(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146654
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】成型塊肉様食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23J 3/00 20060101AFI20231004BHJP
A23L 13/60 20160101ALI20231004BHJP
【FI】
A23J3/00 502
A23L13/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053953
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友則
(72)【発明者】
【氏名】米元 博子
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC09
4B042AD36
4B042AE03
4B042AK06
4B042AK10
4B042AK13
4B042AP14
4B042AP21
4B042AP27
(57)【要約】
【課題】組織状植物性たん白を用いて、従来の技術で製造する塊肉様の食品は、製造に煩雑な工程が必要なものや、塊肉様食品を製造後に更に成型加工が必要なものに留まっていた。本発明は、組織状植物性たん白を用いて、任意の大きさと形状に成型された塊肉様の食品を容易な方法で調製することを課題とした。
【解決手段】以下の工程を含むことを特徴とすることで、成型塊肉様食品を製造する。
(1)方向性を有し押出し方向長が10mm以上の組織状植物性たん白、粉末状植物性たん白、水およびトランスグルタミナーゼを混合して生地を調製する工程。
(3)(2)に含まれるトランスグルタミナーゼを架橋反応させる工程。
(4)(3)を加熱する工程。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含むことを特徴とする、成型塊肉様食品の製造方法。
(1)方向性を有し押出し方向長が10mm以上の組織状植物性たん白、粉末状植物性たん白、水およびトランスグルタミナーゼを混合して生地を調製する工程。
(2)(1)を成型する工程。
(3)(2)に含まれるトランスグルタミナーゼを架橋反応させる工程。
(4)(3)を加熱する工程。
【請求項2】
生地の調製時に油脂を添加する、請求項1に記載の、成型塊肉様食品の製造方法。
【請求項3】
組織状植物性たん白が豆類由来である、請求項1または請求項2に記載の、成型塊肉様食品の製造方法。
【請求項4】
動物性原料を使用しない、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の、成型塊肉様食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物性原材料を主体に用いた成型塊肉様食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護への関心が高まり、同時に動物愛護や健康面も含めた様々な配慮を背景とした食の多様化が進んでいる。それに伴い、植物性原材料を主体とする食品への志向が増加している。
粒状植物性たん白は様々な加工食品の副原料として、さらに近年では植物性原材料を主体とする食品用途においても広く用いられている素材である。(例えば特許文献1、2)。これらは主にエクストルーダーを用い、高温、高圧下に組織化して製造されるが、機器的な制約等により現状の製品は挽肉、薄切り肉、鶏肉様などの小片状の形態がほとんどである。より大きな形状の食素材として提供することができれば、さらに多様なメニューへの展開が可能となる。
【0003】
粒状植物性たん白を組み合わせて結着させることで、より大きな塊肉様の食品を製造する方法がいくつか提案されている。特許文献3には粒状植物性たん白を、大豆たん白を使用した含水結着料と混合し冷凍変性させることで、ステーキ様の食品を製造する技術に関して記載されている。特許文献4には組織化植物たん白を加水加熱後に冷凍し、バインダー組成物と合わせて冷凍するチャンクまたはローフ形態の肉類似製品の製造方法について記載されている。しかし何れも冷凍操作が必須な上に、食感、とりわけ塊肉に特有の歯応えのある硬さや適度なほぐれ感については十分なものではなく、さらなる改良が望まれていた。
トランスグルタミナーゼを用いて強い塊肉様組織とする試みも行われている。特許文献5は、トランスグルタミナーゼを含浸させた粒状大豆たん白を真空パック中で反応させることで、これらを大きな塊肉様に結着させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6439679号公報
【特許文献2】特許第5895393号公報
【特許文献3】特公平4-52103号公報
【特許文献4】特開昭61-152246号公報
【特許文献5】特許第7040689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術で製造する塊肉様の食品は、製造に凍結や含浸等の煩雑な工程が必要であったり、塊肉様食品を製造後に更に成型加工が必要なものに留まっていた。本発明は、組織状植物性たん白を用いて、任意の大きさと形状に成型された塊肉様の食品を容易な方法で調製することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題について鋭意検討し、粉末状植物性たん白とトランスグルタミナーゼを組み合わせた「つなぎ生地」に対して、押出しの方向と同方向の、一定以上の長さを有する組織状植物性たん白を組み合わせることで、トランスグルタミナーゼの作用を適度に抑止し、その後の成型作業が効率的に行えると共に、加熱後は適切な固さを有した塊肉様の組織が得られることを見出して、本発明を完成させた。
【0007】
則ち、本発明は
(1)以下の工程を含むことを特徴とする、成型塊肉様食品の製造方法。
(ア)方向性を有し押出し方向長が10mm以上の組織状植物性たん白、粉末状植物性たん白、水およびトランスグルタミナーゼを混合して生地を調製する工程。
(イ)(ア)を成型する工程。
(ウ)(イ)に含まれるトランスグルタミナーゼを架橋反応させる工程。
(エ)(ウ)を加熱する工程。
(2)生地の調製時に油脂を添加する、(1)に記載の、成型塊肉様食品の製造方法。
(3)組織状植物性たん白が豆類由来である、(1)または(2)に記載の、成型塊肉様食品の製造方法。
(4)動物性原料を使用しない、(1)乃至(3)の何れかに記載の、成型塊肉様食品の製造方法。
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法によれば、任意の大きさと形状に成型された、植物性原材料主体の塊肉様食品を、容易に製造することができる。その際に含浸や凍結等の特別な加工操作も必要としない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0010】
(成型塊肉様食品)
本発明の成型塊肉様食品とは、畜肉の塊肉から切り出す等の成型加工を施した肉片を、更に調理加工した成型塊肉食品について、これらを模した食品を、植物性原材料を主体として製造したものをいう。
具体的には、挽肉を含まない、牛、豚、鶏等の塊肉から切り出し成型した、肉片を主体とする食品材料等について、カツ、ナゲット、空揚げ等のフライ食品、ソテー、ステーキ、焼肉等の焼成食品、チャーシュー、サラダチキン等の蒸煮食品等に調理加工したものが成型塊肉食品であり、これら成型塊肉食品と同等の形状および食感を有する食品を植物性原材料を主体として製造したものが、本発明の成型塊肉様食品である。
そして本発明では、大きな塊肉様はもちろん、個々の調理に直接使用できる成形した食品材料等を、植物性原材料を主体とした生地から、直接成型できることが特徴となる。
【0011】
(トランスグルタミナーゼ)
本発明に使用するトランスグルタミナーゼは、市販の製剤を用いることができる。具体的には、例えば味の素株式会社製「アクティバTG-S」「アクティバTG-S-NF」が挙げられる。動物性原料不使用とする場合には賦形剤としての乳糖不使用タイプを用いる等、商品設計により製剤の種類は適宜選択することができる。
【0012】
(組織状植物性たん白)
本発明に用いる組織状植物性たん白とは、大豆、脱脂大豆、分離大豆たん白、小麦、小麦たん白、エンドウ、エンドウたん白に例示される植物性の原材料を配合し、方向性を有する様に加工処理を施したものである。具体的には、一軸又は二軸エクストルーダーを用いて高温高圧下の押出し加工によりに組織化することで、方向性を有したたん白が調製される。粒状やフレーク状などの種々の形状がある。また、押出し加工時に冷却ノズルを用いて、水分を保持したまま調製することもできる。
方向性を有するとは、試料の組織状植物性たん白が十分に吸水した水和物について、単一の方向を除いて手で引き千切ることができるものである。全ての方向に同じ様に引き千切ることができるものや、手で引き千切ることができないものは、本発明の方向性を有した組織状植物性たん白ではない。
押出し方向とはエクストルーダーの押出し方向であり、上述の手で引き千切れない方向であって、この押出し方向の長さを押出し方向長とする。本発明の組織状植物性たん白は、10mm以上の押出し方向長を有するものである。20mm以上が好ましく、30mm以上が更に好ましい。10mm未満では、成型時に生地の保形性が低下してしまい、成型が困難となる。
また、100mm以下が好ましく、80mm以下が更に好ましいが、後述の混合工程で組織状植物性たん白を切断することも可能である。
押出し方向以外の、押出し方向に垂直で、互いにも垂直な二方向の長さは、その後の工程で破砕され易いこともあるが、好ましくは40mm以下、更に好ましくは30mm以下、最も好ましくは25mm以下である。
組織状植物性たん白は、豆類に由来するものが好ましく、大豆に由来するものが最も好ましい。また、粗蛋白質含量として50質量%以上(固形分あたり)のものが更に好ましい。なお、含水状態で流通する製品も存在するが、乾燥品(水分10%以下)を用いる場合は、使用する直前に水に浸漬することが望ましい。流通等を考慮した場合は、本発明には乾燥品を用いることが好ましい。尚、特許文献5で示された酵素製剤の含浸の様な操作は、本発明では必要としない。
【0013】
(粉末状植物性たん白)
本発明に用いる粉末状植物性たん白としては、大豆、小麦、エンドウに例示される植物性原材料から製造される市販品を適宜選択することができる。中でも畜産加工食品用途や水産練り製品に用いられる、ゲル形成性を有する製品を用いることで、適度な結着性を得られるため好ましい。
本発明においては豆類由来の粉末状たん白を用いることが好ましく、粉末状大豆たん白を用いることが最も好ましい。粉末状大豆たん白としては、脱脂大豆から得られる固形分あたりの蛋白質含量が60質量%以上の脱脂豆乳粉末,濃縮大豆たん白や分離大豆たん白が好ましく、蛋白質含量が85質量%以上の分離大豆たん白がより好ましい。
【0014】
(油脂)
本発明には任意の食用油脂を適宜用いることができ、例えば、菜種油、大豆油、ひまわり種子油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、ゴマ油、月見草油、パーム油、パーム核油、ヤシ油等の植物性油脂ならびに、必要によっては乳脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の動物性油脂が例示でき、これらの油脂類の単独または混合油あるいはそれらの硬化分別油、ならびに酵素エステル交換、触媒によるランダムエステル交換等を施した加工油脂が例示できる。
【0015】
(その他原材料)
本発明には前述の他、各種澱粉を含む糖類、乳化剤、増粘安定剤、塩類、調味料、香辛料、酸味料、着色料、保存料、発色剤、pH調整剤、酸化防止剤等、通常一般の畜産加工品類において配合される原材料を、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜用いることができる。
【0016】
(製造方法)
本発明の成型塊肉様食品の製造法について説明する。粉末状植物性たん白、および水から成る「つなぎ」と、これにトランスグルタミナーゼおよび組織状植物性たん白を加えた生地を調製し、生地を成型後にトランスグルタミナーゼを架橋反応させ、更に加熱することで、成型塊肉様食品を得る。
【0017】
(生地)
本発明の成型塊肉様食品は、10mm以上の押出し方向長を有する組織状植物性たん白を必須とする。これら組織状植物性たん白は通常乾燥体であるので、そのまま使用することもできるが、まず水を吸水させ組織を軟化させる「水戻し」を行うことが好ましい。ここに予め粉末状植物性たん白、水、必要により油脂をフードカッター、ステファンまたはフードプロセッサー等で混合攪拌して調製した「つなぎ」、およびトランスグルタミナーゼを混合して生地を得る。その他の原料を添加することもできる。混合順については、例えば全ての材料を同時に混合することもできるが、つなぎを別途調製した後に組織状植物性たん白に混合した方が好ましい。また、油脂を添加することで風味を向上させることができる。
生地の配合としては、組織状植物性たん白は、水を含む生地に対して、乾燥物換算で5~40質量%が好ましい。8質量%以上、10質量%以上、15質量%以上が更に好ましく、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下が更に好ましい。これより多いと最終製品での結着が弱くなる場合があり、少ないと肉感が不足する場合がある。また多くても少なくても、生地成型時の成型性が悪化する場合がある。
粉末状植物性たん白は、生地に対し2質量%以上が好ましく、5質量%以上が更に好ましい。また、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が最も好ましい。これより少ないと最終製品での結着が弱くなる場合があり、これより多いと塊肉食感が不足する場合がある。また多くても少なくても、生地の成型時に不具合が生じる場合がある。
油脂の使用量は、生地中1質量%以上が好ましく、3質量%以上が更に好ましい。また、10質量%以下が好ましく、8質量%以下が更に好ましい。
【0018】
トランスグルタミナーゼ使用量は製剤中の酵素含有量や活性により適宜調整するが、前述のアクティバTG-Sシリーズ(製剤中のトランスグルタミナーゼ含有量1.0%)を用いる場合、製剤として生地に対して0.005質量%以上が好ましく、0.05質量%以上が更に好ましく、0.1質量%以上が最も好ましい。また、2.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以下が更に好ましい。これより少ないと本発明の効果が十分に得られない場合があり、これより多く配合すると生地の固化が促進され、成型時に不具合が生じる場合がある。
【0019】
以上を混合して生地を調製する。混合には、ケンウッドミキサーを始めとしたミキサー等を用いることができるが、ロボクープを始めとしたフードプロセッサーやサイレントカッター等を用いて細断しながら練り合わせることもできる。この場合は組織状植物性たん白が細片化する場合もあるが、原料時点での組織状植物性たん白の押出し方向長が重要であり、混合作業時の細片化は本発明の効果である生地物性には大きくは影響しないし、多少の細分化は生地物性を向上させる場合もある。
【0020】
(成型)
生地はさらに利用する形態に応じ、成型機等を用いて所望の大きさと形状に成型する。大きな素材として製造し、その後に切り出して利用する場合は、φ5~10cm×10~30cm程度のケーシングに封入しても良いし、φ2~5cm×5~20cm程度のケーシングに封入することもできる。成型の段階で最終の食品形態とすることも可能であり、本発明の特徴を生かすことができるために、好ましい。例えばカツ様食品の場合は、1~5cm×5~20cm×0.5~2cm程度の薄い直方体形状が、ナゲット様食品の場合は、φ2~10cm×0.5~2cm程度の厚い円盤状がそれぞれ例示できる。成型の大きさや形状は使用する用途により適宜選択できる。
この際、本発明で規定した押出し方向長を有した組織状植物性たん白を用いると、生地が固化しても成型性が維持されており、その後の成型工程が問題なく実施できる。押出し方向長が10mmより短いと生地は固化し、その後の成型が困難となる。
【0021】
(トランスグルタミナーゼの架橋反応)
本発明に於いては、生地へのトランスグルタミナーゼの混合後に成型を行い、更に加熱工程を施すまでの温度と時間の中でトランスグルタミナーゼの架橋反応が進行するが、積極的に架橋反応を進めることも可能である。具体的には、40~65℃で10分間以上、より好ましくは45~60℃、10分間~100分間が例示できる。また、低温域で行う場合は冷蔵庫(約2℃~8℃)で8~24時間が例示できる。
【0022】
(加熱工程)
成型後の生地は、例えば70℃以上で5分間以上、好ましくは70~130℃で5~60分間、より好ましくは80~125℃で5~50分間加熱する。レトルト加熱を行うこともできる。あるいは、100℃を超える温度で30秒分以上、好ましくは120~240℃で1分~15分、更に好ましくは、150~200℃で数分の加熱を行うこともできる。特に後者はフライとして実施が可能である。
この加熱により酵素が失活し、同時に粉末状植物性たん白によるゲル化が進み、より強い結着性を得ることができる。温度や時間がこれ以下では結着性が弱くなったり、酵素失活が不十分だったりする場合がある。加熱後の本発明品は、冷蔵や冷凍等の状態で保管流通を行うことも可能である。
【0023】
(応用)
本発明の成型塊肉様食品は、塊肉を用いた様々な食品の代替として、利用が可能である。前述した様に、カツ、ナゲット、空揚げ等のフライ食品、ソテー、ステーキ、焼肉等の焼成食品、チャーシュー、サラダチキン、カレー、シチュー等の蒸煮食品等が挙げられる。
そして本発明は、大きな塊肉様の食品材料を調製して再度成型加工する用途にも使用できるが、そのまま調理できる塊肉様の食品を直接成型する用途が特に好ましい。
【0024】
なお、本発明の方法によれば畜肉、魚介類、卵、卵白・粉末卵白、乳製品などの動物性原材料を配合せずに製造できるため、ベジタリアンやヴィーガン向けのニーズにも合致した食品が提供できる。
【0025】
(実施例)
以降に本発明をより詳細に説明する。なお、文中部および%は特に断りのない限り質量基準を意味する。
【0026】
○各押出し方向長の検討
各種の組織状植物性たん白について、その押出し方向長を測定した。試料はアペックス2000SP、アペックス950、アペックス110、アペックス1000、アペックス650、ニューフジニック80N(以上、組織状大豆たん白・不二製油株式会社製)、S Fibertex 2265(組織状大豆たん白・谷神日本株式会社製)、Vegtein 60 Chunks、Vegtein 68 Chunks(以上、エンドウたん白組織化物・Nisco社製)、Faba Protein F6501C、Faba Protein F6501M(以上、ソラマメたん白組織化物・Vestkorn社製)、アースミート(原田産業株式会社製)を用いた。アペックス950は押出し方向と垂直方向に切断し、押出し方向長を変えた試料を作成した。尚、アペックス650およびニューフジニック80Nは、明確な押出し方向が認められなかった。
各試料5点のサンプルを取って測定後、平均値を算出し、表1中央欄に記載した。
【0027】
【0028】
表1の組織状植物性たん白を用いて表2の配合にて、成型塊肉様食品を調製した。すなわち、粉末状大豆たん白(不二製油社製・フジプロFR)5.5質量部に、水22質量部と菜種油(不二製油社製・菜種白絞油)4.4質量部、トランスグルタミナーゼ製剤(味の素社製・TG-S-NF)0.2質量部を加え、フードプロセッサーにて攪拌しつなぎを作成した。40質量部の水にて水戻しした、組織状植物性たん白20質量部を混合し、醤油1.5質量部、清酒1.5質量部、生姜1.1質量部、砂糖1.5質量部、食塩0.5質量部、および調味材2質量部を加え、フードプロセッサーにて攪拌した。尚、試験区Jのアースミートは含水物であり、水戻しせずに60質量部を用いた。
攪拌後、5×9×1cmに成型し、更に5×3×1cmに切断したものを冷蔵庫(5℃)にて15時間保存した後に、バッター液およびパン粉を付けたのち、菜種油にて175℃で4~6分間油調処理を行い、トンカツ様食品を得た。
【0029】
【0030】
<生地評価基準>
成型時の生地は、以下の基準で評価した。△以上を合格とした。
◎◎:容易に成型できる
◎:概ね容易に成型できる
○:成型できる
△:やや難あるが、成型できる
×:成型できない
【0031】
<食感評価基準>
食感は熟練したパネラー5名にて行い、以下の基準で評価し、合議により判定した。△以上を合格とした。
◎◎:しっかりと結着しており、とても硬い食感がある
◎:しっかりと結着しており、硬い食感がある
○:結着しており、硬い食感がある
△:結着が弱く、軟らかい食感がある
×:結着しておらず、食感軟らかい
【0032】
結果を表1右欄に示す。押出し方向長が10mmに満たない試験区L,Mは、生地がそぼろ状となり成型が困難となった。方向性を持たない試験区Kも同様の傾向だった。一方、押出し方向長が12mm以上の他の試験区は何れも想定の効果が認められた。
【0033】
○配合検討
表3に従って、実施例1と同様にトンカツ様食品を調製した。尚、組織状植物性たん白はアペックス2000SPを使用した。結果を表3下段に示す。トランスグルタミナーゼを用いなかった試験区Pは、成型に問題はなかったが、フライ後も生地が結着しておらず、食感は悪かった。トランスグルタミナーゼを用いた他の試験区は、何れもフライ後の生地は結着した。酵素添加量の低い試験区Uは、フライ後の結着はやや弱かった。
粉末状大豆たん白が少なく組織状大豆たん白が多い試験区Vは、成型時の流動性が他の試験区よりやや劣る傾向があった。また、粉末状大豆たん白が多く組織状大豆たん白が少ない試験区Wの成型性は、試験区K~Mにやや近いもので、試験区R~Uより多少劣る傾向にあった上に、肉的な食感にもやや劣っていた。
【0034】