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特開2023-146799クッション材詰め物用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146799
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】クッション材詰め物用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/20 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
C08J9/20 CET
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054184
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】勝倉 耀平
(72)【発明者】
【氏名】島 昌臣
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA32
4F074BA37
4F074BA38
4F074BA39
4F074CA33
4F074CA38
4F074CA46
4F074DA02
4F074DA33
4F074DA37
(57)【要約】
【課題】発泡性ポリスチレン系樹脂粒子としての流動性及びブロッキング防止性、ならびに当該発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて製造された発泡粒子の流動性及び帯電防止性のいずれもが良好であって、最終製品として優れた触り心地のクッション材を提供可能なクッション材詰め物用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供する。
【解決手段】クッション材詰め物用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、ポリスチレン系樹脂を基材樹脂とする樹脂粒子本体と、該樹脂粒子本体中に含まれる発泡剤と、該樹脂粒子本体を被覆している被覆剤とから構成され、樹脂粒子本体の平均粒子径が0.3mm以上0.5mm以下であり、被覆剤が、ステアリン酸金属塩A、ステアリン酸アマイド及び帯電防止剤を含み、ステアリン酸金属塩Aは、40質量%以上100質量%以下のステアリン酸マグネシウムと0質量%以上60質量%以下のステアリン酸亜鉛とからなり(ただし、両者の合計が100質量%である。)、樹脂粒子本体100質量部に対する、ステアリン酸金属塩Aの被覆量が0.1質量部以上0.4質量部未満、ステアリン酸アマイドの被覆量が0.01質量部以上0.5質量部以下、帯電防止剤の被覆量が0.2質量部以上0.8質量部以下となるよう構成される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂を基材樹脂とする樹脂粒子本体と、該樹脂粒子本体中に含まれる発泡剤と、該樹脂粒子本体を被覆している被覆剤とから構成される、クッション材詰め物用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、
前記樹脂粒子本体の平均粒子径が0.3mm以上0.5mm以下であり、
前記被覆剤が、ステアリン酸金属塩A、ステアリン酸アマイド及び帯電防止剤を含み、
前記ステアリン酸金属塩Aは、40質量%以上100質量%以下のステアリン酸マグネシウムと0質量%以上60質量%以下のステアリン酸亜鉛とからなり(ただし、両者の合計が100質量%である。)、
前記樹脂粒子本体100質量部に対する、前記ステアリン酸金属塩Aの被覆量が0.1質量部以上0.4質量部未満、前記ステアリン酸アマイドの被覆量が0.01質量部以上0.5質量部以下、前記帯電防止剤の被覆量が0.2質量部以上0.8質量部以下である、クッション材詰め物用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項2】
前記樹脂粒子本体100質量部に対する、前記ステアリン酸マグネシウムの被覆量が0.1質量部以上0.4質量部未満、前記ステアリン酸亜鉛の被覆量が0.2質量部未満(ただし、0質量部を含む。)である、請求項1に記載のクッション材詰め物用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項3】
前記ステアリン酸金属塩Aが、60質量%以上80質量%以下のステアリン酸マグネシウムと20質量%以上40質量%以下のステアリン酸亜鉛とからなる(ただし、両者の合計が100質量%である。)、請求項1又は2に記載のクッション材詰め物用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項4】
前記ステアリン酸金属塩Aと前記ステアリン酸アマイドとの質量比が1:0.05~1:1.5である、請求項1~3のいずれかに記載のクッション材詰め物用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項5】
前記帯電防止剤が、ステアリン酸モノグリセリド及びヒドロキシルアミンを含み、前記ステアリン酸モノグリセリドと前記ヒドロキシアミンとの質量比が1:1.5~1:10である、請求項1~4のいずれかに記載のクッション材詰め物用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項6】
前記発泡剤が、ブタン、ペンタン及びシクロヘキサンを含み、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子中のブタン、ペンタン及びシクロヘキサンの含有量の合計が、発泡性樹脂粒子100質量%に対して4質量%以上8質量%以下であり、前記ブタン及びペンタンの合計とシクロヘキサンとの質量比が1:0.1~1:0.5である、請求項1~5のいずれかに記載のクッション材詰め物用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クッション材詰め物用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、布製などの袋体の内部に詰め物としてポリスチレン系樹脂発泡粒子などの発泡粒子が充填された、クッション性を有するクッション材が知られており、このようなクッション材は、クッション、ソファ、マットレス等として使用されている。例えば、特許文献1には、平均粒子径が400~900μmの発泡樹脂粒子と、ステアリン酸亜鉛等の流動促進剤とからなるクッション材充填用発泡樹脂粒子が開示されている。上記クッション材充填用発泡樹脂粒子は、発泡樹脂粒子100重量部に対して0.4~1.5重量部の流動促進剤を含む旨、規定されており、これによってクッション材に詰められた発泡樹脂粒子が流動する際に擦れて生じる異音を抑制することができる旨、説明されている。
【0003】
また、特許文献2には、ビーズクッション材の詰め物用のポリスチレン系樹脂発泡粒子を提供するための、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が提案されている。上記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、基材樹脂100重量部に対して、所定範囲のステアリン酸マグネシウム、脂肪酸モノグリセリド及びヒドロキシアルキルアミンを粒子表面に含有させることが規定されている。特許文献2には、上記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、発泡粒子を製造する際に発泡時のブロッキングの発生が少なく、また製造された発泡粒子の帯電防止性能、吸湿による流動性悪化が起こり難い旨、説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2003/032783号公報
【特許文献2】特開2021-155517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クッション材詰め物用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、型内成形用の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子とは異なる特有の課題を有している。
たとえば、クッション材詰め物用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は型内成形用の発泡粒子よりもその粒子径が小さいため、高温多湿環境下では、ホッパーの隅等に発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が付着して残ってしまう問題や、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させる際、粒子同士が密着してブロッキングを起こすといった問題が、型内成形用の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子よりも生じやすい傾向にあった。ブロッキングした状態で発泡粒子を袋体に充填してクッション材を製造した場合、当該クッション材の触り心地やフィット感が悪くなるという問題があった。
【0006】
また、発泡粒子が顕著に帯電していると、充填機を用いて当該発泡粒子を袋体に充填する際に充填機の充填口や袋体の外表面に多量の発泡粒子が纏わりつき、充填作業がスムーズに行えない場合があった。さらに、クッション材の使用時に、内部に充填された発泡粒子同士が擦れ合って帯電し、クッション材が埃等を吸着し易い状態になる虞があった。加えて、発泡粒子の流動性が悪い場合、クッション材の触り心地やフィット感が悪くなるという問題があった。
【0007】
本発明者らの検討によれば、クッション材の詰め物用に用いられる発泡粒子の帯電性を充分に改善可能な程度に帯電防止剤を含み、かつブロッキングが充分に抑制された発泡性ポリスチレン系樹脂粒子あるいはこれを用いた発泡粒子は、流動性が不十分になる傾向にあることがわかった。つまり、帯電防止性、ブロッキング防止性及び流動性のいずれも良好に発揮する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子または発泡粒子を提供することは従来の技術では困難であった。
【0008】
即ち特許文献1には、発泡粒子を製造するための発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に関する流動性及びブロッキングの問題については何ら言及されておらず、また発泡粒子の流動性についても改善の余地があった。特に高い流動性を示しつつ帯電防止効果も発揮する発泡粒子についての検討が特許文献1ではなされていなかった。
また特許文献2には、発泡工程時のブロッキングの問題や発泡粒子の流動性及び帯電防止性について検討がなされているものの、これらブロッキング、流動性及び帯電防止性のいずれもバランスよく改善する点について、さらなる検討の余地があった。
【0009】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子としての流動性及びブロッキング防止性、ならびに当該発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて製造された発泡粒子の流動性及び帯電防止性のいずれもが良好であって、最終製品として優れた触り心地のクッション材を提供可能なクッション材詰め物用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のクッション材詰め物用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、ポリスチレン系樹脂を基材樹脂とする樹脂粒子本体と、該樹脂粒子本体中に含まれる発泡剤と、該樹脂粒子本体を被覆している被覆剤とから構成される、クッション材詰め物用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、上記樹脂粒子本体の平均粒子径が0.3mm以上0.5mm以下であり、上記被覆剤が、ステアリン酸金属塩A、ステアリン酸アマイド及び帯電防止剤を含み、上記ステアリン酸金属塩Aは、40質量%以上100質量%以下のステアリン酸マグネシウムと0質量%以上60質量%以下のステアリン酸亜鉛とからなり(ただし、両者の合計が100質量%である。)、上記樹脂粒子本体100質量部に対する、上記ステアリン酸金属塩Aの被覆量が0.1質量部以上0.4質量部未満、上記ステアリン酸アマイドの被覆量が0.01質量部以上0.5質量部以下、上記帯電防止剤の被覆量が0.2質量部以上0.8質量部以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のクッション材詰め物用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、流動性及びブロッキング防止性が良好であり発泡粒子の製造に用いられた際の取扱い性に優れる。また本発明のクッション材詰め物用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、流動性及び帯電防止性のいずれもが良好である発泡粒子の提供に寄与し、また最終製品として優れた触り心地のクッション材を提供することを可能とする。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らは、上述する課題について鋭意検討した結果、樹脂粒子本体を被覆する被覆剤において、流動促進剤としてステアリン酸金属塩Aと、ステアリン酸アマイドとを併用させることによって、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子のブロッキング防止性と流動性とをバランスよく向上させ、さらに該発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させて得られる発泡粒子の帯電防止性及び流動性をバランスよく向上させうることを見出し本発明の完成に至った。
【0013】
即ち、本発明のクッション材詰め物用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、ポリスチレン系樹脂を基材樹脂とする樹脂粒子本体と、当該樹脂粒子本体中に含まれる発泡剤と、当該樹脂粒子本体を被覆している被覆剤とから構成される。本発明において、上記樹脂粒子本体の平均粒子径は0.3mm以上0.5mm以下であり、また上記被覆剤は、ステアリン酸金属塩A、ステアリン酸アマイド及び帯電防止剤を含む。
上記ステアリン酸金属塩Aは、40質量%以上100質量%以下のステアリン酸マグネシウムと0質量%以上60質量%以下のステアリン酸亜鉛とから構成される。ステアリン酸金属塩Aにおいて、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸亜鉛の合計は100質量%である。
樹脂粒子本体100質量部に対する、ステアリン酸金属塩Aの被覆量は0.1質量部以上0.4質量部未満、ステアリン酸アマイドの被覆量は0.01質量部以上0.5質量部以下、帯電防止剤の被覆量は0.2質量部以上0.8質量部以下の範囲である。
【0014】
以下の説明では、本発明のクッション材詰め物用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、単に本発明の発泡性樹脂粒子という場合があり、また本発明の発泡性樹脂粒子を用いて製造されたポリスチレン系樹脂発泡粒子を単に発泡粒子という場合がある。
また、本発明に関し、布製などの袋体内に発泡粒子を内包し、クッション性を有する、クッション、ソファ、マットレス、枕、ぬいぐるみ等の構成物をクッション材と総称する。クッション材は、布製などの袋体と袋体の内部に充填されている発泡粒子を備える。袋体の形状は特に限定されず、その素材として、内部に充填された発泡粒子が外部に出ない程度の目付の織物若しくは編物、不織布、樹脂製等のシート、本皮、人工皮革等が例示される。
【0015】
上述する構成を備える本発明の発泡性樹脂粒子は、流動性が良好であり、かつブロッキングが充分に防止される。また、本発明の樹脂粒子を用いて製造された発泡粒子は、帯電防止性及び流動性に優れるため、クッション材に充填する際に充填機や袋体の外側表面に発泡粒子が付着することが防止され、また触り心地の良いクッション材を提供可能である。換言すると本発明の発泡性樹脂粒子は、上述する望ましい効果を奏する発泡粒子の提供に寄与する。
以下に本発明の発泡性樹脂粒子についてさらに詳細に説明する。
【0016】
[樹脂粒子本体]
本発明における樹脂粒子本体は、ポリスチレン系樹脂を基材樹脂として構成される。ここでポリスチレン系樹脂が基材樹脂であるとは、樹脂粒子本体が概ねポリスチレン系樹脂が構成されており、任意でその他の樹脂や材料を含んでもよいことを意味する。任意の材料については、後述する。
【0017】
本発明においてポリスチレン系樹脂とは、スチレンに由来する構成単位を50質量%以上含む樹脂を意味する。ポリスチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン(汎用ポリスチレン:GPPS)、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、ブタジエンゴムやスチレン・ブタジエンゴム等のゴム成分を含む耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)等が例示される。また、ポリスチレン系樹脂は、ジビニルベンゼンや多官能性マクロモノマー等の分岐化剤に由来する構成単位を含んでもよい。これらの中でも、ポリスチレン系樹脂として、ポリスチレンを用いることが特に好ましい。
【0018】
(平均粒子径)
本発明における樹脂粒子本体の平均粒子径は、0.3mm以上0.5mm以下である。0.3mm未満であると、製造が困難である場合があり、0.5mmを超えると、これを用いて製造された発泡粒子を詰め物材として用いて構成されるクッション材の触り心地が低下する場合がある。
尚、本発明に関し、樹脂粒子本体の平均粒子径とは、体積基準における粒度分布に基づいて算出された累積63%径(つまりd63)である。上記平均粒子径の測定には粒度分布測定装置が用いられる。
【0019】
[発泡剤]
本発明における樹脂粒子本体中には、発泡剤が含有される。
上記発泡剤は、ポリスチレン系樹脂発泡粒子を製造するために用いられる発泡剤から適宜選択され用いられる。中でも上記発泡剤として、ブタン、ペンタン及びシクロヘキサンから選択された1以上が含有されることが好ましく、ブタン及びペンタンの両方が含有されることがより好ましく、ブタン、ペンタン及びシクロヘキサン全てが含有されることが更に好ましい。かかる発泡剤が選択されることによって、発泡性樹脂粒子中の残留スチレンモノマーの量が適度に低く抑えられ、当該発泡性樹脂粒子を用いて製造された発泡粒子の残留スチレンモノマー及び揮発性有機化合物放散量を適度に低く抑えることができる。そのため、かかる発泡粒子を用いてクッション材を構成した場合、使用時の不快な臭気の発生を防止することができる。尚、以下では残留スチレンモノマーをR-SM、揮発性有機化合物をVOCと記載する場合がある。
【0020】
中でも上記発泡剤として、ブタン、ペンタン及びシクロヘキサンを全て含み、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子中のブタン、ペンタン及びシクロヘキサンの含有量の合計が、発泡性樹脂粒子100質量%中に4質量%以上8質量%以下であり、かつ当該ブタン及び当該ペンタンの合計と当該シクロヘキサンとの質量比が1:0.1~1:0.5であることが特に好ましい。
上述するとおり、発泡剤としてブタン、ペンタン及びシクロヘキサンを所定の範囲で含有する発泡性樹脂粒子は、最終製品であるクッション材の臭気を抑制するだけでなく、発泡性樹脂粒子のブロッキング性や発泡性を良好に改善し、またへたり難い発泡粒子の提供に貢献する。
【0021】
上記ブタンとしては、n-ブタンまたはイソブタンのいずれか、またはこれらの混合物が例示される。上記ブタンは、25℃、1atmの環境下で気体であり、沸点は-11℃程度である。
上記ペンタンとしては、n-ペンタンまたはイソペンタンのいずれか、またはこれらの混合物が挙げられる。上記ペンタンは、25℃、1atmの環境下で液体であり、沸点は35℃程度である。
上記シクロヘキサンは、環式脂肪族炭化水素であり、25℃、1atmの環境下で液体であり、沸点は81℃程度である。
【0022】
[被覆剤]
本発明の発泡性樹脂粒子は、発泡剤を含有する樹脂粒子本体と、当該樹脂粒子本体を被覆する被覆剤とから構成される。
上記被覆剤は、ステアリン酸金属塩A、ステアリン酸アマイド及び帯電防止剤を含む。
【0023】
(ステアリン酸金属塩A)
ステアリン酸金属塩Aは、樹脂粒子本体100質量部に対し、0.1質量部以上0.4質量部未満の範囲で被覆され、0.2質量部以上0.4質量部以下の範囲で被覆されることが好ましい。
【0024】
本発明においてステアリン酸金属塩Aは、40質量%以上100質量%以下のステアリン酸マグネシウムと0質量%以上60質量%以下のステアリン酸亜鉛とから構成される。ただし、両者の合計は100質量%である。ステアリン酸金属塩A100質量%においてステアリン酸マグネシウムが40質量%未満であると、発泡性樹脂粒子の流動性及びブロッキング性が良好に改善されない場合がある。
発泡性樹脂粒子のより良い流動性を実現するという観点からは、ステアリン酸金属塩Aが、60質量%以上80質量%以下のステアリン酸マグネシウムと、20質量%以上40質量%以下のステアリン酸亜鉛とからなる(ただし、両者の合計が100質量%である。)ことが好ましい。
【0025】
ステアリン酸金属塩Aの被覆による効果をより充分に発揮させる観点からは、樹脂粒子本体100質量部に対する、ステアリン酸マグネシウムの被覆量が0.1質量部以上0.4質量部未満、ステアリン酸亜鉛の被覆量が0.2質量部未満(ただし、0質量部を含む)であることが好ましく、樹脂粒子本体100質量部に対する、ステアリン酸マグネシウムの被覆量が0.13質量部以上0.35質量部未満、ステアリン酸亜鉛の被覆量が0.17質量部未満(ただし、0質量部を含む)であることがより好ましい。
【0026】
(ステアリン酸アマイド)
樹脂粒子本体100質量部に対する、ステアリン酸アマイドの被覆量は0.01質量部以上0.5質量部以下であり、0.03質量部以上0.3質量部以下であることがより好ましい。
本発明では、樹脂粒子本体に対し、ステアリン酸金属塩Aと併用してステアリン酸アマイドが被覆される。被覆剤としてステアリン酸金属塩Aを含有し、ステアリン酸アマイドが含有されない場合、望ましい流動性およびブロッキング性が示され難い。
本発明者らの検討によれば、被覆剤としてステアリン酸アマイドを用いると、発泡性樹脂粒子の流動性が顕著に改善されうる一方、発泡時のブロッキングの発生を促進する傾向にあることがわかった。ここで、被覆剤としてステアリン酸金属塩Aとステアリン酸アマイドとを併用することによって、ブロッキングを良好に抑制しつつ、発泡性樹脂粒子の流動性がさらに良好に改善される傾向にある。
【0027】
本発明における被覆剤は、上述する被覆量の関係において、ステアリン酸金属塩Aとステアリン酸アマイドとの質量比を、1:0.02~1:1.5とすることができ、1:0.03~1:1.5であることが好ましく、1:0.05~1:1.5であることがより好ましく、1:0.1~1:1.5であることが更に好ましい。かかる比率を満たすことによって、発泡性樹脂粒子の流動性をより十分に改善することができ、また最終製品であるクッション材の手触りを良好なものとすることができる。
【0028】
(帯電防止剤)
本発明の発泡性樹脂粒子は、これを用いて製造された発泡粒子の帯電性を改善するために、帯電防止剤を含有する。樹脂粒子本体100質量部に対する、帯電防止剤の被覆量は0.2質量部以上0.8質量部以下であり、0.3質量部以上0.5質量部以下であることがより好ましい。
【0029】
帯電防止剤は、発泡粒子の帯電防止のために用いられ得る帯電防止剤から適宜選択されうるが、好ましい例としては、ステアリン酸モノグリセリド、パルミチン酸モノグリセリド、ラウリン酸モノグリセリド等の脂肪酸モノグリセリド、ヒドロキシアミン、ポリエチレングリコール等が例示される。
【0030】
中でも、本発明においてより望ましい帯電防止効果を発揮させるために、帯電防止剤として、ステアリン酸モノグリセリド及びヒドロキシルアミンを含むことが好ましく、ステアリン酸モノグリセリドとヒドロキシアミンとの質量比が1:1.5~1:10であることがより好ましく、1:1.5~1:8であることがさらに好ましく、1:1.5~1:5であることが特に好ましい。
【0031】
[任意の材料]
本発明の発泡性樹脂粒子には、さらに任意の材料が含有または被覆されていてもよい。上記任意の材料は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜選択することができるが、たとえば、樹脂粒子本体は、本発明の所期の目的を阻害しない範囲において、基材樹脂であるポリスチレン系樹脂以外の他のポリマーを含むことができる。
他のポリマーとしては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等の熱可塑性樹脂や、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー等が例示される。基材樹脂であるポリスチレン系樹脂に加えて樹脂粒子本体中にその他のポリマーが含有される場合には、その含有量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
【0032】
発泡性樹脂粒子の嵩密度は、好ましくは16~50kg/m、より好ましくは20~35kg/mである。
【0033】
樹脂粒子本体は、基材樹脂中に気泡調整剤、可塑剤、抗菌剤、難燃剤等の従来公知の添加剤を含有することができる。
気泡調整剤としては、ポリエチレンワックス、タルク、シリカ、エチレンビスステアリルアミド、メタクリル酸メチル系共重合体、シリコーン等が例示できる。
可塑剤としては、流動パラフィン、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリントリステアレート、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル等が例示できる。
抗菌剤としては、3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメート(IPBC)、チアベンダゾール(TBZ)、カルベンダジム(BCM)、クロロタロニル(TPN)等の有機系抗菌剤、銀系、銅系、酸化チタン系等の無機系抗菌剤が例示できる。
難燃剤としては、臭素系難燃剤、リン系難燃剤等の有機系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン等の無機系難燃剤が例示できる。
また、樹脂粒子本体は、顔料、染料などの着色剤を含むこともできる。
【0034】
被覆剤は、本発明の所期の目的を阻害しない範囲において、ステアリン酸金属塩A、ステアリン酸アマイド、帯電防止剤のほかに、他の被覆成分を含むことができる。
他の被覆成分としては、シリコーンオイルや高級脂肪酸エステルなどの従来公知の被覆成分が例示できる。これらの中でも、ステアリン酸金属塩A、ステアリン酸アマイド及び帯電防止剤の樹脂粒子本体からの脱離を効果的に抑制できることから、被覆剤がジメチルポリシロキサンを含むことが好ましい。ジメチルポリシロキサンの被覆量は、樹脂粒子本体100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上1.0質量部以下、より好ましくは0.03質量部以上0.08質量部以下である。市販されるジメチルポリシロキサンとしては、たとえば信越化学工業株式会社製のシリコーンオイル(KF96)等が例示されるがこれに限定されない。
また、被覆剤は、ステアリン酸金属塩A以外のその他の脂肪酸金属塩、ステアリン酸アマイド以外のその他の脂肪酸アマイドを含むこともできる。
その他の脂肪酸金属塩として、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸リチウム等のステアリン酸金属塩や、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸バリウム等のラウリン酸金属塩等などの、炭素数12~24の脂肪酸の金属塩である高級脂肪酸金属塩が例示できる。これらの脂肪酸金属塩は単独で使用されていてもよいし、2種以上の脂肪酸金属塩が併用されていてもよい。
その他の脂肪酸アマイドとして、ステアリン酸アマイド及びN-ステアリルステアリン酸アマイド等の化合物が例示できる。
被覆剤中のその他の脂肪酸金属塩の含有量は、ステアリン酸金属塩A100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。その他の脂肪酸アマイドの含有量は、ステアリン酸アマイド100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0035】
(発泡性樹脂粒子の発泡剤の含有量)
発泡性樹脂粒子をジメチルホルムアミド(以下、DMFと記載する)に溶解させて溶解液を得る。上記溶解液をガスクロマトグラフィー分析に供し、これによって発泡性樹脂粒子中の各発泡剤の含有量が測定される。
ガスクロマトグラフによる発泡剤の定量は、具体的には以下の手順で行うことができる。まず、シクロペンタノール約5gを小数点以下第3位まで精秤し100mLのメスフラスコに入れ、さらにDMFを加えて全体を100mLとする。このようにして得られたDMF溶液を、さらにDMFを用いて100倍に希釈し内部標準溶液とする。次いで、測定対象となる発泡性樹脂粒子約1gを小数点以下第3位まで精秤する。精秤された発泡性スチレン系樹脂粒子を約18mLのDMFに溶解させて溶解液を作成し、内部標準溶液をホールピペットにて正確に2mL秤量し、上記溶解液に加えて試料溶液とする。この試料溶液1μLをマイクロシリンジでガスクロマトグラフィー分析装置に導入し、クロマトグラムを得る。得られたクロマトグラムから各発泡剤成分及び内部標準物質のピーク面積を求め、下式(1)により発泡性樹脂粒子中に含有される各発泡剤の濃度を求める。
[数1]
各発泡剤の濃度(質量%)=[(Wi/10000)×2]×[An/Ai]×Fn÷Ws×100・・・(1)
なお、上記式(1)における記号の意味は、以下の通りである。
Wi:内部標準溶液中のシクロペンタノールの質量(g)
Ws:DMFに溶解させた発泡性樹脂粒子の質量(g)
An:クロマトグラムから算出した各発泡剤成分のピーク面積
Ai:クロマトグラムから算出した内部標準物質のピーク面積
Fn:予め作成した検量線より求めた各発泡剤成分の補正係数
【0036】
(発泡粒子の嵩密度)
発泡粒子の嵩密度(kg/m)は、メスシリンダー内に発泡粒子を充填し、発泡粒子の充填高さを1Lの標線の位置で安定させる。次に、メスシリンダー内の発泡粒子の質量(単位:g)を測定する。このようにして得られた嵩体積1L当たりの発泡粒子の質量(単位:g/L)を単位換算することにより嵩密度(単位:kg/m3)を算出することができる。
【0037】
(触り心地)
ポリエステル系繊維から構成された伸縮性のある袋状のクッション材(110cm×125cm×150cm)に発泡粒子を2.2L充填し、直方体状のクッション材を作製して試験台に置き、パネラーがクッション材の上面から手のひらを当てて下方に押し込むことで触り心地を確認し、所定の評価基準で触り心地の評価を実施することができる。
【0038】
[発泡性樹脂粒子の製造方法]
本発明の発泡性樹脂粒子の製造方法は特に限定されないが、例えば、一般的な発泡性スチレン系樹脂粒子と同様に縣濁重合法により本発明の発泡性樹脂粒子を製造することができる。
より具体的には、撹拌装置の付いたオートクレーブ(密閉容器)に、水等の分散媒、スチレンモノマー等の樹脂材料、分散剤、重合開始剤、気泡調整剤等を仕込んで撹拌し、適宜のタイミングで発泡剤を供給しつつ縣濁重合させることで、樹脂粒子本体と発泡剤とから構成されるプレ発泡性樹脂粒子を得る。上記プレ発泡性樹脂粒子を乾燥し、その後に分級し、所望の平均粒子径のプレ発泡性樹脂粒子を得る。そして当該プレ発泡性樹脂粒子本体に被覆剤を被覆させることで、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が製造される。被覆剤の被覆方法は特に限定されないが、たとえば混合機に樹脂粒子本体と、被覆剤を構成する各成分を供給し、撹拌混合させることで被覆させることができる。
【0039】
上記分散媒は、水、脱イオン水等の水性分散媒が例示される。
上記分散剤として、第三リン酸カルシウム等のリン酸カルシウム、リン酸水素二ナトリウム、過硫酸カリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等が例示される。
上記重合開始剤として、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルモノカーボネート、ラウリルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート等が例示される。
縣濁重合に用いられる各成分は、それぞれ1種または組み合わせで用いることができる。また各成分は上述する例示に限定されるものではない。これらの成分の少なくとも一部は、製造された発泡性樹脂粒子に含有されていてもよい。
【0040】
[発泡粒子の製造方法]
上述のとおり製造された発泡性樹脂粒子を発泡機に投入し、スチーム等の加熱媒体を供給して加熱することで、発泡性樹脂粒子を発泡させて、ポリスチレン系樹脂発泡粒子が得られる。
上述のとおり製造されたポリスチレン系樹脂発泡粒子を、エアー充填機等を用いて袋体に充填することによってクッション材が製造される。
【実施例0041】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。尚、表中、発泡剤であるブタンをC4、ペンタンをC5、シクロヘキサンをCHとして表記した。またステアリン酸マグネシウムをMgSt、ステアリン酸亜鉛をZnSt、ステアリン酸カルシウムをCaSt、ステアリン酸アマイドをSA、エルカ酸アマイドをEA、ステアリン酸モノグリセリドをGMS、ヒドロキシルアミンをHAと表記した。また表中、被覆剤に関する各組成の配合量は、樹脂粒子本体100質量部に対する配合量(質量部)を示す。
<実施例1>
まず、攪拌装置の付いた内容積760Lのオートクレーブ(密閉容器)に、脱イオン水300kg、第三リン酸カルシウム1.39kg、リン酸水素二ナトリウム0.08kg、過硫酸カリウム3.5g、及びアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(花王株式会社製、ぺレックスSSH)1.5gを投入した。次いで、オートクレーブの内容物を攪拌しつつ、オートクレーブ内に気泡調整剤(トーヨーケム株式会社製ポリエチレンワックス1000)0.25kg、発泡剤としてシクロヘキサン5kg、重合開始剤及びスチレン252kgを投入した。
なお、重合開始剤としては、0.94kgのベンゾイルパーオキサイド(日油製「ナイパー(登録商標)BW」)と0.54kgのt-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルモノカーボネート(日油株式会社製「パーブチル(登録商標)E」)とを併用した。
オートクレーブの内容物を室温下で5分間攪拌した後、オートクレーブ内の温度を30分かけて90℃まで上昇させた。オートクレーブ内の温度が90℃に到達した後、この温度を330分間保持した(前段重合工程前半)。次いで、オートクレーブ内の温度を25分かけて96℃まで加熱し、この温度を52分保持した(前段重合工程後半)。次いで、オートクレーブ内の温度を96分かけて120℃まで上昇させ、この温度を200分間保持した(後段重合工程)。その後、オートクレーブ内の温度を140分かけて25℃まで冷却した。以上により、オートクレーブ内のスチレンを重合させた。
尚、前段重合工程前半において、オートクレーブ内に発泡剤を供給した。具体的には、オートクレーブ内の温度が90℃に到達した時点から364分が経過した時点でオートクレーブ内へ発泡剤の供給を開始し、60分後に供給を終了した。上述するとおり前段重合工程前半において供給する発泡剤として、7.6kgのペンタン(イソペンタン100%)と7.6kgのブタン(ノルマルブタン約70質量%とイソブタン約30質量%との混合物)を併用した。
【0042】
オートクレーブ内の冷却が完了した後、オートクレーブから樹脂粒子本体中に発泡剤を含むプレ発泡性樹脂粒子を取り出した。遠心分離機を用いてプレ発泡性樹脂粒子の脱水及び洗浄を行った後、気流乾燥機を用いてプレ発泡性樹脂粒子の表面に付着した水分を除去した。そして乾燥したプレ発泡性樹脂粒子を分級し、平均粒子径0.4mmのプレ発泡性樹脂粒子を得た。なお、プレ発泡性樹脂粒子の平均粒子径は、粒子本体の平均粒子径に等しい。
次に、上述のとおり得られたプレ発泡性樹脂粒子の表面を被覆剤で被覆した。具体的には、乾燥後のプレ発泡性樹脂粒子が入れられた容器に、樹脂粒子本体100質量部に対して、0.1質量部のステアリン酸亜鉛(日東化成工業株式会社社製「Zn-St」)、0.2質量部のステアリン酸マグネシウム(日東化成工業株式会社社製「Mg-St」)、0.1質量部のグリセリンモノステアレート(理研ビタミン株式会社社製「リケマールS-100P」)、0.35質量部のヒドロキシアルキルアミン(株式会社タナカ化学研究所製、アンチスタ80FS)、0.05質量部のステアリン酸アマイド(花王株式会社社製「脂肪酸アマイドS」)及び0.05質量部のジメチルポリシロキサン(信越化学工業社製「KF-96-100CS」)を添加して撹拌混合し、これらを樹脂粒子本体の表面に被覆させて発泡性樹脂粒子を得た。これを実施例1とした。
【0043】
[発泡粒子の作製]
上述のとおり得た実施例1の発泡性樹脂粒子を、加圧発泡機(株式会社ダイセン工業製、DYHL500U)に投入し、当該加圧発泡機内にスチームを供給した。これにより、発泡性樹脂粒子を発泡させ、発泡粒子を得た。
【0044】
(実施例2~16)
実施例1に対し、表1または表2に示す内容に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で発泡性樹脂粒子を製造し実施例2~16とした。また実施例1の発泡性樹脂粒子を用いて発泡粒子を製造した方法と同様の方法で、実施例2~16の発泡性樹脂粒子を用いて発泡粒子を製造した。
【0045】
(比較例1~6)
実施例1に対し、表3に示す内容に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で発泡性樹脂粒子を製造し比較例1~6とした。また実施例1の発泡性樹脂粒子を用いて発泡粒子を製造した方法と同様の方法で、比較例1~6の発泡性樹脂粒子を用いて発泡粒子を製造した。尚、比較例1に用いたステアリン酸カルシウムは、日東化成工業株式会社社製「Ca-St」を用い、比較例5に用いたエルカ酸アマイドは、花王株式会社社製「脂肪酸アマイドE」を用いた。
【0046】
上述のとおり得られた実施例及び比較例の発泡性樹脂粒子を以下のとおり測定または評価した。結果は、表1~表3に示す。尚、下記に示す評価において、評価A、Bは、実用性のあるものとして判定した。
【0047】
(発泡性樹脂粒子の平均粒子径)
粒度分布測定装置(日機装株式会社製、商品名:ミリトラック JPA)を使用し、発泡性樹脂粒子の、体積基準における粒度分布に基づいて算出された累積63%径(d63)を測定し、これを平均粒子径とした。
【0048】
(発泡性樹脂粒子の揮発分量)
発泡性樹脂粒子を約1g準備し、小数点以下4桁まで精秤し、加熱前質量(W1)を求めた。秤量後、発泡性樹脂粒子を温度120℃に設定した熱風乾燥機内で4時間乾燥させた。乾燥後の発泡性樹脂粒子を室温まで冷却した後、当該発泡性系樹脂粒子を秤量し、加熱後質量(W2)を求めた。そして下式(2)のとおり、加熱前後の質量変化率から総揮発分量を求めた。次いで下式(3)のとおり、総揮発分量から加熱前の発泡性樹脂粒子の水分量を減じることで、揮発成分の含有量を求めた。尚、本測定は精秤した試料を5つ準備し、それぞれの試料について、操作を行い、これらの測定値の算術平均値を発泡性樹脂粒子の揮発分量とした。なお、上記水分量の測定方法については後述する。
[数2]
総揮発分量(質量%)=[W1(g)-W2(g)]÷W1(g)×100・・・(2)
[数3]
揮発分量(質量%)=総揮発分(質量%)-水分量(質量%)・・・(3)
【0049】
(発泡性樹脂粒子の水分量)
発泡性樹脂粒子の水分量をカールフィッシャー水分計により測定した。具体的には、発泡性樹脂粒子を約0.28g準備し、小数点以下4桁まで正確に秤量し、これを試料とした。水分気化装置を用いて温度160℃で上記試料を加熱することにより試料中の水分を気化させるとともに、気化した水分をカールフィッシャー水分計へ導き、電量滴定法により試料中の水分量を測定した。尚、本測定は精秤した試料を5つ準備し、それぞれの試料について、操作を行い、これらの測定値の算術平均値を発泡性樹脂粒子の水分量とした。水分気化装置として、京都電子工業株式会社製「CHK-501」)を用いた。またカールフィッシャー水分計として、京都電子工業株式会社製「MKC-610」)を用いた。
【0050】
(発泡性樹脂粒子の発泡剤の含有量)
上述する発泡性樹脂粒子の発泡剤の含有量の測定方法に倣い、実施例及び比較例の発泡性樹脂粒子の発泡剤の含有量を測定した。具体的には、精秤した試料を5つ準備し、それぞれの試料について発泡剤の含有量の測定を行い、これらの測定値の算術平均値を発泡性樹脂粒子の発泡剤の含有量とした。尚、ガスクロマトグラフにおける詳細な分析条件は以下の通りとした。
分析装置:株式会社島津製作所製、ガスクロマトグラフGC-6AM
検出器:FID(水素炎イオン化検出器)
カラム材質:内径3mm、長さ5000mmのガラスカラム
カラム充填剤:[液相名]FFAP(遊離脂肪酸)、[液相含浸率]10質量%、[担体名]ガスクロマトグラフ用珪藻土Chomasorb W、[担体粒度]60/80メッシュ、[担体処理方法]AW-DMCS(水洗・焼成・酸処理・シラン処理)、[充填量]90mL
注入口温度:250℃
カラム温度:120℃
検出部温度:250℃
キャリヤーガス:N、流量40ml/分
【0051】
(発泡性樹脂粒子のR-SM量)
ヘッドスペース法ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて発泡性樹脂粒子中の未反応スチレンであるR-SMの含有量を測定した。まずDMF中のスチレン濃度が5質量ppm、50質量ppmまたは500質量ppmとなるようにして3種類の標準溶液を調製した。各標準溶液0.2gを精秤して容積20mlのバイアル瓶に入れ、更にDMF1mlを入れて密封した。上記バイアル瓶の気相部をガスクロマトグラフ質量分析計により測定し、得られたクロマトグラムから検量線を作成した。次に、発泡性樹脂粒子0.2gを精秤し、DMF1mlとともに容積20mlのバイアル瓶に入れて密封した。このバイアル瓶を室温で1日保持し、発泡性樹脂粒子をDMF中に完全に溶解させ、その後、バイアル瓶の気相部をガスクロマトグラフ質量分析計により測定し、得られたクロマトグラムと予め作成した検量線から、発泡性樹脂粒子中の未反応のスチレンの含有量(質量ppm)を求めた。
尚、本測定は上記試料を5つ準備し、それぞれの試料について操作を行い、これらの測定値の算術平均値を発泡性樹脂粒子のR-SM量とした。尚、ガスクロマトグラフ質量分析の測定条件は以下の通りとした。
ガスクロマトグラフ質量分析計:株式会社島津製作所 GCMS-QP2020
ヘッドスペースサンプラー:株式会社島津製作所製 HS-20
キャピラリーカラム:ジーエルサイエンス株式会社製 Stabilwax、内径0.32mm、長さ30m
ヘッドスペースサンプラー保温条件:90℃、1時間
カラム温度:50℃×2分→(昇温速度:10℃/分)→90℃→(昇温速度:5℃/分)→120℃→(昇温速度:20℃/分)→230℃×2分
イオン源温度:200℃
キャリヤーガス:ヘリウム、カラム流量 2ml/分
スプリット比:1/10
【0052】
(発泡性樹脂粒子の重量平均分子量)
ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィ法(GPC法)により、発泡性樹脂粒子の重量平均分子量を測定した。尚、クロマトグラムの取得には、東ソー株式会社製のHLC-8320GPC EcoSECを使用した。測定試料の各発泡性樹脂粒子を、それぞれテトラヒドロフラン(THF)に溶解させて濃度0.1質量%の試料溶液を調製した。その後、以下の条件で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定試料を分子量の違いによって分離し、クロマトグラムを得た。そして、標準ポリスチレンを用いて作成した較正曲線によって、クロマトグラムにおける保持時間を分子量に換算し、微分分子量分布曲線を得た。この微分分子量分布曲線から測定試料の重量平均分子量(Mw)を算出した。
カラム:TSKguardcolumn SuperH-H×1本、TSK-GEL SuperHM-H×2本を直列に接続した。
溶離液:テトラヒドロフラン
テトラヒドロフラン流量:0.6ml/分
【0053】
(発泡性樹脂粒子の流動性の評価)
被覆剤で被覆されている発泡性樹脂粒子を、100ml容量のディスポカップに擦切り一杯入れ、当該ディスポカップを温度60℃、湿度60%の恒温恒湿槽に入れ1時間静置した。その後、恒温恒湿槽からディスポカップを取り出し、ディスポカップの開口を同心円状の目盛りが付された目盛り台紙で覆い、ゆっくりと開口が下方を向くよう上下位置を変更し、試験台の上面に台紙の下面が当接するよう載置した。このとき、開口の中心と同心円状の目盛りの中心とが重なるよう位置合わせした。そして試験台に載置された状態で、ゆっくりとディスポカップを垂直上方に持ちあげ、目盛り台紙上に広がった発泡性樹脂粒子群の直径(目盛りの中心をとおり発泡性樹脂粒子群の外縁から外縁までの距離で最も大きい箇所)を測定した。台紙上に広がった発泡性樹脂粒子群の直径をもとに、以下の基準で発泡性樹脂粒子の流動性を評価した。
A:直径が85mm以上であった。
B:直径が75mm以上、85mm未満であった。
C:直径が75mm未満または目視で発泡性樹脂粒子群に塊が確認された。
【0054】
(発泡性樹脂粒子のブロッキング発生状況の評価)
発泡機から取り出された直後の発泡粒子約4200gを、2.8mm四方の目の網で篩い、当該網上に残った発泡粒子の質量を測定し、網上に残った発泡粒子の質量の比率を算出した。この比率をもとに、以下の基準で発泡性樹脂粒子のブロッキングの発生状況を評価した。
A:比率が0.1%未満であった。
B:比率が0.1%以上、0.2%未満であった。
C:比率が0.2%以上であった。
【0055】
(発泡性樹脂粒子の発泡性の評価)
発泡器内において、ゲージ圧で3kPa(G)のスチームを用いて発泡性樹脂粒子を270秒間加熱することにより発泡性樹脂粒子を発泡させ、発泡粒子を作製した。この発泡粒子を一昼夜風乾させた後、上述する発泡粒子の嵩密度の測定に倣い、各発泡粒子の嵩密度(単位:kg/m3)を求めた。一定の条件で発泡性樹脂粒子を発泡させた際の発泡粒子の嵩密度に基づいて、以下の基準で発泡性樹脂粒子の発泡性を評価した。
A:嵩密度が12g/L以上、15g/L未満であった。
B:嵩密度が15g/L以上、30g/L未満であった。
C:嵩密度が30g/L以上であった。
【0056】
各実施例及び各比較例の発泡性樹脂粒子を発泡させて製造した発泡粒子を以下のとおり測定または評価した。結果は、表1~表3に示す。尚、下記に示す評価において、評価A、B及は、実用性のあるものとして判定した。
【0057】
(発泡粒子の嵩密度の測定)
上述する発泡粒子の嵩密度の測定に倣い、各発泡粒子の嵩密度(単位:kg/m3)を求めた。
【0058】
(発泡粒子の流動性の評価)
発泡性樹脂粒子の替りに発泡粒子を用いたこと以外は、上述する発泡性樹脂粒子の流動性の確認方法に倣い、各発泡粒子の流動性を確認し、台紙上に広がった発泡粒子群の直径を測定し、以下の基準で評価した。
A:直径が85mm以上であった。
C:直径が85mm未満または目視で発泡粒子群に塊が確認された。
【0059】
(発泡粒子のへたり率の測定)
嵩体積330mlの発泡粒子を内径7.8cm、容積61.6cmの円筒状の金属製の容器に収容した。そして直径7.7cmの金属製の円盤状の治具を用い、発泡粒子を上面側から10m/minの速度で圧縮荷重が650Nとなるまで圧縮し、これを100回繰り返した。繰り返し圧縮終了後、容器内の発泡粒子の嵩体積を測定し、下式(4)によってへたり率(体積減少率)を算出した。尚、繰り返し圧縮操作を行うための試験機は株式会社島津製作所製オートグラフAG-X plus 100kNを用いた。
[数4]
へたり率=(試験前の嵩体積-試験直後の嵩体積)÷試験前の体積×100・・・(4)
【0060】
(発泡粒子の帯電量及び帯電性評価)
発泡粒子を温度23℃、湿度50%の恒温恒湿槽に入れ24時間養生した。養生後の発泡粒子嵩体積330mlを、内径7.8cm、容積61.6cmの円筒状の金属製の容器に収容した。このとき、マスコット除電器(手動式除電器)を用い、除電を行いながら発泡粒子の収容を行った。発泡粒子表面から10mmの位置で初期の帯電量が0Vとなるよう準備した。そして直径7.7cmの金属製の円盤状の治具を用い、発泡粒子を上面側から圧縮速度60mm/分で圧縮荷重が650Nとなるまで圧縮し、これを100回繰り返した。繰り返し圧縮を終了してから30秒後に、容器内の発泡粒子上面から25mmの上方で帯電圧[V]を測定した。尚、繰り返し圧縮を行うための試験機は株式会社島津製作所製オートグラフAG-X plus 100kNを用いた。また耐電圧の測定器は、春日電機株式会社製、デジタル低電位測定器KSD-3000を用いた。上述のとおり測定された帯電量から、発泡粒子の帯電性を以下のとおり評価した。
A:帯電量が-10V以上+10V以下であった。
B:帯電量が-25V以上-10V未満であった。
C:帯電量が-25V未満であった。
【0061】
(発泡粒子のR-SM量)
用いる試料を発泡性樹脂粒子から発泡粒子に変更すること以外は、上述する発泡性樹脂粒子のR-SM量の測定と同様の方法で、発泡粒子のR-SM量(質量ppm)を測定した。
【0062】
(発泡粒子のVOC放散量)
まず発泡粒子を温度23℃、湿度50%の恒温恒湿槽に入れ、2日間養生した。JISA1901:2015に倣い、20Lのステンレス製小型チャンバーの内空底面に、養生後の発泡粒子を表面積が320cmになるように設置し、試験負荷率1.6m/mの条件で発泡粒子から放散されるVOCの量(μg/m)を測定した。
【0063】
ポリエステル系繊維から構成された伸縮性のある袋体(110cm×125cm×150cm)に嵩体積2.2Lの発泡粒子を充填し、直方体状のクッション材を作製した。これを試験台に置き、パネラーがクッション材の上面から手のひらを当てて下方に押し込むことで触り心地を確認し、以下の評価基準で触り心地の評価を実施した。尚、パネラーは無作為に選出された10人とし、以下の基準で10人の評価の合計点が27点以上の場合を「A」評価、10人の合計点が20点以上26点以下の場合を「B」評価、10人の合計点が19点以下の場合を「C」評価として、クッション材の手触りを評価した。
3点:流動性が高く、さらさらとした感触がある。
2点:流動性はあるが、時々ざらざらとした感触がある。
1点:流動性が低く、ざらざらとした感触がある。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
上述する本発明は、以下の技術思想を包含する。
(1)ポリスチレン系樹脂を基材樹脂とする樹脂粒子本体と、該樹脂粒子本体中に含まれる発泡剤と、該樹脂粒子本体を被覆している被覆剤とから構成される、クッション材詰め物用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、
前記樹脂粒子本体の平均粒子径が0.3mm以上0.5mm以下であり、
前記被覆剤が、ステアリン酸金属塩A、ステアリン酸アマイド及び帯電防止剤を含み、
前記ステアリン酸金属塩Aは、40質量%以上100質量%以下のステアリン酸マグネシウムと0質量%以上60質量%以下のステアリン酸亜鉛とからなり(ただし、両者の合計が100質量%である。)、
前記樹脂粒子本体100質量部に対する、前記ステアリン酸金属塩Aの被覆量が0.1質量部以上0.4質量部未満、前記ステアリン酸アマイドの被覆量が0.01質量部以上0.5質量部以下、前記帯電防止剤の被覆量が0.2質量部以上0.8質量部以下である、クッション材詰め物用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
(2)前記樹脂粒子本体100質量部に対する、前記ステアリン酸マグネシウムの被覆量が0.1質量部以上0.4質量部未満、前記ステアリン酸亜鉛の被覆量が0.2質量部未満(ただし、0質量部を含む。)である、上記(1)に記載のクッション材詰め物用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
(3)前記ステアリン酸金属塩Aが、60質量%以上80質量%以下のステアリン酸マグネシウムと20質量%以上40質量%以下のステアリン酸亜鉛とからなる(ただし、両者の合計が100質量%である。)、上記(1)又は(2)に記載のクッション材詰め物用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
(4)前記ステアリン酸金属塩Aと前記ステアリン酸アマイドとの質量比が1:0.05~1:1.5である、上記(1)~(3)のいずれかに記載のクッション材詰め物用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
(5)前記帯電防止剤が、ステアリン酸モノグリセリド及びヒドロキシルアミンを含み、前記ステアリン酸モノグリセリドと前記ヒドロキシアミンとの質量比が1:1.5~1:10である、上記(1)~(4)のいずれかに記載のクッション材詰め物用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
(6)前記発泡剤が、ブタン、ペンタン及びシクロヘキサンを含み、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子中のブタン、ペンタン及びシクロヘキサンの含有量の合計が、発泡性樹脂粒子100質量%に対して4質量%以上8質量%以下であり、前記ブタン及びペンタンの合計とシクロヘキサンとの質量比が1:0.1~1:0.5である、上記(1)~(5)のいずれかに記載のクッション材詰め物用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。