(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146659
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】荷電粒子線源および荷電粒子線装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/067 20060101AFI20231004BHJP
H01J 37/06 20060101ALI20231004BHJP
H01J 37/08 20060101ALI20231004BHJP
H01J 37/07 20060101ALI20231004BHJP
H01J 37/073 20060101ALI20231004BHJP
H01J 37/16 20060101ALI20231004BHJP
H01J 37/18 20060101ALI20231004BHJP
H01J 37/248 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
H01J37/067
H01J37/06 A
H01J37/06 B
H01J37/08
H01J37/07
H01J37/073
H01J37/16
H01J37/18
H01J37/248 A
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053960
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100161540
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 良伸
(72)【発明者】
【氏名】神野 恭一
(72)【発明者】
【氏名】福田 知久
(72)【発明者】
【氏名】有馬 則和
(72)【発明者】
【氏名】岡野 康之
(72)【発明者】
【氏名】山本 圭一
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA02
5C101AA32
5C101BB05
5C101CC01
5C101CC04
5C101CC11
5C101CC15
5C101DD06
5C101DD07
5C101DD08
(57)【要約】
【課題】容易にエミッタを交換可能な荷電粒子線源を提供する。
【解決手段】本発明に係る荷電粒子線源は、電子銃チャンバー10と、ケーブルを支持する絶縁部材、およびケーブルに電気的に接続された第1端子を含む第1ユニットと、荷電粒子を放出するエミッタ、およびエミッタに電気的に接続された第2端子を含む第2ユニットと、を含み、第1ユニットは、チャンバーの側壁に設けられた貫通孔に固定され、第2ユニットは、第1ユニットに対して着脱可能であり、チャンバー内において、エミッタが光軸上に配置されることによって、第1端子と第2端子が接触する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバーと、
ケーブルを支持する絶縁部材、および前記ケーブルに電気的に接続された第1端子を含む第1ユニットと、
荷電粒子を放出するエミッタ、および前記エミッタに電気的に接続された第2端子を含む第2ユニットと、
を含み、
前記第1ユニットは、前記チャンバーの側壁に設けられた貫通孔に固定され、
前記第2ユニットは、前記第1ユニットに対して着脱可能であり、
前記チャンバー内において、前記エミッタが光軸上に配置されることによって、前記第1端子と前記第2端子が接触する、荷電粒子線源。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1ユニットは、前記第2ユニットを支持する支持部材を有し、
前記第2ユニットが前記支持部材で支持されることによって、前記エミッタが前記光軸上に配置され、前記第1端子と前記第2端子が接触する、荷電粒子線源。
【請求項3】
請求項2において、
前記第2ユニットは前記支持部材に嵌め合わされ、
前記第2ユニットが前記支持部材に嵌め合わされることによって、前記エミッタが前記光軸上に配置される、荷電粒子線源。
【請求項4】
請求項1において、
前記チャンバーを密閉する蓋を含む、荷電粒子線源。
【請求項5】
請求項4において、
前記第2ユニットは、前記蓋に取り付けられ、
前記蓋が前記チャンバーに取り付けられることによって、前記エミッタが前記光軸上に配置され、前記第1端子と前記第2端子が接触する、荷電粒子線源。
【請求項6】
請求項4または5において、
前記蓋に取り付けられた真空ポンプを含む、荷電粒子線源。
【請求項7】
請求項6において、
前記真空ポンプは、ゲッターポンプである、荷電粒子線源。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項において、
前記第2端子は、弾性体である、荷電粒子線源。
【請求項9】
請求項8において、
前記第2端子は、板バネである、荷電粒子線源。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項において、
前記第2ユニットと交換可能な他の前記第2ユニットを含む、荷電粒子線源。
【請求項11】
請求項10において、
前記第2ユニットと前記他の第2ユニットは、電子放出の仕組みが異なる、荷電粒子線源。
【請求項12】
請求項11において、
前記第2ユニットは、ショットキー電子銃、冷陰極電界放出電子銃、または熱電子放出電子銃を構成し、
前記他の第2ユニットは、ショットキー電子銃、冷陰極電界放出電子銃、または熱電子放出電子銃を構成する、荷電粒子線源。
【請求項13】
請求項11において、
前記第2ユニットと前記他の第2ユニットは、エミッタの種類が異なる、荷電粒子線源。
【請求項14】
請求項13において、
前記第2ユニットのエミッタの材質は、六ホウ化ランタンであり、
前記他の第2ユニットのエミッタの材質は、タングステンである、荷電粒子線源。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれか1項に記載の荷電粒子線源を含む、荷電粒子線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線源および荷電粒子線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子顕微鏡や集束イオンビーム装置などの荷電粒子線装置では、電子銃やイオン銃が荷電粒子線源として用いられる。電子銃やイオン銃に用いられるエミッタには寿命があるため、定期的に交換する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、電子銃室を高真空に維持したまま、簡単にフィラメント(エミッタ)を交換できる電子ビーム発生装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、電子銃やイオン銃などの荷電粒子線源では、容易に、エミッタを交換可能な装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る荷電粒子線源の一態様は、
チャンバーと、
ケーブルを支持する絶縁部材、および前記ケーブルに電気的に接続された第1端子を含む第1ユニットと、
荷電粒子を放出するエミッタ、および前記エミッタに電気的に接続された第2端子を含む第2ユニットと、
を含み、
前記第1ユニットは、前記チャンバーの側壁に設けられた貫通孔に固定され、
前記第2ユニットは、前記第1ユニットに対して着脱可能であり、
前記チャンバー内において、前記エミッタが光軸上に配置されることによって、前記第1端子と前記第2端子が接触する。
【0007】
このような荷電粒子線源では、第2ユニットが第1ユニットに対して着脱可能であるため、容易にエミッタを交換できる。また、このような荷電粒子線源では、エミッタが光軸上に配置されることによって第1端子と第2端子が接触するため、容易にエミッタを交換できる。
【0008】
本発明に係る荷電粒子線装置の一態様は、
上記荷電粒子線源を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る電子顕微鏡の構成を示す図。
【
図2】第1実施形態に係る電子顕微鏡の電子銃を模式的に示す断面図。
【
図3】第1実施形態に係る電子顕微鏡の電子銃を模式的に示す断面図。
【
図4】第1実施形態に係る電子顕微鏡の電子銃を模式的に示す断面図。
【
図6】エミッタを交換する工程を模式的に示す断面図。
【
図7】第2実施形態に係る電子顕微鏡の電子銃を模式的に示す断面図。
【
図8】第3実施形態に係る電子顕微鏡の電子銃を模式的に示す断面図。
【
図9】第4実施形態に係る電子顕微鏡の電子銃を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0011】
1. 第1実施形態
1.1. 電子顕微鏡
まず、第1実施形態に係る電子顕微鏡について図面を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態に係る電子顕微鏡1の構成を示す図である。
【0012】
電子顕微鏡1は、電子プローブで試料Sを走査して走査像を取得する走査電子顕微鏡である。電子顕微鏡1では、走査像として、二次電子像や、元素マップを取得できる。
【0013】
電子顕微鏡1は、
図1に示すように、電子銃(荷電粒子線源の一例)100と、コンデンサーレンズ110と、走査コイル120と、対物レンズ130と、試料ステージ140と、二次電子検出器150と、X線検出器160と、高圧電源170と、高圧ケーブル180と、を含む。
【0014】
電子銃100は、電子線EBを放出する。電子銃100の詳細については後述する。
【0015】
コンデンサーレンズ110および対物レンズ130は、電子銃100から放出された電子線EBを集束させて電子プローブを形成する。
【0016】
走査コイル120は、電子線EBを二次元的に偏向させる。走査コイル120で電子線EBを二次元的に偏向させることによって、電子プローブで試料Sを走査できる。
【0017】
鏡筒101は、電子顕微鏡1において電子プローブの形成と走査を行う部分である。電子銃100、コンデンサーレンズ110、走査コイル120、および対物レンズ130は、鏡筒101を構成している。鏡筒101には、電子の放出源となるエミッタが収容される電子銃室102と、コンデンサーレンズ110、走査コイル120、および対物レンズ130等の電子光学系が収容される中間室104と、が設けられている。
【0018】
試料ステージ140は、試料室106に配置されている。試料ステージ140には、試料Sが載置される。試料ステージ140は、試料Sを保持することができる。試料ステージ140は、試料Sを移動させるための移動機構を有している。
【0019】
二次電子検出器150は、電子線EBが試料Sに照射されることによって試料Sから放出された二次電子を検出する。電子プローブで試料Sを走査し、試料Sから放出された二次電子を二次電子検出器150で検出することで、二次電子像を得ることができる。なお、電子顕微鏡1は、電子線EBが試料Sに照射されることによって試料Sから放出された反射電子を検出する反射電子検出器を搭載していてもよい。
【0020】
X線検出器160は、電子線EBが試料Sに照射されることによって発生した特性X線を検出する。X線検出器160は、例えば、エネルギー分散型X線検出器である。なお、X線検出器160は、波長分散型X線検出器であってもよい。電子プローブで試料Sを走
査し、試料Sから放出された特性X線をX線検出器160で検出することで、元素マップを得ることができる。
【0021】
高圧電源170は、電子銃100に負の高電圧を供給する。高圧電源170は、高圧ケーブル180を介して、電子銃100のエミッタや各種電極に電気的に接続されている。
【0022】
1.2. 電子銃の構成
図2~
図4は、第1実施形態に係る電子顕微鏡1の電子銃100を模式的に示す断面図である。
図2~
図4には、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、およびZ軸を図示している。
【0023】
電子銃100は、
図2~
図4に示すように、電子銃チャンバー10と、チャンバー蓋16と、碍子ユニット(第1ユニットの一例)20と、エミッタユニット(第2ユニットの一例)30と、アノード40と、を含む。電子銃100は、ショットキー電子銃である。ショットキー電子銃は、ショットキー効果を利用した電子銃である。ショットキー効果は、物質に強い電界をかけるとポテンシャル障壁が下がり熱電子を放出しやすくなる現象である。
【0024】
電子銃チャンバー10には、エミッタユニット30が収容される電子銃室102が設けられている。電子銃チャンバー10の側壁11には、側壁11を貫通するパイプ12が接合されている。図示はしないが、パイプ12には、超高真空排気用ポンプ(イオンポンプ等)が接続されている。超高真空排気用ポンプによって、電子銃チャンバー10内を超高真空領域(10-5Pa以下)に維持できる。パイプ12には、パイプ14が接続されている。図示はしないが、パイプ14には、粗引き用の真空ポンプ(油回転ポンプ等)が接続されている。
【0025】
電子銃チャンバー10の上部の開口は、チャンバー蓋16によって気密に封止されている。チャンバー蓋16は、ボルト18を通す貫通孔が設けられたフランジを有し、フランジがボルト18で電子銃チャンバー10に固定されている。
【0026】
碍子ユニット20は、パイプ21と、フランジ22と、フランジ23と、プレート24と、支持部材25と、碍子(絶縁部材)26と、端子28aと、端子28bと、端子28cと、を含む。
【0027】
碍子ユニット20は、電子銃チャンバー10の側壁11に設けられた貫通孔11aに固定されている。貫通孔11aにはパイプ21が挿入され、パイプ21と側壁11とは、溶接によって接合されている。パイプ21の先端には、フランジ22が接合されている。
【0028】
碍子26は、高圧ケーブル180を支持している。碍子26は、高圧ケーブル180を絶縁している。高圧ケーブル180は、高圧電源170とエミッタユニット30とを結ぶ高耐電圧のケーブルである。高圧ケーブル180は、複数の心線を含む。
【0029】
碍子26は、絶縁体である。碍子26は、パイプ21に挿入されている。碍子26の後端にはフランジ23が、溶接またはろう付け等で接合されている。フランジ23は、メタルOリング2を介してフランジ22にボルト3で固定されている。これにより、フランジ22とフランジ23の間を気密に封止できる。
【0030】
碍子26の先端には、エミッタユニット30を支持する支持部材25が設けられている。碍子26の先端には、プレート24がろう付けで接合されており、プレート24を介して、碍子26に支持部材25が固定されている。
【0031】
なお、高圧ケーブル180を絶縁し、かつ、高圧ケーブル180を支持する絶縁部材は、碍子26に限定されない。
【0032】
支持部材25には、エミッタユニット30が嵌め合わされる。支持部材25は、例えば、筒状の部材であり、筒内にエミッタユニット30が挿入される。エミッタユニット30が支持部材25に嵌め合わされることによって、エミッタユニット30が位置決めされ、エミッタ35が光軸OA上に配置される。光軸OAは、図示の例では、Z軸に平行である。
【0033】
碍子26の先端には、複数の端子が固定されている。図示の例では、碍子26の先端には、端子28a、端子28b、および端子28cが固定されている。端子28a、端子28b、および端子28cは、高圧ケーブル180に電気的に接続されている。
【0034】
端子28aは、例えば、導電性のパイプである。端子28aは、光軸OAと直交する方向(Y軸に沿った方向)に長手方向を持つ形状を有している。端子28bおよび端子28bは、端子28aと同様に導電性のパイプであり、端子28aと同様の形状を有している。
【0035】
【0036】
フランジ22およびフランジ23には、位置決めピン4を通す穴が設けられている。フランジ23に設けられた穴およびフランジ22に設けられた穴に位置決めピン4を挿入することによって、碍子ユニット20の回転を防止できる。
【0037】
エミッタユニット30は、フランジ31と、端子32aと、端子32bと、端子32cと、絶縁部材33と、フィードスルー34aと、フィードスルー34bと、フィードスルー34cと、エミッタ35と、ホルダー36と、電極37aと、電極37bと、引出電極38と、を含む。
【0038】
フランジ31は、筒状であり、支持部材25の内側に挿入される。フランジ31は、支持部材25に嵌め合わされる。フランジ31と支持部材25の嵌め合いによって、エミッタ35が位置決めされる。フランジ31と支持部材25はボルト5によって固定される。
【0039】
端子32a、端子32b、および端子32cは、絶縁部材33上に固定されている。端子32aは、導電性を有する。端子32aは、弾性体である。端子32aは、例えば、板バネである。端子32bおよび端子32cは、端子32aと同様に導電性を有し、板バネである。
【0040】
端子32aは、フィードスルー34aに接続されている。フィードスルー34aの先端には螺旋状の溝が形成されており、端子32aが絶縁部材33にナット6で固定されている。同様に、端子32bは、フィードスルー34bに接続されており、絶縁部材33にナット6で固定されている。同様に、端子32cは、フィードスルー34cに接続されており、絶縁部材33にナット6で固定されている。
【0041】
フィードスルー34a、フィードスルー34b、およびフィードスルー34cは、絶縁部材33内に挿入されている。フィードスルー34a、フィードスルー34b、およびフィードスルー34cは、絶縁部材33によって支持されている。フィードスルー34a、フィードスルー34b、およびフィードスルー34cは、絶縁部材33によって絶縁されている。
【0042】
フィードスルー34aはエミッタ35の一方の端子に接続され、フィードスルー34bはエミッタ35の他方の端子に接続されている。これにより、エミッタ35と高圧電源170を電気的に接続できる。
【0043】
図示はしないが、エミッタ35と引出電極38の間にはサプレッサーが配置されている。サプレッサーには、エミッタ35に対してマイナスの電位が与えられる。フィードスルー34cは、サプレッサーに電気的に接続されている。フィードスルー34cは、絶縁部材33に設けられたメタライズを介して、フランジ8に電気的に接続されている。フランジ8は、サプレッサーに接触している。したがって、サプレッサーと高圧電源170を電気的に接続できる。電子銃100では、メタライズを介してサプレッサーと高圧ケーブル180を電気的に接続できるため、放電の原因となる部材を削減でき、エミッタ35が破損するリスクを低減できる。
【0044】
エミッタ35は、電子の放出源である。エミッタ35は、例えば、タングステンチップの表面を酸化ジルコニウムで覆ったものである。
【0045】
エミッタ35は、フィードスルー34aおよびフィードスルー34bで支持されている。エミッタ35とフィードスルー34aは、ボルト7aによって固定されている。エミッタ35とフィードスルー34bは、ボルト7bによって固定されている。
【0046】
ホルダー36は、エミッタ35を囲んでいる。ホルダー36は、筒状であり、その内側にエミッタ35が嵌め合わされている。これにより、エミッタ35を位置決めできる。絶縁部材33には、フランジ8がろう付けされており、ホルダー36とフランジ8がナット9によって固定されている。
【0047】
引出電極38は、エミッタ35の下に配置されている。引出電極38には、エミッタ35から放出された電子を通過させる孔が設けられている。引出電極38は、電極37aおよび電極37bによって支持されている。電極37aは、フランジ31に螺合している。電極37bは、電極37aにねじによって固定されている。電極37bの先端に、引出電極38が固定されている。引出電極38は、不図示の位置調整用ねじによって機械的に位置を調整できる。
【0048】
引出電極38には、エミッタ35から電子を引き出すための引出電圧が印加される。支持部材25は、高圧ケーブル180に電気的に接続されており、支持部材25とフランジ31は接触している。そのため、引出電圧は、高圧ケーブル180、支持部材25、フランジ31、電極37a、および電極37bを介して引出電極38に印加される。
【0049】
アノード40は、引出電極38の下に配置されている。アノード40の先端には、アパーチャー42が取り付けられている。アパーチャー42は、ホルダー43に螺合されている。アパーチャー42は、電子銃チャンバー10内と、電子銃チャンバー10の直下の中間室104との間のオリフィスとして機能する。オリフィスは、電子線を通し、かつ、2つの部屋の圧力差を保つ絞りである。ホルダー43は、アノード40に固定されている。
【0050】
1.3. 電子銃の動作
電子銃100では、高圧電源170から高圧ケーブル180を介して、エミッタ35にエミッタ35を加熱するための電流が供給される。また、高圧電源170から高圧ケーブル180を介してエミッタ35に負の高電圧が印加される。また、高圧電源170から高圧ケーブル180を介して、サプレッサーに、エミッタ35に対して負の電位が印加される。また、高圧電源170から高圧ケーブル180を介して、引出電極38に引出電圧が
印加される。
【0051】
電子銃100では、エミッタ35に電流が供給されてエミッタ35が加熱されると、引出電極38がエミッタ35の表面につくる強電界によって、エミッタ35から電子が引き出される。このとき、エミッタ35から放出された不要な熱電子は、サプレッサーによって遮蔽され、電子銃100から放出されない。エミッタ35から引き出された電子は、グランド電位のアノード40によって加速され、コンデンサーレンズ110によって集束される。
【0052】
1.4. エミッタの交換
図6は、エミッタ35を交換する工程を模式的に示す断面図である。
【0053】
まず、電子銃チャンバー10内を大気圧にする。次に、
図4に示すボルト18を外して、電子銃チャンバー10からチャンバー蓋16をとる。次に、
図2に示すエミッタユニット30と支持部材25を固定するボルト5を外す。
【0054】
次に、
図6に示すように、エミッタユニット30を持ち上げて、電子銃チャンバー10の上部の開口からエミッタユニット30を取り出す。
【0055】
次に、
図3に示すフィードスルー34aとエミッタ35を固定するボルト7aおよびフィードスルー34bとエミッタ35を固定するボルト7bを緩めて、エミッタ35を取り外す。そして、新たなエミッタ35を取り付ける。
【0056】
具体的には、新たなエミッタ35を、ボルト7aとボルト7bでフィードスルー34aおよびフィードスルー34bに固定する。このとき、エミッタ35は、ホルダー36に嵌め合わされて位置決めされる。
【0057】
新たなエミッタ35が取り付けられたエミッタユニット30において、エミッタ35と引出電極38の位置を調整する。そして、エミッタユニット30を炉に入れてベーキング(加熱処理)する。ベーキングを行うことによって、エミッタユニット30に吸蔵されているガスを強制的に脱ガスできる。
【0058】
ベーキングの後、エミッタユニット30を、電子銃チャンバー10の上部の開口から碍子ユニット20の支持部材25にZ軸に沿って挿入する。これにより、エミッタユニット30が支持部材25に嵌め合わされてエミッタ35が位置決めされる。
【0059】
ここで、支持部材25の中心軸は、光軸OAに一致している。電子銃100では、フランジ22のフランジ23と接触する面は、フランジ23が接触した際に、支持部材25の中心軸が光軸OAに一致するように正確に位置決めされている。そのため、フランジ22にフランジ23を固定することによって、支持部材25の中心軸は、光軸OAに一致する。したがって、エミッタユニット30が支持部材25に嵌め合わされることによって、エミッタ35が光軸OA上に位置する。
【0060】
また、支持部材25のフランジ31と接触する面25aは、エミッタユニット30のZ方向の位置を決める。したがって、エミッタユニット30が支持部材25に嵌め合わされることによって、エミッタ35のZ方向の位置が決まる。
【0061】
このように、電子銃100では、エミッタユニット30を支持部材25に嵌めあわせることによって、エミッタ35を位置決めできる。
【0062】
エミッタユニット30を支持部材25に挿入することによって、エミッタユニット30の端子32aが端子28aに接触する。端子32cは弾性体(板バネ)であり、端子32cは端子28cに接触してたわむ。そのため、端子32cを端子28cに確実に接続できる。
【0063】
同様に、エミッタユニット30を支持部材25に挿入することによって、端子32aが端子28aに接触する。端子32aは弾性体(板バネ)であり、端子32aは端子28aに接触してたわむ。そのため、端子32aを端子28aに確実に接続できる。
【0064】
同様に、エミッタユニット30を支持部材25に挿入することによって、端子32bが端子28bに接触する。端子32bは弾性体(板バネ)であり、端子32bは端子28bに接触してたわむ。そのため、端子32bを端子28bに確実に接続できる。
【0065】
エミッタユニット30の各端子が碍子ユニット20の各端子に接触することによって、エミッタユニット30と高圧電源170が電気的に接続される。
【0066】
エミッタユニット30を支持部材25に挿入した後、フランジ31と支持部材25をボルト5で固定する。
【0067】
次に、
図4に示すように、チャンバー蓋16を、ボルト18で電子銃チャンバー10に固定し、電子銃チャンバー10の上部の開口をチャンバー蓋16で閉じる。そして、鏡筒内101を真空排気する。
【0068】
次に、電子顕微鏡1の鏡筒101全体をベーキングする。
【0069】
以上の工程により、エミッタ35を交換できる。
【0070】
1.5. 効果
電子銃100では、碍子ユニット20は電子銃チャンバー10の側壁11に設けられた貫通孔11aに固定され、エミッタユニット30は碍子ユニット20に対して着脱可能である。また、電子銃チャンバー10内において、エミッタ35が光軸OA上に配置されることによって端子28aと端子32aが接触し、端子28bと端子32bが接触し、端子28cと端子28bが接触する。
【0071】
このように電子銃100では、エミッタユニット30が碍子ユニット20に対して着脱可能であるため、容易にエミッタ35を交換できる。また、電子銃100では、エミッタ35が光軸OA上に配置されることによってエミッタユニット30の各端子が碍子ユニット20の各端子に接触するため、容易にエミッタ35を交換できる。
【0072】
また、電子銃100では、エミッタユニット30を碍子ユニット20と独立して取り外すことができるため、エミッタ35の交換の際に、作業対象となる部材を小さくできる。したがって、作業性を向上できる。また、エミッタユニット30を単体でベーキングできるため、ベーキングの時間を短縮できる。
【0073】
例えば、エミッタ35や引出電極38、碍子26が1つのユニットである場合、鏡筒101からエミッタ35を取り出す際に、作業対象が大きくなってしまうため、作業性が悪い。また、エミッタ35や引出電極38、碍子26が1つのユニットである場合、ユニット単体でのベーキングは難しいため、ベーキング時間が長くなる。
【0074】
電子銃100では、碍子ユニット20が電子銃チャンバー10の側壁11に取り付けら
れているため、高圧ケーブル180を鏡筒101の側方から導入できる。したがって、電子銃100では、例えば、高圧ケーブル180が装置の上方から導入される場合と比べて、装置の高さを小さくできる。
【0075】
電子銃100では、碍子ユニット20は、エミッタユニット30を支持する支持部材25を有し、エミッタユニット30が支持部材25で支持されることによって、エミッタ35が光軸OA上に配置され、エミッタユニット30の各端子が碍子ユニット20の各端子と接触する。このように電子銃100では、エミッタユニット30が支持部材25で支持されることによってエミッタ35が位置決めされるため、エミッタ35の位置をねじなどで機械的に調整する必要がない。したがって、エミッタ35の交換を短時間で行うことができる。また、エミッタ35の位置を機械的に調整する必要がないため、表面積の大きいベローズなどの部品を用いなくてもよく、電子銃チャンバー10内を高真空に維持できる。
【0076】
電子銃100では、支持部材25は筒状であり、エミッタユニット30が支持部材25に挿入されることによって、エミッタ35が光軸OA上に配置される。そのため、電子銃100では、エミッタ35の交換を短時間で行うことができ、電子銃チャンバー10内を高真空に維持できる。
【0077】
電子銃100では、エミッタユニット30の各端子は、弾性体である。エミッタユニット30の各端子は、例えば、板バネである。そのため、電子銃100では、エミッタユニット30の各端子を、碍子ユニット20の各端子に確実に接触させることができる。
【0078】
なお、上記の第1実施形態では、エミッタユニット30の各端子が弾性体(板バネ)であったが、碍子ユニット20の各端子が弾性体(板バネ)であってもよい。
【0079】
2. 第2実施形態
2.1. 電子顕微鏡
次に、第2実施形態に係る電子顕微鏡1について説明する。第2実施形態に係る電子顕微鏡1では、電子銃の種類を変更できる。以下では、上述した第1実施形態に係る電子顕微鏡1の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0080】
2.2. 電子銃
図7は、第2実施形態に係る電子顕微鏡1の電子銃200を模式的に示す断面図である。以下、電子銃200において、上述した電子銃100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0081】
電子銃200は、
図2~
図4に示すショットキー電子銃を構成するエミッタユニット30と、
図7に示す冷陰極電界放出電子銃を構成するエミッタユニット30Dと、を含む。電子銃200では、碍子ユニット20にエミッタユニット30を取り付けることもできるし、碍子ユニット20にエミッタユニット30Dを取り付けることもできる。
【0082】
冷陰極電界放出電子銃は、エミッタ35aに常温で強電界をかけトンネル効果により電子を放出させる電子銃である。エミッタユニット30Dにおいて、エミッタ35aは、例えば、タングステンチップである。
【0083】
図2に示すエミッタユニット30は3つの端子(端子32a、端子32b、端子32c)を有していたが、エミッタユニット30Dはサプレッサーを有さないため、エミッタ35aに電気的に接続される2つの端子を有している。例えば、エミッタユニット30Dは、3つ目の端子32cを有し、端子32cはダミーの端子であってもよい。なお、エミッ
タユニット30Dにおいて端子の数は特に限定されない。
【0084】
電子銃200は、
図7に示すように、真空ポンプ202を含む。真空ポンプ202は、例えば、非蒸発型ゲッターポンプである。非蒸発型ゲッターポンプは、固体表面に気体分子を吸着させることで排気を行うゲッター作用を利用した真空ポンプである。
【0085】
真空ポンプ202は、チャンバー蓋16に取り付け可能である。真空ポンプ202は、非蒸発型ゲッターで被覆された基板204を含む。非蒸発型ゲッターは、気体分子を吸着させて排気する材料であり、例えば、チタンや、ジルコニウム、これらの金属の合金などである。真空ポンプ202は、チャンバー蓋16に対して着脱可能である。
【0086】
2.3. 電子銃の動作
電子銃200において、エミッタユニット30Dを碍子ユニット20に取り付けた場合、高圧電源170から高圧ケーブル180を介して、エミッタ35aに高電圧が印加される。また、高圧電源170から高圧ケーブル180を介して、引出電極38に引出電圧が印加される。
【0087】
電子銃200では、引出電極38に引出電圧が印加されると、エミッタ35aからトンネル効果によって電子が放出される。エミッタ35aから引き出された電子は、グランド電位のアノード40によって加速され、コンデンサーレンズ110によって集束される。
【0088】
なお、電子銃200において、エミッタユニット30を取り付けた場合の動作は、上述した第1実施形態と同様であり、その説明を省略する。
【0089】
2.4. エミッタユニットの交換
以下では、エミッタユニット30からエミッタユニット30Dに交換する場合について説明する。
【0090】
まず、電子銃チャンバー10内を大気圧にする。次に、
図4に示すボルト18を外して、電子銃チャンバー10からチャンバー蓋16をとる。次に、
図2に示すエミッタユニット30と支持部材25を固定するボルト5を外す。
【0091】
次に、
図6に示すように、エミッタユニット30を持ち上げて、電子銃チャンバー10の上部の開口からエミッタユニット30を取り出す。
【0092】
次に、エミッタユニット30Dをベーキングする。そして、ベーキングされたエミッタユニット30Dを電子銃チャンバー10の上部の開口から碍子ユニット20の支持部材25にZ軸に沿って挿入する。これにより、エミッタユニット30Dが支持部材25に嵌め合わされてエミッタ35aが位置決めされる。
【0093】
エミッタユニット30Dを支持部材25に挿入することによって、エミッタユニット30Dの各端子が碍子ユニット20の各端子に接触する。エミッタユニット30の各端子は、碍子ユニット20の各端子に接触してたわむ。エミッタユニット30Dの各端子が碍子ユニット20の各端子に接触することによって、エミッタユニット30Dと高圧電源170が電気的に接続される。
【0094】
エミッタユニット30Dを支持部材25に挿入した後、フランジ31と支持部材25をボルト5で固定する。
【0095】
次に、チャンバー蓋16に基板204を取付ける。基板204が取り付けられたチャン
バー蓋16を、ボルト18で電子銃チャンバー10に固定し、電子銃チャンバー10の上部の開口をチャンバー蓋16で閉じる。そして、鏡筒101内を真空排気する。
【0096】
次に、電子顕微鏡1の鏡筒101全体をベーキングする。このベーキングによって、非蒸発型ゲッターを活性化できる。
【0097】
以上の工程により、エミッタユニット30からエミッタユニット30Dに交換できる。
【0098】
2.5. 効果
電子銃200では、電子銃チャンバー10を密閉するチャンバー蓋16に取り付けられた真空ポンプ202を含む。電子銃200では、碍子ユニット20が電子銃チャンバー10の側壁11に設けられた貫通孔11aに固定されているため、チャンバー蓋16に真空ポンプ202を取付けることができる。真空ポンプ202によって、電子銃チャンバー10内を高真空に維持できる。
【0099】
電子銃200は、エミッタユニット30と、エミッタユニット30と交換可能なエミッタユニット30Dと、を含む。エミッタユニット30とエミッタユニット30Dは、電子放出の仕組みが異なる。そのため、電子銃200では、電子放出の仕組みが異なる複数の電子銃を用いて試料Sの観察や分析を行うことができる。
【0100】
例えば、電子銃200では、エミッタユニット30を碍子ユニット20に取り付けることによってショットキー電子銃として動作させることができる。また、電子銃200では、エミッタユニット30Dを碍子ユニット20に取り付けることによって冷陰極電界放出電子銃として動作させることができる。
【0101】
2.6. 変形例
上記の実施形態では、ショットキー電子銃を構成するエミッタユニット30と冷陰極電界放出電子銃を構成するエミッタユニット30Dが交換可能であったが、交換可能な電子銃の種類はこれに限定されない。例えば、電子銃200は、さらに、熱電子放出電子銃を構成するエミッタユニットを含んでいてもよい。すなわち、電子銃200を、熱電子放出電子銃として動作させてもよい。このように、電子銃200では、電子放出の仕組みが異なる電子銃として動作可能な複数のエミッタユニットを含むことができる。
【0102】
また、エミッタユニット30とエミッタユニット30Dはエミッタの材質が異なっていてもよい。例えば、エミッタユニット30は熱電子放出電子銃を構成し、エミッタユニット30のエミッタ35の材質は六ホウ化ランタンであり、エミッタユニット30Dは熱電子放出電子銃を構成し、エミッタ35aの材質はタングステンであってもよい。
【0103】
また、エミッタユニットの種類に応じてエミッタユニットの端子の数を変更してもよい。このとき、エミッタユニットの端子の数に応じて、碍子ユニット20の端子の数を変更してもよい。例えば、碍子ユニット20が複数の端子を有し、複数の端子からエミッタユニットの端子の数に応じて有効な端子と無効な端子を切り替え可能であってもよい。
【0104】
3. 第3実施形態
3.1. 電子顕微鏡
次に、第3実施形態に係る電子顕微鏡1について説明する。第3実施形態に係る電子顕微鏡1の構成は、上述した
図1に示す電子顕微鏡1の構成と電子銃の構成が異なる。以下では、上述した第1実施形態に係る電子顕微鏡1の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0105】
3.2. 電子銃
図8は、第3実施形態に係る電子顕微鏡1の電子銃300を模式的に示す断面図である。以下、電子銃300において、上述した電子銃100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0106】
電子銃100では、
図4に示すように、碍子ユニット20がエミッタユニット30を支持する支持部材25を有し、エミッタユニット30が支持部材25で支持されることによってエミッタ35が光軸OA上に配置され、エミッタユニット30の各端子が碍子ユニット20の各端子に接触した。
【0107】
これに対して、電子銃300では、
図8に示すように、エミッタユニット30はチャンバー蓋16に取り付けられ、チャンバー蓋16が電子銃チャンバー10に取り付けられることによってエミッタ35が光軸OA上に配置され、エミッタユニット30の各端子が碍子ユニット20の各端子に接触する。
【0108】
エミッタユニット30は、チャンバー蓋16に取り付けられる。
図8に示すように、チャンバー蓋16とエミッタユニット30の間には、絶縁部材302が配置されている。絶縁部材302によってエミッタユニット30(フランジ31)とチャンバー蓋16との間を電気的に絶縁できる。
【0109】
エミッタユニット30は、チャンバー蓋16で支持されている。電子銃300では、碍子ユニット20の支持部材25は、エミッタユニット30を支持していない。電子銃300では、支持部材25がエミッタユニット30(フランジ31)と接触することによって、高圧電源170と引出電極38を電気的に接続する。なお、図示はしないが、エミッタユニット30と支持部材25が直接接触せずに、支持部材25に設けられたピンがフランジ31と接触して、高圧電源170と引出電極38を電気的に接続してもよい。
【0110】
エミッタ35は、チャンバー蓋16が電子銃チャンバー10に取り付けられることによって位置決めされる。
【0111】
3.3. エミッタの交換
まず、電子銃チャンバー10内を大気圧にする。次に、ボルト18を外して、電子銃チャンバー10からエミッタユニット30が固定されたチャンバー蓋16をとる。
【0112】
次に、チャンバー蓋16から絶縁部材302を取り外す。次に、絶縁部材302からエミッタユニット30を外す。
【0113】
次に、エミッタユニット30からエミッタ35を取り外して、新たなエミッタ35を取り付ける。
【0114】
新たなエミッタ35が取り付けられたエミッタユニット30において、エミッタ35と引出電極38の位置を調整する。そして、エミッタユニット30を炉に入れてベーキングする。
【0115】
ベーキングの後、エミッタユニット30を、絶縁部材302に取り付け、エミッタユニット30が取り付けられた絶縁部材302をチャンバー蓋16に取り付ける。そして、チャンバー蓋16をボルト18で電子銃チャンバー10に固定する。
【0116】
このとき、チャンバー蓋16と電子銃チャンバー10の嵌め合いによって、エミッタユニット30が位置決めされる。この結果、エミッタ35が光軸OA上に配置され、エミッ
タユニット30の各端子が碍子ユニット20の各端子に接触する。
【0117】
このように、エミッタユニット30が固定されたチャンバー蓋16を電子銃チャンバー10に取り付けることによって、エミッタ35を位置決めできる。
【0118】
次に、鏡筒内101を真空排気し、鏡筒101全体をベーキングする。
【0119】
以上の工程により、エミッタ35を交換できる。
【0120】
3.4. 効果
電子銃300では、エミッタユニット30は、チャンバー蓋16に取り付けられ、チャンバー蓋16が電子銃チャンバー10に取り付けられることによって、エミッタ35が光軸OA上に配置され、エミッタユニット30の各端子が碍子ユニット20の各端子に接触する。そのため、電子銃300では、容易にエミッタ35を交換できる。
【0121】
4. 第4実施形態
次に、第4実施形態に係る電子顕微鏡1について説明する。
図9は、第4実施形態に係る電子顕微鏡1の電子銃400を模式的に示す断面図である。以下、電子銃400において、上述した電子銃100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0122】
電子銃400は、
図9に示すように、アライメントコイル402を有する。アライメントコイル402は、エミッタ35から放出された電子線を偏向させる。アライメントコイル402で電子線を偏向させることによって電子銃400から放出された電子線を光軸OAに合わせることができる(軸合わせ)。
【0123】
例えば、エミッタユニット30が碍子ユニット20の支持部材25に支持されて位置決めされている状態において、エミッタ35が光軸OAからずれている場合に、アライメントコイル402を用いて、電子銃400から放出された電子線を光軸OAに合わせることができる。
【0124】
なお、ここでは、ショットキー電子銃であるエミッタユニット30を用いた電子銃にアライメントコイル402を設置した場合について説明したが、ショットキー電子銃以外の電子銃にアライメントコイル402を設置してもよい。
【0125】
5. 変形例
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0126】
例えば、上述した第1~第4実施形態では、本発明に係る荷電粒子線装置が走査電子顕微鏡である場合について説明したが、本発明に係る荷電粒子線装置は、走査電子顕微鏡に限定されない。本発明に係る荷電粒子線装置は、例えば、走査透過電子顕微鏡(STEM)や、走査電子顕微鏡(SEM)、電子線マイクロアナライザー(EPMA)、電子ビーム露光装置などであってもよい。
【0127】
また、上述した第1~第4実施形態では、本発明に係る荷電粒子線源が電子を放出するエミッタを備えた電子銃である場合について説明したが、本発明に係る荷電粒子線源は電子以外の荷電粒子を放出するエミッタを備えた荷電粒子線源であってもよい。例えば、本発明に係る荷電粒子線源は、イオンを放出するエミッタを備えたイオン銃であってもよい。本発明に係る荷電粒子線装置は、集束イオンビーム装置(FIB)であってもよい。
【0128】
また、上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態及び各変形例は、適宜組み合わせることが可能である。
【0129】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0130】
1…電子顕微鏡、2…メタルOリング、3…ボルト、4…位置決めピン、5…ボルト、6…ナット、7a…ボルト、7b…ボルト、8…フランジ、9…ナット、10…電子銃チャンバー、11…側壁、11a…貫通孔、12…パイプ、14…パイプ、16…チャンバー蓋、18…ボルト、20…碍子ユニット、21…パイプ、22…フランジ、23…フランジ、24…プレート、25…支持部材、25a…面、26…碍子、28a…端子、28b…端子、28c…端子、30…エミッタユニット、30D…エミッタユニット、31…フランジ、32a…端子、32b…端子、32c…端子、33…絶縁部材、34a…フィードスルー、34b…フィードスルー、34c…フィードスルー、35…エミッタ、35a…エミッタ、36…ホルダー、37a…電極、37b…電極、38…引出電極、40…アノード、42…アパーチャー、43…ホルダー、100…電子銃、101…鏡筒、102…電子銃室、104…中間室、106…試料室、110…コンデンサーレンズ、120…走査コイル、130…対物レンズ、140…試料ステージ、150…二次電子検出器、160…X線検出器、170…高圧電源、180…高圧ケーブル、200…電子銃、202…真空ポンプ、204…基板、300…電子銃、302…絶縁部材、400…電子銃、402…アライメントコイル