(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146745
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】自動車用シール材
(51)【国際特許分類】
B60J 10/33 20160101AFI20231004BHJP
B60J 10/84 20160101ALI20231004BHJP
B60J 10/27 20160101ALI20231004BHJP
【FI】
B60J10/33
B60J10/84
B60J10/27
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054108
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 隆史
【テーマコード(参考)】
3D201
【Fターム(参考)】
3D201AA01
3D201AA12
3D201CA03
3D201DA09
3D201DA11
3D201DA13
3D201DA23
3D201EA01A
3D201EA04A
3D201EA05H
3D201EA09H
3D201FA04
(57)【要約】
【課題】フランジ部の一部が切り欠かれていても、シール性が低下しないようにする。
【解決手段】取付基部20は、車外側壁部21と、車内側壁部22と、底壁部23とを有している。車外側壁部21の車室内側に位置する面には、フランジ部104の車室外面に弾接する弾性発泡材からなる外側発泡材27と、フランジ部104に取り付けられた状態でフランジ部104に対する外側発泡材27の接触面圧を向上させる面圧向上部21bとが設けられている。外側発泡材27は、フランジ部104の周方向の一部の先端部に形成された切欠部111aよりもフランジ部104の基端部寄りの車室外面に弾接するように配置されている。
【選択図】
図4B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体に形成された開口部の周縁部に沿って設けられたフランジ部に取り付けられる取付基部を備え、該開口部の周縁部と、該開口部を開閉する開閉部材との間をシールする自動車用シール材において、
前記取付基部は、前記フランジ部の車室外側に配置される車外側壁部と、前記フランジ部の車室内側に配置される車内側壁部と、前記車外側壁部及び前記車内側壁部を連結する底壁部とを有し、前記車外側壁部及び前記車内側壁部における前記底壁部とは反対側の端部の間は、前記フランジ部に対して該フランジ部の先端部側から取り付け可能となるように開放された開放部とされ、
前記車内側壁部の車室外側面には、前記車外側壁部へ向けて延び、先端側へ行くほど前記底壁部に接近するように位置するとともに、前記フランジ部の車室内面に弾接する車内側シールリップが設けられ、
前記車外側壁部の車室内側面には、前記フランジ部の車室外面に弾接する弾性発泡材からなる外側発泡材と、前記フランジ部に取り付けられた状態で当該フランジ部に対する前記外側発泡材の接触面圧を向上させる面圧向上部とが設けられ、
前記外側発泡材は、前記フランジ部の周方向の一部の先端部に形成された切欠部よりも当該フランジ部の基端部寄りの車室外面に弾接するように配置されていることを特徴とする自動車用シール材。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車用シール材において、
前記面圧向上部は、前記車外側壁部の車室内側面における前記外側発泡材よりも前記開放部側から前記車内側壁部へ向けて突出し、前記フランジ部に取り付けられた状態で当該フランジ部の車室外面に弾接して前記外側発泡材を前記開放部側から押圧する車外側シールリップであることを特徴とする自動車用シール材。
【請求項3】
請求項1に記載の自動車用シール材において、
前記面圧向上部は、前記外側発泡材の前記車外側壁部への接合部分の少なくとも一部を車室内側に位置付けるように、前記車外側壁部の車室内側面から突出する突出部であることを特徴とする自動車用シール材。
【請求項4】
請求項2に記載の自動車用シール材において、
前記車外側シールリップは、前記フランジ部に取り付けられる前の状態で前記外側発泡材から前記開放部側に離れるように配置される一方、前記フランジ部に取り付けられた状態で前記外側発泡材に前記開放部側から弾接するように配置されることを特徴とする自動車用シール材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動車に設けられる自動車用シール材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、自動車の車体の側部には、乗員が乗降するための開口部が形成されており、この開口部はドアによって開閉されるようになっている。車体における開口部の周縁部にはフランジ部が形成されており、このフランジ部にはウエザーストリップと呼ばれるシール材が取り付けられている。ウエザーストリップが閉状態のドアの周縁部に接触することによってドアの周縁部と車体の開口部の周縁部との間をシールすることができるようになっている。
【0003】
具体的には、
図8Aに示すように、車体101に形成されている開口部103の周縁部には、インナパネル110とアウタパネル111とが接合されることによって形成されたフランジ部104があり、このフランジ部104にウエザーストリップ200が取り付けられている。ウエザーストリップ200は、取付基部210と中空シール部220とを備えている。取付基部210は、車室外側壁部211と、車室内側壁部212と、底壁部213とで構成されており、車室外側壁部211には、突起部211a、211bや外側スポンジシール215が形成され、車室内側壁部212には、リップ212aが形成され、底壁部213には、底壁スポンジシール214が形成されている。車室外側壁部211と車室内側壁部212との間部分がフランジ部104に取り付けられると、底壁部213の底部スポンジシール214がフランジ部104の先端部に弾接し、車室外側壁部211の外側スポンジシール215がフランジ部104の車室外側面に弾接する。これにより、遮音及び止水効果が得られるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、
図8Bは、
図8Aに示す断面からフランジ部104の長手方向に離れた部分の断面を示しており、この
図8Bに示すように、フランジ部104を構成しているアウタパネル111の先端部に切欠部111aが形成されることがある。この切欠部111aは、例えばウエザーストリップ200の組付時の目印等として利用されるものであり、フランジ部104の周方向の一部にのみ形成される。
【0006】
切欠部111aが形成されると、外側スポンジシール215のアウタパネル111に対する圧縮量が小さくなるので、当該箇所においてシール性の低下を招く結果となる。
【0007】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、フランジ部の一部が切り欠かれていても、シール性が低下しないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本開示の第1の態様では、自動車の車体に形成された開口部の周縁部に沿って設けられたフランジ部に取り付けられる取付基部を備え、該開口部の周縁部と、該開口部を開閉する開閉部材との間をシールする自動車用シール材を前提とすることができる。前記取付基部は、前記フランジ部の車室外側に配置される車外側壁部と、前記フランジ部の車室内側に配置される車内側壁部と、前記車外側壁部及び前記車内側壁部を連結する底壁部とを有し、前記車外側壁部及び前記車内側壁部における前記底壁部とは反対側の端部の間は、前記フランジ部に対して該フランジ部の先端部側から取り付け可能となるように開放された開放部とされている。前記車内側壁部の車室外側面には、前記車外側壁部へ向けて延び、先端側へ行くほど前記底壁部に接近するように位置するとともに、前記フランジ部の車室内面に弾接する車内側シールリップが設けられている。前記車外側壁部の車室内側面には、前記フランジ部の車室外面に弾接する弾性発泡材からなる外側発泡材と、前記フランジ部に取り付けられた状態で当該フランジ部に対する前記外側発泡材の接触面圧を向上させる面圧向上部とが設けられている。前記外側発泡材は、前記フランジ部の周方向の一部の先端部に形成された切欠部よりも当該フランジ部の基端部寄りの車室外面に弾接するように配置されている。
【0009】
この構成によれば、車体のフランジ部に対して取付基部の開放部側から車外側壁部と車内側壁部との間部分に取り付けられると、車内側シールリップがフランジ部の車室内面に弾接し、また、外側発泡材がフランジ部の車室外面に弾接する。これにより、フランジ部が車外側壁部と車内側壁部との間の所定位置に位置決めされる。このとき、外側発泡材は、フランジ部の切欠部よりも基端側寄りの車室外面に弾接した状態で、面圧向上部によってフランジ部に対する接触面圧が向上しているので、外側発泡材による高いシール性が得られ、遮音性及び止水性が向上する。
【0010】
本開示の第2の態様に係る面圧向上部は、前記車外側壁部の車室内側面における前記外側発泡材よりも前記開放部側から前記車内側壁部へ向けて突出し、前記フランジ部に取り付けられた状態で当該フランジ部の車室外面に弾接して前記外側発泡材を前記開放部側から押圧する車外側シールリップとすることができる。
【0011】
この構成によれば、車体のフランジ部に対して取付基部の開放部側から車外側壁部と車内側壁部との間部分に取り付けられると、車外側シールリップがフランジ部の車室外面に弾接して弾性変形し、外側発泡材を開放部側から押圧した状態になる。車外側シールリップにより押圧された外側発泡材は、フランジ部の車室外面により強く接触し、これにより、外側発泡材の接触面圧が確実に向上する。
【0012】
本開示の第3の態様に係る面圧向上部は、前記外側発泡材の前記車外側壁部への接合部分の少なくとも一部を車室内側に位置付けるように、前記車外側壁部の車室内側面から突出する突出部とすることができる。
【0013】
この構成によれば、外側発泡材が突出部によってフランジ部の車室外面により強く接触し、これにより、外側発泡材の接触面圧が確実に向上する。
【0014】
本開示の第4の態様に係る車外側シールリップは、前記フランジ部に取り付けられる前の状態で前記外側発泡材から前記開放部側に離れるように配置される一方、前記フランジ部に取り付けられた状態で前記外側発泡材に前記開放部側から弾接するように配置することができる。
【0015】
この構成によれば、車体のフランジ部に対して取付基部の開放部側から車外側壁部と車内側壁部との間部分に取り付けられる初期段階では、車外側シールリップが外側発泡材に弾接していないので、組み付けに要する力が小さくて済み、組付作業性が良好になる。そして、完全に組み付けると、車外側シールリップが外側発泡材を開放部側から押圧し、外側発泡材の接触面圧を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、車外側壁部の外側発泡材を、フランジ部の周方向の一部の先端部に形成された切欠部よりも基端部寄りの車室外面に弾接するように配置し、フランジ部に対する外側発泡材の接触面圧を向上させる面圧向上部を車外側壁部に設けたので、フランジ部の一部が切り欠かれていても、シール性が低下しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る自動車用シール材を備えた自動車の左側面図である。
【
図4B】
図1におけるV-V線に相当する断面図であり、ドアが開放状態にある場合を示す。
【
図5】実施形態の変形例1に係る
図4B相当図である。
【
図6】実施形態の変形例2に係る
図4B相当図である。
【
図7】実施形態の変形例3に係る
図4B相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る自動車用シール材1を備えた自動車100の左側面図である。自動車100の車体(ボディ)101の左側部及び右側部には、それぞれ、乗員が乗降したり、荷物等の積み降ろしをするための開口部103(
図2に仮想線で示す)が形成されている。この開口部103は、
図1に示すドア(開閉部材)102によって開閉されるようになっている。車体101の側部に配設されるドア102は、車両前後方向にスライド可能に車体101に支持されたスライドドアである。ドア102の上側にはウインドガラス130が配設されている。尚、ドア102の構造は、スライドドアでなくてもよく、例えば上下方向に延びる支軸周りに回動するドアであってもよい。また、この実施形態では、車体101の前後方向中央部に形成された開口部103をドア102で開閉する場合について説明するが、本発明は、車体101の前部に形成された開口部120(
図2に示す)をドア121(
図1に示す)で開閉する場合にも適用することができる。この実施形態の説明では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」といい、車両左側を単に「左」といい、車両右側を単に「右」というものとする。
【0020】
図2に示すように、車体101における開口部103の周縁部には、該周縁部に沿ってフランジ部104が設けられている。フランジ部104は、開口部103の周縁部の全周に亘って連続しており、開口部103の内方へ向けて突出するように設けられている。フランジ部104は、
図4Bに示すように、車室内側に位置するインナパネル110と、車室外側に位置するアウタパネル111とが厚み方向に重ね合わされて構成されている。
【0021】
図2に示すように、フランジ部104の周方向の一部の先端部には、切欠部111aが形成されている。本実施形態では、2つの切欠部111aが形成されている場合について説明しているが、これに限らず、切欠部111aは1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
図4Bに示すように、切欠部111aは、アウタパネル111の先端部にのみ形成されており、インナパネル110には形成されていない。このため、
図4Bに示すように、切欠部111aが形成された部分の断面を見ると、フランジ部104においてアウタパネル111の上下方向の長さがインナパネル110の上下方向の長さよりも短くなった部分ができることになる。この切欠部111aの形成により、フランジ部104の車室外側には段差が形成されることになる。尚、切欠部111aが形成されていない部分では、フランジ部104においてアウタパネル111の上下方向の長さとインナパネル110の上下方向の長さとは略同じ又はアウタパネル111の方が若干長くなる。
【0022】
切欠部111aは自動車用シール材1を組み付ける時の目印となる部分である。例えば、自動車用シール材1の一部に組付用の目印(図示せず)を設けておき、この自動車用シール材1の目印を、フランジ部104の切欠部111aに合わせて自動車用シール材1をフランジ部104に組み付けることで、自動車用シール材1の周方向の位置を合わせた状態でフランジ部104への組付が可能になる。切欠部111aを形成する位置や、切欠部111aの形状、寸法は任意に設定することができる。
【0023】
また、
図4Bではルーフ部に対応する部分の断面を示しているが、他の部分(サイドシル、ピラー部)等でも切欠部111aが形成された部分の断面形状は同じにすることができる。
【0024】
(自動車用シール材1の全体構成)
自動車用シール材1は、車体101の開口部103の周縁部と、該開口部103を開閉するドア102との間をシールするための部材であり、オープニングシールやウエザーストリップとも呼ばれている。自動車用シール材1は、車体101のフランジ部104に沿って延びる環状に成形されている(
図3参照)。
図4Aは、フランジ部104に取り付けられる前の自動車用シール材1の断面を示しており、
図4Bは、フランジ部104に取り付けられた後の自動車用シール材1の断面を示している。
図4A及び
図4Bでは、ルーフ部に対応する部分の断面を示しているが、他の部分(サイドシル、ピラー部)等でも自動車用シール材1の断面形状は殆ど同じである。
【0025】
自動車用シール材1は、上記車体101のフランジ部104に取り付けられる取付基部20と、取付基部20に埋め込まれた芯材26と、中空シール部30とを備えている。自動車用シール材1の周方向の全体が取付基部20によってフランジ部104に取り付けられるようになっている。
【0026】
取付基部20及び中空シール部30は、例えばEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)やTPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー)等のように、弾性を有する材料を使用することができる。上記EPDMやTPOは、発泡材であってもよいし、ソリッド材であってもよい。また、芯材26は、例えば金属材や硬質樹脂材等を使用することができる。金属材としては、例えばSPCC鋼板(冷熱圧延鋼板)等の鉄板や、亜鉛メッキ鋼板等を挙げることができる。硬質樹脂材には、例えばタルク等の充填材を配合することができる。
【0027】
取付基部20と、芯材26と、中空シール部30とは一体化されており、例えば押出成形法によって成形することができる。尚、後述する外側発泡材27は、取付基部20の押出成形時に該取付基部20と一体に成形することができるが、これに限られるものではなく、別体で成形した後、取付基部20と一体化してもよい。
【0028】
(中空シール部30の構成)
中空シール部30は、取付基部20の車室外側に隣接するように設けられている。中空シール部30の内部は空洞であり、中空シール部30の周壁部が容易に弾性変形可能となっている。ドア102が開口部103を閉じた状態では、ドア102の車室内側の面が中空シール部30の車室外側に接触する(図示は省略)。これにより、中空シール部30が車室内側へ弾性変形してドア102の周縁部に密着し、開口部103の周縁部と、ドア102との間をシールすることができるようになっている(図示は省略)。
【0029】
(取付基部20の構成)
取付基部20は、車体101のフランジ部104の車室外側に配置される車外側壁部21と、フランジ部104の車室内側に配置される車内側壁部22と、車外側壁部21及び車内側壁部22を連結する底壁部23とを有している。車外側壁部21は、フランジ部104の車室外側の面に沿って延びるように形成されている。この車外側壁部21の車室外面に上記中空シール部30が一体化されている。
【0030】
車内側壁部22は、車外側壁部21と略平行に延びており、フランジ部104の車室内側の面から車室内側へ離れて配置されるようになっている。底壁部23は、車外側壁部21の端部から車内側壁部22の端部まで延びている。車外側壁部21及び車内側壁部22における底壁部23とは反対側の端部の間は、車体101のフランジ部104に対して該フランジ部104の先端部側から取り付け可能となるように開放された開放部24とされており、自動車用シール材1の周方向全体に亘って開口している。開放部24の開口幅は、車体101のフランジ部104の最大厚み部分の厚み寸法よりも大幅に広く設定されている。そして、車体101のフランジ部104は、取付基部20が取り付けられた状態では、後述する車内側シールリップ22aの反力により、取付基部20の内部の車室外側に偏位するように位置付けられる。つまり、自動車用シール材1をフランジ部104に取り付けると、フランジ部104と車外側壁部21との距離がフランジ部104と車内側壁部22との距離よりも短くなるように、フランジ部104と自動車用シール材1との相対的な位置関係が設定される。
【0031】
車内側壁部22における取付基部20の内部に臨む面(車内側壁部22の車室外側に位置する面であることから車室外側面ともいう)には、車外側壁部21へ向けて延びる可撓性の車内側シールリップ22aが設けられている。車内側シールリップ22aの基端部は、車内側壁部22の底壁部23とは反対側の端部、即ち開放部24側の端部付近に連なっている。車内側シールリップ22aは、その基端部から先端側へ行くほど底壁部23に接近するように傾斜ないし湾曲している。車内側シールリップ22aは、車体101のフランジ部104の車室内面に弾接、即ち弾性変形して接触するようになっている。
図4Aに示すように、取付基部20がフランジ部104に取り付けられていない場合には、車内側シールリップ22aに外力が作用しておらず、押出成形時の形状のままとなっている。
【0032】
この車内側シールリップ22aの撓み量は取付基部20が取り付けられるフランジ部104の厚みによって変化する。すなわち、
図4Bに示すフランジ部104に取付基部20が取り付けられた場合は、車内側シールリップ22aが底壁部23に接近する方向に撓む。
【0033】
車外側壁部21における取付基部20の内部に臨む面(車外側壁部21の車室内側に位置する面であることから車室内側面ともいう)には、車体101のフランジ部104の車室外面に接触するリップ21aが車内側壁部22に向けて突出するように設けられている。リップ21aは、車外側壁部21の車室内側面における底壁部23とは反対側の端部付近に設けられている。リップ21aの車外側壁部21からの突出量は、車内側シールリップ22aの突出量よりも小さく設定されており、リップ21aの先端部が車体101のフランジ部104の車室外面に接触した状態で、フランジ部104の車室外面と車外側壁部21の車室内側面とが接近する位置関係となるようにしている。
【0034】
より詳細には、車内側シールリップ22aは、リップ21aよりも突出量を十分大きくしている為、フランジ部104に弾接した際の反力も大きくなる。すなわち、フランジ部104の車室内面と車内側側壁22の車室外側面との距離A4は、フランジ部104の車室外面と車外側側壁21の車室内側面との距離A3よりも十分大きくなり、
図4Bに示すように、フランジ部104は、相対的に車室外側に変位した状態になるように、取付基部20が配置される。
【0035】
また、車内側壁部22の車室内側面には、車室内側へ向けて突出する板状部25が設けられている。この板状部25は車室内に設けられている内装材300に弾接するようになっている。
【0036】
(芯材26の構成)
芯材26は、取付基部20の剛性を高めるための部材である。この芯材26は、取付基部20の車外側壁部21に埋め込まれる車室外側板部26aと、車内側壁部22に埋め込まれる車室内側板部26bと、底壁部23に埋め込まれる底板部26cとを有している。
【0037】
(外側発泡材27の構成)
車外側壁部21の車室内側面の底壁23との接続部付近には、フランジ部104の車室外面に弾接する弾性発泡材からなる外側発泡材27が車内側壁部22に向けて膨出するように設けられている。外側発泡材27を構成する弾性発泡材は、例えばEPDM等の発泡材を使用することができ、取付基部20や中空シール部30を構成している弾性材よりも軟らかい弾性材からなる。外側発泡材27を構成する弾性発泡材の比重は、0.4以下にすることができる。比重の下限値は、押出一体化成形が可能であれば、特に限定はされない。
【0038】
外側発泡材27は、車外側壁部21の底壁部23寄りの部分に位置付けられており、
図4Bに示すように、フランジ部104の車室外面における切欠部111aに対応するように配置されている。より詳細には、切欠部111aが形成された部分において、外側発泡材27がフランジ部104の切欠部111aよりも当該フランジ部104の基端部寄りの車室外面に弾接するように配置されることにより、切欠部111aに対応する部分にも配置されることになる。
【0039】
外側発泡材27は、車外側壁部21の車室内側面におけるリップ21aよりも底壁部23側に配置されており、底壁部23に接近しているが、底壁部23の内面には接触しないように位置付けられている。
【0040】
図4Aでは、外側発泡材27の突出高さ寸法A1を定義しており、外側発泡材27の突出高さ寸法A1は、車外側壁部21の車室内側面と、外側発泡材27の車室内端部との距離である。外側発泡材27の突出高さ寸法A1は、
図4Bに示すフランジ部104に取り付けられた状態で、フランジ部104の車室外面と車外側壁部21の車室内側面との離間距離A3よりも大きく設定されている。これにより、外側発泡材27をフランジ部104の車室外面に確実に弾接させることができる。
【0041】
(車外側シールリップ21bの構成)
図4Aに示すように、車外側壁部21の車室内側面には、
図4Bに示すように、フランジ部104に取り付けられた状態で当該フランジ部104に対する外側発泡材27の接触面圧を向上させる面圧向上部としての車外側シールリップ21bが設けられている。より詳細には、
図4Aに示すように、車外側壁部21の車室内側面には、当該車室内側面に、
図4Bに示すように、外側発泡材27よりも開放部24側から車内側壁部22へ向けて突出し、フランジ部104に取り付けられた状態で当該フランジ部104の車室外面に弾接して外側発泡材27を開放部24側から押圧することが可能な位置に、車外側シールリップ21bが設けられている。
【0042】
図4Aに示すように、車外側シールリップ21bの基端部は、外側発泡材27の基端部よりも開放部24側に位置しており、フランジ部104に取り付けられる前の状態では、車外側シールリップ21bの基端部と、外側発泡材27の基端部との間には隙間A7を設定している。フランジ部104に取り付けられる前の状態で車外側シールリップ21bの基端部は、外側発泡材27の基端部から開放部24側に離れるように配置されており、車外側シールリップ21bの先端部と外側発泡材27の先端部との間にも隙間ができている。車外側シールリップ21bと外側発泡材27との間の隙間は、車外側シールリップ21bの先端側へ行くほど広くなっている。
【0043】
また、フランジ部104に取付けられる前の状態で、車外側シールリップ21bの先端部と、車内側シールリップ22aの先端部との間には、隙間を設けるのが好ましい。より詳細には、両者に隙間を設けていない場合には、以下のような不具合が懸念される。フランジ部104に取付けた後に、取付位置調整等の為に、いったん取り外しした際に、車外側シールリップ21bの先端部が、車内側シールリップ22aの先端部の上に、乗り上がってしまい、再度、取付けをしようとした際に、取付け作業性が悪化してしまうという、可能性がある。
【0044】
そのため、車外側シールリップ21bの先端部と、車内側シールリップ22aの先端部との間に、隙間を設けておくと、このような、乗りあがり現象は発生し難くなり、好ましい。具体的には、車外側シールリップ21bの先端部と、車内側シールリップ22aの先端部との隙間の大きさは、A7寸法と同程度の隙間があれば、良い。
【0045】
また、
図4Aでは、車外側シールリップ21bの突出高さ寸法A2を定義しており、車外側シールリップ21bの突出高さ寸法A2は、車外側壁部21の車室内側面と、車外側シールリップ21bの車室内端部との距離である。車外側シールリップ21bの突出高さ寸法A2は、外側発泡材27の突出高さ寸法A1と同等に設定されているが、多少大きく又は多少小さくてもよい。
【0046】
一方、
図4Bに示すように、フランジ部104に取り付けられた状態では、車外側シールリップ21bが外側発泡材27に開放部24側から弾接するように変形する。具体的には、フランジ部104に取り付けられると、フランジ部104の車室外面によって車外側シールリップ21bが底壁部23側へ押圧されて弾性変形し、車外側シールリップ21bが外側発泡材27を底壁部23側へ向けて押圧するように、車外側シールリップ21bの位置及び厚みが設定されている。また、車外側シールリップ21bの突出高さ寸法A2は、フランジ部104に取り付けられた状態で車外側シールリップ21bが外側発泡材27に接触するように設定されている。
【0047】
より詳細には車外側シールリップ21bの基端部と外側発泡材27の基端部との離間距離A7は、車外側シールリップ21bの圧縮量(A2-A3)と同程度か、あるいは少し小さくなるように設定するのが好ましい。A7を大きくしすぎると、外側発泡材27に接触しなくなり、好ましくない。また、A7を小さくしすぎると、取付基部20を押出成形する際に、車外側シールリップ21bと外側発泡材27が接触・接着してしまい、好ましくない。
【0048】
また、車外側シールリップ21bの厚さA8は、車外側シールリップ21bの圧縮量(A2-A3)と同程度か、あるいは少し小さくなるように設定するのが好ましい。
【0049】
(実施形態の作用効果)
車体101のフランジ部104に、自動車用シール材1の取付基部20の車外側壁部21と車内側壁部22との間の開放部24側から取付基部20を取り付けると、初期段階でリップ21aがフランジ部104の車室外面に弾接して撓み、次に、車内側シールリップ22aがフランジ部104の車室内面に弾接して撓む。フランジ部104が車外側壁部21と車内側壁部22との間に更に深く差し込まれると、フランジ部104の車室外面が車外側シールリップ21bに当たり、車外側シールリップ21bが底壁部23側へ押圧されて弾性変形する際に、車外側シールリップ21bが外側発泡材27を底壁部23側へ向けて押圧する。また、外側発泡材27がフランジ部104の車室外面に弾接する。
【0050】
外側発泡材27がフランジ部104の車室外面に弾接した状態で、車外側シールリップ21bがフランジ部104の車室外面に弾接して外側発泡材27を開放部24側から押圧する。車外側シールリップ21bにより押圧された外側発泡材27は、フランジ部104の車室外面により強く接触する。これにより、外側発泡材27のフランジ部104の車室外面に対する接触面圧が確実に向上するので、切欠部111aが形成された部分であっても、外側発泡材27による高いシール性が得られ、遮音性及び止水性が向上する。
【0051】
また更に車外側シールリップ21bを外側発泡材27に近接する位置に設定している為、フランジ部104への取付時に、フランジ部104のアウタパネル111の先端部が外側発泡材27の基端部や中腹部に接触しないようにガイドする事ができ、外側発泡材27が接合部分27から剥離したり、外側発泡材27の中腹部が破損したりする事を、防止できる。
【0052】
また、車内側シールリップ22aの反発力が取付基部20に作用してフランジ部104に車外側壁部21のリップ21aが押し付けられる。これにより、フランジ部104が取付基部20の内部において相対的に車室外側に変位した状態で車外側壁部21のリップ21aと車外側シールリップ21bと外側発泡材27と車内側壁部22の車内側シールリップ22aとで挟持される。
【0053】
(変形例)
図5は、実施形態の変形例1に係るものである。変形例1では、底壁部23の内面に、外側発泡材27から車室内側に離れた部分に、弾性発泡材からなる底部側発泡材28が開放部24側へ向けて膨出するように設けられている。底部側発泡材28を構成する弾性発泡材は、外側発泡材27を構成する弾性発泡材と同じものである。底部側発泡材28の断面形状は、外側発泡材27の断面よりも大きく設定されている。また、底部側発泡材28の底壁部23からの突出高さ寸法A5は、外側発泡材27の突出高さ寸法A1よりも大きく設定されている。フランジ部104に取り付けられた状態で底部側発泡材28の突出方向先端部がフランジ部104の先端部に弾接することで、遮音性及び止水性がより一層向上する。
【0054】
外側発泡材27の突出方向先端部(車室内側先端部)と、底部側発泡材28の突出方向先端部との間には隙間がある。これにより、外側発泡材27のフランジ部104の先端部側への変形および、底部側発泡材28の車室外側への変形が発生しても、外側発泡材27と底部側発泡材28とが接触することはなく、取付基部20の取付作業性が悪化することはない。
【0055】
図6は、実施形態の変形例2に係るものである。この変形例2では、フランジ部104に対する外側発泡材27の接触面圧を向上させる面圧向上部が突出部21cで構成されている。すなわち、突出部21cは、外側発泡材27の車外側壁部21への接合部分27aを車室内側に位置付けるように、車外側壁部21の車室内側面から突出している。突出部21cは、開放部24側へ行くほど車外側壁部21の車室内側面からの突出量が大きくなっている。外側発泡材27の接合部分27aが突出部21cの突出方向先端面に一体成形されている。
【0056】
また、更に、リップ部21aと車外側発泡材27との間に、突起21eを設けている。突起21eの基端部は、車内側シールリップ22aと対向する位置に設けられており、突起21eの突出高さA6は、
図4Bに示したフランジ部44と車外側側壁21の車室内側面との離間距離A3と同程度の高さまたはA3よりも若干高くなるように設定している。
【0057】
また、突起21eの基端部の幅は、車内側シールリップ22aの基端部の幅よりも小さくなるように設定している。
【0058】
ここで、A6がA3よりも低くなりすぎると、フランジ部104のガイド機能が低下し、好ましくない。また、逆に、A6がA3よりも高くなりすぎると、フランジ部44に対する車外側発泡材27の圧縮量が小さくなり、好ましくない。
【0059】
変形例2では、外側発泡材27が突出部21cによってフランジ部104の車室外面により強く接触し、これにより、外側発泡材27の接触面圧が確実に向上する。また、
図6に示した突起21eも、
図4A・
図4Bに示した車外側シールリップ21bと同様な作用効果、すなわち、外側発泡材27が接合部分27aで車外側側壁21から剥離したり、外側発泡材27の中腹部で破損したりする事を、防止できる。
【0060】
図7は、実施形態の変形例3に係るものである。この変形例3では、フランジ部104に対する外側発泡材27の接触面圧を向上させる面圧向上部が突出部21dで構成されている。すなわち、突出部21dは、外側発泡材27の車外側壁部21への接合部分27aの一部のみを車室内側に位置付けるように、車外側壁部21の車室内側面から突出している。また、変形例3でも、変形例2で示した突起21eを設定している。
【0061】
変形例3では、外側発泡材27の一部が突出部21dによって車室内側に位置付けられることで、外側発泡材27がフランジ部104の車室外面により強く接触し、これにより、外側発泡材27の接触面圧が確実に向上する。
【0062】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上説明したように、本発明に係る自動車用シール材は、例えばドア等によって開閉される開口部に配設することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 自動車用シール材
20 取付基部
21 車外側壁部
21b 車外側シールリップ(面圧向上部)
21c 突出部(面圧向上部)
21d 突出部(面圧向上部)
22 車内側壁部
22a 車内側シールリップ
23 底壁部
24 開放部
27 外側発泡材
27a 接合部分
30 中空シール部
102 ドア(開閉部材)
103 開口部
104 フランジ部
111a 切欠部