(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014684
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】巻線機器
(51)【国際特許分類】
H01F 27/08 20060101AFI20230124BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20230124BHJP
H01F 27/22 20060101ALI20230124BHJP
H01F 37/00 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
H01F27/08 150
H01F30/10 S
H01F30/10 T
H01F27/08 153
H01F27/22
H01F37/00 M
H01F37/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118774
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】松原 克夫
(72)【発明者】
【氏名】前地 洋明
【テーマコード(参考)】
5E050
【Fターム(参考)】
5E050BA03
5E050JA01
(57)【要約】
【課題】低コストで構成が簡単な巻線機器を提供する。
【解決手段】リアクトルは、巻線と、巻線を冷却する冷却ジャケット(7)と、巻線及び冷却ジャケット(7)を封止する封止樹脂(F)と、を備える。冷却ジャケット(7)は、封止樹脂(F)から露出した露出面(7a)を有する。露出面(7a)には、ヒートシンク(3)が取り付けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線と、
前記巻線を冷却する冷却材と、
前記巻線及び前記冷却材を封止する封止樹脂と、を備え、
前記冷却材は、前記封止樹脂から露出した露出面を有し、
前記露出面には、ヒートシンクが取り付けられている、巻線機器。
【請求項2】
前記冷却材は、前記巻線の一端側及び他端側の少なくとも一方側に突出する突出部を備え、
前記突出部の前記露出面には、前記ヒートシンクが取り付けられている、請求項1に記載の巻線機器。
【請求項3】
前記突出部と当該突出部に取り付けられた前記ヒートシンクとは、1つの部材を用いて一体的に構成されている、請求項2に記載の巻線機器。
【請求項4】
前記巻線は、鉄心に巻回された1次巻線と2次巻線とを備え、
前記冷却材は、前記1次巻線を冷却する第1冷却材と、前記2次巻線を冷却する第2冷却材とを含むとともに、前記鉄心を冷却する第3冷却材を有し、
前記第1冷却材、前記第2冷却材、及び前記第3冷却材は、前記ヒートシンクに対して、互いに異なる位置に接続されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の巻線機器。
【請求項5】
前記巻線と前記冷却材とで挟持されるように設けられるとともに、前記封止樹脂よりも高い熱伝導率を有する高熱伝導樹脂または高熱伝導プリプレグをさらに備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の巻線機器。
【請求項6】
前記冷却材と前記ヒートシンクとで挟持されるように設けられるとともに、前記封止樹脂よりも高い熱伝導率を有する高熱伝導樹脂または高熱伝導プリプレグをさらに備える、請求項1から5のいずれか1項に記載の巻線機器。
【請求項7】
前記ヒートシンクに対して、空気を送風するファンをさらに備える、請求項1から6のいずれか1項に記載の巻線機器。
【請求項8】
前記冷却材は、金属板により構成されている、請求項1から7のいずれか1項に記載の巻線機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、巻線機器に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器やリアクトルなどの巻線機器では、その巻線に電流が流れたときに生じるジュール熱などを効率よく冷却することが求められている。特に、パワーエレクトロニクス機器として用いられる高周波巻線機器では、巻線に対して、高周波電流が高出力で供給されるため、当該巻線での損失密度が大きい。このため、このような高周波巻線機器では、その高電位部で発生した損失、つまり熱を効率よく外部に放熱して当該高周波巻線機器を効率よく冷却することが要望されている。
【0003】
従来の巻線機器には、水などの冷却媒体を使用して、巻線で発生した熱と熱交換を行うことにより、当該熱を冷却する水冷式の冷却機構を設けたものが知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような従来の巻線機器では、水冷式の冷却機構において、冷却媒体を循環させ、冷却するための冷媒の循環冷却装置を設ける必要があった。このため、水冷式の巻線機器では、冷媒の循環冷却装置のため低コスト化を図ることが難しいという問題点があった。
【0006】
本開示は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、低コストで構成が簡単な巻線機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本開示の一側面に係る巻線機器は、巻線と、前記巻線を冷却する冷却材と、前記巻線及び前記冷却材を封止する封止樹脂と、を備え、前記冷却材は、前記封止樹脂から露出した露出面を有し、前記露出面には、ヒートシンクが取り付けられている。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、低コストで構成が簡単な巻線機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態1に係るリアクトルの全体構成を説明する図である。
【
図2】
図1に示したリアクトルの内部構成を示す図である。
【
図3】上記リアクトルの要部構成を説明する図である。
【
図4】本開示の実施形態2に係る変圧器の要部構成を説明する図である。
【
図5】本開示の実施形態3に係る変圧器の要部構成を説明する図である。
【
図6】本開示の実施形態4に係る変圧器の要部構成を説明する図である。
【
図7】本開示の実施形態5に係る変圧器の要部構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
以下、本開示の実施形態1について、
図1から
図3を用いて詳細に説明する。
図1は、本開示の実施形態1に係るリアクトル1の全体構成を説明する図である。
図2は、
図1に示したリアクトル1の内部構成を示す図である。
図3は、上記リアクトル1の要部構成を説明する図である。
【0011】
なお、以下の説明では、巻線機器として、空心リアクトルに適用した場合を例示して説明する。しかしながら、本開示の巻線機器は、巻線、冷却材、封止樹脂、及び封止樹脂から露出した冷却材の露出面に取り付けられたヒートシンクを有するものであれば何等限定されるものではなく、本開示の巻線機器は、例えば、鉄心リアクトルや変圧器などの他の巻線機器にも適用することができる。
【0012】
<リアクトル1>
図1に示すように、本実施形態のリアクトル1は、リアクトル本体2と、リアクトル本体2に取り付けられた放熱器(ラジエーター)としてのヒートシンク3と、ヒートシンク3に対して、空気を送風するファン4とを備える。リアクトル1は、ヒートシンク3及びファン4により、後述の巻線6(
図2)で発生した熱を放熱して冷却する風冷式のリアクトル1である。
【0013】
図2に示すように、リアクトル本体2は、巻枠5と、巻線6と、冷却材としての冷却ジャケット7とを備える。巻枠5は、例えば、四角筒状の形状を有している。また、巻線6は、例えば、リッツ線などの被覆された導電線を用いて構成されている。巻線6は、巻枠5に沿って巻回されており、四角形の枠状に形成されている。
【0014】
冷却ジャケット7は、例えば、銅やアルミニウム合金などの熱伝導率が高い金属材料を用いて構成されている。冷却ジャケット7は、巻線6に当接する面に高熱伝導樹脂あるいは高熱伝導プリプレグで絶縁層(図示せず)が形成されており、当該絶縁層を介して巻線6で発生した熱をヒートシンク3に効率よく伝えることができるようになっている。
【0015】
図3に示すように、リアクトル本体2では、封止樹脂Fにより、
図2に示した巻枠5及び巻線6が封止されている。リアクトル本体2では、封止樹脂Fから露出した露出面7aを有するように、冷却ジャケット7は当該封止樹脂Fによって封止されている。この露出面7aには、例えば、グリスを介在させ不図示のネジにより、ヒートシンク3が直接的に取り付けられる。なお、この説明以外に、例えば、高熱伝導プリプレグを介在させてヒートシンク3を冷却ジャケット7の露出面7aに直接的に取り付けてもよい。
【0016】
ヒートシンク3は、
図3に示すように、複数の放熱フィンを備えている。ヒートシンク3では、ファン4からの空気が放熱フィンに沿って流れることにより、冷却ジャケット7からの巻線6で発生した熱を当該空気と熱交換して当該熱を冷却するように構成されている。
【0017】
封止樹脂Fは、例えば、エポキシ樹脂などの所定の合成樹脂と、アルミナやシリカなどの所定のフィラーとを含んでいる。封止樹脂Fは、例えば、モールド注型によってリアクトル本体2の外壁部となるように形成されている。なお、例えば、1kV以下の低電圧器では、ワニスを全体に塗り、巻線6と冷却ジャケット7を一体化してもよい。
【0018】
以上のように構成された本実施形態のリアクトル1は、巻線6と、巻線6を冷却する冷却ジャケット(冷却材)7と、巻線6及び冷却ジャケット7を封止する封止樹脂Fと、を備える。冷却ジャケット7は、封止樹脂Fから露出した露出面7aを有し、露出面7aには、ヒートシンク3が取り付けられている。これにより、本実施形態では、上記従来例と異なり、低コストで構成が簡単なリアクトル1を構成することができる。
【0019】
すなわち、本実施形態のリアクトル1では、冷却ジャケット7の第1面(高熱伝導樹脂あるいは高熱伝導プリプレグが形成された面)側と当接するように巻線6を設けるとともに、第1面に対向する第2面を封止樹脂Fから露出させた露出面7a1とし、さらに当該露出面7a1にヒートシンク3を直接的に取り付けている。これにより、本実施形態のリアクトル1では、その動作時に巻線6で発生した熱を効率よく冷却ジャケット7からヒートシンク3に伝えることができる。言い換えれば、上記熱の伝達経路において、熱抵抗を極力小さくした状態で、巻線6から冷却ジャケット7を経てヒートシンク3に伝播することができる。この結果、本実施形態では、巻線6で発生した熱を冷却する冷却機構の構成を簡略化することができ、リアクトル1の低コスト化を図ることができる。
【0020】
また、本実施形態のリアクトル1では、冷却ジャケット7が金属板により構成されているので、冷却ジャケット7の構成を簡単化することができ、リアクトル1の低コスト化をより容易に図ることができる。
【0021】
また、本実施形態のリアクトル1では、巻線6で発生した熱を効率よくヒートシンク3に伝えることができるので、当該ヒートシンク3での放熱量を容易に大きくすることができ、優れた冷却性能を有するリアクトル1を容易に構成することが可能となる。また、このように、本実施形態では、ヒートシンク3での放熱量を容易に大きくすることができるので、巻線損失が小さい場合は、上記風冷式のリアクトル1に代えて、ファン4の設置を省略して、ヒートシンク3での外気との熱交換によって上記熱を冷却する、いわゆる自冷式のリアクトルを構成することもできる。この場合には、ファン4の設置スペースを不要とすることができるので、省スペース化されたリアクトルを容易に構成することができる。
【0022】
但し、上記のように、ファン4を設けた場合には、当該ファン4からの空気により、ヒートシンク3での放熱量をさらに大きくすることができ、リアクトル1の冷却性能を大幅に向上させることができる。
【0023】
〔実施形態2〕
本開示の実施形態2について、
図4を用いて具体的に説明する。
図4は、本開示の実施形態2に係る変圧器10の要部構成を説明する図である。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0024】
本実施形態2と上記実施形態1との主な相違点は、巻線機器として、リアクトル1に代えて、変圧器10を構成した点である。
【0025】
<変圧器10>
図4に示すように、本実施形態の変圧器10は、図示を省略した封止樹脂Fによって封止された1次巻線11及び2次巻線12と、鉄心13とを備える。変圧器10では、1次巻線11が鉄心13の中央部に巻回され、2次巻線12は1次巻線11を挟むように2つに分けられて鉄心13に巻回されている。1次巻線11及び2次巻線12は、各々上記巻線6と同様に、例えば、リッツ線などの被覆された導電線を用いて構成されている。鉄心13は、例えば、珪素鋼板、フェライト、アモルファス合金、ナノ結晶軟磁性材料等の強磁性材料を用いて構成されている。
【0026】
1次巻線11では、実施形態1と同様に、封止樹脂Fから冷却ジャケット71の露出面71aが露出しており、当該露出面71aにヒートシンク31が直接的に取り付けられている。同様に、2次巻線12では、封止樹脂Fから冷却ジャケット72の露出面72aが露出しており、当該露出面72aにヒートシンク32が直接的に取り付けられている。
【0027】
冷却ジャケット71及び72は、冷却ジャケット7と同様に、例えば、銅やアルミニウム合金などの熱伝導率が高い金属材料を用いて構成されている。冷却ジャケット71は、1次巻線11に当接するように設置されており、1次巻線11で発生した熱をヒートシンク31に効率よく伝えることができるようになっている。冷却ジャケット72は、2次巻線12に当接するように設置されており、2次巻線12で発生した熱をヒートシンク32に効率よく伝えることができるようになっている。
【0028】
ヒートシンク31及び32は、各々複数の放熱フィンを備えている(図示せず)。ヒートシンク31及び32では、空気が放熱フィンに沿って流れることにより、対応する1次巻線11及び2次巻線12でそれぞれ発生した熱を当該空気と熱交換して当該熱を冷却するように構成されている。
【0029】
以上の構成により、本実施形態2の変圧器10は、実施形態1のリアクトル1と同様な効果を奏する。すなわち、本実施形態では、上記従来例と異なり、低コストで構成が簡単な変圧器10を構成することができる。
【0030】
なお、上記の説明では、2次巻線12を2つに分けた場合について説明したが、本実施形態は、これに限定されるものではなく、例えば、2次巻線12を3つ以上に分ける構成でもよい。
【0031】
〔実施形態3〕
本開示の実施形態3について、
図5を用いて具体的に説明する。
図5は、本開示の実施形態3に係る変圧器20の要部構成を説明する図である。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0032】
本実施形態3と上記実施形態2との主な相違点は、1次巻線としての内側巻線21と、2次巻線としての外側巻線22を設けた点である。
【0033】
<変圧器20>
図5に示すように、本実施形態の変圧器20は、封止樹脂Fによって封止された内側巻線21及び外側巻線22と、鉄心23とを備える。変圧器20では、内側巻線21が鉄心23に近接して巻回され、外側巻線22は内側巻線21を囲むように鉄心23に巻回されている。内側巻線21及び外側巻線22は、各々上記巻線6と同様に、例えば、リッツ線などの被覆された導電線を用いて構成されている。鉄心23は、上記鉄心13と同様に、例えば、珪素鋼板、フェライト、アモルファス合金、ナノ結晶軟磁性材料等の強磁性材料を用いて構成されている。
【0034】
内側巻線21は、高熱伝導樹脂82を介在させて冷却ジャケット74に取り付けられており、当該内側巻線21で発生した熱は高熱伝導樹脂82を経て冷却ジャケット74に伝えられるようになっている。
【0035】
冷却ジャケット74は、冷却ジャケット7と同様に、例えば、銅やアルミニウム合金などの熱伝導率が高い金属材料を用いて構成されている。冷却ジャケット74は、封止樹脂Fから内側巻線21の一端側に突出する突出部74aを備えている。この突出部74aの露出面74a1には、ヒートシンク34が直接的に取り付けられている。
【0036】
ヒートシンク34は、複数の放熱フィンを備えている(図示せず)。ヒートシンク34では、空気が放熱フィンに沿って流れることにより、内側巻線21で発生した熱を当該空気と熱交換して当該熱を冷却するように構成されている。つまり、本実施形態では、突出部74aの露出面74a1に取り付けられたヒートシンク34によって内側巻線21で発生した熱をより効率よく冷却することが可能となり、変圧器20の低コスト化を容易に図ることができる。
【0037】
また、このヒートシンク34と冷却ジャケット74の突出部74aとは、例えば、1つの部材を用いて一体的に構成されている。これにより、本実施形態では、突出部74a及びヒートシンク34をより容易に製造することができ、変圧器20の低コスト化をより容易に図ることができる。
【0038】
なお、この説明以外に、内側巻線21の他端側に突出する冷却ジャケットの突出部を設ける構成でもよい。すなわち、本実施形態では、巻線の一端側及び他端側の少なくとも一方側に突出する突出部を冷却ジャケットに設けるとともに、当該突出部の露出面にヒートシンクを取り付ける構成であれば何等限定されない。
【0039】
外側巻線22は、高熱伝導樹脂81を介在させて冷却ジャケット73に取り付けられており、当該外側巻線22で発生した熱は高熱伝導樹脂81を経て冷却ジャケット73に伝えられるようになっている。
【0040】
冷却ジャケット73は、冷却ジャケット7と同様に、例えば、銅やアルミニウム合金などの熱伝導率が高い金属材料を用いて構成されている。冷却ジャケット73は、封止樹脂Fから露出した露出面73aを有しており、この露出面73a1には、ヒートシンク33が直接的に取り付けられている。
【0041】
ヒートシンク33は、複数の放熱フィンを備えている(図示せず)。ヒートシンク33では、空気が放熱フィンに沿って流れることにより、外側巻線22で発生した熱を当該空気と熱交換して当該熱を冷却するように構成されている。つまり、本実施形態では、冷却ジャケット73の露出面73a1に取り付けられたヒートシンク33によって外側巻線22で発生した熱をより効率よく冷却することが可能となり、変圧器20の低コスト化を容易に図ることができる。
【0042】
高熱伝導樹脂81及び82は、例えば、エポキシ樹脂などの所定の合成樹脂と、アルミナなどの所定のフィラーとを含んでいる。高熱伝導樹脂81及び82の各厚みは、例えば、0.5mm以上0.8mmの範囲内の値であってよく、冷却ジャケット4に対する絶縁破壊電圧は、例えば、平均で約20kVrms/mmである。高熱伝導樹脂6の厚みは、これに限らず、必要な絶縁破壊電圧に応じて変更することができる。高熱伝導樹脂81及び82は、例えば、モールド注型によってそれぞれ冷却ジャケット73及び74の外側巻線22及び内側巻線21の対向面及び側面を覆うように設けられている。
【0043】
なお、この説明以外に、例えば、1kV以下の低電圧器では、ワニス含侵することで、内側巻線21と冷却ジャケット74及び外側巻線22と冷却ジャケット73を硬化する構成でもよい。
【0044】
高熱伝導樹脂81及び82の熱伝導率は、封止樹脂Fの熱伝導率よりも高い熱伝導率を有するように、例えば、1.0W/m・K以上7.0以下の範囲内の値に調整されている。具体的には、高熱伝導樹脂81及び82では、封止樹脂Fと異なり、フィラーとして熱伝導率がより高い、アルミナなどの材料が用いられている。また、高熱伝導樹脂81及び82におけるフィラーの密度は、封止樹脂Fにおけるフィラーの密度よりも高い。例えば、高熱伝導樹脂81及び82での当該フィラーの配合量(つまり、上記合成樹脂でのフィラーの密度)が封止樹脂Fでのフィラーの配合量と比べて10%以上高い値であってもよい。
【0045】
以上の構成により、高熱伝導樹脂81及び82は、その膜厚を上記のように薄くしている点とも相まって、外側巻線22及び内側巻線21でそれぞれ発生した熱を効率よく冷却ジャケット73及び74に伝えることができ、当該熱を冷却ジャケット73及び74とヒートシンク33及び34とで効率よく冷却して変圧器20の冷却性能を確実に向上させることができる。
【0046】
なお、この説明以外に、高熱伝導樹脂81及び82に代えて、例えば、後掲の高熱伝導プリプレグを介在させて内側巻線21及び冷却ジャケット74と、外側巻線22及び冷却ジャケット73とを設ける構成でもよい。
【0047】
以上の構成により、本実施形態3の変圧器20は、実施形態2と同様な効果を奏する。
【0048】
〔実施形態4〕
本開示の実施形態4について、
図6を用いて具体的に説明する。
図6は、本開示の実施形態4に係る変圧器40の要部構成を説明する図である。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0049】
本実施形態4と上記実施形態3との主な相違点は、内側巻線を冷却する第1冷却ジャケット76と、外側巻線を冷却する第2冷却ジャケット75と、鉄心43を冷却する第3冷却ジャケット77及び78を設けるとともに、ヒートシンク35に対して、第1冷却ジャケット76と、第2冷却ジャケット75と、及び第3冷却ジャケット77及び78とを互いに異なる位置に接続した点である。
【0050】
<変圧器40>
図6に示すように、本実施形態の変圧器40は、実施形態3と同様に、封止樹脂Fによって封止された不図示の内側巻線及び外側巻線を備えている。変圧器40では、2つのヒートシンク35が鉄心43を挟むように設けられている。鉄心43は上下半割形状であり、各々が上下のヒートシンク35に接続される。
【0051】
変圧器40では、内側巻線を冷却する第1冷却材としての第1冷却ジャケット76が封止樹脂Fから突出して、一方のヒートシンク35に接続されている。また、この一方のヒートシンク35には、鉄心43を冷却する第3冷却材としての第3冷却ジャケット78が第1冷却ジャケット76とは異なる位置で接続されている。
【0052】
変圧器40では、外側巻線を冷却する第2冷却材としての第2冷却ジャケット75が封止樹脂Fから突出して、他方のヒートシンク35に接続されている。また、この他方のヒートシンク35には、鉄心43を冷却する第3冷却材としての第3冷却ジャケット77が第2冷却ジャケット75とは異なる位置で接続されている。
【0053】
第1冷却ジャケット76と、第2冷却ジャケット75と、及び第3冷却ジャケット77及び78とは、各々冷却ジャケット7と同様に、例えば、銅やアルミニウム合金などの熱伝導率が高い金属材料を用いて構成されている。これらの第1冷却ジャケット76と、第2冷却ジャケット75と、及び第3冷却ジャケット77及び78とは、各々封止樹脂Fから露出した露出面を有しており、当該露出面には、一方または他方のヒートシンク35が直接的に取り付けられている。
【0054】
ヒートシンク35は、
図6に示すように、複数の放熱フィンを備えている。ヒートシンク35では、空気が放熱フィンに沿って流れることにより、内側巻線、外側巻線、及び鉄心43で発生した熱を当該空気と熱交換して当該熱を冷却するように構成されている。つまり、本実施形態では、第1冷却ジャケット76と、第2冷却ジャケット75と、及び第3冷却ジャケット77及び78との各露出面に取り付けられたヒートシンク35によって内側巻線、外側巻線、及び鉄心43で発生した熱をより効率よく冷却することが可能となり、変圧器40の低コスト化を容易に図ることができる。
【0055】
また、
図6に示すように、一方のヒートシンク35に対して、第2冷却ジャケット75及び第3冷却ジャケット77を接続し、他方のヒートシンク35に対して、第1冷却ジャケット76及び第3冷却ジャケット78を接続している。このように、第2冷却ジャケット75及び第1冷却ジャケット76を一方及び他方のヒートシンク35にそれぞれ接続しているので、これらの第2冷却ジャケット75及び第1冷却ジャケット76がそれぞれ取り付けられた外側巻線と内側巻線との離間寸法が小さい場合でも、第2冷却ジャケット75及び第1冷却ジャケット76の位置合わせを容易に行って対応するヒートシンク35に容易に接続することができる。
【0056】
以上の構成により、本実施形態4の変圧器40は、実施形態3と同様な効果を奏する。
【0057】
〔実施形態5〕
本開示の実施形態5について、
図7を用いて具体的に説明する。
図7は、本開示の実施形態5に係る変圧器50の要部構成を説明する図である。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0058】
本実施形態5と上記実施形態1との主な相違点は、鉄心53と、鉄心53に対して、円筒形状に巻回された内側巻線51及び外側巻線52とを備えた変圧器50を構成した点である。
【0059】
<変圧器50>
図7に示すように、本実施形態の変圧器50は、円筒形状の内側巻線51が鉄心53の周りに巻回されている。この内側巻線51には、その内側に接するように、略円形の高熱伝導プリプレグ83が設けられ、更に、この高熱伝導プリプレグ83に当接して、略円形の冷却ジャケット79が設けられている。
【0060】
また、円筒形状の外側巻線52が、内側巻線51を囲むように鉄心53の周りに巻回されている。この外側巻線52には、その外側に接するように、略円形の高熱伝導プリプレグ84が設けられ、更に、この高熱伝導プリプレグ84に当接して、略円形の冷却ジャケット80が設けられている。
【0061】
変圧器50では、図示を省略した封止樹脂Fにより、1次巻線としての内側巻線51及び2次巻線としての外側巻線52が各々別個に封止されている。内側巻線51及び外側巻線52は、各々上記巻線6と同様に、例えば、リッツ線などの被覆された導電線を用いて構成されている。鉄心53は、上記鉄心13と同様に、例えば、珪素鋼板、フェライト、アモルファス合金、ナノ結晶軟磁性材料等の強磁性材料を用いて構成されている。
【0062】
内側巻線51は、高熱伝導プリプレグ83を介在させて冷却ジャケット79に取り付けられており、当該内側巻線51で発生した熱は高熱伝導プリプレグ83を経て冷却ジャケット79に伝えられるようになっている。
【0063】
冷却ジャケット79は、冷却ジャケット7と同様に、例えば、銅やアルミニウム合金などの熱伝導率が高い金属材料を用いて構成されている。尚、この冷却ジャケット79は、不図示の封止樹脂Fから露出した露出面を備えており、この露出面には、ヒートシンクが直接的に取り付けられている(図示せず)。
【0064】
外側巻線52は、高熱伝導プリプレグ84を介在させて冷却ジャケット80に取り付けられており、当該外側巻線52で発生した熱は高熱伝導プリプレグ84を経て冷却ジャケット80に伝えられるようになっている。
【0065】
冷却ジャケット80は、冷却ジャケット7と同様に、例えば、銅やアルミニウム合金などの熱伝導率が高い金属材料を用いて構成されている。冷却ジャケット80は、不図示の封止樹脂Fから露出した露出面を有しており、この露出面には、ヒートシンク36が直接的に取り付けられている。
【0066】
ヒートシンク36は、複数の放熱フィンを備えている(図示せず)。ヒートシンク36では、空気が放熱フィンに沿って流れることにより、外側巻線52で発生した熱を当該空気と熱交換して当該熱を冷却するように構成されている。なお、冷却ジャケット79に取り付けられたヒートシンクも同様に、複数の放熱フィンを備えており、空気が放熱フィンに沿って流れることにより、内側巻線51で発生した熱を当該空気と熱交換して当該熱を冷却するようになっている。
【0067】
高熱伝導プリプレグ83及び84は、例えば、ガラス布等にエポキシ樹脂などの所定の合成樹脂を含浸させて半硬化させたシート状の熱伝導部材である。高熱伝導プリプレグ83及び84の熱伝導率は、封止樹脂Fの熱伝導率よりも高い熱伝導率を有するように、例えば、1.0W/m・K以上7.0W/m・K以下の範囲内の値に調整されている。これにより、高熱伝導プリプレグ83及び84は、内側巻線51及び外側巻線52でそれぞれ発生した熱を効率よく冷却ジャケット79及び80に伝えることができ、当該熱を冷却ジャケット73及び74とヒートシンクで効率よく冷却して変圧器50の冷却性能を確実に向上させることができる。
【0068】
なお、この説明以外に、高熱伝導プリプレグ83及び84に代えて、例えば、上記高熱伝導樹脂を介在させて内側巻線51及び冷却ジャケット79と、外側巻線52及び冷却ジャケット80とを設ける構成でもよい。
【0069】
以上の構成により、本実施形態5の変圧器50は、実施形態1のものと同様な効果を奏する。
【0070】
なお、上記の説明では、巻線にリッツ線を用いた場合について説明したが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、断面形状が長方形の被覆された単一の導電線を用いて、当該導電線の幅方向(エッジワイズ;長方形の断面形状の長辺方向)に巻回して形成されたエッジワイズ巻線を用いることもできる。
【0071】
また、上記の説明以外に、断面形状が長方形の被覆された単一の導電線を用いて、当該導電線の厚さ方向(長方形の断面形状の短辺方向)に巻回して形成されたディスク巻線を用いることもできる。さらに、円筒巻線(レヤー巻線)やシート巻線を用いることができる。このようなレヤー巻線やシート巻線を用いた場合には、各レヤー間やターン間の絶縁材料として、例えば、高熱伝導プリプレグを使用することにより、巻線で発生した熱を冷却ジャケットに効率よく伝えて冷却することができる点で好ましい。
【0072】
〔まとめ〕
上記の課題を解決するために、本開示の一側面に係る巻線機器は、巻線と、前記巻線を冷却する冷却材と、前記巻線及び前記冷却材を封止する封止樹脂と、を備え、前記冷却材は、前記封止樹脂から露出した露出面を有し、前記露出面には、ヒートシンクが取り付けられている。
【0073】
上記構成によれば、低コストで構成が簡単な巻線機器を提供することができる。
【0074】
上記一側面に係る巻線機器において、前記冷却材は、前記巻線の一端側及び他端側の少なくとも一方側に突出する突出部を備え、前記突出部の前記露出面には、前記ヒートシンクが取り付けられてもよい。
【0075】
上記構成によれば、突出部の露出面に取り付けられたヒートシンクによって巻線で発生した熱をより効率よく冷却することが可能となり、巻線機器の低コスト化を容易に図ることができる。
【0076】
上記一側面に係る巻線機器において、前記突出部と当該突出部に取り付けられた前記ヒートシンクとは、1つの部材を用いて一体的に構成されてもよい。
【0077】
上記構成によれば、突出部及びヒートシンクをより容易に製造することができ、巻線機器の低コスト化をより容易に図ることができる。
【0078】
上記一側面に係る巻線機器において、前記巻線は、鉄心に巻回された1次巻線と2次巻線とを備え、前記冷却材は、前記1次巻線を冷却する第1冷却材と、前記2次巻線を冷却する第2冷却材とを含むとともに、前記鉄心を冷却する第3冷却材を有し、前記第1冷却材、前記第2冷却材、及び前記第3冷却材は、前記ヒートシンクに対して、互いに異なる位置に接続されてもよい。
【0079】
上記構成によれば、鉄心、内側巻線、及び外側巻線で発生した熱を効率よく冷却することが可能となり、巻線機器の低コスト化を容易に図ることができる。
【0080】
上記一側面に係る巻線機器において、前記巻線と前記冷却材とで挟持されるように設けられるとともに、前記封止樹脂よりも高い熱伝導率を有する高熱伝導樹脂または高熱伝導プリプレグをさらに備えてもよい。
【0081】
上記構成によれば、高熱伝導樹脂または高熱伝導プリプレグによって巻線で発生した熱を効率よく巻線から冷却材に伝えて当該冷却材で効率よく冷却することが可能となり、巻線機器の低コスト化をより容易に図ることができる。
【0082】
上記一側面に係る巻線機器において、前記冷却材と前記ヒートシンクとで挟持されるように設けられるとともに、前記封止樹脂よりも高い熱伝導率を有する高熱伝導樹脂または高熱伝導プリプレグをさらに備えてもよい。
【0083】
上記構成によれば、高熱伝導樹脂または高熱伝導プリプレグによって巻線で発生した熱を効率よく冷却材からヒートシンクに伝えて当該ヒートシンクで効率よく冷却することが可能となり、巻線機器の低コスト化をより容易に図ることができる。
【0084】
上記一側面に係る巻線機器において、前記ヒートシンクに対して、空気を送風するファンをさらに備えてもよい。
【0085】
上記構成によれば、ファンによって巻線で発生した熱をより効率よく冷却することが可能となり、優れた冷却性能を有する巻線機器をコスト安価に構成することができる。
【0086】
また、本開示の一側面に係る巻線機器は、前記冷却材は、金属板により構成されてもよい。
【0087】
上記構成によれば、冷却材の構成を簡単化することができ、巻線機器の低コスト化をより容易に図ることができる。
【0088】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0089】
1 リアクトル(巻線機器)
3、31~36 ヒートシンク
4 ファン
6 巻線
7、71~80 冷却ジャケット(冷却材)
7a、73a、74a1 露出面
74a 突出部
10、20、40、50 変圧器(巻線機器)
11 1次巻線
12 2次巻線
13、23 鉄心
21、51 内側巻線(1次巻線)
22、52 外側巻線(2次巻線)
81、82 高熱伝導樹脂
83、84 高熱伝導プリプレグ
F 封止樹脂