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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146793
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20231004BHJP
   H01F 1/26 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F1/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054174
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079577
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 全啓
(74)【代理人】
【識別番号】100167966
【弁理士】
【氏名又は名称】扇谷 一
(72)【発明者】
【氏名】石田 啓一
【テーマコード(参考)】
5E041
5E070
【Fターム(参考)】
5E041AA02
5E041AA04
5E041AA07
5E041BB05
5E070AB07
5E070BB03
5E070EA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高い透磁率を得るとともに、良好な高周波特性を備えるコイル部品を提供する。
【解決手段】絶縁膜により被覆された導線が巻回されて形成されるコイル導体と、金属磁性体粒子と樹脂とを含有する磁性体部とを備えた素体と、コイル導体の引出部の素体の表面に露出する露出面と接続され素体の表面に配置された外部電極と、を備えるコイル部品であって、金属磁性体粒子は、金属磁性体粒子の粒度分布に存在する少なくとも1つのボトム以上の第1の金属磁性体粒子40と、ボトム未満を第2の金属磁性体粒子42とする。第1の金属磁性体粒子は、断面において所定の条件を満たす凹部40aを有する粒子を含み、第1の金属磁性体粒子の凹部の内部に、少なくとも1つの第2の金属磁性体粒子の少なくとも一部が配置される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導線が巻回されて形成されるコイル導体と、
金属磁性体粒子と樹脂とを含有する磁性体部と、
を備えた素体と、
前記コイル導体の引出部の前記素体の表面に露出する露出面と電気的に接続されて前記素体の表面に配置された外部電極と、
を備えるコイル部品であって、
前記金属磁性体粒子は、第1の金属磁性体粒子と、第2の金属磁性体粒子と、を含み、
前記磁性体部の断面における断面画像から得られた円相当径に基づいて算出された金属磁性体粒子の粒度分布が少なくとも2つのピークと少なくとも1つのボトムを有し、最小頻度を有する前記ボトム以上を前記第1の金属磁性体粒子とし、最小頻度を有する前記ボトム未満を前記第2の金属磁性体粒子とし、
前記第1の金属磁性体粒子は、断面において所定の条件を満たす凹部を有する粒子を含み、
前記所定の条件は、前記凹部の開口部における先端間の最小距離をL01とし、前記第1の金属磁性体粒子の断面の前記凹部内における弦に相当する線分において、前記開口部の先端間の最小距離となる線分に平行な線分のうち最長距離をL02としたとき、L02>L01であり、
前記第1の金属磁性体粒子の前記凹部の内部に、少なくとも1つの前記第2の金属磁性体粒子の少なくとも一部が配置される、コイル部品。
【請求項2】
前記第1の金属磁性体粒子の前記凹部の内部に、少なくとも1つの前記第2の金属磁性体粒子の全体が配置される、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記磁性体部中の断面において、前記凹部を有する前記第1の金属磁性体粒子のうち、前記第1の金属磁性体粒子の前記凹部の内部に少なくとも1つの前記第2の金属磁性体粒子の少なくとも一部が配置されている前記第1の金属磁性体粒子の個数の割合は50%以上である、請求項1ないし請求項2のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項4】
前記磁性体部中の断面において、前記第1の金属磁性体粒子の前記凹部の内部に少なくとも1つの前記第2の金属磁性体粒子の全体が配置される場合において、前記凹部の内部における前記第2の金属磁性体粒子の含有率は平均40%以上である、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項5】
前記磁性体部中の断面において、前記第1の金属磁性体粒子の前記凹部の内部に、少なくとも1つの他の前記第1の金属磁性体粒子の少なくとも一部と前記第2の金属磁性体粒子の少なくとも一部とが配置しており、前記第1の金属磁性体粒子の前記凹部中の前記他の第1の金属磁性体粒子および前記第2の金属磁性体粒子の含有率は平均50%以上である、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第1の金属磁性体粒子の前記粒度分布における最大頻度のピークが、10μm以上50μm以下である、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項7】
前記第2の金属磁性体粒子の前記粒度分布における最大頻度のピークが0.2μm以上10μm以下である、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項8】
前記第1の金属磁性体粒子と前記第2の金属磁性体粒子とが同一組成である、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項9】
前記第1の金属磁性体粒子の外表面に絶縁被膜が形成されており、前記第1の金属磁性体粒子の前記凹部の内部の表面の少なくとも一部に絶縁被膜が形成されてない、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項10】
前記磁性体部の断面において、前記樹脂の含有率について面積換算としたとき、5%以上25%以下である、請求項1ないし請求項9のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項11】
前記第1の金属磁性体粒子および前記第2の金属磁性体粒子の合計含有率を面積換算で100%としたとき、前記第1の金属磁性体粒子の含有率が40%以上85%以下であり、前記第2の金属磁性体粒子の含有率が15%以上60%以下である、請求項1ないし請求項10のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項12】
前記磁性体部の断面において、前記凹部を有する前記第1の金属磁性体粒子の外周囲長をL1とし、円相当の面積に換算した円の周囲長をL2としたとき、L1/L2の平均値は5.0以下である、請求項1ないし請求項11のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項13】
前記磁性体部の断面において、前記第1の金属磁性体粒子の前記凹部の前記開口部における先端間の最小距離をL01、前記第1の金属磁性体粒子の前記凹部の前記開口部の内側を除いた周囲長をLcとしたとき、L01/(Lc+L01)の平均値は0.03以上0.4以下である、請求項1ないし請求項12のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項14】
前記磁性体部の断面において、前記第1の金属磁性体粒子の前記凹部の前記開口部における先端間の最小距離L01の平均値は、前記第2の金属磁性体粒子の粒度分布における最大頻度のピークが位置する粒径をd2としたとき、L01>d2を満たす、請求項1ないし請求項13のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項15】
前記磁性体部の断面において、前記第1の金属磁性体粒子の前記凹部の前記開口部における先端間の最小距離となる線分の内側の領域の面積をS0、前記凹部を有する前記第1の金属磁性体粒子の断面積をScとしたとき、S0/(Sc+S0)の平均値は0.05以上0.8以下である、請求項1ないし請求項14のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項16】
前記磁性体部は、さらに無機酸化物粒子を含有する、請求項1ないし請求項15のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項17】
前記磁性体部中の断面において、前記第1の金属磁性体粒子の前記凹部に、少なくとも1つの前記第2の金属磁性体粒子の少なくとも一部と、少なくとも1つの前記無機酸化物粒子の少なくとも一部が同時に配置される、請求項16に記載のコイル部品。
【請求項18】
前記無機酸化物粒子はガラスである、請求項16または請求項17に記載のコイル部品。
【請求項19】
前記無機酸化物粒子はフェライトである、請求項16または請求項17に記載のコイル部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコイル部品(リアクトル)として、その本体部は、金属磁性体粒子と樹脂とを混ぜた複合材料により構成される磁性コアとコイルにより構成される。そして、磁性コアの複合材料は、軟磁性複合材料により製造される。
【0003】
従来技術の軟磁性複合材料は、透磁率が低く、それを用いて作製したリアクトルのインダクタンスは低いという欠点があった。また、従来技術では、金属磁性体粒子と樹脂とを先に混合してから、指定の形に形成する方法であることから、金属磁性体粒子に対する樹脂の使用量が多くなり、得られた軟磁性複合材料の透磁率が低下し、密度低下で、直流重畳特性が劣化する欠点があった。
【0004】
そこで、円形度が高く、平均粒子径の大きい第1粒子に対してそれよりも平均粒子径の小さい第2粒子を加えることで、粒子間の隙間を埋め、得られた軟磁性複合材料の密度を上げることができるとした技術が提案されている。これにより、軟磁性複合材料によって形成された磁性コアを高透磁率とすることができ、その磁性コアを用いたリアクトルのインダクタンスを向上させることが可能になる(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-39331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、引用文献1に開示されるリアクトルの磁性コアに用いられる軟磁性複合材料は、円形度の高い粒径、例えば、100μm~200μmの粒子径を使用していることから、透磁率が高くなる反面、高周波領域での損失が大きくなる問題が懸念される。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、高い透磁率を得るとともに、良好な高周波特性を備えるコイル部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明にかかるコイル部品は、導線が巻回されて形成されるコイル導体と、金属磁性体粒子と樹脂とを含有する磁性体部と、を備えた素体と、コイル導体の引出部の素体の表面に露出する露出面と電気的に接続されて素体の表面に配置された外部電極と、を備えるコイル部品であって、金属磁性体粒子は、第1の金属磁性体粒子と、第2の金属磁性体粒子と、を含み、磁性体部の断面における断面画像から得られた円相当径に基づいて算出された金属磁性体粒子の粒度分布が少なくとも2つのピークと少なくとも1つのボトムを有し、最小頻度を有する前記ボトム以上を第1の金属磁性体粒子とし、最小頻度を有するボトム未満を第2の金属磁性体粒子とし、第1の金属磁性体粒子は、断面において所定の条件を満たす凹部を有する粒子を含み、所定の条件は、凹部の開口部における先端間の最小距離をL01とし、第1の金属磁性体粒子の断面の凹部内における弦に相当する線分において、開口部の先端間の最小距離となる線分に平行な線分のうち最長距離をL02としたとき、L02>L01であり、第1の金属磁性体粒子の凹部の内部に、少なくとも1つの第2の金属磁性体粒子の少なくとも一部が配置される、コイル部品である。
【0009】
この発明にかかるコイル部品では、磁性体部の断面における断面画像から得られた円相当径に基づいて算出された金属磁性体粒子の平均粒子径の粒度分布が少なくとも2つのピークと少なくとも1つのボトムを有し、最小頻度を有するボトム以上を第1の金属磁性体粒子とし、最小頻度を有するボトム未満を第2の金属磁性体粒子とした金属磁性体粒子を含んでおり、第1の金属磁性体粒子は、断面において所定の条件を満たす凹部を有している粒子を含んでおり、凹部を有する第1の金属磁性体粒子の凹部の内部に、少なくとも1つの第2の金属磁性体粒子の少なくとも一部が配置されるので、磁性体部における金属磁性体粒子の充填率が高くなることから、コイル部品の透磁率を高くすることができる。
また、この発明にかかるコイル部品は、金属磁性体粒子と樹脂とを含有する磁性体部において、断面において所定の条件を満たす凹部を有する第1の金属磁性体粒子を含んでおり、所定の条件が、凹部の開口部における先端間の最小距離をL01とし、第1の金属磁性体粒子の断面の凹部内における弦に相当する線分において、開口部の先端間の最小距離となる線分に平行な線分のうち最長距離をL02としたとき、L02>L01であるので、磁性体部の体積に対する第1の金属磁性体粒子の表面積を大きくすることができることから、高周波領域における渦電流損が小さくなり、コイル部品として、より高周波でも使用することができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、高い透磁率を得るとともに、良好な高周波特性を備えるコイル部品を提供することができる。
【0011】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための形態の説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明にかかるコイル部品の実施の形態を模式的に示す外観斜視図である。
図2図1に示すコイル部品におけるコイル導体が埋設された磁性体部の透過斜視図である。
図3】この発明にかかるコイル部品を示す図1の線III-III断面図である。
図4】この発明にかかるコイル部品を示す図1の線IV-IV断面図である。
図5】磁性体部中の金属磁性体粒子における円相当径の粒度分布を示した図である。
図6図3の破線で示す領域R1の一部における各金属磁性体粒子の充填状態を示す図である。
図7】第1の金属磁性体粒子の模式断面図である。
図8】磁性体部の断面において、第1の金属磁性体粒子の凹部の内部に、少なくとも1つの第2の金属磁性体粒子の一部または全体が配置される状態を示した図である。
図9】磁性体部の断面において、第1の金属磁性体粒子の凹部の内部に、複数の第2の金属磁性体粒子の一部または全体が配置される状態を示した図である。
図10】磁性体部の断面において、第1の金属磁性体粒子の凹部の内部に、少なくとも1つの他の第1の金属磁性体粒子の少なくとも一部と第2の金属磁性体粒子の少なくとも一部または全体とが配置される状態を示した図である。
図11】磁性体部の断面において、第1の金属磁性体粒子の凹部の開口部における先端間の最小距離L01と第2の金属磁性体粒子の粒度分布における最大頻度のピークが位置する粒径を備える第2の金属磁性体粒子d2とを対比した図である。
図12】磁性体部の断面において、三日月形状である第1の金属磁性体粒子の外周囲長L1と、第1の金属磁性体粒子の面積に相当する面積に換算した円の周囲長L2とを示した図である。
図13】磁性体部の断面において、第1の金属磁性体粒子の凹部の開口部における先端間の最小距離L01と、第1の金属磁性体粒子の凹部の開口部の内側を除いた周囲長Lcとを示した図である。
図14】磁性体部の断面において、第1の金属磁性体粒子の開口部における先端の最小距離となる線分の内側の領域R0の面積S0と、第1の金属磁性体粒子の断面積Scとを示した図である。
図15】磁性体部の断面において、第1の金属磁性体粒子の凹部の内部に、少なくとも1つの第2の金属磁性体粒子の少なくとも一部と、少なくとも1つの無機酸化物粒子の少なくとも一部または全部が同時に配置される状態を示した図である。
図16】第1の金属磁性体粒子に対して絶縁被膜が形成された状態を示す図である。
図17】素体を製造する際における第1の成形体および第2の成形体にコイル導体を組み込む状態を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.コイル部品
以下、本発明の実施の形態にかかるコイル部品について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、この発明にかかるコイル部品の実施の形態を模式的に示す外観斜視図である。図2は、図1に示すコイル部品におけるコイル導体が埋設された磁性体部の透過斜視図である。図3は、この発明にかかるコイル部品を示す図1の線III-III断面図である。図4は、この発明にかかるコイル部品を示す図1の線IV-IV断面図である。
【0015】
コイル部品10は、直方体状の素体12と外部電極30とを有する。
【0016】
(a)素体
素体12は、磁性体部14と、磁性体部14に埋設されたコイル導体16とを有する。素体12は、外観形状が略直方体であり、加圧方向xに相対する第1の主面12aおよび第2の主面12bと、加圧方向xに直交する幅方向yに相対する第1の側面12cおよび第2の側面12dと、加圧方向xおよび幅方向yに直交する長さ方向zに相対する第1の端面12eおよび第2の端面12fとを有する。素体12の寸法は、特に限定されない。
【0017】
(b)磁性体部
磁性体部14は、コイル導体16を覆う。磁性体部14の外観形状は、素体12の外観形状と略一致しており、略直方体形状である。磁性体部14は、後述する第1の成形体50および第2の成形体60が金型内で、加温、加圧されて形成される。
磁性体部14は、複数の金属磁性体粒子および樹脂を含む。
【0018】
樹脂は、特に限定されないが、例えば、熱硬化性樹脂が挙げられ、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂などの有機材料が挙げられる。樹脂材料は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
【0019】
金属磁性体粒子は、第1の金属磁性体粒子40および第2の金属磁性体粒子42を含む。
【0020】
第1の金属磁性体粒子40および第2の金属磁性体粒子42としては、特に限定されないが、例えば、鉄、コバルト、もしくはニッケル、またはこれらの1種または2種以上を含む合金が挙げられる。好ましくは、第1の金属磁性体粒子および第2の金属磁性体粒子は、鉄または鉄合金である。鉄合金としては、特に限定されないが、例えば、Fe-Si、Fe-Si-Cr、Fe-Ni、Fe-Si-Al等が挙げられる。第1の金属磁性体粒子および第2の金属磁性体粒子は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
【0021】
第1の金属磁性体粒子40および第2の金属磁性体粒子42の各金属磁性体粒子は、以下のように定義される。
【0022】
まず、磁性体部14中の金属磁性体粒子の平均粒子径であるメディアン径(D50)が、粒子の断面像より計算される。
すなわち、まず、後述する円形度測定の手法でコイル部品10を研磨、FIB、断面ミリングなどにて断面作製し、金属磁性体粒子の断面を露出させ、露出面を形成する。断面を露出させて露出面を形成した後、SEMにて500倍~5000倍で露出面を観察する。画像解析ソフトWinROOF2018を用い、50個以上の粒子について円相当径を算出する。円相当径は、それぞれの金属磁性体粒子の断面積と同じ面積の円を考え、その円の直径を円相当径とする。そして、その円相当径が、各金属磁性体粒子の平均粒子径であるメディアン径(D50)として算出される。円相当径の粒度分布は、図5に示すように、少なくとも2つのピークと、それらのピーク間に1つのボトムを有する。ボトムは2つのピークの間にあり、頻度が極小値を取る点である。
【0023】
そして、最小頻度を有するボトム以上の金属磁性体粒子を第1の金属磁性体粒子40とし、最小頻度を持つボトム未満を第2の金属磁性体粒子42とする。粒度分布において、ピークが2つしかない場合、ピーク間のボトムが最小頻度を有するボトムとなる。
【0024】
第1の金属磁性体粒子40の形状は球状である。また、第1の金属磁性体粒子40は、その内部に球状の所定の条件を満たす凹部40aを有するものを含む。凹部40aを有する第1の金属磁性体粒子40は、図6および図7に示すように、凹部40aを有する第1の金属磁性体粒子40の断面形状は、三日月状である。より詳細には、第1の金属磁性体粒子40の断面において、凹部40aの開口部40bにおける先端間の最小距離をL01をとし、第1の金属磁性体粒子40の断面の凹部40a内における弦に相当する線分において、開口部40bの先端間の最小距離となる線分に平行な線分のうち最長距離をL02としたとき、L02>L01を満たす。
第1の金属磁性体粒子40が、このような凹部40aを有することで、第1の金属磁性体粒子40が球状であるときと比較して、体積に対する第1の金属磁性体粒子40の表面積を大きくすることができることから、高周波領域における渦電流損が小さくなり、コイル部品10として、より高周波でも使用することができる。
第1の金属磁性体粒子40の粒度分布における最大頻度のピークは、10μm以上50μm以下であることが好ましい。また、第1の金属磁性体粒子40の最大頻度のピークが10μm以上であると、コイル部品10の透磁率向上させることができる。一方、第1の金属磁性体粒子40の最大頻度のピークが50μmを超えると、高周波領域における渦電流損が大きくなり、高周波領域での特性が低下する。
【0025】
図6に示すように、第2の金属磁性体粒子42の形状は球状であり、断面形状は、円形である。
また、第2の金属磁性体粒子42の粒度分布における最大頻度のピークは、0.2μm以上10μm以下であることが好ましい。より好ましくは8μm以下であり、さらに好ましくは、5μm以下である。第2の金属磁性体粒子42の粒径を他の金属磁性体粒子の平均粒子径より小さくすることで、磁性体部14における金属磁性体粒子の充填率が高くなり、磁性体部14の透磁率を高く、また直流重畳特性を良くすることができる。第2の金属磁性体粒子42の粒度分布における最大頻度のピークが10μm以下であると、磁性体部14において、金属磁性体粒子を高充填化させることができる。第2の金属磁性体粒子42の粒度分布における最大頻度のピークが0.2μm未満であると、成形時の流動性が低下し、高充填化が困難となる。
【0026】
第1の金属磁性体粒子40の粒度分布における最大頻度のピークは、第2の金属磁性体粒子42の粒度分布における最大頻度のピークより大きいことが好ましい。粒径の異なる粒子を含むことで、充填率が高くなり、磁性体部14の透磁率を高く、また直流重畳特性を良くすることができる。
【0027】
凹部40aを有する第1の金属磁性体粒子40の平均円形度は、0.89以下が好ましい。
【0028】
なお、各金属磁性体粒子の円形度の測定は、以下のようにして算出される。
すなわち、各金属磁性体粒子の断面において、金属磁性体粒子の面積をS、周囲長をLとしたとき、4πS/L2で定義される。金属磁性体粒子の断面は、コイル部品10の素体12を研磨、FIB(収束イオンビーム:Focused Ion Beam)、断面イオンミリング(CP:Cross-section Polisher)などにて露出させ、露出面を形成し、その露出面における金属磁性体粒子の断面を言う。素体12の断面を露出させて露出面を形成した後、SEM(走査型電子顕微鏡:Scanning Electron Microscope)にて500倍~5000倍で各金属磁性体粒子を観察する。画像解析ソフトWinROOF2018(三谷商事株式会社)を用い、50個以上の粒子について面積Sおよび周囲長Lを測定し、平均円形度を計算する。
【0029】
第1の金属磁性体粒子40および第2の金属磁性体粒子42の合計含有率を面積換算で100%としたとき、第1の金属磁性体粒子40の含有率40%以上85%以下であることが好ましい。第1の金属磁性体粒子40の含有率が70%以上85%以下であると、コイル部品10の実効透磁率を高くできる。
【0030】
第1の金属磁性体粒子40および第2の金属磁性体粒子42の合計含有率を面積換算で100%としたとき、第2の金属磁性体粒子42の含有率が15%以上60%以下であることが好ましい。第2の金属磁性体粒子42の含有率が15%以上30%以下であると、コイル部品10の実効透磁率を高くできる。
【0031】
ここで、第1の金属磁性体粒子40および第2の金属磁性体粒子42の各金属磁性体粒子の含有率は、以下に説明するようにして算出される。
すなわち、磁性体部14の断面を露出させ、例えば、その断面における任意の500μm□の領域において、それぞれの金属磁性体粒子の断面積の総和(第1の金属磁性体粒子40の断面積S1の総和をSa、第2の金属磁性体粒子42の断面積S2の総和をSb)から、それぞれの金属磁性体粒子の含有率(第1の金属磁性体粒子の含有率=Sa/(Sa+Sb)、第2の金属磁性体粒子の含有率=Sb/(Sa+Sb)を計算する。
【0032】
第1の金属磁性体粒子40と第2の金属磁性体粒子42とは同一組成であってもよい。同一組成とすることで、磁性体部14の内部の磁束の流れが均等になり、重畳特性が高くなる。
【0033】
なお、金属磁性体粒子の組成は、以下のようにして分析することができる。
すなわち、金属磁性体粒子の組成は、EDX(エネルギー分散型X線分析:Energy Dispersive X-ray spectroscopy)やXPS(X線光電子分光法:X-ray Photoelectron Spectroscopy),TOF-SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法:Time of Flight Secondary Ion Mass Spectroscopy)のような組成分析装置により分析することができる。
【0034】
磁性体部14において、樹脂の含有率(面積換算)は、5%以上25%以下であることが好ましい。これにより、磁性体部14に含まれる各金属磁性体粒子の面積率が高くなり、磁性体部14の透磁率を高くすることができる。なお、樹脂の含有率が5%以下であると、成形時に流動性を確保できず高充填化が難しい。
【0035】
ここで、磁性体部14において、樹脂の含有率は、以下に説明するようにして算出される。
すなわち、磁性体部14の断面を露出させ、例えば、その断面における任意の500μm□の領域において、その任意の500μm□の領域の面積Stに対する、樹脂の面積として算出される。
【0036】
磁性体部14の断面において、図8(a)や図8(b)に示すように、第1の金属磁性体粒子40の凹部40aの内部に、少なくとも1つの第2の金属磁性体粒子42の少なくとも一部が配置される。第1の金属磁性体粒子40の凹部40aの内部に第2の金属磁性体粒子42が入り込むので、凹部40aによる磁性体部14の透磁率の低下を抑制できる。
【0037】
磁性体部14の断面において、図8(c)や図8(d)に示すように、第1の金属磁性体粒子40の凹部40aの内部に、少なくとも1つの第2の金属磁性体粒子42の全体が配置されることが好ましい。第1の金属磁性体粒子40の凹部40aの内部に第2の金属磁性体粒子42が入り込むので、磁性体部14の透磁率を高くすることができる。
【0038】
また、磁性体部14の断面において、凹部40aを有する第1の金属磁性体粒子40のうち、第1の金属磁性体粒子40の凹部40aの内部に少なくとも1つの第2の金属磁性体粒子42の少なくとも一部が配置されている第1の金属磁性体粒子40の個数の割合は50%以上である。第1の金属磁性体粒子40の凹部40aに、第2の金属磁性体粒子42が配置される第1の金属磁性体粒子40を含む割合が大きいことから、磁性体部14の透磁率を高くすることができる。
【0039】
磁性体部14の断面において、図9に示すように、第1の金属磁性体粒子40の凹部40aの内部に、少なくとも1つの第2の金属磁性体粒子42の全体が入っている場合、凹部40aの内部における第2の金属磁性体粒子42の含有率は平均40%以上であることが好ましい。第1の金属磁性体粒子40の凹部40aの内部に第2の金属磁性体粒子42が入り込むので、磁性体部14の透磁率を高くすることができる。
なお、第1の金属磁性体粒子40の凹部40aの内部における第2の金属磁性体粒子42の含有率は、図9に示すように、開口部40bにおいて、第1の金属磁性体粒子40の開口部40bにおける先端間の最小距離となる線分の内側の領域R0の面積に対する領域R0内に位置する第2の金属磁性体粒子42の面積の総和の割合として算出される。
【0040】
磁性体部14の断面において、図10に示すように、第1の金属磁性体粒子401の凹部40aの内部に、少なくとも1つの他の第1の金属磁性体粒子402の少なくとも一部と、第2の金属磁性体粒子42の少なくとも一部とが入っており、第1の金属磁性体粒子401の凹部40aにおける他の第1の金属磁性体粒子402および第2の金属磁性体粒子42の含有率は平均50%以上であることが好ましい。第1の金属磁性体粒子40の凹部40aに他の第1の金属磁性体粒子40および第2の金属磁性体粒子42が入り込むので、磁性体部14の透磁率を高くすることができる。
なお、第1の金属磁性体粒子401の凹部40aの内部における他の第1の金属磁性体粒子402および第2の金属磁性体粒子42の含有率は、図10に示すように、開口部40bにおいて、第1の金属磁性体粒子401の開口部40bの先端間の最小距離となる線分の内側の領域R0の面積に対する領域R0内に位置する他の第1の金属磁性体粒子402および第2の金属磁性体粒子42の面積の総和の割合として算出される。
【0041】
磁性体部14の断面において、図11に示すように、第1の金属磁性体粒子40の凹部40aの開口部40bにおける先端間の最小距離L01の平均値は、第2の金属磁性体粒子42の粒度分布における最大頻度のピークが位置する粒径d2としたとき、L01>d2を満たすことが好ましい。第1の金属磁性体粒子40の開口部40bが、第2の金属磁性体粒子42の粒度分布における最大頻度のピークが位置する径よりも大きいため、凹部40aに、第2の金属磁性体粒子42が入りやすくなることから、磁性体部14の透磁率を高くすることができる。
【0042】
第1の金属磁性体粒子40について、図12に示すように、磁性体部14の断面において、三日月形状である凹部40aを有する第1の金属磁性体粒子40の外周囲長をL1とし、第1の金属磁性体粒子40の面積に相当する面積に換算した円の周囲長をL2としたとき、L1/L2の平均値は5.0以下であることが好ましい。L1/L2の平均値が5.0以下であると、高周波領域における渦電流損が小さくなり、コイル部品10として、より高周波でも使用することができる。なお、L1/L2の平均値が5.0を超えると第1の金属磁性体粒子40の凹部40aが大きくなり、磁性体部14を構成する後述される第1の成形体50および第2の成形体60の熱成形時に流動させることが困難となる。そのため、磁性体部14における金属磁性体粒子の充填率が低下し、その結果、コイル部品10の透磁率や直流重畳特性が低下する。また、L1/L2の平均値は1.2以上であることがより好ましい。
【0043】
ここで、第1の金属磁性体粒子40の周囲長は、磁性体部14の断面より測定する。
すなわち、金属磁性体粒子の断面は、コイル部品10の素体12の中心を含み、素体12の長さ方向zと直交する成形体断面を断面イオンミリング(その他、研磨、FIB加工など)にて露出させ、露出面を形成し、その露出面における金属磁性体粒子の断面をいう。素体12の断面を露出させて露出面を形成した後、SEMにて500倍~5000倍で粒子を観察する。画像解析ソフトWinROOF2018を用い、L1およびL2を算出する。そして、50個以上の粒子でL1/L2を算出し、その平均値を求めることにより算出される。
【0044】
第1の金属磁性体粒子40について、図13に示すように、磁性体部14の断面において、第1の金属磁性体粒子40の凹部40aの開口部40bにおける先端間の最小距離をL01とし、第1の金属磁性体粒子40の凹部40aの開口部40bの内側を除いた周囲長をLcとしたとき、L01/(Lc+L01)の平均値は0.03以上0.4以下であることが好ましい。
01/(Lc+L01)の平均値が0.03以上であれば、凹部40aの内部に第2の金属磁性体粒子42が入りやすくなることから、磁性体部14内における金属磁性体粒子の高充填化により、コイル部品10の透磁率を高く、また直流重畳特性を良くすることができる。一方、L01/(Lc+L01)の平均値が0.4を超えると、第1の金属磁性体粒子40が流動しづらくなり、磁性体部14内における金属磁性体粒子の充填率が低くなる。
【0045】
なお、L01、Lcは、コイル部品10の素体12に対する断面像より測定する。
ここで第1の金属磁性体粒子40のL01およびLcは、以下の手順により算出される。
金属磁性体粒子の断面は、コイル部品10の素体12の中心を含み、素体12の長さ方向zと直交する素体12の断面を断面イオンミリング(その他、研磨、FIB加工、など)にて露出させ、露出面を形成し、その露出面における金属磁性体粒子の断面をいう。素体12の断面を露出させて露出面を形成した後、SEMにて500倍~5000倍で粒子を観察する。画像解析ソフトWinROOF2018を用い、L01およびLcを算出する。L01は第1の金属磁性体粒子40の開口部40bの先端の最短距離であり、Lcは第1の金属磁性体粒子40の開口部40bの内側を除いた周囲長である。そして、10個以上の粒子でL01/(Lc+L01)を算出し、その平均値を求めることにより算出される。
【0046】
第1の金属磁性体粒子40について、図14に示すように、磁性体部14の断面において、第1の金属磁性体粒子40の開口部40bにおける先端間の最小距離となる線分の内側の領域R0の面積をS0、凹部40aを有する第1の金属磁性体粒子40の断面積をScとしたとき、S0/(Sc+S0)の平均値は0.05以上0.8以下であることが好ましい。
0/(Sc+S0)が0.05以上であると第1の金属磁性体粒子40の凹部40aに第2の金属磁性体粒子42が入り込みやすくなり、コイル部品10の透磁率を高くすることができる。また、S0/(Sc+S0)が0.8を超えると、磁性体部14を構成する後述される第1の成形体50および第2の成形体60の成形時に第1の金属磁性体粒子40が変形しやすくなり、磁性体部14における金属磁性体粒子の高充填化が難しくなる。
【0047】
なお、S0、Scは、磁性体部14の断面像より測定する。
ここで、第1の金属磁性体粒子40のS0およびScは、以下の手順により算出可能である。
金属磁性体粒子の断面は、コイル部品10の素体12の中心を含み、素体12の長さ方向zと直交する素体12の断面を断面イオンミリング(その他、研磨、FIB加工、など)にて露出させ、露出面を形成し、その露出面における金属磁性体粒子の断面をいう。素体12の断面を露出させて露出面を形成した後、SEMにて500倍~5000倍で粒子を観察する。画像解析ソフトWinROOF2018を用い、SoおよびScを算出する。Soは第1の金属磁性体粒子40の開口部40bの先端の最短距離を結ぶ線分の内側の凹部40aの領域R0の面積であり、Scは第1の金属磁性体粒子40の断面積である。そして、50個以上の粒子でS0/(Sc+S0)を算出し、その平均値を求めることにより算出される。
【0048】
磁性体部14は、さらに無機酸化物粒子44を含有することが好ましい。
無機酸化物粒子44は、例えば、シリカフィラー、フェライト、ガラスである。
無機酸化物粒子44は金属磁性体粒子と比較して電気抵抗率が高いことから、磁性体部14が無機酸化物粒子44を含有すれば、コイル部品10の耐圧を向上させることができる。
無機酸化物粒子44はガラスもしくは非磁性フェライトであることが好ましい。ガラスもしくは非磁性フェライトは磁気抵抗が高いことから、コイル部品10の重畳特性が高くすることができる。
また、無機酸化物粒子44は磁性フェライトであることが好ましい。磁性フェライトは透磁率が高いことから、コイル部品10の透磁率をより高くすることができる。
【0049】
第1の金属磁性体粒子40について、図15(a)や図15(b)に示すように、磁性体部14の断面において、第1の金属磁性体粒子40の凹部40aの内部に、少なくとも1つの第2の金属磁性体粒子42の少なくとも一部と、少なくとも1つの無機酸化物粒子44の少なくとも一部とが同時に配置されることが好ましい。
【0050】
第1の金属磁性体粒子40について、図15(c)や図15(d)に示すように、磁性体部14の断面において、第1の金属磁性体粒子40の凹部40aに、少なくとも1つの第2の金属磁性体粒子42の少なくとも一部と、少なくとも1つの無機酸化物粒子44の全体とが同時に入っていることがより好ましい。
【0051】
第1の金属磁性体粒子40および第2の金属磁性体粒子42の表面は、絶縁被膜により覆われていてもよい。各金属磁性体粒子の表面を絶縁被膜により覆うことにより、磁性体部14の内部の抵抗を高くすることができる。また、金属磁性体粒子の表面を絶縁被膜により絶縁性が確保されるので、コイル導体16と外部電極30とのショート不良を抑制することができる。
【0052】
なお、図16に示すように、第1の金属磁性体粒子40の外表面に絶縁被膜46が形成されており、第1の金属磁性体粒子40の凹部40aの内部の表面の少なくとも一部に絶縁被膜46が形成されてないことが好ましい。なお、凹部40aの内側の全てに絶縁被膜46が形成されてないことがより好ましい。第1の金属磁性体粒子40の凹部40a内側に絶縁被膜46がないため、磁性体面積の割合が高くなることから、磁性体部14の実効透磁率を高くすることができる。
【0053】
絶縁被膜の材料は、ケイ素の酸化物、リン酸系ガラス、ビスマス系ガラスなどが挙げられる。
【0054】
絶縁被膜の厚みは、特に限定されないが、好ましくは5nm以上500nm以下、より好ましくは5nm以上100nm以下、さらに好ましくは10nm以上100nm以下であり得る。絶縁被膜の厚みをより大きくすることにより、磁性体部14の耐圧性の向上や直流重畳特性の向上が見込める。また、絶縁被膜の厚みをより小さくすることにより、磁性体部14における金属磁性体粒子の量をより多くすることができ、磁性体部14の透磁率が向上する。
【0055】
(c)コイル導体
コイル導体16は、導電性材料を含む導線をコイル状に巻回して形成される巻回部18と、巻回部18の一方側に引き出される第1の引出部22aと巻回部18の他方側に引き出される第2の引出部22bとを有する。巻回部18の中心部には中空領域20が形成される。
巻回部18は、2段に巻回されて形成されている。コイル導体16は、平角導線をα巻き形状に巻回して形成されている。
第1の引出部22aは、素体12の第1の端面12eから露出して第1の露出部24aを形成し、第2の引出部22bは、素体12の第2の端面12fから露出して第2の露出部24bを形成する。第1の露出部24aにおいて、第1の引出部22aの露出面は、第1の引出部22aの延伸方向に対して交差するように形成される。また、第2の露出部24bにおいて、第2の引出部22bの露出面は、第2の引出部22bの延伸方向に対して交差するように形成される。
【0056】
コイル導体16は、金属線、ワイヤなどの導線により構成されている。コイル導体16の導電性材料としては、特に限定されないが、例えば、Ag、Au、Cu、Ni、Snまたはそれらの合金からなる金属成分である。好ましくは、導電性材料として銅が挙げられる。導電性材料は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
【0057】
コイル導体16を構成する導線の表面には、絶縁性物質により被覆されて絶縁膜が形成される。コイル導体16を構成する導線を絶縁性物質により被覆することにより、巻回されたコイル導体16同士と、コイル導体16と磁性体部14の絶縁をより確実にすることができる。
なお、コイル導体16を構成する導線の第1の露出部24aおよび第2の露出部24bのそれぞれの部分には、絶縁膜は形成されていない。
【0058】
絶縁膜の絶縁性物質としては、特に限定されないが、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂が挙げられる。好ましくは、絶縁膜としては、ポリアミドイミド樹脂が挙げられる。
絶縁膜の厚みは、2μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0059】
また、コイル導体16の第1の露出部24aおよび第2の露出部24bの素体12の両端面12e,12fにおける露出部分(露出面)においては、絶縁膜が配置されていない。これにより、コイル導体16と第1の下地電極層32aおよび第2の下地電極層32bとが、直接電気的に接続することができるので、コイル導体16と第1の下地電極層32aおよび第2の下地電極層32bとの間の電気抵抗を低減することができる。
【0060】
(d)外部電極
素体12の第1の端面12e側および第2の端面12f側には、外部電極30が配置される。外部電極30は、第1の外部電極30aおよび第2の外部電極30bを有する。
【0061】
第1の外部電極30aは、素体12の第1の端面12eの表面に配置される。なお、第1の外部電極30aは、第1の端面12eから延伸して第1の主面12a、第2の主面12b、第1の側面12cおよび第2の側面12dのそれぞれの一部を覆うように形成されていてもよく、第1の端面12eから第2の主面12bへと延伸され、第1の端面12eと第2の主面12bのそれぞれ一部を覆うように形成されていてもよい。この場合、第1の外部電極30aは、コイル導体16の第1の露出部24aと直接電気的に接続され、第1の引出部22aと電気的に接続される。
【0062】
第2の外部電極30bは、素体12の第2の端面12fの表面に配置される。なお、第2の外部電極30bは、第2の端面12fから延伸して第1の主面12a、第2の主面12b、第1の側面12cおよび第2の側面12dのそれぞれの一部を覆うように形成されていてもよく、第2の端面12fから第2の主面12bへと延伸され、第2の端面12fと第2の主面12bのそれぞれ一部を覆うように形成されていてもよい。この場合、第2の外部電極30bは、コイル導体16の第2の露出部24bと直接電気的に接続され、第2の引出部22bと電気的に接続される。
【0063】
第1の外部電極30aおよび第2の外部電極30bのそれぞれの厚みは、特に限定されないが、例えば1μm以上50μm以下、好ましくは5μm以上20μm以下であり得る。
【0064】
第1の外部電極30aは、第1の下地電極層32aと、第1の下地電極層32aの表面に配置される第1のめっき層34aとを含む。同様に、第2の外部電極30bは、第2の下地電極層32bと、第2の下地電極層32bの表面に配置される第2のめっき層34bとを含む。
【0065】
第1の下地電極層32aは、素体12の第1の端面12eの表面に配置される。従って、第1の下地電極層32aは、コイル導体16の第1の露出部24aと直接接している。なお、第1の下地電極層32aは、第1の端面12eから延伸して第1の主面12a、第2の主面12b、第1の側面12cおよび第2の側面12dのそれぞれの一部を覆うように形成されていてもよく、第1の端面12eから延伸して、第1の端面12eと第2の主面12bのそれぞれ一部を覆うように形成されていてもよい。
【0066】
また、第2の下地電極層32bは、素体12の第2の端面12fの表面に配置される。従って、第2の下地電極層32bは、コイル導体16の第2の露出部24bと直接接している。なお、第2の下地電極層32bは、第2の端面12fから延伸して第1の主面12a、第2の主面12b、第1の側面12cおよび第2の側面12dのそれぞれの一部を覆うように形成されていてもよく、第2の端面12fから延伸して、第2の端面12fと第2の主面12bのそれぞれ一部を覆うように形成されていてもよい。
【0067】
第1の下地電極層32aおよび第2の下地電極層32bは樹脂電極層により形成されてもよい。樹脂電極層は、樹脂成分と金属成分とを含む。樹脂電極層の樹脂成分は、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂等から選ばれる少なくとも1つを含む。樹脂電極層の金属成分としては、例えば、Cu、Ni、Ag、Pd、Ag-Pd合金、Au等から選ばれる少なくとも1つを含む。樹脂電極層は、複数層であってもよい。樹脂電極層は、樹脂成分および金属成分を含む導電性ペーストを素体12にディップにより塗布して熱硬化して形成されてもよい。
【0068】
また、第1の下地電極層32aおよび第2の下地電極層32bは、それぞれめっき電極として形成されてもよい。第1の下地電極層32aおよび第2の下地電極層32bは、電解めっきにより形成されてもよいし、無電解めっきにより形成されてもよい。
【0069】
また、第1の下地電極層32aおよび第2の下地電極層32bを構成する金属材料の主成分とコイル導体16を構成する金属材料の主成分とは同一組成であることが好ましい。これにより、コイル導体16と第1の下地電極層32aおよび第2の下地電極層32bとの間の金属結合がより強固となることから接合強度が高くなり、直流抵抗を低減させることができる。
【0070】
第1の下地電極層32aおよび第2の下地電極層32bの平均厚みは、たとえば、10μmである。
【0071】
第1のめっき層34aは、第1の下地電極層32aを覆うように配置されている。具体的には、第1のめっき層34aは、第1の端面12eに配置される第1の下地電極層32aを覆うように配置され、さらに第1の端面12eから延伸して、第1の主面12a、第2の主面12b、第1の側面12cおよび第2の側面12dに配置される第1の下地電極層32aの表面を覆うように配置されていてもよく、第1の端面12eから延伸して第2の主面12bのそれぞれ一部を覆うように配置されている第1の下地電極層32aを覆うように配置されていてもよい。
【0072】
第2のめっき層34bは、第2の下地電極層32bを覆うように配置されている。具体的には、第2のめっき層34bは、第2の端面12fに配置される第2の下地電極層32bを覆うように配置され、さらに第2の端面12fから延伸して、第1の主面12a、第2の主面12b、第1の側面12cおよび第2の側面12dに配置される第2の下地電極層32bの表面を覆うように配置されていてもよく、第2の端面12fから延伸して第2の主面12bのそれぞれ一部を覆うように配置されている第2の下地電極層32bを覆うように配置されていてもよい。
【0073】
第1のめっき層34aおよび第2のめっき層34bの金属材料としては、たとえば、Cu、Ni、Ag、Sn、Pd、Ag-Pd合金またはAu等から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0074】
第1のめっき層34aおよび第2のめっき層34bは、複数層に形成されてもよい。
第1のめっき層34aは、第1のNiめっき層36aと第1のNiめっき層36aの表面に形成される第1のSnめっき層38aとの2層構造である。第2のめっき層34bは、第2のNiめっき層36bと第2のNiめっき層36bの表面に形成される第2のSnめっき層38bとの2層構造である。
【0075】
第1のNiめっき層36aおよび第2のNiめっき層36bの平均厚みは、たとえば、5μmである。
また、第1のSnめっき層38aおよび第2のSnめっき層38bの平均厚みは、たとえば、10μmである。
【0076】
なお、第1の外部電極30aおよび第2の外部電極30bは、以下のような構成により設けられてもよい。
たとえば、第1の下地電極層32aおよび第2の下地電極層32bは、Ag含有の樹脂電極でもよく、スパッタによるAgスパッタ層、Cuスパッタ層あるいはTiスパッタ層により構成されていてもよい。なお、第1の下地電極層32aおよび第2の下地電極層32bが、Ag含有の樹脂電極により構成される場合には、ガラスフリットが含有されていてもよい。また、第1の下地電極層32aおよび第2の下地電極層32bがスパッタ層により形成される場合、Tiスパッタ層上にCuスパッタ層が形成されるようにしてもよい。
また、第1のめっき層34aおよび第2のめっき層34bは、最外層がSnめっき層38a,38bのみにより構成されてもよい。
さらに、第1の下地電極層32aおよび第2の下地電極層32bを形成せず、素体12上に、Agめっき層やNiめっき層を形成するようにしてもよい。
【0077】
コイル部品10は、長さ方向zの寸法をL寸法とすると、L寸法は、1.0mm以上12.0mm以下が好ましい。コイル部品10の幅方向yの寸法をW寸法とすると、W寸法は、0.5mm以上12.0mm以下が好ましい。コイル部品10の加圧方向xの寸法をT寸法は、0.5mm以上6.0mm以下が好ましい。
【0078】
図1に示すコイル部品10によれば、磁性体部14の断面における断面画像から得られた円相当径に基づいて算出された金属磁性体粒子の平均粒子径の粒度分布が少なくとも2つのピークと少なくとも1つのボトムを有し、最小頻度を有するボトム以上を第1の金属磁性体粒子40とし、最小頻度を有するボトム未満を第2の金属磁性体粒子42とした金属磁性体粒子を含んでおり、第1の金属磁性体粒子40は、断面において所定の条件を満たす凹部40aを有している粒子を含んでおり、凹部40aを有する第1の金属磁性体粒子40の凹部40aの内部に、少なくとも1つの第2の金属磁性体粒子42の少なくとも一部が配置されるので、磁性体部における金属磁性体粒子の充填率が高くなることから、コイル部品の透磁率を高くすることができる。
【0079】
また、図1に示すコイル部品10によれば、金属磁性体粒子と樹脂とを含有する磁性体部14において、断面において所定の条件を満たす凹部40aを有する第1の金属磁性体粒子40を含んでおり、所定の条件が、凹部40aの開口部40bにおける先端間の最小距離をL01とし、第1の金属磁性体粒子40の断面の凹部40a内における弦に相当する線分において、開口部40bの先端間の最小距離となる線分に平行な線分のうち最長距離をL02としたとき、L02>L01であるので、磁性体部14の体積に対する第1の金属磁性体粒子40の表面積を大きくすることができることから、高周波領域における渦電流損が小さくなり、コイル部品として、より高周波でも使用することができる。
【0080】
2.コイル部品の製造方法
次に、コイル部品の製造方法について説明する。
【0081】
コイル部品の製造方法は、(a)造粒粉を製造する工程、(b)第1の成形体および第2の成形体を製造する工程、(c)素体を製造する工程、(d)外部電極を形成する工程、を含む。
【0082】
(a)造粒粉を製造する工程
製造される造粒粉は、金属磁性体粒子A、金属磁性体粒子B、樹脂および溶剤を含む複合材料である。
【0083】
(金属磁性体粒子の準備)
まず、金属磁性体粒子Aおよび金属磁性体粒子Bが準備される。
【0084】
(金属磁性体粒子A)
金属磁性体粒子Aとして、例えば、α-Fe、Fe-Si、Fe-Si-Cr、Fe-Si-Al、Fe-Ni、Fe-Co等のFe系軟磁性材料粉末を使用することができる。また、金属磁性体粒子の材料形態についても、良好な軟磁性特性を有する非晶質が好ましいが特に限定されるものではなく、結晶質であってもよい。
【0085】
金属磁性体粒子Aの平均粒子径は、10μm以上50μm以下であることが好ましい。なお、平均粒子径とは、例えば、メディアン径(D50)である。なお、金属磁性体粒子Bの平均粒子径が50μmを超えると、高周波領域における渦電流損が大きくなり、高周波領域での特性が低下する。
【0086】
金属磁性体粒子Aには、凹部が形成された粒子が含まれる。
金属磁性体粒子Aに凹部を形成するために、以下に説明する処理が行われる。
すなわち、準備される磁性材料粉末に対して、ガスアトマイズ法や水アトマイズ法によって金属磁性体粒子Aが作製される。ここで、ガスや水の噴霧量を増やしたり噴霧圧をあげることによって、空洞の形成を促進したり、空洞の大きさを大きくしたり、真球度を制御することが可能である。通常、金属磁性体粒子にアトマイズ法で凹部を形成しようとすると、粒子の形状は真球から遠くなり、作製された粒子全体の平均真球度は高くなる。本実施の形態では水アトマイズによって金属磁性体粒子Aを作製した。また、作製された金属磁性体粒子の外観を選別し、空洞有りと無しの含有比を調節することができる。
なお、凹部を有した金属磁性体粒子の作製方法はアトマイズ法に限られず、他の方法が用いられてもよい。
【0087】
また、金属磁性体粒子Aの外表面は絶縁被膜で被覆される。ここで、機械的手法で絶縁被膜を形成する場合は、金属磁性体粒子と絶縁材料粉末とを回転容器に投入し、メカノケミカル処理により粒子複合化を行い、これにより磁性体粉末の表面に絶縁被膜を被覆形成することができる。なお、金属磁性体粒子Aの凹部の内側には絶縁被膜が形成されていないことが好ましい。金属磁性体粒子Aの凹部の内側に絶縁被膜が形成されない場合、コイル部品の実効透磁率を高くすることができる。
【0088】
上述した凹部を備えた金属磁性体粒子Aの材料として、例えば、平均粒子径が26μmであり、リン酸亜鉛ガラスによる厚み10nmの絶縁被膜により被覆されたFe-Si-Cr合金粒子が準備される。なお、Fe-Si-Cr合金粒子は、Feが90.8wt%、Siが6.7wt5、Crが2.5wt%含有される。
【0089】
(金属磁性体粒子B)
金属磁性体粒子Bとして、例えば、α-Fe、Fe-Si、Fe-Si-Cr、Fe-Si-Al、Fe-Ni、Fe-Co等のFe系軟磁性材料粉末を使用することができる。また、金属磁性体粒子の材料形態についても、良好な軟磁性特性を有する非晶質が好ましいが特に限定されるものではなく、結晶質であってもよい。
【0090】
金属磁性体粒子Bは、ガスアトマイズ法や水アトマイズ法によって作製される。
【0091】
金属磁性体粒子Bの平均粒子径は、0.2μm以上10μm以下であることが好ましい。金属磁性体粒子Bの平均粒子径は、より好ましくは8μm以下であり、さらに好ましくは、5μm以下である。なお、平均粒子径とは、例えば、メディアン径(D50)である。金属磁性体粒子Bが0.2μm未満であると、成形時の流動性が低下し、高充填化が困難となる。
【0092】
また、金属磁性体粒子Bの表面は絶縁被膜で被覆される。ここで、機械的手法で絶縁被膜を形成する場合は、金属磁性体粒子と絶縁材料粉末とを回転容器に投入し、メカノケミカル処理により粒子複合化を行い、これにより磁性体粉末の表面に絶縁被膜を被覆形成することができる。
【0093】
上述した金属磁性体粒子Bの材料として、例えば、平均粒子径が4μmであり、リン酸亜鉛ガラスによる厚み10nmの絶縁被膜により被覆されたFe-Si-Cr合金粒子が準備される。なお、Fe-Si-Cr合金粒子は、Feが90.8wt%、Siが6.7wt5、Crが2.5wt%含有される。
【0094】
なお、各金属磁性体粒子の平均粒子径は、以下の方法により測定される。
まず、造粒前の各金属磁性体粒子の平均粒子径であるメディアン径(D50)は、レーザー回折式の粒度分布測定装置等を用いることにより測定することができる。ここで、メディアン径(D50)とは、平均粒径D50(体積基準の累積百分率50%相当粒径)を意味する。
【0095】
(樹脂)
複合材料に含有される樹脂材料としては、例えば、熱硬化性樹脂が挙げられ、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂などの有機材料が挙げられる。樹脂材料は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
本実施の形態では、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂が使用される。
樹脂の含有率は、比較的低い方が、コイル部品10の実効透磁率を高くすることができるので好ましい。具体的には、特に(面積換算で)25%以下が好ましい。一方、5%未満の場合、成形時に流動性を確保できず高充填化が難しいため、5%以上が好ましい。
【0096】
なお、本実施の形態においては、造粒粉成形を以下の体積割合で混合した。
すなわち、金属磁性体粒子A:金属磁性体粒子B:樹脂=56:19:25、とした。
【0097】
(溶剤)
また、溶剤として、アセトンが準備される。
【0098】
(造粒粉の製造)
続いて、準備された金属磁性体粒子A、金属磁性体粒子B、樹脂材料および溶剤を用いて、造粒粉が製造される。
【0099】
まず、金属磁性体粒子Aおよび金属磁性体粒子Bが撹拌容器内で混合し、撹拌される。混合される各金属磁性体粒子の混合比率は、重量比で、金属磁性体粒子A:金属磁性体粒子B=75:25である。
なお、金属磁性体粒子Aと金属磁性体粒子Bの粒径の比率(金属磁性体粒子Aの平均粒子径/金属磁性体粒子Bの平均粒子径)が高い程、コイル部品の金属磁性体粒子の充填率が高くなり、透磁率を高くすることができ、また直流重畳特性を高くすることができる。
【0100】
次に、撹拌容器内で混合・撹拌された金属磁性体粒子Aおよび金属磁性体粒子Bに対して、準備された樹脂および溶剤が投入される。
なお、樹脂の投入量は、金属磁性体粒子Aおよび金属磁性体粒子Bの合計重量の3.0wt%であり、溶剤の投入量は、金属磁性体粒子Aおよび金属磁性体粒子Bの合計重量の1.0wt%である。
【0101】
続いて、撹拌容器内において投入されている金属磁性体粒子A、金属磁性体粒子B、樹脂および溶剤が撹拌されて、乾燥される。
【0102】
そして、ふるい振盪機を用いて、撹拌された金属磁性体粒子A、金属磁性体粒子B、樹脂および溶剤の複合材料から粗粒を除くことで造粒粉が得られる。
【0103】
なお、各金属磁性体粒子の混合比率や混合・撹拌時間、L01/d2の値などを変えることで、第1の金属磁性体粒子の凹部の内部に、他の第1の金属磁性体粒子や第2の金属磁性体粒子が配置される割合を調節することができる。
【0104】
(b)第1の成形体および第2の成形体を製造する工程
次に、得られた造粒粉を用いて第1の成形体50および第2の成形体60が製造される。
【0105】
ここで、まず、第1の成形体50の構造について説明する。
第1の成形体50は、図17に示すように、板状の底面部52と、底面部52の上面52aに設けられた柱状の巻軸部54と、巻軸部54を囲み、底面部52の上面52aに設けられた第1の側面側壁部56a、第2の側面側壁部56b、第1の端面側壁部56cおよび第2の端面側壁部56dとを備えている。
第1の側面側壁部56aと第2の側面側壁部56bとは、幅方向yで対向するように底面部52の上面52aに配置され、第1の端面側壁部56cと第2の端面側壁部56dとは、長さ方向zで対向するように底面部52の上面52aに配置される。
第1の端面側壁部56cには第1の切り欠き部58aが設けられる。第2の端面側壁部56dには第2の切り欠き部58bが設けられる。
巻軸部54は、中心軸Aに略垂直方向の断面はオーバル形状もしくは略楕円形状である。巻軸部54は、図17に示すように、底面部52から離れるに従って先細りになっていてもよい。つまり、巻軸部54は、底面部52に接続する根元よりも先端部54aの方が細くなっていてもよい。
【0106】
次に、第2の成形体60の構造について説明する。
第2の成形体60は、図17に示すように、第1の主面60aおよび第2の主面60bが略矩形の板状の部材である。
【0107】
上述した第1の成形体50および第2の成形体60は次のようにして製造される。
まず、造粒粉を製造する工程において製造された造粒粉を第1の成形体となるような金型を用いて成形される。このとき、温度は室温に設定され、50MPaで加圧される。次に、製造された造粒粉を第2の成形体となるような金型を用いて成形される。このとき、温度は室温に設定され、50MPaで加圧される。
【0108】
上述したように製造された第1の成形体および第2の成形体に対して、さらに、温度100℃を10秒与え、仮硬化される。
以上より、第1の成形体50および第2の成形体60が製造される。
【0109】
(c)素体を製造する工程
続いて、製造された第1の成形体50および第2の成形体60を用いて、コイル導体16が埋設された素体12を製造する。
【0110】
図17に示すように、第1の成形体50の底面部52の上面52aと第2の成形体60の一方の主面60a(または60b)とを対向させて、第1の成形体50および第2の成形体60の間に、コイル導体16を組み込む。そして、第1の成形体50および第2の成形体60、コイル導体16を挟み込んだ状態で接合される。
【0111】
より詳細には、まず、第1の成形体50が、素体成形用の金型のキャビティに収容される。
続いて、第1の成形体50の巻軸部54が巻回部18の中空領域20内に配置されるように、コイル導体16を第1の成形体50と第2の成形体60との間に配置する。このとき、コイル導体16の第1の引出部22aが第1の成形体50の第1の切り欠き部58aから引き出され、第2の引出部22bが第1の成形体50の第2の切り欠き部58bから引き出されるようにコイル導体16を配置する。なお、このコイル導体16の表面には絶縁被膜が形成される。
そして、コイル導体16の配置された第1の成形体50を覆うように第2の成形体60が載置される。
続いて、第1の成形体50に第2の成形体60が載置された状態で、200℃に加温される。そして、加温された状態で、10MPaで120秒加圧して、熱成形される。
【0112】
以上のようにして、素体12が製造される。
【0113】
(d)外部電極を形成する工程
次に、素体12の第1の端面12eに第1の外部電極30aが形成され、第2の端面12fに第2の外部電極30bが形成される。
【0114】
続いて、素体12の第1の端面12eおよび第2の端面12fに下地電極層となるAg含有導電性ペーストを塗布し、下地電極層を形成する。下地電極層として樹脂電極層を形成する場合には、樹脂成分と金属とを含む導電性ペーストを例えばディッピングなどの方法により、塗布し、その後、熱硬化処理を行い、下地電極層が形成される。この時の熱硬化処理の温度は、120℃以上200℃以下であることが好ましい。
【0115】
次に、下地電極層の表面にめっき層が形成される。より詳細には、下地電極層上に、Niめっき層およびNiめっき層上にSnめっき層が形成され、外部電極30が形成される。これにより、コイル導体16の第1の露出部24aは、第1の外部電極30aと電気的に接続され、コイル導体16の第2の露出部24bは、第2の外部電極30bと電気的に接続される。めっき処理を行うにあたっては、無電解めっきにより形成されてもよい。
【0116】
上述のようにして、コイル部品10が製造される。
【0117】
なお、以上のように、本発明の実施の形態は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施の形態に対し、機序、形状、材質、数量、位置又は配置等に関して、様々の変更を加えることができるものであり、それらは、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0118】
10 コイル部品
12 素体
12a 第1の主面
12b 第2の主面
12c 第1の側面
12d 第2の側面
12e 第1の端面
12f 第2の端面
14 磁性体部
16 コイル導体
18 巻回部
20 中空領域
22a 第1の引出部
22b 第2の引出部
24a 第1の露出部
24b 第2の露出部
30 外部電極
30a 第1の外部電極
30b 第2の外部電極
32a 第1の下地電極層
32b 第2の下地電極層
34a 第1のめっき層
34b 第2のめっき層
36a 第1のNiめっき層
36b 第2のNiめっき層
38a 第1のSnめっき層
38b 第2のSnめっき層
40 第1の金属磁性体粒子
40a 凹部
40b 開口部
42 第2の金属磁性体粒子
44 無機成分粒子
46 絶縁被膜
50 第1の成形体
52 底面部
52a 上面
52b 下面
54 巻軸部
54a 先端部
56a 第1の側面側壁部
56b 第2の側面側壁部
56c 第1の端面側壁部
56d 第2の端面側壁部
58a 第1の切り欠き部
58b 第2の切り欠き部
60 第2の成形体
60a 第1の主面
60b 第2の主面
x 加圧方向(高さ方向)
y 幅方向
z 長さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17