は、コイルC等の対象物にレーザー光線Lを照射して当該対象物の表面までの距離を計測する。3Dライダー13は、例えば、非走査方向X1に並んで配置される複数(一例として16個)のレーザー送受信センサを有し、複数のレーザー送受信センサのそれぞれから異なる方向にレーザー光線Lが下方に照射される。一例として、隣り合うレーザー光線L同士の角度は2°であり、複数のレーザー光線L全体による非走査方向X1における照射角度θ1は30°である。また、複数のレーザー光線Lによる走査方向X2における走査角度θ2は360°である。3Dライダー13では、所定の時間間隔で発信される30°に広がったレーザー光線Lが走査される。また、走査方向X2におけるレーザー光線L同士のなす角の角度は走査速度に依存するが、当該角度は、例えば、0.1°~0.3°程度となる。そのため、走査方向X2のほうが非走査方向X1よりも高密度である。
【0028】
第1の3Dライダー13Aはレーザー光線L1をコイルC等の対象物に照射することによって当該対象物の表面までの距離を計測し、第2の3Dライダー13Bはレーザー光線L2を対象物に照射することによって当該対象物の表面までの距離を計測する。図4(a)は、第2の3Dライダー13Bから照射されるレーザー光線L2を横行方向D2から見た側面図である。「側面」とは、図3における側面であって、トロリ4に取り付けられた状態における3Dライダー13の側面である。以下では、第2の3Dライダー13Bについて説明し、第1の3Dライダー13Aについての説明を適宜省略する。例えば、第1の3Dライダー13Aの走査方向X2は走行方向D1と一致し、非走査方向X1は横行方向D2と一致する。第2の3Dライダー13Bの走査方向X2は横行方向D2と一致し、非走査方向X1は走行方向D1と一致する。例えば、コイルCは、その軸線が走行方向D1に一致すると共に、横行方向D2に並ぶように配置されている(図1及び図2参照)。そのため、第1の3Dライダー13Aの走査方向X2はコイルCの軸方向と一致し、非走査方向X1はコイルCの軸方向と直交する。第2の3Dライダー13Bの非走査方向X1はコイルCの軸方向と一致し、走査方向X2はコイルCの軸方向と直交する。
【0029】
図4(b)は、第2の3Dライダー13Bから照射されるレーザー光線L2を走行方向D1から見た側面図である。図4(a)及び図4(b)に示すように、第2の3Dライダー13Bでは、走行方向D1から見たレーザー光線L1の密度は、横行方向D2から見たレーザー光線L1の密度とは異なっている。レーザー光線の密度とは、所定領域あたりにおけるレーザー光線の本数を示しており、レーザー光線の密度が高いとは、例えば、互いに隣り合うレーザー光線同士のなす角が小さいことを示している。また、レーザー光線の密度が高密度である場合、取得できる点群データにおいて、互いに隣り合う点同士の距離を短くして高精度に測定できる。
【0030】
図5(a)は、複数の3Dライダー13から照射されるレーザー光線L1,L2を横行方向D2から見た側面図である。図5(b)は、複数の3Dライダー13から照射されるレーザー光線L1,L2を走行方向D1から見た側面図である。図5(a)及び図5(b)に示すように、第1の3Dライダー13Aでは、第2の3Dライダー13Bと同様、走行方向D1から見たレーザー光線L2の密度が横行方向D2から見たレーザー光線L2の密度とは異なっている。第1の3Dライダー13Aは、横行方向D2から見たときにおけるレーザー光線L1の密度が走行方向D1から見たときにおけるレーザー光線L1の密度より大きくなる向きに配置される。そして、第2の3Dライダー13Bは、走行方向D1から見たときにおけるレーザー光線L2の密度が横行方向D2から見たときにおけるレーザー光線L2の密度より大きくなる向きに配置される。このように第1の3Dライダー13A及び第2の3Dライダー13Bが配置されることにより、第1の3Dライダー13Aの低密度となる方向における計測を第2の3Dライダー13Bの高密度となる方向における計測によって補うことができる。
【0031】
第1の3Dライダー13A及び第2の3Dライダー13Bのそれぞれは、計測したコイルC等の対象物の位置を示す座標情報を複数の3Dライダー13が用いる共通の座標情報に変換する。例えば、第1の3Dライダー13Aは、第1の3Dライダー13Aから延びる第1Z軸、並びに当該第1Z軸と交差する第1X軸及び第1Y軸を有するセンサ座標系における対象物の座標値を取得し、第2の3Dライダー13Bは、第2の3Dライダー13Bから延びる第2Z軸、並びに当該第2Z軸と交差する第2X軸及び第2Y軸を有するセンサ座標系における対象物の座標値を取得する。そして、第1の3Dライダー13Aは取得した座標値を複数の3Dライダー13で共通で用いる座標系における座標値に変換し、第2の3Dライダー13Bも取得した座標値を当該共通で用いる座標系における座標値に変換する。
【0032】
このように、第1の3Dライダー13A及び第2の3Dライダー13Bのそれぞれが対象物の位置を示す座標情報を共通の座標情報に変換することにより、複数の3Dライダー13によって得られた対象物の座標情報を共通で用いることができる。例えば、第1の3Dライダー13Aの構成及び機能、並びに第2の3Dライダー13Bの構成及び機能は互いに同一である。従って、以下の説明では、第1の3Dライダー13Aと第2の3Dライダー13Bを識別する必要がない場合には、第1の3Dライダー13A及び第2の3Dライダー13Bをまとめて3Dライダー13として説明する。
【0033】
監視部14(図1参照)は、クレーン1の周辺の状況を監視するための機器である。監視部14は、遠隔監視用カメラ等によって構成される。監視部14はトロリ4に設けられている。また、クレーン1は、例えば、電気室を備える。クレーン1の電気室は、クレーン1を動作させるための各種電気機器を収納する。当該電気室には、走行装置7及び横行装置8のインバータ、ブレーキ制御部、後述の機上制御盤41、コイル位置認識装置42、及び無線通信装置43等が配置される。
【0034】
次に、前述したクレーン1を制御するクレーンシステム100について説明する。図7は、クレーンシステム100のシステム構成を示すブロック図である。図7に示すように、クレーンシステム100は、クレーン1と、クレーン1を操作する地上操作室50とを備える。地上操作室50は、地上操作盤51と、在庫管理計算機52と、上位システムPC53と、遠隔監視用モニタ54とを備える。地上操作室50は、クレーン1から離れた位置に設けられ、例えば、コイルヤードYの建屋に設けられる。
【0035】
地上操作盤51は、クレーン1の操作を行うための各種情報をクレーン1へ送信する機器である。地上操作盤51は、無線通信部56を介してクレーン1に情報を伝達する。在庫管理計算機52は、コイルヤードYにおけるコイルCの在庫管理を行う計算を行う機器である。例えば、在庫管理計算機52は、上位システムPC53からの搬送指示に基づいて搬送ルートの計算を行う。上位システムPC53は、工場の操業状態に応じたコイルCの供給等、対象物の搬送指示を行う機器である。遠隔監視用モニタ54は、監視部14によって撮影された映像を映し出すことによってクレーン1の周辺の様子を監視する機器である。
【0036】
クレーン1は、機上制御盤41と、コイル位置認識装置42と、無線通信装置43とを備える。機上制御盤41は、クレーン1の運転に必要な各種情報をクレーン1の各機器に出力する。機上制御盤41は、走行装置7、横行装置8、巻上装置9、旋回装置11、及び開閉装置12に所望の動作を行うように指令信号を出力する。コイル位置認識装置42は、複数の3Dライダー13による計測結果からコイルCの位置を認識するための装置である。例えば、コイル位置認識装置42は、前述した共通の座標情報に変換された複数の3Dライダー13の計測結果からコイルCを認識する。コイル位置認識装置42は、認識したコイルCの位置を機上制御盤41に出力する。無線通信装置43は、地上操作室50との間で無線通信によって情報の送受信を行う機器である。
【0037】
次に、クレーン1の動作について説明する。走行装置7及び横行装置8は、機上制御盤41からの指令信号に基づき、保持対象となるコイルCが配置されている位置、又は保持しているコイルCを降ろす位置に対する目標位置まで吊部6を移動させる。このとき、走行装置7及び横行装置8は、コイルCが配置されているコイルヤードY(配置領域)の予め作成された3Dマップに基づいて目標位置まで吊部6を移動させる。すなわち、機上制御盤41は、予め作成した3Dマップを参照し、保持対象となるコイルCがコイルヤードYのどこに配置されているか、又は保持しているコイルCをコイルヤードYのどこに配置するかを演算する。そして、機上制御盤41は、3Dマップに基づいて演算した目標位置へ吊部6が移動するように、走行装置7及び横行装置8に指令信号を出力する。3Dマップは、クレーン1が複数の3Dライダー13で計測を行いながらコイルヤードYを移動してコイルヤードYの各コイルCの位置を把握することによって作成される。なお、3Dマップは、例えば、コイルヤードYでの一日の作業の開始前、又は作業後等のタイミングで行われる。これにより、3Dマップは定期的に更新される。
【0038】
例えば、走行装置7及び横行装置8は、3Dマップに基づく目標位置まで到着したときに(又は到着直前の位置まで来たときに)、吊部6の移動を停止、又は微速な状態とする。ここで、停止とは、速度が0の状態のことである。また、微速な状態とは、定格速度を100%とした場合に、例えば、0~10%の速度で移動する状態のことである。
【0039】
例えば、複数の3Dライダー13は、吊部6が停止した状態、又は吊部6の移動速度が微速の状態であるときに目標位置を計測する。ところで、3Dマップに基づく目標位置まで吊部6が到着したときに、実際の吊部6の位置と、搬送対象のコイルCが実際に存在するコイル存在位置、又は保持しているコイルCを着床させる着床位置(コイルCの着床の目標位置)との間で水平方向の位置ずれが生じる場合がある。よって、複数の3Dライダー13が実際の吊部6及び目標位置を計測して当該ずれを解消した状態でコイルCの保持(コイルCの着床)を行う。目標位置を計測することは、複数の3Dライダー13が搬送対象のコイルCが存在する又は保持しているコイルCを着床させる空間を上方から計測することである。目標位置にコイルCが存在する場合、複数の3Dライダー13は、コイルCの外径又は幅等の情報を取得する。目標位置にコイルCが存在しない場合、複数の3Dライダー13は、コイルCを載置する載置台の形状を取得し、当該形状を基にコイル位置認識装置42がコイルCの中心位置を算出する。当該載置台は、例えばスキッド80(図1及び図2参照)であり、トレーラT、及びコイルヤードYの全ての番地に設けられる。なお、目標位置は、コイルCが存在するコイル存在位置、及びコイルCを着床する着床位置を把握可能であれば、具体的にどこに設定するかは特に限定されない。例えば、コイル位置認識装置42は、前述のコイルCの中心位置、及び載置台の中心位置を目標位置として取り扱ってもよいが、これらの中心位置に基づいて算出される点、線、二次元領域、又は三次元領域等を目標位置として扱ってもよい。
【0040】
なお、水平方向における実際の吊部6の中心位置と搬送対象のコイルCの中心位置との間にずれが生じている場合、機上制御盤41は、吊部6の中心位置とコイルCの中心位置との間のずれを解消するように、吊部6の位置を微調整する制御を行う。水平方向における実際の吊部6の中心位置とコイルCを着床する対象となる載置台の中心位置との間にずれが生じている場合、機上制御盤41は、吊部6の中心位置と載置台の中心位置との間のずれを解消するように、吊部6の位置を微調整する制御を行う。このように、機上制御盤41が走行装置7、横行装置8、旋回装置11、及び開閉装置12を制御して3Dマップに基づいて目標位置に吊部6を移動させ、吊部6が停止又は微速になった後に、吊部6の微調整を行う。この微調整を目標位置補完と称する場合がある。但し、吊部6とコイルCとのずれ、及び吊部6と載置台とのずれを解消するための制御内容は特に限定されず、任意の制御方法を適宜採用してもよい。
【0041】
複数の3Dライダー13が吊部6の停止状態で目標位置を計測するとき、走行装置7及び横行装置8は速度指令を0とすることによって吊部6の移動を停止する。また、吊部6が微速の状態で3Dライダー13が目標位置を計測するとき、速度指令を低下させることによって吊部6を微速な状態とする。このとき、走行装置7及び横行装置8は、機械的なブレーキ(図6のブレーキ38)を用いることなく、吊部6の移動を停止、又は吊部6の移動速度を微速とする。
【0042】
具体的には、機上制御盤41は、3Dマップに基づいて、吊部6を移動させる目標位置を設定し、当該目標位置まで吊部6が移動するように、走行装置7及び横行装置8の移動量及び移動速度を設定する。機上制御盤41は、吊部6が目標位置に向かうときに吊部6が通常速度で移動する速度指令を出力する(図9のAを参照)。吊部6が目標位置に近づいたときに、機上制御盤41は、吊部6が減速する速度指令を出力し(図9のB参照)、そして、吊部6が微速する速度指令を出力し(図9のC参照)て吊部6を微速にて移動させる。吊部6が目標位置に到達したときに、機上制御盤41は、速度指令を0とする(図9のD参照)。複数の3Dライダー13は、図9のC、又はDのいずれかの状態にて位置計測を行う。なお、複数の3Dライダー13がDの状態で位置計測を行う場合、Cの領域は設けずにBの状態から直接Dの状態に遷移してもよい。このとき、機上制御盤41は、走行装置7及び横行装置8に対する減速を速度指令の減少のみによって行い、走行装置7及び横行装置8の両方においてブレーキが作動しないように制御する。これにより、複数の3Dライダー13の計測のために吊部6が停止又は微速で移動しているとき、走行装置7及び横行装置8の両方においてブレーキが作動していない状態となる。
【0043】
次に、図10を参照して、クレーンシステム100の作業工程について説明する。図10は、クレーンシステム100の作業工程を示す工程図である。まず、クレーンシステム100は、コイルヤードYの3Dマップを作成する(ステップS10)。次に、コイルCを積んだトレーラT(図8参照)がトレーラ停車エリアTEに到着したときに、クレーンシステム100はトレーラTからコイルヤードYにコイルCの入庫を行う(ステップS20)。コイルCを入庫した後、必要に応じて、クレーンシステム100は、コイルヤードYでコイルCの配置替え作業を行う(ステップS30)。次に、クレーンシステム100は、コイルヤードYから出庫対象となるコイルCを取り出してトレーラTへコイルCを移載する出庫作業を行う(ステップS40)。
【0044】
次に、図11を参照して、3Dマップを作成するときの処理内容を説明する。図11に示すように、3Dマップ作成のフローが開始したときに、クレーンシステム100は、始動処理を実行する(ステップS110)。ステップS110では、地上操作盤51が、自動運転の起動の押し操作を行い、機上制御盤41が地上操作盤51から搬送指令を受信したか否かの判定を行う。機上制御盤41は、搬送指令を受信したときに自動運転を開始する。また、機上制御盤41は、吊部6の高さが3Dマップの作成を行える高さであるかを判定し、低い場合は、巻上装置9を制御して吊部6を巻き上げる。
【0045】
次に、クレーンシステム100は、3Dマップを作成するための初期位置に吊部6を移動させる(ステップS120)。ステップS120では、機上制御盤41は、走行装置7、横行装置8、旋回装置11、及び開閉装置12のそれぞれに対して目標値を初期位置に対応する値に設定すると共に、目標値に達するまで各動作を繰り返させる。なお、機上制御盤41は、各装置が目標値に達したときに、初期位置への移動が完了した旨を地上操作盤51に送信する。
【0046】
次に、クレーンシステム100は、複数の3Dライダー13にコイルヤードYを計測させることで3Dマップの作成を開始すると共に、吊部6を移動させる(ステップS130)。ステップS130では、機上制御盤41は、吊部6が3Dマップを作成するのに必要な経路を移動して吊部6を目標位置に到達させる。この経路は、コイルヤードYの全ての番地を通るように設定され、複数の3Dライダー13は各番地において前述の目標位置の計測と同様の計測を行う。コイル位置認識装置42は、各番地におけるコイルCの中心位置又はスキッド80の中心位置を認識してもよい。機上制御盤41は、吊部6が目標位置に到達するまで走行装置7及び横行装置8による動作を繰り返させる。このようにして、コイルヤードYの各番地の空間情報が取得される。
【0047】
次に、クレーンシステム100は、3Dマップが完成したかの確認を行う(ステップS140)。ステップS140において、機上制御盤41は、3Dマップに問題が無いか否かを判定する。例えば全ての番地の計測結果を取得できていない等、3Dマップに問題があると判定された場合、ステップS120に戻る。そして、走行装置7及び横行装置8の動作によって再び初期位置へ戻る。ステップS140において3Dマップに問題がないと判定された場合、クレーンシステム100は、3Dマップが完成した旨を地上操作盤51に送信し、3Dマップ作成の終了処理を行う(ステップS150)。ステップS150では、機上制御盤41が自動運転を終了するか否かの判定を行う。機上制御盤41は、自動運転停止の押し操作が行われたら自動運転を終了する。以上により図11に示す3Dマップ作成のフローが完了する。
【0048】
次に、図12及び図13を参照して、トレーラTからコイルCをコイルヤードYに入庫する入庫作業における処理内容を説明する。図12に示すように、クレーンシステム100は始動処理を実行する(ステップS210)。ステップS210では、ステップS110と同様の処理が行われる。次に、クレーンシステム100は、吊部6をトレーラTに移動させる(ステップS220)。ステップS220では、機上制御盤41は、予め定められたトレーラ停車エリアTEに停止したトレーラTに載置された搬送対象のコイルCの位置を目標位置として設定する。トレーラTに複数のコイルCが搭載される場合には、トレーラTにおける搬送対象のコイルCの載置位置情報を上位システムPC53から取得してもよい。機上制御盤41は、走行装置7、横行装置8、旋回装置11、及び開閉装置12のそれぞれに対して目標位置に対応する目標値に達するまで各動作を繰り返させて吊部6を移動させる。なお、機上制御盤41は、各装置が目標値に達したら、目標位置への移動が完了した旨を地上操作盤51に送信する。
【0049】
ここで、吊部6がトレーラTの目標位置まで到達したとき(又は目標位置直前まで到達したとき)、クレーンシステム100は吊部6の停止処理を行う(ステップS230)。ステップS230では、機上制御盤41が、走行装置7及び横行装置8に速度指令を0とした信号を送信して吊部6を停止させる。吊部6が停止したときに、複数の3Dライダー13は、トレーラTのコイルCの位置計測を行い、水平方向における実際の搬送対象のコイルCの中心位置と吊部6の位置との間のずれ量を取得する(ステップS240)。クレーンシステム100は、複数の3Dライダー13によって得られたコイル位置計測結果を参照してコイルCの位置計測に問題が無いか否かを判定する(ステップS250)。ステップS250においてコイルCの位置計測に問題があると判定された場合(ステップS250においてNO)、自動運転を停止する(ステップS260)。一方、ステップS250においてコイルCの位置計測に問題が無いと判定された場合(ステップS250においてYES)、クレーンシステム100は、目標位置補完を行う(ステップS270)。ステップS270では、クレーンシステム100は、ステップS240で取得した吊部6と搬送対象のコイルCの中心位置との間のずれを解消するように吊部6の位置を微調整し、目標位置補完が完了したか否かを判定する。目標位置補完が完了すると、水平方向における搬送対象のコイルCの中心位置に吊部6の位置が一致する。ステップS270において目標位置補完が完了していないと判定された場合、ステップS220に戻り、走行装置7及び横行装置8の動作によって水平方向における搬送対象のコイルCの中心位置と吊部6の位置が一致するように吊部6の位置を微調整する。
【0050】
ステップS270において目標位置補完が完了したと判定された場合、クレーンシステム100は、トレーラTのコイルCを保持する処理を実行する(ステップS280)。ステップS280では、機上制御盤41は、巻上装置9を制御して吊部6の巻き下げを行う。また、機上制御盤41は、吊部6の乗り上げが発生したか否かを判定し、当該判定で乗り上げが発生していると判定したときに自動運転を停止する。次に、機上制御盤41は、吊部6の爪部32と、保持対象となるコイルCの貫通孔の位置との芯合わせを行う。芯合わせを行った後に、吊部6は、爪部32を出すことによってコイルCの貫通孔に対して爪部32を挿入可能な状態とする。そして、機上制御盤41は、開閉装置12を制御してアーム部31を閉じる動作を行う。機上制御盤41は、吊部6によるコイルCの掴みを検出したときに、巻上装置9を制御して吊部6をコイルCと共に巻き上げてコイルCを搬送高さまで上げる。
【0051】
図13に示すように、クレーンシステム100は、コイルCの搬送先情報を上位システムPC53から受信し、当該搬送先情報を目標位置として設定することによって搬送先を決定すると共に、目標位置を3Dマップと照合する(ステップS310)。ステップS310において、コイルヤードYにおけるコイルCの着床の目標位置に既に別のコイルCが3Dマップ上で存在している場合、自動運転が終了する。
【0052】
次に、クレーンシステム100は、コイルCを保持した吊部6を目標位置(着床位置)に移動させる(ステップS320)。ステップS320では、機上制御盤41は、走行装置7及び横行装置8のそれぞれに対して目標位置に対応する目標値を設定すると共に目標値に達するまで各動作を繰り返させる。吊部6がコイルヤードYの目標位置まで到達したとき(又は目標位置直前に到達したとき)、クレーンシステム100は、吊部6の停止処理を行う(ステップS330)。ステップS330では、ステップS230と同様の処理が行われる。吊部6が停止したときに、複数の3Dライダー13は保持されているコイルCを着床させる着床位置を上方から計測し、複数の3Dライダー13による計測結果からコイル位置認識装置42はスキッド80の中心位置を算出する(ステップS340)。クレーンシステム100は、吊部6とスキッド80の中心位置との間のずれを解消するように吊部6の位置を微調整して目標位置補完が完了したか否かを判定する(ステップS350)。複数の3Dライダー13の計測によってコイルCの形状が計測され、着床位置に別のコイルCが存在すると判断された場合には自動運転の停止処理がなされる。
【0053】
次に、クレーンシステム100は、コイルヤードYへのコイルCの着床を行う(ステップS360)。ステップS360では、機上制御盤41は、巻上装置9を制御して吊部6の巻き下げを行う。機上制御盤41は、爪部32に設けられるリミットスイッチ又は荷重計等により、吊部6の乗り上げが発生しているか否かの判定を行う。当該判定で乗り上げが発生していると判定された場合、自動運転を停止する。また、機上制御盤41は、コイルCが着床したか否かを判定し、着床していないと判定した場合、巻き下げの動作を繰り返す。着床していると判定した場合、機上制御盤41は、開閉装置12を制御してアーム部31を開く動作を行わせる。そして、機上制御盤41は、吊部6の爪部32をアーム部31の内部に収納する動作を行わせる。爪部32がアーム部31の内部に入ったときに、機上制御盤41は、巻上装置9を制御して吊部6を巻き上げ、吊部6を搬送高さまで上昇させる。そして、クレーンシステム100は、入庫作業の終了処理を行う(ステップS370)。ステップS370では、ステップS150と同様の工程が実行される。以上より、図12及び図13に示す入庫作業のフローが完了する。
【0054】
次に、図14を参照して、コイルヤードYのコイルCの配置を替える作業における処理内容を説明する。図14に示すように、クレーンシステム100は始動処理を実行する(ステップS400)。ステップS400では、ステップS110と同様の工程が実行される。クレーンシステム100は、配置替えの対象のコイルCを決定すると共に、目標位置を3Dマップと照合する(ステップS410)。次に、クレーンシステム100は、吊部6を当該対象のコイルCに向けて移動させる(ステップS420)。ステップS420では、機上制御盤41は、走行装置7、横行装置8、旋回装置11、及び開閉装置12のそれぞれに対して目標位置に対応する目標値に達するまで各動作を繰り返させる。なお、機上制御盤41は、各装置が目標値に達したときに、目標位置への移動が完了した旨を地上操作盤51に送信する。
【0055】
ここで、吊部6が対象のコイルCの目標位置に到達したときに(又は目標位置直前に到達したときに)、クレーンシステム100は、吊部6の停止処理を行う(ステップS430)。ステップS430では、ステップS230と同様の工程が実行される。吊部6が停止したときに、複数の3Dライダー13は、対象のコイルCの位置計測を行い、水平方向における対象のコイルCの中心位置と吊部6の位置との間のずれ量を取得する(ステップS440)。クレーンシステム100は、複数の3Dライダー13によって得られたコイル位置計測結果を参照してコイルの位置計測に問題が無いか否かを判定する(ステップS450)。ステップS450においてコイルCの位置計測に問題があると判定された場合(ステップS450においてNO)、自動運転を停止する(ステップS460)。一方、ステップS450においてコイルCの位置計測に問題が無いと判定された場合(ステップS450においてYES)、クレーンシステム100は目標位置補完を行う(ステップS470)。ステップS470では、クレーンシステム100は、ステップS440において取得した吊部6と搬送対象のコイルCの中心位置との間のずれを解消するように吊部6の位置を微調整し、目標位置補完が完了したか否かを判定する。目標位置補完が完了すると、水平方向における搬送対象のコイルCの中心位置と吊部6の位置とが互いに一致する。ステップS470において、目標位置補完が完了していないと判定された場合、ステップS420に戻り、走行装置7及び横行装置8の動作によって、水平方向における搬送対象のコイルCの中心位置に吊部6の位置が一致するように吊部6の微小な移動を行う。
【0056】
ステップS470において目標位置補完が完了したと判定されたときに、クレーンシステム100は、対象のコイルCを保持する処理を実行する(ステップS480)。ステップS480では、ステップS280と同様の工程が実行される。そして、クレーンシステム100は、保持したコイルCをコイルヤードYの搬送先の位置まで搬送する。以降の処理は、図13に示す処理と同様の処理が実行される。
【0057】
コイルヤードYのコイルCを保持してトレーラTへコイルCを積載する出庫作業については、コイルヤードYのコイルCを保持するときに図14と同様の制御処理が実行される。また、保持したコイルCをトレーラTに積載するときには、目標位置がコイルヤードYの着床位置であってトレーラTの位置である点を除き、図13と同様の制御処理が実行される。
【0058】
次に、第1実施形態に係るクレーン1の作用効果について説明する。
【0059】
第1実施形態に係るクレーン1によれば、吊部6による保持対象となる対象物(前述の例ではコイルC)の位置を計測する複数の3Dライダー13が設けられる。複数の3Dライダー13は互いに異なる場所に配置されている。複数の3Dライダー13が互いに異なる場所に配置されていることにより、複数の3Dライダー13からのレーザー光線Lの向きを互いに異ならせることができる。また、3Dライダー13の数が複数であることにより、3Dライダー13の数が単数である場合と比較して3Dライダー13の計測結果の点群の数が増えるので、対象物の計測時間を短縮させることができる。
【0060】
更に、クレーン1によれば、複数の3Dライダー13の位置が互いに異なることにより、対象物の計測精度を高めることができる。図15では、吊部6を挟むように2つの3Dライダー13が配置されている。例えば、図15に示すように、複数の3Dライダー13の位置が互いに異なる場合、複数の3Dライダー13からのレーザー光線L1,L2の照射方向を互いに異ならせることが可能となる。図15の例の場合、コイルCに対する第1の3Dライダー13Aからのレーザー光線L1の照射領域R1と、コイルCに対する第2の3Dライダー13Bからのレーザー光線L2の照射領域R2とがずれている。そのため、照射領域R1と照射領域R2を足し合わせた照射領域は、照射領域R1のみ、又は照射領域R2のみよりも広い。それにより、1台の3Dライダー13で計測を行う場合と比較して、コイルCの形状の計測精度を高めることができる。従って、複数の3Dライダー13が互いに異なる位置に配置される場合、コイルC等の対象物の計測精度を高めることができる。
【0061】
各3Dライダー13は、計測した対象物の位置を示す座標情報を複数の3Dライダー13が用いる共通の座標情報に変換してもよい。この場合、対象物の位置を示す座標情報を複数の3Dライダー13が用いる共通の座標情報に変換することができる。
【0062】
複数の3Dライダー13は、吊部6を挟む位置に配置されてもよい。この場合、複数の3Dライダー13が吊部6を挟むように配置されるので、複数の3Dライダー13からのレーザー光線L1,L2の向きを一層異ならせることができる。そのため、対象物の計測精度を高めることができる。
【0063】
各3Dライダー13は、対象物にレーザー光線L1,L2を照射して対象物を計測し、側面視の一方側から見たレーザー光線L1,L2の密度は、側面視の他方側から見たレーザー光線L1,L2の密度とは異なっていてもよい。この場合、向きによってレーザー光線L1,L2の密度が異なる3Dライダー13を用いることができる。
【0064】
複数の3Dライダー13は、第1の3Dライダー13A及び第2の3Dライダー13Bを含んでおり、第1の3Dライダー13Aは、側面視の一方側から見たときにおけるレーザー光線L1の密度が、側面視の他方側から見たときにおけるレーザー光線L1の密度より大きくなる向きに配置され、第2の3Dライダー13Bは、側面視の他方側から見たときにおけるレーザー光線L2の密度が、側面視の一方側から見たときにおけるレーザー光線L2の密度より大きくなる向きに配置されてもよい。この場合、第1の3Dライダー13A及び第2の3Dライダー13Bによるレーザー光線L1,L2の密度を互いに補完できるので、向きによらずに高精度且つ高速で対象物の計測を行うことができる。1つの3Dライダーを用いる場合と比較して、第1実施形態では、計測時間を3分の1以下(例えば0.3)に短縮できる。
【0065】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るクレーンについて説明する。第2実施形態に係るクレーンの一部の構成は、前述した第1実施形態に係るクレーン1の一部の構成と同一であるため、クレーン1の説明と重複する説明を適宜省略する。図16(a)、図16(b)及び図17に示されるように、第2実施形態に係るクレーンは、前述した3Dライダー13とは異なる態様のレーザー光線L3を対象物に照射する複数の3Dライダー23を備える。複数の3Dライダー23は、前述した複数の3Dライダー13と同様、互いに異なる位置に配置される。
【0066】
3Dライダー23は、第1方向および第1方向に直交する第2方向にレーザー送受信センサを旋回させることで、レーザー光線Lを広範囲に照射する。図16(a)は、第2方向から見た3Dライダー23を模式的に示す図である。図16(b)は、第1方向から3Dライダー23を見た図である。第1方向は、図16(a)における左右方向であり、第2方向は、図16(b)における左右方向である。3Dライダー23は、コイルC等の対象物にレーザー光線L3を照射して当該対象物の表面までの距離を計測する。3Dライダー23では、3Dライダー13と同様、レーザー光線L3が下方に照射される。第1方向におけるレーザー光線L3による走査角度θ3は、第2方向におけるレーザー光線L3による走査角度θ4とは異なってもよい。一例として、第1方向における走査角度θ3は25.1°であり、第2方向における走査角度θ4は81.7°である。そのため、第1方向を短手方向、第2方向を長手方向と呼ぶことができる。3Dライダー23は、短手方向D3及び長手方向D4についてレーザー光線L3で対象物を走査可能であって、長手方向D4の走査角度θ4は、短手方向D3の走査角度θ3よりも大きい。
【0067】
図17は、3Dライダー23の下方に照射されるレーザー光線L3の軌跡を模式的に示す図である。図17に示されるように、レーザー光線L3の照射方向に直交する平面Hにおいて、3Dライダー23は、レーザー光線L3を二次元方向に移動させることによって対象物を計測する。3Dライダー23は、八の字状にレーザー光線L3を走査する。当該八の字状のレーザー光線L3は、短手方向D3及び長手方向D4に延在しており、平面Hにおいて短手方向D3及び長手方向D4の二方向に移動する。例えば、各3Dライダー23は、横行方向D2に長手方向D4が一致する向きに配置される。横行方向D2のコイル計測範囲が広い場合、前述した3Dマップの作成時でトロリ4を走行させながら計測を行う場合において、複数の番地を一度に計測できるため、3Dマップ作製のための計測時間を短縮できる。具体的には、コイルヤードYが横行方向D2に広い場合、トロリ4を走行しながら計測した後、横行方向D2にトロリ4を移動させ、再度走行しながら計測することがある。このような場合、横行方向D2のコイル計測範囲が広いことで、横行方向D2へのトロリ4の移動回数を減らすことができる。しかしながら、3Dライダー23の向きは特に限定されない。前述したように、3Dライダー23は、八の字状にレーザー光線L3を照射しながら二次元方向にレーザー光線L3を移動させることにより、対象物を密にスキャンすることが可能である。
【0068】
以上、第2実施形態に係るクレーンでは、各3Dライダー23は、対象物にレーザー光線L3を走査すると共にレーザー光線L3を二次元方向に走査させることによって対象物を計測する。従って、各3Dライダー23がレーザー光線L3を二次元方向に走査させながら対象物を計測することにより、対象物の計測精度をより高めることができる。第2実施形態では、第1実施形態と比較して、二方向共に高密度とできるので計測精度を更に高めることができる。
【0069】
本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではない。
【0070】
例えば、前述した実施形態では3Dライダー13がトロリ4に取り付けられていた。しかしながら、3Dライダーの取付位置は、特に限定されず、トロリ4以外の場所に取り付けられていてもよい。また、3Dライダーの数は、複数であれば、3台又は4台以上であってもよい。例えば、図1に示される2台の3Dライダー13の組が走行方向D1(図1の紙面の直交方向)に沿って並ぶように複数配置されていてもよい。このように3Dライダーの数及び配置態様は適宜変更可能である。
【0071】
また、前述した各実施形態のクレーン及びクレーンシステム100の構成は一例にすぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0072】
1…クレーン、4…トロリ、6…吊部、13,23…3Dライダー、13A…第1の3Dライダー、13B…第2の3Dライダー、L,L1,L2,L3…レーザー光線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17