(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146848
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】作業用車両の燃料タンク
(51)【国際特許分類】
B60K 15/03 20060101AFI20231004BHJP
E02F 9/00 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
B60K15/03 B
E02F9/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054257
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000150154
【氏名又は名称】株式会社竹内製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 和也
(72)【発明者】
【氏名】宮原 聡
(72)【発明者】
【氏名】武内 真吾
【テーマコード(参考)】
2D015
3D038
【Fターム(参考)】
2D015CA00
3D038CA21
3D038CA29
3D038CB04
3D038CC09
(57)【要約】
【課題】堰部の設置領域の低減を図りつつ、残燃料が少量時に車体がいずれの方向に傾斜した場合であっても、当該堰部に所定量の燃料を残留させることができ、且つ、剛性を高めて変形を防止することができる作業用車両の燃料タンクを提供する。
【解決手段】本発明に係る燃料タンク40は、上面部42、底面部44、周壁部50と、底面部44に立設され、車体10の傾斜時に内部の所定位置に燃料を所定量残留させる堰部60とを備え、周壁部50は第1壁51と、第1壁51の一端側に直交して連続する第2壁52とを有し、堰部60は第1壁51が兼用される第1堰61と、第2壁52が兼用される第2堰62と、第1堰61と並行で相対的に長い第3堰63と、第1堰61と並行で第1堰61と第3堰63との間に配置される相対的に短い第4堰64と、第3堰63と第4堰64とを結ぶ第5堰65とを有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業用車両の車体に搭載され、燃料が内部に貯留される燃料タンクであって、
上面部、底面部、および周壁部と、
前記底面部に立設されて、前記車体の傾斜時に前記内部の所定位置に前記燃料を所定量残留させる堰部と、を備え、
前記周壁部は、第1壁と、前記第1壁の一端側に直交して連続する第2壁と、を有し、
前記堰部は、前記第1壁が兼用される第1堰と、前記第2壁が兼用される第2堰と、前記第1堰と並行で相対的に長い第3堰と、前記第1堰と並行で前記第1堰と前記第3堰との間に配置される相対的に短い第4堰と、前記第3堰と前記第4堰とを結ぶ第5堰と、を有すること
を特徴とする作業用車両の燃料タンク。
【請求項2】
前記堰部における前記第3堰、前記第4堰、および前記第5堰は、連続する平面視J字状もしくは左右逆J字状に形成されていること
を特徴とする請求項1に記載の作業用車両の燃料タンク。
【請求項3】
前記第2壁と前記第4堰の先端部との間の領域に、外部に連通し、内部に連通しないように、前記上面部と前記底面部とを貫通して形成される固定バンド挿通孔をさらに備えること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の作業用車両の燃料タンク。
【請求項4】
前記底面部は、前記第3堰、前記第4堰、および前記第5堰に囲われた内部領域に燃料吸込み部を有すると共に外部領域にドレン部を有し、
前記固定バンド挿通孔と前記第4堰の前記先端部との間に、前記ドレン部の方向へ開通し、傾斜時に前記堰部内に残留した前記燃料を傾斜解消時に前記ドレン部の方向へ通流させる流路が設けられていること
を特徴とする請求項3に記載の作業用車両の燃料タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクに関し、さらに詳細には、作業用車両に搭載されて燃料が貯留される燃料タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
作業用車両の例として、クローラもしくはタイヤを有する走行装置と、走行装置上に設けられた車体と、車体に設けられて油圧により作動する作業装置を備えるローダ、エクスカベータ、キャリア等が従来より知られている。
【0003】
上記の作業用車両には、油圧を発生させる油圧ポンプと、油圧ポンプを駆動する駆動源が搭載されている。例えば、駆動源としてエンジン(ディーゼルエンジン等)が用いられる構成が広く普及しており、その燃料が貯留される燃料タンクが車体の所定位置に搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ローダ等に例示される作業用車両においては、傾斜作業時(車体が傾斜した状態での作業時)や大きな車体揺動の発生時に、燃料タンク内部で燃料の偏りが起こることによって燃料吸込み部が露出し、いわゆるエア噛みが生じて燃料供給が停止してしまうという課題があった。これに対して、特許文献1(特開2009-006814号公報)に例示される従来の作業用車両の燃料タンクにおいては、内部に傾斜作業時等に燃料を残留させる堰部を設け、車体が前方または後方に傾斜した場合に、堰部の内部に燃料を残留させることによってエア噛みによる燃料の供給停止を防止することができる構成が実現されている。
【0006】
しかしながら、特に作業用車両においては、その性質上、全方向(360°)に対する傾斜作業が生じ得るため、いずれの方向に傾斜した場合であっても、燃料吸込み部の露出を防止できることが重要となる。仮に、特許文献1に例示される構成によって全方向(360°)対応の堰部を実現しようとすると、燃料タンク内部の構造が極めて複雑になってしまうという課題が生じ得る。
【0007】
一方、燃料タンクは扁平形状に形成される場合が多いため、面積の大きい部分(特に底面部)の剛性が低く(弱く)なって変形が生じ易いという課題があった。これに対して、従来の燃料タンクにおいては、剛性を高く(強く)して変形を防止するため、特に底面部に絞り(内方へ突設される凸部)を多く設置する構成によってその解決が図られている。
【0008】
しかしながら、そのような構成の場合、内部の燃料貯留空間の体積(すなわちタンク容量)が減少することとなり、燃料の最大貯留量が少なくなってしまうという課題が生じ得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、堰部を備える構成であって、当該堰部の設置領域(体積領域)の低減を図りつつ、残燃料が少量である時に全方向(360°)のいずれの方向に傾斜した場合であっても、当該堰部の内部領域に所定量の燃料を残留させてエア噛みによる燃料の供給停止を防止することができ、且つ、剛性を高めて変形を防止することができる作業用車両の燃料タンクを提供することを目的とする。
【0010】
本発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0011】
本発明に係る燃料タンクは、作業用車両の車体に搭載され、燃料が内部に貯留される燃料タンクであって、上面部、底面部、および周壁部と、前記底面部に立設されて、前記車体の傾斜時に前記内部の所定位置に前記燃料を所定量残留させる堰部と、を備え、前記周壁部は、第1壁と、前記第1壁の一端側に直交して連続する第2壁と、を有し、前記堰部は、前記第1壁が兼用される第1堰と、前記第2壁が兼用される第2堰と、前記第1堰と並行で相対的に長い第3堰と、前記第1堰と並行で前記第1堰と前記第3堰との間に配置される相対的に短い第4堰と、前記第3堰と前記第4堰とを結ぶ第5堰と、を有することを要件とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、堰部の設置領域(体積領域)の低減を図りつつ、残燃料が少量である時に全方向(360°)のいずれの方向に傾斜した場合であっても、堰部の内部領域に所定量の燃料を残留させることができる。したがって、燃料貯留空間の体積を増加させることができる構成と、残燃料が少量時にいずれの方向に傾斜してもエア噛みによる燃料の供給停止が生じない構成と、を同時に実現することができる。これに加えて、底面部に設ける絞りの低減を図りつつ、剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る燃料タンクが搭載される作業用車両の例を示す斜視図である。
【
図2】
図1の作業用車両における燃料タンクの搭載位置を説明する斜視図(部分断面図)である。
【
図3】本発明の実施形態に係る燃料タンクの例を示す斜視図である。
【
図4】
図3の燃料タンクの内部構成を示す斜視断面図である。
【
図5】
図3の燃料タンクの内部構成を示す斜視断面図である。
【
図6】
図3の燃料タンクの使用状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本実施形態に係る燃料タンク40が搭載される作業用車両1の例を示す概略図(左前部上方からの斜視図)であり、
図2は、当該燃料タンク40の搭載位置を説明するために一部を断面表示とした斜視図である。なお、説明の便宜上、図中において矢印により上下、左右、前後の方向を示す場合がある。また、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0015】
はじめに、作業用車両1の全体構成について説明する。ここでは、クローラを備えて走行するローダ(「クローラローダ」と称される)を例に挙げて説明するが、これに限定されるものではない。
【0016】
作業用車両1は、
図1に示すように、車体10に対して、下部に走行装置12と、前部に作業装置14と、中央部に操縦室16と、後部にエンジン等が収容されるエンジンルーム18、および作業装置14を動作させるアーム24を取付けるアームポスト26とを備えて構成されている。なお、走行装置12は、一例として左右一対のクローラ(無端状の履帯)22を備える構成としている。ただし、これに限定されるものではなく、左右一対のタイヤを備えて走行する構成(「スキッドステアローダ」と称される)としてもよい(不図示)。
【0017】
先ず、作業装置14は、アームポスト26に対して上下に揺動可能に枢結された左右一対のアーム24と、アーム24の先端部に上下に揺動可能に枢結されたブラケット28と、ブラケット28に着脱可能に取付けられたアタッチメント30(本実施形態においては、バケット)とを備えて構成されている。ここで、アームポスト26およびアーム24に跨って左右一対のアームシリンダ32が設けられており、ブラケット28およびアーム24に跨って左右一対のアタッチメント用シリンダ(通称「バケットシリンダ」)34が設けられている。
【0018】
この構成によれば、アームシリンダ32を伸縮作動させることにより、車体10に対してアーム24を上下に揺動作動させることができる。また、アタッチメント用シリンダ34を伸縮作動させることにより、アーム24に対してブラケット28すなわち装着されたアタッチメント30を上下に揺動作動させることができる。
【0019】
本実施形態においては、アタッチメント30としてバケットを備える構成を例に挙げている。ただし、この構成に限定されるものではなく、アタッチメント30は作業用途に合わせて適宜、選択されて装着される。他の例として、コンクリートカッタ、トレンチャー等の油圧で駆動されるアタッチメントを装着することができる(不図示)。当該アタッチメント30は、単体で、もしくはブラケット28とセットで交換される構成となっている。あるいは、ブラケットとバケットとを一体化した構成のものもある(不図示)。なお、作業用車両1には、油圧で駆動されるアタッチメントに作動油を供給するサービス油路が設けられている(不図示)。
【0020】
なお、本実施形態に係る作業用車両1における走行および作業のためのその他の機構(駆動機構、制御機構等)については、公知の作業用車両(ここでは、ローダ)と同様であるため、詳細の説明を省略する。
【0021】
次に、エンジンルーム18は、車体10の後部(操縦室16の後方位置)に設けられており、その内部に収容される形で駆動源としてのエンジン(不図示)やその周辺機器等が搭載されている。一例として、エンジンには、ディーゼルエンジンが用いられるがこれに限定されるものではない。前述の走行装置12や作業装置14は、このエンジンにより駆動された各油圧ポンプから送出される圧油を受けて駆動される構成となっている。なお、駆動源には、エンジンと共にバッテリーを用いる構成としてもよい(不図示)。
【0022】
一方、エンジンに供給する燃料(軽油等)が貯留される燃料タンク40は、
図2に示すように車体10の前部(操縦室16の下方位置)に搭載されている。ここで、本実施形態に係る燃料タンク40の例として、外観の斜視図を
図3に、内部の斜視図(前方から視た図)を
図4に、内部の斜視図(後方から視た図)を
図5にそれぞれ示す。一例として、燃料タンク40は、樹脂材料(ポリエチレン等)により形成された構成としているが、これに限定されるものではなく、金属材料等により形成された構成としてもよい。
【0023】
この燃料タンク40は、上面部42、底面部44、および上面部42と底面部44との間の空間を囲う周壁部50を備える中空の箱状に形成されている。一例として、周壁部50は、前側に配設される第1壁51と、第1壁51の一端側(この例では右端)に直交して連続する構成を有して右側に配設される第2壁52と、第1壁51の他端側(この例では左端)に直交して連続する構成を有して左側に配設される第3壁53と、第2壁52の後端と第3壁53の後端とに連続する構成を有して後側に配設される第4壁54と、を備えている。なお、前後左右の配置構成は適宜、入れ替えてもよい。また、設計上の都合により第4壁54には作業用車両1に搭載される他の機器と干渉しないようにするための窪みが設けられているが、必須構成ではなく、適宜、省略・変更することができる。
【0024】
また、燃料タンク40は、底面部44(内部側)に立設されて、傾斜作業時(すなわち、車体10の傾斜時)に、所定位置(その内部領域)に燃料を所定量残留させる堰部60を備えている。一例として、堰部60は、
図4、
図5に示すように、第1堰61~第5堰65を備えている。具体的に、第1堰61は第1壁51が兼用される構成を有している。また、第2堰62は第2壁52が兼用される構成を有している。また、第3堰63は第1堰61(すなわち第1壁51)と並行で相対的に長く形成された構成を有して、第1壁51と第4壁54との間(この例では中央よりも第1壁51側)に配設される。また、第4堰64は第1堰61(すなわち第1壁51)と並行で相対的に短く形成された構成を有して、第1堰61と第3堰63との間に配設される。また、第5堰65は第3堰63の一端側(この例では左端)と第4堰64の一端側(この例では左端)とに連続する構成を有する。さらに、底面部44においては、第3堰63、第4堰64、および第5堰65に囲われた内部領域に燃料吸込み部66を有すると共に外部領域にドレン部68が設けられている。なお、燃料吸込み部66には、燃料ポンプ(不図示)に連通する燃料配管(不図示)が接続されている。一方、ドレン部68には、プラグ(不図示)が螺合されており、当該プラグを取り外すことによって、燃料や汚れを外部に排出することができる。
【0025】
この構成によれば、第1壁51および第2壁52をそのまま堰部60の一部として利用する構成の案出によって、当該堰部60の設置領域(体積領域)の低減を図ることができる。また、そのような簡素な構成を実現したうえで、残燃料が少量(規定の数量以下)である時に全方向(360°)のいずれの方向に傾斜した場合であっても、所定位置(具体的には、燃料吸込み部66の位置を含む堰部60の内部領域)に所定量の燃料を残留させることができる。
【0026】
ここで、
図6に、車体10の傾斜時に堰部60の内部領域に燃料が残留した状態を示す。
図6(a)は車体10が前方に傾斜した状態を示す断面図(
図3におけるA-A線断面図)であり、
図6(b)は車体10が後方に傾斜した状態を示す断面図(
図3におけるA-A線断面図)である。また、
図6(c)は車体10が右方に傾斜した状態を示す断面図(
図3におけるB-B線断面図)であり、
図6(d)は車体10が左方に傾斜した状態を示す断面図(
図3におけるB-B線断面図)である。これらの代表的な四方向(前後左右)の図によって示す通り、車体10がどの方向に傾斜した場合にも、燃料吸込み部66の位置を含む堰部60の内部領域に燃料が残留される作用が得られる。
【0027】
以上のように、貯留可能な燃料の量(すなわち、燃料タンク40の最大貯留量)をより増加させることができる構成と、残燃料が少量である時にいずれの方向に傾斜してもエア噛みによる燃料の供給停止が生じない構成と、を同時に実現することができる。なお、従来の構成(外形寸法が同じ場合)と比較して、同一傾斜角度において堰部60の内部に残留する燃料の量が増加する検証結果が得られており、稼働時間の延長につなげる効果が相乗的に得られる。
【0028】
ここで、堰部60のより具体的な形状として、第1壁51兼用の第1堰61、および第2壁52兼用の第2堰62を除いた第3堰63、第4堰64、および第5堰65が、始端(第3堰63の右端)が第2壁52に直交して連続する平面視J字状(もしくは、第2壁52と第3壁53との位置関係等に応じて左右逆J字状となる場合もある)であって、且つ、断面が上下逆U字状(すなわち、上向きに凸状の中空形状)に形成されている。なお、第3堰63、第4堰64、および第5堰65の寸法は特に限定されるものではないが、一例として、平面視における幅寸法はいずれも50mm程度、第3堰63の長さ寸法(長手方向の寸法)は500mm程度、第4堰64の長さ寸法(長手方向の寸法)は300mm程度、第3堰63と第4堰64との離間寸法は200mm程度、にそれぞれ形成されている。一方、高さ寸法はいずれも100mm程度に形成されている。
【0029】
この構成によれば、堰部60によって、車体10の傾斜時に燃料を残留させる作用だけでなく、燃料タンク40(特に、底面部44)の変形を防止する補強の作用も得ることができる。したがって、従来の燃料タンクにおいて変形防止用として多く設けられていた底面部の絞り(内方へ突設される凸部)を低減することができるため、外形を大きくすることなく貯留可能な燃料の量(すなわち、燃料タンク40の最大貯留量)を増加させることができる。
【0030】
また、本実施形態に係る燃料タンク40は、一例として、金属材料からなる二つの固定バンド36、38を用いて車体10に固定される構成となっている。ここで、燃料タンク40には、一方の固定バンド36の一端が挿通される固定バンド挿通孔46が設けられている。この固定バンド挿通孔46は、平面視で第2壁52と第4堰64の先端部64aとの間の領域に、外部(燃料タンク40の外部領域)に連通し、内部(燃料タンク40の内部領域)に連通しないように、上面部42と底面部44とを貫通して形成されている。
【0031】
ここで、連続するJ字状(もしくは逆J字状)の第3堰63、第4堰64、および第5堰65に対して、その開口位置に該当する領域(すなわち、平面視で第2壁52と第4堰64の先端部64aとの間の領域)は、堰部60の構成要素が配置されない領域となるため、相対的に強度が低く、変形し易いという問題が生じる。これに対し、上記の固定バンド挿通孔46を当該領域に配置する構成とすることで、第3堰63、第4堰64、および第5堰65と、固定バンド挿通孔46とによって、底面部44における強度低下部分の偏在を解消でき、より強固な補強効果(変形防止効果)を得ることができる。
【0032】
また、燃料タンク40には、固定バンド挿通孔46(具体的には、燃料タンク40の内部側に露出する壁面)と第4堰64の先端部64aとの間に、ドレン部68の方向へ開通し、車体10の傾斜時に堰部60内に残留した燃料を傾斜解消時に当該ドレン部68の方向へ通流させる流路48が設けられている。
【0033】
前述の通り、堰部60の構成として、特に第3堰63、第4堰64、および第5堰65はJ字状(逆J字状)に形成されているため、車体10の傾斜時にはその内部領域に燃料を残留させる作用が得られる。しかしながらその一方で、囲われた内部領域には汚れが滞留し易くなる問題が生じる。これに対して、上記の構成によれば、車体10の傾斜時に堰部60内に残留した燃料を、傾斜解消時に流路48を通じて通流させることによって、内部領域の汚れをドレン部68へ向けて排出させることができる(その後、ドレン部68を開口することで、燃料タンク40の外部へ排出させることができる)。
【0034】
以上説明した通り、本発明に係る燃料タンクによれば、堰部の設置領域(体積領域)の低減を図りつつ、残燃料が少量時に全方向(360°)のいずれの方向に傾斜した場合であっても、堰部の内部に所定量の燃料を残留させることができる。したがって、燃料貯留空間の体積(すなわち、燃料の最大貯留量)を増加させることができる構成と、残燃料が少量時にいずれの方向に傾斜してもエア噛みによる燃料の供給停止が生じない構成と、を同時に実現することができる。これに加えて、底面部に設ける絞りの低減を図りつつ、剛性を高めることができる。
【0035】
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能である。特に、作業用車両としてクローラローダを例に挙げて説明を行ったが、これに限定されるものではなく、例えば、スキッドステアローダ、クローラキャリア、エクスカベータ等の他の作業用車両に対しても同様に適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0036】
1 作業用車両
10 車体
12 走行装置
14 作業装置
36、38 固定バンド
40 燃料タンク
42 上面部
44 底面部
46 固定バンド挿通孔
48 流路
50 周壁部
60 堰部
66 燃料吸込み部
68 ドレン部