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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146747
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
B25J13/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054111
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000149505
【氏名又は名称】大同マシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(72)【発明者】
【氏名】青山 敬志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 恒雄
(72)【発明者】
【氏名】服部 壮太
(72)【発明者】
【氏名】高橋 健司
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS12
3C707BS12
3C707HS27
3C707KS07
3C707KT03
3C707KT06
3C707LS09
(57)【要約】
【課題】種類の異なる被加工材料の加工に容易に対応することができる加工装置を提供する。
【解決手段】加工装置は、工具12を備えるロボット14と、ロボット14を制御するロボット制御手段16と、被加工材料10の形状データから工具12の移動経路データを生成するデータ生成手段18と、ロボット制御手段16にデータを送信可能なシーケンサ20と、データ生成手段18で生成された移動経路データを、シーケンサ20で管理可能な座標データに変換してシーケンサ20に送信可能なデータ管理手段22と、を備える。シーケンサ20は、ロボット制御手段16からの要求に基づいてデータ管理手段22から受信した座標データをロボット制御手段16に送信する。ロボット制御手段16は、受信した座標データに基づいて工具12を移動するようロボット14を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工材料の加工装置であって、
工具を備え、該工具を移動して前記被加工材料を加工する多関節ロボットアームと、
該多関節ロボットアームを制御するロボット制御手段と、
前記被加工材料の形状データから、前記多関節ロボットアームにおける工具の移動経路データを生成するデータ生成手段と、
前記ロボット制御手段にデータを送信可能なデータ制御手段と、
前記データ生成手段で生成した移動経路データを、前記データ制御手段で管理可能な数値からなる座標データに変換してデータ制御手段に送信可能なデータ管理手段と、を備え、
前記データ制御手段は、前記ロボット制御手段からの要求に基づいて前記データ管理手段から受信した座標データをロボット制御手段に送信し、該ロボット制御手段は、受信した座標データに基づいて工具を移動するよう多関節ロボットアームを制御することで、被加工材料を加工するよう構成した
ことを特徴とする加工装置。
【請求項2】
前記データ生成手段は、移動経路データをファイル化したデータファイルを記憶するよう構成した請求項1記載の加工装置。
【請求項3】
前記移動経路データに基づく工具の移動経路は複数の区間から構成され、
前記データ制御手段は、前記ロボット制御手段からの要求によって工具の移動方向下流側の区間の座標データを順に前記データ管理手段から受信し、該座標データをロボット制御手段に送信するよう構成した請求項1または2記載の加工装置。
【請求項4】
前記移動経路は、当該移動経路での工具の移動方向と交差する方向に離間して複数設定されると共に、移動経路における工具が移動を開始する始点および工具が移動を終了する終点は、前記被加工材料に工具が接触しない位置に設定され、
前記ロボット制御手段は、前記データ制御手段から受信した座標データに基づいて、移動経路の始点から終点まで移動した工具を、隣り合う移動経路の始点まで移動した後に該移動経路の終点まで移動することを繰り返すように多関節ロボットアームを制御することで、被加工材料を加工するよう構成され、
前記データ制御手段は、前記ロボット制御手段に送信した座標データに基づいて工具により加工される区間を認識し得るよう構成され、
前記データ制御手段は、前記工具で加工される区間が終点を含む区間である場合に、当該区間において工具が終点に向けて移動するための補助座標データをロボット制御手段に送信するよう構成した請求項3記載の加工装置。
【請求項5】
前記データ制御手段は、前記座標データにおける一の座標点から次の座標点へ移動する前記工具に動作不良が発生する可能性があると判定した場合に、前記一の座標点と次の座標点との間の仮想座標点の座標データを前記ロボット制御手段に送信するよう構成され、
前記ロボット制御手段は、データ制御手段から仮想座標点の座標データを受信した場合に、一の座標点から仮想座標点へ移動中の工具の軌道を、仮想座標点をスキップして次の座標点に向かう軌道に変更するよう構成した請求項1~4の何れか一項に記載の加工装置。
【請求項6】
前記被加工材料の3次元形状を計測可能な計測手段を備え、
前記データ生成手段は、前記計測手段での計測結果に応じて前記移動経路データを修正し得るよう構成した請求項1~5の何れか一項に記載の加工装置。
【請求項7】
前記多関節ロボットアームにおける工具が装着されるハンドは、Z軸方向が鉛直方向に対応するX-Y-Z軸直交座標系の各軸方向に可変可能に支持されると共に、各軸回りに可変可能に支持され、前記被加工材料の加工部に倣うように工具を移動し得るよう構成した請求項1~6の何れか一項に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多関節ロボットアームを用いて被加工材料を加工する加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
切削加工された製品の表面に残留するバリの除去作業や、金型のキャビティ面の研磨作業等は、従来人手に頼っていたが、省力化および作業時間の短縮を図るためにロボットを導入することが行われている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の加工装置では、ロボットの手首部に加工ツール(工具)と力センサとを設け、加工ツールをワーク(被加工材料)に押圧して、加工する際の加工ツールとワークとの間に作用する力を力センサで検出し、その検出値が目標値に近づくように手首部の位置や姿勢を制御することで、バリ取りや研磨を適切に行うよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-68216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の加工装置のように、力センサの検出値を利用した力制御によってロボットの手首部の動作を制御する構成では、力センサの検出値を目標値に近づけようとするフィードバック制御を伴うため、特に細かな動作が要求される曲面を加工する場合には、フィードバック制御が追い付かず、ワークやロボットの手首部の損傷を招く可能性がある。また、バリ取りや研磨を適切に行うためには、形状が異なる製品や金型の種類毎に、力センサを調整する煩雑で手間の掛かる作業を実施する必要があり、オーダー変更時の調整作業に時間が掛かる難点もある。
【0005】
また、力制御によらず、汎用シミュレーションソフトを用いて、ワークにおける加工部の座標データからなる加工パスライン(加工ツールの軌道)を生成し、該加工パスラインに沿って手首部を移動するようロボットを動作制御することが行われている。しかし、汎用シミュレーションソフトで生成される加工パスラインの座標データは膨大な数であり、該座標データをロボットの制御装置へ送信した場合、ロボットの制御装置側の容量不足のため、加工できるワークのサイズや形状等が限定される問題がある。なお、加工パスラインを用いる場合は、該加工パスラインに基づいてロボットの動作プログラムを作成し、実際にワークを加工する前に、作業者がティーチングペンダントと呼ばれる操作デバイスを操作して動作プログラムを起動し、ロボットの動作チェックを行いながら加工パスラインを教示(ティーチング)し、異常座標があれば修正を実施する必要があり、手間が掛かる難点も指摘される。
【0006】
本発明は、前述した従来技術に内在する前記課題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、種類の異なる被加工材料の加工に容易に対応することができる加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項1の発明に係る加工装置は、
被加工材料(10)の加工装置であって、
工具(12)を備え、該工具(12)を移動して前記被加工材料(10)を加工する多関節ロボットアーム(14)と、
該多関節ロボットアーム(14)を制御するロボット制御手段(16)と、
前記被加工材料(10)の形状データから、前記多関節ロボットアーム(14)における工具(12)の移動経路データを生成するデータ生成手段(18)と、
前記ロボット制御手段(16)にデータを送信可能なデータ制御手段(20)と、
前記データ生成手段(18)で生成した移動経路データを、前記データ制御手段(20)で管理可能な数値からなる座標データに変換してデータ制御手段(20)に送信可能なデータ管理手段(22)と、を備え、
前記データ制御手段(20)は、前記ロボット制御手段(16)からの要求に基づいて前記データ管理手段(22)から受信した座標データをロボット制御手段(16)に送信し、該ロボット制御手段(16)は、受信した座標データに基づいて工具(12)を移動するよう多関節ロボットアーム(14)を制御することで、被加工材料(10)を加工するよう構成したことを要旨とする。
請求項1の発明では、被加工材料の形状データに基づいて工具の移動経路データを生成し、該移動経路データに基づいて多関節ロボットアームを制御して被加工材料を加工するよう構成したので、力センサを用いる場合のようなフィードバック制御が追い付かなくなって被加工材料や多関節ロボットアームが損傷するのを防ぐことができる。すなわち、被加工材料の種類毎に、煩雑で手間の掛かる力センサの調整作業等を実施したり、加工パスラインを教示(ティーチング)する作業を省略することができ、オーダー変更等に簡単に対応することができる。
【0008】
請求項2に係る発明は、
前記データ生成手段は、移動経路データをファイル化したデータファイルを記憶するよう構成したことを要旨とする。
請求項2の発明では、データファイルの情報を変更するだけで、種類の異なる被加工材料の加工に容易に対応することができる。
【0009】
請求項3に係る発明は、
前記移動経路データに基づく工具(12)の移動経路は複数の区間から構成され、
前記データ制御手段(20)は、前記ロボット制御手段(16)からの要求によって工具(12)の移動方向下流側の区間の座標データを順に前記データ管理手段(22)から受信し、該座標データをロボット制御手段(16)に送信するよう構成したことを要旨とする。
請求項3の発明では、工具が移動中の区間より下流側の区間の座標データを順にデータ制御手段がデータ管理手段から受信してロボット制御手段に送信するようにしたので、ロボット制御手段の容量不足に起因して加工できる被加工材料のサイズや形状等が限定されるのを抑えることができる。
【0010】
請求項4に係る発明は、
前記移動経路は、当該移動経路での工具(12)の移動方向と交差する方向に離間して複数設定されると共に、移動経路における工具(12)が移動を開始する始点(ST)および工具(12)が移動を終了する終点(EN)は、前記被加工材料(10)に工具(12)が接触しない位置に設定され、
前記ロボット制御手段(16)は、前記データ制御手段(20)から受信した座標データに基づいて、移動経路の始点(ST)から終点(EN)まで移動した工具(12)を、隣り合う移動経路の始点(ST)まで移動した後に該移動経路の終点(EN)まで移動することを繰り返すように多関節ロボットアーム(14)を制御することで、被加工材料(10)を加工するよう構成され、
前記データ制御手段(20)は、前記ロボット制御手段(16)に送信した座標データに基づいて工具(12)により加工される区間を認識し得るよう構成され、
前記データ制御手段(20)は、前記工具(12)で加工される区間が終点(EN)を含む区間である場合に、当該区間において工具(12)が終点(EN)に向けて移動するための補助座標データをロボット制御手段(16)に送信するよう構成したことを要旨とする。
請求項4の発明では、工具で加工される区間が終点を含む区間である場合に、補助座標データをロボット制御手段に送信するよう構成したので、移動経路の最終の区間を移動する工具を終点まで適正に移動させることができ、被加工材料のサイズや形状が異なっていても、工具を複数の移動経路で移動して被加工材料を適正に加工することができる。
【0011】
請求項5に係る発明は、
前記データ制御手段(20)は、前記座標データにおける一の座標点(C1E)から次の座標点(D1S)へ移動する前記工具(12)に動作不良が発生する可能性があると判定した場合に、前記一の座標点(C1E)と次の座標点(D1S)との間の仮想座標点(CD)の座標データを前記ロボット制御手段(16)に送信するよう構成され、
前記ロボット制御手段(16)は、データ制御手段(20)から仮想座標点(CD)の座標データを受信した場合に、一の座標点(C1E)から仮想座標点(CD)へ移動中の工具(12)の軌道を、仮想座標点(CD)をスキップして次の座標点(D1S)に向かう軌道に変更するよう構成したことを要旨とする。
請求項5の発明では、仮想座標点へ移動する工具の軌道を、仮想座標点をスキップして次の座標点に向かう軌道に変更することで、一の座標点から次の座標点まで移動する工具の軌道が滑らかとなり、動作不良が発生するのを防ぐことができる。
【0012】
請求項6に係る発明は、
前記被加工材料(10)の3次元形状を計測可能な計測手段(26)を備え、
前記データ生成手段(18)は、前記計測手段(26)での計測結果に応じて前記移動経路データを修正し得るよう構成したことを要旨とする。
請求項6の発明では、計測手段での計測結果に応じて移動経路データを修正することができるので、被加工材料のより適切な加工を行うことができる。また、データ生成手段は、計測手段で計測された3次元形状から被加工材料の形状を精度よく認識できるので、被加工材料を加工のために加工台にセットする際の芯出し作業を省略することができ、作業能率を向上し得る。
【0013】
請求項7に係る発明は、
前記多関節ロボットアーム(14)における工具(12)が装着されるハンド(30)は、Z軸方向が鉛直方向に対応するX-Y-Z軸直交座標系の各軸方向に可変可能に支持されると共に、各軸回りに可変可能に支持され、前記被加工材料(10)の加工部に倣うように工具(12)を移動し得るよう構成したことを要旨とする。
請求項7の発明では、被加工材料の加工部に工具を倣わせることができるので、制御上の遅れ等に起因して工具や被加工材料に過負荷が加わって損傷するのを防ぐことができる。また、被加工材料の実際の形状と、座標データとに誤差があった場合であっても、該誤差を吸収して損傷を防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る加工装置によれば、種類の異なる被加工材料の加工に容易に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例に係る加工装置の概略構成図である。
図2】ロボットによって被加工材料を加工する際の移動経路(パスライン)を示す説明図であって、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
図3】信号処理を実施した場合にロボットの動作が一瞬停止する理由およびその対策の原理を示す説明図である。
図4】ロボットの動作が一瞬停止するのを防ぐ対策の処理内容を示す説明図である。
図5】移動経路における終点を含む区間において、工具を終点に適正に移動させるための処理内容を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明に係る加工装置につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。
【実施例0017】
実施例の加工装置は、図1に示すように、被加工材料10を加工する工具12を備えた多関節ロボットアーム14と、該多関節ロボットアーム14を制御するロボット制御手段16と、被加工材料10の形状データから、該被加工材料10を加工する際の工具12の移動経路データを生成するデータ生成手段18と、移動経路データを数値からなる座標データに変換してデータ制御手段としてのシーケンサ20に送信可能なデータ管理手段22と、該データ管理手段22から受信した座標データをロボット制御手段16に送信可能な前記シーケンサ20と、を備える。多関節ロボットアーム14は、一般的に「ロボットアーム」と呼ばれる多関節ロボットであり、多関節構造とサーボモータによって3次元空間を自在に動作(移動)することができるものであり、以後は単にロボット14と指称するものとする。
【0018】
加工装置は、前記データ生成手段18に接続されて、加工台24にセットされた被加工材料10の3次元形状を計測可能な計測手段26を有している。実施例では、計測手段26として、ハンディタイプの3Dスキャナが採用されるが、被加工材料10の3次元形状を計測可能な手段であれば、レーザー変位計やカメラ等であってもよい。なお、実施例では、被加工材料10としての金型におけるキャビティ面(加工面,加工部)を研磨工具で研磨する場合で説明するが、被加工材料10に施す加工としては、孔空け加工や切削加工等であってもよく、その加工の種類に応じた種類の工具12を用いればよい。
【0019】
前記データ生成手段18は、CADソフトを用いて被加工材料10のCADデータからなる形状データを作成したり、または入力されたCADデータに基づいて被加工材料10の形状データを作成する。また、データ生成手段18は、作成した被加工材料10の形状データに基づいて、CAMソフトを用いて、工具12により被加工材料10を加工するための該工具12の移動経路を特定する3次元の座標点群からなる移動経路データを生成する。更に、データ生成手段18は、移動経路データをファイル化し、そのデータファイルを記憶するよう構成される。実施例では、移動経路データを、被加工材料10に対する後述するパスライン番号情報や区間情報等を記述したCSVファイル化する。なお、CSVファイルには、被加工材料10に対する加工の種類に応じた工具12の種類や加工条件等も記述される。また、データ生成手段18は、前記計測手段26による被加工材料10の計測結果に基づいて、CADデータから生成した移動経路データを修正し得るよう構成される。なお、データ生成手段18は、CSVファイルを表示可能なディスプレイ(表示手段)と、各種情報の入力や変更等を行い得るキーボード(操作手段)を備え、ディスプレイに表示されたCSVファイルに記述されている各種情報を、キーボードによって変更可能に構成されている。
【0020】
前記データ管理手段22は、前記データ生成手段18で生成された移動経路データのCSVファイルを読み取り(受信し)、該CSVファイルの移動経路データを、前記シーケンサ20が管理可能な数値からなる座標データに変換し、該座標データをシーケンサ20に送信可能に構成される。データ管理手段22は、データ生成手段18で生成された全てのCSVファイルを読み取って当該データ管理手段22の記憶部に記憶し、シーケンサ20からのデータ要求信号に基づいて、要求された後述する区間に対応する座標データのみをシーケンサ20に送信する。
【0021】
前記シーケンサ20は、前記ロボット制御手段16からのデータ要求信号に基づいて、要求された区間に対応する座標データのデータ要求信号を前記データ管理手段22に送信する。そして、データ管理手段22から受信した区間に対応する座標データを、ロボット制御手段16に送信するよう構成される。また、シーケンサ20は、ロボット制御手段16に送信した座標データおよびロボット制御手段16からの後述するアンサーデータに基づいて、自身が処理している座標データをトラッキングするよう構成される。すなわち、シーケンサ20は、ロボット制御手段16に送信した座標データに基づいてロボット14の工具12によって加工されている区間を、常に認識し得るようになっている。また、シーケンサ20は、後述するパスラインの始点STおよび終点ENに対応する座標データをロボット制御手段16に送信した場合に、始点フラグおよび終点フラグをセットするよう構成される。なお、シーケンサ20およびロボット制御手段16が、対応するデータ管理手段22およびシーケンサ20にデータ要求信号を送信することについて、単に要求するという場合がある。
【0022】
前記ロボット14として、例えば6軸多関節ロボットが用いられ、各軸をサーボモータで駆動するよう構成される。ロボット14は、アーム28の先端に配設されたハンド30に、各種の工具12が装着可能に構成されており、サーボモータを駆動してハンド30を、前記座標データに基づいて移動経路データで特定される移動経路に沿って移動することで、被加工材料10を加工するよう構成される。アーム28に対してハンド30は、Z軸方向が鉛直方向に対応するX-Y-Z軸直交座標系の各軸方向に可変可能に支持されると共に、各軸回りに可変可能に支持される。なお、ハンド30は、各軸方向および各軸回りに、所定以上の負荷(加工時に発生する以上の負荷)が加わった際に可変することで、工具12を、被加工材料10の加工部(加工面)に倣わせ得るよう構成される。
【0023】
前記ロボット制御手段16は、前記シーケンサ20から送信された座標データを格納するデータレジスタを備えると共に、該座標データに基づいてロボット14を制御する動作プログラムが記憶されており、該動作プログラムに従ってロボット14のアーム28およびハンド30を動作制御して、被加工材料10の加工をロボット14に実行させる。ロボット制御手段16は、シーケンサ20から送信される座標データをデータレジスタ上で上書きを行いながら、ロボット14を制御する。
【0024】
実施例の加工装置では、前記ロボット制御手段16は、加工台24にセットされた被加工材料10における、例えば図2(a)に示す上側を向くキャビティ面を研磨加工する際には、該図2(a)の右側の始点(工具12が移動を開始する位置)STから左側の終点(工具12が移動を終了する位置)ENまで移動した後、幅方向(図2(a)の紙面における上下方向)に変位した位置の始点STから終点ENまで移動する経路で工具12を移動することを繰り返すことで、キャビティ面を研磨加工する。実施例では、始点STから終点ENに移動する移動経路をパスラインと指称する。すなわち、ロボット14で被加工材料10を加工する際の移動経路は、該移動経路での工具12の移動方向と交差する方向に離間して複数設定され、ロボット14が、移動経路の始点STから終点ENまで移動した工具12を、隣り合う移動経路の始点STまで移動した後に該移動経路の終点ENまで移動する動作を繰り返すことで、被加工材料10を加工するよう構成される。なお、始点STおよび終点ENは、工具12が被加工材料10に接触しない位置に設定される(図2(b)参照)。パスラインは、前記データ生成手段18で生成された移動経路データに基づくものであって、パスライン1、パスライン2、パスライン3・・・パスラインn-1、パスラインnの順で工具12を移動して加工する場合で説明する。また、始点STおよび終点ENについても、データ生成手段18で生成された移動経路データに基づく座標点で特定されるものである。なお、実施例では、パスライン1・・・パスラインnが、パスライン番号情報として、前記CSVファイルに記述される。また、始点STおよび終点ENについて、各パスライン1~nに対応して、始点ST1~STn、終点EN1~ENnと区別して指称する場合がある。
【0025】
また、実施例の加工装置では、図2(b)に示す如く、各パスライン1~nにおける始点STから終点ENまでを、所定数の区間A~Eに分割し、前記ロボット制御手段16は、各区間A~E毎に座標データを受信して、被加工材料10を加工するよう構成される。そして、区間A~Eが、区間情報として前記CSVファイルに記述される。図2(b)では、被加工材料10に対してパスラインが直線状に延在するよう表示してあるが、これは説明の便宜上であって、実際には被加工材料10におけるキャビティ面(加工面,加工部)に沿うように3次元で延在する。
【0026】
実施例では、最初のパスラインであるパスライン1での加工開始前に、前記ロボット制御手段16が、始点STから1番目および2番目となる区間AおよびBの座標データを、シーケンサ20に要求すると、該シーケンサ20は、前記データ管理手段22に、区間AおよびBの座標データを要求する。そして、要求に応えてデータ管理手段22から送信された区間AおよびBの座標データは、シーケンサ20を介してロボット制御手段16が受信する。そして、ロボット制御手段16は、受信した座標データに基づいてロボット14を制御して区間Aでの移動を開始し、該区間Aの移動中に、ロボット制御手段16は、区間Cの座標データをシーケンサ20に要求する。シーケンサ20は、前記と同様にデータ管理手段22に対して区間Cの座標データを要求し、該要求に応えてデータ管理手段22から送信された区間Cの座標データは、シーケンサ20を介してロボット制御手段16が受信する。以後は、ロボット制御手段16では同様に、区間Bでの移動中に区間Dの座標データをシーケンサ20に要求して該座標データを受信し、区間Dでの移動中に区間Eの座標データをシーケンサ20に要求して該座標データを受信する。すなわち、シーケンサ20は、ロボット制御手段16からの要求によって、工具12の移動方向下流側の区間の座標データを順にデータ管理手段22から受信し、該座標データをロボット制御手段16に送信するよう構成される。そして、ロボット制御手段16は、必要とする区間の座標データのみをデータレジスタに格納し、新しく受信した座標データをデータレジスタに上書きしながら加工を進めるよう構成されており、容量不足に起因して加工できる被加工材料10のサイズや形状等が限定されるのを抑えることができる。また、ロボット制御手段16は、パスライン1における最後の区間である区間Eの加工中に、次のパスライン2の最初の区間である区間Aの座標データをシーケンサ20に要求して該座標データを受信する。なお、各パスライン1~nの区間について、区間A1~An、区間B1~Bn・・・区間E1~Enと指称して区別する場合がある。
【0027】
前記ロボット制御手段16は、前記シーケンサ20から座標データを受信した際に、該座標データを構成する座標点を生成し、その座標点のデータをアンサーデータとしてシーケンサ20に送信するよう構成される。そして、シーケンサ20では、アンサーデータと、該シーケンサ20が送信した座標データとの照合を座標点毎に実施し、照合不能の場合は、ロボット制御手段16へ非常停止を要求するよう構成されている。そして、ロボット制御手段16は、シーケンサ20からの非常停止要求に応じてロボット14を異常停止するよう構成される。
【0028】
実施例の加工装置では、例えば前述したようにロボット14による加工が異常停止した場合の復旧対策を行い得るよう構成されている。すなわち、ロボット14が異常停止した場合、シーケンサ20は、アラーム等の警報手段によって異常を報知し、作業者にロボット14を原点に復帰する操作を行うように促す。そして、作業者がシーケンサ20に設けられたタッチパネル等の操作手段によって、ロボット14を原点に復帰するための操作を行うと、シーケンサ20からロボット制御手段16へ原点復帰の指令が送信され、ロボット制御手段16は、異常停止したときのロボット14の各サーボモータの位置から工具12の異常停止時の座標点を算出し、該算出した座標点が、シーケンサ20から受信したどの座標点に最も近いかを検索する。そして、ロボット制御手段16は、検索した座標点をシーケンサ20に送信する。
【0029】
前記ロボット14が原点位置に復帰した後、作業者が前記操作手段によってロボット14による加工を再開する操作を行うと、シーケンサ20は、ロボット制御手段16から受信した検索した座標点から、座標データを再送信する。これにより、ロボット制御手段16は、異常停止した位置に近い座標点から加工を再開することができる。すなわち、異常停止後の復帰時には、異常停止した位置に近い部分から加工を再開できるので、始点STから工具12を移動して加工を再開する場合に比べて時間効率がよくなる。
【0030】
実施例の加工装置では、前記ロボット制御手段16は、同一動作プログラムによるループ処理によって、前記シーケンサ20から送信される座標データに基づいてロボット14を制御するよう構成される。また、前述したように、ロボット制御手段16は、加工開始前にパスライン1における区間A1,B1の座標データをシーケンサ20から受信し、区間A1での工具12の移動中に区間C1の座標データをシーケンサ20から受信するよう構成されており、実施例では、3つの区間での座標データの受信や該座標データに基づく工具12の動作を1つの単位として、動作プログラムに基づきループ処理するよう構成されている。これに対し、各パスライン1~nで分割されている区間の数は、1回のループ処理で処理する区間数(3つ)より多く、1回のループ処理が終了した際に、動作プログラムにおけるループの復帰先に移行する信号処理を実施した場合に、ロボット14の動作が一瞬停止する動作不良が発生してしまい、被加工材料10を傷付けるおそれがあることから、実施例ではループ処理の終了時の信号処理に対してロボット14の動作が停止しないようにする対策が施されている。
【0031】
ここで、ロボット14の動作が一瞬停止する理由およびその対策について、図3を参照して簡単に説明する。例えば、工具12が移動する2つの座標点L,Mが、図3(a)に示すように、座標点Lに向けて前の座標点から工具12が移動する方向と、座標点Mから次の座標点に向けて工具12が移動する方向とが直交する関係で設定されている場合、ロボット14は、工具12を座標点Lから座標点Mに向けて直線的に移動するよう動作し、このときに前記信号処理が実施されると、ロボット14の動作が円滑に行われず、座標点Mで一瞬停止してしまうおそれがある。そこで、図3(b)に示す如く、座標点Lに向けて前の座標点から工具12が移動する方向の延長線(図の点線)と、座標点Mから次の座標点に向けて工具12が移動する方向とは逆向きの延長線(図の点線)との交点(座標点Lと座標点Mとの中間)に、仮想座標点Nを設定する。座標点L→仮想座標点N→座標点Mの順で工具12を移動する場合に、ロボット14は、工具12を座標点Lから仮想座標点Nおよび仮想座標点Nから座標点Mへは夫々直線的に移動するよう動作するが、工具12が座標点Lから仮想座標点Nへの移動中に、仮想座標点Nをスキップする指令をロボット14に与えると、ロボット14は、工具12の軌道を、図3(c)のように仮想座標点Nをスキップするよう曲線軌道に変更する。これにより、座標点Lから座標点Mに向けて工具12を移動するロボット14の動作が滑らかとなり、該ロボット14が停止するのを防ぐことができる。
【0032】
そこで、実施例では、前記シーケンサ20が、当該シーケンサ20からロボット制御手段16に送信した座標データに基づいて、工具12に動作不良が発生する可能性がある、前記信号処理が発生する1回のループ処理で処理される3つ目の区間(ループ最終区間)の最終の座標点(一の座標点)と次のループ処理で処理される1つ目の区間(ループ最初区間)の最初の座標点(次の座標点)との間を移動すると判定(動作不良が発生する可能性があると判定)した場合に、前記最終の座標点と最初の座標点との間(中間)に、仮想座標点を設定する。また、ロボット14の工具12で加工される区間が、信号処理が発生する1回のループ処理で処理される3つ目の区間であり、該区間の最終の座標点の加工が完了したことをスキップ条件として設定する。具体的に、前記シーケンサ20は、1回のループ処理で処理される3つ目の区間が、1つのパスラインにおいて分割された最後の区間でない場合(終点フラグがセットされていない場合)は、ロボット制御手段16に最後の区間でないことを送信すると共に、3つ目の区間の最終の座標点に工具12が至るまでに、前記仮想座標点の座標データをロボット制御手段16に送信する。より具体的に、図4を参照して説明すると、ロボット14による工具12の区間C1での移動中に、シーケンサ20は、区間C1の最終の座標点C1Eと、次の区間D1の最初の座標点D1Sとの中間に対応する仮想座標点CDの座標データをロボット制御手段16に送信する。なお、1つのパスラインにおける最後の区間(終点ENを含む区間)では、他の区間とは異なる処理を行うが、当該処理については後述する。
【0033】
前記ロボット制御手段16では、区間C1の加工が進行し、該区間C1の最終の座標点C1Eの加工が完了すると、スキップ条件が成立したとして、工具12を座標点C1Eから仮想座標点CDに向けて移動する途中に、該工具12の軌道を、区間D1の座標点D1Sに向かう曲線軌道となるように変更するようロボット14を制御する。これにより、信号処理を実施する場合において、該信号処理を実施する直前の座標点から次の座標点へ工具12を移動するロボット14の動作が滑らかとなり、該ロボット14は停止せずに被加工材料10が傷付くのを防ぐことができる。なお、図3(b)では、仮想座標点の位置を、座標点Lに向けて前の座標点から工具12が移動する方向の延長線と、座標点Mから次の座標点に向けて工具12が移動する方向とは逆向きの延長線との交点に設定する場合で説明したが、信号処理を実施する直前の座標点(座標点L)と、次の座標点(座標点M)との位置関係に応じて、直前の座標点から次の座標点へ工具12を移動するロボット14の動作が滑らかとなる位置となるものであればよい。
【0034】
次に、1つのパスラインにおける最後の区間(終点ENを含む区間)での処理について説明する。前述したように、1回のループ処理において3つの区間の処理を行う実施例では、パスラインにおける最後の区間E1~En-1を工具12で加工中には、対応する次のパスラインにおける最初の区間A2~Anおよび2番目の区間B2~Bnの座標データの受信処理を実行するようになっているため、区間E1~En-1での終了処理が、区間B2~Bnの座標データの受信処理後になってしまう。
【0035】
そこで、実施例では、ロボット14で加工される区間が、終点ENを含む区間である場合において、当該区間における被加工材料10に加工を施す最終の加工最終座標点の加工が完了したことをパス切替え条件として設定する。また、加工最終座標点と終点ENとの間に、補助座標点を設定する。具体的に、パスライン1の場合で図5を参照して説明すると、前記シーケンサ20は、ロボット14により加工中の区間が、終点EN1を含むパスライン1の最後の区間E1である場合(終点フラグがセットされている場合)は、ロボット制御手段16に最後の区間であることを送信すると共に、区間E1における加工最終座標点E1Eに工具12が至るまでに、前記補助座標点as(実施例では5つの補助座標点as1~as5)の座標データをロボット制御手段16に送信するよう構成される。そして、ロボット制御手段16は、前記パス切替え条件が成立すると、加工最終座標点E1Eを加工した工具12を、補助座標点asを経て終点EN1に至るようにロボット14を制御する。また、工具12が終点EN1に至ると、ロボット制御手段16は、1つのパスラインでの終了処理や、工具寿命等の情報の管理を実施した後、工具12をパスライン2の始点ST2に移動するようロボット14を制御する。
【0036】
〔実施例の作用〕
次に、前述のように構成された実施例に係る加工装置の作用につき説明する。
【0037】
前記データ生成手段18では、被加工材料10の形状データ(CADデータ)から移動経路データを生成し、該移動経路データに基づいてロボット制御手段16がロボット14を制御して被加工材料10を加工するよう構成したので、力センサを用いる場合のようなフィードバック制御が追い付かなくなって被加工材料10やロボット14が損傷するのを防ぐことができる。また、データ生成手段18では、移動経路データをCSVファイル化するようにしたので、使用者のニーズに応じてCSVファイルの情報を変更することで、種類の異なる被加工材料10の加工に容易に対応することができると共に、用途に応じた様々な情報をデータ管理手段22を介してシーケンサ20に送信することができる。すなわち、被加工材料10の種類毎に、煩雑で手間の掛かる力センサの調整作業等を実施したり、加工パスラインを教示(ティーチング)する作業を省略することができ、オーダー変更等に簡単に対応することができる。なお、CSVファイルは、様々なソフトによって読み取り可能であるので汎用性が高く、またデータ容量が少ない利点がある。
【0038】
また、前記データ生成手段18は、計測手段26での計測結果に応じて、移動経路データを修正し得るよう構成されている。すなわち、汎用シミュレーションソフトでは、データ上で欠落した座標位置の認識は難しく、該欠落した座標位置に対応する部分において被加工材料10に意図しない加工が行われてしまう問題がある。しかしながら、実施例の加工装置では、計測手段26での計測結果に応じて移動経路データを修正することができるので、仮に被加工材料10の形状データ(CADデータ)から生成された移動経路データに欠落した座標位置があっても修正することができ、被加工材料10を適正に加工できる。また、加工台24にセットされている被加工材料10の計測手段26で計測された3次元形状から、被加工材料10における穴部等の中心点をデータ生成手段18が認識し得るので、被加工材料10を加工台24にセットする際に、穴部等の芯出し作業を行う必要はなく、セット作業が簡単になる。
【0039】
ここで、実施例の加工装置では、CADデータに基づいて移動経路データを生成するが、生成した移動経路データの座標と、被加工材料10の実物の位置関係に、以下の事項を起因として差異が生ずる場合がある。
・実物の被加工材料10の芯出し位置の誤差。
・被加工材料10の実際の寸法と、CADデータでの被加工材料10の寸法との差異。
・CADデータを作成する際の計算処理での微量な誤差。
上記事項を起因として移動経路データと実際の被加工材料10との関係に差異が生じている場合においても、前記ロボット14のハンド30は、アーム28に対してX-Y-Z軸直交座標系の各軸方向および各軸回りに可変可能に支持されているので、工具12を被加工材料10のキャビティ面に倣って移動することができ、工具12や被加工材料10に大きな負荷が掛かることはなく、工具12や被加工材料10を損傷するのを防止することができる。すなわち、力センサを用いる場合は、製品の種類毎に多数のパラメータ調整を必要とするが、ハンド30をフレキシブル構造とすることで、力センサを用いる場合のようなパラメータ調整を必要としないので、作業工数を削減し得ると共に、パラメータ調整のためのソフト設計の必要もなく、ソフト設計の簡易化を図ることができる。
【0040】
実施例の加工装置では、工具12の移動経路を複数の区間に分割し、シーケンサ20は、ロボット制御手段16からの要求によって工具12の移動方向下流側の区間の座標データを順にロボット制御手段16に送信するよう構成したので、ロボット制御手段16の容量不足に起因して加工できる被加工材料10のサイズや形状等が限定されるのを抑えることができる。
【0041】
実施例の加工装置では、1回のループ処理で処理される3つ目の区間が、1つのパスラインにおいて分割された最後の区間でない場合にスキップ条件が成立すると、ロボット制御手段16は、予め設定した仮想座標点(CD)に向けて移動している工具12の軌道を変更するようロボット14を制御するよう構成したので、前記信号処理が発生した場合においても、ロボット14を停止することなく円滑に動作させることができ、被加工材料10が損傷するのを防ぐことができる。また、ロボット14の工具12で加工される区間が、終点ENを含む区間である場合にパス切替え条件が成立すると、ロボット制御手段16は、予め設定した補助座標点asを経て終点EN1~ENnに移動するようロボット14を制御するので、1回のループ処理が終了するまでロボット14の動作を待機させることなく次の動作を行わせることができる。また、移動経路の最終の区間を工具12が加工している場合は、該工具12を、被加工材料10に接触しない終点ENまで適正に移動させ得るので、被加工材料10のサイズや形状が異なっていても、工具12を次の移動経路の始点STに支障なく移動させることができる。すなわち、工具12を複数の移動経路で移動して被加工材料10を適正に加工することができる。また、実施例では、補助座標点asを複数設定するよう構成したので、加工最終座標点(E1E)から終点ENに移動する工具12の速度を遅くでき、工具12の高速移動に起因する不具合の発生を防止することができる。
【0042】
〔変更例〕
本願は、前述した実施例の構成に限定されるものでなく、その他の構成を適宜に採用することができる。
1.実施例では、ロボット制御手段は、被加工材料の加工前に2区間の座標データをデータレジスタに格納しておき、1つ目の区間を工具が移動中に、次の次の区間の座標データをデータレジスタに格納するよう構成したが、ロボットによる工具の移動速度に応じて、加工開始前に1つ目の区間の座標データのみをデータレジスタに格納しておき、座標データが格納されている区間を工具が移動中に、次の区間の座標データをデータレジスタに格納するようにしてもよい。また、加工開始前に座標データを格納する区間の数は、ロボット制御手段で許容される容量に応じて、3つ以上とすることもできる。
2.実施例では、1回のループ処理で3つの区間の処理を行うよう構成したが、1回のループ処理で処理する区間の数は、1つ、2つ、または4つ以上のロボット制御手段で許容される容量に応じて設定されるものであればよい。
3.1つの移動経路(パスライン)を分割する区間の数は、実施例の5つに限られるものでなく、複数であればよい。
4.計測手段は、被加工材料の形状が複雑である場合等、必要に応じて設ければよい。
5.ロボットは、6軸多関節ロボットに限らず、加工対象となる被加工材料の形状に応じた自由度を有する多関節ロボットを採用することができる。
6.実施例では、移動経路データをCSVファイル化したが、ファイル形式は、TSVファイルやXMLファイル等、その他種々のファイル形式であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
10 被加工材料,12 工具,14 ロボット(多関節ロボットアーム)
16 ロボット制御手段,18 データ生成手段,20 シーケンサ(データ制御手段)
22 データ管理手段,26 計測手段,30 ハンド,ST 始点,EN 終点
C1E 最終の座標点(一の座標点),D1S 最初の座標点(次の座標点)
CD 仮想座標点
図1
図2
図3
図4
図5