(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014679
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
B63B 15/00 20060101AFI20230124BHJP
【FI】
B63B15/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118763
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000205535
【氏名又は名称】株式会社 商船三井
(71)【出願人】
【識別番号】000125369
【氏名又は名称】学校法人東海大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】段野 貴士
(72)【発明者】
【氏名】大西 弘益
(72)【発明者】
【氏名】福田 紘大
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 宏樹
(57)【要約】
【課題】 上部構造物の風圧抵抗を低減する船舶を提供することにある。
【解決手段】 船舶30は、船体20の上部に設けられる上部構造物10と、上部構造物10の側面の前面との角部分に長手方向が垂直方向になるように形成され、前面から側面側に曲げられた形状の曲面を含む曲面部分と、前記上部構造物に設けられ、頂点部分が水平方向に延びるように突き出た形状の前面を含むウィング12a,12bとを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体の上部に設けられる上部構造物と、
前記上部構造物の側面の前面との角部分に長手方向が垂直方向になるように形成され、前面から側面側に曲げられた形状の曲面を含む曲面部分と、
前記上部構造物に設けられ、頂点部分が水平方向に延びるように突き出た形状の前面を含むウィングと
を備えたことを特徴とする船舶。
【請求項2】
前記ウィングを前記船体の上部で支え、頂点部分が長手方向に延びるように突き出た形状の前面を含む第1の脚
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記ウィングを前記船体の上部で支え、前記第1の脚よりも後方に設置され、頂点部分が長手方向に延びるように突き出た形状の後面を含む第2の脚
を備えたことを特徴とする請求項2に記載の船舶。
【請求項4】
前記上部構造物は、
前記上部構造物の後面の上面との角部分に長手方向が水平方向になるように形成され、頂点部分が水平方向に延びるように突き出た形状の第1部分と、
前記上部構造物の後面の側面との角部分に長手方向が垂直方向になるように形成され、頂点部分が垂直方向に延びるように突き出た形状の第2部分とを含むこと
を特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項5】
前記曲面部分は、前面から側面側に曲げられた形状の曲面になるように付加物が取り付けられたこと
を含むことを特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項6】
前記付加物は、複数有し、垂直方向に隣接されたこと
を含むことを特徴とする請求項5に記載の船舶。
【請求項7】
前記ウィングは、前面の頂点部分が下側に位置する形状であること
を含むことを特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項8】
前記ウィングは、頂点部分が水平方向に延びるように突き出た形状の前面になるように付加物が取り付けられたこと
を含むことを特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項9】
前記付加物は、複数有し、水平方向に隣接されたこと
を含むことを特徴とする請求項8に記載の船舶。
【請求項10】
前記第1の脚は、頂点部分が長手方向に延びるように突き出た形状の前面になるように付加物が取り付けられたこと
を含むことを特徴とする請求項2に記載の船舶。
【請求項11】
前記付加物は、複数有し、前記第1の脚の長手方向に隣接されたこと
を含むことを特徴とする請求項10に記載の船舶。
【請求項12】
前記第1の脚は、前面の頂点部分が船内側に位置する形状であること
を含むことを特徴とする請求項2に記載の船舶。
【請求項13】
前記第2の脚は、頂点部分が長手方向に延びるように突き出た形状の後面になるように付加物が取り付けられたこと
を含むことを特徴とする請求項3に記載の船舶。
【請求項14】
前記付加物は、複数有し、前記第2の脚の長手方向に隣接されたこと
を含むことを特徴とする請求項13に記載の船舶。
【請求項15】
前記第2の脚は、後面の頂点部分が船外側に位置する形状であること
を含むことを特徴とする請求項3に記載の船舶。
【請求項16】
前記第1部分は、頂点部分が水平方向に延びるように突き出た形状になるように上面側付加物が取り付けられ、
前記第2部分は、頂点部分が垂直方向に延びるように突き出た形状になるように側面側付加物が取り付けられたこと
を含むことを特徴とする請求項4に記載の船舶。
【請求項17】
前記上面側付加物は、複数有し、水平方向に隣接され、
前記側面側付加物は、複数有し、垂直方向に隣接されたこと
を含むことを特徴とする請求項16に記載の船舶。
【請求項18】
前記第1部分は、頂点部分が上側に位置する形状であり、
前記第2部分は、頂点部分が船外側に位置する形状であること
を含むことを特徴とする請求項4に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、船舶は、風の影響を受けるため、風圧抵抗の少ない船舶が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、船舶の甲板上に設けられた上部構造物の風圧抵抗を低減することについては、充分に考慮されていない。
本発明の実施形態の目的は、上部構造物の風圧抵抗を低減する船舶を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の観点に従った船舶は、船体の上部に設けられる上部構造物と、前記上部構造物の側面の前面との角部分に長手方向が垂直方向になるように形成され、前面から側面側に曲げられた形状の曲面を含む曲面部分と、前記上部構造物に設けられ、頂点部分が水平方向に延びるように突き出た形状の前面を含むウィングとを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、上部構造物の風圧抵抗を低減する船舶を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る船舶の構成を示す構成図。
【
図2】第1実施形態に係る上部構造物を船首側から見た斜視図。
【
図3】第1実施形態に係る上部構造物を船尾側から見た斜視図。
【
図4】第1実施形態に係る第1付加物の形状を示す斜視図。
【
図5】第1実施形態に係る第2付加物の形状を示す斜視図。
【
図6】第1実施形態に係る第3付加物の形状を示す斜視図。
【
図7】第1実施形態に係る第3付加物が右前脚及び右後脚に取り付けられた状態を示す斜視図。
【
図8】第1実施形態に係る第3付加物が左前脚及び左後脚に取り付けられた状態を示す斜視図。
【
図9】第1実施形態に係る上部構造物における第2付加物が取り付けられていない風圧抵抗の解析図。
【
図10】第1実施形態に係る上部構造物における第1付加物及び第3付加物が取り付けられていない風圧抵抗の解析図。
【
図11】第1実施形態に係る上部構造物における第2付加物が取り付けられた風圧抵抗の解析図。
【
図12】第1実施形態に係る上部構造物における第1付加物及び第3付加物が取り付けられた風圧抵抗の解析図。
【
図13】本発明の第2実施形態に係る上部構造物を船首側から見た斜視図。
【
図14】第2実施形態に係る上部構造物を船尾側から見た斜視図。
【
図15】第2実施形態に係る第2付加物の形状を示す斜視図。
【
図16】第2実施形態に係る第3付加物の形状を示す斜視図。
【
図17】第2実施形態に係る第3付加物が右前脚及び右後脚に取り付けられた状態を示す斜視図。
【
図18】第2実施形態に係る第3付加物が左前脚及び左後脚に取り付けられた状態を示す斜視図。
【
図19】第2実施形態に係る第2付加物が左ウィングに取り付けられた状態を示す斜視図。
【
図20】第2実施形態に係る上部構造物における第2付加物が取り付けられた風圧抵抗の解析図。
【
図21】第2実施形態に係る上部構造物における第1付加物及び第3付加物が取り付けられた風圧抵抗の解析図。
【
図22】本発明の第3実施形態に係る上部構造物を船首側から見た斜視図。
【
図23】第3実施形態に係る上部構造物を船尾側から見た斜視図。
【
図24】第3実施形態に係る第3付加物が垂直方向に延びる角部分に取り付けられた状態を示す斜視図。
【
図25】第3実施形態に係る第3付加物が水平方向に延びる角部分に取り付けられた状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る船舶30の構成を示す構成図である。
図2は、本実施形態に係る上部構造物10を船首側から見た斜視図である。
図3は、本実施形態に係る上部構造物10を船尾側から見た斜視図である。なお、図面における同一部分には同一符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0009】
船舶30は、船体20、及び、上部構造物10を備える。上部構造物10は、船体20の上面に位置する甲板の上に設けられる。
図1では、上部構造物10は、船尾側に設けられているが、船首側又は中央付近に設けられてもよい。なお、ここでは、上部構造物10は、主にブリッジとして説明するが、船体20の上面に設けられた構造物であれば、ブリッジに限らずどのようなものでもよい。
【0010】
上部構造物10は、本体部分11、2つのウィング12a,12b、2つの前脚13a,13b、2つの後脚14a,14b、及び、複数の付加物1,2,3を備える。
【0011】
本体部分11は、上部構造物10の中央に位置する主要な部分である。本体部分11の下側部分は、平たい直方体に近い形状である。本体部分11の上側部分は、下側部分を土台として、様々な構造物が設けられた形状である。例えば、本体部分11には、居住区、操船を指揮する場所、ウィング12a,12bを支える支柱部分、及び、ファンネル等が設けられる。
【0012】
ウィング12a,12bは、本体部分11の上部から左右方向にそれぞれ延びた形状である。右ウィング12aは、本体部分11の右舷側に設けられる。左ウィング12bは、本体部分11の左舷側に設けられる。
【0013】
前脚13a,13bは、各ウィング12a,12bの下から甲板に向けて垂直下方に延びた部材である。前脚13a,13bは、各ウィング12a,12bを支える役割を持つ。右前脚13aは、右ウィング12aに設けられる。左前脚13bは、左ウィング12bに設けられる。
【0014】
後脚14a,14bは、各ウィング12a,12bの下から甲板に向けて斜め下後方に延びた部材である。後脚14a,14bの上端は、各前脚13a,13bの上端と一体的に結合される。後脚14a,14bの下端は、各前脚13a,13bの下端が甲板に設置された箇所よりも後方で、甲板に設置される。後脚14a,14bは、各前脚13a,13bと共に各ウィング12a,12bを支える役割を持つ。右後脚14aは、右ウィング12aに設けられる。左後脚14bは、左ウィング12bに設けられる。各後脚14a,14bは、強度を高めるために、対応する前脚13a,13bと支持部材等で結合されてもよい。
【0015】
付加物1~3は、上部構造物10の所定の箇所に取り付けられる。付加物1~3は、船舶30の航行の妨げとなる風圧抵抗を低減するように形成された形状である。各付加物1~3は、形状が異なる。取り付けられる箇所により、取り付ける付加物1~3が決定される。付加物1~3は、例えば、繊維強化プラスチック(FRP)であり、内部にポリウレタンフォーム等の充填剤を注入してもよい。なお、付加物1~3は、これに限らず、金属又は樹脂等のどのような材料でもよい。
【0016】
図4~
図6を参照して、付加物1~3の形状について説明する。
図4は、第1付加物1の形状を示す斜視図である。
図5は、第2付加物2の形状を示す斜視図である。
図6は、第3付加物3の形状を示す斜視図である。図中に示す長さの単位はミリメートルである。
【0017】
ここでは、具体的な長さを明示して説明するが、これらの長さは、参考であり、取り付け箇所等に合わせて任意の長さに変更してよい。例えば、各付加物1~3の並べる方向の長さ(底面から上面までの高さ)は、任意の値にすることができる。また、付加物1~3の長さは、取り扱いがし易いように値を決定してもよい。ここでは、取り付け箇所の長手方向の長さを全て1000mmに統一している。これは、重機を使わずに、船舶に搬入して、取り付けることを想定した大きさの一例である。重機を使わずに、付加物1~3を人手で持ち運べるようにするには、付加物1~3の1辺(高さ、幅又は奥行き)の最大の長さは、3m以下が望ましい。複数の付加物1~3は、取り付け箇所の長さに応じて、密接するように並べられて取り付けられる。なお、複数の付加物1~3を並べて取り付ける代わりに、取り付け箇所に合わせた複数の付加物1~3を一体化した形状の1つ又は少なくした数の付加物を取り付けてもよい。
【0018】
第1付加物1は、柱状であり、断面(上面及び底面も同じ形状)は、扇形に近い形状である。より具体的には、断面は、異なる長さの2辺で直角を形成する直角三角形の斜辺部分を曲線した形状である。第1付加物1は、互いに直交する2つの平面と、この2つの平面と隣接する1つの曲面の3つの側面を有する。例えば、第1付加物1は、柱状の高さが1000mm、断面の直角を形成する2辺のうちの1辺の長さが500mm、もう1辺の長さが466mmである。
【0019】
第2付加物2は、柱状であり、断面(上面及び底面も同じ形状)は、二等辺三角形の2つの等しい辺で形成される角部分を丸めたような形状である。第2付加物2は、3つの平面である側面を有し、断面の2つの等しい辺に対応する2つの側面が合わさる角部分は曲面になるように丸められた形状である。例えば、第2付加物2は、柱状の高さが1000mm、断面の他の2つの辺と等しくない底辺の長さが2000mm、断面の底辺から2つの等しい辺が合わさる角部分に相当する頂点までの高さは1000mmである。ここでは、断面が直角二等辺三角形に近い形状を示しているが、2つの等しい辺が成す角度は、直角に限らず、鋭角又は鈍角でもよい。
【0020】
第3付加物3は、柱状であり、断面(上面及び底面も同じ形状)は、直線である底辺に対して2次曲線を描くように突き出た凸形状である。第3付加物3は、1つの平面と凸形状に突き出た1つの曲面の2つの側面を有する。例えば、第3付加物3は、柱状の高さが1000mm、断面の直線(底辺)の長さが850mm、断面の凸形状のように突き出た高さが1000mmである。
【0021】
なお、付加物1~3に含まれる任意の曲面は、風が表面を滑らかに流れるような形状であれば、任意の形状(例えば、任意の曲率)にしてよい。また、付加物1~3に含まれる風を受ける凸形状についても、風が表面を滑らかに流れるような形状であれば、任意の形状(例えば、高さ)にしてよい。付加物1~3における任意の曲面又は凸形状は、実際の船舶30の構成に合わせて、より風圧抵抗が低減されるように形状を決定することができる。
【0022】
次に、付加物1~3の取り付け方法について説明する。
図7は、第3付加物3が右前脚13a及び右後脚14aに取り付けられた状態を示す斜視図である。
図8は、第3付加物3が左前脚13b及び左後脚14bに取り付けられた状態を示す斜視図である。
【0023】
第1付加物1は、本体部分11の前方(船首側)に面する前面に隣接する左右の側面の前面との角部分にそれぞれ設けられる。第1付加物1は、幅が長い方(
図4では500mm)の平面形状の側面を本体部分11の側面と密接させ、曲面状の側面が前方外側に位置するように取り付けられる。複数の第1付加物1は、垂直方向が長手方向になるように並べられ、隣接する2つの第1付加物1の上面と底面が密着するように取り付けられる。これにより、本体部分11の側面の前面との角部分には、前面から側面側に曲げられた形状の曲面を含む曲面部分が垂直方向に形成される。第1付加物1を設けることにより、前方から本体部分11の前面に受けた風が第1付加物1の曲面に沿って後方に流れることで、風圧抵抗が低減される。
【0024】
第2付加物2は、各ウィング12a,12bに設けられる。第2付加物2は、幅が一番長い(
図5では2000mm)平面形状の側面をウィング12a,12bの前面と密接させ、曲面状の頂点部分が水平方向(ウィング12a,12bの長手方向)に延びる向きで取り付けられる。これにより、ウィング12a,12bの前面は、第2付加物2の曲面状の頂点部分が突き出た形状になる。複数の第2付加物2は、水平方向が長手方向になるように並べられ、隣接する2つの第2付加物2の上面と底面が密着するように取り付けられる。第2付加物2を設けることにより、前方からウィング12a,12bに受けた風が、第2付加物2の形状に沿って後方に流れることで、風圧が低減される。
【0025】
第3付加物3は、前脚13a,13bの前面(船首側の面)、及び、後脚14a,14bの後面(船尾側の面)にそれぞれ設けられる。第3付加物3は、平面形状の側面を前脚13a,13bの前面又は後脚14a,14bの後面と密接させ、曲面の頂点部分が前脚13a,13b又は後脚14a,14bの長手方向に延びる向きで取り付けられる。これにより、前脚13a,13bの前面又は後脚14a,14bの後面は、第3付加物3の曲面の頂点部分が突き出た形状になる。複数の第3付加物3は、脚13a,13b,14a,14bの長手方向に並べられ、隣接する2つの第3付加物3の上面と底面が密着するように取り付けられる。第3付加物3を設けることにより、前方から前脚13a,13b及び後脚14a,14bに受けた風が、第3付加物3の曲面に沿って後方に流れることで、風圧が低減される。
【0026】
図9~
図12を参照して、付加物1~3による上部構造物10の風圧抵抗について説明する。
図9~
図12は、上部構造物10に前方から風を当てる解析をした解析図である。図中の線は、風の流れを示す流線を表している。
【0027】
図9及び
図11は、左ウィング12bを左舷側から見た図である。
図9には、第2付加物2が取り付けられておらず、
図11には、第2付加物2が取り付けられている。
図9と
図11を比較すると、
図11の方が、第2付加物2に当たった流線が左ウィング12bの後方に滑らかに流れている。これは、第2付加物2により、左ウィング12bに当たる風圧抵抗が低減されていることを示している。
【0028】
図10及び
図12は、上部構造物10の左舷側の下側部分を上から見た図である。
図10には、第1付加物1及び第3付加物3が取り付けられておらず、
図12には、第1付加物1及び第3付加物3が取り付けられている。
図10と
図12を比較すると、
図12の方が、前方から流れてくる流線が外側(左舷側)に膨らんでいない。これは、第1付加物1及び第3付加物3により、上部構造物10の下側の風圧抵抗が低減されていることを示している。
【0029】
本実施形態によれば、風圧抵抗を低減するように形成された形状の付加物1~3を、上部構造物10において、本体部分11、ウィング12a,12b、及び、ウィング12a,12bを支える脚13a,13b,14a,14bに取り付けることで、船舶30の上部構造物10の風圧抵抗を低減することができる。
【0030】
なお、ここでは、付加物1~3は、後から取り付けられる構成として説明したが、付加物1~3が取り付けられる対象物(本体部分11、ウィング12a,12b又は脚13a,13b,14a,14b)が付加物1~3と一体形成されてもよいし、この対象物が付加物1~3が取り付けられた状態と同等の形状となるように形成されてもよい。
【0031】
また、第3付加物3は、設けられていなくてもよいし、前脚13a,13b又は後脚14a,14bのいずれか一方にのみ設けられてもよい。この場合においても、第1付加物1及び第2付加物2を設けることにより、上部構造物10の風圧抵抗を低減することができる。また、上部構造物10として、前脚13a,13b及び後脚14a,14bが設けられた構成について説明したが、後脚14a,14bが設けられなくてもよいし、脚が全く設けられなくてもよい。
【0032】
(第2実施形態)
図13は、本発明の第2実施形態に係る上部構造物10Aを船首側から見た斜視図である。
図14は、本実施形態に係る上部構造物10Aを船尾側から見た斜視図である。
【0033】
上部構造物10Aは、第1実施形態に係る上部構造物10において、第2付加物2及び第3付加物3をそれぞれ変形した第2付加物2A及び第3付加物3Aを設けたものである。その他の点は、第1実施形態と同様である。
【0034】
図15及び
図16を参照して、第2付加物2A及び第3付加物3Aのそれぞれの形状について説明する。
図15は、第2付加物2Aの形状を示す斜視図である。
図16は、第3付加物3Aの形状を示す斜視図である。
【0035】
第2付加物2Aは、
図5に示す第1実施形態に係る第2付加物2において、柱状の断面の二等辺三角形の2つの等しい辺に対応する2つの側面(平面)を互い異なる形状の2つの曲面に変えている。具体的には、これらの2つの曲面は、共に凹凸の無い滑らかな形状であるが、互いに傾斜の角度が異なる。ここで、曲面の傾斜の角度とは、この曲面を平面にした場合に、この平面と断面の底辺に対応する側面(平面)が成す角度である。例えば、第2付加物2Aは、柱状の高さが1000mm、断面の底辺の長さが2000mm、断面の底辺から2つの曲線(2つの曲面に対応する線)が合わさる頂点までの高さは995mmである。
【0036】
第3付加物3Aは、
図6に示す第1実施形態に係る第3付加物3において、柱状の曲面の形状を変えている。具体的には、曲面の頂点部分を境に、左右で曲面の形状が異なる。これらの2つの曲面は、共に凹凸の無い滑らかな形状であるが、互いに傾斜の角度が異なる。曲面の傾斜の角度については、上述した第2付加物2Aと同様である。例えば、第3付加物3Aは、柱状の高さが1000mm、断面の底辺の長さが850mm、断面の底辺から頂点部分までの高さが1000mmである。
【0037】
次に、第2付加物2A及び第3付加物3Aの取り付け方法について説明する。
図17は、第3付加物3Aが右前脚13a及び右後脚14aに取り付けられた状態を示す斜視図である。
図18は、第3付加物3Aが左前脚13b及び左後脚14bに取り付けられた状態を示す斜視図である。
図19は、第2付加物2Aが左ウィング12bに取り付けられた状態を示す斜視図である。なお、第1付加物1は、第1実施形態と同様に取り付けられる。
【0038】
第2付加物2Aは、各ウィング12a,12bに設けられる。第2付加物2Aは、曲面状の頂点部分が下側になるように取り付けられる。その他の点については、第2付加物2Aは、第1実施形態に係る第2付加物2と同様に取り付けられる。
【0039】
第3付加物3Aは、前脚13a,13bの前面、及び、後脚14a,14bの後面にそれぞれ設けられる。前脚13a,13bには、第3付加物3Aは、2つの曲面が合わさる頂点部分が船内側(本体部分11側)になるように取り付けられる。後脚14a,14bには、第3付加物3Aは、2つの曲面が合わさる頂点部分が船外側(本体部分11と反対側)になるように取り付けられる。その他の点については、第3付加物3Aは、第1実施形態に係る第3付加物3と同様に取り付けられる。
【0040】
図20及び
図21を参照して、第2付加物2A及び第3付加物3Aによる上部構造物10Aの風圧抵抗について説明する。
図20及び
図21は、
図9~
図12と同様に、上部構造物10Aに前方から風を当てる解析をした解析図である。図中の線は、風の流れを示す流線を表している。
図20は、左ウィング12bを左舷側から見た図である。
図21は、上部構造物10Aの左舷側の下側部分を上から見た図である。
【0041】
図20に示すように、第2付加物2Aに当たった流線が左ウィング12bの後方に滑らかに流れている。
図11と比較すると、第1実施形態に係る第2付加物2よりも、本実施形態に係る第2付加物2Aの方が風圧抵抗を低減していることを示している。
【0042】
図21に示すように、前方から流れてくる流線が外側に膨らまずに滑らかに後方に流れている。
図12と比較すると、第1実施形態に係る第3付加物3よりも、本実施形態に係る第3付加物3Aの方が風圧抵抗を低減していることを示している。
【0043】
本実施形態によれば、第1実施形態に係る第2付加物2及び第3付加物3の代わりに、第2付加物2A及び第3付加物3Aを設けることで、第1実施形態よりも、船舶30の上部構造物10Aの風圧抵抗を低減することができる。
【0044】
(第3実施形態)
図22は、本発明の第3実施形態に係る上部構造物10Bを船首側から見た斜視図である。
図23は、本実施形態に係る上部構造物10Bを船尾側から見た斜視図である。
【0045】
上部構造物10Bは、第2実施形態に係る上部構造物10Aにおいて、本体部分11の後方(船尾側)に面した後面の角部分に、第3付加物3Aを追加して設けたものである。その他の点は、第2実施形態と同様である。
【0046】
第3付加物3Aは、上部構造物10Bの下側部分の後面の外側に張り出す角部分、及び、上部構造物10Bの上側に設けられた構造物の後面の外側に張り出す角部分に取り付けられる。上部構造物10Bのその他の部分には、第2実施形態と同様に、付加物1,2A,3Aが取り付けられている。
【0047】
なお、上部構造物10Bに複数の構造物が含まれる場合、必ずしも、全ての構造物の後面に、第3付加物3Aが取り付けられなくてもよい。また、上部構造物10Bの1つの構造物に複数の後面がある場合、これらの後面の外側に張り出す角部分に第3付加物3Aが設けられるが、これらの角部分の一部に第3付加物3Aが設けられなくてもよい。
【0048】
次に、本体部分11の後面の角部分への第3付加物3Aの取り付け方法について説明する。
図24は、第3付加物3Aが垂直方向に延びる角部分に取り付けられた状態を示す斜視図である。
図25は、第3付加物3Aが水平方向に延びる角部分に取り付けられた状態を示す斜視図である。
【0049】
垂直方向に延びる角部分には、第3付加物3Aは、2つの曲面が合わさる頂点部分が垂直方向に延びる向きで、頂点部分が船外側(右舷側の角部分であれば、右舷側、左舷側の角部分であれば、左舷側)になるように取り付けられる。
【0050】
水平方向に延びる角部分には、第3付加物3Aは、2つの曲面が合わさる頂点部分が水平方向に延びる向きで、頂点部分が上側になるように取り付けられる。
【0051】
本実施形態によれば、上部構造物10Bを、第2実施形態に係る上部構造物10Aの後面の角部分に第3付加物3Aを追加して設けた構成とすることで、第2の実施形態よりも、上部構造物10Bの風圧抵抗を低減することができる。
【0052】
なお、第2の実施形態に係る第3付加物3Aの代わりに、第1の実施形態に係る第3付加物3を、第2実施形態に係る上部構造物10Aに追加して設けてもよいし、その他の形状の付加物を追加して設けてもよい。また、各実施形態において、任意の形状の付加物を追加して設けて、風圧抵抗を低減してもよい。
【0053】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、構成要素を削除、付加又は変更等をしてもよい。また、複数の実施形態について構成要素を組合せ又は交換等をすることで、新たな実施形態としてもよい。このような実施形態が上述した実施形態と直接的に異なるものであっても、本発明と同様の趣旨のものは、本発明の実施形態として説明したものとして、その説明を省略している。
【符号の説明】
【0054】
1~3…付加物、10…上部構造物、11…本体部分、12a,12b…ウィング、13a,13b…前脚、14a,14b…後脚、20…船体、30…船舶。