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特開2023-146850見積評価支援装置および見積評価支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146850
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】見積評価支援装置および見積評価支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/0601 20230101AFI20231004BHJP
【FI】
G06Q30/06 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054261
(22)【出願日】2022-03-29
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】小西 啓太
(72)【発明者】
【氏名】川村 浩一
(72)【発明者】
【氏名】木村 幸正
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB55
(57)【要約】
【課題】現在の技術動向を踏まえた適正な見積評価を支援することが可能な見積評価支援装置および見積評価支援プログラムを提供する。
【解決手段】見積評価支援装置1は、見積入力タスク161により新規開発プロジェクトの見積を入力し、開発関連情報収集タスク162により新規開発プロジェクトの開発分野に関連する開発関連情報を収集し、収集された開発関連情報を開発関連情報データベース132に記憶する。見積評価タスク164は、実績データおよび開発関連情報に基づいて、新規開発プロジェクトの見積の妥当性を含む見積評価を作成し、作成された見積評価を見積評価出力タスク165により出力する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
新規開発プロジェクトの見積評価を支援する見積評価支援装置であって、
前記新規開発プロジェクトの見積を入力する見積入力手段と、
前記新規開発プロジェクトの開発分野に関連する開発関連情報を収集する開発関連情報収集手段と、
収集された前記開発関連情報を記憶する開発関連情報記憶手段と、
過去の開発プロジェクトの実績データを記憶する実績データ記憶手段と、
前記実績データと、前記開発関連情報とに基づいて、前記新規開発プロジェクトの見積の妥当性を含む見積評価を作成する見積評価手段と、
作成された前記見積評価を出力する見積評価出力手段と、
を備えることを特徴とする見積評価支援装置。
【請求項2】
前記見積評価手段は、前記実績データと、前記開発関連情報とを教師データとして機械学習され、前記新規開発プロジェクトの見積が入力されると、前記見積評価を作成するように生成された見積評価作成モデルを備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の見積評価支援装置。
【請求項3】
前記実績データは、前記過去の開発プロジェクトの目的または機能に関する開発概要を含み、
前記見積評価作成モデルは、前記開発概要に基づいて分類された前記過去の開発プロジェクトの種類ごとに機械学習され、生成されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の見積評価支援装置。
【請求項4】
前記見積評価手段は、前記見積に含まれる項目のうち、少なくとも、開発規模に対する各開発工程の金額および工数についての妥当性を評価する、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の見積評価支援装置。
【請求項5】
前記見積評価には、前記見積の変更に対する提案と、前記見積の妥当ではない項目に対する質問と、前記見積から予想される前記新規開発プロジェクトのリスクと、が含まれる、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の見積評価支援装置。
【請求項6】
新規開発プロジェクトの見積評価を支援する見積評価支援プログラムであって、
コンピュータを、
前記新規開発プロジェクトの見積を入力する見積入力手段、
前記新規開発プロジェクトの開発分野に関連する開発関連情報を収集する開発関連情報収集手段、
収集された前記開発関連情報を記憶する開発関連情報記憶手段、
過去の開発プロジェクトの実績データを記憶する実績データ記憶手段、
前記実績データと、前記開発関連情報とに基づいて、前記新規開発プロジェクトの見積の妥当性を含む見積評価を作成する見積評価手段、および、
作成された前記見積評価を出力する見積評価出力手段、
として機能させることを特徴とする見積評価支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ソフトウェアなどの新規開発プロジェクトにおいて、開発計画の見積評価を支援する見積評価支援装置および見積評価支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ソフトウェアなどの新規開発プロジェクトの立ち上げ時には、開発計画の見積が作成される。この見積には、利用する開発手法(ウォーターフォール型、アジャイル型など)と、使用するプログラム言語と、step数などの開発規模と、開発に必要な作業工程の項目と、各項目の工数(作業人数、期間など)と、各項目にかかる金額などが含まれる。作成された見積は、評価担当者によって評価される。評価担当者は、過去のソフトウェア開発プロジェクトから類似するプロジェクトを見つけ出し、これを評価基準として用いて新たなプロジェクトの見積の妥当性を評価する。
【0003】
しかしながら、評価担当者によっては、評価結果にばらつきがあり、説明性のある評価が得られないことがあった。これは、各評価担当者の見積評価に対する経験や知識、評価手法などが異なることから、開発規模の想定が適切に行えなかったり、最新の技術動向に対応できなかったりすることなどが原因と考えられる。また、評価基準となる過去の類似プロジェクトの検索に時間がかかり、見積評価が遅延するという問題もあった。
【0004】
このような問題を解決するために、過去のソフトウェア開発の実績から求めた統計値と、新たなソフトウェア開発の計画より求めた計画値とを比較し、ソフトウェア開発の計画の妥当性を評価する装置が発明されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-322252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、シフトウェア開発の分野では、開発手法やプログラム言語などの技術の進歩が早いため、過去の実績との比較だけでは現在の見積を適正に評価することは難しい。
【0007】
そこでこの発明は、現在の技術動向を踏まえた適正な見積評価を支援することが可能な見積評価支援装置および見積評価支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、新規開発プロジェクトの見積評価を支援する見積評価支援装置であって、前記新規開発プロジェクトの見積を入力する見積入力手段と、前記新規開発プロジェクトの開発分野に関連する開発関連情報を収集する開発関連情報収集手段と、収集された前記開発関連情報を記憶する開発関連情報記憶手段と、過去の開発プロジェクトの実績データを記憶する実績データ記憶手段と、前記実績データと、前記開発関連情報とに基づいて、前記新規開発プロジェクトの見積の妥当性を含む見積評価を作成する見積評価手段と、作成された前記見積評価を出力する見積評価出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項1の発明は、見積入力手段に新規開発プロジェクトの見積を入力し、開発関連情報収集手段により新規開発プロジェクトの開発分野に関連する開発関連情報を収集し、収集された開発関連情報を開発関連情報記憶手段に記憶し、見積評価手段により、実績データおよび開発関連情報に基づいて、新規開発プロジェクトの見積の妥当性を含む見積評価を作成し、作成された見積評価を見積評価出力手段により出力する。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の見積評価支援装置において、前記見積評価手段は、前記実績データと、前記開発関連情報とを教師データとして機械学習され、前記新規開発プロジェクトの見積が入力されると、前記見積評価を作成するように生成された見積評価作成モデルを備える、ことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2に記載の見積評価支援装置において、前記実績データは、前記過去の開発プロジェクトの目的または機能に関する開発概要を含み、前記見積評価作成モデルは、前記開発概要に基づいて分類された前記過去の開発プロジェクトの種類ごとに機械学習され、生成されている、ことを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の見積評価支援装置において、前記見積評価手段は、前記見積に含まれる項目のうち、少なくとも、開発規模に対する各開発工程の金額および工数についての妥当性を評価する、ことを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の見積評価支援装置において、前記見積評価には、前記見積の変更に対する提案と、前記見積の妥当ではない項目に対する質問と、前記見積から予想される前記新規開発プロジェクトのリスクと、が含まれる、ことを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、新規開発プロジェクトの見積評価を支援する見積評価支援プログラムであって、コンピュータを、前記新規開発プロジェクトの見積を入力する見積入力手段、前記新規開発プロジェクトの開発分野に関連する開発関連情報を収集する開発関連情報収集手段、収集された前記開発関連情報を記憶する開発関連情報記憶手段、過去の開発プロジェクトの実績データを記憶する実績データ記憶手段、前記実績データと、前記開発関連情報とに基づいて、前記新規開発プロジェクトの見積の妥当性を含む見積評価を作成する見積評価手段、および、作成された前記見積評価を出力する見積評価出力手段、として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1および請求項6の発明によれば、過去の開発プロジェクトの実績データと、現在の開発関連情報とに基づいて、新規開発プロジェクトの見積の妥当性を含む見積評価を作成するので、現在の技術動向を踏まえた適正な見積評価を作成することが可能である。また、過去の開発プロジェクトには、肯定的評価が得られたものと、否定的評価が得られたものとが混在するが、これらの良否を含む実績データに基づいて新規開発プロジェクトの見積評価を作成するので、より精度のよい見積評価を作成することが可能である。
【0016】
請求項2の発明によれば、実績データと、開発関連情報とを教師データとして機械学習された見積評価作成モデルを利用して新規開発プロジェクトの見積評価を作成するので、精度が高い見積評価を迅速に得ることが可能である。
【0017】
請求項3の発明によれば、過去の開発プロジェクトの開発概要に基づいて分類された過去の開発プロジェクトの種類ごとに機械学習を行なって見積評価作成モデルを生成するので、新規開発プロジェクトと同種の過去の開発プロジェクトに基づいて生成された見積評価作成モデルを利用して見積評価を作成することができる。これにより、より精度のよい見積評価を作成することが可能である。
【0018】
請求項4の発明によれば、見積に含まれる項目のうち、少なくとも、開発規模に対する各開発工程の金額および工数についての妥当性を精度よく評価することができるので、新規開発プロジェクトの成功率を向上させることが可能である。
【0019】
請求項5の発明によれば、見積評価として、見積の妥当性の他に、見積の変更に対する提案と、見積の妥当ではない項目に対する質問と、見積から予想される新規開発プロジェクトのリスクとを作成することができるので、単なる評価だけでなく、新規開発プロジェクトの成功率がより高くなるように見積を修正するための示唆や提案を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明の実施の形態に係る見積評価支援装置による見積評価の概要を示す概念図である。
図2図1の見積評価支援装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
図3】見積に含まれる項目の一例を示す図である。
図4図1の開発関連情報データベースのデータ構成を示す図である。
図5図1の実績データベースのデータ構成を示す図である。
図6図1の見積評価作成モデルの構成を示す図である。
図7】見積評価の評価項目と、これらの評価項目を作成するために主に利用される教師データと、見積の項目との対応関係を示す表である。
図8図1の見積評価作成モデルの機械学習および見積評価の作成を説明する概念図である。
図9】新規開発プロジェクトの見積の一例を示す図である。
図10】肯定的評価が得られた見積評価の一例を示す図である。
図11】新規開発プロジェクトの見積の別の一例を示す図である。
図12】否定的評価が得られた見積評価の一例を示す図である。
図13】見積から見積評価を作成する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0022】
図1は、この発明の実施の形態に係る見積評価支援装置1による、見積評価の概要を示す概念図である。本実施の形態に係る見積評価支援装置1は、ソフトウェアの新規開発プロジェクトの見積の妥当性を評価するための装置である。見積評価支援装置1は、新規開発プロジェクトの見積金額、見積工数などを含む見積2が入力されると、過去の開発プロジェクトの実績データと、現在のソフトウェア開発に関する開発関連情報とに基づいて、見積2の妥当性を含む見積評価3を作成・出力する。これにより、過去の実績と、現在の技術動向とを踏まえた適正な見積評価を得ることが可能である。
【0023】
図2は、見積評価支援装置1の概略構成を示す機能ブロック図である。見積評価支援装置1は、主として、入力部11、表示部12、記憶部13、メモリ14、通信部15、メインタスク16、およびこれらを制御などする中央処理部17などを備える。
【0024】
見積評価支援装置1は、例えば、パーソナルコンピュータなどに、装置全体の制御プログラム(オペレーションシステム)や、見積評価3を作成するための各種処理を行うアプリケーション(見積評価支援プログラム131)がインストールされて構成される。
【0025】
入力部11は、利用者の命令などを受けて見積評価支援装置1へ情報を入力する機能を備えるインターフェースであり、例えばキーボードやマウスによって構成される。なお、見積2は、入力部11を操作して見積評価支援装置1へ直接入力してもよい。したがって、入力部11は、本発明の見積入力手段に相当する。
【0026】
表示部12は、入力部11を介して入力される情報を表示したり、見積評価支援装置1としての処理結果である見積評価3を表示したり、などする機能を備え、例えば液晶ディスプレイによって構成される。したがって、表示部12は、本発明の見積評価出力手段に相当する。
【0027】
記憶部13は、各種の情報、プログラム、およびデータなどを記憶する機能を備える記憶領域/記憶装置であり、例えばハードディスクによって構成される。記憶部13には、見積評価支援装置1全体の制御プログラムや見積評価支援プログラム131が格納されるとともに、開発関連情報データベース(以下、データベースをDBともいう)132、実績データベース133、および見積評価作成モデル134などが格納される。
【0028】
メモリ14は、中央処理部17が見積評価3の作成に関わる処理を実行する際に生成される情報・データを一時的に記憶などするための作業領域となる機能を備える記憶領域/記憶装置であり、例えばRAM(Random Access Memory の略)により構成される。
【0029】
通信部15は、例えばLAN(Local Area Network の略)やWAN(Wide Area Network の略)を含む各種の無線/有線通信回線網を介して伝送される信号・情報の送受信/入出力を行う機能を備える通信インターフェースである。なお、他の端末を利用して作成した見積2を通信部15を介して見積評価支援装置1へ入力してもよいし、通信部15を介して見積評価3を他の端末やプリンタなどへ送信するようにしてもよい。したがって、通信部15は、本発明の見積入力手段および見積評価出力手段に相当する。
【0030】
メインタスク16は、記憶部13に格納されている見積評価支援プログラム131が実行されることによって実現される、見積評価3の作成に事故報告の作成・送信に関わる各種処理を実行するためのタスク群である。
【0031】
中央処理部17は、見積評価支援装置1を構成する各部を統制して制御などする機能を備え、例えば、中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit の略)を含んで構成される。中央処理部17は、記憶部13に格納されている制御プログラムや見積評価支援プログラム131に従って各機能を実現する。
【0032】
見積評価支援装置1は、ソフトウェアの新規開発プロジェクトの見積2の妥当性を含む見積評価3を作成・出力するための各種処理を実行する。この処理は、記憶部13に格納されている見積評価支援プログラム131が中央処理部17によって実行されることにより構成される、メインタスク16によって行われる。メインタスク16は、見積入力タスク(見積入力手段)161、開発関連情報収集タスク(開発関連情報収集手段)162、学習タスク163、見積評価タスク(見積評価手段)164、および見積評価出力タスク(見積評価出力手段)165を含む。
【0033】
図3は、見積2に入力される項目の一例を示している。見積2は、例えば、プロジェクトID、開発概要、ベンダー、プログラム言語、開発手法、開発規模、および作業工程(見積金額、見積工数)などの項目を備えている。
【0034】
プロジェクトIDは、新規開発プロジェクトを識別するためのIDであり、見積2の入力時あるいは作成時に付与される。開発概要は、新規開発プロジェクトにて開発されるソフトウェアの目的または機能に関する情報であり、例えば、「○○機器の管理のため、システムを新規に開発する」などのように、目的または機能などが入力される。ベンダーは、新規開発プロジェクトの開発業務で担当が予定されている開発事業者に関する情報であり、例えば、「△△株式会社」などのベンダー名が入力される。プログラム言語は、新規開発プロジェクトにてソフトウェアの開発への使用が予定されているプログラム言語であり、例えば、「Java」などの言語名が入力される。開発手法は、新規開発プロジェクトでソフトウェアの開発への利用が予定されている開発手法であり、例えば、「ウォーターフォール」や「アジャイル」などの開発手法名が入力される。
【0035】
開発規模は、新規開発プロジェクトで開発されるソフトウェアのサイズを示し、例えば、画面数、帳票数、データベース本数、プログラム本数、step数などの情報が入力される。なお、開発規模に関する項目は、これらの内容に限定されず、これらの項目のうちの一部のみでもよいし、さらに多くの項目を含んでいてもよい。また、これらの開発規模に関する項目は、ソフトウェア開発において従来から一般的に用いられているものであるため、ここでは詳しい説明は省略する。
【0036】
作業工程は、新規開発プロジェクトでソフトウェアを開発する際に予定されている作業内容の詳細を示す。作業工程の各項目としては、例えば、要件定義補助、基本設計、詳細設計、プログラム(PG)設計・作成および単体テスト、結合テスト、総合テスト補助および本番移行などである。また、作業工程には、各項目で予定されている見積金額と、見積工数(期間、作業人数)とが含まれている。なお、作業工程の項目については、これらの内容に限定されず、これらの項目のうちの一部のみでもよいし、さらに多くの項目を含んでいてもよい。また、これらの作業工程については、ソフトウェア開発において従来から一般的に用いられているものであるため、ここでは詳しい説明は省略する。
【0037】
次に、開発関連情報データベース(開発関連情報記憶手段)132について説明する。開発関連情報データベース132は、上述した開発関連情報タスク162により収集された開発関連情報を記憶する。開発関連情報は、新規開発プロジェクトにて開発されるソフトウェアに関連する情報であり、例えば、ソフトウェア開発の市場価格や、ソフトウェア開発業者(開発担当者、メーカ、開発ベンダともいう)の実績や評価などに関する情報、最新のソフトウェア開発手法やプログラム言語などに関する情報などを含む。また、新規開発プロジェクトにより開発されるソフトウェアが特殊な用途のものである場合には、その特殊用途のソフトウェア開発に関する情報も開発関連情報に含まれる。
【0038】
図4に示すように、開発関連情報データベース132には、新規開発プロジェクトのプロジェクトIDごとに、市場価格、ベンダー情報、開発手法関連情報、プログラム関連情報、その他などの情報が記憶される。特殊用途のソフトウェア開発に関する情報は、その他に記憶してもよい。開発関連情報データベース132に記憶されている情報は、見積評価作成モデル134を機械学習により生成・更新するための教師データとして用いられる。
【0039】
実績データベース(実績データ記憶手段)133は、過去に行なわれたソフトウェア開発プロジェクトの実績に関するデータを記憶する。図5に示すように、実績データベース133には、過去の開発プロジェクトを識別するためのプロジェクトIDごとに、開発概要、ベンダー、プログラム言語、開発手法、開発規模、作業工程、作業工程の各項目の評価、全体評価などの情報が記憶されている。実績データベース133に記憶されている情報は、見積評価作成モデル134を機械学習により生成・更新するための教師データとして用いられる。
【0040】
開発概要、ベンダー、プログラム言語、開発手法、開発規模、および作業工程は、過去の開発プロジェクトの実績である以外は、上述した見積2の各項目と同様のものであるため、詳しい説明は省略する。
【0041】
作業工程の各項目の評価については、開発規模に対する金額および工数についての妥当性の評価が記憶される。評価としては、「○」および「×」のように、正否のみを登録してもよいし、評価の点数を登録してもよい。作業工程の評価理由は、前述した評価のうち、否定的な評価がされた場合に、その理由が登録される。例えば、「規模に対して期間が長い」、「規模に対して期間が短い」、「規模に対して人数が少ない」、「規模に対して人数が多い」、「規模に対して金額が高い」、「規模に対して金額が低い」などのように、否定的な評価の具体的な理由が登録される。
【0042】
全体評価は、過去の開発プロジェクト全体を通して、開発期間や開発費用、完成したソフトウェアの評価などを含めた全体的な評価が登録される。全体評価は、作業工程の評価と同様に、「○」および「×」のような正否のみを登録してもよいし、評価の点数を登録してもよい。また、否定的な評価である場合には、その評価理由を登録してもよい。
【0043】
見積評価作成モデル134は、実績データベース133に記憶されている各種の実績データと、開発関連情報データベース132に記憶されている各種情報とを教師データとして機械学習され、新規開発プロジェクトの見積2が入力されると、この見積2の見積評価3が作成されるように生成された学習済みモデルである。
【0044】
見積評価作成モデル134は、実績データの開発概要に基づいて分類された過去の開発プロジェクトの種類ごとに機械学習され、生成されている。すなわち、見積評価作成モデル134は、図6に示すように、過去の開発プロジェクトの種類ごとに機械学習されて生成された複数の学習済みモデル(例えば、○○用見積評価作成モデルなど)を備えている。
【0045】
過去の開発プロジェクトの種類とは、例えば、機器制御用ソフトウェア、設備管理用ソフトウェア、施設運営支援用ソフトウェアなどのように、ソフトウェアの機能や目的に基づく分類である。同じ種類のソフトウェアは、類似した実績データを有する。そのため、過去の開発プロジェクトの種類ごとに機械学習を行なって見積評価作成モデルを生成し、新規開発プロジェクトの見積2の種類に応じて見積評価作成モデルを選択することで、精度の高い見積評価3を作成することが可能である。
【0046】
見積評価作成モデル134は、見積2に含まれる項目のうち、少なくとも、開発規模に対する開発工程の各項目の金額および工数についての妥当性の評価と、見積2の開発手法やプログラム言語の変更に対する提案と、見積2の妥当ではない項目に対する質問と、見積2から予想される新規開発プロジェクトのリスクと、を評価項目として含む見積評価3を作成する。
【0047】
図7に示す対応表4は、見積評価3の評価項目である妥当性、開発手法の提案、プログラム言語の提案、質問およびリスクの内容と、これらの評価項目を作成するために主に利用される教師データの項目と、見積2の内容との対応関係を示している。
【0048】
見積評価3の妥当性では、実績データと現時点の開発関連情報とに基づき、見積金額、見積工数(期間、人数)の妥当性が評価される。開発手法の提案では、実績データと現時点の開発関連情報とに基づき、最も適した開発手法が提案される。また、プログラム言語の提案では、実績データと現時点の開発関連情報とに基づき、最も適したプログラム言語が提案される。さらに、質問では、実績データと現時点の開発関連情報とに基づき、相違する点等について補足の確認ができるよう確認事項の一覧が作成される。また、リスクでは、規模に対する開発期間や時期、利用するプログラム言語、開発手法に対するリスクの一覧が作成される。
【0049】
なお、最も適した開発手法およびプログラム言語とは、例えば、高機能、あるいは処理速度が速いソフトウェアが開発可能な開発手法およびプログラム言語、開発期間が短い開発手法およびプログラム言語、開発コストが低い開発手法およびプログラム言語など、何らかのメリットが得られる開発手法およびプログラム言語である。
【0050】
次に、メインタスク16を構成する見積入力タスク161、開発関連情報収集タスク162、学習タスク163、見積評価タスク164、および見積評価出力タスク165について説明する。
【0051】
見積入力タスク161は、入力部11を操作して入力された見積2、あるいは通信部15を介して他の端末などから受信した見積2の入力を受け付ける。見積入力タスク161にて入力が受け付けられた見積2は、メモリ14あるいは記憶部13に一時的に記憶される。
【0052】
開発関連情報収集タスク162は、見積2の開発概要を参照し、新規開発プロジェクトの開発分野に関連する開発関連情報を収集する。開発関連情報収集タスク162は、例えば、RPA(Robotic Process Automation)を利用して、情報銀行などの情報源から開発関連情報を収集する。収集された開発関連情報は、見積2のプロジェクトIDごとに開発関連情報データベース132に記憶される。
【0053】
なお、RPAは、定型作業をコンピュータ内に生成されたソフトウェア型のロボットによって代行・自動化する概念である。また、情報銀行とは、個人とのデータ活用に関する契約等に基づき、PDS(Personal Data Store)等のシステムを活用して個人のデータを管理するとともに、個人の指示または予め指定した条件に基づき個人に代わり妥当性を判断の上、データを第三者(他の事業者)に提供する事業である。情報銀行を利用することにより、インターネット上に公開されている情報よりも最新かつ詳細な開発関連情報を得ることが可能である。
【0054】
学習タスク163は、開発関連情報収集タスク162により収集された開発関連情報と、実績データとに基づいて、見積評価作成モデル134を生成・更新するタスクである。図8に示すように、学習タスク163は、開発関連情報データベース132に記憶されている開発関連情報と、実績データベース133に記憶されている過去の開発プロジェクトの実績データとを教師データとして、ニューラルネットワーク等の公知の機械学習、深層学習(ディープラーニング)の技術を利用し、見積評価作成モデル134を生成・更新する。具体的には、学習タスク163は、新規開発プロジェクトの見積2を入力層とし、見積評価3を出力層とし、見積2から、評価項目として妥当性評価、開発手法の提案、プログラム言語の提案、質問およびリスクを含む見積評価3を得るための処理を行う中間層を含む見積評価作成モデル134を作成する。
【0055】
なお、学習タスク163は、上述したように、過去の開発プロジェクトの種類ごとに複数の見積評価作成モデル134を生成する。また、学習タスク163は、見積入力タスク161にて新規開発プロジェクトの見積2の入力が受け付けられ、開発関連情報収集タスク162により見積2の開発関連情報が新たに収集されると、見積2の開発概要と同種類または類似する見積評価作成モデル134を選択し、この見積評価作成モデル134を開発関連情報に基づいて機械学習して更新する。これにより、常に最新の開発関連情報に基づいて更新された見積評価作成モデル134を利用して、見積評価3を作成することができる。
【0056】
見積評価タスク164は、見積2の見積評価3を作成するタスクである。見積評価タスク164は、見積評価3の作成に、上記の見積評価作成モデル134を利用する。具体的には、見積評価タスク164は、学習タスク163にて更新された見積評価作成モデル134に新規開発プロジェクトの見積2を入力する。見積2が入力された見積評価作成モデル134は、評価項目として、開発規模に対する開発工程の金額および工数についての妥当性の評価と、見積2の開発手法やプログラム言語の変更に対する提案と、見積2の妥当ではない項目に対する質問と、見積2から予想される新規開発プロジェクトのリスクとを含む見積評価3を作成する。
【0057】
見積評価出力タスク165は、見積評価タスク164にて作成された見積評価3を、通信部15を介して他の端末や、プリンタなどへ送信する。見積評価出力タスク165により出力された見積評価3は、他の端末の表示画面や、プリンタにて印刷されたプリントによって評価担当者により確認される。
【0058】
次に、図9~12と、図13に示すフローチャートとに基づいて、上記の実施の形態の作用について説明する。見積入力タスク161は、入力部11を操作して入力された見積2、あるいは通信部15を介して他の端末などから受信した見積2の入力を受け付ける(ステップS1)。
【0059】
図9は、見積入力タスク161にて入力が受け付けられた見積の一例である見積2Aを示している。開発関連情報収集タスク162は、見積2Aの開発概要、「○○機器の管理のため、システム新規に開発する」を参照し、この開発概要に関連する開発関連情報を収集して開発関連情報データベース132に記憶する(ステップS2)。
【0060】
学習タスク163は、見積2Aの開発概要と同種類または類似する見積評価作成モデル134を選択し、この見積評価作成モデル134を開発関連情報収集タスク162により収集された開発関連情報に基づいて機械学習して更新する(ステップS3)。
【0061】
見積評価タスク164は、学習タスク163にて更新された見積評価作成モデル134に新規開発プロジェクトの見積2Aを入力する。見積2Aが入力された見積評価作成モデル134は、開発規模に対する開発工程の金額および工数についての妥当性の評価を含む見積評価3Aを作成する(ステップS4)。
【0062】
図10は、見積2Aに基づいて作成された見積評価の一例である見積評価3Aを示している。この例では、開発規模に対する開発工程の見積金額および見積工数が妥当であると評価されているため、評価欄には肯定的評価を示す「○」が記されている。また、開発手法やプログラム言語が適切であり、妥当でない項目に対する質問がなく、リスクも予想されないため、これらの評価項目は見積評価3Aには記載されていない。
【0063】
図11は、見積入力タスク161にて入力が受け付けられた見積の一例である見積2Bを示し、図12は、見積2Bに基づいて作成された見積評価の一例である見積評価3Bを示している。この例では、基本設計の妥当性が否定的評価を示す「×」となっており、その評価理由は、「規模に対して期間が短い」とされている。また、詳細設計の妥当性が「×」となっており、その評価理由は、「規模に対して期間及び人数が少ない」とされている。さらに、PG設計・作成、単体テストの妥当性が「×」となっており、その評価理由は、「規模に対して金額が高い」とされている。また、見積評価3Bでは、開発手法およびプログラム言語の変更についての提案が記載されており、ベンダーについての質問やリスクが記載されている。
【0064】
このように、見積評価タスク164の評価結果に応じて、見積評価が作成されるので、肯定的評価を受けた場合には、作成した見積に基づいて新規開発プロジェクトを推進することが可能である。これに対し、見積が否定的評価を受けた場合には、否定的評価を受けた項目を再検討して修正することで、より合理的に新規開発プロジェクトを推進することが可能である。
【0065】
見積評価出力タスク165は、見積評価タスク164にて作成された見積評価3を、通信部15を介して他の端末や、プリンタなどへ送信する(ステップS5)。見積の評価担当者は、他の端末の表示画面や、プリンタにて印刷されたプリントによって見積評価3を確認する。
【0066】
以上で説明したように、本実施の形態に係る見積評価支援装置1および見積評価支援プログラム131によれば、過去の開発プロジェクトの実績データと、現在の開発関連情報とに基づいて、新規開発プロジェクトの見積2の妥当性を含む見積評価3を作成するので、現在の技術動向を踏まえた適正な見積評価3を作成することが可能である。また、過去の開発プロジェクトには、肯定的評価が得られたものと、否定的評価が得られたものとが混在するが、これらの良否を含む実績データに基づいて新規開発プロジェクトの見積評価3を作成するので、より精度のよい見積評価3を作成することが可能である。
【0067】
また、本実施の形態に係る見積評価支援装置1および見積評価支援プログラム131によれば、実績データと、開発関連情報とを教師データとして機械学習された見積評価作成モデル134を利用して新規開発プロジェクトの見積評価3を作成するので、精度が高い見積評価3を迅速に得ることが可能である。
【0068】
さらに、本実施の形態に係る見積評価支援装置1および見積評価支援プログラム131によれば、過去の開発プロジェクトの開発概要に基づいて分類された過去の開発プロジェクトの種類ごとに機械学習を行なって見積評価作成モデル134を生成するので、新規開発プロジェクトと同種の過去の開発プロジェクトに基づいて生成された見積評価作成モデル134を利用して見積評価3を作成することができる。これにより、より精度のよい見積評価3を作成することが可能である。
【0069】
また、本実施の形態に係る見積評価支援装置1および見積評価支援プログラム131によれば、見積2に含まれる項目のうち、少なくとも、開発規模に対する各開発工程の金額および工数についての妥当性を精度よく評価することができるので、新規開発プロジェクトの成功率を向上させることが可能である。
【0070】
さらに、本実施の形態に係る見積評価支援装置1および見積評価支援プログラム131によれば、見積評価3として、見積2の妥当性の他に、見積2の変更に対する提案と、見積2の妥当ではない項目に対する質問と、見積2から予想される新規開発プロジェクトのリスクとを作成することができるので、単なる評価だけでなく、新規開発プロジェクトの成功率がより高くなるように見積2を修正するための示唆や提案を得ることが可能である。
【0071】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、ソフトウェアの新規開発プロジェクトの見積を例に説明したが、ハードウェアの新規開発プロジェクトや、ハードウェアとソフトウェアとを含むシステムの新規開発プロジェクトなど、ソフトウェア以外の分野の新規開発プロジェクトへの適用が可能である。また、見積2および見積評価3の出力形態は、上記の実施の形態のものに限定されず、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 見積評価支援装置
2、2A,2B 見積
3、3A,3B 見積評価
11 入力部(見積入力手段)
12 表示部(見積評価出力手段)
13 記憶部
131 見積評価支援プログラム
132 開発関連情報データベース(開発関連情報記憶手段)
133 実績データベース(実績データ記憶手段)
134 見積評価作成モデル
15 通信部(見積入力手段、見積評価出力手段)
16 メインタスク
161 見積入力タスク(見積入力手段)
162 開発関連情報収集タスク(開発関連情報収集手段)
163 学習タスク
164 見積評価タスク(見積評価手段)
165 見積評価出力タスク(見積評価出力手段)
図1
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