(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146832
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】ウェッジ挿入装置
(51)【国際特許分類】
H02K 15/04 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
H02K15/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054234
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149098
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149102
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 習
(74)【代理人】
【識別番号】100136102
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 雅子
(72)【発明者】
【氏名】橋本 歩
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615PP01
5H615PP13
5H615PP19
5H615SS09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ブレードの撓みを抑制するウェッジ挿入装置を提供する。
【解決手段】ステータコアの軸方向に貫通するスロット21に、スロット21に挿入されたコイルとステータコアとの間に配置されるウェッジ30を、軸方向一側から他側に向けて挿入するウェッジ挿入装置100であって、軸方向に移動し、ステータコアの径方向内側に配置され、コイルを保持する複数のブレード110と、ウェッジ30を軸方向一側から他側に移動させるウェッジプッシャ140と、ブレード110間に配置されるフィン部150と、を備え、ウェッジプッシャ140とフィン部150とは、連結される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアの軸方向に貫通するスロットに、前記スロットに挿入されたコイルと前記ステータコアとの間に配置されるウェッジを、軸方向一側から他側に向けて挿入するウェッジ挿入装置であって、
軸方向に移動し、前記ステータコアの径方向内側に配置され、前記コイルを保持する複数のブレードと、
前記ウェッジを軸方向一側から他側に移動させるウェッジプッシャと、
前記ブレード間に配置されるフィン部と、
を備え、
前記ウェッジプッシャと前記フィン部とは、連結される、ウェッジ挿入装置。
【請求項2】
前記フィン部の一側端面は、前記ウェッジプッシャの他側端面よりも軸方向一側に位置する、請求項1に記載のウェッジ挿入装置。
【請求項3】
前記フィン部の他側端面は、前記ウェッジプッシャの他側端面よりも軸方向他側に位置する、請求項1または2に記載のウェッジ挿入装置。
【請求項4】
前記フィン部の径方向内側端縁は、前記ブレードの径方向内側に位置する、請求項1~3のいずれか1項に記載のウェッジ挿入装置。
【請求項5】
前記フィン部は、前記ブレード間に複数配置され、
複数の前記フィン部を連結する連結部をさらに備え、
前記連結部は、前記フィン部の径方向内側に配置される、請求項1~4のいずれか1項に記載のウェッジ挿入装置。
【請求項6】
前記連結部は、隣り合う前記フィン部を連結する、請求項5に記載のウェッジ挿入装置。
【請求項7】
前記連結部の径方向幅の最小値は、前記フィン部の周方向幅の最大値以上である、請求項5または6に記載のウェッジ挿入装置。
【請求項8】
前記連結部の径方向外側面は、前記ブレードの径方向内側面に沿った形状を有する、請求項5~7のいずれか1項に記載のウェッジ挿入装置。
【請求項9】
前記連結部は、前記複数のフィン部の全てを連結する、請求項5~8のいずれか1項に記載のウェッジ挿入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェッジ挿入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステータコアのスロットにコイル及びウェッジを挿入してステータを製造する方法が知られている。例えば、特開2000-125521号公報(特許文献1)には、ステータコアのスロットにループ状のコイル及びウェッジを挿入するコイル挿入装置が開示されている。特許文献1のコイル挿入装置は、コイルを保持するブレードと、ウェッジを押すウェッジプッシャと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、上記特許文献1のコイル挿入装置では、ブレードに撓みが発生するという問題を見出した。
【0005】
本発明は、ブレードの撓みを抑制するウェッジ挿入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点からのウェッジ挿入装置は、ステータコアの軸方向に貫通するスロットに、スロットに挿入されたコイルとステータコアとの間に配置されるウェッジを、軸方向一側から他側に向けて挿入するウェッジ挿入装置であって、軸方向に移動し、ステータコアの径方向内側に配置され、コイルを保持する複数のブレードと、ウェッジを軸方向一側から他側に移動させるウェッジプッシャと、ブレード間に配置されるフィン部と、を備え、ウェッジプッシャとフィン部とは、連結される。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、ブレードの撓みを抑制するウェッジ挿入装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態のステータの軸方向に垂直な断面の模式図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態のウェッジ挿入装置の模式図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態のウェッジ挿入装置の側面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態のウェッジ挿入方法のフローチャートである。
【
図5】
図5は、第1実施形態のウェッジ挿入方法を示す模式図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態のウェッジ挿入方法を示す模式図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態のウェッジ挿入方法を示す模式図である。
【
図8】
図8は、従来技術のウェッジ挿入装置と、第1実施形態のウェッジ挿入装置とを比較した模式図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態のウェッジ挿入装置の斜視図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態のウェッジ挿入装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0010】
また、以下の説明において、ステータ1の中心軸が延びる方向、すなわちスロット21の貫通方向を「軸方向」とする。軸方向に沿った一側を下(後)側、他側を上(前)側とする。上下(前後)方向は、位置関係を特定するために用いるためであって、実際の方向を限定するものではない。すなわち、下方向は重力方向を必ずしも意味するものではない。軸方向は、特に限定されず、鉛直方向、水平方向、これらの方向に交差する方向などを含む。
【0011】
また、ステータ1の中心軸に直交する方向を「径方向」とする。さらに、ステータ1の中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」とする。
【0012】
また以下の説明で用いる図面は、特徴部分を強調する目的で、便宜上特徴となる部分を拡大して示す場合がある。よって、各構成要素の寸法及び比率は実際のものと必ずしも同じではない。また、同様の目的で、特徴とならない部分を省略して図示する場合がある。
【0013】
[第1実施形態]
(ステータ)
図1に示すように、ステータ1は、モータの構成部品であって、図示しないロータと相互作用して回転トルクを発生させる。本実施形態のステータ1は、いくつかのスロット21を跨いでコイル10を巻きつける分布巻きとされる。ステータ1は、コイル10と、ステータコア20と、ウェッジ30と、絶縁紙40と、を備える。
【0014】
<ステータコア>
ステータコア20は、中空の円柱形状に形成される。ステータコア20は、薄い珪素鋼鈑を重ねて形成される。ステータコア20には、複数のティース23が放射状に形成される。ティース23同士の間には、スロット21が形成される。ティース23は、スロット21を介して径方向に延びる。スロット21には、径方向開口部であるスロットオープン22が形成される。本実施形態のステータコア20は、一体型のステータコアである。
【0015】
<コイル>
コイル10は、コイル線が環状に巻きつけられてなる。本実施形態のコイル線は、丸線であるが、特に限定されず、平角線などでもよい。
【0016】
コイル10は、二つのコイル辺部と、コイル渡り部と、を有する。二つのコイル辺部は、スロット21内に収容される。具体的には、一方のコイル辺部が収納されるスロット21と、他方のコイル辺部が収納されるスロット21とは、異なる。一方のコイル辺部が収納されるスロット21と、他方のコイル辺部が収納されるスロット21とは、
図1に示すように別のスロットを介して周方向に配置されてもよく、隣り合っていてもよい(図示せず)。
【0017】
<ウェッジ>
ウェッジ30は、スロット21内に配置されたコイル10と、スロットオープン22との間に配置される。ウェッジ30は、スロットオープン22を塞ぐ。ウェッジ30は、ステータコア20とコイル10とを絶縁する。ウェッジ30の軸方向長さは、スロット21の軸方向長さよりも大きい。
【0018】
本実施形態のウェッジ30は、軸方向視においてU字形状である。詳細には、周方向に延びる周方向部と、周方向部の両端部から径方向外側に向けて延びる2つの径方向部と、を含む。周方向部及び径方向部は、1つの部材で構成されてもよく、互いに異なる部材が接続されてもよい。
【0019】
<絶縁紙>
絶縁紙40は、スロット21に挿入されるコイル10を被覆する。絶縁紙40は、スロット21において径方向内側を除く空間を区画するティースに沿って配置される。本実施形態の絶縁紙40は、U字形状である。
図1では、絶縁紙40の開口とウェッジ30の開口とは、互いに反対の方向である。
【0020】
(ウェッジ挿入装置)
図1~
図3を参照して、ウェッジ挿入装置100について説明する。なお、
図2は、ウェッジ挿入装置100を構成するウェッジプッシャ140などの数を減らして簡略に示す断面図である。
図2は、各部材の位置関係を示すことを目的とし、各部材の一部を接触させずに、分離して示す。また、
図2では、ストリッパ120を実線で示す一方、スロット21に配置された1つのウェッジ30のみ点線で示す。
図3は、ウェッジ挿入装置100を構成する1つのウェッジプッシャ140、1つのフィン部150及び1つのウェッジガイド130を拡大して示す側面図である。ウェッジ挿入装置100は、ステータコア20の軸方向に貫通するスロット21に、スロット21に挿入されたコイル10とステータコア20との間に配置されるウェッジ30を、軸方向一側から他側に向けて挿入する。
【0021】
本実施形態のウェッジ挿入装置200は、スロット21に、コイル線が環状に巻き付けられたコイル10を、軸方向一側から他側に向けて挿入することができるコイル挿入装置を兼用する。詳細には、本実施形態のウェッジ挿入装置200は、ステータコア20の複数のスロット21を跨ぐようにそれぞれのスロットオープン22からコイル10を挿入する。
【0022】
図2に示すように、ウェッジ挿入装置200は、ブレード110と、ストリッパ120と、ウェッジガイド130と、ウェッジプッシャ140と、フィン部150と、連結部160と、を備える。
【0023】
<ブレード>
図2に示すように、ブレード110は、コイル10を保持する。ブレード110は、ステータコア20の径方向内側に、ステータコア20の周方向に配置され、軸方向に延びる。ブレード110により、コイル10をスロット21に容易に挿入できる。
【0024】
ブレード110は、軸方向に移動する。本実施形態のブレード110は、軸方向に移動する可動ブレードである。
【0025】
ブレード110は、ステータコア20の周方向に並んで配置される。ここでは、ブレード110は、複数のティース23を介して配置される。詳細には、複数のブレード110は、ティース23に対応して、同一円周上に配設される。
【0026】
2つのブレード110で、1つのコイル辺部を保持する。ブレード110は、後述するストリッパ120に引っ掛けられたコイル10を軸方向及び径方向に沿ってスロット21まで導く。
【0027】
ブレード110は、スロットオープン22に配置される形状を有する。ブレード110は、軸方向に延びる棒状の部材である。
【0028】
本実施形態のブレード110の径方向外側端縁は、ステータコア20の径方向内側端縁よりも径方向内側に位置するが、ステータコア20の径方向内側端縁よりも径方向外側に位置してもよい。
【0029】
<ストリッパ>
ストリッパ120は、コイル10を移動させるコイル移動機構である。ストリッパ120は、ステータコア20の径方向内側に配置され、軸方向に移動する。ストリッパ120は、コイル10を軸方向一側から他側に向けて挿入する。ストリッパ120は、コイル10に接触する。ストリッパ120により、コイル10がステータコア20の径方向内側を軸方向に移動しつつ、コイル10の一部がスロットオープン22からスロット21内部に挿入される。具体的には、ストリッパ120は、コイル10の径方向の内側を引っ掛けて、ブレード110に沿ってコイル10を引き上げる。ストリッパ120は、ブレード110とともに軸方向他側に移動してもよく、ブレード110とともに軸方向他側に移動しなくてもよい。
【0030】
ストリッパ120には、環状のコイル10の径方向の内側が引っ掛けられる。ストリッパ120においてコイルが引っ掛けられる部分の径は、コイル10を保持するブレード110間の距離である。
【0031】
本実施形態のストリッパ120の径方向外側端縁は、ステータコア20の径方向内側端縁よりも径方向内側に位置するが、ステータコア20の径方向内側端縁よりも径方向外側に位置してもよい。
【0032】
ストリッパ120は、スロットオープン22に配置される形状を有する。本実施形態では、ストリッパ120の軸方向他側の端部は、半球状である。ストリッパ120の軸方向他側の端面は、曲面である。
【0033】
<ウェッジガイド>
ウェッジガイド130は、ウェッジ30を収容する。ウェッジガイド130は、ウェッジ30をスロット21に案内する。
【0034】
ウェッジガイド130は、ステータコア20の軸方向一側に配置され、隣り合うスロット21間に配置される。ウェッジガイド130は、軸方向に延びる。本実施形態では、複数のウェッジガイド130が配置される。
【0035】
<ウェッジプッシャ>
ウェッジプッシャ140は、ウェッジ30を軸方向一側から他側に移動させる。具体的には、ウェッジプッシャ140は、ウェッジ30に固定される。
【0036】
ウェッジプッシャ140は、軸方向に延びる。本実施形態では、複数のウェッジプッシャ140が配置される。
【0037】
ウェッジプッシャ140は、軸方向において、一側端面141と、他側端面142と、を有する。他側端面142は、ウェッジ30の軸方向一側に取り付けられる。
【0038】
ウェッジプッシャ140は、軸方向に移動する。これにより、ウェッジ30を軸方向に移動する。ウェッジプッシャ140によるウェッジ30の挿入方向は、コイル10の挿入方向と同じである。
【0039】
<フィン部>
フィン部150は、ブレード110間に配置される。ウェッジプッシャ140とフィン部150とは、連結される。このため、ウェッジプッシャ140によりウェッジ30をスロット21に挿入する時に、ウェッジプッシャ140に連結されたフィン部150がブレード110を支持することができる。したがって、ウェッジ30をスロット21に挿入する時に、ブレード110の撓みを抑制できる。
【0040】
フィン部150は、ウェッジプッシャ140の径方向内側に位置する。ここでは、フィン部150は、ウェッジプッシャ140の径方向中央部と連結される。
【0041】
1つのフィン部150は、隣り合うブレード110間に配置される。このため、1つのフィン部150は、隣り合う2つのブレード110を周方向一方端で支持する。ここでは、複数のブレード110間に、複数のフィン部150が配置される。すなわち、1つのブレード110の周方向両端には、2つのフィン部150が配置される。このため、2つのフィン部150は、1つのブレード110を周方向両端で支持する。
【0042】
図2では、フィン部150は、ブレード110に沿って径方向に延びる。フィン部150は、ブレード110の周方向端部と接触する。
【0043】
詳細には、フィン部150の周方向外側面は、ブレード110の周方向外側面に沿った形状を有する。このため、フィン部150とブレード110とは、面接触する。本実施形態では、フィン部150の周方向外側面と、ブレード110の周方向外側面とは、摺動する。
【0044】
フィン部150は、軸方向に延びる。フィン部150は、軸方向において、一側端面151と、他側端面152と、を有する。
【0045】
図3に示すように、フィン部150の一側端面151は、ウェッジプッシャ140の他側端面142よりも軸方向一側に位置する。軸方向において、ウェッジプッシャ140におけるウェッジ30との接触面である他側端面152では、ブレード110に負荷がかかる。しかし、ここでは、フィン部150の一側端面151は、ウェッジプッシャ140の他側端面142よりも軸方向一側に位置するので、ウェッジプッシャ140におけるウェッジ30との接触面近傍をフィン部150が支持できる。このため、ブレード110の撓みを効果的に抑制できる。
【0046】
フィン部150の他側端面152は、ウェッジプッシャ140の他側端面142よりも軸方向他側に位置する。軸方向において、ウェッジプッシャ140におけるウェッジ30との接触面である他側端面142では、ブレード110に負荷がかかる。しかし、ここでは、フィン部150の他側端面152は、ウェッジプッシャ140の他側端面142よりも軸方向他側に位置するので、ウェッジプッシャ140におけるウェッジ30との接触面近傍をフィン部150が支持できる。このため、ブレード110の撓みを効果的に抑制できる。
【0047】
このように、ウェッジプッシャ140においてウェッジ30と接触する他側端面142の軸方向位置は、フィン部150の一側端面151と他側端面152との間に位置する。また、本実施形態では、側面視において、フィン部150は、ウェッジプッシャ140の全体と重なる。
【0048】
図3では、フィン部150の一側端面151の軸方向位置は、ウェッジプッシャ140の一側端面141の軸方向位置と同じである。フィン部150の他側端面152は、ウェッジプッシャ140の他側端面142よりも軸方向他側に位置する。
【0049】
図2に示すように、フィン部150の径方向内側端縁153は、ブレード110の径方向内側に位置する。これにより、フィン部150とブレード110との接触面積を増やすことができるので、ウェッジ30をスロット21に挿入する時に、ブレード110の撓みをより抑制できる。
【0050】
本実施形態では、フィン部150の径方向幅は、ブレード110の径方向幅よりも大きい。フィン部150の周方向幅は、ブレード110の周方向幅よりも小さい。
【0051】
また、本実施形態では、フィン部150の径方向幅は、ウェッジプッシャ140の径方向幅よりも大きい。フィン部150の周方向幅は、ウェッジプッシャ140の周方向幅よりも小さい。
【0052】
<連結部>
連結部160は、複数のフィン部150を連結する。連結部160は、フィン部150の径方向内側に配置される。連結部160により、フィン部150の強度を向上できるので、ブレード110の撓みをより抑制できる。
【0053】
図2では、連結部160は、ブレード110に沿って周方向に延びる。連結部160は、ブレード110の径方向内側端部と接触する。フィン部150と連結部160とによって、ブレード110を周方向及び径方向から支持できる。
【0054】
なお、連結部160は、フィン部150と1つの部材であってもよく、互いに異なる部材が接続されてもよい。
【0055】
連結部160は、隣り合うフィン部150を連結する。本実施形態では、1つの連結部160は、隣り合う2つのフィン部150を連結する。これにより、隣り合う2つのフィン部150と、連結部160とで、1つのブレード110を支持することができる。詳細には、2つのフィン部150で1つのブレード110の周方向両側を支持するとともに、連結部160で1つのブレードの径方向内側を支持できる。
【0056】
なお、本実施形態では、第1のブレード110は、2つのフィン部150及び1つの連結部160で支持され、第1のブレード110の周方向隣の第2のブレード110は、2つのフィン部150で支持される。
【0057】
連結部160の径方向幅R160の最小値は、フィン部150の周方向幅C150の最大値以上である。これにより、連結部160の強度を向上できるので、ウェッジ30をスロット21に挿入する時に、ブレード110の撓みをより一層抑制できる。
【0058】
なお、連結部160において、径方向幅R160は、周方向幅よりも小さい。このため、連結部160の周方向幅の最大値は、フィン部150の周方向幅C150の最大値よりも大きい。
【0059】
連結部160の径方向外側面161は、ブレード110の径方向内側面111に沿った形状を有する。これにより、フィン部150とブレード110との接触面積を増やすことができるので、ウェッジ30をスロット21に挿入する時に、ブレード110の撓みをより一層抑制できる。
【0060】
ここでは、連結部160の径方向外側面161は、ブレード110の径方向内側面111に沿って、湾曲する形状を有する。連結部160とブレード110とは、面接触する。本実施形態では、連結部160の径方向外側面161と、ブレード110の径方向内側面111とは、摺動する。
【0061】
また、連結部160の一側端面の軸方向位置は、フィン部150の一側端面151の軸方向位置と同じである。連結部160の他側端面の軸方向位置は、フィン部150の他側端面152の軸方向位置と同じである。
【0062】
(ウェッジ挿入方法)
続いて、
図1~
図7を参照して、本実施形態のウェッジ挿入方法を説明する。ウェッジ挿入方法は、上述したウェッジ挿入装置100を用いたウェッジ30の挿入方法である。本実施形態では、ウェッジ挿入装置100を用いて、ウェッジ30及びコイル10をスロット21に挿入する。なお、
図4は、ウェッジ挿入方法を示すフローチャートである。
図5~
図7は、ウェッジ挿入装置100におけるコイルを挿入する部材を、軸方向に切断した状態を模式的に示す。ウェッジ挿入装置100によって、
図5~
図7の順にコイル10がスロット21に挿入される。なお、
図5~
図7では、絶縁紙40の図示を省略している。
【0063】
まず、
図4に示すように、ウェッジ挿入装置100をステータコア20に設置する(ステップS1)。このステップS1では、
図5に示すように、ステータコア20の軸方向一側にウェッジ挿入装置100を配置する。
【0064】
詳細には、複数のブレード110間に保持されるようにコイル10を配置する。また、複数のブレード110の径方向の中央であって軸方向一側に、ストリッパ120を配置する。さらに、ウェッジガイド130及びウェッジプッシャ140に支持されるようにウェッジ30を配置する。
【0065】
次に、ストリッパ120を軸方向一側から他側に向けて移動する(ステップS2)。このステップS2では、ストリッパ120は、ブレード110とともに軸方向他側に移動する。また、ストリッパ120の移動に伴って、ウェッジガイド130及びウェッジプッシャ140を軸方向一側から他側に向けて移動する。
【0066】
ブレード110及びストリッパ120を移動することによって、
図6及び
図7に示すように、ステータコア20のスロット21にコイル10を挿入することができる(ステップS3)。
【0067】
また、ウェッジガイド130を軸方向一側から他側に向けて移動して、ウェッジ30をスロット21に案内する。そして、ウェッジプッシャ140、フィン部150及び連結部160を軸方向一側から他側に向けて移動する。ウェッジプッシャ140を移動することによって、スロット21にウェッジ30を挿入することができる(ステップS3)。また、フィン部150及び連結部160を移動することによって、ブレード110を支持することができる。ここでは、ブレード110の移動に合わせて、フィン部150及び連結部160を移動する。
【0068】
次に、ウェッジ挿入装置100をステータコア20から取り外す(ステップS4)。具体的には、ストリッパ120を軸方向一側に向かって移動する。
【0069】
以上の工程(ステップS1~S4)を実施することにより、ステータコア20の軸方向に貫通する複数のスロット21に、コイル10及びウェッジ30を挿入することができる。その結果、
図1に示すステータ1を製造できる。
【0070】
なお、
図5~
図7において絶縁紙40を図示していないが、スロット21に挿入されるコイル10を絶縁紙40で被覆する工程をさらに備える。この工程では、スロット21に予め絶縁紙40を配置して、コイル10をスロット21に挿入してもよい。また、絶縁紙40を被覆したコイル10をスロット21に挿入してもよい。
【0071】
(作用効果)
図8を参照して、本実施形態のウェッジ挿入装置100の作用効果について説明する。
図8において、左側は、従来のウェッジ挿入装置300を模式的に示し、右側は、本実施形態のウェッジ挿入装置100を模式的に示す。従来のウェッジ挿入装置300は、本実施形態のフィン部150及び連結部160を備えていない。
【0072】
本発明者は、ブレード110に撓みが発生するという問題は、以下の現象に起因することを見出した。具体的には、
図8に示すように、高占積率のW相のコイル10Wを挿入する際に、先に挿入されたU相及びV相のコイル10U、10Vのコイルエンドによって、ウェッジガイド130が内径側に押される。これにより、ブレード110が内径側に押されるので、ブレード110が撓んでしまう。
【0073】
図8では、ウェッジ挿入装置100、300は、ブレード110を保持するブレード台座170をさらに備える。ブレード110の軸方向一側端部はブレード台座170で保持され、ブレード110の軸方向他側端部はストリッパ120で押さえられるので、ブレード110の軸方向における中間部分が撓む。このため、ウェッジガイド130が撓むので、ウェッジプッシャ140も撓んでしまう。ウェッジプッシャ140の軸方向他側端部が撓むと、ウェッジプッシャ140が支持するウェッジ30が曲がる。したがって、ウェッジ30が座屈するという問題も生じる。
【0074】
この問題に対して、本実施形態のウェッジ挿入装置100は、ブレード110間に配置され、ウェッジプッシャ140と連結される、フィン部150を備える。フィン部150により、ブレード110を径方向に保持できる。このため、ストリッパ120によりコイル10をスロット21に挿入する際に、ウェッジプッシャ140に連結されたフィン部150がブレード110の中間部分を径方向から支持できる。したがって、高占積率のW相のコイル10Wを挿入する際に、先に挿入されたU相及びV相のコイル10U、10Vのコイルエンドによって、ウェッジガイド130が内径側に押されても、ブレード110の撓みを抑制できる。
【0075】
さらに、本実施形態のウェッジ挿入装置100では、ウェッジプッシャ140の軸方向他側の端部が撓むことを抑制できる。このため、ウェッジプッシャ140が支持するウェッジ30が座屈することを抑制できる。
【0076】
特に、ウェッジプッシャ140におけるウェッジ30との接触面である他側端面142がフィン部150の一側端面151と他側端面152との間に位置すると、ウェッジガイド130が内径側に押されても、フィン部150によって、ブレード110の撓みをより抑制できる。これにより、ウェッジプッシャ140が撓むことをより抑制できるので、ウェッジプッシャ140の他側端面142が支持するウェッジ30が座屈することをより抑制できる。複数のフィン部150を連結する連結部160をさらに備えるウェッジ挿入装置では、この効果がさらに大きい。
【0077】
さらには、フィン部150がブレード110を支持するので、ブレード110の屈曲を抑制できるため、スロット21にウェッジ30を容易に挿入することができる。
【0078】
[第2実施形態]
図9は、第2実施形態のウェッジ挿入装置200を構成するウェッジプッシャ240、フィン部250及び連結部260を概略的に示す斜視図である。
図10は、ウェッジプッシャ240、フィン部250及び連結部260を概略的に示す側面図である。
図9及び
図10に示す第2実施形態のウェッジ挿入装置200は、基本的には第1実施形態のウェッジ挿入装置100と同様の構成であるが、連結部260において異なる。
【0079】
本実施形態のウェッジプッシャ240及びフィン部250は、第1実施形態とのウェッジプッシャ140及びフィン部150と同様である。本実施形態の連結部260は、複数のフィン部250の全てを連結する点において、第1実施形態の連結部160と異なる。これにより、連結部260の強度を高めることができるので、ブレード110の撓みをより一層抑制できる。また、連結部260、フィン部250及びウェッジプッシャ240を軸方向に移動できるので、これらの移動が容易である。
【0080】
具体的には、連結部260は、環状である。
図9では、連結部260は、軸方向視において円状の中空を有する。また、連結部260は、複数のブレード110の全てを支持する。このため、複数のブレード110の全てにおいて、フィン部150により周方向両端が支持され、連結部160により径方向内側が支持される。
【0081】
(変形例1)
上述した第1実施形態及び第2実施形態では、連結部160、260は、隣り合うフィン部150、250を連結する例を挙げたが、これに限定されず、1つの連結部は、隣り合わないフィン部を連結してもよい。
【0082】
(変形例2)
上述した第1実施形態及び第2実施形態では、ウェッジプッシャ140、240、フィン部150、250及び連結部160、260の軸方向一側の位置は、同じであるが、これに限定されない。また、フィン部150、250及び連結部160、260の軸方向他側の位置は、同じであるが、これに限定されない。
【0083】
(変形例3)
上述した実施形態では、
図1に示すように、コイルを挿入する2つのスロット21は、スロット21を4つ挟んだ一のスロット21と他のスロット21とされるが、これに限定されない。
【0084】
(変形例4)
上述した実施形態では、2つのスロット21に1つのコイル10及びウェッジ30を挿入する方法を例に挙げて説明した。4以上のスロット21に、コイル10及びウェッジ30を同時に挿入してもよい。
【0085】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0086】
1 :ステータ
10 :コイル
20 :ステータコア
21 :スロット
30 :ウェッジ
100,200 :ウェッジ挿入装置
110 :ブレード
140,240 :ウェッジプッシャ
141,151 :一側端面
142,152 :他側端面
150,250 :フィン部
153 :径方向内側端縁
160,260 :連結部
161 :径方向外側面