(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146798
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】ドアラッチ装置
(51)【国際特許分類】
E05B 77/06 20140101AFI20231004BHJP
E05B 79/08 20140101ALI20231004BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
E05B77/06 Z
E05B79/08
B60J5/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054182
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】竹中 英人
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ32
2E250KK01
2E250LL01
2E250PP04
2E250PP05
2E250PP09
(57)【要約】
【課題】規制部によるリンクの揺動規制を解除して、ドアを開放するときの操作性を向上できるドアラッチ装置を提供する。
【解決手段】ドアラッチ装置10は、設定値以上の慣性力の作用によりリンク31がバネ部材33の付勢力に抗してロック位置側に揺動すると、バネ部材33を係止し、バネ部材33によるアンロック位置側へのリンク31の揺動を規制する規制部35を備える。リンク31は、規制部35によって揺動が規制され、且つオープンレバー41の回転力を受けて後退位置から進出位置に移動されるとき、バネ部材33の少なくとも一部を移動させて規制部35との係止を解除し、リンク31の揺動規制を解除する規制解除部38を有する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストライカを係脱可能で、前記ストライカの係合を解除するための操作を受ける操作受部を有するラッチ機構と、
ドアハンドルの操作に連動して回転するオープンレバーと、
前記オープンレバーの回転力を受けて前記操作受部側に移動した進出位置と前記操作受部から離れた後退位置との間を第1方向に沿って進退可能、且つ前記オープンレバーの回転力を前記操作受部に伝達可能なアンロック位置と伝達不可能なロック位置との間を前記第1方向と交差する第2方向に沿って揺動可能なリンクと、
前記リンクを前記ロック位置側から前記アンロック位置側に付勢する一方、前記リンクに設定値以上の慣性力が作用すると、前記アンロック位置から前記ロック位置側への前記リンクの揺動を許容するバネ部材と、
前記設定値以上の慣性力の作用により前記リンクが前記バネ部材の付勢力に抗して前記ロック位置側に揺動すると、前記バネ部材を係止し、前記バネ部材による前記アンロック位置側への前記リンクの揺動を規制する規制部と
を備え、
前記リンクは、前記規制部によって揺動が規制され、且つ前記オープンレバーの回転力を受けて前記後退位置から前記進出位置に移動されるとき、前記バネ部材の少なくとも一部を移動させて前記規制部との係止を解除し、前記リンクの揺動規制を解除する規制解除部を有する、ドアラッチ装置。
【請求項2】
前記バネ部材は移動可能なロックレバーに配置されており、
前記リンクは、前記バネ部材を介して前記ロックレバーの移動に連動して揺動可能であり、前記規制部によって揺動規制されているとき、前記オープンレバーの回転力を前記操作受部に伝達不可能な規制位置に位置する、請求項1に記載のドアラッチ装置。
【請求項3】
前記規制位置にある前記リンクの前記進出位置側への移動によって前記規制部による前記リンクの揺動規制を解除する第1ストロークは、前記アンロック位置にある前記リンクの前記進出位置側への移動によって前記リンクが前記操作受部に当接する第2ストロークよりも長い、請求項2に記載のドアラッチ装置。
【請求項4】
前記リンクは、前記第1方向に沿って延びるガイド溝が設けられた被連結部を備え、
前記バネ部材は、
前記第1方向と前記第2方向の双方に交差する第3方向への移動によって、前記規制部に係脱可能な被係止部と、
前記リンクの前記第1方向に沿った進退を許容するように前記ガイド溝内に挿通された挿通部と、
前記規制位置にある前記リンクが前記後退位置から前記進出位置に移動するときの前記規制解除部の移動軌道上に位置し、前記規制部から前記被係止部が離れるように前記規制解除部によって前記第3方向に移動される受部と
を備える、請求項2又は3に記載のドアラッチ装置。
【請求項5】
前記規制部は、前記第3方向に突出し、前記第2方向に延びる凸条からなり、
前記規制解除部は、前記受部を移動させる傾斜部を有し、前記被連結部から前記第3方向に突出する突起からなる、
請求項4に記載のドアラッチ装置。
【請求項6】
前記規制解除部の前記傾斜部は、前記進出位置側から前記後退位置側に向けて前記規制部から離れる向きに傾斜している、請求項5に記載のドアラッチ装置。
【請求項7】
前記受部と前記リンクの間には、前記第3方向の前記規制解除部の高さよりも小さく、前記規制解除部が進入可能な隙間を有する、請求項5又は6に記載のドアラッチ装置。
【請求項8】
前記第3方向の前記規制解除部の高さは、前記第3方向の前記規制部の高さ以上である、請求項5から7のいずれか1項に記載のドアラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアには、車体に対してドアを開放可能に保持するドアラッチ装置が取り付けられている。ドアラッチ装置は、ドアハンドルの操作によってラッチ状態からラッチ解除に切換可能なラッチ機構と、キー又はノブの操作によってロック状態とアンロック状態に切換可能なロック機構とを備える。ラッチ状態からラッチ解除への切り換えは、ロック機構がアンロック状態のときに可能であり、ロック機構がロック状態のときには不可能である。ラッチ状態では、クローレバーがフォークをストライカに係止した位置で保持する。ラッチ解除では、クローレバーによるフォークの保持が解除され、フォークはストライカから外れる。ラッチ解除によりドアが開放可能となる。
【0003】
特許文献1には、衝突時、特に側突時、ロック機構がアンロック状態にあり、衝突荷重入力によるドアパネルの変形によってラッチ解除に切り換えるときの操作と同様の動きが生じても、ドアが開放されないようにしたドアラッチ装置が開示されている。このドアラッチ装置のロック機構は、ラッチ機構を操作するためのリンク、リンクをアンロック位置とロック位置に揺動させるロックレバー、及びロックレバーにリンクを係着するバネ部材を備える。
【0004】
リンクは、アンロック位置にあるときに衝突荷重入力によって慣性力が作用すると、バネ部材の付勢力に抗してロック位置側に移動可能な質量体からなる。ラッチ機構とロック機構を配置するフェンスブロックには、慣性力の作用によってリンクと一体に移動したバネ部材を係止し、アンロック位置側へのリンクの揺動を規制する規制部が設けられている。これにより、衝突荷重の入力によってリンクがロック位置に移動して保持され、その後にラッチ解除に切り換えるときの操作と同様の動きが生じても、リンクによるラッチ機構の操作を不可能とし、ドアの開放を防止できる。また、ロックレバーには、アンロック位置のリンクをロック位置に揺動させるときの移動によって、規制部に対するバネ部材の係止を解除し、リンクの揺動規制を解除する規制解除部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のドアラッチ装置では、キー又はノブの操作によってロック機構をロック状態に切り換えて、規制部によるリンクの揺動規制を解除した後、更にロック機構をアンロック状態に切り換えなければ、ドアを開放できない。つまり、ロック機構の切り換え操作を2回行った後、ドアハンドルを開操作しなければ、ドアを開放できない。そのため、特許文献1のドアラッチ装置には、規制部によるリンクの揺動規制を解除して、ドアを開放するときの操作性について、改善の余地がある。
【0007】
本発明は、規制部によるリンクの揺動規制を解除して、ドアを開放するときの操作性を向上できるドアラッチ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ストライカを係脱可能で、前記ストライカの係合を解除するための操作を受ける操作受部を有するラッチ機構と、ドアハンドルの操作に連動して回転するオープンレバーと、前記オープンレバーの回転力を受けて前記操作受部側に移動した進出位置と前記操作受部から離れた後退位置との間を第1方向に沿って進退可能、且つ前記オープンレバーの回転力を前記操作受部に伝達可能なアンロック位置と伝達不可能なロック位置との間を前記第1方向と交差する第2方向に沿って揺動可能なリンクと、前記リンクを前記ロック位置側から前記アンロック位置側に付勢する一方、前記リンクに設定値以上の慣性力が作用すると、前記アンロック位置から前記ロック位置側への前記リンクの揺動を許容するバネ部材と、前記設定値以上の慣性力の作用により前記リンクが前記バネ部材の付勢力に抗して前記ロック位置側に揺動すると、前記バネ部材を係止し、前記バネ部材による前記アンロック位置側への前記リンクの揺動を規制する規制部とを備え、前記リンクは、前記規制部によって揺動が規制され、且つ前記オープンレバーの回転力を受けて前記後退位置から前記進出位置に移動されるとき、前記バネ部材の少なくとも一部を移動させて前記規制部との係止を解除し、前記リンクの揺動規制を解除する規制解除部を有する、ドアラッチ装置を提供する。
【0009】
衝突荷重が入力されると、バネ部材の付勢力に抗してアンロック位置にあるリンクがロック位置側に揺動し、規制部へのバネ部材の係止によってアンロック位置側へのリンクの揺動が規制される。この状態では、リンクが進出してもオープンレバーの回転力をラッチ機構の操作受部に伝達できない。そのため、ドアパネルの変形によって、ラッチ機構をラッチ解除に切り換えるときの操作と同様の動きが生じても、ドアの開放を防止できる。
【0010】
規制部によってリンクの揺動が規制されているとき、ドアハンドルの操作によってオープンレバーが回転されると、リンクが後退位置から進出位置に移動し、リンクの規制解除部がバネ部材の少なくとも一部を移動させる。これにより、バネ部材と規制部の係止を解除し、規制部によるリンクの揺動規制を解除できる。そのため、リンクは、後退位置に後退するとともにバネ部材の付勢力によってアンロック位置に揺動する。よって、ドアハンドルの操作を止め、再びドアハンドルを操作すると、オープンレバーを介して後退位置のリンクが進出位置に移動し、ラッチ機構の操作受部を操作してストライカの係合を解除できる。
【0011】
このように、1回目のドアハンドルの操作によってリンクの揺動規制を解除でき、2回目のドアハンドルの操作によってドアを開放できるため、ドアを開放するときの操作性を向上できる。しかも、リンクの規制解除操作はドアを開けるときと同じドアハンドルの操作であるため、操作ミスや誤操作等の不都合が生じることはない。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、規制部によるリンクの揺動規制を解除して、ドアを開放するときの操作性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図5】ロックレバー、リターンスプリング、及びリンクの分解斜視図。
【
図6】ロックレバー、リターンスプリング、及びリンクの正面図。
【
図10】アンロック状態でアウタレバーを操作したロック機構の正面図。
【
図15】非常ロック解除操作状態のロック機構の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に従って説明する。
【0015】
添付図面におけるX方向は車幅方向であり、矢印が示す向きが外側で、矢印とは逆向きが内側である。Y方向は車長方向であり、矢印が示す向きが前側で、矢印とは逆向きが後側である。Z方向は車高方向であり、矢印が示す向きが上側で、矢印とは逆向きが下側である。
【0016】
図1を参照すると、本発明の実施形態に係るドアラッチ装置10は、車両のドア1内に配置され、図示しない車体に対してドア1を閉じた状態に保持する。このドアラッチ装置10は、車体に対してドア1を開放可能なアンロック状態と開放不可能なロック状態とに切り換え可能である。アンロック状態では図示しないドアハンドルの操作によってドア1を開放でき、ロック状態ではドアハンドルを操作してもドア1を開放できない。
【0017】
ドア1は、YZ平面に沿って延びるアウタパネル2、アウタパネル2の車幅方向内側に位置するインナパネル3、及びアウタパネル2とインナパネル3それぞれの車長方向後端に連なり、XZ平面に沿って延びるエンドパネル4を備える。アウタパネル2、インナパネル3、及びエンドパネル4によって、ドアラッチ装置10を配置する閉空間が画定されている。
【0018】
ドアラッチ装置10は、車高方向から見てL字形状のハウジング12を備える。
図2及び
図3を参照すると、ドアラッチ装置10は、ラッチ機構20、ロック機構30、開放機構40、及び作動機構(図示せず)を備える。
【0019】
図2及び
図3を参照すると、ラッチ機構20、ロック機構30、及び開放機構40は、いずれもベース部材としてのフェンスブロック15に配置され、
図1に示すハウジング12のうち、エンドパネル4に沿って配置される第1収容部13に収容されている。
図1を参照すると、フェンスブロック15の車長方向後端は金属製のカバー16によって覆われている。作動機構は、
図1に示すハウジング12のうち、インナパネル3に沿って配置される第2収容部14に収容されている。
【0020】
図1及び
図2を参照すると、ラッチ機構20は、フォーク21とクロー22を備え、フェンスブロック15の車長方向後側に配置されている。フォーク21は、スプリング(図示せず)によって
図2に破線で示す係合位置から
図2に実線で示す開放位置に向けて付勢されており、車体に取り付けられたU字型のストライカ5を係脱可能である。クロー22は、スプリング(図示せず)によって
図2に破線で示す非係止位置から
図2に実線で示す係止位置に向けて付勢されており、係合位置に回転したフォーク21を係止する。
図3を参照すると、クロー22は、フェンスブロック15を貫通して車長方向前側に突出し、フォーク21によるストライカ5の係合を解除するための操作を受ける棒状の操作受部23を備える。
【0021】
引き続いて
図3を参照すると、ロック機構30は、リンク31、ロックレバー32、及びリターンスプリング(バネ部材)33を備え、フェンスブロック15の車長方向前側に配置されている。ロック機構30は、
図8に示すアンロック状態と
図11に示すロック状態とに切換可能であり、この切り換えは、ロックレバー32の回転によってリターンスプリング33を介してリンク31の姿勢を変更することで行われる。
【0022】
図8に示すアンロック状態では、リンク31が、開放機構40の操作力を受けて
図8に示す後退位置から
図10に示す進出位置に移動して、ラッチ機構20の操作受部23を操作する。これにより、クロー22によるフォーク21の係止を解除し、フォーク21によるストライカ5の係合を解除することで、ドア1を開放できる。
図11に示すロック状態では、リンク31が、開放機構40の操作力を受けて
図8に示す後退位置から車高方向に進出するが、ラッチ機構20の操作受部23に当接することなく空振りする。これにより、クロー22によるフォーク21の係止を解除できず、フォーク21によるストライカ5の係合を解除できないため、ドア1を開放できない。アンロック状態とロック状態のいずれでも、リンク31は、開放機構40からの操作力の伝達が途絶えると、進出位置から後退位置に移動する。
【0023】
図3を参照すると、開放機構40は、オープンレバーであるアウタレバー41とインナレバー42を備え、フェンスブロック15の下部に回転可能に配置されている。
図8及び
図10を参照すると、アウタレバー41は、ロッド6を介して接続されたアウタドアハンドル(図示せず)の操作に連動して回転し、アウタドアハンドルの操作力をリンク31に伝達する。インナレバー42は、ワイヤ(図示せず)を介して接続されたインナドアハンドル(図示せず)の操作に連動して回転し、インナドアハンドルの操作力をリンク31に伝達する。
【0024】
作動機構は、駆動源であるモータと、複数の回転部材からなる伝達機構とを備え、ロック機構30を
図8に示すアンロック状態と
図11に示すロック状態に切り換える。伝達機構は、モータ、ドア1の車内側に配置されたノブ(図示せず)、及びドア1の車外側に配置されたキーシリンダ(図示せず)に機械的に接続されるとともに、ロック機構30のロックレバー32に機械的に接続されている。モータの駆動力、ノブの操作力、及びキーシリンダの操作力を伝達することによって、ロックレバー32が
図8に示すアンロック回転位置と
図11に示すロック回転位置に回転する。
【0025】
このように構成されたドアラッチ装置10では、側突等によってドア1に衝突荷重IF(
図13参照)が加わり、アウタパネル2が変形することによってロッド6が下向きに移動し得る。この際、ロック機構30が
図8に示すアンロック状態にある場合、ラッチ状態のラッチ機構20がラッチ解除に切り換わり、ドア1が開放し得る。そこで、本実施形態では、衝突荷重IFが入力されると、ラッチ状態のラッチ機構20をラッチ解除に切換不可能な
図13に示す非常ロック(イナーシャロック)状態にロック機構30を切換可能とし、意図しないドア1の開放を防止する。
【0026】
以下、ロック機構30について具体的に説明する。
【0027】
図3及び
図4を参照すると、ロック機構30は、フェンスブロック15の下部に配置されたリンク31、フェンスブロック15の上部に配置されたロックレバー32、及びロックレバー32の車長方向前側に配置されたリターンスプリング33を備える。そのうち、リターンスプリング33は、巻回部33a、第1アーム部33b、及び第2アーム部33cを備えるキックバネからなる。
【0028】
図8、
図10、及び
図11を参照すると、衝突荷重IFの入力が無い通常時、ロックレバー32に対してリンク31は、リターンスプリング33によってアンロック位置側である車幅方向内向きに付勢され、初期位置に保持されている。
図8及び
図11を参照すると、リンク31は、作動機構によって回転されるロックレバー32の回転力がリターンスプリング33を介して伝達されることで、
図8に示すアンロック位置と
図11に示すロック位置の間を車幅方向(第2方向)に沿って揺動する。
図8及び
図10を参照すると、リンク31は、アウタレバー41及びインナレバー42の操作力を受けて、
図8に示す後退位置と
図10に示す進出位置との間を車高方向(第1方向)に沿って進退する。
【0029】
図13を参照すると、衝突荷重IFが入力された非常時、
図8に示すアンロック状態のロック機構30は
図13に示す非常ロック状態に切り換わる。
図15を参照すると、非常ロック状態では、リンク31がアウタレバー41の操作力を受けて後退位置から車高方向に進出可能であるが、ラッチ機構20の操作受部23に当接することなく空振りする。よって、クロー22によるフォーク21の係止を解除できず、フォーク21によるストライカ5の係合を解除できないため、ドア1を開放できない。
【0030】
非常時に
図8に示すアンロック状態から
図13に示す非常ロック状態に切換可能とするために、本実施形態のロック機構30では、リンク31が質量体によって構成され、フェンスブロック15に規制突起(規制部)35が設けられている。
【0031】
質量体からなるリンク31とは、他の部材の成形材料である樹脂よりも比重が大きい材料からなり、衝突荷重IFの入力によって慣性力が作用すると、現在の位置に留まり続けることが可能な構成である。つまり、リンク31は、設定値以上の慣性力の作用によってリターンスプリング33の付勢力に抗して、
図8に示すアンロック位置から
図13に示す規制位置(ロック位置側)に向けて、ロックレバー32に対して車幅方向外側に相対的に揺動可能である。言い換えれば、リターンスプリング33は、設定値以上の慣性力の作用によって、
図8に示すアンロック位置から
図13に示す規制位置へのリンク31の移動を許容する。
【0032】
車幅方向外側へのリンク31の移動を許容する設定値は、ドア1に加えられる衝撃力、リンク31の質量、及びリターンスプリング33の付勢力によって定められる。この設定値が大きすぎる場合、衝撃が加わった際に車幅方向外側へのリンク31の移動が困難になる。設定値が小さすぎる場合、ドア1の開閉時の衝撃でも車幅方向外側にリンク31が移動する。つまり、設定値は大きすぎても小さすぎても好ましくない。そこで、本実施形態では、アウタパネル4が変形するような衝撃力がドア1に加わったときに、リンク31が車幅方向外側に相対移動するように、リンク31の質量、及びリターンスプリング33の付勢力が設定されている。
【0033】
規制突起35は、衝突荷重IFの入力によって、
図8に示すアンロック位置から
図13に示す規制位置にリンク31が揺動したときに、この揺動に連動して移動するリターンスプリング33の第2アーム部33cを係止する(
図14参照)。これにより、規制突起35は、リターンスプリング33を介して初期位置(アンロック位置)に向けたリンク31の揺動を規制する。
【0034】
通常時に
図13に示す非常ロック状態に切り換わることを防ぐために、ロックレバー32には、リターンスプリング33の第2アーム部33cを規制突起35に係止不可能な位置に保持する保持部36が設けられている。また、ロックレバー32には、非常時に第2アーム部33cを規制突起35に誘導するガイド片(ガイド部)37が設けられている。また、リンク31には、
図13に示す非常ロック状態を解除するための凸条部(規制解除部)38が設けられている。
【0035】
以下、リンク31、ロックレバー32、リターンスプリング33、規制突起35、ガイド片37、保持部36、及び凸条部38について具体的に説明する。
【0036】
リンク31は、車高方向に延びる板体であり、アウタレバー41に接続される入力部31a、リターンスプリング33に連結される被連結部31c、及びクロー22の操作受部23を操作する操作部31eを備える。つまり、リンク31は、下端側がアウタレバー41に接続され、上端側がリターンスプリング33を介してロックレバー32に接続されることで、フェンスブロック15に配置されている。また、リンク31には、規制突起35によるリターンスプリング33の第2アーム部33cの係止を解除し、リンク31の揺動規制を解除するための凸条部38が設けられている。
【0037】
図4及び
図5を参照すると、入力部31aは、フェンスブロック15に向けて突出する軸部31bを備える。軸部31bは、スプリング43によって
図10に示す操作位置から
図8に示す非操作位置に付勢されたアウタレバー41の軸孔41aに差し込まれている。これにより、リンク31は、アウタレバー41に回転可能に支持され、
図8に示すアンロック位置と
図11に示すロック位置との間を揺動可能、且つアウタレバー41の回転力を受けて車高方向に沿って進退可能である。入力部31aはインナレバー42の上部に配置され、インナレバー42の回転によって上向きに押し上げられる。つまり、リンク31は、インナレバー42の回転力を受けて車高方向に沿って進退可能である。
【0038】
図3及び
図5を参照すると、被連結部31cは、ロックレバー32の車長方向前側に重ねて配置されている。被連結部31cには、リターンスプリング33が挿通されるガイド溝31dが設けられている。ガイド溝31dは、リンク31の進退方向である車高方向に延びており、ロックレバー32に対するリンク31の相対移動を許容する。ガイド溝31dの幅は、リターンスプリング33を介してロックレバー32の回転に連動するリンク31の揺動、及びリンク31の進退を妨げない範囲に設定されている。
【0039】
操作部31eは、入力部31aと被連結部31cの間からフェンスブロック15に向けて突出している。
図8及び
図10を参照すると、リンク31がアンロック位置、且つ後退位置にあるとき、操作部31eは、クロー22の操作受部23の車高方向下側に位置し、進出位置へのリンク31の移動によって操作受部23を上向きに操作可能である。リンク31が
図11に示すロック位置にあるとき、及びリンク31が
図13に示す非常ロック位置にあるとき、操作部31eは、操作受部23に対して車幅方向外側に間隔をあけて位置し、後退位置から進出位置にリンク31が移動しても、操作受部23を操作(当接)不可能である。つまり、操作部31eの移動軌道上に操作受部23が位置するリンク31の姿勢がアンロック位置に設定され、操作部31eの移動軌道上に操作受部23が無いリンク31の姿勢がロック位置と非常ロック位置に設定されている。
【0040】
凸条部38は、被連結部31cのうちガイド溝31dの車幅方向外側の部分に設けられている。この凸条部38の具体的構造については後に詳述する。
【0041】
図4及び
図5を参照すると、ロックレバー32は、フェンスブロック15の上部に配置された板体で、作動機構によって
図8に示すアンロック回転位置と
図11に示すロック回転位置との間を回転される。このロックレバー32の回転に連動して、リターンスプリング33を介してリンク31がアンロック位置とロック位置に回転する。ロックレバー32は、フェンスブロック15に配置されたアクションスプリング34によって、アンロック回転位置とロック回転位置に保持される。
【0042】
図4及び
図5を参照すると、ロックレバー32は、軸部32aと接続部32bを備える。軸受部15aへの軸部32aの差し込みによって、ロックレバー32がフェンスブロック15に回転可能に支持されている。接続部32bへの伝達機構の機械的な接続によって、ロックレバー32がアンロック回転位置とロック回転位置に回転される。
【0043】
図4及び
図6を参照すると、ロックレバー32は、凸部32c、係止部32d、挿通溝32e、及び規制枠32fを備え、これらによってリターンスプリング33が取り付けられている。凸部32cは、軸部32aと同軸で車長方向前側に突出するように設けられ、リターンスプリング33の巻回部33aが嵌合して配置される。係止部32dは、凸部32cに対して車幅方向外側に間隔をあけて設けられ、リターンスプリング33の第1アーム部33bを係止する。また、係止部32dにアクションスプリング34の突出部34aが圧接されることで、ロックレバー32がアンロック回転位置とロック回転位置に保持される。挿通溝32eは、凸部32cのリンク31側である下側に設けられ、車幅方向に延びている。挿通溝32eにはリターンスプリング33の第2アーム部33cが挿通され、車幅方向への第2アーム部33cの移動を許容する。規制枠32fは、挿通溝32eの下側に設けられ、挿通溝32eに沿って車幅方向に延びている。規制枠32fの車長方向後側に2アーム部33cが移動可能に配置され、規制枠32fの車長方向前側の面にリンク31の被連結部31cが摺動可能に配置される。
【0044】
図6を参照すると、ロックレバー32は、車長方向前側に突出するストッパ部32gを備える。ストッパ部32gは、リターンスプリング33の第2アーム部33cによって付勢されたリンク31を初期位置に位置決めする。
【0045】
ロックレバー32には更に、第2アーム部33cを規制突起35に係止不可能な位置に保持する保持部36と、第2アーム部33cを規制突起35に誘導するガイド片37とが設けられている。これらの具体的構造については後に詳述する。
【0046】
図5及び
図6を参照すると、リターンスプリング33は、巻回部33a、第1アーム部33b、及び第2アーム部33cを備える。リターンスプリング33は、ロックレバー32の車長方向前側の面に取り付けられ、リンク31をストッパ部32gに向けて車幅方向内側に付勢する。
【0047】
巻回部33aは凸部32cに嵌合され、第1アーム部33bは係止部32dに係止される。巻回部33aは、車幅方向外側への第2アーム部33cの移動によって収縮され、伸張によって第2アーム部33cを車幅方向内側に移動させる。
【0048】
図5から
図7を参照すると、第2アーム部33cは、挿通溝32eを通してロックレバー32の車長方向の前側から後側に迂回し、規制枠31fの外縁からリンク31に向けて突出している。巻回部33aの伸張によって第2アーム部33cが車幅方向内側に移動することで、ロックレバー32に対してリンク31が初期位置(アンロック位置側)に付勢される。
【0049】
第2アーム部33cは、本体33d、被係止部33e、挿通部33f、及び受部33gを備える。
【0050】
被係止部33eは、第2アーム部33cのうち、規制枠32fの車長方向後側に位置する部分である。被係止部33eは、巻回部33aに連なる本体33dの下端からフェンスブロック15に向けて車長方向後側に屈曲した後、リンク31に向けて車高方向下側に屈曲し、車高方向に延びている。本体33dがロックレバー32の保持部36に保持された
図6に示す通常時、被係止部33eは、
図7に一点鎖線で示す規制突起35に対して車長方向(第3方向)の前側に間隔をあけて位置している。そのため、保持部36による第2アーム部33cの保持状態では、被係止部33eは規制突起35に係止不可能である。
図13及び
図14を参照すると、ロックレバー32に対して第2アーム部33cが車幅方向外側に移動すると、保持部36による本体33dの保持が解除される。これにより、被係止部33eは、ロックレバー32に対する車長方向後側への移動が許容され、規制突起35への係止が可能になる。
【0051】
図5から
図7を参照すると、挿通部33fは、被係止部33eの下端に連なり、車長方向前側に突出している。ガイド溝31d内への挿通部33fの挿通によって、ロックレバー32とリターンスプリング33に対するリンク31の車高方向に沿った進退が許容されている。挿通部33fがガイド溝31dの溝壁を押圧することによって、リンク31が車幅方向内側に付勢されている。ロックレバー32に対してリンク31が車幅方向外側に揺動することによって、ロックレバー32に対して第2アーム部33cが連動して車幅方向外側に移動する。挿通部33fの車長方向の全長は、凸条部38を除く被連結部31cの車長方向の厚みよりも長い。
【0052】
受部33gは、挿通部33fの車長方向の前端に連なり、車幅方向外側に突出している。つまり、受部33gは、リンク31の被連結部31cのうち凸条部38が設けられた方に突出している。受部33gの車幅方向の長さは、凸条部38の車幅方向の幅よりも長い。リンク31が
図13に示す規制位置、且つ後退位置にあるとき、受部33gは凸条部38の上側に間隔をあけて位置する。リンク31が
図15に示す進出位置にあるとき、受部33gは凸条部38上、つまり凸条部38の車長方向前側に位置する。このように、受部33gは、後退位置から進出位置にリンク31が移動するときの凸条部38の移動軌道上に位置している。
【0053】
図9及び
図12を参照すると、保持部36に本体33dが保持された
図8及び
図11に示す通常時、受部33gは凸条部38の車長方向前側に間隔をあけて位置する。そのため、
図8に示すアンロック状態及び
図11に示すロック状態で、後退位置のリンク31が進出位置に移動しても、受部33gに規制突起35は干渉しない。一方、
図13及び
図14を参照すると、保持部36による本体33dの保持が解除された非常時、第2アーム部33cは車長方向後側に移動し、被係止部33eが規制突起35に係止される。この非常ロック状態では、受部33gは、凸条部38の車長方向前側の面よりも車長方向後側に位置し、被連結部31cに対して間隔をあけて位置する。そのため、
図15及び
図16に示すように、非常ロック状態にあるリンク31が後退位置から進出位置に移動されると、凸条部38によって受部33gは、規制突起35から被係止部33eが離れるように車長方向前側に移動する。
【0054】
図4を参照すると、規制突起35は、フェンスブロック15のうちロックレバー32と対向する車長方向前側の面に設けられている。規制突起35は、車長方向前側に突出し、車幅方向に延びる凸条からなる。
図9及び
図14を参照すると、規制突起35の車長方向の高さは、リターンスプリング33の被係止部33eの直径よりも高く、保持部36に第2アーム部33cの本体33dが保持された
図8及び
図11に示す通常時の被係止部33eとの間に隙間が確保される寸法設定である。規制突起35の車幅方向外側の端部には、被係止部33eを係止する係止部35aが設けられている。係止部35aは、車長方向の前端に車幅方向外側に突出した係止爪を有する鉤爪状である。
【0055】
係止部35aには、保持部36に保持された第2アーム部33cの本体33dが、車幅方向外側に移動し、且つ車長方向後側に移動することで、被係止部33eが係止する。
図13及び
図14に示すように、被係止部33eが係止部35aに係止したときのリンク31の揺動角度位置がリンク31の規制位置である。リンク31が規制位置にあるとき、リンク31の操作部31eは、クロー22の操作受部23に対して車幅方向外側に間隔をあけて位置し、後退位置から進出位置にリンク31が移動しても、操作受部23には当接不可能である。つまり、車幅方向における係止部35aの位置は、後退位置のリンク31が進出位置に移動しても、操作部31eによって操作受部23を操作できない、アンロック位置及びロック位置以外の場所に設定されている。但し、規制位置とロック位置は、同じ場所に設定されてもよい。
【0056】
図8に示すアンロック位置、且つ後退位置にあるリンク31の角度位置を基準にすると、
図13に示す規制位置、且つ後退位置にあるリンク31の揺動角度は、
図11に示すロック位置、且つ後退位置にあるリンク31の揺動角度よりも小さい。つまり、通常時、ロックレバー32によってリンク31は、リターンスプリング33を介してアンロック位置から規制位置を経てロック位置に揺動する。また、ロックレバー32によってリンク31は、リターンスプリング33を介してロック位置から規制位置を経てアンロック位置に揺動する。この際、保持部36に保持された第2アーム部33cの本体33dは車長方向後側に移動できず、規制突起35との間に間隔をあけて位置する被係止部33eは、係止部35aに係止されることはない。一方、衝突荷重IFが入力された非常時、
図13及び
図14に示すように、リンク31の揺動に連動してロックレバー32に対して第2アーム部33cが車幅方向外側に移動し、保持部36による本体33dの保持が解除されるため、係止部35aに被係止部33eが係止する。
【0057】
図6及び
図7を参照すると、保持部36は、ロックレバー32のうち凸部32cと挿通溝32eの間、且つストッパ部32gに隣接して設けられている。保持部36はロックレバー32のベース面32hから車長方向前側に膨出しており、車長方向前側の面は平坦面である。ベース面32hから保持部36の車長方向前側の面までの保持部36の厚みは、規制突起35の車長方向の厚みよりも大きい。これにより、保持部36に第2アーム部33cの本体33dが保持された状態では、被係止部33eは規制突起35に係止不可能であり、保持部36による第2アーム部33cの保持が解除されると、被係止部33eが規制突起35に係止可能になる。
【0058】
保持部36の車幅方向外側の端部には、車幅方向外側に向かうに従ってベース面32hに近づくように傾斜した傾斜部36aが設けられている。この傾斜部36aを含む保持部36は、規制突起35による被係止部33eの係止を解除し、リンク31の揺動規制を解除する規制解除部としても機能する。具体的には、
図13を参照すると、非常ロック状態では、第2アーム部33cは、保持部36による保持が解除され、ベース面32h上に位置している。この状態で、アンロック回転位置にあるロックレバー32がロック回転位置に向けて反時計回りに回転すると、傾斜部36aが第2アーム部33cの本体33dの車長方向後側に入り込む。これにより、第2アーム部33cは、傾斜部36aによって車長方向前側に移動された後、保持部36に保持される。その結果、本体33dと一体に移動する被係止部33eと規制突起35の係止が解除されるため、リンク31の揺動規制を解除できる。
【0059】
図5及び
図6を参照すると、ガイド片37は、挿通溝32eの車幅方向外側に位置する部分に設けられ、車幅方向内側へ突出している。ガイド片37には、車幅方向の内側から外側に向かうに従って車長方向の後側、つまり規制突起35に近づく向きに傾斜した傾斜部37aが設けられている。衝突荷重IFの入力によって、リンク31を介してリターンスプリング33の第2アーム部33cが車幅方向外側に移動すると、傾斜部37aによって第2アーム部33cを規制突起35に向けて車長方向後側に誘導できる。そのため、衝突荷重IFの入力によって被係止部33eを規制突起35に確実に係止できる。
【0060】
図4及び
図6を参照すると、凸条部38は、リンク31のガイド溝31dの車幅方向外側に設けられている。この凸条部38は、被連結部31cから車長方向前側、つまり規制突起35から離れる向きに突出した突起からなる。リンク31が
図13に示す非常ロック状態にあるとき、アウタレバー41又はインナレバー42の回転による後退位置から進出位置へのリンク31の移動によって、凸条部38は、規制突起35による被係止部33eの係止を解除し、リンク31の揺動規制を解除する。
【0061】
具体的には、凸条部38は、リンク31が
図13に示す規制位置、且つ後退位置にあるとき、リターンスプリング33の受部33gの下側に間隔をあけて位置する。また、凸条部38は、リンク31が
図15に示す進出位置にあるとき、ロックレバー32と受部33gの間、つまり受部33gの車長方向後側に位置する。凸条部38には、車高方向の上側から下側に向かうに従って規制突起35から離れる向きに傾斜した傾斜部38aが設けられている。つまり、傾斜部38aは、進出位置側から後退位置側に向けて規制突起35から離れる向きに傾斜している。
【0062】
凸条部38の車長方向の高さは、規制突起35の車長方向の高さ以上である。凸条部38の上側に位置する被連結部31cと受部33gの間には、凸条部38の高さよりも小さい隙間が確保されている。これにより、後退位置のリンク31が進出位置に移動すると、被連結部31cと受部33gの間の隙間に傾斜部38aの上端が進入し、傾斜部38aの傾斜に従って受部33gを車長方向前側に移動させ、連動して被係止部33eを規制突起35から離間させて係止を解除できる。
【0063】
図13を参照すると、ロック機構30が非常ロック状態にあり、リンク31が後退位置にあるとき、凸条部38のうち規制突起35から最も離れた車長方向外側の面と受部33gとの最短距離である間隔はS1である。
図8を参照すると、ロック機構30がアンロック状態にあり、リンク31が後退位置にあるとき、リンク31の操作部31eとクロー22の操作受部23との間隔はS2である。
図8及び
図13を参照すると、凸条部38と受部33gの間隔S1は、操作部31eと操作受部23の間隔S2よりも大きい。つまり、規制位置にあるリンク31の進出位置側への移動によって規制突起35によるリンク31の揺動規制を解除する第1ストローク(間隔S1)は、アンロック位置にあるリンク31の進出位置側への移動によってリンク31が操作受部23に当接する第2ストローク(間隔S2)よりも長い。これにより、アウタレバー41又はインナレバー42の操作によってリンク31の揺動規制を解除した直後に、リターンスプリング33の付勢力で初期位置(アンロック位置)に戻ったリンク31によって、操作受部23が引き続いて操作されることを防止している。
【0064】
このロック機構30では、衝突荷重IFが入力されていない通常時には、リターンスプリング33の第2アーム部33cの本体33dが保持部36によって保持されているため、被係止部33eは規制突起35に係止不可能である。そのため、作動機構によってロックレバー32を回転させ、ロック機構30を
図8に示すアンロック状態と
図11に示すロック状態に切り換える作動を、被係止部33eと規制突起35が干渉によって妨げることはない。
【0065】
一方、ロック機構30が
図8に示すアンロック状態にあるとき、衝突荷重IFが入力されると、慣性力の作用によってリンク31がアンロック位置からロック位置側に移動し、この移動に連動してリターンスプリング33の第2アーム部33cも車幅方向外側に移動する。この際、
図13及び
図14に示すように、第2アーム部33cは、挿通溝32eに沿って車幅方向外側に移動した後、ガイド片37によって車長方向後側に誘導されるため、規制突起35に被係止部33eを確実に係止できる。これにより、挿通部33fが挿通されたリンク31は、アンロック位置に向けた揺動が規制される。そのため、アウタパネル2の変形によってロッド6が下向きに移動し、後退位置のリンク31が進出位置に移動しても、操作部31eが操作受部23を操作できない。よって、意図しないドア1の開放を確実に防止できる。
【0066】
ロック機構30が
図13に示す非常ロック状態にあるとき、インナドアハンドル又はアウタドアハンドルの操作によって、インナレバー42又はアウタレバー41を介してリンク31を進出位置に移動させると、
図15及び
図16に示すように、凸条部38がリターンスプリング33の受部33gを車長方向前側に移動させる。これにより、被係止部33eも車長方向前側に移動するため、規制突起35との係止が解除され、規制突起35によるリンク31の揺動規制が解除される。そのため、リンク31は
図8に示すアンロック位置に揺動する。その結果、インナドアハンドル又はアウタドアハンドルの操作を止め、もう一度操作を行うことによってドア1を開放できる。
【0067】
このように構成したドアラッチ装置10は、以下の特徴を有する。
【0068】
衝突荷重IFが入力されると、リターンスプリング33の付勢力に抗してアンロック位置にあるリンク31がロック位置側に揺動し、規制突起35へのリターンスプリング33の係止によってアンロック位置側へのリンク31の揺動が規制される。この非常ロック状態では、後退位置のリンク31が進出してもアウタレバー41の回転力をラッチ機構20の操作受部23に伝達できない。そのため、アウタパネル2の変形によって、ラッチ機構20をラッチ解除に切り換えるときの操作と同様の動きが生じても、ドア1の開放を防止できる。
【0069】
規制突起35によってリンク31の揺動が規制されているとき、ドアハンドルの操作によってアウタレバー41が回転されると、リンク31が後退位置から進出位置に移動し、リンク31の凸条部38がリターンスプリング33の一部を移動させる。これにより、リターンスプリング33と規制突起35の係止を解除し、規制突起35によるリンク31の揺動規制を解除できる。そのため、リンク31は、後退位置に後退するとともにリターンスプリング33の付勢力によってアンロック位置に揺動する。よって、ドアハンドルの操作を止め、再びドアハンドルを操作すると、アウタレバー41を介して後退位置のリンク31が進出位置に移動し、ラッチ機構20の操作受部23を操作してストライカ5の係合を解除できる。
【0070】
このように、1回目のドアハンドルの操作によってリンク31の揺動規制を解除でき、2回目のドアハンドルの操作によってドア1を開放できるため、ドア1を開放するときの操作性を向上できる。しかも、リンク31の規制解除操作は、ドア1を開けるときと同じドアハンドルの操作であるため、操作ミスや誤操作等の不都合が生じることはない。
【0071】
リンク31は、リターンスプリング33を介してロックレバー32の移動に連動して揺動可能であり、規制突起35によって揺動規制されているとき、アウタレバー41の回転力を操作受部23に伝達不可能な規制位置に位置する。そのため、衝突荷重IFの入力によるドア1の開放を確実に防止できる。
【0072】
規制突起35によるリンク31の揺動規制を解除する第1ストローク(S1)は、リンク31が操作受部23に当接する第2ストローク(S2)よりも長い。これにより、例えば衝突荷重IFの入力によってラッチ解除に切り換えるときの操作と同様の動きが生じ、リンク31の進出によってリターンスプリング33の係止が解除されて、リンク31の揺動規制が解除されても、引き続いてリンク31によるラッチ機構20の操作受部23の操作は不可能である。よって、衝突荷重IFの入力による意図しないドア1の開放を確実に防止できる。
【0073】
リターンスプリング33は、規制突起35に係脱可能な被係止部33eと、リンク31のガイド溝31d内に挿通された挿通部33fと、凸条部38によって移動される受部33gとを備える。よって、ロックレバー32の移動に連動したリンク31の揺動、衝突荷重IFの入力時のリンク31の揺動規制、及び凸条部38によるリンク31の揺動規制解除を、1個のリターンスプリング33によって実現できる。
【0074】
規制突起35が車長方向に突出して車幅方向に延びる凸条からなるため、リターンスプリング33の被係止部33eを確実に係止でき、アンロック位置側へのリンク31の揺動を規制できる。凸条部38が受部33gを移動させる傾斜部38aを有する突起からなるため、規制突起35への被係止部33eの係止を確実に解除でき、規制突起35によるリンク31の揺動規制を解除できる。
【0075】
凸条部38の傾斜部38aは進出位置側から後退位置側に向けて規制突起35から離れる向きに傾斜し、受部33gとリンク31の間には凸条部38を挿入可能な隙間を有する。しかも、凸条部38の高さは規制突起35の高さ以上である。そのため、規制突起35への被係止部33eの係止を確実に解除でき、規制突起35によるリンク31の揺動規制を解除できる。
【0076】
なお、本発明は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0077】
例えば、リンク31とリターンスプリング33は、別のプレートを介して接続されていてもよい。
【0078】
規制突起35によるリンク31の規制位置は、ロック位置と同じ角度位置であってもよく、進出によって操作部31eでラッチ機構20の操作受部23を操作不可能な位置であればよい。
【0079】
リンク31を付勢するバネ部材は、板バネであってもよく、ロック位置のリンク31をアンロック位置に付勢できる構成であればよい。
【符号の説明】
【0080】
1 ドア
2 アウタパネル(ドアパネル)
3 インナパネル
4 エンドパネル
5 ストライカ
6 ロッド
10 ドアラッチ装置
12 ハウジング
13 第1収容部
14 第2収容部
15 フェンスブロック
15a 軸受部
16 カバー
20 ラッチ機構
21 フォーク
22 クロー
23 操作受部
30 ロック機構
31 リンク
31a 入力部
31b 軸部
31c 被連結部
31d ガイド溝
31e 操作部
32 ロックレバー
32a 軸部
32b 接続部
32c 凸部
32d 係止部
32e 挿通溝
32f 規制枠
32g ストッパ部
32h ベース面
33 リターンスプリング(バネ部材)
33a 巻回部
33b 第1アーム部
33c 第2アーム部
33d 本体
33e 被係止部
33f 挿通部
33g 受部
34 アクションスプリング
34a 突出部
35 規制突起(規制部)
35a 係止部
36 保持部
36a 傾斜部
37 ガイド片
37a 傾斜部
38 凸条部(規制解除部)
38a 傾斜部
40 開放機構
41 アウタレバー(オープンレバー)
41a 軸孔
42 インナレバー(オープンレバー)
43 スプリング
X 車幅方向(第2方向)
Y 車長方向(第3方向)
Z 車高方向(第1方向)