(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146837
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】バッテリーの残容量を検出する方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/387 20190101AFI20231004BHJP
G01R 31/382 20190101ALI20231004BHJP
G01R 31/385 20190101ALI20231004BHJP
G01R 31/388 20190101ALI20231004BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231004BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20231004BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20231004BHJP
【FI】
G01R31/387
G01R31/382
G01R31/385
G01R31/388
H02J7/00 X
H01M10/48 P
H01M10/0566
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054241
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】322003798
【氏名又は名称】パナソニックエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿比留 健介
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H029
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA03
2G216BA47
2G216BA49
2G216BA61
5G503BB02
5G503CA08
5G503EA05
5G503GD03
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AL01
5H029AM01
5H030AA08
5H030AS20
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
【課題】バッテリーの充放電を停止する時間を著しく短縮して、バッテリーの残容量を速やかに検出する。
【解決手段】バッテリーの残容量を検出する方法は、バッテリーの開放電圧を検出して、検出する開放電圧から残容量を特定する残容量(%)の検出方法であって、バッテリーの充放電を停止した後、所定の時間間隔で開放電圧を複数回検出する電圧検出ステップと、電圧検出ステップで検出する複数回の開放電圧から開放電圧が低下する予測関数を演算する関数設定ステップと、関数設定ステップで特定される予測関数に基づいて、バッテリーの開放電圧が低下して収束する収束タイミングにおける予測開放電圧を演算する演算ステップと、演算ステップで演算された予測開放電圧から予測残容量(%)を特定する残容量予測ステップとを含んでいる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーの開放電圧を検出して、検出する開放電圧から残容量を特定する残容量(%)の検出方法であって、
バッテリーの充放電を停止した後、所定の時間間隔で開放電圧を複数回検出する電圧検出ステップと、
前記電圧検出ステップで検出する複数回の開放電圧から開放電圧が低下する予測関数を演算する関数設定ステップと、
前記関数設定ステップで特定される前記予測関数に基づいて、前記バッテリーの開放電圧が低下して収束する収束タイミングにおける予測開放電圧を演算する演算ステップと、
前記演算ステップで演算された予測開放電圧から予測残容量(%)を特定する残容量予測ステップとを含むバッテリーの残容量を検出する方法。
【請求項2】
請求項1に記載のバッテリーの残容量を検出する方法であって、
前記電圧検出ステップにおいて、開放電圧を検出する時間帯が、前記収束タイミングの1/20以下であるバッテリーの残容量を検出する方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバッテリーの残容量を検出する方法であって、
前記収束タイミングが、1時間±30分の範囲であるバッテリーの残容量を検出する方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載のバッテリーの残容量を検出する方法であって、
前記電圧検出ステップにおいて、所定の時間間隔で3回以上開放電圧を測定するバッテリーの残容量を検出する方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のバッテリーの残容量を検出する方法であって、
前記予測関数が、時間(x)を変数とする以下の累乗関数であるバッテリーの残容量を検出する方法。
開放電圧(OCV)=axb
ただし、xは時間、a、bは近似曲線係数
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載のバッテリーの残容量を検出する方法であって、
前記バッテリーが非水電解液二次電池であるバッテリーの残容量を検出する方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載のバッテリーの残容量を検出する方法であって、
前記電圧検出ステップにおいて前記バッテリーの開放電圧を測定した後、前記バッテリーを充電停止電圧まで充電して、充電開始から充電停止電圧までの充電容量(Ah)を検出し、
充電容量(Ah)と予測残容量(SOC)から前記バッテリーの満充電容量(FCC)を補正する満充電容量補正ステップを含むバッテリーの残容量を検出する方法
。
【請求項8】
請求項7に記載のバッテリーの残容量を検出する方法であって、
前記満充電容量補正ステップにおける前記充電停止電圧が、残容量(SOC)を100%とする満充電電圧の80%ないし100%の電圧であるバッテリーの残容量を検出する方法。
【請求項9】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載のバッテリーの残容量を検出する方法であって、
前記電圧検出ステップにおいて前記バッテリーの開放電圧を測定した後、前記バッテリーを放電停止電圧まで放電して、放電開始から放電停止電圧までの放電容量(Ah)を検出し、
放電容量(Ah)と予測残容量(SOC)から前記バッテリーの満充電容量(FCC)を補正する満充電容量補正ステップを含むバッテリーの残容量を検出する方法
【請求項10】
請求項9に記載のバッテリーの残容量を検出する方法であって、
前記満充電容量補正ステップにおける前記放電停止電圧が、残容量(SOC)を0とする最低電圧の0%ないし20%の電圧であるバッテリーの残容量を検出する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーの充放電を一時的に停止して開放電圧を検出し、開放電圧から残容量(SOC)を予測してバッテリーの残容量を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリーは、満充電した後、放電して残容量(SOC)が低下するに従って開放電圧が低下し、また放電した後、充電して残容量(SOC)が増加すると開放電圧が次第に上昇するので、開放電圧から残容量(SOC)を特定できる。バッテリーのこの物性を利用して、従来からバッテリーの残容量を検出する方法として、開放電圧を検出して、開放電圧から残容量を特定する方法が採用されている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッテリーの充放電を停止して開放電圧を検出し、開放電圧から残容量を予測する残容量(SOC)の検出方法は、開放電圧から残容量を正確に予測するために、充放電を停止した後、開放電圧を検出するまでの時間を長く、例えばバッテリーの充放電を停止した後、1時間経過して開放電圧を検出する必要があった。バッテリーの充電を停止した後、開放電圧が次第に低下するので、開放電圧が低下して、残容量を正確に予測できる開放電圧まで低下して収束するまで長い時間を必要とするからである。したがって、開放電圧から残容量を正確に予測するには、充放電を停止する時間が相当に長くなる。このため、開放電圧からバッテリーの残容量を検出するのに時間かかる問題があった。たとえば、バッテリーの残容量検出に1時間も充電を停止する検出方法では、バッテリーを満充電する時間が長くなる問題に加えて、現実の使用環境において、バッテリーの残容量を頻繁に検出して正確に表示するのを阻害する。
【0005】
本発明は、さらに以上の欠点を解消することを目的に開発されたもので、本発明の大切な目的は、バッテリーの充放電を停止する時間を著しく短縮して、バッテリーの残容量を速やかに検出できるバッテリーの残容量を検出する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある実施態様に係るバッテリーの残容量を検出する方法は、バッテリーの開放電圧を検出して、検出する開放電圧から残容量を特定する残容量(%)の検出方法であって、バッテリーの充放電を停止した後、所定の時間間隔で開放電圧を複数回検出する電圧検出ステップと、電圧検出ステップで検出する複数回の開放電圧から開放電圧が低下する予測関数を演算する関数設定ステップと、関数設定ステップで特定される予測関数に基づいて、バッテリーの開放電圧が低下して収束する収束タイミングにおける予測開放電圧を演算する演算ステップと、演算ステップで演算された予測開放電圧から予測残容量(%)を特定する残容量予測ステップとを含んでいる。
【発明の効果】
【0007】
以上のバッテリーの残容量を検出する方法は、バッテリーの充放電を停止する時間を著しく短縮して、バッテリーの残容量を速やかに検出できる特長がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】リチウムイオン二次電池の開放電圧に対して残容量(SOC)が変化する特性を示すグラフである。
【
図2】充電を停止したバッテリーの電圧が低下する特性の一例を示すグラフである。
【
図4】開放電圧から残容量(SOC)が特定されたバッテリーの満充電容量(FCC)を補正する一例を示す図である。
【
図5】開放電圧から残容量(SOC)が特定されたバッテリーの満充電容量(FCC)を補正する他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施態様にかかるバッテリーの残容量を検出する方法は、バッテリーの開放電圧を検出して、検出する開放電圧から残容量を特定する残容量(%)の検出方法であって、バッテリーの充放電を停止した後、所定の時間間隔で開放電圧を複数回検出する電圧検出ステップと、電圧検出ステップで検出する複数回の開放電圧から開放電圧が低下する予測関数を演算する関数設定ステップと、関数設定ステップで特定される予測関数に基づいて、バッテリーの開放電圧が低下して収束する収束タイミングにおける予測開放電圧を演算する演算ステップと、演算ステップで演算された予測開放電圧から予測残容量(%)を特定する残容量予測ステップとを含んでいる。
【0010】
以上のバッテリーの残容量を検出する方法は、充放電を停止した後、バッテリーの開放電圧を複数回にわたって検出し、検出する開放電圧から電圧が低下する予測関数を演算し、この予測関数に基づいて、所定の時間経過後の収束タイミングにおいてバッテリーの予測開放電圧を演算し、さらに演算する予測開放電圧で、開放電圧と残容量(SOC)の特性に基づいて予測残容量(SOC)を特定するので、バッテリーの開放電圧を検出する時間を著しく短縮して、バッテリーの残容量を速やかに検出できる。
【0011】
本発明の他の実施態様にかかるバッテリーの残容量を検出する方法は、電圧検出ステップにおいて、開放電圧を検出する時間帯を、収束タイミングの1/20以下とすることができる。
【0012】
以上のバッテリーの残容量を検出する方法は、電圧検出ステップで開放電圧を検出する時間帯を収束タイミングの1/20以下とするので、電圧検出ステップの時間帯を短くしながら、バッテリーの残容量(SOC)を正確に検出できる特長がある。それは、電圧検出ステップの後、バッテリーの充放電を開始しながら、バッテリーの充放電停止時におけるバッテリーの開放電圧となる予測開放電圧を演算し、この予測開放電圧から残容量(SOC)を特定するからである。
【0013】
本発明の他の実施態様にかかるバッテリーの残容量を検出する方法は、収束タイミングを、1時間±30分の範囲とすることができる。
【0014】
以上のバッテリーの残容量を検出する方法は、電圧検出ステップにおいて開放電圧を検出した後、バッテリーの充放電を開始しながら、開放電圧検出時から1時間±30分の範囲の時間経過後の開放電圧を予測して、残容量(SOC)を特定するので、バッテリーの充放電を長時間にわたって停止することなく、予測開放電圧から残容量(SOC)を正確に特定できる特長がある。
【0015】
本発明の他の実施態様にかかるバッテリーの残容量を検出する方法は、電圧検出ステップにおいて、所定の時間間隔で3回以上開放電圧を測定することができる。
【0016】
本発明の他の実施態様にかかるバッテリーの残容量を検出する方法は、予測関数を、時間(x)を変数とする以下の累乗関数とすることができる。
開放電圧(OCV)=axb
ただし、xは時間、a、bは近似曲線係数
【0017】
以上のバッテリーの残容量を検出する方法は、バッテリーの充放電を停止して開放電圧が低下する予測関数を、所定の電圧に収束する累乗関数とすることで、バッテリーの充放電を長時間停止することなく、収束タイミングを長くして、バッテリーの残容量(SOC)を正確に予測できる特長がある。
【0018】
本発明の他の実施態様にかかるバッテリーの残容量を検出する方法は、バッテリーを非水電解液二次電池とすることができる。
【0019】
本発明の他の実施態様にかかるバッテリーの残容量を検出する方法は、電圧検出ステップにおいてバッテリーの開放電圧を測定した後、バッテリーを充電停止電圧まで充電して、充電開始から充電停止電圧までの充電容量(Ah)を検出し、充電容量(Ah)と予測残容量(SOC)からバッテリーの満充電容量(FCC)を補正する満充電容量補正ステップを含むことができる。
【0020】
本発明の他の実施態様にかかるバッテリーの残容量を検出する方法は、満充電容量補正ステップにおける充電停止電圧を、残容量(SOC)を100%とする満充電電圧の80%ないし100%の電圧とすることができる。
【0021】
本発明の他の実施態様にかかるバッテリーの残容量を検出する方法は、電圧検出ステップにおいてバッテリーの開放電圧を測定した後、バッテリーを放電停止電圧まで放電して、放電開始から放電停止電圧までの放電容量(Ah)を検出し、放電容量(Ah)と予測残容量(SOC)からバッテリーの満充電容量(FCC)を補正する満充電容量補正ステップを含むことができる。
【0022】
本発明の他の実施態様にかかるバッテリーの残容量を検出する方法は、満充電容量補正ステップにおける放電停止電圧を、残容量(SOC)を0とする最低電圧の0%ないし20%の電圧とすることができる。
【0023】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。
さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想の具体例を示すものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0024】
(実施の形態1)
バッテリーは、残容量(SOC)を検出することで、バッテリーの使用可能時間を表示して便利に使用できる。たとえば、ラップトップコンピュータの使用環境において、バッテリーの使用時間を正確に表示することは、作業中にバッテリーが放電されて使用できなくなる弊害を防止するために極めて大切である。バッテリーの残容量は、充放電電流を積算して検出できるが、この方法による残容量(SOC)の演算は、誤差が累積するので、次第に誤差が大きくなる。リチウムイオン二次電池などの非水電解液二次電池は、充放電を停止して開放電圧を検出して残容量が特定できるので、繰り返し残容量を検出して正確に表示できる特長がある。
【0025】
図1はリチウムイオン二次電池の開放電圧に対して残容量(SOC)が変化する特性を示している。この電気特性のバッテリーは、残容量(SOC)が100%の満充電状態から、残容量(SOC)が0%となるまで放電すると開放電圧は次第に低下する。この図に示す「残容量-開放電圧」の特性は、バッテリーの劣化度の影響を受けないので、劣化したバッテリーも開放電圧から残容量(SOC)を特定できる。ただ、残容量(SOC)を特定する開放電圧は、バッテリーの充放電を停止した後、電圧変化が一定値に収束する時間、例えば1時間経過して検出する必要がある。なお、本明細書において、バッテリーの開放電圧が低下して一定値に収束するまでの時間を収束タイミングとする。
【0026】
図2は充電を停止したバッテリーの電圧が低下する特性の一例を示している。この図に示すように、バッテリーの開放電圧は、充電を停止したタイミングから次第に低下して、約1時間経過後には一定の電圧に収束する。したがって、充電を停止して1時間後には開放電圧から残容量(SOC)を特定できる。この方法は、誤差の累積や劣化度の影響を受けることなく残容量(SOC)を正確に検出できるが、残容量の検出に1時間も充電を停止する必要がある。
【0027】
以下のバッテリーの残容量を検出する方法は、短時間にバッテリーの残容量を検出するために、プリ充電ステップ、電圧検出ステップと、関数設定ステップと、演算ステップと、残容量予測ステップとで残容量を検出する。
【0028】
(プリ充電ステップ)
開放電圧から残容量(SOC)を特定する方法は、開放電圧を検出する前工程でバッテリーをプリ充電することで、バッテリーの開放電圧を上昇させて、電圧検出ステップにおける開放電圧の変化値を大きくして、より高い精度で予測関数を特定できる。
図3の時間拡大図は、プリ充電ステップを10秒に設定しているが、プリ充電ステップは5秒以上で、30秒以下とすることができる。ただ、本発明のバッテリーの残容量を検出する方法は、プリ充電ステップを必ずしも必須のステップとするものでなく、バッテリーをプリ充電することなく、以下の電圧検出ステップでバッテリーの開放電圧を検出することもできる。
【0029】
(電圧検出ステップ)
このステップは、バッテリーの充放電を停止した後、所定の時間間隔で開放電圧を複数回検出する。
図3は、このステップにおいて、充電を停止してから1秒後と、充電停止から10秒間隔で6回の合計7回、全体の時間帯を1分として、バッテリーの開放電圧を検出する状態を示している。電圧検出ステップは、開放電圧を検出する時間帯を1分よりも長くして、残容量の測定精度を高くできるが、充放電の停止時間が長くなるので、例えば3分以下、好ましくは2分以下として、収束タイミングの1/20以下とする。さらに、開放電圧の検出回数も、多くして残容量の精度を高くできるので、好ましくは3回以上、さらに好ましくは5回以上とする。
【0030】
(関数設定ステップ)
このステップは、電圧検出ステップで検出する複数回の開放電圧から、開放電圧が収束する予測関数を演算する。予測関数は、開放電圧が時間の経過で一定の電圧に収束する累乗関数として、収束タイミング後におけるバッテリーの予測開放電圧を演算する。累乗関数は、複数の開放電圧と時間から係数を特定することで、所定時間経過後の開放電圧を高い精度で演算できる。
【0031】
累乗関数は、時間(x)を変数とする以下の式で、所定時間経過後の開放電圧を正確に予測できる。
開放電圧(OCV[mV])=axb
ただし、xは時間[s]、 a、bは近似曲線係数
【0032】
電圧検出ステップにおいて
図2と
図3で示す電圧値で変化する累乗関数は、充電を停止した1秒後と、充電停止から10秒間隔で6回検出する以下の開放電圧から近似曲線係数のaとbを演算する。
図2と
図3に示すグラフで低下する開放電圧は、1~60秒後の開放電圧が以下の電圧値となる。
1秒後(x=1)……3887mV
10秒後(x=10)…3883mV
20秒後(x=20)…3879mV
30秒後(x=30)…3876mV
40秒後(x=40)…3874mV
50秒後(x=50)…3873mV
60秒後(x=60)…3871mV
【0033】
以上の開放電圧から累乗関数のaとbを演算して、開放電圧の近似曲線を特定すると、
a=3888.8
b=-0.00099 となる。
【0034】
図2と
図3の開放電圧で低下する累乗関数は、aとbを以上の係数として開放電圧の近似曲線となるが、電圧検出ステップにおけるバッテリーの開放電圧の低下は、検出する開放電圧により変化するので、電圧検出ステップで検出する開放電圧から、aとbを演算して、近似曲線係数を特定する。累乗関数のaとbを特定する演算は、バッテリーから電力を供給している負荷に内蔵する処理速度の速い演算部で演算することで、速やかに特定できる。たとえば、電源としてラップトップコンピュータに内蔵されるバッテリーパックにおいては、バッテリーパック内の演算部で演算することなく、ラップトップコンピュータ側で演算して速やかに近似曲線係数のaとbを特定できる。
【0035】
(演算ステップ)
このステップは、近似曲線係数が特定された累乗関数に基づいて、収束タイミングにおけるバッテリーの予測開放電圧を演算する。収束タイミングを1時間後、すなわち3600秒経過後(x=3600)として演算すると、
予測開放電圧は3857.34mVとなる。
【0036】
以上のバッテリーは、充電を停止して1時間経過後の開放電圧を実測すると、開放電圧は3857mVとなり、予測開放電圧との誤差は、0.34mV(0.01%)と極めて小さく、実質的に無視できる誤差となる。
【0037】
以上のステップは、収束タイミングを1時間(3600秒)経過後として予測開放電圧を演算するが、本発明は収束タイミングを1時間に特定するものでなく、例えば、1時間±30分の範囲とし、あるいはさらに1時間±1時間の範囲として予測開放電圧を演算することもできる。
【0038】
(残容量予測ステップ)
このステップは、演算ステップで演算した予測開放電圧から予測残容量(SOC)[%]を特定する。バッテリーの開放電圧に対する残容量(SOC)は、バッテリーにより特定されるので、開放電圧に対する残容量(SOC)は、予めメモリやルックアップテーブルに記憶して、開放電圧から残容量(SOC)を特定する。
【0039】
(満充電容量補正ステップ)
バッテリーは残容量(SOC)に加えて、満充電容量(FCC)を補正して、負荷に電力を供給できる時間を正確に演算できる。それは、残容量(SOC)が同じバッテリーにおいても、劣化して満充電容量(FCC)が10Ahから8Ahに低下したバッテリーは、同じ負荷に電力を供給しながら、供給できる時間は80%に低下するからである。このステップで、バッテリーの満充電容量(FCC)を補正したバッテリーは、残容量(SOC)を検出したタイミングで、負荷に供給できる時間、すなわち総電力(Ah)を正確に演算できる特長がある。
【0040】
このステップは、電圧検出ステップでバッテリーの開放電圧を検出した後、充電し又は放電してバッテリーの満充電容量(FCC)を補正する。この充放電を停止して、電圧検出ステップにおいてバッテリーの開放電圧を測定した後、バッテリーを充電して充電停止電圧まで充電して、充電を開始してから充電を停止するまでの充電容量(Ah)を積算し、積算した充電容量(Ah)と予測残容量(SOC)からバッテリーの満充電容量(FCC)を補正する。
【0041】
図4は、開放電圧から特定する残容量(SOC)が30%であるバッテリーを、充電停止電圧である満充電電圧まで充電する充電容量(Ah)を示している。残容量(SOC)が30%のバッテリーは、残容量(SOC)が70%増加するように充電して満充電されるので、残容量(SOC)を70%増加させる充電容量(Ah)が7Ahであるバッテリーは、満充電容量(FCC)が10Ahとなる。
【0042】
以上の方法は、以下の式で満充電容量(FCC)を演算して補正できる。
満充電容量(FCC)=充電容量(Ah)×100/[100-残容量(SOC)]
【0043】
また、このステップは、バッテリーの充放電を停止して、電圧検出ステップにおいてバッテリーの開放電圧を測定した後、バッテリーを放電して残容量(SOC)を0%とする放電停止電圧まで放電して、放電を開始してから停止するまでの放電容量(Ah)を積算し、積算した放電容量(Ah)と予測残容量(SOC)とから、バッテリーの満充電容量(FCC)を補正することもできる。
【0044】
このバッテリーは、
図4において、開放電圧から特定する残容量(SOC)が30%であるバッテリーを、残容量(SOC)を0%とする充電停止電圧まで放電すると、放電容量(Ah)が3Ahとなる。すなわち、残容量(SOC)が30%のバッテリーは、残容量(SOC)が30%低下するように放電して残容量(SOC)が0%となるので、残容量(SOC)を30%低下する充電容量(Ah)が3Ahとなり、満充電容量(FCC)は10Ahとなる。
【0045】
以上の方法は、以下の式で満充電容量(FCC)を演算して補正できる。
満充電容量(FCC)=放電容量(Ah)×100/残容量(SOC)
【0046】
以上のバッテリーの残容量を検出する方法は、充電するバッテリーの充電停止電圧を残容量(SOC)が100%となる満充電電圧とし、放電するバッテリーの放電を停止する残容量(SOC)が0%となる最低電圧として、満充電容量(FCC)を補正するが、充電してバッテリーの満充電容量(FCC)を演算する方法は、充電停止電圧を残容量(SOC)が80~100%とする電圧に設定し、また、バッテリーを放電して満充電容量(FCC)を演算する方法は、放電するバッテリーの放電を停止する放電停止電圧を、残容量(SOC)が0~20%となる電圧に設定して、満充電容量(FCC)を補正することができる。
【0047】
図5は、開放電圧から検出する残容量(SOC)が40%であるバッテリーを充電して、充電停止電圧を残容量(SOC)80%の電圧として充電を停止して満充電容量(FCC)を補正し、また、このバッテリーを放電して、放電停止電圧を残容量(SOC)20%の電圧として放電を停止して満充電容量(FCC)を補正する方法を示している。このバッテリーは、充電して残容量(SOC)を40%増加する充電容量(Ah)の積算値が4Ahとなるので、残容量(SOC)を100%増加する満充電容量(FCC)は10Ahとなる。また、このバッテリーは、放電して残容量(SOC)を20%低下する放電容量(Ah)の積算値が2Ahとなるので、残容量(SOC)を100%低下する満充電容量(FCC)は10Ahとなる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、ラップトップコンピュータ等の種々の電子機器に使用されるバッテリーであって、例えばバッテリーの使用可能時間を表示するためにバッテリーの残容量を検出する方法として好適に採用される。