(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146627
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】ポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法、およびポリスチレン系樹脂押出発泡体
(51)【国際特許分類】
B29C 43/58 20060101AFI20231004BHJP
C08J 9/14 20060101ALI20231004BHJP
B29C 48/00 20190101ALI20231004BHJP
B29C 43/34 20060101ALI20231004BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20231004BHJP
B29C 44/60 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
B29C43/58
C08J9/14 CET
B29C48/00
B29C43/34
B29C44/00 E
B29C44/00 C
B29C44/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053910
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】栗原 俊二
(72)【発明者】
【氏名】橋本 光
(72)【発明者】
【氏名】長野 将樹
【テーマコード(参考)】
4F074
4F204
4F207
4F214
【Fターム(参考)】
4F074AA32
4F074AC32
4F074AD10
4F074BA37
4F074BA75
4F074CA22
4F074DA14
4F074DA32
4F074DA58
4F204AA13
4F204AB02
4F204AC03
4F204AG02
4F204AG20
4F204AH48
4F204AR12
4F204AR20
4F204FA01
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4F204FB01
4F204FB02
4F204FF01
4F204FN11
4F207AA13
4F207AB02
4F207AG02
4F207AG20
4F207AH48
4F207AR12
4F207AR20
4F207KA01
4F207KA11
4F207KK04
4F207KK64
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4F207KW23
4F207KW26
4F214AA11
4F214AB02
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4F214AG20
4F214UA07
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4F214UF01
4F214UG22
4F214UN04
4F214UN64
4F214UP83
4F214UW23
4F214UW26
(57)【要約】
【課題】切削加工性および表面硬さに優れたポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの製造方法を提供する。
【解決手段】ポリスチレン系樹脂押出発泡体Xを、圧縮比が1.03~1.18となるように圧縮する圧縮工程を有する、ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの製造方法:ここで、前記圧縮比は、下記式で得られる値である、前記圧縮比=(前記ポリスチレン系樹脂押出発泡体Xの厚さ)÷(前記ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの厚さ)。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂押出発泡体Xを、圧縮比が1.03~1.18となるように圧縮する圧縮工程を有する、ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの製造方法:
ここで、前記圧縮比は、下記式で得られる値である、
前記圧縮比=(前記ポリスチレン系樹脂押出発泡体Xの厚さ)÷(前記ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの厚さ)。
【請求項2】
前記ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの厚さは、10mm~50mmである、請求項1に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの製造方法。
【請求項3】
前記ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの製造方法は、
ポリスチレン系樹脂を含む樹脂組成物と発泡剤とを溶融混練する溶融混練工程をさらに含み、
前記発泡剤は、(a)炭素数が3~5である飽和炭化水素と、(b)水、二酸化炭素、窒素、炭素数が2~5であるアルコール、ジメチルエーテル、塩化メチル、塩化エチル、ハイドロフルオロオレフィンおよびハイドロクロロオレフィンからなる群から選択される一種以上と、を含む、請求項1または2に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの製造方法。
【請求項4】
下記(i)および(ii)を満たす、ポリスチレン系樹脂押出発泡体Y:
(i)ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの厚さ方向の厚さを100%とした場合に、当該ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの少なくとも一つの表面から5%の厚さの領域に存在するセルのセル異方率が、0.60~0.80である;
ここで、前記セル異方率は、下記式で得られる値である、
前記セル異方率=(前記ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの厚さ方向のセル径)÷(前記ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの押出方向のセル径);および
(ii)前記ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの、製造1カ月後の破断時曲げたわみ量は、80mm以上である。
【請求項5】
前記ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの、製造1カ月後の圧縮弾性率は、450N/cm2以上である、請求項4に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体Y。
【請求項6】
前記ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの厚さが、10mm~50mmである、請求項4または5に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体Y。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法、およびポリスチレン系樹脂押出発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン系樹脂押出発泡体は、良好な断熱性などを有することから、主に、住宅および建築物などの断熱材(例えば、一般建築物の床材および壁材、冷凍倉庫の床材および壁材、並びに畳の芯材など)として用いられている。中でも畳の芯材としての需要は、畳の脱ワラ化および断熱化に伴い年々増加している。
【0003】
特許文献1には、厚さ断面の気泡の形状が、上下表層部においては幅方向及び/又は長手方向に引き伸ばされ、中央層においては真球状であるかあるいは厚さ方向に引き伸ばされた、スチレン系樹脂押出発泡体からなる畳床用芯材について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来技術は、ポリスチレン系樹脂押出発泡体の切削加工性および表面硬さの観点からは十分なものではなく、さらなる改善の余地があった。
【0006】
本発明の一実施形態は、前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、切削加工性および表面硬さに優れたポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法、およびポリスチレン系樹脂押出発泡体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリスチレン系樹脂押出発泡体を特定の圧縮比で圧縮することにより、切削加工性および表面硬さに優れたポリスチレン系樹脂押出発泡体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の一実施形態は、以下の構成を含むものである。
〔1〕ポリスチレン系樹脂押出発泡体Xを、圧縮比が1.03~1.18となるように圧縮する圧縮工程を有する、ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの製造方法:ここで、前記圧縮比は、下記式で得られる値である、前記圧縮比=(前記ポリスチレン系樹脂押出発泡体Xの厚さ)÷(前記ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの厚さ)。
〔2〕前記ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの厚さは、10mm~50mmである、〔1〕に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの製造方法。
〔3〕前記ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの製造方法は、ポリスチレン系樹脂を含む樹脂組成物と発泡剤とを溶融混練する溶融混練工程をさらに含み、前記発泡剤は、(a)炭素数が3~5である飽和炭化水素と、(b)水、二酸化炭素、窒素、炭素数が2~5であるアルコール、ジメチルエーテル、塩化メチル、塩化エチル、ハイドロフルオロオレフィンおよびハイドロクロロオレフィンからなる群から選択される一種以上と、を含む、〔1〕または〔2〕に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの製造方法。
〔4〕下記(i)および(ii)を満たす、ポリスチレン系樹脂押出発泡体Y:(i)ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの厚さ方向の厚さを100%とした場合に、当該ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの少なくとも一つの表面から5%の厚さの領域に存在するセルのセル異方率が、0.60~0.80である;ここで、前記セル異方率は、下記式で得られる値である、前記セル異方率=(前記ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの厚さ方向のセル径)÷(前記ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの押出方向のセル径);および(ii)前記ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの、製造1カ月後の破断時曲げたわみ量は、80mm以上である。
〔5〕前記ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの、製造1カ月後の圧縮弾性率は、450N/cm2以上である、〔4〕に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体Y。
〔6〕前記ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの厚さが、10mm~50mmである、〔4〕または〔5〕に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体Y。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、切削加工性および表面硬さに優れたポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法、およびポリスチレン系樹脂押出発泡体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0011】
〔1.本発明の技術的思想〕
上述したように、近年、断熱性に優れる畳(断熱畳)の芯材としての、ポリスチレン系樹脂押出発泡体に対する需要が増加している。
【0012】
一方、従来のポリスチレン系樹脂押出発泡体は、切削加工性の点から、改善の余地があった。例えば、ポリスチレン系樹脂押出発泡体を用いて断熱畳を作製するとき、まず、ポリスチレン系樹脂押出発泡体をワラおよびインシュレーションボードなどで積層して(挟み込んで)畳床を作製する。その後、得られた畳床を、規定される寸法に切削加工(いわゆるカマチ切断およびヒラザシ切断など)する。従来のポリスチレン系樹脂押出発泡体は、カマチ切断およびヒラザシ切断などの切削加工を施した場合、切削加工後の発泡体において、切削面の欠け、割れおよびムシレなどが散見され、すなわち切削加工性の点から、改善の余地があった。
【0013】
また、断熱畳用のポリスチレン系樹脂押出発泡体に限らず、多くの用途において、ポリスチレン系樹脂押出発泡体には表面が硬いこと(表面硬さに優れること)が望まれている。
【0014】
そこで、これらの課題に鑑み、切削加工性および表面硬さに優れたポリスチレン系樹脂押出発泡体を提供することを目的として、本発明者は鋭意検討を行った。その結果、本発明者は、以下の新規知見を独自に得、本発明を完成させるに至った:ポリスチレン系樹脂押出発泡体を特定の圧縮比で圧縮することにより、切削加工性および表面硬さに優れたポリスチレン系樹脂押出発泡体を提供できること。
【0015】
〔2.ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの製造方法〕
本発明の一実施形態に係るポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの製造方法は、ポリスチレン系樹脂押出発泡体Xを、圧縮比が1.03~1.18となるように圧縮する圧縮工程を有する。ここで、前記圧縮比は、下記式で得られる値である;
前記圧縮比=(前記ポリスチレン系樹脂押出発泡体Xの厚さ)÷(前記ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの厚さ)。
【0016】
本明細書において、「ポリスチレン系樹脂押出発泡体Y」を「押出発泡体Y」と称する場合があり、「ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの製造方法」を、「製造方法」と称する場合があり、「本発明の一実施形態に係るポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの製造方法」を、「本製造方法」と称する場合がある。
【0017】
本製造方法は、上述した構成を有するため、切削加工性および表面硬さに優れたポリスチレン系樹脂押出発泡体を提供できるという利点を有する。
【0018】
本明細書において、本発明の一実施形態に係る圧縮工程を実施する前のポリスチレン系樹脂押出発泡体を、便宜上「ポリスチレン系樹脂押出発泡体X」を称し、本発明の一実施形態に係る圧縮工程を実施後のポリスチレン系樹脂押出発泡体を、便宜上「ポリスチレン系樹脂押出発泡体Y」とも称する。すなわち、本発明の一実施形態に係る圧縮工程を実施していないこと以外(例えば、樹脂成分、添加剤および発泡剤の組成など)は、ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yと、ポリスチレン系樹脂押出発泡体Xとは、相違しない。以下、「ポリスチレン系樹脂押出発泡体Y」の各態様について説明するが、以下の記載は、以下の記載中の「ポリスチレン系樹脂押出発泡体Y」を「ポリスチレン系樹脂押出発泡体X」に適宜読み替えて、「ポリスチレン系樹脂押出発泡体X」の各態様についての説明としてもよい。
【0019】
本発明の一実施形態において、ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yは、直方体で有り得る。
【0020】
本明細書において、ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yについて、樹脂組成物が押出機から押し出される方向を「押出方向」とする。本明細書において、ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの押出方向に垂直な方向のうち、ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの長さ(サイズ)が短い方を「厚さ方向」とし、長い方を「幅方向」とする。ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yが直方体である場合、通常、ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの押出方向および幅方向は水平方向で有り得、ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの厚さ方向は鉛直方向で有り得る。
【0021】
本明細書において、圧縮工程において、圧縮方向に垂直な面を「表面」と称する場合も有る。ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yが直方体である場合、表面は、ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの厚さ方向に垂直な面で有り得る。また、ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yが直方体である場合、ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yは、表面を2面有する。
【0022】
本明細書において、ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yについて、ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの「厚さ方向の長さ(厚さ)を100%とした場合に、ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの表面から5%の厚さの領域」を、ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの「表層」と称する場合がある。
【0023】
本明細書において、ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yのセル径のうち、厚さ方向のセル径をHDと称し、押出方向のセル径をMDと称し、幅方向のセル径をTDと称する。
【0024】
本製造方法は、ポリスチレン系樹脂を含む樹脂組成物と発泡剤とを溶融混練する溶融混練工程をさらに含むことが好ましい。溶融混練工程については、後に詳説する。
【0025】
(2-1.ポリスチレン系樹脂)
本発明の一実施形態において、ポリスチレン系樹脂としては、スチレン系単量体に由来する構成単位を有する樹脂を含む限り、特に限定されない。スチレン系単量体としては、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレンなどが好適に挙げられる。スチレン系単量体に由来する構成単位を有する樹脂としては、(a)1種のスチレン系単量体を重合してなる、スチレン系単量体の単独重合体、または(b)2種以上のスチレン系単量体を重合してなる、スチレン系単量体の共重合体、が挙げられる。スチレン系単量体の単独重合体およびスチレン系単量体の共重合体、すなわちスチレン系単量体に由来する構成単位のみを有する樹脂を、ポリスチレン樹脂と称する場合もある。
【0026】
本明細書において、「スチレン系単量体と共重合可能なスチレン系単量体以外の単量体」を、以下「単量体A」と称する場合もある。単量体Aとしては、ジビニルベンゼン、ブタジエン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが好適に挙げられる。スチレン系単量体に由来する構成単位を有する樹脂は、1種以上のスチレン系単量体と1種以上の単量体Aとを重合してなる、スチレン系単量体と単量体Aとの共重合体であってもよい。
【0027】
ポリスチレン系樹脂は、スチレン系単量体に由来する構成単位を有する樹脂に加えて、スチレン系単量体に由来する構成単位を有する樹脂以外の樹脂を含んでいてもよく、スチレン系単量体に由来する構成単位を有する樹脂と他の樹脂とのブレンド物であってもよい。他の樹脂としては、(a)1種の単量体Aを重合してなる、単量体Aの単独重合体、(b)2種以上の単量体Aを重合してなる、単量体Aの共重合体、(c)ジエン系ゴム強化ポリスチレン、および(d)アクリル系ゴム強化ポリスチレンなどが好適に挙げられる。ポリスチレン系樹脂は、(a)スチレン系単量体に由来する構成単位を有する樹脂と、(b)単量体Aの単独重合体、単量体Aの共重合体、ジエン系ゴム強化ポリスチレンおよび/またはアクリル系ゴム強化ポリスチレンと、のブレンド物であってもよい。
【0028】
ポリスチレン系樹脂は、ポリスチレン系樹脂100重量部中、スチレン系単量体に由来する構成単位を有する樹脂を、50重量部以上含むことが好ましく、60重量部以上含むことがより好ましく、70重量部以上含むことがより好ましく、80重量部以上含むことがより好ましく、90重量部以上含むことがさらに好ましく、95重量部以上含むことが特に好ましい。
【0029】
ポリスチレン系樹脂は、メルトフローレート(以下、MFRとも称する。)、ポリスチレン系樹脂を含む樹脂組成物を成形加工するときの溶融粘度および溶融張力などを調整する目的で、分岐構造を有するポリスチレン系樹脂であってもよい。換言すれば、上述した、スチレン系単量体に由来する構成単位を有する樹脂および/または他の樹脂は、分岐構造を有していてもよい。
【0030】
経済性および加工性に優れる観点から、ポリスチレン系樹脂としてはポリスチレン樹脂が好ましい。耐熱性に優れる押出発泡体Yが得られる観点から、ポリスチレン系樹脂としては、(a)スチレン/アクリロニトリル共重合体、(b)1種以上のスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸との共重合体、および(c)無水マレイン酸変性ポリスチレン(1種以上のスチレン系単量体と無水マレイン酸との共重合体)が好適に挙げられる。耐衝撃性に優れる押出発泡体Yが得られる観点から、ポリスチレン系樹脂としては、(a)スチレン系単量体に由来する構成単位を有する樹脂と、(b)ジエン系ゴム強化ポリスチレンおよび/またはアクリル系ゴム強化ポリスチレンなどのゴム強化ポリスチレンと、のブレンド物が好適に挙げられる。上述したポリスチレン系樹脂は、1種を単独で使用してもよい。共重合成分、分子量および分子量分布、分岐構造、MFRなどが異なる、2種以上の上述したポリスチレン系樹脂を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
ポリスチレン系樹脂は、MFRが0.5g/10分~25.0g/10分であることが好ましい。当該構成によると、押出発泡体Yを製造するとき、(a)ポリスチレン系樹脂を含む樹脂組成物(例えば、樹脂溶融物)の成形加工性が良好であり、(b)当該樹脂組成物の吐出量を所望の値に調整しやすく、かつ(c)当該樹脂組成物の発泡性が良好であるという利点を有する。その結果、ポリスチレン系樹脂のMFRが0.5g/10分~25.0g/10分である場合、(a)外観などに優れ、かつ(b)圧縮強度、曲げ強度および破断時曲げたわみ量などの機械的強度と、靱性などの特性と、のバランスに優れる押出発泡体Yを得ることができる。なお、本明細書において、樹脂組成物を用いた押出発泡体Yの製造における、得られる押出発泡体Yの厚さ、幅、密度、独立気泡率および/または表面品質などの所望の値への調整のし易さの程度を、「樹脂組成物の発泡性」とも称する。本明細書において、樹脂組成物を用いて押出発泡体Yを製造するとき、得られる押出発泡体Yの厚さ、幅、密度、独立気泡率および/または表面品質などを所望の値へ調整し易いほど、樹脂組成物の発泡性が良好である、といえる。
【0032】
ポリスチレン系樹脂は、MFRが1.0g/10分~12.0g/10分であることがより好ましい。当該構成によると、押出発泡体Yを製造するとき、(a)ポリスチレン系樹脂を含む樹脂組成物を押出機内で溶融混練するときに発生するせん断発熱量が小さく、(b)当該樹脂組成物の成形加工性に優れ、かつ(c)当該樹脂組成物の発泡性に対する、機械的強度および/または靱性などのバランスに優れる、という利点を有する。本明細書において、ポリスチレン系樹脂のMFRは、JIS K7210のA法(試験温度200℃、公称荷重5.00kg)で、測定して得られる値である。
【0033】
(2-2.臭素系難燃剤)
樹脂組成物は、臭素系難燃剤を含むことが好ましい。当該構成によると、製造方法は、難燃性に優れる押出発泡体Yを提供できる。押出発泡体Yは、JIS A9511に規定される燃焼性の測定方法Aに合格することが好ましい。
【0034】
臭素系難燃剤としては、臭素化スチレン/ブタジエンブロック共重合体のような臭素含有脂肪族重合体、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピル)エーテル、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモプロピル)エーテルおよびトリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレートなどが好適に挙げられる。これら臭素系難燃剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
臭素系難燃剤としては、上述した臭素系難燃剤のうち、(a)テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピル)エーテル、およびテトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモプロピル)エーテルからなる混合臭素系難燃剤、並びに/または(b)臭素化スチレン/ブタジエンブロック共重合体がより好ましい。当該構成によると、(a)押出発泡体Yを製造するときの樹脂組成物の押出運転が良好であり、および(b)耐熱性に優れる押出発泡体Yを得ることができる、など利点を有する。
【0036】
樹脂組成物における臭素系難燃剤の含有量は、ポリスチレン系樹脂100重量部に対して、1.0重量部~6.0重量部であることが好ましい。当該構成によると、得られる押出発泡体Yは、(a)JIS A9511に規定される燃焼性の測定方法Aに合格し、かつ(b)押出発泡体Yを製造するとき、押出機内におけるポリスチレン系樹脂の熱安定性を維持できる、という利点を有する。
【0037】
樹脂組成物における臭素系難燃剤の含有量が、ポリスチレン系樹脂100重量部に対して、(a)1.0重量部以上である場合、製造方法は、難燃性などの諸特性が良好である押出発泡体Yを提供できる、という利点を有し、(b)6.0重量部以下である場合、製造時の安定性が良好となり、製造方法は、表面品質に優れる押出発泡体Yを得ることができる、という利点を有する。
【0038】
(2-3.発泡剤)
押出発泡体Yは、さらに発泡剤を含んでいてもよい。換言すれば、押出発泡体Yは、当該押出発泡体Yの製造で使用された発泡剤が残存していてもよい。発泡剤は、押出発泡体Yの断熱性に寄与し得る。それゆえ、押出発泡体Yがさらに発泡剤を含む場合、当該押出発泡体Yはより断熱性に優れる、という利点を有する。
【0039】
発泡剤としては特に限定されない。寸法安定性および断熱性に優れることから、発泡剤は、炭素数が3~5である飽和炭化水素を含むことが好ましい。発泡剤は、(a)炭素数が3~5である飽和炭化水素と、(b)水、二酸化炭素、窒素、炭素数が2~5であるアルコール、ジメチルエーテル、塩化メチル、塩化エチル、ハイドロフルオロオレフィンおよびハイドロクロロオレフィンからなる群から選択される一種以上と、を含むことがより好ましく、当該群からから選択される一種以上である(一種以上のみから構成される)ことがより好ましい。当該構成によると、炭素数3~5である飽和炭化水素を多く使用する必要が無い。その結果、寸法安定性および断熱性に優れるという利点を有するとともに、燃焼性が低くなる(難燃性が向上する)こと、および/または発泡剤(ガス)の分散不良が発生しにくいこと、という利点を有する。
【0040】
炭素数が3~5である飽和炭化水素としては、例えば、プロパン、n-ブタン、i-ブタン(以下、「イソブタン」とも称する。)、n-ペンタン、i-ペンタン、ネオペンタンなどが挙げられる。これらの炭素数が3~5である飽和炭化水素のなかでは、(a)発泡性に優れることから、プロパン、n-ブタンおよびi-ブタンからなる群から選択される少なくとも一種以上が好ましい。
【0041】
発泡剤は、(a)プロパン、n-ブタンおよびi-ブタンからなる群から選択される一種以上と、(b)水、二酸化炭素、窒素、炭素数が2~5であるアルコール、ジメチルエーテル、塩化メチル、塩化エチル、ハイドロフルオロオレフィンおよびハイドロクロロオレフィンからなる群から選択される少なくとも一種以上と、を含むことがより好ましく、当該群からから選択される一種以上である(一種以上のみから構成される)ことがより好ましい。
【0042】
本製造方法において、発泡剤の使用量は特に限定されない。発泡剤の使用量は、例えば、ポリスチレン系樹脂100重量部に対して、2重量部~20重量部が好ましく、4重量部~10重量部がより好ましい。発泡剤の使用量がポリスチレン系樹脂100重量部に対して、(a)2重量部以上である場合、発泡倍率が高くなり、押出発泡体Yとしての軽量、断熱などの特性が発揮され易い傾向があり、(b)20重量部以下である場合、発泡剤量が過剰とならないため、押出発泡体Y中にボイドなどの不良を生じる虞がないという利点を有する。
【0043】
本製造方法において、発泡剤として、炭素数が3~5である飽和炭化水素と共に、水、および/またはアルコールを使用する場合について説明する。この場合、本製造方法において、安定して押出発泡成形を行うために、吸水性物質を使用することが好ましく、換言すれば樹脂組成物は吸水性物質を含むことが好ましい。
【0044】
吸水性物質としては、(a)ポリアクリル酸塩系重合体、澱粉/アクリル酸グラフト共重合体、ポリビニルアルコール系重合体、ビニルアルコール/アクリル酸塩系共重合体、エチレン/ビニルアルコール系共重合体、アクリロニトリル/メタクリル酸メチル/ブタジエン系共重合体およびポリエチレンオキシド系共重合体、並びにこれらの誘導体などの吸水性高分子、(b)表面に水酸基を有する体積平均粒子径1000nm以下の微粉末、(c)スメクタイトおよび膨潤性フッ素雲母などの吸水性または水膨潤性の層状珪酸塩、並びにこれらの有機化処理品、(d)ゼオライト、活性炭、アルミナ、シリカ、シリカゲル、多孔質ガラス、活性白土、けい藻土、ベントナイトなどの多孔性物質、などが挙げられる。表面に水酸基を有する体積平均粒子径1000nm以下の微粉末としては、表面にシラノール基を有する無水シリカ(酸化ケイ素)などが挙げられ、例えば、日本アエロジル(株)製のAEROSILなどの市販を使用してもよい。
【0045】
樹脂組成物における吸水性物質の含有量は、水の使用量などによって、適宜調整され得る。樹脂組成物における吸水性物質の含有量は、ポリスチレン系樹脂100重量部に対して、0.01重量部~5重量部が好ましく、0.1重量部~3重量部がより好ましい。
【0046】
(2-4.その他添加剤)
本製造方法では、本発明の一実施形態に係る効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、上述した成分以外のその他添加剤を使用してもよい。換言すれば、樹脂組成物は、その他添加剤を含有していてもよい。その他添加剤としては、輻射伝熱抑制剤、顔料などの着色剤、加工助剤、上述した臭素系難燃剤以外の難燃剤、難燃助剤、ラジカル発生剤、安定剤、気泡径調整剤、可塑剤、酸化防止剤および帯電防止剤などが挙げられる。
【0047】
輻射伝熱抑制剤としては、(a)黒鉛およびカーボンブラックなどの炭素微粒子、(b)アルミニウムなどの金属粉、(c)酸化チタン、酸化亜鉛および酸化アルミニウムなどの金属酸化物、並びに(e)硫酸バリウムなどの白色微粒子、が挙げられる。
【0048】
加工助剤としては特に限定されないが、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、流動パラフィン、オレフィン系ワックスなどが挙げられる。脂肪酸金属塩としては特に限定されないが、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウムなどが挙げられる。
【0049】
樹脂組成物が難燃助剤をさらに含む場合、製造方法は、難燃性に優れる押出発泡体Yを提供できる。難燃助剤としては特に限定されないが、リン酸エステルおよびホスフィンオキシドなどのリン系難燃剤などが挙げられる。リン酸エステルとしては、トリフェニルホスフェート、トリス(トリブチルブロモネオペンチル)ホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシリレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、および縮合リン酸エステルなどが挙げられる。リン酸エステルとしては、トリフェニルホフェートおよびトリス(トリブチルブロモネオペンチル)ホスフェートが好ましい。ホスフィンオキシドとしては、トリフェニルホスフィンオキシドが好適に挙げられる。これらのリン系難燃剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0050】
樹脂組成物がラジカル発生剤をさらに含む場合、製造方法は、難燃性に優れる押出発泡体Yを提供できる。ラジカル発生剤としては特に限定されないが、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、ポリ-1,4-ジイソプロピルベンゼン、2,3-ジエチル-2,3-ジフェニルブタン、3,4-ジメチル-3,4-ジフェニルヘキサン、3,4-ジエチル-3,4-ジフェニルヘキサン、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、2,4-ジフェニル-4-エチル-1-ペンテンなどが挙げられる。ラジカル発生剤としては、ジクミルパーオキサイドの様な過酸化物も挙げられる。ラジカル発生剤としては、樹脂組成物の加工温度条件にて、安定である物質が好ましく、例えば、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタンおよびポリ-1,4-ジイソプロピルベンゼンが好ましい。
【0051】
安定剤は、難燃剤の分解を低減することができる。樹脂組成物が安定剤をさらに含む場合、製造方法は、難燃性および/または熱安定性に優れる押出発泡体Yを提供できる、という利点を有する。安定剤としては特に限定されないが、難燃性および熱安定性に優れる押出発泡体Yを提供できることから、エポキシ化合物、多価アルコールエステル、フェノール系安定剤およびホスファイト系安定剤などが好適に挙げられる。エポキシ化合物としては、ビスフェノールA-グリシジルエーテル、クレゾールノボラック、フェノールノボラックなどが挙げられる。多価アルコールエステルは、(a)ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールおよびトリペンタエリスリトールなどの多価アルコールと、(b)(b-1)酢酸およびプロピオン酸などの一価のカルボン酸、または、(b-2)アジピン酸およびグルタミン酸などの二価のカルボン酸、との反応物(エステル)である。多価アルコールエステルは、分子中に一個以上の水酸基を持つエステルの混合物であり得、原料の多価アルコールを少量含有することもあり得る。多価アルコールエステルとして、具体的には、ジペンタエリスリトールとアジピン酸との反応混合物(ジペンタエリスリトール/アジピン酸反応混合物)が好適に挙げられる。フェノール系安定剤としては、トリエチレングリコール-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、およびオクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナートなどが挙げられる。ホスファイト系安定剤としては、3,9-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、およびテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイトなどが挙げられる。
【0052】
気泡径調整剤としては、タルクなどが挙げられる。
【0053】
(2-5.溶融混練工程)
溶融混練工程は、ポリスチレン系樹脂を含む樹脂組成物と発泡剤とを含む溶融混練物を調製する工程、ともいえる。
【0054】
溶融混練工程では、最終的に、樹脂組成物と発泡剤とを含む溶融混練物が得られれば良く、具体的な態様は特に限定されない。
【0055】
溶融混練工程は、例えば、以下のような態様であってもよい:
(態様1)ポリスチレン系樹脂、並びに任意で臭素系難燃剤および/またはその他添加剤などとを混合(例えばドライブレンド)し、樹脂組成物を得る。その後、得られた樹脂組成物を加熱し、溶融混練し、樹脂組成物の溶融混練物を得る。その後、得られた溶融混練物に高圧条件下にて発泡剤を添加し、樹脂組成物と発泡剤とを含む溶融混練物を得る。
(態様2)ポリスチレン系樹脂を加熱し、溶融混練し、ポリスチレン系樹脂の溶融混練物を得る。その後、得られた溶融混練物に、任意で、臭素系難燃剤および/またはその他添加剤などを添加し、樹脂組成物の溶融混練物を得る。次いで、さらに、高圧条件下にて溶融混練物に発泡剤を添加し、樹脂組成物と発泡剤とを含む溶融混練物を得る。
(態様3)ポリスチレン系樹脂、並びに任意で臭素系難燃剤および/またはその他添加剤などとを混合(例えばドライブレンド)し、樹脂組成物を得る。その後、得られた樹脂組成物を加熱し、溶融混練し、樹脂組成物の溶融混練物を得る。その後、得られた溶融混練物を押出機に供給した後、当該溶融混練物を再度加熱し、溶融混練するとともに、当該溶融混練物に任意の段階で高圧条件下にて発泡剤を添加し、樹脂組成物と発泡剤とを含む溶融混練物を得る。
【0056】
ポリスチレン系樹脂、樹脂組成物または溶融混練物を加熱し溶融混練するときの加熱温度、溶融混練時間、加熱溶融部および溶融混練部については、特に限定されない。
【0057】
ポリスチレン系樹脂、樹脂組成物または流動ゲルを加熱し溶融混練するときの加熱温度は、加熱溶融部における加熱温度ともいえる。加熱温度としては、使用するポリスチレン系樹脂が溶融する温度以上であればよい。加熱温度は、臭素系難燃剤などの影響も含め、ポリスチレン系樹脂の分子劣化ができる限り抑制される温度が好ましい。当該加熱温度は、例えば160℃~240℃が好ましく、160℃~230℃がより好ましい。
【0058】
前記溶融混練時間は、単位時間当たりの樹脂組成物(溶融混練物)の押出量、並びに/または、加熱溶融部および溶融混練部として用いられる押出機の種類により異なるため、一義的に規定することはできない。溶融混練時間は、ポリスチレン系樹脂並びに任意で使用される臭素系難燃剤およびその他の添加剤を含む樹脂組成物と発泡剤とが均一に分散混合した溶融混練物を得るために必要な時間を考慮して、適宜設定され得る。
【0059】
加熱溶融部および溶融混練部は同じであってもよい。すなわち、一つの装置を用いて、樹脂組成物を加熱し、溶融混練してもよい。加熱溶融部および溶融混練部としては、例えばスクリュー型の押出機などが挙げられるが、通常の押出発泡に用いられる装置であれば特に制限されない。
【0060】
本製造方法は、溶融混練工程で得られた、樹脂組成物と発泡剤とを含む溶融混練物を冷却する、冷却工程をさらに有していてもよい。
【0061】
冷却工程では、溶融混練物を、例えば押出発泡に適する温度、まで冷却することが好ましい。
【0062】
溶融混練工程で得られた溶融混練物、または冷却工程を経て得られた溶融混練物を、例えばダイを通して、装置(例えば押出機)内の圧力よりも低圧の領域下へ押出すことにより、当該溶融混練物を発泡させ、押出発泡体Xを得ることができる。
【0063】
装置(例えば、押出機)から押出された樹脂組成物(溶融混練物)の発泡成形方法としては、特に限定されないが、例えば、次の(i)および(ii)の順で成形する方法が挙げられる:
(i)押出成形用に使用される、開口部が直線のスリット形状を有するスリットダイを通じて、高圧領域(装置内)から低圧領域下へ樹脂組成物を押出すことにより、押出発泡体を得る;並びに
(ii)得られた押出発泡体を、(a)スリットダイと密着または接して設置された成形金型、および(b)当該成形金型の下流側に隣接して設置された成形ロール、などを用いて、所望の形状(例えば断面積の大きい板状)の押出発泡体に成形する。成形金型の流動面形状の調整および金型温度の調整によって、所望の断面形状、表面品質および品質を有する押出発泡体を得ることができる。このようにして得られた押出発泡体を所望の形状に切断して、得られた押出発泡体を、押出発泡体Xとすることができる。
【0064】
(2-6.圧縮工程)
圧縮工程は、押出発泡体Xを、圧縮比が1.03~1.18となるように圧縮する工程である。本明細書において、圧縮比は、下記式で得られる値である;
圧縮比=(押出発泡体Xの厚さ)÷(押出発泡体Yの厚さ)。
【0065】
前記圧縮比は、1.04~1.15が好ましく、1.06~1.10が特に好ましい。当該構成によると、得られる押出発泡体Yが切削加工性および表面硬さにより優れるという利点を有する。
【0066】
押出発泡体Xを圧縮するために用いる装置としては、特に限定されず、例えば、圧縮ロールおよびプレス機等を挙げることができる。
【0067】
押出発泡体Xの圧縮方向としては、特に限定されない。本発明者は、鋭意検討の結果、圧縮工程を経て得られた押出発泡体Yにおいて、圧縮方向に垂直な面(すなわち表面)が、驚くべきことに、切削加工性に優れるという特性を有するという新規知見を独自に得た。すなわち、押出発泡体Yの、圧縮方向に垂直な面(表面)の切削加工において、切削面の欠け、割れおよびムシレなどが低減されるという利点が発揮され得る。そのため、圧縮工程における圧縮方向は、得られる押出発泡体Yの使用方法によって適宜選択され得る。例えば、押出発泡体Yを断熱畳用の芯材として利用する場合には、圧縮方向は押出発泡体(押出発泡体X)の厚さ方向である。
【0068】
押出発泡体Xを圧縮する際の、力および時間などは、特に限定されず、前記圧縮比が所望の値となるように適宜設定され得る。
【0069】
〔3.ポリスチレン系樹脂押出発泡体Y〕
本製造方法、すなわち前記〔2.ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの製造方法〕の項に記載の製造方法により得られるポリスチレン系樹脂押出発泡体Yもまた、本発明の一実施形態である。
【0070】
「本発明の一実施形態に係るポリスチレン系樹脂押出発泡体Y」を、「本押出発泡体Y」と称する場合も有る。
【0071】
本押出発泡体Yは、本製造方法により製造されるため、切削加工性および表面硬さに優れるという利点を有する。
【0072】
(セル異方率)
本押出発泡体Yは、当該押出発泡体Yの厚さ方向の厚さ(長さ)を100%とした場合に、当該押出発泡体Yの少なくとも一つの表面から5%の厚さの領域に存在するセルのセル異方率が、0.60~0.80であり得る。換言すれば、本押出発泡体Yは、当該押出発泡体Yの表層に存在するセルのセル異方率が、0.60~0.80であり得る。
【0073】
本明細書において、「セル異方率」とは、下記式で得られる値である;
セル異方率=(押出発泡体Yの厚さ方向のセル径(HD))÷(押出発泡体Yの押出方向のセル径(MD))=HD/MD。
【0074】
なお、本発明の一実施形態において上述した圧縮工程を実施することにより、押出発泡体Yの表層のセル異方率を0.60~0.80とすることができる、と推測され得る。また、圧縮工程の実施後の押出発泡体Yの表層のセル異方率は、製造直後(換言すれば、圧縮工程実施直後)から長期間経過後もほぼ変化しないと推測され得る。それ故、製造直後から一定期間(例えば、一カ月後および三カ月後など)経過後の押出発泡体Yの表層のセル異方率は、製造直後直後の押出発泡体Yの表層のセル異方率と同程度と見做すことができる。
【0075】
本押出発泡体Yは、表層のセル異方率が、0.60~0.75が好ましく、0.60~0.70が特に好ましい。当該構成によると、切削加工性および表面硬さの両立により優れるという利点を有する。
【0076】
(平均気泡径)
本押出発泡体Yの押出発泡体Yの表層の平均HDは特に限定されない。押出発泡体Yの表層の平均HDは、例えば、0.15mm~0.45mmが好ましく、0.25mm~0.40mmが特に好ましい。当該構成によると、成形性および寸法安定性が良好となり、圧縮工程における圧縮の効果(圧縮により表層のセル異方率が所望の範囲内となる効果)を得られやすいという利点を有する。
【0077】
本押出発泡体Yの押出発泡体Yの表層の平均MDは特に限定されない。押出発泡体Yの表層の平均MDは、0.15mm~0.50mmが好ましく、0.30mm~0.45mmが特に好ましい。当該構成によると、成形性および寸法安定性が良好となるという利点を有する。
【0078】
本押出発泡体Yの押出発泡体Yの表層の平均TD(幅方向のセル径)は特に限定されない。押出発泡体Yの表層の平均TDは、0.15mm~0.45mmが好ましく、0.25mm~0.40mmが特に好ましい。当該構成によると、成形性および寸法安定性が良好となるという利点を有する。
【0079】
(破断時曲げたわみ量)
本押出発泡体Yの、製造1カ月後の破断時曲げたわみ量は、80mm以上であることが好ましい。押出発泡体Yの破断時曲げたわみ量は、押出発泡体Yの製造直後から時間経過とともに低下し得るが、製造から1カ月経過後は、ほとんど変化しないと見做すことができる。そのため、押出発泡体Yの製造1カ月後の破断時曲げたわみ量は、製造から少なくとも1カ月が経過した押出発泡体Yを測定して得られた破断時曲げたわみ量、ともいえる。破断時曲げたわみ量の測定方法については、下記の実施例にて詳説する。
【0080】
本押出発泡体Yの、製造1カ月後の破断時曲げたわみ量は、80mm以上であることが好ましく、85mm以上であることがさらに好ましく、95mm以上であることが特に好ましい。当該構成によると、切削加工性により優れるという利点を有する。
【0081】
(圧縮弾性率)
本押出発泡体Yの、製造1カ月後の圧縮弾性率は、300N/cm2以上であることが好ましい。押出発泡体Yの圧縮弾性率は、押出発泡体Yの製造直後から時間経過とともに低下し得るが、製造から1カ月経過後は、ほとんど変化しないと見做すことができる。そのため、押出発泡体Yの製造1カ月後の圧縮弾性率は、製造から少なくとも1カ月が経過した押出発泡体Yを測定して得られた圧縮弾性率、ともいえる。圧縮弾性率の測定方法については、下記の実施例にて詳説する。
【0082】
本押出発泡体Yの、製造1カ月後の圧縮弾性率は、300N/cm2以上であることが好ましく、400N/cm2以上であることがより好ましく、450N/cm2以上であることがさらに好ましく、600N/cm2以上であることが特に好ましい。当該構成によると、表面硬さにより優れるという利点を有する。本押出発泡体Yの、製造1カ月後の圧縮弾性率の上限は特に限定されないが、例えば、1000N/cm2以下である。
【0083】
(厚さ)
押出発泡体Yの厚さは、特に制限されず、用途に応じて適宜選択される。なお、本(厚さ)の項目で述べる厚さは、圧縮工程を実施する前のポリスチレン系樹脂押出発泡体Xの厚さではなく、圧縮工程を実施した後の本発明の一実施形態に係るポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの厚さを意図する。押出発泡体Yの厚さは、例えば、10mm~50mmであることが好ましい。厚さが10mm~50mmである押出発泡体Yは、断熱畳用の芯材の用途に好適に利用できる。
【0084】
本明細書において、押出発泡体Yの厚さは、押出発泡体Yの幅方向の両端から50mmの点(2点)と幅方向の中央部との合計3点の厚さをノギス等で測定し、得られた3点の厚さの相加平均値とする。
【0085】
(見かけ密度)
本押出発泡体Yの見かけ密度は、20kg/m3~50kg/m3が好ましく、25kg/m3~35kg/m3がさらに好ましく、27kg/m3~32kg/m3が特に好ましい。当該構成によると、押出発泡体Yの軽量化と優れた強度とのバランスに優れる(これらを両立できる)という利点を有する。押出発泡体Yの見かけ密度は、JIS K7222に基づく方法で測定される。
【0086】
(平面圧縮強度)
本押出発泡体Yは、圧縮強度(例えば、平面圧縮強度)に優れるという利点も有する。本押出発泡体Yの平面圧縮強度は、25.0N/cm2以上であることが好ましく、30.0N/cm2以上であることがさらに好ましく、35.0N/cm2以上であることが特に好ましい。当該構成によると、押出発泡体Yが強度に優れるという利点を有する。本押出発泡体Yの、平面圧縮強度の上限は特に限定されないが、例えば、50N/cm2以下である。平面圧縮強度の測定方法については、下記の実施例にて詳説する。
【実施例0087】
以下に実施例によって本発明の一実施形態をより詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら制限されるものではない。
【0088】
(原料)
●ポリスチレン系樹脂
・ポリスチレン系樹脂[PSジャパン(株)製、G9401;MFR2.2g/10分]
●臭素系難燃剤
・臭素化スチレンブタジエンブロックポリマー[ケムチュラ製、EMERALD INNOVATION 3000、臭素含有率65wt%]
●吸水性物質
・ベントナイト[(株)BYK製、ベントライトL]
・シリカ[エボニックデグサジャパン(株)製、カープレックスBS-304F]
●その他添加剤
<難燃助剤>
・トリフェニルホスフィンオキシド[住友商事ケミカル]
<安定剤>
・ビスフェノール-A-グリシジルエーテル[(株)ADEKA製、EP-13]
・トリエチレングリコール-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート[Songwon Japan(株)製、ソンノックス2450FF]
・ジペンタエリスリトール/アジピン酸反応混合物[味の素ファインテクノ(株)製、プレンライザーST210]
<加工助剤>
・ステアリン酸カルシウム[堺化学工業(株)製、SC-P]
<気泡径調整剤>
・タルク[林化成(株)製、PHK-400]
●発泡剤
・無臭ブタン [岩谷産業(株)製](i-ブタン(約30重量%)とn-ブタン(約70重量%)との混合物(合計100重量%))
・ジメチルエーテル [岩谷産業(株)製]
・水 [水道水]。
【0089】
(測定方法)
〔表層のセル異方率(HD/MD)〕
製造から1カ月経過した時点の押出発泡体XもしくはY、または製造から3カ月経過した時点の押出発泡体XもしくはYを試料として、以下の方法で、表層のセル異方率(HD/MD)を測定した。
【0090】
各実施例および比較例にて得られた、ポリスチレン系樹脂押出発泡体XもしくはYの幅方向端部側面の、押出発泡体XもしくはYの表面から厚さ方向に全厚さに対して5%の部分について、ASTM D-3576に準じて、マイクロスコープ[(株)KEYENCE製、DIGITAL MICROSCOPE VHX-900]を用いて、100倍に拡大した画像を撮影した。
【0091】
次に、得られた画像において、任意の位置で100mmの長さの直線を垂直方向および水平方向に描いた。得られた各画像において、垂直方および水平方向に描いた当該長さ100mmの直線上にある気泡の個数を数え、次式により、垂直方向および水平方向のポリスチレン系樹脂押出発泡体XもしくはYの気泡の平均弦長(t)を算出した。
垂直方向の平均弦長t(μm)=100/(垂直方向の気泡数×画像の拡大倍数)
水平方向の平均弦長M(μm)=100/(水平方向の気泡数×画像の拡大倍数)
次に、下記式により、ポリスチレン系樹脂押出発泡体XもしくはYの気泡の垂直方向の気泡径(HD)およびポリスチレン系樹脂押出発泡体XもしくはYの気泡の水平方向の気泡径(MD)を算出した。
気泡径HD(μm)=t/0.616
気泡径MD(μm)=M/0.616
スチレン系樹脂押出発泡体Yの表層のセル異方率は、以下の式より算出した。
表層のセル異方率=HD/MD
〔破断時曲げたわみ量〕
破断時曲げたわみ量は、製造から1カ月経過した時点の押出発泡体XもしくはYを試料として、JIS A 9521並びにJIS K 7221-1に準拠して測定した。
【0092】
〔平面圧縮強度〕
平面圧縮強度は、JIS K7220に準拠して測定した。
【0093】
〔切削加工性〕
切削加工性の評価は、前記の方法により得られた、製造から1カ月経過した時点の押出発泡体XもしくはY押出発泡体XもしくはYを250×150×25mmの大きさに加工して得られた発泡体を試料として行った。かかる発泡体の長辺を切削代50mm、切削スピード500mm/分、切削刃の挿入角度45℃で汎用の包丁刃にて切削した際の切削面、コーナー部の欠けの状態を観察し、下記の基準により3段階評価した。
◎(良好):切削面にムシレ、ササクレなどがなくコーナー部に欠けが発生しない。
○(可):切削面にややムシレ、ササクレがあるがコーナー部の欠けは発生しない。
×(不可):切削面のムシレ、ササクレがありコーナー部に欠けが発生する。
【0094】
〔製造1カ月後の圧縮弾性率〕
圧縮弾性率は、製造から1カ月経過した時点の押出発泡体XもしくはYを試料として、JIS A 9521並びにJIS K 7220に準拠して測定した。
【0095】
〔表面硬さ〕
上述した方法で得られた圧縮弾性率に基づき、以下の基準で表面硬さを評価した。
○(良好):製造1カ月後の圧縮弾性率が300N/cm2以上である。
×(不良):製造1カ月後の圧縮弾性率が300N/cm2未満である。
【0096】
(実施例1)
[樹脂組成物の作製]
(a)スチレン系樹脂100重量部、(b)難燃剤として前記混合臭素系難燃剤3.0重量部、(c)難燃助剤としてトリフェニルホスフィンオキシド1.0重量部、(d)安定剤として、多価アルコールエステルであるジペンタエリスリトール/アジピン酸反応混合物(プレンライザーST210)0.1重量部、ビスフェノール-A-グリシジルエーテル0.2重量部およびトリエチレングリコール-ビス-3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート0.2重量部、(e)気泡径調整剤として、タルク1.0重量部、(f)加工助剤としてステアリン酸カルシウム0.2重量部、並びに(g)吸水性物質として、ベントナイト0.4重量部およびシリカ0.4重量部をドライブレンドし、樹脂組成物を作製した。
【0097】
[押出発泡体の作製]
口径150mmの単軸押出機(第一押出機)、口径200mmの単軸押出機(第二押出機)および冷却機をこの順に直列に連結した押出装置の第一押出機内へ、得られた樹脂組成物を、約800kg/時で供給した。
【0098】
第一押出機に供給した樹脂組成物を、樹脂温度230℃に加熱して溶融混練し、溶融混練物を得た。次に、発泡剤として、ポリスチレン系樹脂100重量部に対して、無臭ブタン3.5重量部、ジメチルエーテル3.0重量部および水0.7重量部を、第一押出機の出口付近で溶融混練物中に圧入した。その後、第一押出機に連結された第二押出機及び冷却機中にて、溶融混練物の温度(樹脂温度)を約123℃まで冷却した。
【0099】
次に、冷却機先端に設けた厚さ2mm×幅400mmの長方形断面の口金より大気中へ溶融混練物を押出し、発泡させた後、口金に密着させて設置した成形金型とその下流側に設置した成形ロールにより、厚さ約35mm×幅1000mmである長方形断面形状(直方体状の板状)の押出発泡体を得た。得られた押出発泡体をカッターにて厚さ26.5mm×幅910mm×長さ1820mmにカットし、得られた押出発泡体を押出発泡体Xとした。得られた押出発泡体Xを、圧縮ロールにて厚さ25mmまで圧縮した。すなわち、押出発泡体Xに対して圧縮比が1.06となるように圧縮工程を実施した。得られた押出発泡体Yについて上述した各測定および評価を行った。得られたポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの各種測定結果および評価結果を表1に示す。
【0100】
(実施例2~5、比較例4)
成形ロールにより成形して得られる押出発泡体(カッターで切断前の押出発泡体)の厚さを最終的に所望する押出発泡体Yの厚さ+約10mm程度に変更し、かつ、押出発泡体Xの厚さ、圧縮比、および圧縮工程実施後の押出発泡体Yの厚さのそれぞれを表1に記載のように変更したこと以外は、実施例1と同じ方法により、ポリスチレン系樹脂押出発泡体Yを得た。得られたポリスチレン系樹脂押出発泡体Yの各種測定結果および評価結果を表1に示す。
【0101】
(比較例1、3)
成形ロールにより成形して得られる押出発泡体(カッターで切断前の押出発泡体)の厚さを押出発泡体Xの厚さ+約10mm程度に変更し、押出発泡体Xの厚さを表1に記載のように変更した以外は、実施例1と同じ方法により、ポリスチレン系樹脂押出発泡体Xを得た。比較例1および3では、圧縮工程は実施しなかった。得られたポリスチレン系樹脂押出発泡体Xの各種測定結果および評価結果を表1に示す。
【0102】
(比較例2)
ポリスチレン系樹脂押出発泡体を得る際に、引取ロールを用いて押出発泡体を押出方向に引っ張った。さらに、成形ロールにより成形して得られる押出発泡体(カッターで切断前の押出発泡体)の厚さを押出発泡体Xの厚さ+約10mm程度に変更し、押出発泡体Xの厚さを表1に記載のように変更した。これら以外は、実施例1と同じ方法により、ポリスチレン系樹脂押出発泡体Xを得た。比較例2では、圧縮工程は実施しなかった。得られたポリスチレン系樹脂押出発泡体Xの各種測定結果および評価結果を表1に示す。
【0103】
本発明の一実施形態によれば、切削加工性および硬さに優れたポリスチレン系樹脂押出発泡体を提供することができる。そのため、本発明の一実施形態は、例えば、断熱材、吸音材、真空断熱材の芯材、緩衝材、充填材などの分野において好適に利用することができる。