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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014664
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】集束イオンビーム装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/18 20060101AFI20230124BHJP
   H01J 37/317 20060101ALI20230124BHJP
   H01J 37/244 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
H01J37/18
H01J37/317 D
H01J37/244
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118739
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水村 通伸
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101CC05
5C101CC06
5C101CC14
5C101EE43
5C101FF48
5C101GG02
5C101GG15
(57)【要約】
【課題】イオンビーム調整時に被処理基板自体にダメージを与えることなく、被処理基板の処理に要するタクトタイムを短縮することが可能な集束イオンビーム装置を提供すること。
【解決手段】
内部空間にイオン源から引き出されたイオンビームを調整して出射させる集束イオンビーム光学系を備えたビーム出射部と、前記内部空間と連通して、前記ビーム出射部から出射されるイオンビームを通過させて被処理基板に対するビーム照射を可能にする開口部と、を備え、前記内部空間が真空引きされる集束イオンビーム装置であって、前記開口部を開閉可能とする可動封止バルブを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間にイオン源から引き出されたイオンビームを調整して出射させる集束イオンビーム光学系を備えたビーム出射部と、前記内部空間と連通して、前記ビーム出射部から出射されるイオンビームを通過させて被処理基板に対するビーム照射を可能にする開口部と、を備え、前記内部空間が真空引きされる集束イオンビーム装置であって、
前記開口部を開閉可能とする可動封止バルブを備えることを特徴とする集束イオンビーム装置。
【請求項2】
前記内部空間に、二次荷電粒子を検出する二次荷電粒子検出器を備え、前記可動封止バルブにおける、前記開口部を閉じたときにイオンビームが照射される位置に、調整用基準パターンが配置されている、
請求項1に記載の集束イオンビーム装置。
【請求項3】
前記調整用基準パターンに電流計が接続されている、
請求項2に記載の集束イオンビーム装置。
【請求項4】
前記ビーム出射部は、前記集束イオンビーム光学系を内蔵する集束イオンビームカラムと、前記集束イオンビームカラムの出射側の端部に配置される差動排気部を備えたヘッド部と、を備える、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の集束イオンビーム装置。
【請求項5】
前記内部空間は、前記集束イオンビームカラムおよび前記ヘッド部に形成される連通した空間であり、前記開口部は前記ヘッド部に形成されている、
請求項4に記載の集束イオンビーム装置。
【請求項6】
前記内部空間は、前記集束イオンビームカラムの内側に形成された空間であり、前記開口部は前記集束イオンビームカラムの出射側の端部に形成されている、
請求項4に記載の集束イオンビーム装置。
【請求項7】
前記可動封止バルブは、前記開口部を閉塞する位置と、前記内部空間におけるイオンビームが照射されない待機位置と、の間を往復駆動される、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の集束イオンビーム装置。
【請求項8】
前記調整用基準パターンは、金属メッシュである、
請求項2に記載の集束イオンビーム装置。
【請求項9】
前記電流計は、ピコアンメータである、
請求項3に記載の集束イオンビーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集束イオンビーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子ビームリソグラフィ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この荷電粒子ビームリソグラフィ装置は、ビーム照射装置と真空エンベロプ装置とを備える。ビーム照射装置は、内部空間が高真空な状態に保たれ、ビーム出射側先端に先端開口部が設けられている。真空エンベロプ装置は、ビーム照射装置に対して、その先端開口部を取り囲むように設けられており、先端開口部近傍の空間を局部的に真空状態にする機能を有する。この真空エンベロプ装置は、半導体ウエハの被処理面(表面)に近づいて被処理面との間のギャップを極めて狭くすることにより、ビーム照射装置の先端部と被処理面との間の空間を高真空な状態に保つことを可能にしている。
【0003】
この荷電粒子ビームリソグラフィ装置では、荷電粒子ビームの位置やビームに各種の調整を行うために、以下のような検出操作を行うことが必要である。すなわち、上記の先端開口部を介して出射される荷電粒子ビームを、半導体ウエハの周辺に配置した整合パッドに形成された基準マークに照射する。そして、この基準マークへの荷電粒子ビームの照射に起因して得られる情報に基づいて、ビーム照射装置において荷電粒子ビームの位置やビームの形状などの調整を行うようになっている。整合パッドに形成された基準マークを用いて検出操作を行う理由は、半導体ウエハに荷電粒子ビームを直接照射すると半導体ウエハが損傷されるからである。このような検出操作は、半導体ウエハを交換する度に行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59-90926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の荷電粒子ビームリソグラフィ装置では、荷電粒子ビームの位置やビームの形状などの調整を行う度に、荷電粒子ビームリソグラフィ装置が整合パッドの基準マークの上方に配置されるように相対移動させる必要があるため、半導体ウエハの処理におけるタクトタイムが長くなるという課題がある。
【0006】
加えて、上述の荷電粒子ビームリソグラフィ装置では、真空エンベロプ装置が半導体ウエハの被処理面から遠ざかると、ビーム照射装置の先端部と被処理面との間の空間を高真空な状態に保つことができないという課題がある。一般に、荷電粒子ビームリソグラフィ装置を、半導体ウエハから離して待機位置に移動させた状態で、半導体ウエハの取り替えを行っている。このため、半導体ウエハを取り替える度に、ビーム照射装置内が一時的に低真空な状態になる。したがって、次の半導体ウエハに取り替えた後、荷電粒子ビームリソグラフィ装置を半導体ウエハに近接させ、真空エンベロプ装置を稼働させた状態で、ビーム照射装置の内部空間が高真空な状態になるように調整する。このため、荷電粒子ビームリソグラフィ装置の移動作業と圧力を調整する時間が必要であった。したがって、このような荷電粒子ビームリソグラフィ装置では、半導体ウエハの処理におけるタクトタイムが長くなるという課題がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、イオンビーム調整時に被処理基板自体にダメージを与えることなく、タクトタイムを短縮することが可能な集束イオンビーム装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の態様は、内部空間にイオン源から引き出されたイオンビームを調整して出射させる集束イオンビーム光学系を備えたビーム出射部と、前記内部空間と連通して、前記ビーム出射部から出射されるイオンビームを通過させて被処理基板に対するビーム照射を可能にする開口部と、を備え、前記内部空間が真空引きされる集束イオンビーム装置であって、前記開口部を開閉可能とする可動封止バルブを備えることを特徴とする。
【0009】
上記態様としては、前記内部空間に、二次荷電粒子を検出する二次荷電粒子検出器を備え、前記可動封止バルブにおける、前記開口部を閉じたときにイオンビームが照射される位置に、調整用基準パターンが配置されていることが好ましい。
【0010】
上記態様としては、前記調整用基準パターンに電流計が接続されていることが好ましい。
【0011】
上記態様としては、前記ビーム出射部は、前記集束イオンビーム光学系を内蔵する集束イオンビームカラムと、前記集束イオンビームカラムの出射側の端部に配置される差動排気部を備えたヘッド部と、を備えることが好ましい。
【0012】
上記態様としては、前記内部空間は、前記集束イオンビームカラムおよび前記ヘッド部に形成される連通した空間であり、前記開口部は前記ヘッド部に形成されていることが好ましい。
【0013】
上記態様としては、前記内部空間は、前記集束イオンビームカラムの内側に形成された空間であり、前記開口部は前記集束イオンビームカラムの出射側の端部に形成されていることが好ましい。
【0014】
上記態様としては、前記可動封止バルブは、前記開口部を閉塞する位置と、前記内部空間におけるイオンビームが照射されない待機位置と、の間を往復駆動されることが好ましい。
【0015】
上記態様としては、前記調整用基準パターンは、金属メッシュであることが好ましい。
【0016】
上記態様としては、前記電流計は、ピコアンメータであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る集束イオンビーム装置によれば、集束イオンビームを用いた被処理基板の処理に要するタクトタイムを短縮する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態に係る集束イオンビーム装置の概略構成図であり、可動封止バルブが開いている状態を示す。
図2図2は、本発明の第1の実施の形態に係る集束イオンビーム装置の概略構成図であり、可動封止バルブが閉じている状態を示す。
図3図3は、本発明の第1の実施の形態に係る集束イオンビーム装置の可動封止バルブの先端部を示す要部斜視図である。
図4図4は、本発明の第1の実施の形態に係る集束イオンビーム装置の可動封止バルブに設けられる金属メッシュ(調整用基準マーク)の平面図である。
図5図5は、本発明の第2の実施の形態に係る集束イオンビーム装置の概略構成図であり、可動封止バルブが開いている状態を示す。
図6図6は、本発明の第2の実施の形態に係る集束イオンビーム装置の概略構成図であり、可動封止バルブが閉じている状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施の形態に係る集束イオンビーム装置の詳細を図面に基づいて説明する。但し、図面は模式的なものであり、各部材の数、各部材の寸法、寸法の比率、形状などは現実のものと異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率や形状が異なる部分が含まれている。
【0020】
[第1の実施の形態]
(集束イオンビーム装置の構成)
本発明の第1の実施の形態に係る集束イオンビーム装置は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(OLED:Organic Electroluminescence Display)などの薄型ディスプレイ(FPD:Flat Panel Display)の製造に用いるフォトマスクの修正装置として用いることができる。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態に係る集束イオンビーム装置1は、基板支持台2と、集束イオンビームカラム3と、ヘッド部4と、差動排気部5と、二次荷電粒子検出器6と、可動封止バルブ7と、電流計8と、バルブ駆動部9と、制御部10と、を備える。集束イオンビームカラム3とヘッド部4は、ビーム出射部11を構成している。
【0022】
基板支持台2は、被処理基板12を載せた状態で支持するようになっている。本実施の形態では、被処理基板12として大型のフォトマスクを適用する。基板支持台2は、ビーム出射部11に対してX-Y方向に相対移動可能である。基板支持台2は、ビーム出射部11に対してZ方向にも相対移動可能であってもよい。
【0023】
(集束イオンビームカラム)
集束イオンビームカラム3は、鏡筒13を備え、鏡筒13内の鏡筒内部空間13Aには、液体金属イオン源14と、集束イオンビーム光学系15と、が内蔵されている。なお、鏡筒13の上部には、連結パイプ13Bを介して図示しない真空ポンプ(例えば、イオンポンプなど)が連結されている。鏡筒13の先端部(下端部)には、イオンビームIBの通過を可能とする鏡筒先端開口部13Cが形成されている。
【0024】
液体金属イオン源14は、液体金属である例えばガリウム(Ga)を備える。液体金属イオン源14では、液体金属がフィールドエミッションにてイオン化され、先端からガリウムイオン(Ga)が放出される。
【0025】
集束イオンビーム光学系15は、コンデンサレンズ16と、アパーチャ17と、非点収差補正用スティグマ18と、ブランカ19と、ブランキングアパーチャ20と、ディフレクタ21と、オブジェクトレンズ22と、を備える。本実施の形態では、コンデンサレンズ16、非点収差補正用スティグマ18、ブランカ19、ディフレクタ21およびオブジェクトレンズ22は、制御部10からの制御信号に基づき制御される。
【0026】
コンデンサレンズ16は、静電レンズである。液体金属イオン源14から放出されたガリウムイオン(Ga)は、コンデンサレンズ16における、最上流側の引出電極(図示省略)により加速電圧(一部はイオン過電圧)で加速されて、イオンビームIBとなる。
【0027】
非点収差補正用スティグマ18は、例えば、図示しない八つの極子電極で構成されている。この非点収差補正用スティグマ18では、制御部10からの制御信号に基づいて、八つの極子電極の電圧値の大きさを変えることで、イオンビームIBの軸シフト量とビーム形状を変えることができる。
【0028】
ブランカ19は、制御部10からの制御信号に基づいて、ブランキング電圧が印加されることにより、イオンビームIBを偏向させてイオンビームIBが被処理基板12へ向かわないように、ブランキングアパーチャ20の遮光部(開口が形成されていない領域)へ導く機能を有する。
【0029】
ディフレクタ21は、イオンビームIBを偏向させてX-Y方向に走査させることができる。オブジェクトレンズ22は静電レンズであり、制御部10からの制御信号に基づいて、イオンビームIBを被処理基板12の表面に合焦するように集束させる機能を有する。
【0030】
(ヘッド部)
図1に示すように、ヘッド部4は、中心軸が鏡筒13の中心軸と一致するように配置された略円盤形状の中空体である。ヘッド部4は、円錐の上部を切断したような円盤形状の上本体41と、円盤形状の下本体42と、溝形成板43と、で構成され、内部にヘッド内部空間4Aが形成されている。このヘッド内部空間4Aと、上記した集束イオンビームカラム3の鏡筒13内の鏡筒内部空間13Aと、は連通し、ビーム出射部11の内部空間を構成している。この内部空間は、鏡筒13の上部の連結パイプ13Bを介して接続された、図示しない真空ポンプによって、所定の真空度に真空引きされる。
【0031】
上本体41の中央には、回転軸方向に貫通する筒穴状のカラム結合口41Aが形成されている。下本体42は、中央に下本体開口部42Aが形成されている。溝形成板43の中央には、ヘッド部先端開口部43Aが形成されている。このヘッド部先端開口部43Aは、イオンビームIBを通過させて被処理基板12に対するビーム照射を可能にする開口部である。カラム結合口41Aには、集束イオンビームカラム3の先端部が貫通した状態で結合されている。下本体42の下面には、ヘッド部先端開口部43Aを取り囲むように差動排気部5が設けられている。
【0032】
(差動排気部)
差動排気部5は、下本体42と溝形成板43とを用いて構成されている。溝形成板43の下面43Bには、ヘッド部先端開口部43Aを取り囲むように、半径方向に所定距離を隔てて同心円状に配置された、例えば3つの環状溝44,45,46が形成されている。また、下本体42の下面には、これら環状溝44,45,46に適宜連通する連通溝47,48,49,50が形成されている。これら連通溝47,48,49,50は、図示しない経路で図示しない真空ポンプに接続されている。
【0033】
本実施の形態においては、環状溝44,45,46における吸引排気性能は、差動排気を行うように,外側の環状溝46から内側の環状溝44へ向けて漸次高くなるように設定されている。すなわち、環状溝44,45,46においては、最も外側の環状溝46から最も内側の環状溝44に向けて漸次低圧になるように設定されている。
【0034】
(二次荷電粒子検出器)
ヘッド部4には、二次荷電粒子検出器6が設けられている。この二次荷電粒子検出器6は、先端側がヘッド内部空間4Aに配置されている。この二次荷電粒子検出器6は、制御部10に接続され、検出した情報を制御部10へ出力するようになっている。
【0035】
本実施の形態では、二次荷電粒子検出器6は、シンチレータで構成されている。二次荷電粒子検出器6の先端部は、イオンビームIBが直接当たらないように、側方からヘッド部先端開口部43Aに臨むように配置されている。なお、二次荷電粒子検出器6には、二次荷電粒子検出器6にて発生した光を増幅する図示しないフォトマルチプライヤが接続されている。
【0036】
二次荷電粒子検出器6は、後述する可動封止バルブ7に設けられた調整用基準パターンとしての金属メッシュ74がイオンビームIBの照射を受けて放出する二次荷電粒子を捕捉して、金属メッシュ74の表面情報を取得するように設定されている。そして、この二次荷電粒子検出器6から得られる金属メッシュ74の表面情報に基づいて、イオンビームIBの位置やビームの各種の調整を可能となる。
【0037】
(可動封止バルブ)
図1および図2に示すように、可動封止バルブ7は、ヘッド部4の内側からヘッド部先端開口部43Aを開閉する機能を有する。図1から図3に示すように、可動封止バルブ7は、ロッド部71と、バルブ本体72と、真空パッド73と、金属メッシュ(調整用基準パターン)74と、を備える。
【0038】
ロッド部71は、ヘッド部4に貫通し、ヘッド内部空間4Aの真空度を保った状態で軸方向に沿って往復移動可能に設けられている。ロッド部71は、ヘッド部4の外側に設けられたバルブ駆動部9により駆動される。バルブ駆動部9は、制御部10からの制御信号に基づいて、ロッド部71を駆動する。なお、本実施の形態では、バルブ駆動部9として、例えばエアアクチュエータを用いている。
【0039】
図3に示すように、バルブ本体72は、ロッド部71の先端部に設けられている。バルブ本体72の下面には、真空パッド73が設けられている。真空パッド73は、例えばフッ素樹脂で形成されている。この真空パッド73は、ロッド部71の移動に伴って、図1に示すヘッド部先端開口部43Aを解放してイオンビームIBに干渉しない位置(待機位置)と、図2に示すヘッド部先端開口部43Aを閉塞する位置と、の間を移動する。
【0040】
金属メッシュ74は、ロッド部71の移動に伴って、図1に示すイオンビームIBに干渉しない位置(待機位置)と、図2に示すイオンビームIBが照射される位置と、の間を移動する。図4に示すように、金属メッシュ74は、円形の枠体74Aと、この枠体74Aに固定された円形の金属メッシュ本体74Bと、から構成されている。金属メッシュ74は、バルブ本体72に対して着脱可能に支持してもよい。バルブ本体72は、ロッド部71に対して着脱可能に支持してもよい。金属メッシュ本体74Bは、例えば、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、金(Au)などの金属を選択することができる。
【0041】
上述したように、この集束イオンビーム装置1においては、金属メッシュ74はイオンビームIBが照射されることにより二次荷電粒子を放出し、二次荷電粒子検出器6はその二次荷電粒子を捕捉する。制御部10は、二次荷電粒子検出器6から金属メッシュ74の表面情報が供給されることにより、イオンビームIBの照射位置やビームの各種の調整が可能になる。
【0042】
本実施の形態では、可動封止バルブ7の金属メッシュ74に電流計8がロッド部71を介して接続されている。本実施の形態では、この電流計8が、微小直流電流の測定を行うピコアンメータである。この可動封止バルブ7は、電流計8によってイオンビームIBの電流値を検出することが可能である。このため、制御部10では、電流計8での検出電流値に基づいて、イオンビームIBのビーム電流の調整を行うことが可能である。
【0043】
(集束イオンビーム装置の作用・動作)
図1に示すように、集束イオンビーム装置1を用いて、被処理基板12にイオンビームIBを照射して、例えばマスクパターンの修正などの処理を行う場合、予め、差動排気部5を構成する溝形成板43の下面は、被処理基板12との間に所定の狭いギャップを保った状態で差動排気を行っておく。
【0044】
このとき、鏡筒内部空間13Aとヘッド内部空間4Aとで構成される内部空間は、鏡筒13の上部の連結パイプ13Bを介して接続された、図示しない真空ポンプによって、所定の真空度に真空引きされた状態である。
【0045】
可動封止バルブ7は、図1に示すように、バルブ本体72を、イオンビームIBを干渉しない待機位置に配置させておく。すなわち、真空パッド73と金属メッシュ74は、待機位置に配置されているため、ヘッド部先端開口部43Aは解放された状態であり、金属メッシュ74にはイオンビームIBが照射されない状態にある。
【0046】
このような状態において、集束イオンビームカラム3からイオンビームIBを発生させて、イオンビームIBを被処理基板12へ照射して修正などの処理を行う。
【0047】
次に、集束イオンビーム装置1において、イオンビームIBの位置やビームの各種調整を行う場合、図2に示すように、可動封止バルブ7を操作して、真空パッド73がヘッド部先端開口部42Aを閉じた状態にする。このとき、内部空間(鏡筒内部空間13Aおよびヘッド内部空間4A)は、可動封止バルブ7によって外側空間と閉塞されているため、内部の圧力が維持された状態である。
【0048】
次に、図2に示すように、可動封止バルブ7の金属メッシュ74に対して、イオンビームIBをラスタスキャンする。このようなイオンビームIBの照射に伴って二次荷電粒子が発生する。二次荷電粒子検出器6は、この二次荷電粒子を捕捉して検出信号を制御部10へ出力する。イオンビームIBの照射位置と検出信号をマッピングすると金属メッシュ74のSIM(Scanning Ion Microscope)画像を観察することが可能となる。このSIM画像を観察しながらイオンビームIBの位置調整、出力調整、フォーカス調整、軸調整、非点収差補正などの各種の調整を行うことが可能となり、イオンビームIBを最適な状態にすることができる。
【0049】
上述のように、イオンビームIBの各種の調整の後は、イオンビームIBに対して、金属メッシュ74の位置から所定の設計値で離れている被処理基板12の表面の位置にフォーカスされるようにオブジェクトレンズ22のレンズ電圧を調整すればよい。このため、実際に被処理基板12の表面でフォーカス調整することなく、直ぐに被処理基板12の加工を行うことができる。可動封止バルブ7に接続した電流計8により、ビーム電流を同時に計測することができ、これにより、制御部10は、イオンビームIBのビーム電流を調整することが可能である。
【0050】
(第1の実施の形態の効果)
被処理基板12としてのフォトマスクに対して集束イオンビーム装置1を用いて修正処理を行う場合、作業の途中で、イオンビームIBの位置やビームの各種の調整を行う必要がある。フォトマスクの大きさに拘わらず、精度の良い修正作業を行うには、イオンビームIBの状態を常に適正に保つことが要請される。本実施の形態に係る集束イオンビーム装置1では、修正作業の途中であっても、内部空間(鏡筒内部空間13Aおよびヘッド内部空間4A)の真空を破ることなく、イオンビームIBの調整作業を迅速に行うことができる。このため、被処理基板12の処理において、タクトタイムを大幅に短縮することができる。
【0051】
加えて、上述のようにイオンビームIBの調整作業の度に、内部空間(鏡筒内部空間13Aおよびヘッド内部空間4A)の真空が破れることがないため、連結パイプ13Bに接続された図示しない真空ポンプの負担を大幅に削減することができる。
【0052】
本実施の形態に係る集束イオンビーム装置1では、二次荷電粒子検出器6が配置されたヘッド内部空間4Aに、可動封止バルブ7を設けたことにより、ビーム出射部11と被処理基板12との位置関係に影響を与えずに、ヘッド部先端開口部43Aの開閉を効率的に行うことができる。
【0053】
本実施の形態に係る集束イオンビーム装置1においては、可動封止バルブ7を閉じたときに、自動的に金属メッシュ74がイオンビームIBに照射され得る位置に配置されるように設定したため、直ぐにイオンビームIBの調整ができる。
【0054】
本実施の形態に係る集束イオンビーム装置1では、二次荷電粒子を検出する際に、被処理基板12へイオンビームIBを照射することを回避できるため、被処理基板12をイオンビームIBで損傷することを防止できる。
【0055】
因みに、従来では、イオンビームIBの軌道調整(アライメント)、フォーカス調整、非点収差補正などの調整作業は、イオンビームIBを被処理基板12に照射して、被処理基板12から発生する二次荷電粒子を検出しながら行っていた。
【0056】
液体金属イオン源14としては、質量数の大きなガリウムのイオンビームIBを使用することで、スパッタリング加工レートを高くできる一方で、照射されたフォトマスクは必ず加工されてしまうという問題点があった。
【0057】
すなわち、集束イオンビーム装置をフォトマスクの修正作業に用いる場合、調整作業に長い時間を要すると、欠陥部分(修正予定領域)以外の修正を要しない周辺部分も加工されてしまうという問題があった。上記の集束イオンビーム装置1では、イオンビームIBの調整作業に被処理基板12を用いないため、被処理基板12が損傷されることがない。
【0058】
[第2の実施の形態]
図5および図6は、本発明の第2の実施の形態に係る集束イオンビーム装置1Aを示す。なお、本実施の形態に係る集束イオンビーム装置1Aの説明に当たり、上記第1の実施の形態の構成と異なる部分を説明し、同様の構成については説明を省略する。
【0059】
この集束イオンビーム装置1Aは、集束イオンビームカラム3を構成する鏡筒13内の鏡筒内部空間13Aが本発明の内部空間に相当する。また、鏡筒先端開口部13Cは、本発明の開閉される開口部に相当する。本実施の形態では、上記第1の実施の形態におけるヘッド部4に相当する部分が、ヘッド板51と溝形成板43とで構成されている。差動排気部5は、ヘッド板51と溝形成板43とを用いて構成されている。
【0060】
本実施の形態では、二次荷電粒子検出器6および可動封止バルブ7は、鏡筒13の鏡筒内部空間13Aの下部に配置されている。可動封止バルブ7の真空パッド73は、鏡筒先端開口部13Cを開閉するように設定されている。本実施の形態に係る集束イオンビーム装置1Aの他の構成は、上記第1の実施の形態に係る集束イオンビーム装置1と同様である。
【0061】
本実施の形態に係る集束イオンビーム装置1Aは、上記第1の実施の形態に係る集束イオンビーム装置1と同様の効果を奏する。加えて、本実施の形態に係る集束イオンビーム装置1Aでは、鏡筒内部空間13Aに二次荷電粒子検出器6と可動封止バルブ7を配置したことにより、装置のコンパクト化ならびに軽量化を達成している。
【0062】
[その他の実施の形態]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、実施の形態の開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0063】
上記の実施の形態では、被処理基板12としてフォトマスクを適用したが、これに限定されず、イオンビームIBによる処理が行われる各種の試料を適用することが可能であり、修正の用途に限定されるものではない。
【0064】
上記の実施の形態では、バルブ駆動部9として、エアアクチュエータを用いているが、これに限定されず、他のアクチュエータを適用することも可能である。
【0065】
上記の実施の形態では、調整用基準パターンとして金属メッシュ74を用いたが、これに限定されず、各種材料で各種の形状のパターンを採用することができる。
【0066】
上記の実施の形態では、二次荷電粒子検出器6は、シンチレータを適用したが、これに限定されるものではなく、この他、マルチチャンネルプレート(MCP)のように各種の荷電粒子、電子、イオンを検出できる手段を適用できる。
【0067】
上記の実施の形態では、電流計8としてピコアンメータを適用したが、電流計8を省略した構成としてもよい。
【符号の説明】
【0068】
IB イオンビーム
1,1A 集束イオンビーム装置
2 基板支持台
3 集束イオンビームカラム
4 ヘッド部
4A ヘッド内部空間
5 差動排気部
6 二次荷電粒子検出器
7 可動封止バルブ
8 電流計
9 バルブ駆動部
10 制御部
11 ビーム出射部
12 被処理基板
13 鏡筒
13A 鏡筒内部空間
13B 連結パイプ
13C 鏡筒先端開口部
14 液体金属イオン源
15 集束イオンビーム光学系
16 コンデンサレンズ
17 アパーチャ
18 非点収差補正用スティグマ
19 ブランカ
20 ブランキングアパーチャ
21 ディフレクタ
22 オブジェクトレンズ
41 上本体
41A カラム結合口
42 下本体
42A 下本体開口部
43 溝形成板
43A ヘッド部先端開口部(ビーム照射を可能にする開口部)
43B 下面
44,45,46 環状溝
47,48、49,50 連通溝
51 ヘッド板
71 ロッド部
72 バルブ本体
73 真空パッド
74 金属メッシュ(調整用基準パターン)
図1
図2
図3
図4
図5
図6