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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146722
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/26 20060101AFI20231004BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
B41M5/26
B32B27/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054067
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 大貴
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 彰
【テーマコード(参考)】
2H111
4F100
【Fターム(参考)】
2H111HA14
2H111HA23
2H111HA32
4F100AA01C
4F100AK01A
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100DE02C
4F100EH90
4F100EJ52
4F100EJ65B
4F100JA03A
4F100JJ06D
(57)【要約】
【課題】表現性が向上した可変印刷が可能な積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】積層体20の製造方法は、基材11と基材11上の無機物フレーク含有インキ層13とを備えた積層体前駆体10を準備する工程S1と、積層体前駆体10にエネルギー線15を照射する工程S2とを含む。無機物フレーク含有インキ層13は無機物フレークを含む。エネルギー線15を照射する工程においては、エネルギー線15が照射された箇所の無機物フレークの向きが変化する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と前記基材上の無機物フレーク含有インキ層とを備えた積層体前駆体を準備する工程と、
前記積層体前駆体にエネルギー線を照射する工程と、を含み、
前記無機物フレーク含有インキ層は無機物フレークを含み、
前記エネルギー線を照射する工程においては、前記エネルギー線が照射された箇所の前記無機物フレークの向きが変化する、積層体の製造方法。
【請求項2】
前記積層体前駆体は、前記無機物フレーク含有インキ層と向かい合う発熱層をさらに備える、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記基材は熱収縮性のプラスチックフィルムであり、
前記エネルギー線を照射する工程の後に前記基材を収縮させる工程をさらに含む、請求項1または請求項2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記積層体前駆体は、前記基材と前記無機物フレーク含有インキ層との間に、下地インキ層をさらに備える、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記下地インキ層は、熱可塑性樹脂を含む、請求項4に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ラベルに対して賞味期限等の印字を施す際には、たとえばインクジェットプリンタまたはサーマルプリンタ等の手法でラベル基材の表面にインキを印刷する方法が主流となっている。
【0003】
しかしながら、ラベルが装着された製品の輸送時におけるラベルのインキの擦れ等によって印字が消失することがあった。
【0004】
そこで、ラベルの印字については、一旦印字が施された後に消失しにくい印字の需要が存在している。その需要を満たすための1つの方法として、レーザ光の照射により印字するレーザ印字法が検討されている。
【0005】
レーザ印字法においては、ラベルの外側からレーザ光を照射することによってラベルの外表面にレーザ印字を設けることができる。また、ラベルの内側からレーザ光を照射することによってラベルの内表面にレーザ印字を設け、ラベルの外側から見えないようにラベルの内側のレーザ印字を遮蔽することの需要も存在している。
【0006】
たとえば特許文献1には、レーザ光を照射する側から、白インキ層、印字剤層、印刷絵柄層、およびプラスチックフィルムの順に積層されているレーザー印字用積層フィルムに印刷絵柄層を視認できる側とは反対側からレーザー照射して積層フィルムへの印字を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-124499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の方法においては、レーザー光の照射により印字剤層が黒色に発色することによって印字がなされ、黒化した樹脂部分と、黒化しなかった樹脂部分のコントラストによって印字が視認可能となっている。特許文献1に記載の方法は、QRコード(登録商標)や乱数印字等の可変印刷(印刷内容の変更が可能であること)が可能な優れた方法である。しかしながら、特許文献1に記載の方法は、印刷の表現性としては昇温変色による表現のみであり、加飾目的で使用する場合には印刷の表現性が不十分であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ここで開示された実施形態によれば、基材と基材上の無機物フレーク含有インキ層とを備えた積層体前駆体を準備する工程と、積層体前駆体にエネルギー線を照射する工程と、を含み、無機物フレーク含有インキ層は無機物フレークを含み、エネルギー線を照射する工程においては、エネルギー線が照射された箇所の無機物フレークの向きが変化する積層体の製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
ここで開示された実施形態によれば、特許文献1に記載の方法よりも表現性が向上した可変印刷が可能な積層体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態の積層体の製造方法のフローチャートである。
図2】実施形態の積層体の製造方法に用いられる積層体前駆体の一例の模式的な断面図である。
図3図2に示す積層体前駆体にエネルギー線を照射する工程の一例を図解する模式的な断面図である。
図4】実施形態の積層体の製造方法によって製造された積層体を基材側から視認したときの模式的な平面図である。
図5図4に示される積層体の基材を熱収縮した後に基材側から視認したときの模式的な平面図である。
図6】積層体前駆体にエネルギー線を照射する工程の他の一例を図解する模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について説明する。なお、実施形態の説明に用いられる図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0013】
図1に、実施形態の積層体の製造方法のフローチャートを示す。図1に示すように、実施形態の積層体の製造方法は、積層体前駆体を準備する工程S1と、積層体前駆体にエネルギー線を照射する工程S2とを有しており、工程S1および工程S1の後に工程S2を経ることによって、最終製品である積層体を製造することができる。
【0014】
<積層体前駆体を準備する工程>
積層体前駆体を準備する工程S1は、たとえば、図2の模式的断面図に示す積層体前駆体10を準備することにより行うことができる。積層体前駆体10を準備する工程は、たとえば、基材11を準備する工程と、基材11上に下地インキ層12を形成する工程と、下地インキ層12上に無機物フレーク含有インキ層13を形成する工程と、無機物フレーク含有インキ層13上に発熱層14を形成する工程とを含むことができる。このようにして準備された積層体前駆体10は、無機物フレーク含有インキ層13と向かい合って、無機物フレーク含有インキ層13の基材11と反対側に位置する発熱層14を備えている。
【0015】
(基材を準備する工程)
基材11準備する工程は、たとえば、少なくとも無機物フレーク含有インキ層13を支持可能なプラスチックフィルムを準備すること等により行うことがきる。基材11を構成するプラスチックフィルムは透明であり得る。基材11が透明である場合の基材11の全光線透過率は70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。全光線透過率は、たとえば、JIS K 7105(プラスチックの光学的特性試験方法)により測定することができる。
【0016】
基材11を構成するプラスチックフィルムとしては、たとえば、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、PETG(ポリエチレンテレフタレートのグリコール成分であるエチレングリコールの一部又は全部をシクロヘキサンジメタノールやネオペンチルグリコール等に置換してなるポリエステル系樹脂)等)、ポリスチレン系樹脂(ポリスチレン、スチレン-ブタジエン共重合体等)、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン系樹脂等)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アラミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、またはアクリル系樹脂等を含むプラスチックフィルムを準備することができる。基材11を構成するプラスチックフィルムは、これらの樹脂の1種類を含んでいてもよく、2種類以上を含んでいてもよい。
【0017】
基材11を構成するプラスチックフィルムとしては、たとえば、熱収縮性のプラスチックフィルム(シュリンクフィルム)または非熱収縮性のプラスチックフィルムを準備することができるが、なかでも熱収縮性のプラスチックフィルムを準備することが好ましい。この場合には、実施形態の積層体の製造方法によって製造された積層体を加熱して基材11を収縮させることによって、当該積層体における後述するエネルギー線の照射箇所と非照射箇所との間の乱反射のコントラストを大きくすることによって可変印刷の表現性を向上させることができる傾向にある。熱収縮性のプラスチックフィルムの主収縮方向の熱収縮率は、熱収縮性のプラスチックフィルムを90℃の熱水に10秒間浸漬させたときに、たとえば、40%以上95%以下とすることができ、50%以上90%以下とすることが好ましい。
【0018】
基材11として準備されるプラスチックフィルムは、1層からなる単層のプラスチックフィルムであってもよく、2層以上からなる多層のプラスチックフィルムであってもよい。また、基材11として準備されるプラスチックフィルムの厚さは、たとえば、5μm以上100μm以下とすることができる。
【0019】
(基材上に下地インキ層を形成する工程)
基材11上に下地インキ層12を形成する工程は、たとえば、基材11上に、下地インキ層12の前駆体となる下地インキ層12形成用のインキ(以下、「下地インキ」という。)を印刷した後に乾燥することにより行うことができる。下地インキとしては、たとえば、有機溶媒と、樹脂とを含む油性インキ、または水系溶媒と樹脂とを含む水性インキ(水系溶媒に樹脂が溶解している場合、および水系溶媒に樹脂が溶解していない場合(エマルジョン)のいずれの場合も含む)を用いることができる。下地インキの印刷は、たとえば、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、または液体トナー印刷等により行うことができる。下地インキの乾燥は、たとえば、下地インキの溶媒の少なくとも一部を揮発させることにより行うことができる。下地インキ層12の厚さは、たとえば0.1μm以上10μm以下程度とすることができる。
【0020】
下地インキに含まれる樹脂としては、たとえば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(たとえば、ポリエチレン系樹脂、若しくはポリブタジエン系樹脂等)、イソシアネート系樹脂、ロジン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂(PVA系樹脂)、またはイミン系樹脂等を用いることができるが、後述するエネルギー線の照射による昇温で軟化可能な樹脂を用いることができる。下地インキに含まれる樹脂としては、たとえば、無機物フレーク含有インキ層13を構成する樹脂よりも軟化温度が低いものを使用してもよい。
【0021】
下地インキに含まれる樹脂としては、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。この場合には、後述するようにエネルギー線の照射によって、無機物フレーク含有インキ層13中の無機物フレークの向きを変化させやすくなる傾向にある。下地インキに含まれる熱可塑性樹脂としては、たとえば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂またはセルロース樹脂等を用いることができる。下地インキとしては、基材11側からの無機物フレーク含有インキ層13の視認を確保する観点から、たとえば、無色透明または着色透明のインキを用いることができる。
【0022】
(下地インキ層上に無機物フレーク含有インキ層を形成する工程)
下地インキ層12上に無機物フレーク含有インキ層13を形成する工程は、たとえば、下地インキ層12上に、無機物フレーク含有インキ層13の前駆体となる無機物フレーク含有インキ層13形成用のインキ(以下、「無機物フレーク含有インキ」という。)を印刷した後に乾燥することにより行うことができる。無機物フレーク含有インキとしては、たとえば、無機物フレークと、有機溶媒または水性溶媒等の溶媒と、樹脂とを含むインキを用いることができる。無機物フレーク含有インキの印刷は、たとえば、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、または液体トナー印刷等により行うことができる。無機物フレーク含有インキの乾燥は、たとえば、無機物フレーク含有インキ中の溶媒の少なくとも一部を揮発させることにより行うことができる。無機物フレーク含有インキ層13は、たとえば、無機物フレークにより輝度感を有する層であってもよい。また、無機物フレーク含有インキ層13は、たとえば、隠蔽性(裏面側が透けて見え難い性質)のある層であってもよい。無機物フレーク含有インキ層13は、たとえば、無機物フレークとして後述するアルミニウムフレークを使用する場合には、銀色等のメタリック調の外観を呈するともに、隠蔽性を有する層とすることができる。
【0023】
無機物フレーク含有インキ層13に含まれる無機物フレークとしては、たとえば、アルミニウムフレーク、真鍮フレーク、アルミニウムフレーク以外の金属フレーク、またはマイカフレークやその他の金属酸化物フレークを用いることができる。無機物フレークとしてアルミニウムフレークを用いる場合には、通常のボールミル法で作製したアルミニウムフレーク、または蒸着法によって作製したアルミニウムフレークを用いることが好ましい。これらの無機物フレークは、無機物フレーク含有インキ層13に含まれる無機物フレークとして、単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0024】
無機物フレークの形状はたとえば扁平状であり得る。扁平状である無機物フレークの表面の長手方向の長さ(無機物フレークの表面の長さのうち最長の長さ)に対する無機物フレークの厚さ(無機物フレークの厚さのうち最大の厚さ)の比であるアスペクト比((無機物フレークの厚さ)/(無機物フレークの表面の長手方向の長さ))は、たとえば、1/5以上1/1000以下とすることができ、好ましくは1/10以上1/100以下とすることができる。扁平状である無機物フレークは、たとえば、平滑な面を有していてもよい。扁平状である無機物フレークが平滑な面を有する場合には、たとえば、無機物フレークの当該平滑な面をほぼ同一方向を向くように配置することができる。
【0025】
無機物フレーク含有インキに含まれる樹脂としては、たとえば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(たとえば、ポリエチレン系樹脂、若しくはポリブタジエン系樹脂等)、イソシアネート系樹脂、ロジン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂(PVA系樹脂)、またはイミン系樹脂等を用いることができる。これらの樹脂は、無機物フレーク含有インキに含まれる樹脂として、単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。後述するエネルギー線が照射された箇所の無機物フレークの向きをより容易に変化させる観点からは、無機物フレーク含有インキに含まれる樹脂として、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0026】
(無機物フレーク含有インキ層上に発熱層を形成する工程)
無機物フレーク含有インキ層13上に発熱層14を形成する工程は、たとえば、無機物フレーク含有インキ層13上に、発熱層14の前駆体となる発熱層14形成用のインキ(以下、「発熱インキ」という。)を印刷した後に乾燥することにより行うことができる。発熱インキとしては、後述するエネルギー線を吸収可能な吸収剤と、有機溶媒または水性溶媒等の溶媒と、樹脂とを含むインキを用いることができる。発熱インキの印刷は、たとえば、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、または液体トナー印刷等により行うことができる。発熱インキの乾燥は、たとえば、発熱インキ中の溶媒の少なくとも一部を揮発させることによりに行うことができる。
【0027】
発熱インキに含まれる吸収剤としては、たとえば、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、近赤外線吸収剤またはカーボンブラック等を用いることができる。発熱インキに含まれる樹脂としては、たとえば、無機物フレーク含有インキに含まれるバインダー樹脂と同様のバインダー樹脂を用いることができる。
【0028】
<積層体前駆体にエネルギー線を照射する工程>
積層体前駆体10にエネルギー線15を照射する工程S2は、たとえば、図3の模式的断面図に示すように、積層体前駆体10の発熱層14にエネルギー線15を照射することにより行うことができる。図3は、エネルギー線15を基材11側から照射する例について示しているが、エネルギー線15を発熱層14側から照射してもよい。ただ、エネルギー線15を基材11側から照射することが好ましい。
【0029】
エネルギー線15としては、たとえば、レーザ光、マイクロ波(波長1mm以上1m以下の光)、紫外線(波長10nm以上400nm以下の光)、可視光線(波長400nm以上700nm以下の光)または赤外線(波長800nm以上1000nm未満の光)等を照射することができる。なかでも、エネルギー線15としては、レーザ光を照射することが好ましい。レーザ光としては、たとえば、紫外線レーザ光(波長10nm以上400nm以下)、YAGレーザ光(波長1.064μm)、ファイバーレーザー光(波長1030nm以上1070nm以下)、または赤外線レーザ光(波長780nm以上16μm以下)等を照射することができる。
【0030】
積層体前駆体10にエネルギー線15を照射する工程により、積層体前駆体10の発熱層14中の吸収剤がエネルギー線15を吸収して発熱して発熱層14が加熱され、発熱層14の熱が無機物フレーク含有インキ層13および下地インキ層12に伝達される。下地インキ層12に伝達された熱によって、下地インキ層12が軟化して変形し、下地インキ層12と無機物フレーク含有インキ層13との界面に凹凸が生じ、下地インキ層12の表面に生じた凹凸上の無機物フレーク含有インキ層13中の無機物フレークの向きが変化する。その後、無機物フレーク含有インキ層13の無機物フレークの向きが変化した状態で下地インキ層12および無機物フレーク含有インキ層13が冷却されることにより最終製品である積層体20が製造される。
【0031】
積層体前駆体10の全体にエネルギー線15を照射した場合には、エネルギー線15の照射前と比べて、最終製品である積層体20のエネルギー線15の照射後のエネルギー線15の照射箇所における無機物フレーク含有インキ層13の無機物フレークの向きが変化する。また、積層体前駆体10に部分的にエネルギー線15を照射した場合には、最終製品である積層体20のエネルギー線15の非照射箇所における無機物フレーク含有インキ層13の無機物フレークの向きはエネルギー線15の照射前と変化していないが、エネルギー線15の照射箇所における無機物フレーク含有インキ層13の無機物フレークの向きのみが変化している。そのため、積層体前駆体10の全体にエネルギー線15を照射した場合および積層体前駆体10の一部にエネルギー線15を照射した場合のいずれの場合においても、最終製品である積層体20を基材11側から視認したときに、このエネルギー線15の照射箇所において乱反射を生じさせることによる表現が可能となるため、最終製品である積層体20について特許文献1に記載の方法よりも表現性が向上した可変印刷が可能となる。たとえば、積層体前駆体10の一部にエネルギー線15を照射した場合にはエネルギー線15の照射箇所と非照射箇所とで輝度感の異なる2つの領域を形成することができる。
【0032】
図4に、実施形態の積層体の製造方法によって製造された積層体20を基材11側から視認したときの模式的な平面図を示す。図5に、図4に示される積層体20の基材11を熱収縮した後に基材11側から視認したときの模式的な平面図を示す。図4図5との対比から明らかなように、積層体20の基材11を熱収縮する工程をさらに行うことによって、無機物フレーク含有インキ層13のデザインをより明確に表示することができるため、最終製品である積層体20の加飾性をさらに優れたものとすることが可能となる。積層体20の基材11を熱収縮する工程における積層体20の基材11の主収縮方向における熱収縮率は、たとえば5%以上とすることができる。
【0033】
なお、上記においては、たとえば図3に示すように、下側から上側に向かって、基材11、下地インキ層12、無機物フレーク含有インキ層13、および発熱層14がこの順に積層されてなる積層体前駆体10にエネルギー線を照射する場合について説明したが、たとえば図6の模式的断面図に示すように、下側から上側に向かって、下地インキ層12を兼ねる発熱層14、および無機物フレーク含有インキ層13がこの順に積層されてなる積層体前駆体10にエネルギー線を照射してもよい。また、たとえば図3および図6に図示される積層体前駆体10において、下地インキ層12、無機物フレーク含有インキ層13および発熱層14からなる群から選択された少なくとも1つの層が基材11の一部分に設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
最終製品である積層体20は、たとえば、シュリンクラベル、巻付ラベル、感熱ラベル、タックラベル、若しくはインモールドラベル等のラベル、またはオーバラップ包装若しくはパウチ包装体等のフィルム包装体として用いることができるが、熱収縮させて用いることが可能なシュリンクラベルまたはオーバラップシュリンク包装体として用いられることが好ましい。この場合、当該シュリンクラベルまたはオーバラップシュリンク包装を熱収縮させることにより被着対象物となる物品に装着する工程が、上述した基材11を熱収縮する工程であってもよい。この場合には、最終製品である積層体20が装着された物品を得ることができる。なお、最終製品である積層体20をシュリンクラベルとして用いる場合には、積層体前駆体10を準備する工程と、積層体前駆体10を筒状にする工程と、筒状の積層体前駆体10にエネルギー線15を照射することによって積層体20を製造する工程と、積層体20を熱収縮することによって物品に装着する工程とをこの順に含む積層体20が装着された物品の製造方法とすることが好ましい。
【0035】
以上のように実施形態について説明を行なったが、上述の各実施形態の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0036】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0037】
10 積層体前駆体、11 基材、12 下地インキ層、13 無機物フレーク含有インキ層、14 発熱層、20 積層体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6