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特開2023-146656樹脂発泡シートおよび樹脂複合体の製造方法
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  • 特開-樹脂発泡シートおよび樹脂複合体の製造方法 図1
  • 特開-樹脂発泡シートおよび樹脂複合体の製造方法 図2
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  • 特開-樹脂発泡シートおよび樹脂複合体の製造方法 図4A
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  • 特開-樹脂発泡シートおよび樹脂複合体の製造方法 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146656
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】樹脂発泡シートおよび樹脂複合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/28 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
B32B5/28 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053955
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】平塚 翔一
(72)【発明者】
【氏名】福永 洋一郎
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AD11B
4F100AD11C
4F100AK41A
4F100AK42A
4F100AK53B
4F100AK53C
4F100BA03
4F100BA06
4F100CA01A
4F100DC13B
4F100DC13C
4F100DG12B
4F100DG12C
4F100DH01B
4F100DH01C
4F100DH02B
4F100DH02C
4F100DJ01A
4F100EJ02A
4F100EJ172
4F100EJ422
4F100EJ592
4F100JK01
4F100JL03
(57)【要約】
【課題】立体的な形状を有する樹脂複合体を製造容易な樹脂発泡シートを提供すること。
【解決手段】樹脂発泡シートで構成された芯材と、樹脂と繊維とを含むシート状の繊維強化樹脂材で構成された繊維強化樹脂層とが積層されている樹脂複合体の前記芯材として用いられる樹脂発泡シートであって、130℃での加熱による二次発泡で50%以上の体積増加が可能で、少なくとも一方の表面には、切込線が設けられて該切込線で区分けされた複数の領域が形成されている樹脂発泡シートを提供する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂発泡シートで構成された芯材と、
樹脂と繊維とを含むシート状の繊維強化樹脂材で構成された繊維強化樹脂層とが積層されている樹脂複合体の前記芯材を構成するために用いられる樹脂発泡シートであって、
130℃での加熱による二次発泡で50%以上の体積増加が可能で、
少なくとも一方の表面には、
切込線が設けられて該切込線で区分けされた複数の領域が形成されている樹脂発泡シート。
【請求項2】
ポリエステル系樹脂を含む請求項1記載の樹脂発泡シート。
【請求項3】
炭化水素系発泡剤を含む請求項1又は2記載の樹脂発泡シート。
【請求項4】
前記一方の表面には、
該表面に沿った複数の方向に前記切込線が設けられ、該切込線で囲われた複数の前記領域が形成されており、
該領域の形状が多角形、又は、円形である請求項1乃至3の何れか1項に記載の樹脂発泡シート。
【請求項5】
樹脂発泡シートで構成された芯材と、
樹脂と繊維とを含む繊維強化樹脂層とが積層されている樹脂複合体の製造方法であって、
樹脂と繊維とを含むシート状の繊維強化樹脂材を前記樹脂発泡シートに積層して積層体を作製する積層工程と、
加熱された状態の前記積層体に厚さ方向に圧力を加えて成形して前記樹脂発泡シートで構成された前記芯材と、前記繊維強化樹脂材で構成された前記繊維強化樹脂層とを備えた樹脂複合体を作製する成形工程とを実施し、
前記積層工程では、
二次発泡性を有し、且つ、少なくとも一方の表面に切込線が設けられて該切込線で区分けされた複数の領域が形成されている前記樹脂発泡シートを用いて前記積層体を作製し、
前記成形工程では、
前記切込線の幅が広がる方向に曲げられて前記切込線の設けられている箇所にV溝状の隙間の形成された前記積層体に対して前記成形を実施し、且つ、前記樹脂発泡シートが二次発泡によって50%以上体積増加する温度条件で該成形を実施し、
該樹脂発泡シートの体積増加によって前記隙間が狭められた前記樹脂複合体を作製する、
樹脂複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂発泡シートおよび樹脂複合体の製造方法に関し、より詳しくは、樹脂複合体の芯材を構成するのに用いられる樹脂発泡シートと、そのような樹脂発泡シートを用いた樹脂複合体の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、優れた軽量性と強度とを兼ね備えることからFRPなどと称される繊維強化樹脂材が広く用いられている。近年、芯材となる樹脂発泡体に繊維強化樹脂層を含む表面材を積層した樹脂複合体がその用途を拡大させている。この種の樹脂複合体は、樹脂発泡体を芯材として備えていることで優れた軽量性を発揮する。また、前記繊維強化樹脂層は繊維と樹脂とを含む繊維強化樹脂材で構成されているため表面材に繊維強化樹脂層を含む樹脂複合体は、強度面でも優れている。この種の樹脂複合体の芯材としては、ビーズ発泡成形体などの三次元的な成形品の他に樹脂発泡シートのような平面的な成形品が用いられたりしている。また、樹脂発泡シートを芯材とする場合には、樹脂発泡シートと繊維強化樹脂材とを積層したシート状の積層体を成形型で熱プレスして3次元的な樹脂複合体が作製されたりしている(特許文献1(図7等)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-208417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
三次元的な樹脂複合体を形成すべく熱プレスで積層体に曲げ加工を加える場合、樹脂発泡シートが冷えた状態のままであると意図しない箇所での座屈や割れが起きかねない。そのような問題は、シート成形体の製造ラインで成形加工の前段で行われているような予備加熱を実施すれば解消され得る。しかしながら、その場合はシート成形体の製造ラインでの予備加熱炉に相当する装置が必要になって設備が大掛かりになってしまうことになる。
【0005】
積層体を構成する樹脂発泡シートに対し、例えば、曲げ加工時に外側になる面に該外側面を区分けするような形で切込線を設け、しかも、切込線を曲げが予定されている箇所に設けることで樹脂発泡シートが常温のままでも簡単に曲がるようになり、意図しない座屈や割れを防ぎ得る。しかしながらその場合は、曲げ加工での外側面において切込線が広がってV溝のような隙間が形成されてしまうことになる。そうすると、この外側面を繊維強化樹脂材で覆っていても樹脂複合体の表面に凹みが現れたりするおそれがある。また、その場合、繊維強化樹脂材の樹脂が隙間に流入する結果、繊維強化樹脂層にボイドが生じたり、樹脂切れによる繊維の露出が見られたりするおそれもある。
【0006】
上記のようなことから樹脂発泡シートが芯材となっている三次元的な樹脂複合体は、簡便に製造することが難しい。そこで本発明は三次元的な形状を有する樹脂複合体を製造容易な樹脂発泡シートを提供するとともに簡便な方法で樹脂複合体を製造することができる樹脂複合体の製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく鋭意検討した本発明者は、高い二次発泡性を有する樹脂発泡シートであれば、樹脂複合体を成形する際に二次発泡による体積増加によってV溝状の隙間を狭めることができ、樹脂複合体の表面に凹みが現れることやボイドが出現することを抑制し得ることを見出して本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明は、上記課題を解決すべく、
樹脂発泡シートで構成された芯材と、
樹脂と繊維とを含むシート状の繊維強化樹脂材で構成された繊維強化樹脂層とが積層されている樹脂複合体の前記芯材を構成するために用いられる樹脂発泡シートであって、
130℃での加熱による二次発泡で50%以上の体積増加が可能で、
少なくとも一方の表面には、切込線が設けられて該切込線で区分けされた複数の領域が形成されている樹脂発泡シート、を提供する。
【0009】
本発明は、上記課題を解決すべく、
樹脂発泡シートで構成された芯材と、
樹脂と繊維とを含む繊維強化樹脂層とが積層されている樹脂複合体の製造方法であって、
樹脂と繊維とを含むシート状の繊維強化樹脂材を前記樹脂発泡シートに積層して積層体を作製する積層工程と、
加熱された状態の前記積層体に厚さ方向に圧力を加えて成形して前記樹脂発泡シートで構成された前記芯材と、前記繊維強化樹脂材で構成された前記繊維強化樹脂層とを備えた樹脂複合体を作製する成形工程とを実施し、
前記積層工程では、
二次発泡性を有し、且つ、少なくとも一方の表面に切込線が設けられて該切込線で区分けされた複数の領域が形成されている前記樹脂発泡シートを用いて前記積層体を作製し、
前記成形工程では、
前記切込線の幅が広がる方向に曲げられて前記切込線の設けられている箇所にV溝状の隙間の形成された前記積層体に対して前記成形を実施し、且つ、前記樹脂発泡シートが二次発泡によって50%以上体積増加する温度条件で該成形を実施し、
該樹脂発泡シートの体積増加によって前記隙間が狭められた前記樹脂複合体を作製する、
樹脂複合体の製造方法、を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、三次元的な形状を有する樹脂複合体を製造容易な樹脂発泡シートが提供され、簡便な方法で樹脂複合体を製造することができる樹脂複合体の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態の樹脂複合体を示した概略斜視図である。
図2図2は、図1の樹脂複合体を分解した状態を示した概略斜視図である。
図3図3は、樹脂複合体の芯材に用いられる樹脂発泡シートを示した概略斜視図である。
図4A図4Aは、樹脂複合体に設けられる切込線の一例を示した概略平面図である。
図4B図4Bは、樹脂複合体に設けられる切込線の一例を示した概略平面図である。
図5図5は、樹脂複合体の製造時の樹脂発泡シートの状態を示した概略斜視図である。
図6図6は、実施例での樹脂複合体の製造に用いた第1の成形型の概略斜視図である。
図7図7は、実施例での樹脂複合体の製造に用いた第2の成形型の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施形態に係る樹脂複合体について説明する。本実施形態の樹脂複合体は、図1図2に示すように曲板状であり、円筒を中心軸と平行な平面で半割にした半円筒形である。より詳しくは、本実施形態の樹脂複合体は、雨樋を逆に伏せたような形状を有している。本実施形態の樹脂複合体100は、長手方向Xと、該長手方向Xに直交する短手方向Yとを有し、該短手方向Yでの中央部が両端部よりも高い位置になるように湾曲している。即ち、樹脂複合体100は、前記長手方向Xに直交する平面での断面形状がアーチ状となっている。
【0013】
図1図2に示す樹脂複合体100は、平面視における形状が長方形である。該長方形は、前記長手方向Xに沿う長辺と前記短手方向Yに沿う短辺を有する。樹脂複合体100は、前記長手方向Xと前記短手方向Yとに直交する厚さ方向Zを有する。
【0014】
本実施形態に係る樹脂複合体100は、板状の芯材1の両面に繊維強化樹脂層2を備えた表面材が積層されている。本実施形態の樹脂複合体100は、表面材が繊維強化樹脂層2のみで構成されている。前記表面材は、フィルム層や塗膜層などが設けられていてもよい。本実施形態では、これらを繊維強化樹脂層2よりも外側に設けて樹脂複合体100の美観を向上させてもよい。前記本実施形態に係る樹脂複合体100は、2つの繊維強化樹脂層2の間に芯材1が挟まれた構造を有している。即ち、樹脂複合体100は、一方の表面100aを構成する第1の繊維強化樹脂層(第1繊維強化樹脂層2a)と、他方の表面100bを構成する第2の繊維強化樹脂層(第2繊維強化樹脂層2b)とを備えている。
【0015】
前記芯材1は、第1の表面(第1表面1a)と該第1の表面とは反対面となる第2の表面(第2表面1b)とを備えている。前記芯材1は、第1表面1aの側にシート状の繊維強化樹脂材が一又は複数積層されているとともに前記第1表面1aとは反対側となる第2表面1bの側にも一又は複数の繊維強化樹脂材が積層されている。複数の繊維強化樹脂材で構成されている本実施形態での2つの前記繊維強化樹脂層2a,2bは、構造が共通していても異なっていてもよい。
【0016】
本実施形態での2つの前記繊維強化樹脂層2a,2bは、構造が共通している。それぞれの繊維強化樹脂層2a,2bは、第1の表面と、該第1の表面とは反対面となる第2の表面とを備え、それぞれ第1の表面が繊維強化樹脂層2a,2bの内側面なっていて前記芯材1との接着面となっている。繊維強化樹脂層2a,2bの第2の表面は、繊維強化樹脂層2a,2bの外側面なっていて樹脂複合体100の一方の表面100aと他方の表面100bとなっている。
【0017】
本実施形態での芯材1は、樹脂発泡シートで構成されている。本実施形態での樹脂発泡シートは、加熱による二次発泡で50%以上の体積増加が可能である。樹脂発泡シートは、加熱による二次発泡で60%以上の体積増加が可能であることがより好ましく、70%以上の体積増加が可能であることがさらに好ましい。本実施形態での樹脂発泡シートは、図3図4Aに示すように長方形であり、より詳しくは、樹脂複合体100での長手方向Xに平行な長辺と短手方向Yに平行な短辺とを備えた長方形である。
【0018】
本実施形態での樹脂発泡シート10は、前記第1繊維強化樹脂層2aを構成する繊維強化樹脂材が積層される第1表面10aと、前記第2繊維強化樹脂層2bを構成する繊維強化樹脂材が積層される第2表面10bとを有する。樹脂発泡シート10は、第1表面10aと第2表面10bとの内の少なくとも一方の表面に、切込線11が設けられている。該切込線11は、樹脂発泡シート10の表面を複数の領域に区分けするように設けられている。
【0019】
本実施形態の樹脂発泡シート10は、断面形状がアーチ状となる樹脂複合体100の外側面となる第1表面10aに切込線11が設けられている。即ち、樹脂発泡シート10は、樹脂複合体100に設けられる折れ曲がり形状や湾曲形状での外側となる面に切込線11が設けられている。
【0020】
本実施形態の前記切込線11は、前記長手方向Xに沿って延びるように設けられている。本実施形態の樹脂発泡シート10は、短手方向Yに間隔を設けて互いに並行するように設けられた複数本の前記切込線11を第1表面10aに有している。従って、該第1表面10aで切込線11によって区分けされた個々の領域12の形状は、前記長手方向Xの寸法が樹脂発泡シート10と同じで、短手方向Yの寸法が樹脂発泡シート10の数分の一となった細長い長方形(帯状)となっている。本実施形態の第1表面10aでは、この帯状の領域12が短手方向Yに並んでいる。
【0021】
樹脂複合体100での折れ曲がり形状や湾曲形状が形成される際には芯材1には外側面に引っ張り応力が加わる。本実施形態の切込線11は、応力が加わる方向に対して概ね直角に交差する方向に延びている。そのため、樹脂複合体100での形状と同様に平坦状の樹脂発泡シート10を半円筒形状に丸める際には、前記切込線11の幅が広がるように隣り合う領域12の間に隔たりが設けられる。そして、本実施形態の樹脂発泡シート10は、過度に大きな力を加えなくても半円筒形状に変化させることができ、常温状態であっても座屈や割れを生じさせることなく変形させることができる。
【0022】
本実施形態の切込線11は、カミソリやカッターナイフなどの刃物を樹脂発泡シート10の表面上を走査させることで形成してもよく、トムソン刃型のような型を用いて形成してもよい。
【0023】
本実施形態の切込線11は、互いに交差する方向となる複数方向に沿って設けてもよく、例えば、図4Bに示すように該切込線11で囲われた小さな三角形の領域12が多数形成されるようにしてもよい。このような切込線11を備えた樹脂発泡シート10は、半円筒形状のような単純な形状だけでなく複雑な形状を備えた樹脂複合体の形成にも好適である。
【0024】
本実施形態の切込線11は、前記領域12の形状が三角形、四角形、又は、六角形などの多角形か円形かの何れかとなるように設けられることが好ましい。前記領域12の形状を多角形とする場合、多角形は、正多角形でなくてもよい。前記領域12の形状を円形とする場合、円形は、真円形でなくてもよく楕円形などであってもよい。切込線11は、直線的に形成される必要はなく、円弧や波線などといった曲線状のものであってもよい。
【0025】
本実施形態の樹脂発泡シート10は、前記切込線11が両面に設けられていてもよい。両面に切込線11が設けられる場合、一面側の切込線11のパターンと他面側の切込線11のパターンとが異なっていてもよい。例えば、一面側に図4Aのようなパターンで切込線11を設け、他面側では図4Bのようなパターンで切込線11を設けてもよい。
【0026】
隣り合う切込線11どうしの間の距離(L)は、例えば、5mm以上とすることができる。該距離(L)は、6mm以上であってもよく、7mm以上であってもよい。前記距離(L)は、例えば、100mm以下とすることができる。該距離(L)は、80mm以下であってもよく、60mm以下であってもよい。前記距離(L)は、50mm以下であってもよく、30mm以下であってもよい。図4Bに例示の樹脂発泡シート10のように切込線11が三方向に延びている場合、それぞれの方向の切込線11どうしの間の距離も上記と同様に設定することができる。その場合、第1の方向に延びる切込線11での切込線11どうしの間の距離(L1)と、第2の方向に延びる切込線11での切込線11どうしの間の距離(L2)と、第3の方向に延びる切込線11での切込線11どうしの間の距離(L3)とは、共通していても異なっていてもよい。
【0027】
切込線11での平均切込深さは、樹脂発泡シート10の平均厚さ(t)の0.3倍(0.3t)以上であることが好ましく、0.4倍(0.4t)以上のであることがより好ましく、0.5倍(0.5t)以上であることがさらに好ましい。切込線11での切込深さが過度に深いと樹脂発泡シート10が切れてしまわないように慎重な取り扱いをしなければならなくなる。樹脂発泡シート10を取り扱い容易とする意味において、切込線11での平均切込深さは樹脂発泡シート10の平均厚さ(t)の0.9倍(0.9t)以下であることが好ましく、0.8倍(0.8t)以下であることがより好ましい。
【0028】
前記樹脂発泡シート10の厚さは、0.5mm以上とすることができる。前記樹脂発泡シートの厚さは、0.6mm以上であってもよく、0.8mm以上であってもよい。前記樹脂発泡シート10の厚さは、5mm以下とすることができる。前記樹脂発泡シート10の厚さは、4mm以下であってもよく、3mm以下であってもよい。
【0029】
前記樹脂発泡シート10は、例えば、ポリエステル樹脂発泡体、ポリスチレン樹脂発泡体、ポリカーボネート樹脂発泡体、アクリル樹脂発泡体などとすることができる。前記芯材1は、押出発泡法によって得られる押出発泡シートであってもよい。前記芯材1は、型内発泡成形によって得られるシート状の発泡体、又は、型内発泡成形によって得られるブロック状の発泡体をスライス加工することによって作製された樹脂発泡シートであってもよい。
【0030】
前記樹脂発泡シート10は、強度に優れる点において、ポリエチレンテレフタレート樹脂発泡体などのポリエステル樹脂発泡体、又は、ポリカーボネート樹脂発泡体であることが好ましい。前記樹脂発泡シート10は、ポリエチレンテレフタレート樹脂発泡体であることが特に好ましい。ポリエステル樹脂発泡シートやポリカーボネート樹脂発泡シートは、高温に加熱しないと成形容易な状態に軟化しないため常温での易変形性を賦与できる本実施形態での樹脂発泡シート10として用いることで得られる利得が大きい。また、ポリエステル樹脂発泡シートやポリカーボネート樹脂発泡シートは、圧縮変形を生じ難いため、切込線11を設ける際に刃の入る深さを一定させ易い。
【0031】
本実施形態の前記樹脂発泡シート10としては、例えば、ポリエステル系樹脂を含む樹脂発泡シートを採用することができる。樹脂発泡シートに含まれるポリエステル系樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂などが挙げられる。ポリエステル系樹脂は、上記のような芳香族ポリエステル樹脂でなくてもよく、例えば、ポリ乳酸樹脂やポリブチレンサクシネート樹脂などの脂肪族ポリエステル樹脂であってもよい。
【0032】
前記樹脂発泡シート10の見掛け密度は、100kg/m以上であることが好ましい。前記樹脂発泡シートの見掛け密度は、200kg/m以上であってもよい。前記樹脂発泡シートの見掛け密度は、700kg/m以下であることが好ましい。前記樹脂発泡シートの見掛け密度は、500kg/m以下であってもよい。
【0033】
樹脂発泡シート10の見掛け密度(D)は、樹脂発泡シート10の複数箇所(例えば、4、5箇所)より切り出した試料の見掛け密度の算術平均値として求めることができる。各試料は、例えば、JIS K7222-2005「発泡プラスチック及びゴム-見掛け密度の求め方」に記載の方法に基づいて測定することができる。具体的には、元のセル構造を変えないように切断した100cm以上の試験片について、その体積(V(m))と質量(M(kg))とを測定し、体積(V)に対する質量(M)の比率(M/V)を求めることによって見掛け密度を算出することができる。100cm以上の試験片の採取が困難な場合はできるだけ大きな試料を採取して見掛け密度を算出してもよい。
【0034】
前記樹脂発泡シート10は、前記のように二次発泡性を有する。前記樹脂発泡シート10の二次発泡性は、切込線11を設けていない状態で測定される。尚、切込線11を設けた後の方が見掛け上は、二次発泡性が低下するので、所望の二次発泡性を有するかどうかを確認する場合には切込線11を設けた後の樹脂発泡シート10で二次発泡性を測定してもよい。
【0035】
樹脂発泡シート10の二次発泡性は、樹脂発泡シート10の加熱前後の体積増加率を指標とすることができる。体積増加率は、加熱前後の樹脂発泡シート10厚さの比から求めることができる。樹脂発泡シート10の二次発泡による体積増加率(厚さ増加率)は実施例記載の方法で求めることができる。
【0036】
樹脂発泡シート10は、少なくとも加熱温度が180℃で50%以上(より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上)の体積増加率(厚さ増加率)を示すことが好ましい。50%以上(より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上)の体積増加率(厚さ増加率)を示す温度は、170℃以下であることがより好ましく、160℃以下であることがさらに好ましく、150℃以下であることが特に好ましい。樹脂発泡シート10が50%以上(より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上)の体積増加率(厚さ増加率)を示す温度は、100℃以上であることが好ましい。樹脂発泡シート10としては、例えば、130℃での加熱による二次発泡で50%以上の体積増加が可能であるものを採用することができる。
【0037】
良好な二次発泡を生じさせる上で樹脂発泡シート10には発泡剤を含有させることができる。発泡剤は、例えば、二酸化炭素や窒素ガスなどの無機系物理発泡剤、炭化水素やそのハロゲン化物のような有機系物理発泡剤、ADCAやOBSHなどの化学発泡剤が挙げられる。中でも樹脂に対する可塑化機能を発揮して良好な二次発泡性を発揮させるのに有利である点で発泡剤は、有機系物理発泡剤であることが好ましい。有機系物理発泡剤としては、プロパン、ブタン(n-ブタン、i-ブタン、これらの混合物など)、ペンタン(n-ペンタン、i-ペンタン、シクロペンタン、これらの混合物など)などを用いることができる。
【0038】
樹脂発泡シート10の発泡剤含有量は、通常、最大でも10質量%であり、0.15質量%~5質量%であることが好ましく、0.25質量%~3.0質量%であることがより好ましい。
【0039】
樹脂発泡シート10の発泡剤含有量は、次のようにして求めることができる。
(発泡剤含有量)
先ず、樹脂発泡シート10採取した試料の質量W1を測定する。
次に、樹脂発泡シート10に含まれる発泡剤の質量W2を測定する。
発泡剤の質量(W2)は、ガスクロマトグラフを用いて測定することができ、具体的には、下記要領にて測定することができる。
【0040】
樹脂発泡シートから10~30mgの試料を採取し、20mLバイアル瓶に入れて精秤し、バイアル瓶を密閉してオートサンプラー付ガスクロマトグラフにセットし、バイアル瓶を210℃で20分間に亘って加熱した後、バイアル瓶の上部空間の気体をMHE(Multiple Headspace Extraction)法にて定量分析し、発泡層に含まれる発泡剤の質量W2を測定する。
【0041】
ここでいうMHE法とは、気固平衡にある気相ガスの放出を繰り返すことで得られるピーク面積の減衰を利用する定量方法である。
〔GC測定条件〕
測定装置:ガスクロマトグラフ Clarus500(Perkin-Elmer社製)
カラム:DB-1(1.0μm×0.25mmφ×60m:J&W社製)
検出器:FID
GCオーブン昇温条件:初期温度50℃(6分)
昇温速度:40℃/分(250℃まで)
最終温度:250℃(1.5分)
キャリアーガス(He),注入口温度:230℃,検出温度:310℃
レンジ:20
ベントガス 30mL/分(He)、追加ガス 5mL/分(He)
ガス圧力:初期圧力18psi(10分),昇圧速度:0.5psi/min(24psiまで)
【0042】
〔HS測定条件〕
測定装置:HSオートサンプラー TurboMatrix HS40(Perkin-Elmer社製)
加熱温度:210℃,加熱時間:20分,加圧ガス圧:25psi,加圧時間:1分,
ニードル温度:210℃,トランスファーライン温度:210℃,試料導入時間:0.08分
【0043】
〔算出条件〕
(ブタン)
検量線用標準ガス:混合ガス(ジーエルサイエンス社製)
混合ガス含有量:i-ブタン 約1質量%,n-ブタン 約1質量%,バランス 窒素
算出方法:MHE法により試料中の発泡剤量を算出する。結果は全てi-ブタン換算量とする。
(ペンタン)
検量線用標準ガス:混合ガス(ジーエルサイエンス社製)
混合ガス含有量:i-ペンタン 約1質量%,n-ペンタン 約1質量%,バランス 窒素
算出方法:MHE法により試料中の発泡剤量を算出する。結果は全てi-ペンタン換算量とする。
【0044】
樹脂発泡シート10における発泡剤含有量は下記式に基づいて算出することできる。
発泡剤含有量(質量%)=100×W2/W1
【0045】
前記切込線11が形成されている箇所では、樹脂発泡シート10の反対面に至る途中まで樹脂発泡シート10に切断面が形成されており、該切断面どうしが当接された状態になっている。本実施形態の樹脂発泡シート10は、前記のように樹脂複合体100での形状と同様に半円筒形状に丸められた際には、前記切込線11の幅が広がるように隣り合う領域12の間に隔たりが設けられる。そして、切断面どうしがV字状に広がって樹脂発泡シート10の第1表面10aの側には、切込線11と直交する平面での断面形状がV字状の溝(V溝)が形成される。このようにして形成されるV溝状の隙間13は、そのままの状態であれば樹脂複合体100の製造時に繊維強化樹脂材が入り込んでしまって第1繊維強化樹脂層2aの表面に筋状の凹みを生じさせる原因ともなり得る。また、この隙間13は、繊維強化樹脂層2の表面にボイドや繊維が露出した領域を生じさせる原因ともなり得る。
【0046】
本実施形態の樹脂発泡シート10は、前記のように優れた二次発泡性を有するため樹脂複合体100の製造時における当該樹脂発泡シート10の体積増加によってこの隙間13を狭めることができる。即ち、樹脂発泡シート10の二次発泡における膨張力は、隙間13を介して隣り合う切断面どうしを互いに接近させるように作用し、隙間13を狭める力となって作用する。そのことで本実施形態では樹脂複合体100に外観上の欠陥が生じることを抑制することができる。尚、この時、隙間13が完全に塞がったような状態になるまで隙間13を狭めてもよく、隙間13の一部を残した状態で狭めてもよい。即ち、本実施形態においては、隙間13を一部残すことで少量の樹脂を流入させるようにし、繊維強化樹脂層2と芯材1との間に優れたアンカー効果を発揮させるようにしてもよい。
【0047】
上記のような二次発泡性を有する樹脂発泡シート10を用いることで発泡倍率の高い芯材1を形成することができ軽量性に優れた樹脂複合体100を形成することができる。
【0048】
芯材1の見掛け密度(D’)は、200kg/m以下であってもよく、150kg/m以下であってもよい。芯材1の見掛け密度(D’)は、110kg/m以下であることが好ましい。芯材1の見掛け密度(D’)は、100kg/m以下であることがより好ましく、80kg/m以下であることがさらに好ましい。芯材1の見掛け密度(D’)は、30kg/m以上であることが好ましい。芯材1の見掛け密度(D’)は、樹脂発泡シート10の見掛け密度と同様に測定することができる。
【0049】
芯材1の見掛け密度(D’)は、軽量性に優れた樹脂複合体100を形成する上で、樹脂発泡シート10の見掛け密度(D)との比率(D’/D)が0.9以下であることが好ましい。該比率は、0.8以下であってもよく、0.7以下であってもよく、0.6以下であってもよい。該比率(D’/D)は、例えば、0.1以上とされる。
【0050】
外観美麗で強度に優れた樹脂複合体100を形成する上で繊維強化樹脂層2の厚さは、0.40mm以上であることが好ましい。繊維強化樹脂層2の厚さは、0.50mm以上であってもよく、0.60mm以上であってもよく、0.70mm以上であってもよい。軽量性に優れた樹脂複合体100を形成する上で繊維強化樹脂層2の厚さは、例えば、3.00mm以下とされる。繊維強化樹脂層2の厚さは、2.00mm以下であることが好ましい。
【0051】
樹脂複合体100、芯材1及び繊維強化樹脂層2の寸法は、複数箇所(例えば、4、5箇所)での測定値を算術平均した平均値として求めることができる。例えば、樹脂複合体100、芯材1、及び、繊維強化樹脂層2の厚さは、長方形の4辺の中央部を測定した4つの測定値の算術平均値として求めることができる。
【0052】
本実施形態で繊維強化樹脂層2を構成する繊維強化樹脂材は、繊維で構成された基材シートと該基材シートに含浸された樹脂とを備える。本実施形態の基材シートは、不織布であってもよく、織布であってもよい。基材シートは、繊維を一方向に引き揃えただけのシート(UD材)であってもよい。基材シートを織布とする場合、織布の織りは、平織であってもよく、綾織であってもよく、朱子織であってもよい。基材シートを構成する繊維は、例えば、アルミナ繊維、バサルト繊維、ロックウール、金属繊維、ガラス繊維、炭素繊維などが挙げられる。基材シートを構成する繊維は、例えば、アラミド繊維やポリエーテルエーテルケトン繊維などの樹脂繊維であってもよい。
【0053】
本実施形態の基材シートは、ガラス繊維製であるか炭素繊維製であるかの何れかであることが好ましい。炭素繊維は、ピッチ系炭素繊維であってもよくPAN系炭素繊維であってもよい。
【0054】
繊維強化樹脂材や繊維強化樹脂層2a,2bでの繊維含有量は、通常、50質量%以上とされる。繊維含有量は、55質量%以上であってもよく、60質量%以上であってもよい。繊維含有量は、例えば、80質量%以下とされる。繊維含有量は、75質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよい。
【0055】
前記基材シートとともに繊維強化樹脂材を構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。繊維強化樹脂材に優れた強度を発揮させるのに有利となる点で前記樹脂は熱硬化性樹脂であることが好ましい。即ち、本実施形態の繊維強化樹脂層2a,2bは、基材シートと該基材シートに含浸された未硬化な熱硬化性樹脂とを含むプリプレグシートで構成されることが好ましい。前記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂や不飽和ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0056】
本実施形態の樹脂複合体は、例えば、繊維強化樹脂材として前記プリプレグシートを用い、熱プレス法によって当該プリプレグシートと前記樹脂発泡シート10とを一体化させる方法によって製造することができる。
【0057】
本実施形態の樹脂複合体は、例えば、前記樹脂発泡シート10の二次発泡性を確認してから製造してもよい。樹脂複合体100の製造方法では、樹脂発泡シート10がどの程度の温度でどの程度の体積増加率を示すかを確認し、前記プリプレグシートに含まれる樹脂の流動開始温度や硬化温度などを勘案して熱プレス条件を設定するようにしてもよい。なお、前記隙間13を狭めて外観良好な樹脂複合体100を得る上において熱プレスは前記樹脂発泡シート10が二次発泡によって50%以上(より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上)体積増加する温度条件で実施されることが好ましい。
【0058】
本実施形態の樹脂複合体の製造方法では、上記のようにまずは樹脂発泡シート10の二次発泡性を確認して熱プレス条件を決定する予備検討工程が実施される。本実施形態の樹脂複合体の製造方法では、樹脂発泡シート10に切込線11を設ける切込工程が更に実施され得る。本実施形態の樹脂複合体の製造方法では、切込線11を設けた樹脂発泡シート10の片面又は両面に繊維強化樹脂材を積層して積層体を作製する積層工程が実施され得る。本実施形態の樹脂複合体の製造方法では、この積層体を成形型を使って成形して3次元的な形状を有する樹脂複合体100を作製する成形工程がさらに実施される。尚、本実施形態の樹脂複合体の製造方法では、成形工程後の樹脂複合体100の周りに余分な樹脂等が付着していることがあるのでそれらを除去する仕上げ工程を実施してもよい。
【0059】
前記切込工程は、前記のように刃型を用たり、カミソリやカッターナイフなどの刃物を用いて実施することができる。
【0060】
前記積層工程では、二次発泡性を有し、且つ、少なくとも一方の表面に切込線が設けられて該切込線で区分けされた複数の領域が形成されている前記樹脂発泡シートを用いて前記積層体が作製される。前記積層工程では、樹脂複合体100での芯材1と同様の形状に曲げた樹脂発泡シート10に繊維強化樹脂材を積層してもよく、平坦な状態の樹脂発泡シート10に繊維強化樹脂材を積層してもよい。即ち、樹脂複合体100における3次元形状は、積層工程での積層体において備えられるようにしてもよく、積層工程では平坦な積層体を形成しておいて成形工程で積層体に付与されるようにしてもよい。
【0061】
前記成形工程は、加熱された状態の前記積層体に厚さ方向に圧力を加える熱プレスを実施して前記樹脂発泡シートで構成された前記芯材と、前記繊維強化樹脂材で構成された前記繊維強化樹脂層とを備えた樹脂複合体を作製可能なものであれば特にその方式は問われない。
【0062】
前記熱プレスは、熱板の間に成形型を挟んでプレスする方式で実施してもオートクレーブ方式で実施してもよい。従って、前記成形工程で用いる成形型は、雄雌型であってもよく、雄型と雌型との何れか片方だけのものであってもよい。
【0063】
前記成形工程では、前記切込線の幅が広がる方向に曲げられて前記切込線の設けられている箇所にV溝状の隙間の形成された前記積層体に対して前記熱プレスを実施し、該熱プレスを前記樹脂発泡シートが二次発泡によって50%以上(より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上)体積増加する温度条件で実施することで該樹脂発泡シートの体積増加によって前記隙間が狭められた前記樹脂複合体を作製することができる。前記のように成形工程では、前記隙間を完全に埋めてしまわないようにし、二次発泡前よりも狭い隙間を残存させるようにし、繊維強化樹脂層の表面における樹脂切れ(繊維の露出)が生じない程度に繊維強化樹脂材から少量の樹脂をこの狭い隙間に流入させることができる。
【0064】
上記のようなことにより本実施形態の前記成形工程では外観の良好な樹脂複合体を製造可能であるばかりでなく、芯材と繊維強化樹脂層との間にアンカー効果による強固な接着力が発揮された樹脂複合体を製造することができる。また、本実施形態では、切込線の設けられている樹脂発泡シートを芯材の構成材料として利用することで複雑な形状の樹脂複合体でも簡便に製造することができる。
【0065】
本実施形態での樹脂発泡シート、樹脂複合体、及び、樹脂複合体の製造方法についての上記例示は、あくまで特定の事例を説明するためのものであり、本実施形態の樹脂発泡シート、樹脂複合体、及び、樹脂複合体の製造方法は、上記例示に何等限定されない。したがって、本実施形態の樹脂発泡シート、樹脂複合体、及び、樹脂複合体の製造方法については、上記例示の態様に限定されるものではなく、各種変更が加えられ得る。即ち、本発明は、上記例示に何等限定されるものではない。
【実施例0066】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】
まず、樹脂複合体の製造に用いるための成形型として図6図7に示すような2つのものを用意した。図6に示す第1成形型M1は、曲率半径200mmの球面状に凹入した成形面MP1を有する200mm×200mmの大きさの金型である。図7に示す第2成形型M2は、曲率半径100mmの半円筒状に凹入した成形面MP2を有する200mm×200mmの大きさの金型である。
【0068】
繊維強化樹脂層の形成材料としては、下記表1に示す2種類のプリプレグシートを用意した。
【0069】
【表1】
【0070】
芯材の形成材料としては、下記表2に示す2種類のポリエステル系樹脂を含む樹脂発泡シート(ポリエチレンテレフタレート樹脂発泡シート)を用意した。
【0071】
【表2】
【0072】
(体積増加率の測定)
樹脂発泡シートの体積増加率は以下の要領で測定した。
試験片のサイズは200×200×原厚み(mm)とした。
試験片の中央部には縦及び横方向に互いに直交する2本の直線を記入した。
直線は向かい合う各辺の中点同士をむすぶように記入し、各直線の長さを測定し、測定値を初期長さ(L01、L02:mm)とした。
また、各辺の中点の厚さ計4点をデジタルノギスで測定し、4点の測定値の平均値を初期厚さ(t0:mm)とした。
130℃の熱風循環式乾燥機の中に試験片を1時間置いた。
試験片を取出し、標準状態(JIS K7100:1999の記号「23/50」(温度23℃、相対湿度50%)2級の標準雰囲気下)の場所に1時間放置後、加熱前と同じ箇所の長さ(L11、L12:mm)及び厚さ(t1:mm)を測定し、下記式にて体積増加率(厚さ増加率)を算出した。

V0=(L01×L02×t0)
V1=(L11×L12×t1)
S=(V1-V0)/V0×100
S=:体積増加率(%)
V1:加熱後の体積(mm
V0:初めの体積(mm
【0073】
(実施例1)
(積層体の作製)
綾織の編み込まれた炭素繊維からなる基材シートに、未硬化のエポキシ樹脂が45質量%含侵されている繊維強化樹脂材(厚み:0.22mm、繊維目付:200g/m、三菱ケミカル社製「パイロフィルプリプレグ TR3523-381GMX」)を140mm×140mmに切り出し、4枚用意した。樹脂発泡シート1(厚さ:2.0mm、坪量:600g/m、樹脂:ポリエステル樹脂)を140mm×140mmの大きさに切り出し、表3に記載の仕様でプロッターカッターにて切込み加工を行った。
【0074】
次に、図6に示す立体形状のアルミニウム製金型(寸法:200mm×200mm、球体形状、球体R100)に離型剤(ケムリースジャパン社製「ケムリース2166」)を塗布して一日放置し離型処理を施した。
次に、用意した繊維強化樹脂材と樹脂発泡シートとを表3に記載の順に従って外周縁部を合わせながら金型に積層し積層体を作製するとともに成形面の形状に沿う形状となるように予備成形を実施した。
【0075】
しかる後、リリースフィルム(東レ社製「トレファンYM17S」、及び、ブリーザークロス(AIRTECH社製「AIRWEAVE N4」)で金型と予備成形された積層体とを全体的に包み、更に筒状のバギングフィルムで包んだのちに、バギングフィルムの端部をシーラントテープで接合し、バギングフィルムによって金型と予備積層体を密封して積層構造体を作製した。なお、バギングフィルムの一部にバッグバルブを配置した。
【0076】
次に、積層構造体をオートクレーブ内に供給し、積層構造体のバッグバルブを真空ラインと接続し、バギングフィルムで密封された空間部を真空度0.10MPaに減圧した。なお、空間部の減圧はその後も継続して行った。しかる後、積層体をその表面温度が90℃となるように加熱した。
【0077】
次に、積層体を130℃に加熱して60分間に亘って熱プレスを実施し、積層体を厚み方向に0.13MPaの圧力で加圧した。そして、この加熱によってエポキシ樹脂を硬化させた。その後、積層体を30℃に冷却し、繊維強化樹脂層が芯材の両面に積層された樹脂複合体を作製した。
【0078】
樹脂複合体の製造における積層体の予備形成の可否を下記の表3に示す。
また、製造された樹脂複合体について次のように評価した。
【0079】
(外観品質)
得られた樹脂複合体の外観を目視にて観察し、以下の判定基準によって繊維強化樹脂層の表面品質を5段階に評価した。結果を併せて表3に示す。

判定1:50mm×50mm面積内のボイド数が101個以上である場合。
判定2:50mm×50mm面積内のボイド数が71-100個である場合。
判定3:50mm×50mm面積内のボイド数が51-70個である場合。
判定4:50mm×50mm面積内のボイド数が6-50個である場合。
判定5:50mm×50mm面積内のボイド数が0-5個である場合。
【0080】
(実施例2~4、比較例1~2)
樹脂発泡シートの種類や繊維強化樹脂層の構成を表3に示すように変更した以外は実施例1と同様に樹脂複合体を作製し、実施例1と同様に評価した。
結果を併せて表3に記す。
【0081】
【表3】
【0082】
以上のことからも本発明によれば3次元的形状を有する樹脂複合体が簡便に作製できることがわかる。
【符号の説明】
【0083】
1:芯材、1a:第1表面、1b:第2表面、
2:繊維強化樹脂層、2a:第1繊維強化樹脂層、2b:第2繊維強化樹脂層、
10:樹脂発泡シート、11:切込線、12:(切込線で区分けされた)領域、
100:樹脂複合体
X:長手方向
Y:短手方向
Z:厚さ方向
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7