(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146817
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】静電荷像現像用キャリア、静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/113 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
G03G9/113 361
G03G9/113 362
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054213
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】酒井 香林
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一綱
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 洋介
(72)【発明者】
【氏名】角倉 康夫
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 拓郎
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AB05
2H500CA04
2H500CA11
2H500CA31
2H500CA34
2H500CB12
2H500EA42E
2H500EA43E
2H500EA44E
2H500EA52E
2H500EA60E
2H500FA04
(57)【要約】
【課題】樹脂被覆層に窒素含有シリカ粒子と窒素含有樹脂微粒子を含むキャリアにおいて、キャリアの帯電維持性の悪化を抑制する。
【解決手段】芯材と、窒素含有シリカ粒子と窒素含有樹脂微粒子を含み、前記芯材を被覆する樹脂被覆層と、を有し、前記窒素含有シリカ粒子の含有量が前記樹脂被覆層の全質量に対して10質量%以上55質量%以下であり、前記窒素含有樹脂微粒子の体積平均粒径が100nm以上250nm以下であり、前記窒素含有シリカ粒子の質量Sに対する前記窒素含有樹脂微粒子の質量Pの質量比P/Sが、0.15以上0.55以下である静電荷像現像用キャリア。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と、
窒素含有シリカ粒子と窒素含有樹脂微粒子を含み、前記芯材を被覆する樹脂被覆層と、
を有し、
前記窒素含有シリカ粒子の含有量が前記樹脂被覆層の全質量に対して10質量%以上55質量%以下であり、
前記窒素含有樹脂微粒子の体積平均粒径が100nm以上250nm以下であり、
前記窒素含有シリカ粒子の質量Sに対する前記窒素含有樹脂微粒子の質量Pの質量比P/Sが、0.15以上0.55以下である
静電荷像現像用キャリア。
【請求項2】
前記窒素含有シリカ粒子は、窒素含有官能基を有するシランカップリング剤、又は、窒素含有官能基と加水分解性アルコキシシラノール基を含有する(メタ)アクリルモノマーを合成したビニル系共重合体により処理されたシリカ粒子を含む、請求項1に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項3】
前記窒素含有官能基を有するシランカップリング剤は、アミノ基と加水分解性アルコキシシラノール基を有する、請求項2に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項4】
前記窒素含有シリカ粒子の体積平均粒径は、5nm以上20nm以下である、請求項3に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項5】
前記窒素含有樹脂微粒子の体積平均粒径をD(μm)、前記樹脂被覆層の厚みをT(μm)としたとき、D/Tは0.007以上0.24以下である、請求項1に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項6】
前記窒素含有樹脂微粒子の含有量は前記樹脂被覆層の全質量に対して5質量%以上30質量%以下である、請求項5に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項7】
前記窒素含有樹脂微粒子の体積平均粒径が120nm以上230nm以下である、請求項5に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項8】
前記樹脂被覆層は、脂環式(メタ)アクリル樹脂を含有する、請求項1に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項9】
前記脂環式(メタ)アクリル樹脂は、重合成分としてシクロヘキシル(メタ)アクリレートを含む、請求項8に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項10】
前記窒素含有シリカ粒子の含有量が前記樹脂被覆層の全質量に対して13質量%以上50質量%以下である、請求項1に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項11】
前記窒素含有シリカ粒子の質量Sに対する前記窒素含有樹脂微粒子の質量Pの質量比P/Sが、0.18以上0.52以下である、請求項10記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項12】
静電荷像現像用トナーと、
請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリアと、
を含む静電荷像現像剤。
【請求項13】
請求項12に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
【請求項14】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
請求項12に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、
を備える画像形成装置。
【請求項15】
像保持体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
請求項12に記載の静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、
を有する画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用キャリア、静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、芯材と、窒素含有樹脂粒子及び無機酸化物粒子を含み、前記芯材を被覆する被覆樹脂層と、を有し、前記窒素含有樹脂粒子の表面露出率が0.8%以上3.0%以下である、静電荷像現像用キャリアが開示されている。
特許文献2には、核体粒子表面にマトリックス樹脂を被覆してなる静電潜像現像用キャリアにおいて、マトリックス樹脂中に2種以上の含窒素微粒子を含有させ、前記微粒子のうち比較的大きな微粒子の1次平均粒子径が0.1~3.0μmの範囲にあり、比較的小さな微粒子の1次平均粒子径が0.01~0.1μmの範囲にあり、両者の1次平均粒子径の比が300:1~2:1の範囲にあることを特徴とする静電潜像現像用キャリアが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-51216号公報
【特許文献2】特開2001-51454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャリアの樹脂被覆層に大量の微粒子を添加すると、フィラー効果により、被覆層の強度が向上し、トナーに付着している外添剤によるキャリア汚染を抑制でき、結果として、キャリアの帯電維持性が向上する効果がある。しかし、紙面中の画像が占める割合が1%のような低い画像密度、1回のジョブにおいて100枚程度の短い印刷、連続して5万枚以上の長期印刷、などのようなキャリアに高ストレスがかかる場合、微粒子を含む樹脂被覆層においても樹脂被覆層が剥離して、帯電維持性が悪化する場合がある。
本発明は、樹脂被覆層に窒素含有シリカ粒子と窒素含有樹脂微粒子を含むキャリアにおいて、窒素含有シリカ粒子含有量が樹脂被覆層の全質量に対して10質量%未満又は55質量%を超えた場合と比較して、キャリアの帯電維持性の悪化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、芯材と、窒素含有シリカ粒子と窒素含有樹脂微粒子を含み、前記芯材を被覆する樹脂被覆層と、を有し、前記窒素含有シリカ粒子の含有量が前記樹脂被覆層の全質量に対して10質量%以上55質量%以下であり、前記窒素含有樹脂微粒子の体積平均粒径が100nm以上250nm以下であり、前記窒素含有シリカ粒子の質量Sに対する前記窒素含有樹脂微粒子の質量Pの質量比P/Sが、0.15以上0.55以下である静電荷像現像用キャリアである。
請求項2の発明は、前記窒素含有シリカ粒子は、窒素含有官能基を有するシランカップリング剤、又は、窒素含有官能基と加水分解性アルコキシシラノール基を含有する(メタ)アクリルモノマーを合成したビニル系共重合体により処理されたシリカ粒子を含む、請求項1に記載の静電荷像現像用キャリアである。
請求項3の発明は、前記窒素含有官能基を有するシランカップリング剤は、アミノ基と加水分解性アルコキシシラノール基を有する、請求項2に記載の静電荷像現像用キャリアである。
請求項4の発明は、前記窒素含有シリカ粒子の体積平均粒径は、5nm以上20nm以下である、請求項3に記載の静電荷像現像用キャリアである。
請求項5の発明は、前記窒素含有樹脂微粒子の体積平均粒径をD(μm)、前記樹脂被覆層の厚みをT(μm)としたとき、D/Tは0.007以上0.24以下である、請求項1に記載の静電荷像現像用キャリアである。
請求項6の発明は、前記窒素含有樹脂微粒子の含有量は前記樹脂被覆層の全質量に対して5質量%以上30質量%以下である、請求項5に記載の静電荷像現像用キャリアである。
請求項7の発明は、前記窒素含有樹脂微粒子の体積平均粒径が120nm以上230nm以下である、請求項5に記載の静電荷像現像用キャリアである。
請求項8の発明は、前記樹脂被覆層は、脂環式(メタ)アクリル樹脂を含有する、請求項1に記載の静電荷像現像用キャリアである。
請求項9の発明は、前記脂環式(メタ)アクリル樹脂は、重合成分としてシクロヘキシル(メタ)アクリレートを含む、請求項8に記載の静電荷像現像用キャリアである。
請求項10の発明は、前記窒素含有シリカ粒子の含有量が前記樹脂被覆層の全質量に対して13質量%以上50質量%以下である、請求項1に記載の静電荷像現像用キャリアである。
請求項11の発明は、前記窒素含有シリカ粒子の質量Sに対する前記窒素含有樹脂微粒子の質量Pの質量比P/Sが、0.18以上0.52以下である、請求項10記載の静電荷像現像用キャリアである。
請求項12の発明は、静電荷像現像用トナーと、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリアと、を含む静電荷像現像剤である。
請求項13の発明は、請求項12に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
請求項14の発明は、像保持体と、前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、請求項12に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、を備える画像形成装置である。
請求項15の発明は、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、請求項12に記載の静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、樹脂被覆層に窒素含有シリカ粒子と窒素含有樹脂微粒子を含む静電荷像現像用キャリアにおいて、窒素含有シリカ粒子含有量が樹脂被覆層全質量に対して10質量%未満若しくは55質量%を超えた場合、又は、窒素含有樹脂微粒子の体積平均粒径が100nm未満若しくは250nm超の場合に比較して、キャリアの帯電維持性の悪化を抑制することができる。
請求項2の発明によれば、前記窒素含有シリカ粒子が、窒素含有官能基を有するシランカップリング剤、又は、窒素含有官能基と加水分解性アルコキシシラノール基を含有する(メタ)アクリルモノマーを合成したビニル系共重合体により処理されたシリカ粒子を含まない場合と比較して、当該窒素含有シリカにおける帯電分布が狭化した静電荷像現像用キャリアを提供することができる。
請求項3の発明によれば、前記シランカップリング剤が、アミノ基と加水分解性アルコキシシラノール基を有しない場合と比較して、当該窒素含有シリカにおける帯電分布が狭化した静電荷像現像用キャリアを提供することができる。
請求項4の発明によれば、前記窒素含有シリカ粒子の体積平均粒径が、5nm未満又は20nmより大きい場合と比較して、当該窒素含有シリカにおける帯電分布が狭化した静電荷像現像用キャリアを提供することができる。
請求項5の発明によれば、前記窒素含有樹脂微粒子の体積平均粒径をD(μm)、前記樹脂被覆層の厚みをT(μm)としたとき、D/Tが0.007未満又は0.24より大きい場合と比較して、帯電維持性の悪化が抑制された静電荷像現像用キャリアを提供することができる。
請求項6の発明によれば、前記窒素含有樹脂微粒子の含有量が前記樹脂被覆層の全質量に対して5質量%未満又は30質量%より大きい場合と比較して、帯電維持性の悪化が抑制された静電荷像現像用キャリアを提供することができる。
請求項7の発明によれば、前記窒素含有樹脂微粒子の体積平均粒径が120nm未満又は230nmより大きい場合と比較して、帯電維持性の悪化が抑制された静電荷像現像用キャリアを提供することができる。
請求項8の発明によれば、樹脂被覆層が脂環式(メタ)アクリル樹脂を含有しない場合と比較して、樹脂被覆層内の粒子分散性が向上した静電荷像現像用キャリアを提供することができる。
請求項9の発明によれば、前記脂環式(メタ)アクリル樹脂が、重合成分としてシクロヘキシル(メタ)アクリレートを含まない場合と比較して、環境変化に対する水分の影響が抑制された静電荷像現像用キャリアを提供することができる。
請求項10の発明によれば、前記窒素含有シリカ粒子の含有量が前記樹脂被覆層の全質量に対して13質量%未満又は50質量%より多い場合と比較して、帯電維持性の悪化が抑制された静電荷像現像用キャリアを提供することができる。
請求項11の発明によれば、前記窒素含有シリカ粒子の質量Sに対する前記窒素含有樹脂微粒子の質量Pの質量比P/Sが、0.18未満又は0.52より大きい場合と比較して、帯電維持性の悪化が抑制された静電荷像現像用キャリアを提供することができる。
請求項12、13,14又は15の発明によれば、樹脂被覆層に窒素含有シリカ粒子と窒素含有樹脂微粒子を含む静電荷像現像用キャリアにおいて、窒素含有シリカ粒子含有量が樹脂被覆層全質量に対して10質量%未満若しくは55質量%を超えた場合、又は、窒素含有樹脂微粒子の体積平均粒径が100nm未満若しくは250nm超の場合に比較して、帯電維持性の悪化が抑制された静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置又は画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【
図2】本実施形態に係る画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、発明の実施形態を説明する。これらの説明及び実施例等は実施形態を例示するものであり、発明の範囲を限定するものではない。
【0009】
本開示において、数値範囲を表す「〇〇以上〇〇以下」や「〇〇~〇〇」の記載は、特に断りのない限り、記載された上限及び下限を含む数値範囲を意味する。また、本開示において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種類存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種類の物質の合計量を意味する。
本開示において、「静電荷像現像用キャリア」を単に「キャリア」と記載することがあり、「静電荷像現像用トナー」を単に「トナー」と記載することがあり、「静電荷像現像剤」を単に「現像剤」と記載することがある。
【0010】
<静電荷像現像用キャリア>
本実施形態に係る静電荷像現像用キャリアは、芯材と、窒素含有シリカ粒子と窒素含有樹脂微粒子を含み、前記芯材を被覆する樹脂被覆層と、を有し、前記窒素含有シリカ粒子の含有量が前記樹脂被覆層の全質量に対して10質量%以上55質量%以下であり、前記窒素含有樹脂微粒子の体積平均粒径が100nm以上250nm以下であり、前記窒素含有シリカ粒子の質量Sに対する前記窒素含有樹脂微粒子の質量Pの質量比P/Sが、0.15以上0.55以下である。
【0011】
静電荷像現像用キャリアの芯材を被覆する樹脂被覆層が無機酸化物粒子、樹脂微粒子等の微粒子を大量に含有すると、フィラー効果により、樹脂被覆層の強度が向上したり、キャリア表面に凹凸が生じたりしやすくなり、トナーに付着している外添剤によるキャリア汚染が抑制でき、結果として、キャリアの帯電維持性を向上させる効果がある。
しかし、紙面中に画像が占める割合が1%等の低画像密度、1回のジョブにおいて100枚程度の短い印刷の繰り返し、連続5万枚以上等の長期ランニング等の、キャリアに高いストレスが加わる条件下では、キャリアの樹脂被覆層に微粒子を含有する状態であっても、樹脂被覆層の剥離が生じる。そして、この剥離の進行に従って現像剤全体の帯電維持性が悪化する場合がある。
本実施態様に係るキャリアは、上記構成を有することにより、高ストレスがかかり、キャリアの樹脂被覆層が剥離しやすい環境下においても、帯電維持性の悪化を抑制することが可能である。その機序として、下記が推定される。
本実施態様では、樹脂被覆層中に窒素含有シリカ粒子と窒素含有樹脂微粒子が含有される。窒素含有シリカ粒子の有する窒素元素と窒素含有樹脂微粒子の有する窒素元素との間に、窒素元素相互の反発が発生し、各粒子の分散が良好になり、樹脂被覆層内における各粒子の偏在が抑制され、フィラー効果が高くなる。その結果として、樹脂被覆層が剥離しやすい高いストレス環境下(低画像密度等)においても、常に樹脂被覆層の表面に窒素含有シリカ粒子が均一に存在し、帯電維持性に優れたキャリアを提供できると推測される。
なお、無機粒子はチタン酸化合物粒子もキャリアに使用される場合があるが、本実施態様では窒素含有無機粒子はチタン酸化合物粒子ではなく、シリカ粒子が帯電維持性に効果を有する。この理由は、次が推定される。チタンはシリカより正帯電性が強いため、窒素含有チタン酸粒子では、チタンの正帯電性に窒素元素の正帯電性が加わると、逆に前記した窒素元素相互の反発が過剰となって粒子の分散性が悪化し、電荷交換性が良いチタンが樹脂被覆層表面に偏在することにより、帯電維持性が悪化すると推測される。
【0012】
以下、本実施形態に係るキャリアの構成を詳細に説明する。
〔芯材〕
本実施形態に係る静電荷像現像用キャリアは、芯材を含む。
芯材は、磁性を有するものであれば特に制限されず、キャリアの芯材として用いられる公知の材料が適用される。
芯材としては、例えば、粒子状の磁性粉(磁性粒子);多孔質の磁性粉に樹脂を含侵させた樹脂含浸磁性粒子;樹脂中に磁性粉が分散して配合された磁性粉分散樹脂粒子;などが挙げられる。芯材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0013】
磁性粒子としては、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属の粒子;フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等が挙げられ、磁性酸化物粒子であることが好ましい。
芯材を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、芯材を構成する樹脂には、導電性粒子等の添加剤を含ませてもよい。導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の粒子が挙げられる。
【0014】
芯材は、粒子状の磁性粉、つまり、磁性粒子であることが好ましい。
磁性粒子の体積平均粒径は、例えば20μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0015】
〔樹脂被覆層〕
本実施形態に係る樹脂被覆層は、窒素含有シリカ粒子及び窒素含有樹脂微粒子を含む。
本実施形態に係る樹脂被覆層は、前記芯材を被覆する樹脂層である。
【0016】
(結着樹脂)
樹脂被覆層を構成する結着樹脂としては、スチレン・アクリル酸共重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン等のポリビニル系又はポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体;オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂又はその変性物;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;尿素・ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂;などが挙げられる。樹脂被覆層を構成する樹脂は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0017】
樹脂被覆層を構成する樹脂は、脂環式(メタ)アクリル樹脂を含有することが好ましい。樹脂被覆層が脂環式アクリル樹脂を含有することにより、樹脂被覆層に含まれる無機酸化物粒子の分散性がより高くなり易く、無機酸化物粒子を含む樹脂片が効率よく発生する傾向にある。その結果、画像の濃度ムラがより抑制される傾向にある。
【0018】
脂環式(メタ)アクリル樹脂の重合成分としては、(メタ)アクリル酸の低級アルキルエステル(例えば、アルキル基の炭素数が1以上9以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステル)が好ましく、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)クリレート等が挙げられる。
上記の中でも、脂環式アクリル樹脂の重合性分としては、画像の濃度ムラをより抑制する観点から、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及び2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)クリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、メチル(メタ)アクリレート及びシクロヘキシル(メタ)アクリレートの少なくとも一方を含むことがより好ましい。脂環式アクリル樹脂の重合成分は、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
脂環式(メタ)アクリル樹脂は、脂環式官能基の立体障害によって、炭素原子と酸素原子の結合の分極成分に対する水の影響を遮蔽する。環境変化に対する水分影響を抑制することができることから、重合成分としてシクロヘキシル(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
脂環式(メタ)アクリル樹脂に含まれるシクロヘキシル(メタ)アクリレートの含有量は、75モル%以上100モル%以下であることが好ましく、90モル%以上100モル%以下であることがより好ましく、95モル%以上100モル%以下であることがさらに好ましい。
【0020】
樹脂被覆層を芯材表面に形成する方法としては、例えば、湿式製法及び乾式製法が挙げられる。湿式製法は、樹脂被覆層を構成する樹脂を溶解又は分散させる溶剤を用いる製法である。一方、乾式製法は、上記溶剤を用いない製法である。
【0021】
湿式製法としては、例えば、芯材を樹脂被覆層形成用樹脂液中に浸漬して被覆する浸漬法;樹脂被覆層形成用樹脂液を芯材表面に噴霧するスプレー法;芯材を流動床中に流動化させた状態で樹脂被覆層形成用樹脂液を噴霧する流動床法;ニーダーコーター中で芯材と樹脂被覆層形成用樹脂液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法;などが挙げられる。
湿式製法において用いられる樹脂被覆層形成用樹脂液は、樹脂及びその他の成分を溶剤に溶解又は分散させて調製する。溶剤としては、樹脂を溶解又は分散するものであれば特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;などが使用される。
乾式製法としては、例えば、芯材と樹脂被覆層形成用樹脂の混合物を乾燥状態で加熱して樹脂被覆層を形成する方法が挙げられる。具体的には例えば、芯材と樹脂被覆層形成用樹脂とを気相中で混合して加熱溶融し、樹脂被覆層を形成する。
【0022】
樹脂被覆層の厚みは、0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、0.2μm以上5μm以下であることがより好ましく、0.3μm以上3μm以下であることがさらに好ましい。
樹脂被覆層の厚みは、次の方法により測定する。キャリアをエポキシ樹脂などに包埋し、ダイヤモンドナイフなどで切削することで薄切片を作製する。この薄切片を透過型電子顕微鏡(TEM)などで観察、複数のキャリア粒子の断面画像を撮影する。キャリア粒子の断面画像から被覆層の厚さを20か所測定して、その平均値を採用する。
【0023】
(窒素含有シリカ粒子)
樹脂被覆層に含む窒素含有シリカ粒子は、シリカ粒子に窒素含有物質を反応させる、又は付着させる等により、窒素元素を含有させる。窒素含有物質によりシリカ粒子の表面処理を行うことが好ましい。
上記コア微粒子の表面処理に用いる窒素含有物質としては、窒素含有官能基を有するシランカップリング剤や、窒素含有官能基と加水分解性アルコキシシラノール基を含有する(メタ)アクリルモノマーを合成したビニル系共重合体が好適である。シリカ粒子はその表面に存在する水酸基の活性が高く、シランカップリング剤のシラノール基や、ビニル系共重合体のシラノール基の加水分解を円滑に促進するため、未反応の表面処理剤がシリカ粒子表面に残存することがない。それ故、上記の表面処理剤で処理された窒素含有シリカ粒子をマトリックス樹脂中に分散させて樹脂被覆層を形成したキャリアは、シリカ粒子に起因する未反応のシランカップリング剤を含有することがなく、シランカップリング剤が経時的にキャリア表面に移行してキャリアの帯電維持性を変化させるという問題もない。
【0024】
上記の窒素含有官能基としては、アミノ基、アミド基、イミド基、アミドイミド基等を挙げることができ、特にシリカ粒子において帯電分布を狭くし、キャリアの帯電維持性向上の観点からアミノ基が好ましい。また、水酸基との反応性を有する加水分解性アルコキシシラロノール基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシシリル基、ジエトキシシリル基等を挙げることができる。従って、アミノ基と加水分解性アルコキシシラロノール基を有するシランカップリング剤が好ましい。
本実施の形態に使用される窒素含有官能基を有するシランカップリング剤を具体的に挙げると次のとおりである。
H2N(CH2)3Si(OCH3)3
H2N(CH2)3Si(OC2H5)3
H2N(CH2)3(CH3)2Si(OC2H5)
H2N(CH2)3(CH3)Si(OC2H5)2
H2N(CH2)2NH(CH2)Si(OCH3)3
H2N(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3
H2N(CH2)2NH(CH2)2(CH3)Si(OCH3)2
H2NCONH(CH2)3Si(OCH3)3
H2NCONH(CH2)3Si(OC2H5)3
H2N(CH2)2NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3
(CH3)2N(CH2)2(CH3)Si(OC2H5)2
(C4H9)2N(CH2)3Si(OCH3)3
C3H7(CH3)N(CH2)3Si(OCH3)3
【0025】
本実施形態に係る窒素含有シリカ粒子の含有量は、キャリアの帯電維持性向上の観点から、樹脂被覆層の全質量に対して、10質量%以上55質量%以下とする。13質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上45質量%以下であることがさらに好ましい。
【0026】
本実施形態に係る窒素含有シリカ粒子の体積平均粒径は、キャリアの帯電維持性向上の観点から、5nm以上20nm以下であることが好ましく、7nm以上17nm以下であることがより好ましく、8nm以上15nm以下であることがさらに好ましい。
窒素含有シリカ粒子の体積平均粒径は、キャリアを厚み方向に沿って切断した断面を、走査型顕微鏡で観察し、シリカ粒子の画像解析を行うことで測定する。具体的には、キャリア一つ当たり50個の窒素含有シリカ粒子を走査型顕微鏡により観察し、窒素含有シリア粒子の画像解析によって粒子ごとの最長径、最短径を測定し、この中間値から球相当径を測定する。この球相当径の測定をキャリア100個分について行う。そして、得られた球相当径の体積基準の累積頻度における50%径(D50v)をシリカ粒子の体積平均粒径とする。
【0027】
なお、無機粒子はチタン酸化合物粒子もキャリアに使用される場合があるが、本実施態様では窒素含有無機粒子はチタン酸化合物粒子は帯電維持性を悪化させるため、シリカ粒子を使用する。この理由は、次が推定される。チタンはシリカより正帯電性が強いため、窒素含有チタン酸粒子では、チタンの正帯電性に窒素元素の正帯電性が加わると、逆に前記した窒素元素相互の反発が過剰となって粒子の分散性が悪化し、電荷交換性が良いチタンが樹脂被覆層表面に偏在することにより、帯電維持性が悪化すると推測される。
【0028】
(窒素含有樹脂微粒子)
窒素含有樹脂微粒子としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)クリレート、ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル等を含んで重合してなる(メタ)アクリル系樹脂;ウレア、メラミン、グアナミン、アニリン等のアミノ樹脂;アミド樹脂;ウレタン樹脂;前記樹脂の共重合体;などの粒子が挙げられる。これらの中でも、窒素含有樹脂微粒子としては、画像の濃度ムラをより抑制する観点から、アミノ樹脂、ウレタン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の粒子を含むことが好ましく、アミノ樹脂の粒子を含むことがより好ましく、メラミン樹脂の粒子を含むことがさらに好ましい。窒素含有樹脂粒子は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0029】
本実施形態に係る窒素含有樹脂微粒子の体積平均粒径は、キャリアの帯電維持性向上の観点から、100nm以上250nm以下である。120nm以上230nm以下であることが好ましく、140nm以上220nm以下であることがより好ましい。特に、窒素含有樹脂微粒子の体積平均粒径が、100nm以上であると、キャリア表面に凹凸を形成し易いため、トナーの外添剤がキャリアに付着することを物理的により抑制する傾向にある。
窒素含有樹脂粒子の体積平均粒径は、窒素含有シリカ粒子の体積平均粒径と同様の手法によって求めることができる。
【0030】
本実施形態に係る窒素含有樹脂微粒子の体積平均粒径をD(μm)、前記樹脂被覆層の厚みをT(μm)としたとき、キャリアの帯電維持性向上の観点から、D/Tは0.007以上0.24以下がよい。0.01以上0.24以下が好ましく、0.02以上0.24以下がより好ましく、0.033以上0.24以下がさらにより好ましい。
【0031】
本実施形態に係る窒素含有樹脂粒子の含有量は、キャリアの帯電維持性向上の観点から、樹脂被覆層の全質量に対して、5質量%以上30質量%以下であることが好ましく、6質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、7質量%以上15質量%以下であることがさらに好ましい。
【0032】
本実施形態に係る窒素含有シリカ粒子の質量Sに対する窒素含有樹脂微粒子の質量Pの質量比P/Sは、キャリアの帯電維持性向上の観点から0.15以上0.55以下である。質量比P/Sは、0.18以上0.52以下であることが好ましく、0.20以上0.50以下であることがより好ましい。
【0033】
<静電荷像現像剤>
本実施形態に係る現像剤は、トナーと、本実施形態に係るキャリアとを含む。
【0034】
本実施形態に係る現像剤は、トナーと本実施形態に係るキャリアとを適切な配合割合で混合することにより調製される。トナーとキャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100が好ましく、3:100乃至20:100がより好ましい。
【0035】
[静電荷像現像用トナー]
トナーとしては、特に制限はなく、公知のトナーが用いられる。例えば、結着樹脂と着色剤とを含有するトナー粒子を含む着色トナーが挙げられ、着色剤の代わりに赤外線吸収剤を用いた赤外線吸収トナーも挙げられる。トナーは、離型剤や各種の内添剤、外添剤等を含んでいてもよい。
【0036】
-結着樹脂-
結着樹脂としては、例えば、スチレン類(例えばスチレン、パラクロロスチレン、α-メチルスチレン等)、(メタ)アクリル酸エステル類(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等)、エチレン性不飽和ニトリル類(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエーテル類(例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等)、ビニルケトン類(例えばビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)、オレフィン類(例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン等)等の単量体の単独重合体、又はこれら単量体を2種以上組み合せた共重合体からなるビニル系樹脂が挙げられる。
結着樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂、これらと前記ビニル系樹脂との混合物、又は、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等も挙げられる。
これらの結着樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
結着樹脂としては、ポリエステル樹脂が好適である。ポリエステル樹脂としては、例えば、公知のポリエステル樹脂が挙げられる。
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上65℃以下がより好ましい。
ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求め、より具体的にはJIS K7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
【0038】
ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5,000以上1,000,000以下が好ましく、7,000以上500,000以下がより好ましい。ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、2,000以上100,000以下が好ましい。ポリエステル樹脂の分子量分布Mw/Mnは、1.5以上100以下が好ましく、2以上60以下がより好ましい。
ポリエステル樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC-8120GPCを用い、東ソー製カラム・TSKgel Super HM-M(15cm)を使用し、THF溶媒で行う。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
結着樹脂の含有量は、トナー粒子全体に対して、40質量%以上95質量%以下が好ましく、50質量%以上90質量%以下がより好ましく、60質量%以上85質量%以下が更に好ましい。
【0039】
-着色剤-
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレート等の顔料;アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系等の染料;が挙げられる。
着色剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。また、着色剤は、複数種を併用してもよい。
着色剤の含有量は、トナー粒子全体に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0041】
-離型剤-
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。離型剤は、これに限定されるものではない。
【0042】
離型剤の融解温度は、50℃以上110℃以下が好ましく、60℃以上100℃以下がより好ましい。
融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
離型剤の含有量は、トナー粒子全体に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0043】
-その他の添加剤-
その他の添加剤としては、例えば、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等の公知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、内添剤としてトナー粒子に含まれる。
【0044】
-トナー粒子の特性等-
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・シェル構造のトナー粒子であってもよい。コア・シェル構造のトナー粒子は、例えば、結着樹脂と必要に応じて着色剤及び離型剤等のその他添加剤とを含んで構成された芯部と、結着樹脂を含んで構成された被覆層と、で構成されていることがよい。
【0045】
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)は、2μm以上10μm以下が好ましく、4μm以上8μm以下がより好ましい。
トナー粒子の体積平均粒径は、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)を用い、電解液はISOTON-II(ベックマン・コールター社製)を使用して測定される。測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5質量%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径100μmのアパーチャーを用いて粒径2μm以上60μm以下の範囲の粒子の粒径を測定する。サンプリングする粒子数は50000個である。
【0046】
-外添剤-
外添剤としては、例えば、無機粒子が挙げられる。該無機粒子として、SiO2、TiO2、Al2O3、CuO、ZnO、SnO2、CeO2、Fe2O3、MgO、BaO、CaO、K2O、Na2O、ZrO2、CaO・SiO2、K2O・(TiO2)n、Al2O3・2SiO2、CaCO3、MgCO3、BaSO4、MgSO4等が挙げられる。
【0047】
外添剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量は、通常、例えば、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である。
【0048】
外添剤としては、樹脂粒子(ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えば、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の粒子)等も挙げられる。
外添剤の外添量は、トナー粒子に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
【0049】
-トナーの製造方法-
トナーは、トナー粒子を製造後、トナー粒子に対して、外添剤を外添することで得られる。トナー粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば、凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。これらの製法に特に制限はなく、公知の製法が採用される。これらの中でも、凝集合一法により、トナー粒子を得ることがよい。
【0050】
<画像形成装置、画像形成方法>
本実施形態に係る画像形成装置/画像形成方法について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、を備える。そして、静電荷像現像剤として、本実施形態に係る静電荷像現像剤が適用される。
【0051】
本実施形態に係る画像形成装置では、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、本実施形態に係る静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法(本実施形態に係る画像形成方法)が実施される。
【0052】
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体の表面に形成されたトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー画像の転写後、帯電前の像保持体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー画像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;等の公知の画像形成装置が適用される。
本実施形態に係る画像形成装置が中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー画像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0053】
本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、現像手段を含む部分が、画像形成装置に対して着脱するカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容した現像手段を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0054】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を説明するが、これに限定されるわけではない。以下の説明においては、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0055】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づく、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置に対して着脱するプロセスカートリッジであってもよい。
【0056】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの上方には、各ユニットを通して中間転写ベルト(中間転写体の一例)20が延設されている。中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20の内面に接する、駆動ロール22及び支持ロール24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行するようになっている。支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。中間転写ベルト20の像保持面側には、駆動ロール22と対向して中間転写ベルトクリーニング装置30が備えられている。
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段の一例)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナーの供給がなされる。
【0057】
第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成及び動作を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエローの画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。
【0058】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yによって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)4Y、現像したトナー画像を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール(一次転写手段の一例)5Y、及び一次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(像保持体クリーニング手段の一例)6Yが順に配置されている。
【0059】
一次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。各ユニットの一次転写ロール5Y、5M、5C、5Kには、一次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各一次転写ロールに印加する転写バイアスの値を変える。
【0060】
以下、第1のユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。
まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が-600V乃至-800Vの電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(例えば20℃における体積抵抗率1×10-6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂の抵抗)であるが、レーザ光線が照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3からレーザ光線3Yを照射する。それにより、イエローの画像パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0061】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転する。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによってトナー画像として現像され可視化される。
【0062】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で撹拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体の一例)上に保持されている。そして、感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー画像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー画像が予め定められた一次転写位置へ搬送される。
【0063】
感光体1Y上のイエローのトナー画像が一次転写位置へ搬送されると、一次転写ロール5Yに一次転写バイアスが印加され、感光体1Yから一次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー画像に作用し、感光体1Y上のトナー画像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と逆極性の(+)極性であり、第1のユニット10Yでは制御部(図示せず)によって例えば+10μAに制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーは、感光体クリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0064】
第2ユニット10M以降の一次転写ロール5M、5C、5Kに印加される一次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエローのトナー画像が転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー画像が重ねられて多重転写される。
【0065】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー画像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と、中間転写ベルトの内面に接する支持ロール24と、中間転写ベルト20の像保持面側に配置された二次転写ロール(二次転写手段の一例)26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録紙(記録媒体の一例)Pが供給機構を介して二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接触した隙間に予め定められたタイミングで給紙され、二次転写バイアスが支持ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と同極性の(-)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー画像に作用し、中間転写ベルト20上のトナー画像が記録紙P上に転写される。この際の二次転写バイアスは二次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0066】
トナー画像が転写された記録紙Pは定着装置(定着手段の一例)28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれ、トナー画像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【0067】
トナー画像を転写する記録紙Pとしては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙が挙げられる。記録媒体としては、記録紙P以外にも、OHPシート等も挙げられる。
定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、記録紙Pの表面も平滑であることが好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等が好適に使用される。
【0068】
<プロセスカートリッジ>
本実施形態に係るプロセスカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、現像手段と、必要に応じて、例えば、像保持体、帯電手段、静電荷像形成手段、及び転写手段等のその他手段から選択される少なくとも一つと、を備える構成であってもよい。
【0069】
以下、本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示すが、これに限定されるわけではない。以下の説明においては、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
図2は、本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
図2に示すプロセスカートリッジ200は、例えば、取り付けレール116及び露光のための開口部118が備えられた筐体117により、感光体107(像保持体の一例)と、感光体107の周囲に備えられた帯電ロール108(帯電手段の一例)、現像装置111 (現像手段の一例)、及び感光体クリーニング装置113(クリーニング手段の一例)を一体的に組み合わせて保持して構成し、カートリッジ化されている。
図2中、109は露光装置(静電荷像形成手段の一例)、112は転写装置(転写手段の一例)、115は定着装置(定着手段の一例)、300は記録紙(記録媒体の一例)を示している。
【実施例0070】
以下、実施例により発明の実施形態を詳細に説明するが、発明の実施形態は、これら実施例に何ら限定されるものではない。以下の説明において、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
【0071】
<トナーの作製>
[樹脂粒子分散液(1)の調製]
・エチレングリコール(富士フイルム和光純薬(株)) 37部
・ネオペンチルグリコール(富士フイルム和光純薬(株)) 65部
・1,9-ノナンジオール(富士フイルム和光純薬(株)) 32部
・テレフタル酸(富士フイルム和光純薬(株)) 96部
上記の材料をフラスコに仕込み、1時間かけて温度200℃まで上げ、反応系内が均一に攪拌されていることを確認したのち、ジブチル錫オキサイドを1.2部投入した。生成する水を留去しながら6時間かけて240℃まで温度を上げ、240℃で4時間攪拌を継続し、ポリエステル樹脂(酸価9.4mgKOH/g、重量平均分子量13,000、ガラス転移温度62℃)を得た。このポリエステル樹脂を溶融状態のまま、乳化分散機(キャビトロンCD1010、ユーロテック社)に毎分100gの速度で移送した。別途、試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈した0.37%濃度の希アンモニア水をタンクに入れ、熱交換器で120℃に加熱しながら毎分0.1リットルの速度でポリエステル樹脂と同時に乳化分散機に移送した。乳化分散機を回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cm2の条件で運転し、体積平均粒径160nm、固形分30%の樹脂粒子分散液(1)を得た。
【0072】
[樹脂粒子分散液(2)の調製]
・デカン二酸(東京化成工業(株)) 81部
・ヘキサンジオール(富士フイルム和光純薬(株)) 47部
上記の材料をフラスコに仕込み、1時間かけて温度160℃まで上げ、反応系内が均一に攪拌されていることを確認したのち、ジブチル錫オキサイドを0.03部投入した。生成する水を留去しながら6時間かけて200℃まで温度を上げ、200℃で4時間攪拌を継続した。次いで、反応液を冷却し、固液分離を行い、固形物を温度40℃/減圧下で乾燥し、ポリエステル樹脂(C1)(融点64℃、重量平均分子量15,000)を得た。
【0073】
・ポリエステル樹脂(C1) 50部
・アニオン性界面活性剤(ネオゲンSC、第一工業製薬(株)) 2部
・イオン交換水 200部
上記の材料を120℃に加熱して、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50、IKA社(株))で十分に分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理した。体積平均粒径が180nmになったところで回収し、固形分20%の樹脂粒子分散液(2)を得た。
【0074】
[着色剤粒子分散液(1)の調製]
・シアン顔料(PigmentBlue15:3、大日精化工業(株)) 10部
・アニオン性界面活性剤(ネオゲンSC、第一工業製薬(株)) 2部
・イオン交換水 80部
上記の材料を混合し、高圧衝撃式分散機(アルティマイザーHJP30006、スギノマシン社)により1時間分散し、体積平均粒径180nm、固形分20%の着色剤粒子分散液(1)を得た。
【0075】
[離型剤粒子分散液(1)の調製]
・パラフィンワックス(HNP-9、日本精蝋(株)) 50部
・アニオン性界面活性剤(ネオゲンSC、第一工業製薬(株)) 2部
・イオン交換水 200部
上記の材料を120℃に加熱して、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50、IKA社)で十分に分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理した。体積平均粒径が200nmになったところで回収し、固形分20%の離型剤粒子分散液(1)を得た。
【0076】
[トナー(1)の作製]
・樹脂粒子分散液(1) 150部
・樹脂粒子分散液(2) 50部
・着色剤粒子分散液(1) 25部
・離型剤粒子分散液(1) 35部
・ポリ塩化アルミニウム 0.4部
・イオン交換水 100部
上記の材料を丸型ステンレス製フラスコに投入し、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50、IKA社)を用いて十分に混合分散した後、フラスコ内を攪拌しながら加熱用オイルバスで48℃まで加熱した。反応系内を48℃で60分間保持した後、樹脂粒子分散液(1)を緩やかに70部追加した。次いで、0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを8.0に調整し、フラスコを密閉し攪拌軸のシールを磁力シールし、攪拌を継続しながら90℃まで加熱して30分間保持した。次いで、降温速度5℃/分で冷却し、固液分離し、イオン交換水で十分に洗浄した。次いで、固液分離し、30℃のイオン交換水に再分散し、回転速度300rpmで15分間攪拌し洗浄した。この洗浄操作をさらに6回繰り返し、濾液のpHが7.54、電気伝導度が6.5μS/cmとなったところで固液分離し、真空乾燥を24時間継続して、体積平均粒径5.7μmのトナー粒子(1)を得た。
【0077】
上記のトナー粒子(1)100部と、疎水性シリカ(日本アエロジル社製RY50)0.7部とをヘンシェルミキサーで混合し、トナー(1)を得た。
【0078】
<キャリアの作製>
[芯材の準備]
-フェライト粒子-
Fe2O3を74部、Mg(OH)2を4部、MnO2を21部混合し、ロータリーキルンを用いて温度950℃/7時間の条件で仮焼成した(1回目)。得られた仮焼成物を、湿式ボールミルを用いて7時間粉砕し、平均粒径を2.0μmとした後、スプレードライヤーを用いて造粒した。得られた造粒物を、ロータリーキルンを用いて温度950℃/6時間の条件で仮焼成した(2回目)。得られた仮焼成物を、湿式ボールミルを用いて3時間粉砕し、平均粒径を5.6μmとした後、スプレードライヤーを用いて造粒した。得られた造粒物を、電気炉を用いて温度1300℃/5時間の条件で本焼成した。得られた焼成物を解砕及び分級して、体積平均粒径32μmのフェライト粒子を得た。
【0079】
[窒素含有シリカ粒子の準備]
-窒素含有シリカ粒子(1)-
シリカ(体積平均粒径12nm)8部をトルエン100部に加えて超音波分散器で攪拌して分散し、3-アミノプロピルトリエトキシシラン2部を加えて室温1時間攪拌した後、トルエンを留去して乾燥し、120℃で30分間加熱してアミノシランポリマーの反応を完結させ、アミノシラン処理された窒素含有シリカ粒子(1)(シリカ:アミノシラン質量比=8:2)を得た。
-窒素含有シリカ粒子(2)~(7)-
シリカとして体積平均粒径12nmのシリカに代えて、体積平均粒径3nm、5nm、8nm、15nm、20nm又は33nmのシリカを使用する以外は、窒素含有シリカ粒子(1)と同様にして、窒素含有シリカ粒子(2)~(7)を得た。
【0080】
[窒素含有樹脂微粒子の準備]
窒素含有樹脂微粒子は、架橋メラミン樹脂微粒子について、体積平均粒径100nm、150nm、200nm、250nm及び300nmのものを用いた。
【0081】
[実施例1]
・フェライト粒子 100部
・窒素含有シリカ粒子(1) 1.55部
(樹脂被覆層の全質量に対して30質量%)
・窒素含有樹脂微粒子(体積平均粒径200nm) 0.55部
(樹脂被覆層の全質量に対して10質量%)
(窒素含有樹脂微粒子/窒素含有シリカ粒子の質量比:0.33)
・シクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート共重合体
(共重合比95モル:5モル) 3部
・トルエン 14部
上記の材料のうち、窒素含有シリカ粒子(1)、窒素含有樹脂微粒子、とシクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート共重合体及びトルエンと、さらにガラスビーズ(直径1mm、トルエンと同量)とを、サンドミル(関西ペイント社)に投入し、回転速度1200rpmで30分間攪拌し、樹脂層形成用溶液(1)とした。
真空脱気型ニーダーにフェライト粒子を入れ、さらに樹脂層形成用溶液(1)を入れ、攪拌しながら昇温及び減圧してトルエンを留去させ、フェライト粒子を樹脂で被覆した。次いで、エルボジェットにて微粉及び粗粉を取り除き、キャリアを得た。
【0082】
[実施例2~実施例20]
窒素含有シリカ粒子及び窒素含有樹脂微粒子の種類及び含有量を表1に示す仕様とした以外は実施例1と同様にして、各例のキャリアを作製した。
[比較例1及び比較例2]
窒素含有シリカ粒子及び窒素含有樹脂微粒子の種類及び含有量を表1に示す仕様とした以外は実施例1と同様にして、キャリアを作製した。
<キャリア粒子の性質>
実施例1~20、及び比較例1~2で得たキャリアについて、次の値を求め表1に示す。
・樹脂被覆層厚みT(μm)
記述の方法に従って測定した。
・D/T(窒素含有樹脂微粒子の体積平均粒径/樹脂被覆層厚み)
窒素含有樹脂微粒子の各体積平均粒径100nm等をμm単位に換算してD(μm)を求め、前記樹脂被覆層厚みT(μm)を用いてD/Tを求めた。
【0083】
【0084】
表1中、窒素含有シリカ粒子の含有量は、樹脂被覆層の全質量に対する含有量を表す。
表1中、窒素含有樹脂微粒子の含有量は、樹脂被覆層の全質量に対する含有量を表す。
【0085】
<現像剤の調整>
実施例1~20、比較例1及び比較例2のキャリアをそれぞれ100部と、上記トナー(1)8.5部を混合して20種類の現像剤を調整した。調整した現像剤を次の帯電維持性評価に用いた。
【0086】
<現像剤の帯電維持性評価>
画像形成装置(富士フイルムビジネスイノベーション社製「Iridessse production Press」)に現像剤を、黒色位置の現像装置に入れた。低温低湿環境下(10℃、15RH%)、1回のジョブにてA4紙100枚枚という条件で、この画像形成装置により、合計5万枚の印刷を行い、初期及び5万枚印刷後の現像剤を約20gサンプリングし、ブローオフを行うことで現像剤からトナーを除去し、キャリアのみを単離した。得られたキャリアに対し、新たに、現像剤を作製する際に使用したトナーをキャリア10gに対し0.8g加え、ターブラミキサーにて5分間攪拌し、帯電量の測定を行った。
初期現像剤と5万枚印刷後の現像剤についてキャリアの帯電量比(初期に対する5万枚印刷後の帯電比)を算出して、下記基準により、トナーの帯電維持性について評価した。結果を表1に示す。
A:キャリア帯電量の比が0.9以上
B:キャリア帯電量の比が0.8以上0.9未満
C:キャリア帯電量の比が0.7以上0.8未満
D:キャリア帯電量の比が0.7未満
【0087】
表1に示すように、実施例の静電荷像現像用キャリアは、比較例の静電荷像現像用キャリアと比較して、帯電維持性の悪化が抑制されることがわかった。