(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146811
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】アクリルフィルム、並びに、前記アクリルフィルムを含む光学積層体、偏光板、表面板及び画像表示装置、並びに、アクリルフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20231004BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20231004BHJP
C08F 265/06 20060101ALI20231004BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20231004BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20231004BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20231004BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20231004BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20231004BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20231004BHJP
G02F 1/1335 20060101ALN20231004BHJP
【FI】
C08J5/18 CEY
B32B27/30 A
C08F265/06
G02B5/30
H05B33/14 A
H05B33/14 Z
H05B33/02
H01L27/32
G09F9/00 302
G09F9/00 313
G02F1/1335
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054206
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀田 光
(72)【発明者】
【氏名】久保田 翔生
(72)【発明者】
【氏名】黒田 剛志
(72)【発明者】
【氏名】牛山 章伸
【テーマコード(参考)】
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【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】100℃以上の高温領域においても、品質を安定できるアクリルフィルムを提供する。
【解決手段】アクリルフィルムであって、前記アクリルフィルムは、130℃における熱膨張変化率の絶対値が3%以下であり、かつ、100℃における引張弾性率が300MPa以上1300MPa以下である、アクリルフィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリルフィルムであって、
前記アクリルフィルムは、130℃における熱膨張変化率の絶対値が3.0%以下であり、かつ、100℃における引張弾性率が300MPa以上1300MPa以下である、アクリルフィルム。
【請求項2】
前記アクリルフィルムは、40℃から130℃における熱膨張係数の絶対値が、250ppm/℃以下である、請求項1に記載のアクリルフィルム。
【請求項3】
前記アクリルフィルムが、アクリルポリマーと、2以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリルモノマーとを含み、前記アクリルフィルム中のC=O結合に対するC=C結合の比が0.55以下である、請求項1又は2に記載のアクリルフィルム。
【請求項4】
前記アクリルフィルムは、表面配向度比が1.00である、請求項1~3の何れかに記載のアクリルフィルム。
【請求項5】
前記アクリルフィルムは、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物を含む、請求項1~4の何れかに記載のアクリルフィルム。
【請求項6】
前記アクリルフィルムは、全光線透過率が85%以上である、請求項1~5の何れかに記載のアクリルフィルム。
【請求項7】
前記アクリルフィルムは、ヘイズが2.0%以下である、請求項1~6の何れかに記載のアクリルフィルム。
【請求項8】
請求項1~7の何れかに記載のアクリルフィルム上に1以上の機能層を有する、光学積層体。
【請求項9】
偏光子と、前記偏光子の一方の側に配置された第一の透明保護板と、前記偏光子の他方の側に配置された第二の透明保護板とを有する偏光板であって、
前記第一の透明保護板及び前記第二の透明保護板の少なくとも一方が、請求項1~7の何れかに記載のアクリルフィルムを含む、偏光板。
【請求項10】
樹脂板又はガラス板上に保護フィルムを貼り合わせた画像表示装置用の表面板であって、前記保護フィルムが請求項1~7の何れかに記載のアクリルフィルムを含む、画像表示装置用の表面板。
【請求項11】
表示素子上に、請求項1~7の何れかに記載のアクリルフィルムを有する、画像表示装置。
【請求項12】
下記の工程1~3を有する、請求項1~7の何れかに記載のアクリルフィルムの製造方法。
工程1:アクリルポリマーと、2以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリルモノマーとを含むアクリルフィルム用組成物から塗膜を得る工程。
工程2:前記塗膜に紫外線を照射する工程。
工程3:さらに、前記塗膜を、前記アクリルポリマーのガラス転移温度以上の温度で加熱する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アクリルフィルム、並びに、前記アクリルフィルムを含む光学積層体、偏光板、表面板及び画像表示装置、並びに、アクリルフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリルフィルム、ポリエステルフィルム、環状オレフィンフィルム等の高分子樹脂フィルムは、透明性に優れているため、画像表示装置用の機能性フィルムの基材、車両、家具及び電化製品等の物品を保護又は装飾するための機能性フィルムの基材等として使用されている。
【0003】
高分子樹脂フィルムの中で、PMMAに代表されるアクリルポリマーを主成分とするアクリルフィルムは、光学特性及び耐候性に優れるという特長がある。このため、アクリルフィルムは、様々な用途に用いられている。中でも、アクリルフィルムは、画像表示装置の機能性フィルムの基材としての使用が期待されている。
アクリルフィルムとして、例えば、特許文献1及び2が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-292961号公報
【特許文献2】特開2018-44171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のアクリルフィルムは、加工段階における熱収縮特性を改善すること等を課題としている。特許文献2のアクリルフィルムは、MD方向及びTD方向の熱膨張係数を小さくすること等を課題としている。特許文献1及び2のアクリルフィルムは、熱的挙動を所定のレベルで改善することはできる。
しかし、特許文献1及び2のアクリルフィルムを基材とした機能性フィルムを含む画像表示装置は、使用中に品質が低下したり、経時的に品質が低下したりする問題が頻発した。品質低下の例としては、光漏れが挙げられる。
また、近年、機能性フィルムは高品質化が求められている。このように、高品質の機能性フィルムの基材として、特許文献1及び2のアクリルフィルムを用いた場合、期待した品質が得られない事例が頻発した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究した結果、上述した品質の問題の原因が、100℃以上の高温であることを突き止めた。例えば、スマートフォンに代表されるように、近年の画像表示装置は、使用時に内部が100℃以上の高温になる場合がある。また、自動車のダッシュボード近傍で用いられる機能性フィルムは、夏の時期に高温になる場合がある。また、機能性フィルムを高品質化する場合、機能性フィルムを製造する過程で100℃以上の高温処理が必要となる場合がある。
そして、本発明者らは、100℃以上の高温領域においても、品質を安定させ得るアクリルフィルムを完成するに至った。
【0007】
本開示は、以下の[1]~[6]を提供する。
[1]アクリルフィルムであって、
前記アクリルフィルムは、130℃における熱膨張変化率の絶対値が3.0%以下であり、かつ、100℃における引張弾性率が300MPa以上1300MPa以下である、アクリルフィルム。
[2][1]に記載のアクリルフィルム上に1以上の機能層を有する、光学積層体。
[3]偏光子と、前記偏光子の一方の側に配置された第一の透明保護板と、前記偏光子の他方の側に配置された第二の透明保護板とを有する偏光板であって、
前記第一の透明保護板及び前記第二の透明保護板の少なくとも一方が、[1]に記載のアクリルフィルムを含む、偏光板。
[4]樹脂板又はガラス板上に保護フィルムを貼り合わせた画像表示装置用の表面板であって、前記保護フィルムが[1]に記載のアクリルフィルムを含む、画像表示装置用の表面板。
[5]表示素子上に、[1]に記載のアクリルフィルムを有する、画像表示装置。
[6]下記の工程1~3を有する、[1]に記載のアクリルフィルムの製造方法。
工程1:アクリルポリマーと、2以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリルモノマーとを含むアクリルフィルム用組成物から塗膜を得る工程。
工程2:前記塗膜に紫外線を照射する工程。
工程3:さらに、前記塗膜を、前記アクリルポリマーのガラス転移温度以上の温度で加熱する工程。
【発明の効果】
【0008】
本開示のアクリルフィルム、光学積層体、偏光板、表面板及び画像表示装置は、100℃以上の高温領域においても品質を安定させることができる。本開示のアクリルフィルムの製造方法は、100℃以上の高温領域においても品質を安定させることができるアクリルフィルムを、簡易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】剛直性の評価手法を説明するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示のアクリルフィルム、光学積層体、偏光板、表面板及び画像表示装置について説明する。
【0011】
本明細書中において、特に言及しない限り 、「アクリルフィルム」は、アクリル系フィルム及びメタクリル系フィルムを表す。本明細書において、特に言及しない限り 、「アクリルポリマー」は、アクリル系ポリマー及びメタクリル系ポリマーを表す。本明細書において、特に言及しない限り 、「アクリルモノマー」は、アクリル系モノマー及びメタクリル系モノマーを表す。本明細書において、特に言及しない限り 、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルを表す。
【0012】
[アクリルフィルム]
本開示のアクリルフィルムは、130℃における熱膨張変化率の絶対値が3.0%以下であり、かつ、100℃における引張弾性率が300MPa以上1300MPa以下、である。
【0013】
<熱膨張変化率>
本開示のアクリルフィルムは、130℃における熱膨張変化率の絶対値が3.0%以下であることを要する。
本明細書において、「130℃における熱膨張変化率の絶対値」のことを、「熱膨張変化率の絶対値」と称する場合がある。
【0014】
熱膨張変化率の絶対値が3.0%を超える場合、130℃の環境において、アクリルフィルムに皺が生じてしまう。このため、熱膨張変化率の絶対値が3.0%を超える場合、アクリルフィルムを基材とする機能性フィルムは、使用中に品質が低下する問題が生じやすくなる。また、熱膨張変化率の絶対値が3%を超える場合、機能性フィルムを製造する過程で130℃の高温処理をした際に、期待した品質が得られない問題が生じやすくなる。
一方、熱膨張変化率の絶対値が3.0%以下であるアクリルフィルムは、上記問題を抑制し、機能性フィルムの品質を安定させることができる。近年、画像表示装置の高性能化、及び、機能性フィルムの高品質化のため、機能性フィルムの使用中、及び、機能性フィルムの製造過程において、アクリルフィルムに高熱がかかりやすくなっている。このため、アクリルフィルムの130℃における熱膨張変化率の絶対値を3%以下とすることには、技術的な意義がある。
通常のアクリルフィルムは、アクリルポリマーが130℃で軟化してしまうため、130℃における熱膨張変化率の絶対値を3.0%以下にすることはできない。本開示のアクリルフィルムは、アクリルポリマーと、重合性アクリルモノマーとを含むアクリルフィルム用組成物を用いて、所定の工程を経てアクリルフィルムを成膜することにより、熱膨張変化率の絶対値を3.0%以下にしやすくできる。
【0015】
アクリルフィルムの熱膨張変化率の絶対値は、2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがより好ましい。アクリルフィルムの熱膨張変化率の絶対値の下限は特に限定されないが、通常は0.1%以上である。
【0016】
本明細書において、130℃における熱膨張変化率は、下記式により算出したものである。下記式において、L130は130℃におけるサンプル長さ、Lは元のサンプル長さを意味する。元のサンプル長さは、本明細書では20℃におけるサンプル長さとする。130℃における熱膨張変化率は、例えば、実施例に記載の方法で測定できる。
熱膨張変化率={(L130-L)/L}×100
【0017】
アクリルフィルムは、130℃における熱膨張変化率が負の値であってもよいが、正の値であることが好ましい。
【0018】
<引張弾性率>
本開示のアクリルフィルムは、100℃における引張弾性率が300MPa以上1300MPa以下であることを要する。
本明細書において、「100℃における引張弾性率」のことを、「引張弾性率」と称する場合がある。
【0019】
引張弾性率が300MPa未満の場合、100℃の環境においてアクリルフィルムを引っ張った際に、アクリルフィルムの引張方向に沿って皺が生じやすくなる。
具体的には、引張弾性率が300MPa未満の場合、アクリルフィルム上に塗布した機能層用インキを加熱乾燥しながらアクリルフィルムを搬送する際に、アクリルフィルムに搬送方向に沿って皺が生じやすくなる。
また、偏光子に保護フィルムを貼り合わせる際には、100℃程度の熱がかけられる場合が多い。偏光子は耐熱性が高くないため、130℃の熱をかけにくく、通常は100℃程度の熱がかけられる。このため、引張弾性率が300MPa未満の場合、偏光子に、保護フィルムとしてのアクリルフィルムを貼り合わせる際に、アクリルフィルムに皺が生じやすくなる。
以上のことから、引張弾性率が300MPa未満の場合、アクリルフィルムを基材とする機能性フィルムは、期待した品質が得られなかったり、他の部材に貼り合わせる際に品質が低下したりする問題が生じやすくなる。
【0020】
一方、引張弾性率が1300MPaを超える場合、100℃の環境においてアクリルフィルムを引っ張った際に、アクリルフィルムが破断しやすくなる。
具体的には、引張弾性率が1300MPaを超える場合、アクリルフィルム上に塗布した機能層用インキを加熱乾燥しながらアクリルフィルムを搬送する際に、アクリルフィルムが破断しやすくなる。
また、引張弾性率が1300MPaを超える場合、偏光子に、保護フィルムとしてのアクリルフィルムを貼り合わせる際に、アクリルフィルムが破断しやすくなる。
以上のことから、引張弾性率が1300MPaを超える場合、アクリルフィルムを基材とする機能性フィルムは、取り扱い性が極めて悪いものとなる。
【0021】
アクリルフィルムの引張弾性率は、下限は320MPa以上であることが好ましく、340MPa以上であることがより好ましく、上限は1200MPa以下であることが好ましく、1150MPa以下であることがより好ましい。
【0022】
上述したように、アクリルフィルムに張力がかかる工程において、100℃の熱はかけられるものの、130℃の熱がかけられない場合がある。このため、本開示のアクリルフィルムにおいて、熱膨張変化率を130℃で規定する一方で、引張弾性率を100℃で規定することには、技術的な意義がある。
【0023】
本明細書において、100℃における引張弾性率は、JIS K7127:1999に準拠した引張試験により測定したものである。100℃における引張弾性率は、より具体的には、例えば、実施例に記載の方法で測定できる。
【0024】
本明細書で示す構成要件において、数値の上限の選択肢及び下限の選択肢がそれぞれ複数示されている場合には、上限の選択肢から選ばれる一つと、下限の選択肢から選ばれる一つとを組み合わせ、数値範囲の実施形態とすることができる。
例えば、引張弾性率の場合、数値範囲の実施形態としては、300MPa以上1300MPa以下、300MPa以上1200MPa以下、300MPa以上1150MPa以下、320MPa以上1300MPa以下、320MPa以上1200MPa以下、320MPa以上1150MPa以下、340MPa以上1300MPa以下、340MPa以上1200MPa以下、340MPa以上1150MPa以下が挙げられる。
【0025】
<熱膨張係数>
本開示のアクリルフィルムは、40℃から130℃における熱膨張係数の絶対値が、250ppm/℃以下であることが好ましい。
本明細書において、「40℃から130℃における熱膨張係数」のことを、「熱膨張係数」と称する場合がある。
【0026】
熱膨張係数を250ppm/℃以下とすることにより、高熱によって、アクリルフィルムに皺が生じることをより抑制しやすくできる。熱膨張係数は、200ppm/℃以下であることがより好ましく、150ppm/℃以下であることがさらに好ましく、110ppm/℃以下であることがよりさらに好ましい。熱膨張係数の下限は特に限定されないが、通常は10ppm/℃以上である。
【0027】
本明細書において、40℃から130℃における熱膨張係数は、下記式により算出したものである。下記式において、L130は130℃におけるサンプル長さ、L40は40℃におけるサンプル長さ、Lは元のサンプル長さを意味する。元のサンプル長さは、本明細書では20℃におけるサンプル長さとする。下記式において、熱膨張係数は、例えば、実施例に記載の方法で測定できる。
熱膨張係数={(L130-L40)/L}/90[℃]
【0028】
<結合比>
本開示のアクリルフィルムは、アクリルポリマーと、2以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリルモノマーとを含み、アクリルフィルム中のC=O結合に対するC=C結合の比が0.55以下であることが好ましい。
【0029】
アクリルフィルム中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリルモノマーを含むことは、「アクリルフィルムの原料として重合性アクリルモノマーを含んでおり、かつ、アクリルフィルム中に前記重合性モノマーの未反応物が残存していること」を意味しているといえる。
そして、アクリルフィルム中のC=0結合は、アクリルポリマー、重合性アクリルモノマーの反応物、重合性アクリルモノマーの未反応物に含まれている。また、アクリルフィルム中のC=C結合は、主として、重合性モノマーの未反応物に含まれている。
したがって、アクリルフィルム中のC=O結合に対するC=C結合の比は、アクリルフィルム中における、重合性モノマーの未反応物の割合の指標といえる。
【0030】
アクリルフィルム中のC=O結合に対するC=C結合の比が0.55以下であることは、アクリルフィルム中において、重合性モノマーの反応が進み、重合性アクリルモノマーが網目結合を形成していること意味している。このため、前記結合比を0.55以下とすることにより、アクリルフィルムの熱膨張変化率の絶対値を3.0%以下にしやすくできる。また、前記結合比を0.55以下とすることにより、アクリルフィルムの引張弾性率を300MPa以上にしやすくできる。
また、アクリルフィルム中に残存する未反応の重合性アクリルモノマーは、可塑剤のように作用することにより、アクリルフィルムのガラス転移温度を低下させるとともに、アクリルフィルムの引張弾性率を低下させる場合がある。このため、未反応の重合性アクリルモノマーの割合を少なくすることにより、前記結合比を0.55以下することには、技術的な意義がある。
また、アクリルフィルム上に位相差層等の機能層を形成する際に、前記機能層をコーティングにより形成する場合がある。コーティングに用いる機能層用塗布液は、溶媒を含む場合がある。そして、溶媒の種類によっては、汎用のアクリルフィルムが溶解又は膨潤してしまい、機能層の品質が損なわれる場合がある。例えば、アクリルフィルムが溶解又は膨潤した場合、液晶が配向し難くなり、位相差層の品質が低下する。一方、前記結合比が0.55以下であれば、重合性アクリルモノマーが網目結合を形成しているため、アクリルフィルムの溶媒に対する耐性を良好にすることができる。すなわち、前記結合比を0.55以下とすることにより、アクリルフィルムの耐溶媒性を良好にすることができ、機能層の品質の低下を抑制しやすくできる。
【0031】
前記結合比は、0.50以下であることがより好ましく、0.45以下であることがさらに好ましい。
前記結合比が小さ過ぎると、アクリルフィルム中で重合性アクリルモノマーの反応が進み過ぎることにより、アクリルフィルムの引張弾性率が大きくなり過ぎる場合がある。このため、前記比は、0.10以上であることが好ましく、0.20以上であることがより好ましく、0.30以上であることがさらに好ましい。
前記結合比は、例えば、後述する本開示のアクリルフィルムの製造方法の工程3により調整することができる。
【0032】
本明細書において、前記比は、例えば、下記(1)~(4)の手法により測定することができる。
(1)アクリルフィルムを垂直に切断した、測定用のサンプルを作製する。
(2)前記サンプルの断面方向から、ラマン分光法により、C=O結合、及び、C=C結合の散乱強度を測定する。C=C結合の散乱強度は、1620cm-1以上1680cm-1における散乱強度とする。C=O結合の散乱強度は、1710cm-1以上1780cm-1における散乱強度とする。
(3)前記測定は、サンプルの断面の厚み方向において、2μmごとに実施する。具体的には、サンプルの断面の上面から深さ方向に2μm進んだ箇所を、第1の測定箇所とする。さらに、深さ方向に2μm進んだ箇所ごとに、測定を実施する。
(4)測定箇所ごとに、C=O結合に対するC=C結合の比を算出する。そして、全測定箇所の前記比の平均を、サンプルのC=O結合に対するC=C結合の比とする。
【0033】
<アクリルポリマー>
アクリルポリマーは、原料モノマーとして、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸の誘導体を主成分として、これらモノマーを重合して得られるポリマーであることが好ましい。アクリルポリマーは、アクリルフィルム用のポリマーとして、汎用的に用いられているポリマーを用いることができる。
【0034】
(メタ)アクリル酸の誘導体としては、メタクリル酸エステル及びアクリル酸エステルが挙げられる。メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t-ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸メチル等が挙げられる。アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸2-エチルヘキシル等が挙げあれれる。
【0035】
アクリルポリマーは、原料モノマーとして、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸の誘導体以外のモノマーである、その他のモノマーを含んでいてもよい。
その他のモノマーとしては、スチレン及びo-メチルスチレン,p-メチルスチレン,2,4-ジメチルスチレン,o-エチルスチレン,p-エチルスチレン,p-tert-ブチルスチレン等の核アルキル置換スチレン、α-メチルスチレン,α-メチル-p-メチルスチレン等のα-アルキル置換スチレン等の芳香族ビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類、ラクトン環単位、グルタル酸無水物単位、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸無水物類、マレイン酸等の不飽和酸類、グルタルイミド単位等が挙げられる。
【0036】
アクリルポリマーの原料モノマーとしては、メチルメタクリレートを含むことが好ましい。原料モノマーの全モノマーに対するメチルメタクリレートの割合は、30モル%以上であることが好ましく、50モル%以上95モル%以下であることがより好ましい。
【0037】
本開示のアクリルフィルムに含まれるアクリルポリマーのガラス転移温度は、汎用のアクリルフィルムを構成するアクリルポリマーのガラス転移温度と同等でよい。
具体的には、本開示のアクリルフィルムに含まれるアクリルポリマーは、ガラス転移温度が95℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、105℃以上であることがさらに好ましい。アクリルポリマーのガラス転移温度以上を95℃以上とすることにより、アクリルフィルムの取り扱い性を良好にしやすくできる。また、ガラス転移温度95℃以上のアクリルポリマーと、重合性アクリルモノマーとを含むアクリルフィルム用組成物を用いて、所定の工程を経てアクリルフィルムを成膜することにより、熱膨張変化率の絶対値及び引張弾性率を上述した範囲にしやすくできる。
アクリルポリマーのガラス転移温度の上限は特に限定されないが、通常は120℃以下である。
アクリルポリマーのガラス転移温度は、アクリルポリマーの原料モノマーの配合により調整することができる。
【0038】
アクリルポリマーは、重量平均分子量が50,000以上1,000,000以下であることが好ましく、80,000以上500,000以下であることがより好ましく、100,000以上300,000以下であることがさらに好ましい。
アクリルポリマーの重量平均分子量を50,000以上とすることにより、アクリルフィルムの機械的強度を良好にしやすくできる。アクリルポリマーの重量平均分子量を1,000,000以下とすることにより、アクリルフィルムを製膜しやすくできる。
本明細書において、重量平均分子量は、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された平均分子量である。
【0039】
<2以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリルモノマー>
(メタ)アクリロイル基を2つ有するアクリルモノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエトキシジアクリレート、ビスフェノールAテトラプロポキシジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリロイル基を3つ以上有するアクリルモノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
本明細書において、「2以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリルモノマー」のことを、多官能アクリルモノマーと称する場合がある。
多官能アクリルモノマーは、1種又は2種以上を用いることができる。
【0040】
多官能アクリルモノマーは、アクリルフィルムの熱膨張変化率の絶対値を小さくし、かつ、引張弾性率を大きくしやすくするため、(メタ)アクリロイル基を3以上有することが好ましい。多官能アクリルモノマーの(メタ)アクリロイル基の数は、アクリルフィルムの引張弾性率を大きくし過ぎないようにするため、6以下が好ましく、5以下がより好ましい。
熱膨張変化率の絶対値及び引張弾性率の調整のため、(メタ)アクリロイル基を3以上有するアクリルモノマーと、(メタ)アクリロイル基を2つ有するアクリルモノマーとを併用してもよい。
【0041】
多官能アクリルモノマーは、分子骨格にアルキレンオキサイドを含むことが好ましい。分子骨格にアルキレンオキサイドを含むことにより、アクリルフィルムの柔軟性を維持しながら、熱膨張変化率の絶対値及び引張弾性率を上記範囲にしやすくできる。
熱膨張変化率の絶対値及び引張弾性率の調整のため、分子骨格にアルキレンオキサイドを含む多官能アクリルモノマーと、分子骨格にアルキレンオキサイドを含まない多官能アクリルモノマーとを併用してもよい。
【0042】
アクリルポリマーと、2以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリルモノマーとを含むアクリルフィルム用組成物中において、前記アクリルモノマーの含有量は、アクリルポリマー100質量部に対して、10質量部以上90質量部以下であることが好ましい。
アクリルモノマーの含有量を10質量部以上とすることにより、アクリルフィルムの熱膨張変化率の絶対値を小さくし、かつ、引張弾性率を大きくしやすくできる。また、アクリルモノマーの含有量を10質量部以上とすることにより、アクリルフィルムの耐溶媒性を良好にしやすくできる。アクリルモノマーの含有量を90質量部以下とすることにより、アクリルフィルムの引張弾性率が大きくなり過ぎることを抑制しやすくできるとともに、アクリルフィルムの耐折り曲げ性の低下を抑制しやすくできる。
アクリルモノマーの含有量は、アクリルポリマー100質量部に対して、下限は20質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましく、上限は70質量部以下であることがより好ましく、60質量部以下であることがさらに好ましい。
【0043】
アクリルフィルムは、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましい。言い換えると、アクリルフィルムは、2以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリルモノマーの硬化物を含むことが好ましい。アクリルフィルムが所定量の紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことにより、熱膨張変化率の絶対値及び引張弾性率を上記範囲にしやすくできる。また、アクリルフィルムが所定量の紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことにより、アクリルフィルムの耐溶媒性を良好にしやすくできる。
【0044】
アクリルフィルムの全固形分に対する紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物の割合は、下限は10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましく、上限は50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。
【0045】
アクリルフィルム中の紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物の割合は、例えば、アクリルポリマーを溶解する溶剤にアクリルフィルムを浸漬し、溶解せずに残存した成分の割合から算出することができる。
【0046】
<添加剤>
アクリルフィルムは、本開示のアクリルフィルムの効果を阻害しない範囲で、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、及び酸化防止剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0047】
<厚み>
アクリルフィルムの厚みは、機械的強度を良好にするため、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましい。
アクリルフィルムの厚みは、加工適性を良好にするため、100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましく、60μm以下であることがさらに好ましい。
本明細書において、アクリルフィルムの厚みは、アクリルフィルムの任意の10箇所の厚みの平均値を意味する。アクリルフィルムの任意の10箇所の厚みは、汎用の膜厚計で測定することができる。
【0048】
<物性>
《表面配向度比》
アクリルフィルムは、表面配向度比が1.00であることが好ましい。
表面配向度比が1.00であることは、アクリルフィルムが実質的に無配向であることを意味している。また、アクリルフィルムが配向している場合には、熱膨張変化率の絶対値を上記範囲にしにくい。すなわち、表面配向度比を1.00とすることにより、熱膨張変化率の絶対値を上記範囲にしやすくできる。
【0049】
アクリルフィルムの表面配向度比は、下記(1)~(3)の手法により測定することができる。
(1)アクリルフィルムの測定領域の面内において屈折率が最も大きい方向である遅相軸方向を起点(0度)とする。
(2)0度方向に振動する偏光となる光源で、0度~170度の範囲で、アクリルフィルムの1388cm-1における吸収強度(I1388)、及び、1730cm-1における吸収強度(I1730)を10度ごとに測定する。例えば、光源を固定して、アクリルフィルムを平面方向に10度ずつ回転することにより、前述した測定を実施できる。I1388/I1730を各角度の配向パラメータYとする。
(3)測定した18点の配向パラメータYの中での最大値をYmax、最小値をYminとして、Ymax/Yminをアクリルフィルムの表面配向度比とする。
【0050】
表面配向度比は、例えば、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製のFT-IR測定器(商品名:NICOLET6700、測定スポット:直径2mm)にハリック社製のATR装置(商品名:シーガル)及び偏光子(商品名:KRS-5、ワイヤーグリッド)を設置し、FTIR-S偏光ATR法の1回反射における赤外線吸収スペクトル解析により測定できる。なお、1388cm-1の吸収バンドは、C-αCH3対称変角振動で、ポリメチルメタクリレート分子が伸張された、配向の強い状態を定量的に示すものである。一方、1730cm-1の吸収バンドは、C=O伸縮振動で、面内回転での吸収強度が一定となるために、基準バンドとして吸収強度の規格化を実施するためのものである。
【0051】
本明細書において、表面配向度比、面内位相差及び厚み方向の位相差は、波長590nmにおける値である。
本明細書において、結合比、表面配向度比、面内位相差、厚み方向の位相差、全光線透過率及びヘイズを測定する雰囲気は、温度23℃±5℃、相対湿度40%以上65%以下とする。また、各測定の前に、前記雰囲気にサンプルを30分以上60分以下晒すものとする。
【0052】
《位相差》
アクリルフィルムは、面内位相差の絶対値が3nm以下であることが好ましく、2nm以下であることがより好ましく、1nm以下であることがさらに好ましい。
アクリルフィルムは、厚み方向の位相差の絶対値が5nm以下であることが好ましく、3nm以下であることがより好ましく、2nm以下であることがさらに好ましい。
【0053】
面内位相差及び厚み方向の位相差は、位相差測定装置で測定できる。位相差測定装置としては、王子計測機器社の商品名「KOBRA-WR」が挙げられる。面内位相差は、前記測定装置を用いて、アクリルフィルムの平面に対して法線方向を入射角とした際の測定値である。厚み方向の位相差は、前記測定装置を用いて、前記法線方向から40度傾いた方向を入射角とした値と、面内位相差の値と、アクリルフィルムの平均屈折率の入力値とから、自動算出される値である。アクリルフィルムの平均屈折率は、概ね1.49である。
【0054】
《ヘイズ、全光線透過率》
アクリルフィルムは、JIS K7136:2000のヘイズが2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、0.3%以下であることがより好ましい。
アクリルフィルムは、JIS K7361-1:1997の全光線透過率が85%以上であることが好ましく、87%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
【0055】
<大きさ、形状等>
アクリルフィルムは、所定の大きさにカットした枚葉状の形態でもよいし、長尺シートをロール状に巻き取ったロール状の形態であってもよい。枚葉の大きさは特に限定されないが、最大径が2インチ以上500インチ以下程度である。“最大径”とは、アクリルフィルムの任意の2点を結んだ際の最大長さをいうものとする。例えば、アクリルフィルムが長方形の場合は、長方形の対角線が最大径となる。アクリルフィルムが円形の場合は、円の直径が最大径となる。
ロール状の幅及び長さは特に限定されないが、一般的には、幅は500mm以上8000mm以下、長さは100m以上10000m以下程度である。ロール状の形態のアクリルフィルムは、画像表示装置等の大きさに合わせて、枚葉状にカットして用いることができる。カットする際、物性が安定しないロール端部は除外することが好ましい。
枚葉の形状も特に限定されず、例えば、三角形、四角形、五角形等の多角形であってもよいし、円形であってもよいし、ランダムな不定形であってもよい。
【0056】
[アクリルフィルムの製造方法]
本開示のアクリルフィルムの製造方法は、下記の工程1~3を有するものである。
工程1:アクリルポリマーと、2以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリルモノマーとを含むアクリルフィルム用組成物から塗膜を得る工程。
工程2:前記塗膜に紫外線を照射する工程。
工程3:さらに、前記塗膜を、前記アクリルポリマーのガラス転移温度以上の温度で加熱する工程。
【0057】
<工程1>
工程1は、アクリルポリマーと、2以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリルモノマーとを含むアクリルフィルム用組成物から塗膜を得る工程である。
【0058】
工程1において、アクリルフィルム用組成物は、溶媒を含有していてもよい。
工程1は、キャスト法により塗膜を形成することが好ましい。例えば、プラスチックフィルム等の基材上に、アクリルフィルム用組成物塗布し、前記組成物に含まれる溶媒を乾燥することにより、塗膜を形成することが好ましい。
【0059】
アクリルフィルム用組成物は、光重合開始剤及び/又は光重合促進剤を含むことが好ましい。光重合開始剤及び/又は光重合促進剤の含有量が多いと、熱膨張変化率の絶対値を小さくしやすくできるとともに、引張弾性率を大きくしやすくできる。
光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、アントラキノン、ハロゲノケトン、チオキサントン類等から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0060】
光重合促進剤は、空気による重合阻害を軽減させ硬化速度を速めることができるものである。光重合促進剤としては、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0061】
<工程2>
工程2は、前記塗膜に紫外線を照射する工程である。
【0062】
工程2により、前記塗膜内にラジカルを生じさせ、2以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリルモノマーが重合するきっかけを与えることができる。
紫外線の照射量は特に限定されないが、150mJ/cm2以上500mJ/cm2以下であることが好ましい。
【0063】
<工程3>
工程3は、さらに、前記塗膜を、前記アクリルポリマーのガラス転移温度以上の温度で加熱する工程である。
【0064】
工程2のみでは、アクリルフィルム中の2以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリルモノマーを十分に反応させることはできない。理由は、アクリルフィルム中においては、流動性のないアクリルポリマーの占める割合が多く、アクリルモノマーがアクリルフィルム中を自由に動けないためである。
工程3により、アクリルポリマーの流動性が増すため、アクリルモノマーがアクリルフィルム中を動きやすくなる。このため、工程3を実施することにより、重合性アクリルモノマーの反応を進みやすくすることができる。
【0065】
工程3の温度は、アクリルポリマーのガラス転移温度以上の温度であればよいが、90℃以上130℃以下であることが好ましい。また、工程3の加熱時間は、30秒以上300秒以下であることが好ましい。
【0066】
工程3は、工程2の終了後、所定の時間内に実施することが好ましい。工程2の後、時間が経ちすぎると、塗膜内に生じたラジカルが失活してしまうためである。工程2と工程3との間隔を短くするほど、2以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリルモノマーの反応性を高くしやすくできる。
また、工程2と工程3との間隔を短くするほど、未反応のアクリルモノマーの割合を減らすことができるため、未反応のアクリルモノマーが可塑剤のように作用することにより、アクリルフィルムの引張弾性率が低下することを抑制できる。
工程3は、工程2の終了後、4時間以内に実施することが好ましく、2時間以内に実施することがより好ましく、30分以内に実施することがより好ましく、10分以内に実施することがより好ましい。
【0067】
工程1をキャスト法で実施した場合、工程3の後、基材を剥離することにより、アクリルフィルムを得ることができる。
【0068】
[光学積層体]
本開示の光学積層体は、上述した本開示のアクリルフィルム上に、1以上の機能層を有する。
【0069】
<機能層>
機能層は、単層構成であってもよいし、多層構成であってもよい。機能層は、アクリルフィルムの一方の面のみに形成されていてもよいし、両面に形成されていてもよい。
【0070】
機能層を構成する層としては、易接着層、位相差層、ハードコート層、防眩層、反射防止層、防汚層、帯電防止層及び接着剤層等が挙げられる。機能層は、一つの層で複数の機能を有するものであってもよい。
機能層のうち、反射防止層は、単層構造及び多層構造が挙げられる。単層の反射防止層としては、低屈折率層の単層が挙げられる。多層の反射防止層は、高屈折率層及び低屈折率層の2層が挙げられ、さらに3層以上の構成も挙げられる。
易接着層、位相差層、ハードコート層、防眩層、反射防止層、防汚層、帯電防止層及び接着剤層等の機能層の構成は、汎用の構成とすることができる。
【0071】
光学積層体の積層構成としては、例えば、下記B1~B15の実施形態が挙げられる。下記B1~B15において、「/」は層の界面を意味する。また、下記B1~B15の積層構成において、1又は2以上の層間に易接着層を有する実施形態も挙げられる。
【0072】
B1:アクリルフィルム/ハードコート層
B2:アクリルフィルム/防眩層
B3:アクリルフィルム/ハードコート層/反射防止層
B4:アクリルフィルム/防眩層/反射防止層
B5:アクリルフィルム/ハードコート層/防汚層
B6:アクリルフィルム/防眩層/防汚層
B7:アクリルフィルム/位相差層
B8:接着剤層/アクリルフィルム
B9:接着剤層/アクリルフィルム/ハードコート層
B10:接着剤層/アクリルフィルム/防眩層
B11:接着剤層/アクリルフィルム/ハードコート層/反射防止層
B12:接着剤層/アクリルフィルム/防眩層/反射防止層
B13:接着剤層/アクリルフィルム/ハードコート層/防汚層
B14:接着剤層/アクリルフィルム/防眩層/防汚層
B15:接着剤層/アクリルフィルム/位相差層
【0073】
光学積層体は、機能層を形成する際に熱が付加される場合がある。また、光学積層体は、使用時に熱に晒される場合がある(例えば、画像表示装置の内部温度、自動車のダッシュボードの温度)。また、光学積層体は、偏光子等の他の部材に貼り合わせる際に、熱が付加される場合がある。
本開示の光学積層体は、上述した本開示のアクリルフィルムを用いているため、上述した熱を原因として、光学積層体の品質が低下することを抑制できる。
【0074】
[偏光板]
本開示の偏光板は、偏光子と、前記偏光子の一方の側に配置された第一の透明保護板と、前記偏光子の他方の側に配置された第二の透明保護板とを有する偏光板であって、前記第一の透明保護板及び前記第二の透明保護板の少なくとも一方が、上述した本開示のアクリルフィルムを含むものである。
【0075】
<偏光子>
偏光子としては、例えば、ヨウ素等により染色し、延伸したポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体系ケン化フィルム等のシート型偏光子、平行に並べられた多数の金属ワイヤからなるワイヤーグリッド型偏光子、リオトロピック液晶や二色性ゲスト-ホスト材料を塗布した塗布型偏光子、多層薄膜型偏光子等が挙げられる。これらの偏光子は、透過しない偏光成分を反射する機能を備えた反射型偏光子であってもよい。
【0076】
<透明保護板>
偏光子の一方の側には第一の透明保護板、他方の側には第二の透明保護板が配置される。第一の透明保護板及び第二の透明保護板の少なくとも一方は、上述した本開示のアクリルフィルムを含む。
【0077】
第一の透明保護板及び第二の透明保護板は、両方が、上述した本開示のアクリルフィルムを含むことが好ましい。
【0078】
第一の透明保護板及び/又は第二の透明保護板に含まれるアクリルフィルムは、アクリルフィルム上に機能層が形成されていてもよい。すなわち、第一の透明保護板及び/又は第二の透明保護板は、上述した本開示の光学積層体であってもよい。
【0079】
第一の透明保護板及び第二の透明保護板のうち、本開示のアクリルフィルムを含まない透明保護板としては、汎用のプラスチックフィルム及びガラス等を用いることができる。
【0080】
偏光子と透明保護板とは、接着剤を介して貼り合わせることが好ましい。接着剤は汎用の接着剤を用いることができ、PVA系接着剤が好ましい。
【0081】
本開示の偏光板は、光漏れ等の品質の低下を抑制しやすくできる。
【0082】
[画像表示装置用の表面板]
本開示の画像表示装置用の表面板は、樹脂板又はガラス板上に保護フィルムを貼り合わせた画像表示装置用の表面板であって、前記保護フィルムが上述した本開示のアクリルフィルムを含むものである。
【0083】
保護フィルムは、アクリルフィルム上に機能層が形成されたものでもよい。すなわち、保護フィルムは、上述した本開示の光学積層体であってもよい。
【0084】
樹脂板又はガラス板としては、画像表示装置の表面板として汎用的に使用されている樹脂板又はガラス板を用いることができる。
【0085】
樹脂板又はガラス板の厚みは、強度を良好にするため、10μm以上であることが好ましい。樹脂板又はガラス板の厚みの上限は、通常は5000μm以下である。薄型化のためには、樹脂板又はガラス板の厚みの上限は、1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。
【0086】
[画像表示装置]
本開示の画像表示装置は、表示素子上に、上述した本開示のアクリルフィルムを有するものである。
【0087】
アクリルフィルムは機能層が形成されたものでもよい。すなわち、本開示の画像表示装置は、表示素子上に、上述した本開示の光学積層体を有するものであってもよい。
【0088】
表示素子としては、液晶表示素子、有機EL表示素子及び無機EL表示素子等のEL表示素子、プラズマ表示素子等が挙げられ、さらには、ミニLED表示素子及びマイクロLED表示素子等のLED表示素子が挙げられる。これら表示素子は、表示素子の内部にタッチパネル機能を有していてもよい。
液晶表示素子の液晶の表示方式としては、IPS方式、VA方式、マルチドメイン方式、OCB方式、STN方式、TSTN方式等が挙げられる。表示素子が液晶表示素子である場合、バックライトが必要である。バックライトとしては、量子ドットを用いたバックライト、白色発光ダイオードを用いたバックライトが挙げられる。
画像表示装置は、フォルダブル型の画像表示装置、ローラブル型の画像表示装置であってもよい。また、画像表示装置は、タッチパネル付きの画像表示装置であってもよい。
【実施例0089】
以下、実施例及び比較例を挙げて本開示のアクリルフィルムを具体的に説明する。本開示のアクリルフィルムは、実施例に記載の形態に限定されるものではない。
【0090】
1.評価、測定
実施例及び比較例で得られた、アクリルフィルムについて、下記の測定及び評価を行った。結果を表1又は2に示す。
【0091】
1-1.熱膨張変化率、熱膨張係数
実施例及び比較例のアクリルフィルムについて、「130℃における熱膨張変化率」、「40℃から130℃における熱膨張係数」を測定した。測定装置は、日立ハイテク社の商品名「TMASS7100」を用いた。測定装置に組み込むサンプルの大きさは、約10mm×約10mmとした。測定条件及び温度プログラムは下記の通りとした。比較例3のアクリルフィルムは、硬すぎるため、サンプルを作製する際、サンプルを取り付ける際又は測定中に割れてしまう。このため、比較例3では、熱膨張変化率及び熱膨張係数を測定しなかった。
<測定条件>
・窒素雰囲気下
・荷重9.8mN
・試料長さ10mm
・引張りモード
・開始温度20℃
<温度プログラム>
液体窒素制御で、以下の順に温度を変化させた。室温のサンプル長さは、Step1における温度でのサンプル長さとした。40℃のサンプル長さ、130℃のサンプル長さは、Step2における温度でのサンプル長さとした。
Step1:昇温速度-10℃/分、目標20℃、保持時間10分
Step2:昇温速度10℃/分、 目標210℃、保持時間5分
Step3:昇温速度-10℃/分、目標20℃、保持時間0分
【0092】
1-2.引張弾性率
JIS K7127:1999に準拠した引張試験により、実施例及び比較例のアクリルフィルムの100℃における引張弾性率を測定した。測定装置は、インストロン社の万能材料試験機「品番:5565」を用いた。測定条件は下記の通りとした。比較例2のアクリルフィルムは、測定限界を下回り引張弾性率の値を測定できなかったため、「下限未満」と表記した。
<測定条件>
・サンプルの大きさ:幅10mm、長さ150mm
・サンプルを測定装置に設置した後、炉内温度が100℃になってから6分後に測定を開始する。
・試験速度:10mm/min
・ロードセル:1kN
・チャック間距離:100mm
【0093】
1-3.結合比
明細書本文の(1)~(4)の手法に従い、実施例及び比較例のアクリルフィルム中のC=O結合に対するC=C結合の比を算出した。C=O結合及びC=C結合を測定する装置は、Thermo Fisher社のラマン分光装置(品番:DXR3)を用いた。対物レンズの倍率は100倍とした。比較例4~7のアクリルフィルムは、アクリルフィルム用組成物中に、2以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリルモノマーを含まないため、結合比は測定しなかった。
【0094】
1-4.全光線透過率、ヘイズ
ヘイズメーター(品番:HM-150、村上色彩技術研究所社)を用いて、実施例及び比較例のアクリルフィルムの全光線透過率及びヘイズを測定した。
【0095】
1-5.位相差
位相差測定装置(王子計測機器社、商品名:KOBRA-WR)を用いて、実施例及び比較例のアクリルフィルムの面内位相差及び厚み方向の位相差を測定した。測定手法は、明細書本文に記載に従った。
【0096】
1-6.マンドレル試験
実施例及び比較例のアクリルフィルムについて、JIS K5600-5-1:1999に規定の円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験を実施した。マンドレルの直径を最小2mmまで徐々に小さくしていき、最初にアクリルフィルムに割れが生じたマンドレルの直径を、各アクリルフィルムの値とした。直径2mmでも割れが生じなかったアクリルフィルムは、値を2mmとした。値が小さいほど、耐屈曲性が良好といえる。
【0097】
1-7.130℃の乾燥適性、剥離適性、100℃の剛直性
(1)130℃の乾燥適性
実施例及び比較例において、ポリエチレンテレフタレートフィルムからアクリルフィルムを剥離する前に、下記のアクリルフィルム上にハードコート層用インキを塗布し、130℃で1分乾燥し、ポリエチレンテレフタレートフィルム、アクリルフィルム、ハードコート層をこの順に有する積層体を得た。積層体に皺が発生しているか否かを、目視で評価した。皺が発生していないものを「A」、皺が発生したものを「C」とした。
【0098】
<ハードコート層用インキ>
・多官能アクリルモノマー 5.0質量部
(商品名:KAYARAD PET-30、日本化薬社、官能基数:3)
・光重合開始剤 0.15質量部
(商品名:Omnirad184、BASF社)
・メチルエチルケトン 10.0質量部
【0099】
(2)剥離適性
上記(1)において、皺が発生しなかった積層体について、剥離適性を評価した。具体的には、上記(1)で得た積層体から、アクリルフィルム及びハードコート層を剥離する際に、アクリルフィルムが破断しなかったものを「A」、アクリルフィルムが破断したものを「C」とした。
【0100】
(3)100℃の剛直性
上記(2)において、積層体からアクリルフィルム及びハードコート層を剥離できたものに関して、100℃の剛直性を評価した。以下、(2)で剥離された、アクリルフィルム上にハードコート層を有する光学積層体のことを、サンプルと称する。サンプルを用いて、下記の手法で100℃の剛直性を評価した。
<評価手法>
内側がくり抜かれたB4サイズのステンレス枠(ステンレス部分は縁の2cm)に、サンプルを配置し、たるみが生じないようにテープで固定した。サンプルを固定したステンレス枠を、100℃のオーブンで1分加熱した。オーブンからサンプルを固定したステンレス枠を取り出し、サンプルの強直性を目視で評価した。
図1(A)のように、サンプルが垂れ下がっていないものを「A」、
図1(B)のように、サンプルが垂れ下がったものを「C」とした。
【0101】
2.アクリルフィルムの作製
[実施例1]
下記のアクリルフィルム用組成物1を、アプリケーターを用いてキャスト法によりポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗工し、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にアクリルの塗膜を有する積層体を得た。次いで、積層体を130℃のオーブンに3分入れて溶剤を乾燥した。次いで、積層体のアクリルの塗膜側から紫外線を照射した(240mJ/cm2)。次いで、紫外線を照射してから5分後に、積層体を130℃のオーブンに1分入れて取り出した。次いで、積層体からアクリルフィルムを剥離し、厚み30μmの実施例1のアクリルフィルムを得た。
【0102】
<アクリルフィルム用組成物1>
・アクリルポリマー 6.5質量部
(商品名:SUMIPEX MM、住友化学社)
・多官能アクリルモノマー 3.5質量部
(商品名:NKエステルATM-4E、新中村化学工業社、官能基数:4、分子骨格にアルキレンオキサイドを含有)
・光重合開始剤 0.07質量部
(商品名:Omnirad907、BASF社)
・メチルエチルケトン 21.2質量部
【0103】
[実施例2]
紫外線を照射してから、130℃のオーブンに積層体を入れるまでの時間を1時間に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2のアクリルフィルムを得た。
【0104】
[実施例3]
紫外線を照射してから、130℃のオーブンに積層体を入れるまでの時間を3時間に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3のアクリルフィルムを得た。
【0105】
[実施例4]
アクリルフィルム用組成物1を下記のアクリルフィルム用組成物2に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例4のアクリルフィルムを得た。
【0106】
<アクリルフィルム用組成物2>
・アクリルポリマー 6.5質量部
(商品名:SUMIPEX MM、住友化学社)
・多官能アクリルモノマー 2.5質量部
(商品名:NKエステルATM-4E、新中村化学工業社、官能基数:4、分子骨格にアルキレンオキサイドを含有)
・多官能アクリルモノマー 1.0質量部
(商品名:NKエステルATM-35E、新中村化学工業社、官能基数:4、分子骨格にアルキレンオキサイドを含有)
・光重合開始剤 0.07質量部
(商品名:Omnirad907、BASF社)
・メチルエチルケトン 21.2質量部
【0107】
[実施例5]
アクリルフィルム用組成物1を下記のアクリルフィルム用組成物3に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例4のアクリルフィルムを得た。
【0108】
<アクリルフィルム用組成物3>
・アクリルポリマー 6.5質量部
(商品名:SUMIPEX MM、住友化学社)
・多官能アクリルモノマー 1.5質量部
(商品名:ライトアクリレート9EG-A、共栄社化学社、官能基数:2、分子骨格にアルキレンオキサイドを含有)
・多官能アクリルモノマー 1.0質量部
(商品名:KAYARAD PET-30、日本化薬社、官能基数:3~4、分子骨格にアルキレンオキサイドを含まない)
・光重合開始剤 0.05質量部
(商品名:Omnirad907、BASF社)
・メチルエチルケトン 21.2質量部
【0109】
[実施例6]
アクリルフィルム用組成物1のアクリルポリマーを、三菱ケミカル社のアクリルポリマー(商品名:BR-80)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例6のアクリルフィルムを得た。
【0110】
[比較例1]
紫外線を照射してから、130℃のオーブンに積層体を入れるまでの時間を5時間に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1のアクリルフィルムを得た。
【0111】
[比較例2]
紫外線を照射した後、130℃のオーブンに積層体を入れず、室温のまま放置した以外は、実施例1と同様にして、比較例2のアクリルフィルムを得た。
【0112】
[比較例3]
アクリルフィルム用組成物1を下記のアクリルフィルム用組成物4に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例3のアクリルフィルムを得た。
【0113】
<アクリルフィルム用組成物4>
・アクリルポリマー 6.0質量部
(商品名:SUMIPEX MM、住友化学社)
・多官能アクリルモノマー 4.0質量部
(商品名:NKエステルATM-4E、新中村化学工業社、官能基数:4、分子骨格にアルキレンオキサイドを含有)
・光重合開始剤 0.08質量部
(商品名:Omnirad907、BASF社)
・メチルエチルケトン 21.2質量部
【0114】
[比較例4]
アクリルフィルム用組成物1を下記のアクリルフィルム用組成物5に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例4のアクリルフィルムを得た。
【0115】
<アクリルフィルム用組成物5>
・アクリルポリマー 10質量部
(商品名:SUMIPEX MM、住友化学社)
・メチルエチルケトン 56質量部
【0116】
[比較例5]
アクリルフィルム用組成物1を下記のアクリルフィルム用組成物6に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例5のアクリルフィルムを得た。
【0117】
<アクリルフィルム用組成物6>
・アクリルポリマー 10質量部
(商品名:BR-80、三菱ケミカル社)
・メチルエチルケトン 56質量部
【0118】
[比較例6]
比較例6のアクリルフィルムとして、市販のアクリルフィルム(商品名:HX40-UF、東洋鋼鈑社、厚み39μm、延伸フィルム)をそのまま用いた。
【0119】
[比較例7]
比較例7のアクリルフィルムとして、市販のアクリルフィルム(商品名:W001KU60、住友化学社、厚み59μm、延伸フィルム)をそのまま用いた。
【0120】
【0121】
【0122】
表1及び2の結果から、実施例のアクリルフィルムは、100℃以上の高温領域においても、品質を安定し得ることが確認できる。