(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146795
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】二液混合噴射装置および二液混合噴射方法
(51)【国際特許分類】
B05B 7/08 20060101AFI20231004BHJP
B05B 7/06 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
B05B7/08
B05B7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054177
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮沢 靖直
(72)【発明者】
【氏名】金子 智
【テーマコード(参考)】
4F033
【Fターム(参考)】
4F033QA01
4F033QB02Y
4F033QB03X
4F033QB12Y
4F033QB13Y
4F033QB18
4F033QD02
4F033QD03
4F033QD20
4F033QD24
4F033QD25
4F033QE09
4F033QE14
4F033QF07X
4F033QF07Y
4F033QF08X
4F033QF08Y
4F033QF12X
4F033QF21X
4F033QF21Y
(57)【要約】
【課題】塗液の混合ムラを抑制することができる二液混合噴射装置および二液混合噴射方法を提供する。
【解決手段】二液混合噴射装置EAは、第1塗液および第2塗液を噴射し、第1塗液および第2塗液を混合して被塗布面に塗布する装置であって、第1塗液を噴射する第1ノズル10と、第2塗液を噴射する第2ノズル20と、第1ノズル10および第2ノズル20の噴射を制御する制御手段30とを備え、制御手段30は、第1ノズル10に第1塗液を噴射させる前に、第2ノズル20に記第2塗液を噴射させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1塗液および第2塗液を噴射し、前記第1塗液および前記第2塗液を混合して被塗布面に塗布する二液混合噴射装置であって、
前記第1塗液を噴射する第1ノズルと、
前記第2塗液を噴射する第2ノズルと、
前記第1ノズルおよび前記第2ノズルの噴射を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記第1ノズルに前記第1塗液を噴射させる前に、前記第2ノズルに前記第2塗液を噴射させることを特徴とする二液混合噴射装置。
【請求項2】
前記第1ノズルは、前記第1塗液を噴射する第1塗液噴射孔と、気体を噴射する第1気体噴射孔とを備え、
前記第2ノズルは、前記第2塗液を噴射する第2塗液噴射孔と、気体を噴射する第2気体噴射孔とを備え、
前記第1気体噴射孔および前記第2気体噴射孔のうち、少なくとも前記第2気体噴射孔は、前記第1塗液噴射孔および前記第2塗液噴射孔のうちの対応する塗液噴射孔に向かう方向に傾斜し、
前記第2塗液噴射孔に対する前記第2気体噴射孔の傾斜角度は、前記第1塗液噴射孔に対する前記第1気体噴射孔の傾斜角度よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の二液混合噴射装置。
【請求項3】
前記第2ノズルは、前記被塗布面から前記第1ノズルよりも離れた位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の二液混合噴射装置。
【請求項4】
複数の前記第2ノズルを備え、
複数の前記第2ノズルは、前記被塗布面における互いの前記第2塗液の塗布領域が、前記第1ノズルによる前記第1塗液の塗布領域で重なるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の二液混合噴射装置。
【請求項5】
第1塗液および第2塗液を噴射し、前記第1塗液および前記第2塗液を混合して被塗布面に塗布する二液混合噴射方法であって、
第1ノズルで前記第1塗液を噴射する第1塗液噴射工程と、
第2ノズルで前記第2塗液を噴射する第2塗液噴射工程と、
前記第1ノズルおよび前記第2ノズルの噴射を制御する制御工程とを実施し、
前記制御工程では、前記第1ノズルに前記第1塗液を噴射させる前に、前記第2ノズルに前記第2塗液を噴射させることを特徴とする二液混合噴射方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二液混合噴射装置および二液混合噴射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
第1塗液と第2塗液とを噴射して混合する二液混合噴射装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された二液混合エアミックスガン(二液混合噴射装置)は、銀鏡処理液(第1塗液)と還元液(第2塗液)とを噴射して混合するが、例えば、第1塗液よりも第2塗液の噴射量が少ない場合や、第2塗液の粘度が高い場合は、第1塗液に対する第2塗液の分散が不十分となり、塗液の混合ムラが発生するという不都合がある。
【0005】
本発明の目的は、塗液の混合ムラを抑制することができる二液混合噴射装置および二液混合噴射方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る二液混合噴射装置は、第1塗液および第2塗液を噴射し、前記第1塗液および前記第2塗液を混合して被塗布面に塗布する二液混合噴射装置であって、前記第1塗液を噴射する第1ノズルと、前記第2塗液を噴射する第2ノズルと、前記第1ノズルおよび前記第2ノズルの噴射を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記第1ノズルに前記第1塗液を噴射させる前に、前記第2ノズルに前記第2塗液を噴射させる。
【0007】
本発明の一態様に係る二液混合噴射装置において、前記第1ノズルは、前記第1塗液を噴射する第1塗液噴射孔と、気体を噴射する第1気体噴射孔とを備え、前記第2ノズルは、前記第2塗液を噴射する第2塗液噴射孔と、気体を噴射する第2気体噴射孔とを備え、前記第1気体噴射孔および前記第2気体噴射孔のうち、少なくとも前記第2気体噴射孔は、前記第1塗液噴射孔および前記第2塗液噴射孔のうちの対応する塗液噴射孔に向かう方向に傾斜し、前記第2塗液噴射孔に対する前記第2気体噴射孔の傾斜角度は、前記第1塗液噴射孔に対する前記第1気体噴射孔の傾斜角度よりも大きくてもよい。
【0008】
本発明の一態様に係る二液混合噴射装置において、前記第2ノズルは、前記被塗布面から前記第1ノズルよりも離れた位置に配置されてもよい。
【0009】
本発明の一態様に係る二液混合噴射装置は、複数の前記第2ノズルを備え、複数の前記第2ノズルは、前記被塗布面における互いの前記第2塗液の塗布領域が、前記第1ノズルによる前記第1塗液の塗布領域で重なるように配置されてもよい。
【0010】
本発明の一態様に係る二液混合噴射方法は、第1塗液および第2塗液を噴射し、前記第1塗液および前記第2塗液を混合して被塗布面に塗布する二液混合噴射方法であって、第1ノズルで前記第1塗液を噴射する第1塗液噴射工程と、第2ノズルで前記第2塗液を噴射する第2塗液噴射工程と、前記第1ノズルおよび前記第2ノズルの噴射を制御する制御工程とを実施し、前記制御工程では、前記第1ノズルに前記第1塗液を噴射させる前に、前記第2ノズルに前記第2塗液を噴射させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1塗液に対する第2塗液の分散が促されるため、塗液の混合ムラを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(A)は、第1実施形態に係る二液混合噴射装置を備えた原反製造装置の側面図。(B)は、(A)の部分平面図。(C)は、第1ノズルの縦断面図。(D)は、(C)のDD矢視図。(E)は、第2ノズルの縦断面図。(F)は、(E)のFF矢視図。
【
図2】(A)は、第2実施形態に係る二液混合噴射装置を備えた原反製造装置の側面図。(B)は、(A)の部分平面図。(C)は、第1ノズルの縦断面図。(D)は、(C)のDD矢視図。(E)は、第2ノズルの縦断面図。(F)は、(E)のFF矢視図。
【
図3】(A)は、第3実施形態に係る二液混合噴射装置を備えた原反製造装置の側面図。(B)は、(A)の部分平面図。(C)は、第1ノズルの縦断面図。(D)は、(C)のDD矢視図。(E)は、第2ノズルの縦断面図。(F)は、(E)のFF矢視図。
【
図4】(A)は、第4実施形態に係る二液混合噴射装置を備えた原反製造装置の側面図。(B)は、(A)の部分平面図。(C)は、第1ノズルの縦断面図。(D)は、(C)のDD矢視図。(E)は、第2ノズルの縦断面図。(F)は、(E)のFF矢視図。
【
図5】(A)は、変形例に係る二液混合噴射装置を備えた原反製造装置の側面図。(B)は、(A)の部分平面図。(C)は、第1ノズルの縦断面図。(D)は、(C)のDD矢視図。(E)は、第2ノズルの縦断面図。(F)は、(E)のFF矢視図。
【
図6】(A)は、変形例に係る二液混合噴射装置を備えた原反製造装置の側面図。(B)は、(A)の部分平面図。(C)は、第1ノズルの縦断面図。(D)は、(C)のDD矢視図。(E)は、第2ノズルの縦断面図。(F)は、(E)のFF矢視図。
【
図7】(A)は、変形例に係る二液混合噴射装置を備えた原反製造装置の側面図。(B)は、(A)の部分平面図。(C)は、第1ノズルの縦断面図。(D)は、(C)のDD矢視図。(E)は、第2ノズルの縦断面図。(F)は、(E)のFF矢視図。
【
図8】変形例に係る二液混合噴射装置の第1ノズルおよび第2ノズルの配置を示す平面図。
【
図9】変形例に係る二液混合噴射装置の第1ノズルおよび第2ノズルの配置を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、実施形態におけるX軸、Y軸、Z軸は、それぞれが直交する関係にあり、X軸およびY軸は、所定平面内の軸とし、Z軸は、前記所定平面に直交する軸とする。さらに、実施形態では、Y軸と平行な
図1(A)の手前方向から観た場合を基準とし、方向を示した場合、「上」がZ軸の矢印方向で「下」がその逆方向、「左」がX軸の矢印方向で「右」がその逆方向、「前」がY軸と平行な
図1(A)中手前方向で「後」がその逆方向とする。
実施形態の各構成は、図面に模式的に記載されているため、実際の形状、大きさ、スケールとは異なることがある。また、第2実施形態以降において、既に説明した実施形態と同等の構成で同等の機能を有するものには、その実施形態と同じ番号を付し、または図示を省略し、それらの説明を簡略化または省略する。
【0014】
[第1実施形態]
図1(A)~(F)において、二液混合噴射装置EAは、第1塗液としての主剤および第2塗液としての硬化剤を噴射し、主剤および硬化剤を混合して被塗布面AB1に塗布する装置であって、主剤を噴射する第1ノズル10と、硬化剤を噴射する第2ノズル20と、第1ノズル10および第2ノズル20の噴射を制御する制御手段30と、第1ノズル10に主剤を供給する第1塗液供給手段40と、第2ノズル20に硬化剤を供給する第2塗液供給手段50と、第1ノズル10に大気やガス等の気体を供給する第1気体供給手段60と、第2ノズル20に大気やガス等の気体を供給する第2気体供給手段70とを備えている。
また、二液混合噴射装置EAは、被塗布面AB1を有する基材ABを繰り出す繰出手段80と、被塗布面AB1に塗布された主剤および硬化剤を乾燥する乾燥手段90とで、原反製造装置EA1を構成している。
【0015】
第1ノズル10は、第1塗液供給手段40から供給された主剤を噴射する第1塗液噴射孔11と、第1気体供給手段60から供給された気体を噴射する第1気体噴射孔12と、当該第1ノズル10の先端部に設けられ、基端部に向かって縮径する円錐台状の凹部13とを備えている。第1塗液噴射孔11は、凹部13の底面に開口した噴射口14を有している。第1気体噴射孔12は、凹部13の側面に開口した噴射口15を有している。
本実施形態の場合、第1気体噴射孔12は、断面視で第1塗液噴射孔11を囲む環状とされ、かつ先端部が次第に縮径する円錐環状とされている。即ち、第1気体噴射孔12は、第1塗液噴射孔11に対して先端部が第1塗液噴射孔11に向かう方向に傾斜している。また、第1塗液噴射孔11の噴射口14は、円形とされ、第1気体噴射孔12の噴射口15は、噴射口14と同心円状に形成されて噴射口14を囲む円環状とされている。
【0016】
第2ノズル20は、第2塗液供給手段50から供給された硬化剤を噴射する第2塗液噴射孔21と、第2気体供給手段70から供給された気体を噴射する第2気体噴射孔22と、当該第2ノズル20の先端部に設けられ、基端部に向かって縮径する円錐台状の凹部23とを備えている。第2塗液噴射孔21は、凹部23の底面に開口した噴射口24を有している。第2気体噴射孔22は、凹部23の側面に開口した噴射口25を有している。
本実施形態の場合、第2ノズル20は、第1ノズル10とは別体に設けられ、第1ノズル10と同じ高さ位置に、かつ第1ノズル10と前後方向に並んで配置されている。また、第2ノズル20は、第1ノズル10と同じ形状とされ、第2塗液噴射孔21に対する第2気体噴射孔22の傾斜角度θ2が、第1塗液噴射孔11に対する第1気体噴射孔12の傾斜角度θ1と同じになっている。
【0017】
制御手段30は、パーソナルコンピュータやシーケンサ等で構成され、第1ノズル10および第2ノズル20の噴射を制御するとともに、二液混合噴射装置EAおよび原反製造装置EA1の動作を制御する。本実施形態の場合、制御手段30は、第1ノズル10が主剤を噴射するよりも先に、第2ノズル20に硬化剤を噴射させる制御を行う。
【0018】
第1塗液供給手段40は、第1塗液噴射孔11と連通する第1塗液供給管41に主剤を圧送する加圧ポンプやタービン等の加圧手段42と、第1塗液供給管41に設けられ、第1ノズル10による主剤の噴射有無を切り替える電磁弁や油圧制御弁等の切替弁43とを備えている。
【0019】
第2塗液供給手段50は、第2塗液噴射孔21と連通する第2塗液供給管51に硬化剤を圧送する加圧ポンプやタービン等の加圧手段52と、第2塗液供給管51に設けられ、第2ノズル20による硬化剤の噴射有無を切り替える電磁弁や油圧制御弁等の切替弁53とを備えている。
【0020】
第1気体供給手段60は、第1気体噴射孔12と連通する第1気体供給管61に気体を圧送する加圧ポンプやタービン等の加圧手段62と、第1気体供給管61に設けられ、第1ノズル10による気体の噴射有無を切り替える電磁弁や油圧制御弁等の切替弁63とを備えている。
【0021】
第2気体供給手段70は、第2気体噴射孔22と連通する第2気体供給管71に気体を圧送する加圧ポンプやタービン等の加圧手段72と、第2気体供給管71に設けられ、第2ノズル20による気体の噴射有無を切り替える電磁弁や油圧制御弁等の切替弁73とを備えている。なお、第2気体供給手段70が供給する気体は、第1気体供給手段60が供給する気体と同じでもよいし、異なってもよい。
【0022】
繰出手段80は、帯状の基材ABを支持する支持ローラ81と、基材ABを案内するガイドローラ82と、駆動機器としての回動モータ83の出力軸に支持され、原反製造装置EA1の自動運転が行われている間、基材ABに常に所定の張力を付与し、当該基材ABを回収する回収手段としての回収ローラ84とを備えている。
【0023】
乾燥手段90は、赤外線ヒータやコイルヒータ等の加熱手段91を備えている。
【0024】
以上の二液混合噴射装置EAを備えた原反製造装置EA1の動作を説明する。
先ず、
図1(A)中実線で示す初期位置に各部材が配置された原反製造装置EA1に対し、当該原反製造装置EA1の使用者(以下、単に「使用者」という)が同図のように基材ABをセットした後、図示しない操作パネルやパーソナルコンピュータ等の操作手段を介して自動運転開始の信号を入力する。すると、第1塗液供給手段40、第2塗液供給手段50、第1気体供給手段60、および第2気体供給手段70がそれぞれの加圧手段42、52、62、72を駆動し、原反製造装置EA1の自動運転が行われている間、供給管41、51、61、71に主剤、硬化剤、気体を供給してそれぞれの圧力を維持する。
【0025】
次いで、繰出手段80が回動モータ83を駆動し、基材ABを所定長さ繰り出すと、回動モータ83の駆動を停止する。その後、制御手段30が第2塗液供給手段50および第2気体供給手段70を介して切替弁53、73を駆動し、第1ノズル10から主剤を噴射させる前に、第2ノズル20から硬化剤および気体を噴射させる。これにより、硬化剤が主剤に遮られずに分散し、硬化剤の分散が促される。次に、制御手段30は、硬化剤が基材ABの被塗布面AB1に到達する前に、第1塗液供給手段40および第1気体供給手段60を介して切替弁43、63を駆動し、第1ノズル10から主剤および気体を噴射する。そして、主剤および硬化剤は、それらと共に噴射された気体によって分散しつつ霧化し、空気中で互いに混合して、
図1(B)に示すように、被塗布面AB1におけるそれぞれの塗布領域PA1、PA2に塗布される。なお、
図1(B)では、主剤の塗布領域PA1と硬化剤の塗布領域PA2とを判別しやすくするために、互いの外縁をずらして記載してあるが、実際には両方の塗布領域PA1、PA2が一致するように主剤および硬化剤が噴射される。
【0026】
被塗布面AB1への主剤および硬化剤の塗布が完了し、主剤および硬化剤からなる塗膜CLが形成されると、繰出手段80が回動モータ83を駆動し、基材ABを所定長さ繰り出した後、回動モータ83の駆動を停止する。次に、乾燥手段90が加熱手段91を駆動し、被塗布面AB1上の塗膜CLを加熱して主剤および硬化剤を乾燥させる。これにより、被塗布面AB1上に塗膜CLが形成された原反となり、以降上記同様の動作が繰り返される。
【0027】
以上のような実施形態によれば、第1ノズル10に主剤を噴射させるよりも前に、第2ノズル20に硬化剤を噴射させるため、硬化剤が主剤に遮られずに分散する。このため、主剤に対する硬化剤の分散が促され、塗液の混合ムラを抑制することができる。
【0028】
[第2実施形態]
本実施形態の場合、
図2(A)~(F)に示すように、二液混合噴射装置EAおよび原反製造装置EA1の全体構成および配置、並びに制御手段30による制御は、第1実施形態と同じで、第2ノズル20Aの構成が、第1実施形態と相違する。
【0029】
図2(E)、(F)に示すように、第2ノズル20Aは、第2塗液噴射孔21に対する第2気体噴射孔22Aの傾斜角度θ2が、第1塗液噴射孔11に対する第1気体噴射孔12の傾斜角度θ1よりも大きくなっている。このため、第2気体噴射孔22Aから噴射した気体が、第1ノズル10に比べて急な角度で硬化剤に衝突する。
【0030】
制御手段30は、第1ノズル10に主剤を噴射させる前に、第2ノズル20Aに硬化剤を噴射させる。
【0031】
以上のような実施形態によれば、第2塗液噴射孔21に対する第2気体噴射孔22Aの傾斜角度θ2が、第1塗液噴射孔11に対する第1気体噴射孔12の傾斜角度θ1よりも大きいため、第2気体噴射孔22Aから噴射した気体が硬化剤に急な角度で衝突する。このため、主剤に対する硬化剤の分散がより促され、塗液の混合ムラを抑制することができる。
【0032】
[第3実施形態]
本実施形態の場合、
図3(A)~(F)に示すように、第2ノズル20の配置が、第1実施形態と相違する。
【0033】
図3(A)、(B)に示すように、第2ノズル20は、被塗布面AB1から第1ノズル10よりも離れた位置に配置され、被塗布面AB1に対して第1ノズル10の位置よりも上方に、かつ第1ノズル10と前後方向に並んで配置されている。
【0034】
なお、制御手段30は、第1ノズル10に主剤を噴射させる前に、第2ノズル20に硬化剤を噴射させる。
【0035】
以上のような実施形態によれば、被塗布面AB1から第1ノズル10よりも離れた位置に第2ノズル20が配置されるため、第2ノズル20から被塗布面AB1までの距離が長くなる。このため、被塗布面AB1に到達するまでに硬化剤の分散がより促され、塗液の混合ムラを抑制することができる。
【0036】
[第4実施形態]
本実施形態の場合、
図4(A)~(F)に示すように、複数の第2ノズル20が設けられ、第2ノズル20の数および配置が、第1実施形態と相違する。
【0037】
図4(A)、(B)に示すように、複数の第2ノズル20は、被塗布面AB1における互いの硬化剤の塗布領域PA2が、第1ノズル10による主剤の塗布領域PA1で重なるように配置されている。これにより、主剤の塗布領域PA1に対する硬化剤の分散が促される。
【0038】
なお、制御手段30は、第1ノズル10に主剤を噴射させる前に、第2ノズル20に硬化剤を噴射させてる。
【0039】
以上のような実施形態によれば、第2ノズル20による硬化剤の塗布領域PA2が、第1ノズル10による主剤の塗布領域PA1で重なるように複数の第2ノズル20が配置されているため、主剤に対する硬化剤の分散がより促され、塗液の混合ムラを抑制することができる。
【0040】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。また、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれる。
【0041】
例えば、塗液噴射孔11、21、気体噴射孔12、22、22A、および噴射口14、15、24、25の形状は、塗布領域PA1、PA2の形状に合わせて形成してもよい。例えば、
図5(A)、(B)に示すように、塗布領域PA1、PA2が楕円形の場合、
図5(C)~(F)に示すように、第1ノズル10Bは、楕円形の噴射口14Bを有する第1塗液噴射孔11Bと、楕円環状の噴射口15Bを有する第1気体噴射孔12Bとを備え、第2ノズル20Bは、楕円形の噴射口24Bを有する第2塗液噴射孔21Bと、楕円環状の噴射口25Bを有する第2気体噴射孔22Bとを備えてもよい。また、
図6(A)、(B)に示すように、塗布領域PA1、PA2が矩形の場合、
図6(C)~(F)に示すように、第1ノズル10Cは、矩形の噴射口14Cを有する第1塗液噴射孔11Cと、矩形の噴射口15Cを有する第1気体噴射孔12Cとを備え、第2ノズル20Cは、矩形の噴射口24Cを有する第2塗液噴射孔21Cと、矩形の噴射口25Cを有する第2気体噴射孔22Cとを備えてもよい。また、
図7(A)、(B)に示すように、塗布領域PA1、PA2が円環状の場合、
図7(C)~(F)に示すように、第1ノズル10Dは、円環状の噴射口14Dを有する第1塗液噴射孔11Dと、噴射口14Dと同心円状に形成された二重円環状の噴射口15D、16Dを有する第1気体噴射孔12Dとを備え、第2ノズル20Dは、円環状の噴射口24Dを有する第2塗液噴射孔21Dと、噴射口24Dと同心円状に形成された二重円環状の噴射口25D、26Dを有する第2気体噴射孔22Dとを備えてもよい。
第1ノズル10、10B、10C、10Dおよび第2ノズル20、20A、20B、20C、20Dは、互いに別体に設けられてもよいし、一体に設けられてもよい。
第1ノズル10、10B、10Cおよび第2ノズル20、20A、20B、20Cは、それぞれの凹部13、23を備えてもよいし、備えていなくてもよい。
第2ノズル20B、20C、20Dは、第2ノズル20Aと同様に、第2塗液噴射孔21B、21C、21Dに対する第2気体噴射孔22B、22C、22Dの傾斜角度θ2が、第1塗液噴射孔11B、11C、11Dに対する第1気体噴射孔12B、12C、12Dの傾斜角度θ1よりも大きくてもよい。
第1気体噴射孔12、12B、12C、12Dは、第1ノズル10、10B、10C、10Dの基端部から先端部にわたって第1塗液噴射孔11、11B、11C、11Dに向かう方向に傾斜していてもよいし、第2気体噴射孔22、22A、22B、22C、22Dは、第2ノズル20、20A、20B、20C、20Dの基端部から先端部にわたって第2塗液噴射孔21、21B、21C、21Dに向かう方向に傾斜していてもよい。
第1気体噴射孔12、12B、12Dおよび第2気体噴射孔22、22A、22B、22Dは、対応する塗液噴射孔11、11B、11D、21、21B、21Dを囲む環状とされなくてもよく、例えば、対応する塗液噴射孔11、11B、11D、21、21B、21Dを囲むように並んで配置された複数の噴射孔で構成されてもよい。
第1気体噴射孔12、12B、12C、12Dが噴射する気体と、第2気体噴射孔22、22A、22B、22C、22Dが噴射する気体とは、同じでもよいし、異なってもよい。
【0042】
第1塗液供給手段40や第2塗液供給手段50は、二液混合噴射装置EAや原反製造装置EA1に備わっていてもよいし、備わっていなくてもよく、備わっていない場合、他の装置で第1塗液や第2塗液を供給してもよい。
切替弁43は、第1ノズル10、10B、10C、10Dに内蔵されてもよいし、切替弁53は、第2ノズル20、20A、20B、20C、20Dに内蔵されてもよい。
【0043】
第1気体供給手段60や第2気体供給手段70は、二液混合噴射装置EAや原反製造装置EA1に備わっていてもよいし、備わっていなくてもよく、備わっていない場合、他の装置で気体を供給してもよい。
第1気体供給手段60が供給する気体と、第2気体供給手段70が供給する気体とは、同じでもよいし、異なってもよく、異なる場合、第1気体供給手段60および第2気体供給手段70の一方から第1気体噴射孔12および第2気体噴射孔22に気体を供給し、第1気体供給手段60および第2気体供給手段70の他方を設けなくてもよい。即ち、1つの気体供給手段から第1気体噴射孔12および第2気体噴射孔22の両方に気体を供給してもよい。
切替弁63は、第1ノズル10、10B、10C、10Dに内蔵されてもよいし、切替弁73は、第2ノズル20、20A、20B、20C、20Dに内蔵されてもよい。
【0044】
繰出手段80は、枚葉の基材ABを繰り出してもよいし、支持ローラ81やガイドローラ82等の各ローラの代わりに板状部材やシャフト部材等で基材ABを支持したり案内したりしてもよいし、基材ABを巻回することなく例えばファンフォールド折りにして支持してもよいし、基材ABを巻回することなく、例えばファンフォールド折りにしたり、シュレッダ等で切り刻んだり、無造作に集積したりして回収する回収手段を採用してもよいし、回収手段を採用しなくてもよい。
繰出手段80は、二液混合噴射装置EAや原反製造装置EA1に備わっていてもよいし、備わっていなくてもよく、備わっていない場合、他の装置で基材ABを繰り出したり、回収したりしてもよい。
【0045】
乾燥手段90は、加熱手段91によって加熱された空気やガス等の加熱気体を供給する加圧ポンプやタービン等の供給手段と、供給手段に配管を介して接続され、加熱気体を吹き付ける吹付管やノズル等の吹付手段とを備え、被塗布面AB1上の塗膜CLに加熱気体を吹き付けて主剤および硬化剤を乾燥してもよい。
加熱手段91は、特に限定されることはなく、例えば、ヒートパイプの加熱側であってもよい。
【0046】
二液混合噴射装置EAは、複数の第1ノズル10、10B、10C、10Dと、複数の第2ノズル20、20A、20B、20C、20Dとを備え、複数の第1ノズル10、10B、10C、10Dから噴射した主剤と、複数の第2ノズル20、20A、20B、20C、20Dから噴射した硬化剤とを混合してもよい。例えば、第1ノズル10、10B、10C、10Dおよび第2ノズル20、20A、20B、20C、20Dは、環状の仮想線に沿って交互に配置されてもよい。この場合、環状の仮想線の形状や数、第1ノズル10、10B、10C、10Dや第2ノズル20、20A、20B、20C、20Dの数は、
図8、9に示すように、被塗布面AB1における主剤および硬化剤の最終的な塗布領域PA3の形状や大きさに合わせて設定すればよく、例えば、仮想線を真円、楕円、長円等の円環状としてもよいし、三角形、矩形、5角形以上の多角形等の多角環状としてもよいし、仮想線を1つ設定してもよいし、仮想線を複数設定してもよい。例えば、
図8に示すように、最終的な塗布領域PA3が円形の場合、同心円状に設定した複数の仮想線VL1、VL2のうち、内側の仮想線VL1に沿って第1ノズル10および第2ノズル20を交互に配置し、外側の仮想線VL2に沿って第1ノズル10Bおよび第2ノズル20Bを交互に配置してもよい。また、
図9に示すように、最終的な塗布領域PA3が円環状の場合、円形の仮想線VL2に沿って第1ノズル10Bおよび第2ノズル20Bを交互に配置してもよい。
二液混合噴射装置EAは、第1ノズル10に代えてまたは併用して、第1ノズル10B、10C、10Dのうちの何れかまたは複数を備えてもよいし、第2ノズル20に代えてまたは併用して、第2ノズル20A、20B、20C、20Dのうちの何れかまたは複数を備えてもよい。
二液混合噴射装置EAは、制御手段30に代えてまたは併用して、レバーやボタン等で切替弁43、53、63、73を駆動する構成とされてもよい。
二液混合噴射装置EAや原反製造装置EA1は、減圧ポンプや真空エジェクタ等の図示しない減圧手段(保持手段)によって吸着保持が可能な支持面を有するテーブルを備え、当該テーブルの支持面で支持した基材ABの被塗布面AB1に、主剤および硬化剤を噴射して塗布してもよい。
【0047】
第1塗液や第2塗液の種類、種別、組成等は、特に限定されることはない。例えば、第1塗液は、シリコーン等の剥離剤の主剤や、塗料の主剤であってもよいし、主剤以外の途液であってもよい。また、第2塗液は、シリコーン等の剥離剤の硬化剤、触媒や反応開始剤であってもよいし、塗料の硬化剤であってもよいし、硬化剤以外の途液であってもよい。なお、触媒や反応開始剤、硬化剤の配合量は、主剤100質量部に対して、0.001~10質量部と、少ないことが一般的であり、これらを均一に混合することが従来は困難であった。これに対し、本発明によれば、第1塗液に対して第2液の配合量が少ないものであっても、第1塗液と第2塗液を均一に混合して塗布することができる。
【0048】
基材ABおよび塗膜CLの材質、種別、形状等は、特に限定されることはない。例えば、基材ABおよび塗膜CLは、円形、楕円形、三角形や四角形等の多角形、その他の形状であってもよい。基材ABとしては、例えば、食品、樹脂容器、シリコン半導体ウエハや化合物半導体ウエハ等の半導体ウエハ、回路基板、光ディスク等の情報記録基板、ガラス板、鋼板、陶器、木板または樹脂等の単体物やフィルム、紙、またはシートであってもよいし、それら2つ以上で形成された複合物や、剥離フィルムや剥離紙等の複合物でであってもよく、任意の形態の部材や物品なども対象とすることができる。塗膜CLは、粘着層、接着層等の粘接着形態のものでもよいし、印刷受理層やハードコート層、剥離層等のコート被膜形態のものでもよいし、フォトレジスト等の他の形態のものでもよい。
【0049】
本発明における手段および工程は、それら手段および工程について説明した動作、機能または工程を果たすことができる限りなんら限定されることはなく、まして、前記実施形態で示した単なる一実施形態の構成物や工程に全く限定されることはない。例えば、第1ノズルは、第1塗液を噴射可能なものであればどんなものでもよく、出願当初の技術常識に照らし合わせてその技術範囲内のものであればなんら限定されることはない(その他の手段および工程も同じ)。
【0050】
前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、2軸または3軸以上の関節を備えた多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダおよびロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる。
前記実施形態において、ローラ等の回転部材が採用されている場合、当該回転部材を回転駆動させる駆動機器を備えてもよいし、回転部材の表面や回転部材自体をゴムや樹脂等の変形可能な部材で構成してもよいし、回転部材の表面や回転部材自体を変形しない部材で構成してもよいし、ローラの代わりに回転するまたは回転しないシャフトやブレード等の他の部材を採用してもよいし、支持(保持)手段や支持(保持)部材等の被支持部材(被保持部材)を支持(保持)するものが採用されている場合、メカチャックやチャックシリンダ等の把持手段、クーロン力、接着剤(接着シート、接着テープ)、粘着剤(粘着シート、粘着テープ)、磁力、ベルヌーイ吸着、吸引吸着、駆動機器等で被支持部材を支持(保持)する構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0051】
EA…二液混合噴射装置
10…第1ノズル
11…第1塗液噴射孔
12…第1気体噴射孔
20…第2ノズル
21…第2塗液噴射孔
22…第2気体噴射孔
30…制御手段
AB1…被塗布面
PA1…塗布領域
PA2…塗布領域
θ1…傾斜角度
θ2…傾斜角度