IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ダイヘンの特許一覧

<>
  • 特開-プラズマ源 図1
  • 特開-プラズマ源 図2
  • 特開-プラズマ源 図3
  • 特開-プラズマ源 図4
  • 特開-プラズマ源 図5
  • 特開-プラズマ源 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146758
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】プラズマ源
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20231004BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
H05H1/46 L
H01L21/302 101C
H05H1/46 M
H05H1/46 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054124
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】納富 隼人
(72)【発明者】
【氏名】吉迫 裕司
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 豊
(72)【発明者】
【氏名】天立 茂樹
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084BB01
2G084BB16
2G084BB33
2G084CC04
2G084CC12
2G084CC13
2G084CC33
2G084DD03
2G084EE11
2G084EE12
2G084HH21
2G084HH22
2G084HH28
2G084HH42
5F004BA20
5F004CA03
5F004CA08
5F004CB05
(57)【要約】
【課題】放電管内で発生したプラズマが容量結合プラズマから誘導結合プラズマへ移行したと判定されるまでの期間に適用する電圧制限値及び電流制限値の適用範囲を拡大させること。
【解決手段】実施形態に係るプラズマ源は、プラズマを発生する放電部と、放電部に対して電力を供給する高周波電源とを備える。高周波電源は、直流電源回路と、インバータ回路と、共振回路と、制御部とを備える。制御部は、放電部のアンテナに電圧が印加された後からプラズマが容量結合プラズマから誘導結合プラズマへ移行したと判定されるまでの期間では、放電部に対して供給する電力の電圧値及び電流値がそれぞれ予め定められた制限値を超えないように直流電源回路またはインバータ回路の出力電圧値を変化させる。当該制限値は、高周波電源内の素子が破損しない電圧値及び電流値の範囲内でそれぞれ設定される値である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを電離させたプラズマを発生させるために用いる放電管と前記放電管を取り囲むようにコイル状に形成された導電体のアンテナとを有する放電部と、前記放電部に対して電力を供給する高周波電源とを備えたプラズマ源において、
前記高周波電源は、
直流電圧を出力する直流電源回路と、
前記直流電源回路から出力された直流電圧を無線周波数帯域の周波数を有する電圧に変換するインバータ回路と、
前記インバータ回路と前記放電部との間に配置された共振回路と、
前記アンテナに前記電圧が印加された後から前記放電管内で発生したプラズマが容量結合プラズマから誘導結合プラズマへ移行したと判定されるまでの第1の期間では、前記アンテナに印加される電圧の電圧値が予め定められた第1の電圧制限値を超えないように前記直流電源回路または前記インバータ回路の出力電圧値を変化させるとともに、前記アンテナに流れる電流の電流値が予め定められた第1の電流制限値を超えないように前記直流電源回路または前記インバータ回路の出力電圧値を変化させる制御部と
を備え、
前記第1の電圧制限値は、前記インバータ回路内の素子および前記共振回路内の素子が破損しない電圧値の範囲内で個々に設定される値であり、
前記第1の電流制限値は、前記インバータ回路内の素子および前記共振回路内の素子が破損しない電流値の範囲内で個々に設定される値である、
プラズマ源。
【請求項2】
前記第1の電圧制限値および前記第1の電流制限値は、所望範囲に設定された前記放電管に流入させるガス条件において、前記放電管内のプラズマが容量結合プラズマから誘導結合プラズマへ移行できるようにそれぞれ設定される、請求項1に記載のプラズマ源。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1の期間後の第2の期間では、前記アンテナに印加される電圧の電圧値が予め定められた前記第1の電圧制限値よりも小さい第2の電圧制限値を超えないように前記直流電源回路または前記インバータ回路の出力電圧値を変化させるとともに、前記アンテナに流れる電流の電流値が、予め定められた前記第1の電流制限値よりも小さい第2の電流制限値を超えないように前記直流電源回路または前記インバータ回路の出力電圧値を変化させる、請求項1又は請求項2に記載のプラズマ源。
【請求項4】
前記第1の期間と前記第2の期間との間には、制限値移行期間が設けられており、
前記制限値移行期間における電圧制限値は、前記制限値移行期間中に前記第1の電圧制限値から前記第2の電圧制限値に移行され、
前記制限値移行期間における電流制限値は、前記制限値移行期間中に前記第1の電流制限値から前記第2の電流制限値に移行され、
前記制御部は、前記アンテナに印加される電圧の電圧値が前記制限値移行期間における電圧制限値を超えないように前記直流電源回路の出力電圧値を変化させるとともに、前記アンテナに流れる電流の電流値が前記制限値移行期間における電流制限値を超えないように前記直流電源回路の出力電圧値を変化させる、
請求項3に記載のプラズマ源。
【請求項5】
前記アンテナに印加される電圧の電圧値および前記アンテナに流れる電流の電流値に基づいて前記放電管内のプラズマが容量結合プラズマから誘導結合プラズマへ移行したか否かを判定する判定部をさらに備えた、請求項1から請求項4のうちのいずれか一項に記載のプラズマ源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ源に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおいては、プラズマを用いた半導体ウェハの成膜処理、エッチング処理等が行われている。特許文献1には、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)型のプラズマ源としてのプラズマ発生装置が開示されている。プラズマ発生装置は、筒状の真空容器(放電管)に巻回されたアンテナコイルと、アンテナコイルに対して高周波電力を供給する高周波電源とを備える。
【0003】
ICPを発生させるプラズマ源としては、アンテナコイルに高周波電力を供給して容量結合プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)を発生させた後、高周波電力を増加させて容量結合プラズマから誘導結合プラズマに変化させるプラズマ源が知られている。
【0004】
このようなプラズマ源においては、例えば高周波電源や共振回路の回路素子を保護するために、各素子のディレーティングに合わせてアンテナコイルに供給する高周波電力についての電圧値及び電流値の制限値が設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-057464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、素子の発熱時の温度上昇を考慮してディレーティングを大きくとると、必要以上に電圧値及び電流値の適用範囲が制限されてしまっていた。必要以上に電圧値及び電流値の適用範囲が制限されると、容量結合プラズマを発生させ難くなり、また、容量結合プラズマから誘導結合プラズマへ移行させ難くなっていた。さらに、必要以上に電圧値及び電流値の適用範囲が制限されることは、例えば、ガス圧力やガス流量などの電圧値及び電流値以外のプラズマ発生条件の適用範囲を狭めることに繋がっていた。
【0007】
本発明は、上記を鑑み、放電管内で発生したプラズマが容量結合プラズマから誘導結合プラズマへ移行したと判定されるまでの期間に適用する電圧制限値及び電流制限値の適用範囲を拡大させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係るプラズマ源は、ガスを電離させたプラズマを発生させるために用いる放電管と前記放電管を取り囲むようにコイル状に形成された導電体のアンテナとを有する放電部と、前記放電部に対して電力を供給する高周波電源とを備える。前記高周波電源は、直流電源回路と、インバータ回路と、共振回路と、制御部とを備える。前記直流電源回路は、直流電圧を出力する。前記インバータ回路は、前記直流電源回路から出力された直流電圧を無線周波数帯域の周波数を有する電圧に変換する。前記共振回路は、前記インバータ回路と前記放電部との間に配置されている。前記制御部は、前記アンテナに前記電圧が印加された後から前記放電管内で発生したプラズマが容量結合プラズマから誘導結合プラズマへ移行したと判定されるまでの第1の期間では、前記アンテナに印加される電圧の電圧値が予め定められた第1の電圧制限値を超えないように前記直流電源回路または前記インバータ回路の出力電圧値を変化させるとともに、前記アンテナに流れる電流の電流値が予め定められた第1の電流制限値を超えないように前記直流電源回路または前記インバータ回路の出力電圧値を変化させる。前記第1の電圧制限値は、前記インバータ回路内の素子および前記共振回路内の素子が破損しない電圧値の範囲内で個々に設定される値である。前記第1の電流制限値は、前記インバータ回路内の素子および前記共振回路内の素子が破損しない電流値の範囲内で個々に設定される値である。
【0009】
実施形態に係るプラズマ源において、前記第1の電圧制限値および前記第1の電流制限値は、所望範囲に設定された前記放電管に流入させるガス条件において、前記放電管内のプラズマが容量結合プラズマから誘導結合プラズマへ移行できるようにそれぞれ設定される。
【0010】
実施形態に係るプラズマ源において、前記制御部は、前記第1の期間後の第2の期間では、前記アンテナに印加される電圧の電圧値が予め定められた前記第1の電圧制限値よりも小さい第2の電圧制限値を超えないように前記直流電源回路または前記インバータ回路の出力電圧値を変化させるとともに、前記アンテナに流れる電流の電流値が、予め定められた前記第1の電流制限値よりも小さい第2の電流制限値を超えないように前記直流電源回路または前記インバータ回路の出力電圧値を変化させる。
【0011】
実施形態に係るプラズマ源において、前記第1の期間と前記第2の期間との間には、制限値移行期間が設けられている。前記制限値移行期間における電圧制限値は、前記制限値移行期間中に前記第1の電圧制限値から前記第2の電圧制限値に移行される。前記制限値移行期間における電流制限値は、前記制限値移行期間中に前記第1の電流制限値から前記第2の電流制限値に移行される。前記制御部は、前記アンテナに印加される電圧の電圧値が前記制限値移行期間における電圧制限値を超えないように前記直流電源回路の出力電圧値を変化させるとともに、前記アンテナに流れる電流の電流値が前記制限値移行期間における電流制限値を超えないように前記直流電源回路の出力電圧値を変化させる。
【0012】
実施形態に係るプラズマ源は、判定部をさらに備える。前記判定部は、前記アンテナに印加される電圧の電圧値および前記アンテナに流れる電流の電流値に基づいて前記放電管内のプラズマが容量結合プラズマから誘導結合プラズマへ移行したか否かを判定する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、放電管内で発生したプラズマが容量結合プラズマから誘導結合プラズマへ移行したと判定されるまでの期間に適用する電圧制限値及び電流制限値の適用範囲を拡大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態に係るプラズマ源の構成の一例を示す図である。
図2図2は、図1の直流電源回路又はインバータ回路から出力される高周波電力の波形の一例を示す図である。
図3図3は、実施形態に係る高周波電力の適用範囲の設定の考え方を説明するための図である。
図4図4は、実施形態に係る高周波電力の適用範囲の設定の一例について説明するための図である。
図5図5は、実施形態に係るガス条件の範囲について説明するための図である。
図6図6は、実施形態に係るプラズマ源において実行される、プラズマ発生処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係るプラズマ源を詳細に説明する。なお、本実施形態により本願発明が限定されるものではない。
【0016】
なお、本実施形態の説明において、既出の図に関して前述したものと同一又は略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、説明を適宜省略する場合もある。また、同一又は略同一の部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表されている場合もある。また、例えば図面の視認性を確保する観点から、各図面の説明において主要な構成要素だけに参照符号を付し、既出の図において前述したものと同一又は略同一の機能を有する構成要素であっても参照符号を付していない場合もある。
【0017】
図1は、実施形態に係るプラズマ源10の構成の一例を示す図である。プラズマ源10は、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)を発生可能に構成されるプラズマ源である。プラズマ源10は、図1に示すように、直流電源回路20、インバータ回路30、共振回路40、放電部50、制御回路60、直流電圧センサ91、直流電流センサ92、高周波電圧センサ93及び高周波電流センサ94を有する。ここで、直流電源回路20、インバータ回路30、共振回路40及び制御回路60は、放電部50に対して電力を供給する高周波電源の一例である。
【0018】
直流電源回路20は、交流電源に接続される。交流電源は、例えばプラズマ源10の外部に設けられるが、プラズマ源10又は直流電源回路20の構成要素として設けられていてもよい。直流電源回路20は、交流電源からの交流電圧を用いて直流電圧を出力するように構成される。一例として、直流電源回路20は、整流・平滑回路(図示しない)及び昇降圧チョッパ(図示しない)を有する。整流・平滑回路は、交流電源から供給される交流電圧を直流電圧に変換するように構成される。昇降圧チョッパは、整流・平滑回路からの直流電圧を、制御回路60からの制御信号S3に応じた電圧値まで昇圧又は降圧するように構成される。プラズマ源10は、この直流電圧によって動作するように構成される。
【0019】
インバータ回路30は、直流電源回路20の後段に設けられる。図1の例では、インバータ回路30の入力端は、直流電圧センサ91及び直流電流センサ92を介して、直流電源回路20の出力段に接続される。インバータ回路30は、直流電源回路20から出力された直流電圧を交流電圧に変換するように構成される。当該交流電圧は、例えば無線周波数帯域の周波数(RF:Radio Frequency)を有する。当該周波数は、一例として2MHz程度である。
【0020】
共振回路40は、インバータ回路30及び放電部50の間に設けられる。具体的には、共振回路40の入力端は、インバータ回路30の出力端に接続される。共振回路40は、インバータ回路30からの交流電流を用いて共振現象により高周波電力を発生するように構成される。図1の例では、共振回路40は、LC回路部41及びコンデンサ42を有する。LC回路部41の入力端は、インバータ回路30の出力端に接続される。コンデンサ42は、LC回路部41の出力端に対して、後段の放電部50と並列に接続される。なお、共振回路40は、図1の構成に限らない。
【0021】
放電部50は、共振回路40の後段に設けられる。具体的には、放電部50の電力の入力端は、共振回路40の出力端に接続される。図1の例では、放電部50の電力の入力端は、高周波電圧センサ93及び高周波電流センサ94を介して、LC回路部41の出力端に接続される。放電部50は、放電管(図示しない)及びアンテナ51を有する。放電管は、ガスを電離させたプラズマを発生させるために用いられ、材料ガスの流入口及び流出口を両端側に有する。放電管は、例えば管状(円筒状)に形成される。放電管は、例えば石英やアルミナなどの非導電性材料又は誘電体を用いて、アンテナ51をプラズマから絶縁するように形成される。図1の例では、アンテナ51は、LC回路部41の出力端に対して、前段のコンデンサ42と並列に接続される。アンテナ51は、例えば放電管を取り囲むようにコイル状に形成された導電体である。なお、図1では、放電部50においてアンテナ51と直列に抵抗52が配置されているが、これは発生したプラズマによる消費電力を表す。
【0022】
放電部50は、放電管及びアンテナに供給される高周波電力を用いてプラズマを発生させるように構成される。例えば、放電管内に材料ガスを流通させた状態でアンテナ51に交流電流Irfが流れると、アンテナ51のコイルの端子間電圧Vrfによって材料ガスが電離され、プラズマが生成される。これは、コイルの端子間の電界によって結合しているプラズマであり、すなわち容量結合プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)である。CCPが発生している状態で、アンテナ51の高周波電流Irfをさらに増大させると、コイルの周囲に磁場が形成されて誘導電界が発生し、それによりICPが発生する。ICPは、半導体装置の製造等に用いられるプラズマであり、用途に応じて維持及び管理される。
【0023】
放電管内の材料ガスに関するガス条件(組成、圧力、流量など)は、当業者が適宜設計可能である。組成としては、たとえば、酸素と窒素とを混合して用いることができる。流量の例として、酸素の流量を1000sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)とし、窒素の流量を100sccmとしてもよい。あるいは、酸素の流量を1500sccmとし、窒素の流量を100sccmとしてもよい。
【0024】
制御回路60は、プラズマ源10の動作を制御するように構成される。例えば、制御回路60は、アンテナ51に印加される電圧の電圧値を変化させるように、直流電源回路20又はインバータ回路30の出力電圧値を制御する制御部として動作可能に構成される。また、例えば、制御回路60は、放電管内部のプラズマの状態を判定する判定部として動作可能に構成される。制御回路60は、ハードウェア資源としてプロセッサ及びメモリを有し、メモリにロードされた制御プログラムを実行することにより上記の制御部及び/又は判定部としての機能を実現するように構成されていてもよい。あるいは、制御回路60は、ハードウェア資源として、上記の制御部及び/又は判定部としての機能を実現するように構成された専用回路を有していてもよい。
【0025】
直流電圧センサ91及び直流電流センサ92は、直流電源回路20及びインバータ回路30の間に配置される。直流電圧センサ91は、直流電源回路20の出力電圧Vdcの電圧値を検出し、検出された出力電圧値に対応する電圧値信号S1を出力するように構成される。直流電流センサ92は、直流電源回路20及びインバータ回路30の間に流れる直流電流Idcの電流値を検出し、検出された電流値に対応する電流値信号S2を出力するように構成される。
【0026】
高周波電圧センサ93及び高周波電流センサ94は、共振回路40及び放電部50の間に配置される。高周波電圧センサ93は、アンテナ51に印加される交流電圧Vrfの電圧値を検出し、検出された出力電圧値に対応する電圧値信号S5を出力するように構成される。高周波電流センサ94は、共振回路40及び放電部50の間に流れる交流電流、すなわちアンテナ51を流れる交流電流Irfの電流値を検出し、検出された電流値に対応する電流値信号S6を出力するように構成される。
【0027】
なお、図1では、直流電源回路20内のスイッチング素子やインバータ回路30の内のスイッチング素子に駆動信号を与えるドライブアンプ等の図示及び説明を省略している。また、直流電源回路20、インバータ回路30及び制御回路60には、それぞれ図示しない電源が接続され、当該電源からの電力が供給される。
【0028】
次に、上記構成のプラズマ源10の動作例について、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
一例として、制御回路60は、直流電圧センサ91で検出した電圧検出信号S1と、直流電流センサ92で検出した電流検出信号S2とに基づいて検出電力値を算出する。ここで、電圧検出信号S1は、電圧値の情報を含む。また、電流検出信号S2は、電流値の情報を含む。検出電力値は、電圧検出信号S1及び電流検出信号S2の積によって表され、直流電源回路20の昇降圧チョッパの出力端における電力値を示すものである。
【0030】
ここで、直流電源回路20の昇降圧チョッパから出力される直流電力値が増減することによって、アンテナ51に供給される電力値も増減する関係がある。また、直流電源回路20の昇降圧チョッパから出力される直流電力値と、アンテナ51に供給される電力値との間には相関関係がある。このため、直流電源回路20の昇降圧チョッパから出力される直流電力値からアンテナ51に供給される電力値を推定することができる。
【0031】
したがって、制御回路60は、アンテナ51に供給すべき電力値に相当する直流電力値を目標電力値とすることで、アンテナ51に供給される電力値を制御することができる。具体的には、制御回路60は、検出電力値が目標電力値と等しくなるように、直流電源回路20の昇降圧チョッパに対して制御信号S3を送信する。直流電源回路20の昇降圧チョッパは、制御信号S3に基づいて出力電圧値を増減させる。例えば、直流電源回路20の昇降圧チョッパは、制御信号S3に基づいて内部のスイッチング素子のデューティ比を増減させることによって、出力電圧値を増減させる。
【0032】
このように、制御回路60は、検出電力値が目標電力値になるように、直流電源回路20の昇降圧チョッパの出力電圧を増減させる制御を行うことにより、アンテナ51に供給する電力の電力値を調整することができる。アンテナ51に供給される検出電力値を間接的に算出する制御においては、高周波電圧センサ93及び高周波電流センサ94による検出値を用いる制御に比して、容易に電力値を算出できるというメリットがある。つまり、直流電圧センサ91及び直流電流センサ92が直流電源回路20の出力端に設けられている構成によれば、電圧値と電流値とを容易に検出することができる。これは、高周波電力の検出においては電圧と電流との位相差などを考慮する必要がある一方、直流電力の検出においては電圧と電流との積を算出するだけでよいことに起因する。なお、本制御を行う場合、プラズマ源10は、高周波電圧センサ93及び高周波電流センサ94を有していなくてもよい。
【0033】
別の一例として、制御回路60は、直流電源回路20の昇降圧チョッパではなく、インバータ回路30内のスイッチング素子のデューティ比を調整してインバータ回路30の出力電圧を増減させることによって、アンテナ51に供給する電力の電力値を調整することもできる。
【0034】
具体的には、制御回路60は、高周波電圧センサ93の検出信号S5と高周波電流センサ94の検出信号S6とに基づいて、アンテナ51に供給される検出電力値を算出する。また、制御回路60は、検出電力値が目標電力値と等しくなるように、インバータ回路30に対して制御信号S4を送信する。インバータ回路30は、制御信号S4に基づいて出力電圧値を増減させる。例えば、インバータ回路30は、制御信号S4に基づいて内部のスイッチング素子のデューティ比を増減させることによって、出力電圧値を増減させる。
【0035】
このような制御であっても、アンテナ51に供給する電力の電力値を調整することができる。なお、本制御を行う場合、プラズマ源10は、直流電圧センサ91及び直流電流センサ62を有していなくてもよい。
【0036】
なお、制御回路60は、電圧値又は電流値が各制限値を超えた場合は、インバータ回路30及び共振回路40内の素子を保護するために、制御信号S3,S4により、直流電源回路20の昇降圧チョッパ又はインバータ回路30の出力電圧値を低下させる制御を行う。
【0037】
上記のように、アンテナ51に供給する電力は、複数の方式で調整可能である。いずれの方式でアンテナ51に供給する電力の電力値を調整するかは、直流電源回路20及びインバータ回路30の構成に応じて適宜設計されればよい。
【0038】
図2は、図1の直流電源回路20の昇降圧チョッパ又はインバータ回路30から出力される高周波電力の波形の一例を示す図である。図2において、横軸及び縦軸は、それぞれ、時間及びプラズマに係る電力値を表す。
【0039】
制御回路60は、直流電源回路20の昇降圧チョッパ又はインバータ回路30から出力される電力を図2に示すように制御することにより、プラズマに係る電力値を制御する。プラズマ源10の動作は、電力増加段階及び電力一定段階を含む。
【0040】
電力増加段階において制御回路60は、直流電源回路20の昇降圧チョッパ又はインバータ回路30の出力電圧値を増加させることにより、アンテナ51に印加される電圧の電圧値を増加させ、これによってアンテナ51に供給される電力の電力値を増加させる。電力増加段階の継続時間は任意に設計することができる。当該継続時間は、例えば数ミリ秒から数十ミリ秒(図2の例では50ミリ秒)であるが、これに限らない。当該継続時間は、例えば100ミリ秒程度であっても構わない。
【0041】
図2の例では、電力増加段階の電力値は、開始時点では0Wであり、終了時点では5000Wである。この電力増加段階において、プラズマ(CCP)が発生し、また、プラズマの状態がCCPからICPへ移行する。なお、図2の例では電力値が時間に応じて連続的に増加しているが、これに限らない。電力値は、時間に応じてステップ状に増加するものであってもよい。
【0042】
電力増加段階の後、電力一定段階に移行する。電力一定段階は、電力値が所定値(図2の例では5000W)に達した後の段階であり、その電力値が維持される。通常、プラズマの状態は電力増加段階の途中でCCPからICPへ移行するため、当該所定値は、例えばICPが安定して維持される値として設計することができる。
【0043】
図3は、実施形態に係る高周波電力の適用範囲の設定の考え方を説明するための図である。図3において、横軸及び縦軸は、それぞれ、時間及び高周波電力の検出電力値に対する制限値を表す。
【0044】
高周波電力の検出電力値に対する制限値は、図3に示すように、ICP着火用の第1の制限値C1と、ICP維持中の第2の制限値C2とを含む。
【0045】
第1の制限値C1は、アンテナ51に高周波電圧が印加された後から放電管内で発生したプラズマの状態がCCPからICPへ移行したと判定されるまでの第1の期間に適用される制限値である。第1の制限値C1は、インバータ回路30及び共振回路40内の各素子が破損しない電圧値又は電流値の範囲内で個々に設定される値である。ここで、電圧値についての第1の制限値C1は、第1の電圧制限値の一例である。また、電流値についての第1の制限値C1は、第1の電流制限値の一例である。なお、この実施形態では、説明を簡略化するために、電圧値についての第1の制限値C1と電流値についての第1の制限値C1とを同じ符号にしているが、実際には、電圧値についての第1の制限値と電流値についての第1の制限値とは異なる。
【0046】
第2の制限値C2は、第1の期間の後、すなわちICPを維持する第2の期間に適用される制限値である。第2の制限値C2は、第1の制限値C1より小さい。ここで、電圧値についての第2の制限値C2は、第2の電圧制限値の一例である。また、電流値についての第2の制限値C2は、第2の電流制限値の一例である。なお、この実施形態では、説明を簡略化するために、電圧値についての第2の制限値C2と電流値についての第2の制限値C2とを同じ符号にしているが、実際には、電圧値についての第2の制限値と電流値についての第2の制限値とは異なる。
【0047】
また、第1の期間及び第2の期間の間には、制限値移行期間が設けられている。制限値移行期間における高周波電力の検出電力値に対する移行制限値C3は、制限値移行期間中に第1の制限値C1から第2の制限値C2に移行される。この制限値移行期間については、後述する。
【0048】
第1の期間において制御回路60は、アンテナ51に印加される電圧Vrfの電圧値が予め定められた電圧値についての第1の制限値C1を超えないように直流電源回路20又はインバータ回路30の出力電圧値を変化させるとともに、アンテナ51に流れる電流Irfの電流値が予め定められた電流値についての第1の制限値C1を超えないように直流電源回路20又はインバータ回路30の出力電圧値を変化させる。
【0049】
第2の期間において制御回路60は、アンテナ51に印加される電圧Vrfの電圧値が予め定められた電圧値についての第2の制限値C2を超えないように直流電源回路20又はインバータ回路30の出力電圧値を変化させるとともに、アンテナ51に流れる電流Irfの電流値が予め定められた電流値についての第2の制限値C2を超えないように直流電源回路20又はインバータ回路30の出力電圧値を変化させる。
【0050】
この構成によれば、第1の制限値C1は、高周波電源ごとに、その高周波電源の素子が破損しない最大値までの範囲で設定可能である。すなわち、個々の高周波電源にとっての第1の期間における高周波電力の適用範囲を最大化し、高周波電源の素子を保護しつつ、アンテナ51に供給される電圧値及び電流値を増大させることができる。アンテナ51に供給される電圧値及び電流値を大きくできれば、材料ガスを電離させ易くなるためCCPを発生させ易くなり、また、CCPからICPへ移行させ易くなる。つまり、上記構成によれば、ICPを発生させ易くすることができる。
【0051】
また、アンテナ51に供給される電圧値及び電流値を大きくできれば、ガスを電離させ易くなるため、第1の制限値C1の調整範囲の最大化は、当該電力値の他のプラズマ発生条件(例えば、ガス圧力やガス流量)の適用範囲を広げることができる。
【0052】
図4は、実施形態に係る高周波電力の適用範囲の設定の一例について説明するための図である。図4において、横軸及び縦軸は、それぞれ、時間及び高周波電力の検出電力値に対する制限値を表す。
【0053】
この実施形態では、第1の制限値C1は、放電管ごと、すなわちプラズマ源10ごとに、所望範囲に設定された放電管に流入させるガス条件において、放電管内のプラズマがCCPからICPへ移行できるようにそれぞれ設定される。一例として、図4は、第1の制限値C1が、放電管Aについての第1の制限値C11と、放電管Bについての第1の制限値C12とに分かれている場合を例示している。放電管Aについての第1の制限値C11は、放電管AにおいてICP着火を実現する電力値についての閾値TAに基づいて設定される。放電管Bについての第1の制限値C12は、放電管BにおいてICP着火を実現する電力値についての閾値TBに基づいて設定される。
【0054】
なお、第1の制限値C11は、閾値TAよりも所定の値だけ大きく設定される。所定の値は、状況に応じて適宜定められる。また、第1の制限値C12は、閾値TBよりも所定の値だけ大きく設定される。所定の値は、状況に応じて適宜定められる。
【0055】
複数台のプラズマ源10を製作する場合、アンテナ51の製作精度や放電管及びアンテナ51の密着具合などの放電部50の製作精度のバラつきによって、プラズマ源10ごとに、ICPを発生させることのできるプラズマ発生条件に機差が生じる場合があった。ここで、プラズマ発生条件としては、個々のプラズマ源10においてICP着火を実現する電圧値、電流値及びガス条件がある。なお、ガス条件は、例えば、ガス圧力及びガス流量の少なくとも一方である。
【0056】
図5は、実施形態に係るガス条件の範囲について説明するための図である。一例として、図5は、放電管Aについてのガス条件の範囲と、放電管Bについてのガス条件の範囲とを例示する。また、図5は、ガス条件として材料ガスとしての酸素の圧力[Pa]を例示する。ここで、放電管A及び放電管Bは、例えば異なるプラズマ源10の放電部50の放電管であるとする。図5の(1)は、図3の例で用いられている共通の第1の制限値C1を放電管A及び放電管Bに適用する場合のガス条件を例示する。図5の(2)は、第1の制限値C11,C12を、それぞれ、放電管A及び放電管Bに適用する場合のガス条件を例示する。
【0057】
例えば、図5の(1)に例示する320Pa~360Paのガス条件のように、ガス条件によっては、図4に例示するように、放電管Bに適した第1の制限値C12が共通の第1の制限値C1より小さい一方で、放電管Aに適した第1の制限値C11が共通の第1の制限値C1より大きい場合もあり得る。このようなガス条件の範囲のバラつきは、プラズマ源10を用いて加工される製品の品質にバラつきを生じさせるおそれがある。
【0058】
このような中、上記構成によれば、放電管ごと、すなわちプラズマ源10ごとに第1の制限値C11,C12が設定されるため、図5の(2)に例示するように、ICPを発生させることのできるガス条件の範囲のバラつき、すなわち機差を低減させることができる。図5の(2)は、第1の制限値C11,C12を、それぞれ、放電管A及び放電管Bに適用する場合のガス条件を例示する。ガス条件の範囲のバラつきの低減は、プラズマ源10を用いて加工される製品の品質のバラつきの低減に寄与する。また、第1の期間における第1の制限値C11,C12の調整範囲が最大化するので、ガス条件の範囲のバラつきを低減させつつ、複数のプラズマ源10で共通の第1の制限値C1を使用する場合に比して、ガス条件の範囲を拡大することができる。
【0059】
また、図4に示す第2の制限値C2は、図3と同様に、第1の期間の後、すなわちICPを維持する第2の期間に適用される制限値である。第2の制限値C2は、第1の制限値C11,C12より小さい。
【0060】
この構成によれば、第2の期間においてICPを維持するために必要な電圧値及び電流値の最大値が第1の期間よりも小さいため、プラズマ源10ごとに、第2の制限値C2を定める必要が無くなる。つまり、上記構成によれば、複数台の高周波電源を製作する場合であっても、高周波電源の素子を破損させない範囲で、複数台の高周波電源に対して共通の第2の制限値C2を適用することができる。
【0061】
また、図4に示す第1の期間及び第2の期間の間には、図3と同様に、制限値移行期間が設けられている。制限値移行期間における高周波電力の検出電力値に対する制限値(移行制限値C3,C31,C32)は、それぞれ、制限値移行期間中に第1の制限値C1,C11,C12から第2の制限値C2に移行される。
【0062】
なお、図4の例では、図3の例で用いられている共通の移行制限値C3に対して、上記の放電管Aでは移行制限値C31が用いられ、上記の放電管Bでは移行制限値C32が用いられることを示している。また、移行制限値C3,C31,C32は、上述の第1の制限値C1及び第2の制限値C2と同様に、電圧値及び電流値のそれぞれについて設けられるが、説明を簡略化するために、同じ符号を用いている。
【0063】
制限値移行期間において制御回路60は、アンテナ51に印加される電圧Vrfの電圧値がその時点での電圧値についての移行制限値C3を超えないように直流電源回路20又はインバータ回路30の出力電圧値を変化させるとともに、アンテナ51に流れる電流Irfの電流値がその時点での電流値についての移行制限値C3を超えないように直流電源回路20又はインバータ回路30の出力電圧値を変化させる。
【0064】
CCPからICPへの変化は、比較的短時間(例えば4msec程度)で完了するが、一瞬のうちに完了するわけではない。すなわち、CCPからICPへの移行過程においては、CCPの割合が減っていき、反対にICPの割合が増えていくと考えられる。そのため、CCPからICPへ移行したと判定された場合であっても、制限値を第1の制限値C1から第2の制限値C2へ突然小さくしてしまうと、その時点でのCCPの存在割合によっては、正常な移行をしているにも関わらず、電圧値や電流値が制限値を超えてしまう場合があり得る。その場合、素子を保護するために直流電源回路20又はインバータ回路30からの出力電圧が大幅に下げられることになり、ICPの割合が十分に増える前にアンテナ51に印加される電圧Vrfもまた下げられてしまうことになる。その結果、CCPからICPへの移行に失敗する場合があり得る。
【0065】
また、CCPからICPへの移行が完全に完了した後であれば、制限値を突然小さくしてもCCPからICPへの移行に影響はないが、移行の判定タイミングに誤差が生じた場合には、CCPからICPへの移行に失敗する場合があり得る。
【0066】
このような中、上記構成によれば、制限値移行期間が設けられるため、制限値の移行を適切に行い、適切にCCPからICPへ移行させることができる。
【0067】
また、制御回路60は、アンテナ51に印加される電圧Vrfの電圧値及びアンテナ51に流れる電流Irfの電流値に基づいて、放電管内のプラズマの状態がCCPからICPへ移行したか否かを判定する。なお、上述したように、直流電源回路20の昇降圧チョッパの出力端における電力値と、アンテナ51に供給される電力値との間には相関関係があるため、以下の例において、電圧Vdc及び電流Idcと、電圧Vrf及び電流Irfとを適宜読み替えてもよい。同様に、直流電源回路20の昇降圧チョッパから出力される直流電力値と、アンテナ51に供給される電力値とを読み替えてもよい。
【0068】
一例として、制御回路60は、電圧Vdcの増加分に対する電流Idcの増加分の比率を表す電流増加率に応じて、ICPへ移行したか否かを判定する。具体的には、制御回路60は、CCPが発生している状態、すなわちアンテナ51に高周波電圧が印加された後の任意の時点における電流Idcの電流増加率である第1電流増加率と、第1電流増加率より後の任意の時点における電流増加率である第2電流増加率とを取得する。また、制御回路60は、第1電流増加率に対する第2電流増加率の比率が、所定の閾値を超える場合に、ICPへ移行したと判定する。
【0069】
一例として、制御回路60は、電圧Vdc又は電流Idcを直流電源回路20の昇降圧チョッパの出力端における電力値で微分した値に応じて、ICPへ移行したか否かを判定する。具体的には、制御回路60は、CCPが発生した後に、当該電力値と、電圧Vdc又は電流Idcとを取得する。また、制御回路60は、電圧Vdcを電力で微分した値が減少から増加に転じた場合に、ICPへ移行したと判定する。あるいは、制御回路60は、電流Idcを電力で微分した値が増加から減少に転じた場合に、ICPへ移行したと判定する。
【0070】
一例として、制御回路60は、電圧Vdcに対する電流Idcの変化に応じて、ICPへ移行したか否かを判定する。具体的には、制御回路60は、電圧Vdc及び電流Idcを取得する。また、制御回路60は、電圧Vdcの増加に対して電流Idcが減少した場合に、ICPへ移行したと判定する。
【0071】
一例として、制御回路60は、共振回路40又は放電部50の少なくとも一方の少なくとも一部における電流Irfと電圧Vrfとの位相差を、直流電源回路20の昇降圧チョッパの出力端における電力で微分した値に応じて、ICPへ移行したか否かを判定する。具体的には、制御回路60は、当該電力値と、当該位相差とを取得する。また、制御回路60は、当該位相差を当該電力値で微分した値が、増加から減少に転じた場合に、ICPへ移行したと判定する。
【0072】
一例として、制御回路60は、電流Idcに対する電圧Vdcの相対値を示すVdc/Idcの値(インピーダンス値)に応じて、ICPへ移行したか否かを判定する。例えば、制御回路60は、インピーダンス値が予め定められた閾値以下になった場合に、ICPへ移行したと判定する。なお、制御回路60は、インピーダンス値として、インピーダンス値の安定度が予め定められた範囲内である場合に、ICPへ移行したと判定してもよい。ここで、インピーダンス値の安定度とは、例えば標準偏差や分散などのインピーダンス値についての統計値が適宜利用可能である。
【0073】
なお、制御回路60は、インピーダンス値がICPへの移行に係る閾値より大きい値として予め定められた閾値以下になった場合に、CCPが発生したと判定するように構成されていても構わない。あるいは、制御回路60は、インピーダンス値の低下率に応じて、ICPへ移行したか否かを判定してもよい。
【0074】
上記のように、プラズマの状態がCCPからICPへ移行したか否かは、複数の方法により判定可能である。いずれの方法で判定するかは適宜設計されればよい。また、2以上の方法を併用して判定されても構わない。
【0075】
このように、電圧Vdcの電圧値及び電流Idcの電流値、あるいは電圧Vrfの電圧値及び電流Irfの電流値に基づいて判定すれば、発光強度を検出するセンサを不要とすることができる。
【0076】
もちろん、実施形態に係るプラズマ源10は、プラズマの発光強度を検出可能に構成されたセンサをさらに有していても構わない。この場合、制御回路60は、発光強度の変化に応じてCCPからICPへ移行したか否かを判定すればよい。具体的には、制御回路60は、センサから発光強度の検出結果を取得し、CCPとして着火した際の発光より大きい発光強度の発光が検出された場合に、ICPへ移行したと判定すればよい。
【0077】
図6は、実施形態に係るプラズマ源10において実行される、プラズマ発生処理の流れの一例を示すフローチャートである。制御回路60は、図2を参照して説明したように、直流電源回路20の昇降圧チョッパ又はインバータ回路30の出力電圧値を制御することにより、アンテナ51に電圧を印加し、CCPを発生させる(S11)。また、制御回路60は、図3及び図4を参照して説明したように、第1の制限値C1を用いて直流電源回路20の昇降圧チョッパ又はインバータ回路30の出力電圧値を制御することにより、プラズマの状態をCCPからICPへ移行させる(S12)。制御回路60は、プラズマの状態がCCPからICPへ移行したか否かを判定する(S13)。CCPからICPへ移行したと判定されなかったとき(S13:No)、図6の流れは、S12の処理へ戻る。一方で、CCPからICPへ移行したと判定されたとき(S13:Yes)、制御回路60は、図3及び図4を参照して説明したように、第1の制限値C1より小さい第2の制限値C2を用いて直流電源回路20の昇降圧チョッパ又はインバータ回路30の出力電圧値を制御することにより、ICPを維持する(S14)。その後、ICPの利用が終了したときに図6の流れは終了する。
【0078】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、放電管内で発生したプラズマが容量結合プラズマから誘導結合プラズマへ移行したと判定されるまでの期間に適用する電圧制限値及び電流制限値の適用範囲を拡大させることができる。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0080】
10…プラズマ源、20…直流電源回路、30…インバータ回路、40…共振回路、41…LC回路部、42…コンデンサ、50…放電部、51…アンテナ、52…抵抗、60…制御回路(制御部、判定部)、91…直流電圧センサ、92…直流電流センサ、93…高周波電圧センサ、94…高周波電流センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6