(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146746
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】生体の検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/359 20140101AFI20231004BHJP
C12N 1/10 20060101ALI20231004BHJP
A01M 1/00 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
G01N21/359
C12N1/10
A01M1/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054109
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】305061092
【氏名又は名称】株式会社 カロリアジャパン
(71)【出願人】
【識別番号】309015019
【氏名又は名称】地方独立行政法人青森県産業技術センター
(74)【代理人】
【識別番号】100093148
【弁理士】
【氏名又は名称】丸岡 裕作
(74)【復代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花松 学
(72)【発明者】
【氏名】岡山 透
(72)【発明者】
【氏名】花松 憲光
(72)【発明者】
【氏名】新藤 潤一
(72)【発明者】
【氏名】青山 理絵
【テーマコード(参考)】
2B121
2G059
4B065
【Fターム(参考)】
2B121AA20
2G059AA05
2G059BB08
2G059BB11
2G059BB12
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE11
2G059FF01
2G059FF10
2G059HH01
2G059JJ17
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM05
2G059MM10
4B065AA86X
(57)【要約】
【課題】 被検対象の生体を非破壊的に検査することのできるようにして、検査効率の向上を図るとともに、汎用性の向上を図る。
【解決手段】 予め、寄生虫に感染しているサンプル生体と寄生虫に感染していないサンプル生体とに近赤外線を照射し、サンプル生体からの拡散反射光あるいは拡散透過光を受光してその吸光度を測定し、この吸光度における二次微分スペクトルに基づいて生体の寄生虫に対する感染の有無及び/または感染による予め定めた発症無しから発症有りの最大までの発症の程度を数値化した被害度に係る演算を行う演算モデルを構築し、被検対象の生体に近赤外線を照射し、被検対象の生体からの拡散反射光あるいは拡散透過光の吸光度と上記の演算モデルとから演算された演算結果により感染の有無及び/または被害度を判別する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検対象である生体の寄生虫に対する感染に係る検査を行う生体の検査方法において、
予め、寄生虫に感染しているサンプル生体と寄生虫に感染していないサンプル生体とに近赤外線を照射し、該サンプル生体からの拡散反射光あるいは拡散透過光を受光し、受光した光の吸光度を測定し、該吸光度における二次微分スペクトルに基づいて生体の寄生虫に対する感染の有無及び/または感染による予め定めた発症無しから発症有りの最大までの発症の程度を数値化した被害度に係る演算を行う演算モデルを構築し、
被検対象の生体に近赤外線を照射し、被検対象の生体からの拡散反射光あるいは拡散透過光を受光し、受光した光の吸光度を測定し、この吸光度と上記演算モデルとから演算された演算結果により上記感染の有無及び/または被害度を判別することを特徴とする生体の検査方法。
【請求項2】
上記被害度を、感染無しの被検対象についても階級付けすることを特徴とする請求項1記載の生体の検査方法。
【請求項3】
上記被害度を、被検対象に現れる変色部位の程度に基づいて定めたことを特徴とする請求項1または2記載の生体の検査方法。
【請求項4】
上記被害度は、発症無しを0とし、発症有りの最大を100とした指数で構成したことを特徴とする請求項3記載の生体の検査方法。
【請求項5】
上記被害度は、発症の程度を、発症無しを0とし、発症有りの最大を100とした指数で表したとき、発症無しを0とし、発症有りの側を所定指数範囲毎に順に上昇する階級で構成したことを特徴とする請求項3記載の生体の検査方法。
【請求項6】
上記演算モデルは、統計学的解析を用いて構築される解析モデル、または、機械学習を用いて構築される学習済みモデルからなり、
上記統計学的解析は、判別分析、重回帰分析、PLS回帰分析、ロジスティック回帰分析、サポートベクターマシン(SVM)から選択され、
上記機械学習は、決定木(CART),回帰木,ランダムフォレスト,勾配ブースティング木等の木分析、パーセプトロン、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、再起型ニューラルネットワーク(RNN)、残差ネットワーク(ResNet)等のニューラルネットワーク若しくはディープラーニング(DNN)、これらの組合せからなるアンサンブル分析から選択されることを特徴とする請求項1乃至5何れかに記載の生体の検査方法。
【請求項7】
上記演算モデルとして、感染の有無を判別する種類の異なる複数の演算モデルを用い、各演算モデルを用いた各判別結果のうちいずれか1つが感染有りを判別したとき、当該判別結果を優先することを特徴とする請求項6記載の生体の検査方法。
【請求項8】
上記演算モデルとして、感染の有無を判別する種類の異なる3以上の演算モデルを用い、各演算モデルの感染の有無の判別結果を多数決で決定することを特徴とする請求項6記載の生体の検査方法。
【請求項9】
上記寄生虫は、生体としての植物が感染するセンチュウであることを特徴とする請求項1乃至8何れかに記載の生体の検査方法。
【請求項10】
上記生体は、ニンニク,ジャガイモ,サツマイモ,アイリスから選択され、寄生虫は、イモグサレセンチュウであることを特徴とする請求項9記載の生体の検査方法。
【請求項11】
上記被検対象を、りん片が集合したニンニク球で構成したことを特徴とする請求項10記載の生体の検査方法。
【請求項12】
上記被害度を、被検対象に現れる変色部位の程度に基づいて定めるとともに、発症無しを0とし、発症有りの最大を100とした指数で構成した下記の被害度で構成したことを特徴とする請求項11記載の生体の検査方法。
被害度(指数)=((t=1のりん片数)+(t=2のりん片数×2)+(t=3のりん片数×3)+(t=4のりん片数×4))/(全調査りん片数×4)×100
ここで、
tはニンニク球1つ当たりの寄生虫の感染による変色部位の大きさに対応した数値であって値が大きくなるにしたがって変色部位の大きさが大きくなるように定めた数値であり、t=1,t=2,t=3,t=4の4区分に設定される。
【請求項13】
上記被害度を、被検対象に現れる変色部位の程度に基づいて定めるとともに、発症の程度を、発症無しを0とし、発症有りの最大を100とした指数で表したとき、下記の発症の程度で表し、発症無しを0とし、発症有りの側を所定指数範囲毎に順に上昇する階級で構成したことを特徴とする請求項11記載の生体の検査方法。
発症の程度(指数)=((t=1のりん片数)+(t=2のりん片数×2)+(t=3のりん片数×3)+(t=4のりん片数×4))/(全調査りん片数×4)×100
ここで、
tはニンニク球1つ当たりの寄生虫の感染による変色部位の大きさに対応した数値であって値が大きくなるにしたがって変色部位の大きさが大きくなるように定めた数値であり、t=1,t=2,t=3,t=4の4区分に設定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物や動物からなる生体の寄生虫に対する感染に係る検査を行う生体の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば、食用の植物や観賞用の植物、あるいは、食用の動物(魚や肉)からなる生体は、寄生虫に感染し、その用に供さないことがあり、そのため、生体の寄生虫に対する感染に係る検査を行う。その生体の検査方法としては、例えば、寄生虫としてセンチュウの場合で説明すると、以下の生体としてのニンニクの例を挙げることができる。
【0003】
近年、生体としてのニンニクにおいては、寄生虫としてのセンチュウであるイモグサレセンチュウに対しての感染が生じ、その対策が種々行われている。その際、先ず、収穫したニンニクのイモグサレセンチュウに対する感染に係る検査を行うことが必要不可欠になる。従来、このイモグサレセンチュウの検査方法としては、例えば、特許文献1(特開2017-219423号公報)に記載されたものが知られている。これは、予め、イモグサレセンチュウを破砕して遠心分離で得られる体内液を家兎に注射・免疫して抗血清を得、この抗体血清から非特異的反応を示す反応物を除去して抗線虫血清を得る。そして、被検対象であるニンニクを破砕し、これに上記の抗線虫血清を接触させて抗原-抗体反応処理し、その後、抗線虫血清中の抗体を標識処理する。反応複合体が生成している場合にはその検出がなされる。反応複合体を検出するための標識処理としては、酵素や蛍光物質等による従来公知の処理方法を用いる。
【0004】
また、センチュウの抽出法としては、例えば、表面を殺菌処理した感染ニンニクのりん片を細かく刻んでロート上で薬品処理してセンチュウ懸濁液を得るベルマン法が知られている(上記の特許文献1(特開2017-219423号公報),特許文献2(特開2010-100568号公報)等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-219423号公報
【特許文献2】特開2010-100568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この従来の生体の検査方法においては、逐一、生体を破砕して抗線虫血清や所要の薬品で処理しなければならないので、手間がかかり検査作業が極めて煩雑になっているとともに、生体を破壊するので、ニンニクのようにりん片のまま出荷する製品の場合には、全品検査ができないことから、対応できないという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、寄生虫に感染した生体であってもその生体を非破壊的に検査することができるようにして、検査効率の向上を図るとともに、汎用性の向上を図った生体の検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するため、本発明の生体の検査方法は、被検対象である生体の寄生虫に対する感染に係る検査を行う生体の検査方法において、
予め、寄生虫に感染しているサンプル生体と寄生虫に感染していないサンプル生体とに近赤外線を照射し、該サンプル生体からの拡散反射光あるいは拡散透過光を受光し、受光した光の吸光度を測定し、該吸光度における二次微分スペクトルに基づいて生体の寄生虫に対する感染の有無及び/または感染による予め定めた発症無しから発症有りの最大までの発症の程度を数値化した被害度に係る演算を行う演算モデルを構築し、
被検対象の生体に近赤外線を照射し、被検対象の生体からの拡散反射光あるいは拡散透過光を受光し、受光した光の吸光度を測定し、この吸光度と上記演算モデルとから演算された演算結果により上記感染の有無及び/または被害度を判別する構成としている。
【0009】
ここで、生体は、寄生虫に感染する植物あるいは動物からなり、生きた状態でも死んだ状態であっても良い。例えば、野菜や果物などの食品用や観賞用の植物、魚や食肉等を挙げることができる。寄生虫としては、原虫類,肉質鞭毛虫類,胞子虫類,繊毛虫類,蠕虫類,線虫類(センチュウ),条虫類,吸虫類,鉤頭虫類等を挙げることができる。
【0010】
また、感染とは寄生虫が寄生した状態を言い、発症とは寄生虫の感染により何らかの症状が出て、例えば、生体の組織が変化する等の症状が出て生体に病巣が現れることをいう。被害度は、表面だけでなく、内部の病状がある場合も特定できる。表面だけでなく、内部の判別もできるので、極めて初期の病状も把握でき、肉眼検査よりも初期の病状の診断にも適する。
【0011】
これにより、被検対象の生体に近赤外線を照射し、被検対象の生体からの拡散反射光あるいは拡散透過光を受光し、受光した光の吸光度を測定し、この吸光度と演算モデルとから演算された演算結果により、生体の寄生虫による感染の有無及び/または被害度を判別するので、被検対象の生体を非破壊的に検査することができ、検査効率の向上を図ることができるとともに、汎用性の向上を図ることができる。また、演算モデルを用いるので、寄生虫が内部に侵入している場合や感染が僅かであっても、生体の寄生虫による感染の有無の判別や、発症の被害度の特定を確実に行うことができ検査精度を向上させることができる。更に、被害度を判別する場合には、寄生虫による発症の広がり程度が分かるので、生体の品質評価を容易に行うことができる。更にまた、被害度は、発症の程度を定量化した値となるので、発症の広がり程度を確実に把握できる。このため、生体の品質の仕分けをすることができ、より一層汎用性を向上させることができる。
【0012】
そして、必要に応じ、上記被害度を、感染無しの被検対象についても階級付けする構成としている。これにより、被害度を判別することで、感染無しも判別することができ、極めて効率が良くなる。
【0013】
この場合、上記被害度を、被検対象に現れる変色部位の程度に基づいて定めたことが有効である。生体としては、寄生虫にもよるが、寄生虫の感染で発症した際、病巣が生体の表面に現れるものに適する。
【0014】
この構成において、上記被害度は、発症無しを0とし、発症有りの最大を100とした指数で構成することができる。
また、この構成において、上記被害度は、発症の程度を、発症無しを0とし、発症有りの最大を100とした指数で表したとき、発症無しを0とし、発症有りの側を所定指数範囲毎に順に上昇する階級で構成することができる。階級で構成した場合には、生体の品質の仕分けを容易に行うことができ、より一層汎用性を向上させることができる。
【0015】
そして、必要に応じ、上記演算モデルは、統計学的解析を用いて構築される解析モデル、または、機械学習を用いて構築される学習済みモデルからなり、
上記統計学的解析は、判別分析、重回帰分析、PLS回帰分析、ロジスティック回帰分析、サポートベクターマシン(SVM)から選択され、
上記機械学習は、決定木(CART),回帰木,ランダムフォレスト,勾配ブースティング木等の木分析、パーセプトロン、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、再起型ニューラルネットワーク(RNN)、残差ネットワーク(ResNet)等のニューラルネットワーク若しくはディープラーニング(DNN)、これらの組合せからなるアンサンブル分析から選択される構成としている。
【0016】
演算モデルは、統計学的解析を用いて構築される解析モデル、または、機械学習を用いて構築される学習済みモデルからなるので、検査精度を向上させることができる。特に、ディープラーニング(DNN)を用いる場合には、大幅に検査精度を向上させることができる。演算モデルにおける波長は、700nm~2500nmの範囲の近赤外領域の波長から統計学的に優位な波長を選択して組み合わせて用いることができる。これにより、生体が寄生虫に感染していることやこれによる発症の程度を精度良く判別することができる。
【0017】
また、必要に応じ、上記演算モデルとして、感染の有無を判別する種類の異なる複数の演算モデルを用い、各演算モデルを用いた各判別結果のうちいずれか1つが感染有りを判別したとき、当該判別結果を優先する構成としている。これにより、生体が寄生虫に感染していることを精度良く判別することができる。
【0018】
あるいはまた、必要に応じ、上記演算モデルとして、感染の有無を判別する種類の異なる3以上の演算モデルを用い、各演算モデルの感染の有無の判別結果を多数決で決定する構成としている。これによっても、生体が寄生虫に感染していることを精度良く判別することができる。
【0019】
そして、上記寄生虫は、生体としての植物が感染するセンチュウ(線虫類)である構成としている。生体は、センチュウに感染しうる例えば植物に分類されるニンニク、ジャガイモ、サツマイモやアイリス等、どのような植物であっても良い。
センチュウとしては、イモグサレセンチュウ,ネコブセンチュウ(サツマイモネコブセンチュウ、ジャワネコブセンチュウ、アレナリアネコプセンチュウ、キタネコブセンチュウ),ネグサレセンチュウ(ミナミネグサレセンチュウ、チャネグサレセンチュウ、キタネグサレセンチュウ、クルミネグサレセンチュウ),ハガレセンチュウ(ハセンチュウ、ハガレセンチュウ),クキセンチュウ,イシュクセンチュウ,シストセンチュウ,ラセンセンチュウ,ユミハリセンチュウ,ハリセンチュウ,ピンセンチュウ,ワセンチュウ,サヤワセンチュウ等を挙げることができる。
【0020】
この場合、上記生体は、ニンニク,ジャガイモ,サツマイモ,アイリスから選択され、寄生虫は、イモグサレセンチュウである構成としている。
【0021】
また、この場合、上記被検対象を、りん片が集合したニンニク球で構成している。ニンニク球毎に検査するので、検査効率が良い。また、ニンニクの出荷は主にニンニク球の状態で行うので、この点でも検査効率が良い。
【0022】
この被検対象を、りん片が集合したニンニク球で構成した場合、必要に応じ、上記被害度を、被検対象に現れる変色部位の程度に基づいて定めるとともに、発症無しを0とし、発症有りの最大を100とした指数で構成した下記の被害度で構成している。
【0023】
被害度(指数)=((t=1のりん片数)+(t=2のりん片数×2)+(t=3のりん片数×3)+(t=4のりん片数×4))/(全調査りん片数×4)×100
ここで、
tはニンニク球1つ当たりの寄生虫の感染による変色部位の大きさに対応した数値であって値が大きくなるにしたがって変色部位の大きさが大きくなるように定めた数値であり、t=1,t=2,t=3,t=4の4区分に設定される。
【0024】
また、この被検対象を、りん片が集合したニンニク球で構成した場合、必要に応じ、上記被害度を、被検対象に現れる変色部位の程度に基づいて定めるとともに、発症の程度を、発症無しを0とし、発症有りの最大を100とした指数で表したとき、下記の発症の程度で表し、発症無しを0とし、発症有りの側を所定指数範囲毎に順に上昇する階級で構成している。
【0025】
発症の程度(指数)=((t=1のりん片数)+(t=2のりん片数×2)+(t=3のりん片数×3)+(t=4のりん片数×4))/(全調査りん片数×4)×100
ここで、
tはニンニク球1つ当たりの寄生虫の感染による変色部位の大きさに対応した数値であって値が大きくなるにしたがって変色部位の大きさが大きくなるように定めた数値であり、t=1,t=2,t=3,t=4の4区分に設定される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、被検対象の生体に近赤外線を照射し、被検対象の生体からの拡散反射光あるいは拡散透過光を受光し、受光した光の吸光度を測定し、この吸光度と演算モデルとから演算された演算結果により、生体の寄生虫による感染の有無及び/または被害度を判別するので、被検対象の生体を非破壊的に検査することができ、検査効率の向上を図ることができるとともに、汎用性の向上を図ることができる。また、演算モデルを用いるので、寄生虫が内部に侵入している場合や感染が僅かであっても、生体の寄生虫による感染の有無の判別や、発症の被害度の特定を確実に行うことができ検査精度を向上させることができる。更に、被害度を判別する場合には、寄生虫による発症の広がり程度が分かるので、生体の品質評価を容易に行うことができる。更にまた、被害度は、発症の程度を定量化した値となるので、発症の広がり程度を確実に把握できる。このため、生体の品質の仕分けをすることができ、より一層汎用性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施の形態に係る生体の検査方法を実現する検査装置を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る生体の検査方法を実現する検査装置が対象とする生体としてのニンニクを保持部とともに示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る生体の検査方法を実現する検査装置を示す正面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る生体の検査方法を実現する検査装置を示す平面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る生体の検査方法を実現する検査装置を示す側面図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る生体の検査方法を実現する検査装置において、ロボットの把持ハンドと検査部との関係を把持ハンドの動作工程とともに示す図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る生体の検査方法を実現する検査装置において、検査ユニットを示し、(a)は検査ユニットの斜視図、(b)は検査ユニットの検査部を示す図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る生体の検査方法を実現する検査装置において、検査部を生体としてのニンニクを検査している状態で示す断面図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係る生体の検査方法を実現する検査装置において、制御部の構成を示すブロック図である。
【
図10】本発明の実施の形態に係る生体の検査方法を実現する検査装置において、制御部が用いる学習済みモデルを模式的に示す図である。
【
図11】本発明の実施の形態に係る生体の検査方法を実現する検査装置の制御部における制御フローを示すフローチャートである。
【
図12】本発明の実施の形態に係る生体の検査方法を実現する検査装置の制御部における制御フローであって、サンプル測定と判別ルーチンの制御フローを示すフローチャートである。
【
図13】本発明の実施の形態に係る生体の検査方法を実現する検査装置の制御部に係る制御フローであって、寄生虫判別ルーチンの制御フローを示すフローチャートである。
【
図14】本発明の実施例1の演算モデル(重回帰分析(感染の有無判別))に係り、(a)は実測値と推測値の相関関係を示すグラフ図、(b)はその元になる数値を示す表図である。
【
図15】本発明の実施例1の演算モデル(重回帰分析(感染の有無判別))において、その検証例を示し、(a)は実測値と推測値の相関関係を示すグラフ図、(b)はその元になる数値を示す表図である。
【
図16】本発明の実施例2の演算モデル(重回帰分析(被害度(指数)判別))に係り、(a)は実測値と推測値の相関関係を示すグラフ図、(b)はその検証結果を示すグラフ図である。
【
図17】本発明の実施例3の演算モデル(ロジスティック回帰モデル(感染の有無判別))に係り、(a)は実測値と推測値の相関関係を示す表図、(b)はその検証結果を示す表図である。
【
図18】本発明の実施例4の演算モデル(ロジスティック回帰モデル(被害度(6階級)判別))に係り、(a)は実測値と推測値の相関関係を示す表図、(b)はその検証結果を示す表図である。
【
図19】本発明の実施例5の演算モデル(AI学習済みモデルA(感染の有無判別))に係り、(a)は実測値と推測値の相関関係を示す表図、(b)は推測確率の分布を示すグラフ図である。
【
図20】本発明の実施例5の演算モデル(AI学習済みモデルA(感染の有無判別))に係り、その検証結果を示す表図である。
【
図21】本発明の実施例6の演算モデル(AI学習済みモデルB(被害度(6階級)判別))に係り、(a)は実測値と推測値の相関関係を示す表図、(b)はその検証結果を示す表図である。
【
図22】本発明の実施例7の演算モデル(AI学習済みモデルC(被害度(指数)判別))に係り、(a)は実測値と推測値の相関関係を示すグラフ図、(b)はその検証結果を示すグラフ図である。
【
図23】本発明の実施例8の演算モデル(AI学習済みモデルD(感染の有無判別))に係り、(a)は実測値と推測値の相関関係を示す表図、(b)はその検証結果を示す表図である。
【
図24】本発明の実施例9の演算モデル(AI学習済みモデルE(被害度(6階級)判別))に係り、(a)は実測値と推測値の相関関係を示す表図、(b)はその検証結果を示す表図である。
【
図25】本発明の実施例10の演算モデル(AI学習済みモデルF(被害度(指数)判別))に係り、(a)は実測値と推測値の相関関係を示すグラフ図、(b)はその検証結果を示すグラフ図である。
【
図26】本発明の実施例11の演算モデル(AI学習済みモデルG(感染の有無判別))に係り、(a)は実測値と推測値の相関関係を示す表図、(b)はその検証結果を示す表図である。
【
図27】本発明の実施例12の演算モデル(AI学習済みモデルH(被害度(6階級)判別))に係り、(a)は実測値と推測値の相関関係を示す表図、(b)はその検証結果を示す表図である。
【
図28】本発明の実施例13の演算モデル(AI学習済みモデルI(被害度(指数)判別))に係り、(a)は実測値と推測値の相関関係を示すグラフ図、(b)はその検証結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態に係る生体の検査方法を説明する。この生体の検査方法は、生体の検査装置によって実現されるので、この生体の検査装置の説明において説明する。
【0029】
図1乃至
図9に示すように、本発明の実施の形態に係る生体の検査装置Sは、被検対象Wである生体の寄生虫に対する感染に係る検査を行うもので、
図2に示すように、生体は、収穫されたニンニクであり、寄生虫は、イモグサレセンチュウである。被検対象Wは、りん片Waが集合したニンニク球で構成されている。ニンニク球(被検対象W)は、上に数センチメートル突出した花径Wbを有するとともに下に盤茎Wcを有し、外皮で被覆されており、洗浄されて乾燥されている。寄生虫による感染は、盤茎Wc側から生じる。Fは寄生虫に感染した病巣部(点線表示)を示す。一般には、病巣部Fは外皮に隠れて見えないか見えにくくなっている。発症が酷い場合には外皮まで影響が及び顕著に表面に現れる。
【0030】
実施の形態に係る生体の検査装置Sは、基台1と、基台1に設けられ被検対象Wを所定間隔で一個一個順次搬送する搬送部2と、基台1の近傍に設置されたロボット10と、ロボット10のロボットアーム11の先端部に搬送部2の搬送過程で被検対象Wを把持するとともに被検対象Wを検査位置Yに位置決めする把持ハンド12と、ロボット10のロボットアーム11の先端部であって把持ハンド12の近傍に設けられ把持ハンド12によって検査位置Yに位置決めされた被検対象Wの検査を行う検査部30と、検査部30の検査後にロボット10により移動させられ把持ハンド12に把持された被検対象Wを受け取る受取部50と、検査機能を実現するとともに、搬送部2,ロボット10及び検査部30の制御等を行う制御部60とを備えて構成されている。図中70は、CRT等からなる表示部である。
【0031】
ロボット10において、
図6に示すように、把持ハンド12は、これを開閉する開閉アクチュエータ13を介してロボットアーム11の先端に設けられており、開閉アクチュエータ13は揺動可能になっており、この開閉アクチュエータ13の揺動により、把持ハンド12は、搬送部2上の被検対象Wを把持化可能な把持位置X及び検査部30での検査を行わせる検査位置Yの2位置に移動させられる。
【0032】
搬送部2は、図示外のモータで駆動されるエンドレスのベルトコンベア3と、ベルトコンベア3上にその移動方向に沿って所定間隔で設けられ被検対象Wを保持する複数の保持部20とを備えて構成されている。保持部20は、
図2に示すように、被検対象Wのニンニク球をその盤茎Wcを上にして支承保持するもので、下面がベルトコンベア3の表面に固着される円筒状の側壁21及び上壁22を有したカップ状の保持本体23と、保持本体23の上壁22に形成され保持本体23の軸線を中心としニンニク球の花径Wbが挿通される挿通孔24と、挿通孔24の全部若しくは上側(実施の形態では挿通孔24の全部)で構成されニンニク球の花径Wb側の周囲を支承する円錐状の支承凹部25とを備えて構成されている。これにより、把持ハンド12で把持された被検対象Wのニンニク球の盤茎Wc側が検査部30に対峙するようにしている。
【0033】
基台1には、搬送部2のベルトコンベア3によって搬送された被検対象Wがロボット10の把持ハンド12で把持する所定位置に位置したことを検知する位置検知センサ(図示せず)が設けられており、この位置検知センサの検知に基づいてロボット10の把持ハンド12により被検対象Wが把持されて取出される。搬送部2のベルトコンベア3の上側には、搬送される被検対象Wを撮像するカメラ26が備えられている。カメラ26の撮像により、被検対象Wの大きさを知ることができる。
【0034】
検査部30は、
図6乃至
図8に示すように、円柱状の検査ユニット31と、検査ユニット31をロボットアーム11の先端部であって把持ハンド12の近傍に支持する支持杆32と、検査ユニット31の先端側に設けられ検査位置Yに位置決めされた被検対象Wを覆うカバー33とを備えて構成されている。検査部30と把持ハンド12をロボットアーム11に設けたので、被検対象Wを搬送しながら検査することができ、その後、分別作業を行う場合、極めて効率よく行うことができる。
【0035】
検査ユニット31は、
図7及び
図8に示すように、円柱状のユニット本体34と、複数の光ファイバの先端部で構成され被検対象Wに近赤外領域の光を照射する光源部35、及び、光ファイバの先端部で構成され被検対象Wからの拡散反射光あるいは拡散透過光を受光する受光部36を備えた検知部37を備えている。光ファイバは集約されて、円柱状の中実の保持体38に保持されており、保持体38の被検対象W側の一端面に各光ファイバの端面を露出させて、この一端面を検知部37としている。保持体38は、保持体38の軸線と同軸で中実の円柱状のユニット本体34に保持されている。保持体38の一端面である検知部37は、ユニット本体34の被検対象W側の一端面より後位に位置させられており、検知部37の前側に凹所39を形成している。
【0036】
また、検査ユニット31は、検知部37に対する防塵を行う防塵機構40を備えている。防塵機構40は、ユニット本体34の端面の外周側の一部に突設された突設部41を備え、この突設部41に、ユニット本体34の一端面に沿ってエアを噴射して凹所39を覆うエアカーテンを形成するエア噴射口42を形成して構成されている。ユニット本体34にはその軸線に平行でエア噴射口42にエアを導くエア通路43が形成されている。44はユニット本体34の他端側においてエア通路43に接続されたエアの供給管である。検知部37の光源部35及び受光部36を常に綺麗にしておくことができるので、検査を確実に行うことができるとともに、メンテナンスを容易にすることができる。
【0037】
受取部50は、被検対象Wを受取る6つのシュータ51を備えている。シュータ51は後述の判別された被害度(0~5)に対応して設けられており、ロボット10は、制御部60の指令を受けて検査後に把持ハンド12が把持している被検対象Wを、対応するシュータ51に投入する。即ち、本装置は、寄生虫の感染の有無に応じて、実施の形態では、被害度に応じて、被検対象Wを分別する分別手段52を備え、分別手段52は、制御部60によって所要の制御が行われるロボット10及び受取部50によって構成され、これらの機能によって分別を行う。
【0038】
制御部60は、
図9に示すように、総合制御を行う演算処理部61を備えている。演算処理部61は、予め、寄生虫に感染しているサンプル生体と寄生虫に感染していないサンプル生体とに近赤外領域の光を照射することによりこのサンプル生体から得られる拡散反射光あるいは拡散透過光の近赤外線領域の波長についての吸光度における二次微分スペクトルに基づいて構築され、生体の寄生虫に対する感染の有無及び/または感染による予め定めた発症無しから発症有りの最大までの発症の程度を数値化した被害度に係る演算を行う演算モデルを記憶する演算モデル記憶部62を備えている。
【0039】
また、演算処理部61は、受光部36が受光した光の吸光度と演算モデル記憶部62に記憶した演算モデルとから演算された演算結果により、感染の有無及び/または被害度を判別する判別部63を備えている。即ち、判別部63は、受光部36が受光した光の吸光度と演算モデルとから演算された演算結果により生体が寄生虫に感染しているか否かの判別をする感染判別機能を備えている。また、判別部63は、受光部36が受光した光の吸光度と演算モデルとから演算された演算結果により、生体の寄生虫に対する感染による予め定めた発症無しから発症有りの最大までの発症の程度を数値化した被害度を判別する被害度判別機能を備えている。
【0040】
実施の形態では、被害度は、
図2に示すように、被検対象Wに現れる変色部位の程度に基づいて定めている。被害度において、感染無しの被検対象Wについても階級付けすることができる。実施の形態では、発症無しに感染無しを含ませている。被害度と感染の有無を精査したい場合には、各々の学習済みモデルを使用して対処することもできる。被害度としては、2種類の態様を用いている。一方の被害度は、発症無しを0とし、発症有りの最大を100とした指数で構成している。詳しくは、下記の被害度によって行う。
【0041】
被害度(指数)=((t=1のりん片数)+(t=2のりん片数×2)+(t=3のりん片数×3)+(t=4のりん片数×4))/(全調査りん片数×4)×100
ここで、
tはニンニク球1つ当たりの寄生虫の感染による変色部位の大きさに対応した数値であって値が大きくなるにしたがって変色部位の大きさが大きくなるように定めた数値であり、t=1,t=2,t=3,t=4の4区分に設定される。
【0042】
他方の被害度は、発症の程度を、発症無しを0とし、発症有りの最大を100とした指数で表したとき、発症無しを0とし、発症有りの側を所定指数範囲毎に順に上昇する階級で構成している。実施の形態では、被害度を下記の6階級に設定している。
【0043】
被害度0=発症の程度 0
発症の程度 0<被害度1≦発症の程度20
発症の程度20<被害度2≦発症の程度40
発症の程度40<被害度3≦発症の程度60
発症の程度60<被害度4≦発症の程度80
発症の程度80<被害度5≦発症の程度100
【0044】
発症の程度は下記の通り定める。
発症の程度(指数)=((t=1のりん片数)+(t=2のりん片数×2)+(t=3のりん片数×3)+(t=4のりん片数×4))/(全調査りん片数×4)×100
ここで、
tはニンニク球1つ当たりの寄生虫の感染による変色部位の大きさに対応した数値であって値が大きくなるにしたがって変色部位の大きさが大きくなるように定めた数値であり、t=1,t=2,t=3,t=4の4区分に設定される。
【0045】
演算モデルは、統計学的解析を用いて構築される解析モデル、または、機械学習を用いて構築される学習済みモデルからなり、
統計学的解析は、判別分析、重回帰分析、PLS回帰分析、ロジスティック回帰分析、サポートベクターマシン(SVM)から選択され、
機械学習は、決定木(CART),回帰木,ランダムフォレスト,勾配ブースティング木等の木分析、パーセプトロン、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、再起型ニューラルネットワーク(RNN)、残差ネットワーク(ResNet)等のニューラルネットワーク若しくはディープラーニング(DNN)、これらの組合せからなるアンサンブル分析から選択される。
【0046】
詳しくは、重回帰分析,PLS回帰分析,ロジスティック回帰分析においては、予め、寄生虫に感染しているサンプル生体と寄生虫に感染していないサンプル生体とに近赤外線を照射し、該サンプル生体からの拡散反射光あるいは拡散透過光を受光し、受光した光の吸光度を測定し、該吸光度における二次微分スペクトルの統計学的解析により上記寄生虫に起因する帰属波長に係る解析モデル(演算モデル)を特定しておき、被検対象Wの物体に近赤外線を照射し、被検対象Wの生体からの拡散反射光あるいは拡散透過光を受光し、受光した光の吸光度を測定し、これらの吸光度と上記解析モデルとから算出された算出結果から生体の寄生虫に対する感染の有無及び/または感染による予め定めた発症無しから発症有りの最大までの発症の程度を数値化した被害度を判別する。
【0047】
<重回帰分析>
上記解析モデルを、上記サンプル生体中から受光した光の吸光度スペクトルをMSC処理後に二次微分して重回帰分析法により特定する。MSC(Multiplicative Scatter Correction)とは測定スペクトル中に起きる乗算的因子(光の散乱等)や加算的因子を除去するための前処理法である(以下同じ)。
【0048】
上記解析モデルを、互いに相関係数の高い第1~n波長の吸光度を変数とする下記の一般式(B)の関係を満たす式(判別式)により特定した。
【0049】
【0050】
一般式(B)において、第1波長(λ1)乃至第n波長(λn)を選択するにあたり、先ず、予めサンプル生体の吸光度を測定しておき、生体中に寄生虫が感染しているか否かはその後のベルマン法による培養法等の別手段で行い、生体中に寄生虫に感染しているサンプルか感染していないサンプルかを指標として、上記寄生虫に感染したサンプル生体の吸光度と、上記寄生虫に感染していないサンプル生体の吸光度との重回帰分析によって求められた上記寄生虫に帰属する相関係数が最も高い第1波長(λ1)の近赤外線の波長域を選択し、次に、該第1波長(λ1)の近赤外線波長域と700nm~2500nmの範囲の波長域との重回帰分析によって上記寄生虫に帰属し該第1波長(λ1)の近赤外線の波長域の相関係数以上の高い相関係数となる第2波長(λ2)の波長域を選択し、それから、上記第1波長(λ1)及び第2波長(λ2)の近赤外線の波長域と700nm~2500nm範囲の波長域との重回帰分析によって上記寄生虫に帰属し上記第1波長(λ1)及び第2波長(λ2)の近赤外線の波長域の相関係数以上の相関係数となる第3波長(λ3)の波長域を選択し、このように第1波長(λ1)~第(n-1)波長(λn-1)の近赤外線の波長域と700nm~2500nmの範囲の波長域との重回帰分析によって上記寄生虫に帰属し、上記第1波長(λ1)の近赤外線の波長域の相関係数以上となる第n波長(λn)の波長域を選択する。
【0051】
<PLS回帰分析>
上記解析モデルを、上記サンプル物体から受光した光の吸光度スペクトルをMSC処理後に二次微分してPLS(Partial least square projection to Latent Structure)分析法により算出して特定した。
【0052】
<ロジスティック回帰分析法>
上記学習済みモデルを、上記サンプル物体から受光した光の吸光度スペクトルをMSC処理後に二次微分してロジスティック回帰分析法により算出して特定した。
【0053】
<サポートベクターマシン(SVM)>
上記学習済みモデルを、上記サンプル物体から受光した光の吸光度スペクトルをMSC処理後に二次微分してSVM(Saport Vecter Machine)法により特定した。
【0054】
次に、ディープラーニング法の例を挙げる。
<ディープラーニング法(1)>
例えば、上記学習済みモデルとして、上記サンプル生体から受光した光の吸光度スペクトルをMSC処理後に二次微分してディープラーニング法の決定木とランダムフォレスト法とによる所謂アンサンブル法による学習済みモデルを用いる。アンサンブル法によって、統計学的に優位な学習済みモデルとする。組み合わせはこれに限定されず、適宜選択して組み合わせてよい。後述のAI学習済みモデルA~Cのタイプである。
【0055】
<ディープラーニング法(2)>
上記学習済みモデルとして、上記サンプル生体から受光した光の吸光度スペクトルをMSC処理後に二次微分してディープラーニング法のDNN(Deep Neural Network)法による学習済みモデルを用いる。後述のAI学習済みモデルD~Fのタイプである。
【0056】
<ディープラーニング法(3)>
上記学習済みモデルとして、上記サンプル生体から受光した光の吸光度スペクトルをMSC処理後に二次微分し、その波形を画像化してディープラーニング法のCNN(Convolutional Neural Network)法による学習済みモデルを用いる。後述のAI学習済みモデルG~Iのタイプである。
【0057】
実施の形態において、感染の有無についての学習済みモデルは、生体(ニンニク)の寄生虫(イモグサレセンチュウ)に対する感染の有無に係る演算結果を出力するようコンピュータを機能させるための学習済みモデルであって、
予めサンプル生体の吸光度を測定しておき、生体中の寄生虫の有無の認定はその後培養法等の別手段で行い、認定した寄生虫の有無を指標として、寄生虫に感染していないサンプル生体の吸光度データと、寄生虫に感染したサンプル生体の吸光度データとを、夫々寄生虫の有無に対応させ、この対応させたデータを教師データとし、該教師データを用いて学習させられたものであり、被検対象の生体に近赤外線を照射し、被検対象の生体からの拡散反射光あるいは拡散透過光を受光し、受光した光の吸光度を測定し、この吸光度データから生体が寄生虫に感染しているか否かを定量化した値を出力するよう、コンピュータを機能させる。
【0058】
また、発症に係る被害度についての学習済みモデルは、生体(ニンニク)の寄生虫(イモグサレセンチュウ)に対する感染による予め定めた発症無しから発症有りの最大までの発症の程度を数値化した被害度に係る演算結果を出力するようコンピュータを機能させるための学習済みモデルであって、
予めサンプル生体の吸光度を測定しておき、生体の寄生虫に対する感染による発症の被害度の認定はその後目視等の別手段で行い、該認定した生体の被害度を指標として、発症していないサンプル生体の吸光度データと、発症したサンプル生体の吸光度データとを、夫々、生体の被害度に対応させ、この対応させたデータを教師データとし、該教師データを用いて学習させられたものであり、被検対象の生体に近赤外線を照射し、被検対象の生体からの拡散反射光あるいは拡散透過光を受光し、受光した光の吸光度を測定し、この吸光度データから生体の寄生虫に対する感染による発症の被害度を定量化した値を出力するよう、コンピュータを機能させる。
図10には、学習済みモデルの構成例を示す。実施の形態では、例えば、入力層には、波長2nm間隔での550個の吸光度データが入力される。
【0059】
実施の形態においては、演算モデルとして、種類の異なる複数の演算モデルが備えられ、これらを選択的に用いることができるようにしている。
図9及び
図13には、重回帰分析モデル,ロジスティック回帰分析モデル,サポートベクターマシン(SVM),AI学習済みモデルとして、A~Fのタイプ、別のAI学習済みモデルとして、G~Iのタイプを用いた場合を示す。これらの具体的内容については後述の実施例に示す。
【0060】
演算処理部61は、種類の異なる複数の演算モデルを備えており、各演算モデルの判断結果の採否を判断する判断部64を備えている。判断部64は、感染の有無を判別する種類の異なる複数の演算モデルを選択した際、演算モデルによる各判別結果のうちいずれか1つが感染有りを判別したとき、当該判別結果を優先して採用する構成とすることができる。また、判断部64は、感染の有無を判別する種類の異なる3以上の演算モデルを用い、各演算モデルの感染の有無の判別結果を多数決で決定して採用する構成とすることができる。また、被害度を判別するときには、被害度に係る演算モデルを何れか1つ選択して用いることができる。この場合、全ての演算モデルにおいて演算を行いその結果を選択的に用いることができるようにすることができる。判断部64は、選択された演算モデルの演算結果を採用する。尚、表示部70には、全ての演算モデルの演算結果を表示することができる。実施の形態では、最終結果として、6階級の被害度を出力するようにしている。
【0061】
また、
図9に示すように、制御部60において、演算処理部61は、作動制御部65を有している。これは、処理履歴記憶機能、表示部70への結果表示機能、ロボット10の操作機能、インターネット通信機能、光量制御機能を備えている。また、制御部60は、インターネット通信機能により制御される通信部66、分光部を有しその分光制御回路を制御する等検査部30に係る制御を行う検査制御部67、搬送部2を制御する搬送部制御回路及びロボット10を制御するロボット制御回路等を備えた駆動制御部68、キーボード(図示せず)や設定パネル(図示せず)等の動作命令部69を備えて構成されている。
【0062】
作動制御部65における処理履歴記憶機能は、被検対象Wの測定個数の累積,判別結果やその累積結果を時系列で蓄積して記憶しておく。インターネット通信機能は、遠隔地で使用しているときに、その判別状況やシステムの状態を把握するため、また、アプリケーション(判別手法)のバージョンアップ等のメンテナンスを遠隔操作で行なうための機能である。このインターネット通信機能を利用することにより、被検対象Wの検査を、場所を問わず行なえるので、装置の汎用性を向上させることができる。光量制御機能は、分光部内で光検出センサが適切なレベルで測定が行なえるように光源の光量及び分光部内のセンサの感度を調整する。
【0063】
表示部70において、各種データが表示される。表示部70の表示は画面操作部(動作命令部69)で操作され、入力設定画面,判別結果表示画面,エラー表示画面等適宜に切り換わって表示可能になっている。尚、判別結果をLCDパネルに表示しても良い。また、判別結果を音声出力するようにしても良い。更に、外部へのデータ出力インターフェースを設けても良い。
【0064】
実施の形態においては、演算処理部61は、判別部63が被害度を判別すると、分別手段52により、被害度に応じて、被検対象Wを分別する。即ち、判別部63が被害度を判別すると、この判別した被害度に対応して被検対象Wを分別するよう作動制御部65のロボット操作機能及び駆動制御部68のロボット制御回路を介して、ロボット10を作動させ、把持ハンド12が把持している被検対象Wを、対応するシュータ51に投入せしめる。その他、制御部60は種々の制御を行う。
【0065】
従って、この実施の形態に係る生体の検査装置Sを用いて、被検対象Wの検査を行うときは、以下のようになる。
図11乃至
図13に示すフローチャートを用いて説明する。
図11に示すように、メイン電源供給スイッチ(図示せず)が入れられると、制御部60が起動し、分光部やセンサ、ランプ等の各機構のチェックを行なう(1-1)。このとき表示部70にはシステムの初期化中を示す画面が表示され表示灯は黄色が点灯する(1-2)。各機構のチェック動作完了後に吸光度算出の基準となるリファレンス波形を計測(1-3)し、これを制御部60内部の記憶部に記憶しておく(1-4)。その後メイン画面が表示され表示灯は緑色が点灯する(1-8)。その間に設定パネル(図示せず)から設定値呼び出し操作(1-5)があればランプ点灯累積時間や日付時間等の確認用画面が表示される(1-6)。検査を行なうには設定パネルを操作しメイン画面へ戻る(1-7)。
【0066】
被検対象Wとしてのニンニク球をその盤茎Wcを上にして保持部20に載置する。メイン画面の表示灯が緑色の時に制御ボタンのスタートスイッチを押す(1-9)と、被検対象Wの測定と判別ルーチンを実行する(1-10)。この被検対象Wの測定と判別ルーチンにおいては、
図12に示すように、始めに制御部60より搬送部2のベルトコンベア3の動作指示がされ(2-1)、被検対象Wを搬送する。この搬送過程で位置検知センサが、被検対象Wがロボット10の把持ハンド12で把持する所定位置に位置したことを検知する(2-2)と、カメラによる撮像が行われる(2-3)とともに、その後、所定位置でロボット10の把持ハンド12により被検対象Wが把持されて取出され、被検対象Wは検査位置Yに位置決めされ、検査部30により、被検対象Wの測定を行う。検査部30においては、光源部35から光が被検対象Wに照射されるとともに、その拡散反射光あるいは拡散透過光を受光部36により受光し、光ファイバで検査制御部67の分光部に伝送され、分光部にて近赤外線の波長の強度を波長域毎に電圧変換して抽出して演算処理部61に伝送する(2-4)。そして、拡散反射光あるいは拡散透過光の強度スペクトルを得て寄生虫判別の別ルーチンにより判別を行なう(2-5)。
【0067】
判別ルーチンにおいては、
図13に示すように、分光部より伝送された拡散光強度(拡散光スペクトル)についてノイズ除去処理を施し(3-1、3-2)、初期化時に記憶したリファレンス波形を読込み(3-3)、測定被検対象Wの近赤外線の吸光度を算出する(3-4)。その吸光度について標準化処理を行ない(3-5)、更に二次微分処理を施し(3-6)、その二次微分スペクトルについてセンタリングとスケーリング処理を施す(3-7)。このスペクトルを用いて、演算モデル記憶部61に予め記憶してある演算モデルによる判別を行う。判別は、重回帰分析(3-8),ロジスティック回帰分析(3-9),AI学習済みモデル(1)(2)のA~Fのタイプの演算(3-10),AI学習済みモデル(3)のG~Iのタイプの演算(3-11),サポートベクターマシン(SVM)の演算(3-12)において行われる。
【0068】
演算モデルとして、感染の有無を判別する種類の異なる複数の演算モデルを選択した場合には、判断部64により、各演算モデルによる各判別結果のうちいずれか1つが感染有りを判別したとき、当該判別結果を優先して採用し(3-13)、最終判別結果を算出する(3-14)。あるいは、演算モデルとして、感染の有無を判別する種類の異なる3以上の演算モデルを用いた際には、判断部64により、各演算モデルの感染の有無の判別結果を多数決で決定して採用し(3-13)、最終判別結果を算出する(3-14)。実施の形態では、演算モデルとして、被害度を判別する演算モデルを採用しており、判断部64は、選択された演算モデルの演算結果を採用し(3-13)、最終判別結果を算出する(3-14)。実施の形態では、最終結果として、6階級の被害度を出力するようにしている。また、全判断結果は表示部70で見ることができる。
【0069】
被検対象Wの測定を終えると、
図12に戻り、被害度の結果に基づいて、ロボット10を動作させ、受取部50の対応するシュータ51に被検対象Wを投入して分別する(2-6)。また、
図11に戻り、その判別結果とこれまでの判別結果の累計を表示する(1-13)。その間に各機構にてエラー発生や非常停止ボタンが押されると(1-11)、エラー発生画面が表示され表示灯は赤色が点灯する(1-12)。復帰するにはランプ、分光部、センサ等の機構をチェックする。判別結果や被検対象Wの測定時の拡散光スペクトルは制御部60内の記憶機能に記憶されていく。この流れはストップボタンが押されるまで繰り返し実行される(1-15)。
【実施例0070】
次に、演算モデルの実施例を示すとともに、その演算モデルを用いて実際に検査して検証した検証結果を示す。
<実施例1:重回帰分析(感染の有無判別)>
被検対象Wのニンニク球は、青森県六戸町の実験圃場で生産されたもので、出荷状態に整えたニンニク球12,480個を用いた。
図14に示すように、重回帰分析モデルの作成用データは、全被検対象Wを近赤外分光後に、当該被検対象Wについてベルマン法でイモグサレセンチュウの培養を行い、感染の有無を確認検査し、この感染の有無と当該サンプルの近赤外分光波長の吸光度データとを対応させたものである。その作成用データを用いて、感染の有無を判別するに必要な波長を相関が高い順に探索して、感染有無の重回帰分析モデルを作成した。
【0071】
具体的な感染有無の重回帰分析モデルで判別するために必要な波長は対数価値0.069以上の191個を用いた。
図14に示すように、感染有無の重回帰モデルは相関係数は0.6898である。相関関係は認められるが、高い相関があるとは云えない。しかしながら、当該重回帰分析モデルの推測値0.5以上を「感染あり」と判別値を設定した場合では、「感染なし」の99.6%、「感染あり」においても99.6%であった。この重回帰分析モデルは、判別値の設定において、ニンニクのイモグサレセンチュウ感染の有無を判別できるものである。
【0072】
この実施例1に係る演算モデル(感染有無の重回帰モデル)を用いて判別率と精度について検証した。被検対象Wとして、青森県六戸町の実験圃場で生産されたもので、出荷状態に整えたニンニク球を200個を用いた。結果を
図15に示す。この結果から、感染有無の重回帰モデルでは、重相関係数0.6836であった(
図15(a))。この重回帰モデルの感染の有無判別の精度は、推測値の判別値を0.5以上に設定した場合では、Precision0.9422で、「感染なし」の97.1%、「感染あり」の90.7%の精度で判別が可能であった(
図15(b))。
【0073】
<実施例2:重回帰分析(被害度(指数)判別)>
被検対象Wのニンニク球として、上記と同じ生産地のもので出荷状態に整えたニンニク球12,480個を用いた。被検対象Wのニンニク球を近赤外分光検査後に、当該検査ニンニク球についてベルマン法でイモグサレセンチュウの培養を行うとともに、被害度はニンニクの病巣程度を上記の被害度(指数)で算定した。被害度(指数)の重回帰モデルは、対数価値0.018以上で選択した196個の波長(図示せず)を得た。それら波長を用いた重回帰式を被害度(指数)推測重回帰モデルとした。
図16(a)に示すように、当該重回帰モデルは、相関係数は0.7815で被害度(指数)の推測は可能結果を得た。
【0074】
この実施例2に係る演算モデル(被害度(指数)の重回帰モデル)を用いて判別率と精度について検証した。上記と同じ生産地のもので出荷状態に整えたニンニク球200個を用いた。結果を
図16(b)に示す。この結果から、当該重回帰モデルは、相関係数は0.7965であった。被害度(指数)の推測は可能である結果を得た。
【0075】
<実施例3:ロジスティック回帰モデル(感染の有無判別)>
被検対象Wのニンニク球として、上記と同じ生産地のもので出荷状態に整えたニンニク球12,480個を用いた。被検対象Wのニンニク球を近赤外分光後に、ベルマン法でイモグサレセンチュウの培養を行い、感染の有無を確認検査し、その検査データを用いて、感染の有無を判別するに必要な波長を相関が高い順に探索して、感染有無のロジスティック回帰モデルを作成した。具体的な感染有無のロジスティック回帰モデルで判別するために必要な波長は対数価値0.039以上の164個(図示せず)を用いた。
図17(a)に示すように、イモグサレセンチュウ感染の有無のロジスティック回帰モデルの判別精度に関して、平均Precision0.9574で、「感染なし」の95.4%、「感染あり」の96.0%である。すなわち、極めて精度が高いモデルである。
【0076】
この実施例3に係る演算モデル(感染の有無判別のロジスティック回帰モデル)を用いて判別率と精度について検証した。上記と同じ生産地のもので出荷状態に整えたニンニク球200個を用いた。結果を
図17(b)に示す。この結果から、当該ロジスティック回帰モデルの感染の有無の判別精度は、平均Precision0.9674で、「感染なし」の97.7%、「感染あり」の92.9%の精度で判別が可能であった。
【0077】
<実施例4:ロジスティック回帰モデル(被害度(6階級)判別)>
被検対象Wのニンニク球として、上記と同じ生産地のもので出荷状態に整えたニンニク球3,120個を作成用データとして用いた。全被検対象Wについて、近赤外分光検査を行い、その後に、当該検査ニンニク球をベルマン法でイモグサレセンチュウの培養を行うとともに、被害度はニンニクの病巣程度を上記の被害度(6階級)で算定した。被害度(6階級)のロジスティック回帰分析モデルは、前述の被害度(6階級)の実測値データに対応した近赤外線分光吸光度データを教師データとして用い、ロジスティック回帰分析法で分析し、回帰式を作成したものである。
【0078】
図18(a)に示すように、当該ロジスティック回帰分析モデルは、被害度(6階級)の実測値と推測値の統計学的な解析で、Accuracy0.7583で、平均Precision0.7149、平均Recall0.4044,平均F値0.4295示し、再現率は低い傾向にあるが、当該ロジスティック回帰分析モデルはニンニクのイモグサレセンチュウ被害度(6階級)を分類できるモデルである。
【0079】
この実施例4に係る演算モデル(被害度(6階級)判別のロジスティック回帰モデル)を用いて判別率と精度について検証した。上記と同じ生産地のもので出荷状態に整えたニンニク球870個を用い、この被害度(6階級)判別の感染有無のロジスティック回帰モデルの判別率や精度を検証した。結果を
図18(b)に示す。この結果から、当該順序ロジスティック回帰モデルの被害度(6階級)の分類精度は、被害程度によって、Precision0.000~0.8709とばらつきがあるが、分類クラスの変更で可能であることが分かる。
【0080】
<実施例5:AI学習済みモデルA(感染の有無判別)>
被検対象Wのニンニク球として、上記と同じ生産地のもので出荷状態に整えたニンニク球15,075個を教師ありの教師データとして用いた。この教師データは、全被検対象Wについて、近赤外分光検査後に、当該検査ニンニク球をベルマン法でイモグサレセンチュウの培養を行い、感染の有無を確認検査し、この感染の有無と当該サンプルの近赤外分光波長の吸光度データと対応させたものである。実施例に係る学習済みモデルの基本構造は、入力層(波長2nmの間隔での550個の吸光度データが入力)、中間層及び出力層で構成される(以下の実施例において同じ)。
【0081】
この学習済みモデルAは、前述の感染有無の実測値データに対応した近赤外線分光吸光度データを教師データとして用い、ディープラーニング(DNN法)の交差5分割検証法で3~5種類、及び、勾配ブースティング木の交差5分割法で3~10種類のモデルを作成し、それら各モデルの正答率、誤答率、再現率やF値から、最適なモデルを選択するアンサンブル法で構築したモデルである。
【0082】
図19(a)に示すように、該学習済みモデルAは、統計学的な解析によって、AUC0.9999、Accuracy0.9992、Precision0.9992、Recall0.9992、F値0.9992で、極めて高い判別精度を有している。また、
図19(b)に示すように、当該学習済みモデルAの確立に用いた教師データの分布は、極めて明確に分離が可能な状態で分布している。
【0083】
この実施例5に係る演算モデル(感染の有無判別AI学習済みモデルA)を用いて判別率と精度について検証した。上記と同じ生産地のもので出荷状態に整えたニンニク球3,873個を用いた。
図20に示すように、この学習済みモデルAでは、重相関係数0.9979で、感染有無の判別精度は、感染なしの100.0%、感染ありにおいて99.9%であった。すなわち、ニンニクのイモグサレセンチュウ感染の有無を高精度で判別できるモデルであることが分かる。
【0084】
<実施例6:AI学習済みモデルB(被害度(6階級)判別)>
被検対象Wのニンニク球として、上記と同じ生産地のもので出荷状態に整えたニンニク球12,480個を教師ありの教師データとして用いた。全被検対象Wについて、近赤外分光検査を行い、その後に、当該検査ニンニク球をベルマン法でイモグサレセンチュウの培養を行うとともに、被害度はニンニクの病巣程度を上記の被害度(6階級)で算定した。被害度(6階級)の学習済みモデルBは、前述の被害度(6階級)の実測値データに対応した近赤外線分光吸光度データを教師データとして用い、ディープラーニング(DNN法)の交差5分割検証法で3~5種類、及び、勾配ブースティング木の交差5分割法で3~10種類のモデルを作成し、それら各モデルの正答率、誤答率、再現率やF値から、最適なモデルを選択するアンサンブル法で構築した。
【0085】
図21(a)に示すように、当該学習済みモデルBは、被害度(6階級)の実測値と推測値の統計学的な解析で、Accuracy0.9965で、平均Precision0.9986、平均Recall0.9902,平均F値0.9943を示し、極めて高い判別精度、適合度や再現率を有している。すなわち、ニンニクのイモグサレセンチュウの被害度(6階級)を高精度で分類できるモデルである。
【0086】
この実施例6に係る演算モデル(被害度(6階級)判別AI学習済みモデルB)を用いて判別率と精度について検証した。上記と同じ生産地のもので出荷状態に整えたニンニク球3,120個を用いた。結果を
図21(b)に示す。この結果から、被害度(6階級)の学習済みモデルBは、実測値と推測値のAccuracy0.9999で、平均Precision0.9979で、極めて高い判別精度や適合度が認められた。すなわち、ニンニクのイモグサレセンチュウの被害度(6階級)を高精度で分類できるモデルであることが分かる。
【0087】
<実施例7:AI学習済みモデルC(被害度(指数)判別)>
被検対象Wのニンニク球として、上記と同じ生産地のもので出荷状態に整えたニンニク球12,480個を教師ありの学習用データとして用いた。被害度(指数)の実測値は、全被検対象Wについて近赤外分光検査後に、当該検査ニンニク球をベルマン法でイモグサレセンチュウの培養を行うととともに、ニンニクの病巣程度を上記の被害度(指数)で算定した。被害度(指数)の学習済みモデルCの作成は、前述の被害度の実測値データを教師ありデータとして用い、ディープラーニング(DNN法)の交差検証法(5分割)で3~5種類、及び、勾配ブースティング木の交差検証法(5分割)で3~10種類のモデルを作成し、それら各モデルで最も決定係数や誤差中央値や誤差平均及びPMSEの統計学的な結果を基に最適なモデルを当該学習済みモデルとした。
【0088】
図22(a)に示すように、被害度(指数)の学習済みモデルCは、実測値と推測値の決定係数は0.9809であった。誤差中央値0.303、誤差平均2.36、RMSE5.98、決定係数0.9809で、極めて高い推測精度が得られた。したがって、当該学習済みモデルCは、ニンニクのイモグサレセンチュウ感染による被害度(指数)を迅速に高精度で非破壊的に推測できるモデルである。
【0089】
この実施例7に係る演算モデル(被害度(指数)判別AI学習済みモデルC)を用いて方法と精度について検証した。上記と同じ生産地のもので出荷状態に整えたニンニク球3,120個を用いた。結果を
図22(b)に示す。この結果から、学習済みモデルCは、決定係数0.9936、誤差中央値0.1646、誤差平均0.9788、RMSE3.5269で、極めて高い推測の精度を示した。すなわち、ニンニクのイモグサレセンチュウの被害度(指数)を高精度で推測できるモデルであることが分かる。
【0090】
<実施例8:AI学習済みモデルD(感染の有無判別)>
被検対象Wのニンニク球として、上記と同じ生産地のもので出荷状態に整えたニンニクの18,960個を教師用データとして用いた。この学習済みモデルDの教師用データは、全被検対象Wを近赤外分光検査後に、当該検査ニンニクをベルマン法でイモグサレセンチュウの培養を行い、感染の有無を確認検査し、この感染の有無と当該サンプルの近赤外分光波長の吸光度データと対応させたものである。
【0091】
当該学習済みモデルDは、ディープラーニングのDNN(ディープニューラルネットワーク)法を基本構造として、入力層、5層の中間層(ドロップ、Relu関数等の活性化関数で構成)、出力層で構成し、最適化アルゴリズムはAdam(Adaptive moment estimation)を用いて、LearningRate0.1,Momentum0.9、Weight Decay0.0001として、Leaming Rate SchedulerはExponential、Multipier0.1、Intevalを600540iteration等で構成した。過学習に留意して作成した学習済みモデルである。
【0092】
図23(a)に示すように、この学習済みモデルDは、AUC(Area Under the Curve)0.9998、Accuracy0.9994、Precision0.9996、Recall0.9972、F値9.994で、極めて高い判別精度を有し、イモグサレセンチュウ感染の有無の判別に極めて有効なモデルである。
【0093】
この実施例8に係る感染の有無判別の学習済みモデルDを用いてその判別率と精度について検証した。上記と同じ生産地のもので出荷状態に整えたニンニク球3,914個を用いた。
図23(b)に示すように、この学習済みモデルDでは、Precision1.0で、感染有無の判別精度は100.0%であった。すなわち、ニンニクのイモグサレセンチュウ感染の有無を高精度で判別できるモデルであることが分かる。
【0094】
<実施例9:AI学習済みモデルE(被害度(6階級)判別)>
被検対象Wのニンニク球として、上記と同じ生産地のもので出荷状態に整えたニンニク球15,600個を教師ありの教師データとして用いた。全被検対象Wについて、近赤外分光検査を行い、その後に、当該検査ニンニク球をベルマン法でイモグサレセンチュウの培養を行うとともに、被害度はニンニクの病巣程度を上記の被害度(6階級)で算定した。当該学習済みモデルEは、前述の被害度(6階級)の実測値データに対応した近赤外線分光吸光度データを教師データとして用い、ディープラーニング(DNN:ディープニューラルネットワーク)で作成した。当該学習済みモデルEは、入力層と、6層の中間層(ドロップ、Relu関数等の活性化関数)、出力層で構成し、最適化アルゴリズムはAdamsを用いて、Weight Decayを0.0001で、過学習に留意して構築したモデルである。
【0095】
図24(a)に示すように、学習済みモデルEは、実測値と推測値のAccuracy0.9976で、平均Precision0.9991、平均Recall0.9945、平均F値0.9968を示し、極めて高い判別精度、適合度や再現率を有し、被害度(6階級)の判別分類には極めて有効な方法として応用し得る学習済みモデルである。
【0096】
この実施例9に係る演算モデル(被害度(6階級)判別AI学習済みモデルE)を用いて判別率と精度について検証した。上記と同じ生産地のもので出荷状態に整えたニンニク球3,873個を用いた。結果を
図24(b)に示す。この結果から、被害度(6階級)の学習済みモデルEは、平均Precisionが0.9994で、極めて高い適合度を示し、被害度の度合い分類に用いることができる。すなわち、当該学習済みモデルEはニンニクのイモグサレセンチュウ感染による被害度(6階級)を迅速に高精度で非破壊的に推測できるモデルであることが分かる。
【0097】
<実施例10:AI学習済みモデルF(被害度(指数)判別)>
被検対象Wのニンニク球として、上記と同じ生産地のもので出荷状態に整えたニンニク球12,480個を教師ありの学習用データとして用いた。被害度(指数)の実測値は、全被検対象Wについて近赤外分光検査後に、当該検査ニンニク球をベルマン法でイモグサレセンチュウの培養を行うととともに、ニンニクの病巣程度を上記の被害度(指数)で算定した。当該学習済みモデルFは、前述の被害度(指数)の実測値データと対応した近赤外線分光の吸光度データを教師データとして、ディープラーニング(DNN:ディープニューラルネットワーク)で作成した。
【0098】
当該学習済みモデルFは、DNN法を基本構造として、入力層、中間層、出力層の最適条件を得るための基本的な検討と工夫を重ねて、入力層、5層の中間層(ドロップ、Relu関数等の活性化関数で構成)、出力層で構成し、最適化アルゴリズムはAdam(Adaptive moment estimation)を用いて、LearningRate0.1、Momentum0.9、Weight Decay0.0001として、Leaming Rate SchedulerはExponential、Multipier0.1、Intevalを600540iteration等で構成して学習したモデルである。過学習に留意して作成したことを特徴とするモデルである。
【0099】
図25(a)に示すように、被害度(指数)の学習済みモデルFは、当該推測値と実測値との統計学的なデータ解析で、決定係数0.9987、誤差中央値0.2737、誤差平均0.2593、RMSE1.6037で、極めて精度の高いモデルである。ニンニクのイモグサレセンチュウ感染による被害度を迅速に高精度で非破壊的に推測できるモデルである。
【0100】
この実施例10に係る演算モデル(被害度(指数)判別AI学習済みモデルF)を用いて判別率と精度について検証した。上記と同じ生産地のもので出荷状態に整えたニンニク球2,851個を用いた。結果を
図25(b)に示す。この結果から、学習済みモデルFは、当該推測値と実測値との統計学的にデータ解析において、重相関係数0.999で、誤差平均0.5260、誤差中央値0.2743、RMSE1.3025の検査成績を得ている。すなわち、当該学習済みモデルFはニンニクのイモグサレセンチュウ感染による被害度(指数)を迅速に高精度で非破壊的に推測できるモデルであることが分かる。
【0101】
<実施例11:AI学習済みモデルG(感染の有無判別)>
被検対象Wのニンニク球として、上記と同じ生産地のもので出荷状態に整えたニンニク球12,480個を教師用データとして用いた。この学習済みモデルGの教師用データは、全被検対象Wを近赤外分光検査後に、当該検査ニンニクをベルマン法でイモグサレセンチュウの培養を行い、感染の有無を確認検査し、この感染の有無と当該サンプルの近赤外分光波長の吸光度データと対応させたものである。
【0102】
当該学習済みモデルGは、感染の有無の実測値データに対応した近赤外線分光吸光度データを教師データとして用い、ディープラーニング(CNN:畳み込みニューラルネットワーク)で作成した。当該学習済みモデルGは、近赤外分光吸光度データの波形(1行550列)を画像化して、入力層と、6層の中間層(ドロップ、Relu関数等の活性化関数)、出力層で構成し、最適化アルゴリズムはAdamsを用いて、Weight Decayを0.0001で、過学習に留意して作成したモデルである。
【0103】
図26(a)に示すように、この学習済みモデルGは、実測値と推測値のAccuracy 1.0000で、平均Precision1.0000、平均Recall1.0000、平均F値1.0000を示し、極めて高い判別精度、適合度や再現率を有し、イモグサレセンチュウ感染の有無の判別には極めて有効な方法として応用し得るモデルである。
【0104】
この実施例11に係る感染の有無判別の学習済みモデルGを用いてその判別率と精度について検証した。上記と同じ生産地のもので出荷状態に整えたニンニク球3,121個を用いた。
図26(b)に示すように、この学習済みモデルGでは、感染有無の判別精度は100.0%であった。すなわち、ニンニクのイモグサレセンチュウ感染の有無を高精度で判別できるモデルであることが分かる。
【0105】
<実施例12:AI学習済みモデルH(被害度(6階級)判別)>
被検対象Wのニンニク球として、上記と同じ生産地のもので出荷状態に整えたニンニク球12,480個を教師ありの教師データとして用いた。全被検対象Wについて、近赤外分光検査を行い、その後に、当該検査ニンニク球をベルマン法でイモグサレセンチュウの培養を行うとともに、被害度はニンニクの病巣程度を上記の被害度(6階級)で算定した。当該学習済みモデルHは、前述の被害度(6階級)の実測値データに対応した近赤外線分光吸光度データを教師データとして用い、ディープラーニング(CNN:畳み込みニューラルネットワーク)で作成した。当該学習済みモデルHは、近赤外分光吸光度測定データの波形(1行550列)を画像化して、入力層と、6層の中間層(ドロップ、Relu関数等の活性化関数)、出力層で構成し、最適化アルゴリズムはAdamsを用いて、Weight Decayを0.0001で、過学習に留意して構築したモデルである。
【0106】
図27(a)に示すように、当該学習済みモデルHは、実測値と推測値のAccuracy1.0000で、平均Precision1.0000、平均Recall1.0000、平均F値1.0000を示し、極めて高い判別精度、適合度や再現率を有し、被害度(6階級)の判別分類には極めて有効な方法として応用し得るモデルである。
【0107】
この実施例12に係る演算モデル(被害度(6階級)判別AI学習済みモデルH)を用いて判別率と精度について検証した。上記と同じ生産地のもので出荷状態に整えたニンニク球3,120個を用いた。結果を
図27(b)に示す。この結果から、学習済みモデルHでは、適合度は1.000で、被害度(6階級)の分類に用いることができることが明らかになった。すなわち、当該学習済みモデルHはニンニクのイモグサレセンチュウ感染による被害度(6階級)を迅速に高精度で非破壊的に推測できるモデルであることが分かる。
【0108】
<実施例13:AI学習済みモデルI(被害度(指数)判別)>
被検対象Wのニンニク球として、上記と同じ生産地のもので出荷状態に整えたニンニク球12,480個を教師ありの学習用データとして用いた。被害度(指数)の実測値は、全被検対象Wについて近赤外分光検査後に、当該検査ニンニク球をベルマン法でイモグサレセンチュウの培養を行うととともに、ニンニクの病巣程度を上記の被害度(指数)で算定した。当該学習済みモデルIは、前述の被害度(指数)の実測値データに対応した近赤外線分光吸光度データを教師データとして用い、ディープラーニング(CNN:畳み込みニューラルネットワーク)で作成した。学習済みモデルIは、近赤外分光吸光度データの波形(1行550列)を画像化して、CNN法で構成し、入力層と、6層の中間層(ドロップ、Relu関数等の活性化関数)、出力層で構成し、最適化アルゴリズムはAdamsを用いて、Weight Decayを0.0001で、過学習に留意して構築したモデルである。
【0109】
図28(a)に示すように、当該学習済みモデルIは、当該推測値と実測値との統計学的なデータ解析で、決定係数0.9831、誤差中央値1.2806、誤差平均4.2906、RMSE5.8131で、精度の高いモデルである。ニンニクのイモグサレセンチュウ感染による被害度(指数)を迅速に高精度で非破壊的に推測できるモデルである。
【0110】
この実施例13に係る演算モデル(被害度(指数)判別AI学習済みモデルI)を用いて判別率と精度について検証した。上記と同じ生産地のもので出荷状態に整えたニンニク球2,851個を用いた。結果を
図28(b)に示す。この結果から、当該推測値と実測値との統計学的に重相関係数0.999で、誤差平均4.2590、誤差中央値1.2513、RMSE5.72955の検査成績を得ている。すなわち、当該学習済みモデルIはニンニクのイモグサレセンチュウ感染による被害度(指数)を迅速に高精度で非破壊的に推測できるモデルであることが分かる。
【0111】
尚、上記実施の形態において、判別分析法,重回帰分析法,PLS分析法,ニューラルネットワーク法のバックプロパゲーション法,SVM法の5種類の判別方法を組み合わせて判別を行なったが、必ずしもこれに限定されるものではなく、どれか1種類の判別方法だけでも良く、また、数種類の方法を組み合わせても良く、適宜変更して差支えない。また、上記実施の形態において、階級の判別を6段階にしたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、段階数は適宜に定めてよい。更に、実施の形態では、被検対象をニンニク球にしが、必ずしもこれに限定されるものではなく、りん片を個々に検査するようにしても良く、適宜変更して差支えない。
【0112】
また、実施の形態では、生体としてニンニク、寄生虫としてイモグサレセンチュウの例で説明したが、これに限らず種々の植物であって、これらに寄生するセンチュウ類であっても本発明を適用することができる。また、植物やセンチュウに限らず、種々の生体、種々の寄生虫に本発明を適用できることは勿論である。要するに、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施の形態に多くの変更を加えることが容易であり、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。