IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オイレス工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ラックガイドおよびギア機構 図1
  • 特開-ラックガイドおよびギア機構 図2
  • 特開-ラックガイドおよびギア機構 図3
  • 特開-ラックガイドおよびギア機構 図4
  • 特開-ラックガイドおよびギア機構 図5
  • 特開-ラックガイドおよびギア機構 図6
  • 特開-ラックガイドおよびギア機構 図7
  • 特開-ラックガイドおよびギア機構 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146897
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】ラックガイドおよびギア機構
(51)【国際特許分類】
   B62D 3/12 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
B62D3/12 501
B62D3/12 501G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054327
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104570
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 光弘
(72)【発明者】
【氏名】ハムロディ ロバート
(72)【発明者】
【氏名】メッツラー カイ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】打音の発生を防止しつつ、ラックバーを安定的に支持することができるラックガイド、および、これを用いたギア機構を提供する。
【解決手段】ラックガイド30は、先端面にラックバーの背面と摺動するガイド面310が形成された円柱状の合成樹脂製のラックガイド本体31と、ラックガイド本体31の外周面311から突出し、ラックガイド本体31の径方向に移動可能な合成樹脂製の支持部32a、32bと、支持部32a、32b毎に設けられ、ラックガイド本体31の周方向において、支持部32a、32bの両側から周方向に延びてラックガイド本体31に接続し、支持部32a、32bをラックガイド本体31の径方向外方に付勢する合成樹脂製の付勢部33a、33bと、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピニオンギアと噛み合うラックギアが形成されたラックバーを前記ラックギアの反対側から摺動可能に支持して、前記ピニオンギアの回転に応じて移動する前記ラックバーを当該ラックバーの軸方向にガイドするラックガイドであって、
先端面に前記ラックバーの背面と摺動するガイド面が形成された円柱状の合成樹脂製のラックガイド本体と、
前記ラックガイド本体の外周面から突出し、前記ラックガイド本体の径方向に移動可能な合成樹脂製の複数の支持部と、
前記支持部毎に設けられ、前記ラックガイド本体の周方向において、前記支持部の両側から周方向に延びて前記ラックガイド本体に接続し、当該支持部を前記ラックガイド本体の径方向外方に付勢する合成樹脂製の付勢部と、を備える
ことを特徴とするラックガイド。
【請求項2】
請求項1に記載のラックガイドであって、
前記支持部は、
前記ラックガイド本体の軸方向、および、前記ガイド面と前記ラックバーとの摺動方向に対して垂直な方向の両側にそれぞれ設けられている
ことを特徴とするラックガイド。
【請求項3】
請求項1または2に記載のラックガイドであって、
前記支持部は、
前記ラックガイド本体の前記外周面から突出する支持面を有するメイン突起部と、
前記ラックガイド本体の周方向において、前記メイン突起部の両側に設けられ、前記ラックガイド本体の前記外周面から突出する支持面を有する一対のサブ突起部と、を有する
ことを特徴とするラックガイド。
【請求項4】
請求項3に記載のラックガイドであって、
前記付勢部は、
前記メイン突起部と前記一対のサブ突起部各々とを前記ラックガイド本体の周方向に沿って接続する一対の第1バネ部と、
前記一対のサブ突起部各々と前記ラッガイド本体とを前記ラックガイド本体の周方向に沿って接続する一対の第2バネ部と、を有する
ことを特徴とするラックガイド。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のラックガイドであって、
前記ラックガイド本体は、
前記ラックガイド本体の外周面に形成され、前記支持部を前記付勢部とともに収容する収容部をさらに備える
ことを特徴とするラックガイド。
【請求項6】
移動体の進行方向をステアリングホイールの回転に応じて変更するギア機構であって、
前記ステアリングホイールの回転に応じて回転するピニオンギアと、
前記ピニオンギアと噛み合うラックギアが形成され、前記ピニオンギアと前記ラックギアとの噛み合いにより、前記ピニオンギアの回転に応じて往復移動して前記移動体の車輪の向きを変えるラックバーと、
前記ラックバーを当該ラックバーの軸方向に移動可能に支持する請求項1ないし5のいずれか一項に記載のラックガイドと、
前記ラックガイドを当該ラックガイドの軸方向に移動可能に収容するハウジングと、を備える
ことを特徴とするギア機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のステアリング装置等に用いられるラックアンドピニオンにおいて、ラックバーをその軸方向にガイドしながらピニオンに押し当てて支持するラックガイド(サポートヨーク)、および、これを用いたギア機構に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のステアリング装置等に用いられるラックアンドピニオンにおいて、ハウジングに収容されたラックバーの背面(ラックギアの反対側の面)側に配置され、ラックバーをその軸方向にガイドしながらピニオンに押し当てて支持するラックガイドとして、例えば、特許文献1に記載のラックガイドが知られている。このラックガイドは、ハウジングに移動可能に収容され、スプリングによってその軸方向に付勢されることにより、ラックバーの背面と摺動してラックバーを支持する。ラックガイドの外周面には、その軸方向に延びる細幅のスリットが等間隔で複数箇所に設けられており、各スリットには、棒状の固体潤滑材がラックガイドの外周面から露出してハウジングの内周面と摺動するように埋設されている。この固体潤滑材により、ラックガイドはハウジングにガタなく収容され、ラックガイドがハウジング内でガタつくことによる打音の発生を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-178935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のラックガイドは、ラックガイドの外周面に設けられた複数のスリット各々に棒状の固体潤滑材を埋設する構造であるため、部品点数および工数が増加してコストが嵩む。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、安価に製造でき、かつ打音の発生を防止しつつラックバーを安定的に支持することができるラックガイド、および、これを用いたギア機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、先端面にラックバーの背面と摺動するガイド面が形成された円柱状のラックガイド本体と、ラックガイド本体の外周面から突出し、ラックガイド本体の径方向に移動可能な複数の支持部と、支持部毎に設けられ、ラックガイド本体の周方向において、支持部の両側から周方向に延びてラックガイド本体に接続し、支持部をラックガイド本体の径方向外方に付勢する合成樹脂製の付勢部と、を備えた合成樹脂製のラックガイドを提供する。ここで、ラックガイド本体の外周面には、支持部を付勢部とともに収容する収容部が設けられていてもよい。
【0007】
例えば、本発明のラックガイドは、
ピニオンギアと噛み合うラックギアが形成されたラックバーを前記ラックギアの反対側から摺動可能に支持して、前記ピニオンギアの回転に応じて移動する前記ラックバーを当該ラックバーの軸方向にガイドするラックガイドであって、
先端面にラックバーの背面と摺動するガイド面が形成された円柱状の合成樹脂製のラックガイド本体と、
前記ラックガイド本体の外周面から突出し、前記ラックガイド本体の径方向に移動可能な合成樹脂製の複数の支持部と、
前記支持部毎に設けられ、前記ラックガイド本体の周方向において、前記支持部の両側から周方向に延びて前記ラックガイド本体に接続し、当該支持部を前記ラックガイド本体の径方向外方に付勢する合成樹脂製の付勢部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、付勢部によってラックガイド本体の径方向外方に付勢された各支持部がハウジングの内壁を押圧して摺動することによりラックガイドを支持するので、ラックガイドがハウジングにガタなく収容され、打音の発生を防止することができる。また、ラックガイド本体、支持部、および付勢部をすべて合成樹脂製とするとともに、付勢部をラックガイド本体の周方向において、支持部の両側から周方向に延びてラックガイド本体に接続する構造としているので、これらに同じ樹脂材料を用いて一体成形することが可能となり、部品点数および工数を削減することができる。したがって、本発明によれば、安価に製造でき、かつ打音の発生を防止しつつラックバーを安定的に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施の形態に係るステアリング装置のギア機構1の概略断面図である。
図2図2(A)および図2(B)は、図1に示すラックガイド30の正面図および側面図である。
図3図3(A)および図3(B)は、図1に示すラックガイド30の平面図および底面図である。
図4図3(A)および図3(B)は、図3(A)に示すラックガイド30のA-A断面図およびB-B断面図である。
図5図5(A)は、ハウジング70のシリンダケース部72に収容されたラックガイド30をギア機構1の底面側から見た図であり、図5(B)は、図5(A)のC部拡大図である。
図6図6(A)および図6(B)は、ラックガイド30の変形例30Aの正面図および側面図である。
図7図7(A)および図7(B)は、ラックガイド30の変形例30Aの平面図および底面図である。
図8図8(A)および図8(B)は、図7(A)に示すラックガイド30の変形例30AのD-D断面図およびE-E断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0011】
なお、以下の説明の便宜上、ラックバー20の軸心O2方向(ラックバー20の往復移動の方向)をX方向、ピニオンギア11に対するラックギア21の押し当て方向をZ方向、XおよびZ方向に垂直な方向をY方向と定義し、これらの方向を各図に適宜表示する。
【0012】
図1は、本実施の形態に係るステアリング装置のギア機構1の概略断面図である。
【0013】
本実施の形態に係るステアリング装置は、ステアリングシャフトの回転運動を直線運動に変換し、この直線運動を、車輪の向きを変えるリンク機構に伝達するラックアンドピニオン式のギア機構1を有している。なお、このステアリング装置は、ピニオンギア11またはラックバー20の動きをモータでアシストするパワーステアリング機構が搭載されているものおよび搭載されていないもののいずれであってもよい。
【0014】
図示するように、このギア機構1は、ピニオンギア11が形成されたピニオンシャフト10と、ピニオンギア11と噛み合うラックギア21が形成されたラックバー20と、ピニオンシャフト10を回転可能に支持する一対の転がりベアリング40と、ピニオンギア11の回転に伴いX方向に往復移動するラックバー20をガイドするラックガイド30と、これらの部品10~40が組み込まれたハウジング70と、ハウジング70を塞ぐキャップ60と、を備えている。
【0015】
ピニオンシャフト10は、Y方向に対して軸心O1がX方向に傾斜するように配置された円柱状の部材であり、その外周面12には、ピニオンギア11として例えばヘリカルギアが形成されている。ピニオンギア11は、ハウジング70に設けられたピニオンギア収容室73に収容されており、ピニオンシャフト10は、ピニオンギア11の両側の位置において、一対の転がりベアリング40を介して軸心O1周りに回転可能にハウジング70に支持されている。ピニオンシャフト10の一方の端部13は、ハウジング70に形成された開口部74からピニオンギア収容室73の外側に突き出て、不図示のステアリングシャフトに連結されている。これにより、ステアリングホイールの操作に応じて回転するステアリングシャフトに連動してピニオンギア11が回転する。
【0016】
ラックバー20は、X方向に沿って配置された円柱状の部材であり、図示していないが、その両端は、ボールジョイントを介して、車輪の向きを変えるリンク機構に連結されている。ラックギア21を構成する複数の歯は、ラックバー20の外周面にX方向に並んで形成され、ハウジング70のピニオンギア収容室73において、ピニオンギア11の歯と所定の噛み合い位置で噛み合っている。ラックバー20の背面(ラックギア21の反対側に位置する、YZ断面形状が円弧状の外周面)22は、ラックバー20がラックガイド30に付与する荷重の大きさに応じて、ラックガイド30により摺動可能に支持される。ステアリングシャフトとともにピニオンシャフト10が回転すると、ピニオンギア11とラックギア21との噛み合いにより、ラックバー20は、ラックガイド30にガイドされてX方向に往復移動してリンク機構を揺動させる。これにより、ステアリングホイールの操作に応じて車輪の向きが変わる。
【0017】
ハウジング70は、X方向に沿って配置された筒状のラックケース部71と、ラックケース部71の外周からZ方向に突き出した筒状のシリンダケース部72と、を有する。
【0018】
ラックケース部71には、ラックバー20がX方向に往復移動可能に収容されている。また、このラックケース部71には、ピニオンギア収容室73が設けられている。このピニオンギア収容室73には、上述したように、ピニオンギア11と、このピニオンギア11が所定の噛み合い位置でラックギア21と噛み合うようにピニオンシャフト10を回転可能に保持する一対の転がりベアリング40と、が収容されている。また、このラックケース部71には、ピニオンギア収容室73の内部と外部とを繋ぐ開口部74が不図示のステアリングシャフト側に向けて形成されており、不図示のステアリングシャフトに連結されたピニオンシャフト10の一方の端部13は、この開口部74からピニオンギア収容室73の外部に突き出している。
【0019】
一方、シリンダケース部72は、ラックバー20に対してピニオンギア11の反対側に位置するようにラックケース部71に一体的に形成されており、シリンダケース部72の内部とラックケース部71の内部とは、ピニオンギア収容室73内のピニオンギア11に面した開口部75を介して繋がっている。また、このシリンダケース部72の内壁面78の開放端部76には、キャップ60を固定するためのネジ部77が形成されている。
【0020】
ラックガイド30は、ラックバー20の背面22を摺動可能に支持するガイド面310をラックバー20の背面22側に向けて、シリンダケース部72にZ方向に収容され、ラックバー20に対してピニオンギア11の反対側(ピニオンギア11とラックギア21との噛み合い位置におけるラックバー20の背面22側)に位置付けられている。このラックガイド30の詳細な構造については後述する。
【0021】
キャップ60は、シリンダケース部72の開放端部76にはめ込み可能な円板形状を有し、そのキャップ60の外周にはネジ部62が形成されている。ハウジング70のシリンダケース部72内にラックガイド30を挿入して、キャップ60のネジ部62を、シリンダケース部72の開放端部76のネジ部77にねじ込むことにより、シリンダケース部72の開放端部76にキャップ60が固定されてシリンダケース部72が塞がれる。
【0022】
つぎに、ラックガイド30の詳細な構造について説明する。
【0023】
図2(A)および図2(B)は、図1に示すラックガイド30の正面図および側面図であり、図3(A)および図3(B)は、図1に示すラックガイド30の平面図および底面図である。また、図4(A)および図4(B)は、図3(A)に示すラックガイド30のA-A断面図およびB-B断面図である。
【0024】
図示するように、ラックガイド30は、円柱状のラックガイド本体31と、ラックガイド本体31の径方向に移動可能に設けられた一対の支持部32a、32bと、支持部32a、32bをラックガイド本体31の径方向外方に付勢する付勢部33a、33bと、スプリング34と、を有する。
【0025】
ラックガイド本体31は、ラックガイド本体31の先端面(ラックバー20側の端面)に設けられ、ラックバー20の背面と摺動する凹面状のガイド面310と、ラックガイド本体31の外周面311に設けられ、それぞれ支持部32a、32bを付勢部33a、33bとともに収容する一対の収容部312a、312bと、スプリング34を収容するためのスプリングガイド313と、を有する。
【0026】
ガイド面310のラックバー20の背面との摺動領域314には、グリース溜まりとして機能する凹部315が多数形成されている。
【0027】
収容部312a、312bは、ラックガイド本体31の外周面311において、ガイド面310とラックバー20との摺動方向(X方向)およびラックガイド30の軸O3方向(Z方向)に対して垂直な方向(Y方向)の両側に、それぞれ外周面311を切り取るように形成されている。収容部312aは、支持部32aを付勢部33aとともに収容し、収容部312bは、支持部32bを付勢部33bとともに収容する。
【0028】
スプリングガイド313は、後端面(キャップ60側の端面)に開口を有する円柱穴であり、この円柱穴内にスプリング34を収容する。
【0029】
支持部32a、32bは、ラックガイド本体31の、ガイド面310とラックバーとの摺動方向(X方向)およびラックガイド30の軸O3方向(Z方向)に対して垂直な方向(Y方向)の両側に配置され(図3(B)参照)、それぞれ付勢部33a、33bとともに収容部312a、312bに収容されている。また、支持部32a、32bは、それぞれ、メイン突起部320と、ラックガイド本体31の周方向において、メイン突起部320の両側に配置された一対のサブ突起部321a、321bと、を有する。
【0030】
メイン突起部320は、ラックガイド本体31の外周面311から突出する支持面323を有し、この支持面323がハウジング70のシリンダケース部72の内壁面78とラックガイド本体31の軸O3方向(Z方向)に摺動する。これにより、ラックガイド30は、ラックガイド本体31の軸O3方向に移動可能にガタなくシリンダケース部72に収容される。
【0031】
サブ突起部321a、321bは、ラックガイド本体31の外周面311から突出しつつもメイン突起部320の支持面323より径方向内方に位置する支持面324を有する。ハウジング70のシリンダケース部72の内壁面78と摺動するメイン突起部32にラジアル方向の荷重が加わって、メイン突起部320が径方向内方に移動した場合に、このサブ突起部321a、321bの支持面324が、ハウジング70のシリンダケース部72の内壁面78と当接して、メイン突起部320とともにラジアル方向の荷重を支持する。
【0032】
付勢部33aは、ラックガイド本体31の周方向において、支持部32aの両側から周方向に延びてラックガイド本体31に接続する板バネ状部材であり、付勢部33bは、ラックガイド本体31の周方向において、支持部32bの両側から周方向に延びてラックガイド本体31に接続する板バネ状部材である。付勢部33a、33bは、メイン突起部320から周方向の両側に延びてサブ突起部321a、321bに接続する第1板バネ部330a、330bと、サブ突起部321aから収容部312a、312bの側壁316aの径方向外方端部317aに向かって周方向および径方向に延びて、ラックガイド本体31に接続する第2板バネ部331aと、サブ突起部321bから収容部312a、312bの側壁316bの径方向外方端部317bに向かって周方向および径方向に延びて、ラックガイド本体31に接続する第2板バネ部331bと、を有する。
【0033】
なお、ラックガイド本体31、支持部32a、32b(メイン突起部320、サブ突起部321a、321b)、および付勢部33a、33b(第1板バネ部330a、330b、第2板バネ部331a、331b)は、ガラス等で繊維強化されたポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアセタール等の合成樹脂を用いて一体成形される。
【0034】
スプリング34は、コイルスプリング、板バネ等であり、ラックガイド本体31のスプリングガイド313内に配置されている。また、スプリング34は、スプリングガイド313の高さ(深さ)よりも長い自然長を有しており、スプリング34の一方の端部は、スプリングガイド313の開口から突出して、キャップ60と当接する。このため、キャップ60がスプリング34のばね座として機能し、スプリング34は、ラックガイド本体31をラックバー20側に押し出す方向に付勢して、ガイド面310をラックバー20の背面22に圧接する。これにより、ラックギア21がピニオンギア11に押圧され、ラックギア21とピニオンギア11の噛み合い位置における歯の離間が防止される。
【0035】
図5(A)は、ハウジング70のシリンダケース部72に収容されたラックガイド30をギア機構1の底面側から見た図であり、図5(B)は、図5(A)のC部拡大図である。
【0036】
図5(A)および図5(B)に示すように、付勢部33a、33bの第1板バネ部330a、330bによってラックガイド本体31の径方向外方に付勢された支持部32a、32bのメイン突起部320の支持面323は、ラックガイド本体31の外周面311から突出してハウジング70のシリンダケース部72の内壁面78と摺動する。これにより、ラックガイド30は、軸O3方向に移動可能にガタなくシリンダケース部72に収容される。
【0037】
また、付勢部33a、33bの第1板バネ部330a、330bおよび第2板バネ部331a、331bによってラックガイド本体31の径方向外方に付勢され、ラックガイド本体31の外周面311から突出しつつもメイン突起部320の支持面323より径方向内方に位置するサブ突起部321a、321bの支持面324は、ラックガイド30に大きな荷重が径方向に加わって、この荷重によりメイン突起部320が径方向内方に移動した場合に、ハウジング70のシリンダケース部72の内壁面78と当接して、メイン突起部320とともに径方向の荷重を支持する。
【0038】
以上、本発明の一実施の形態について説明した。
【0039】
本実施の形態では、付勢部33a、33bによってラックガイド本体31の径方向外方に付勢された支持部32a、32bがハウジング70のシリンダケース部72の内壁面78を押圧して摺動することによりラックガイド30を支持する。これにより、ラックガイド30がハウジング70にガタなく収容され、打音の発生を防止することができる。また、ラックガイド本体31、支持部32a、32b、および付勢部33a、33bをすべて合成樹脂製とするとともに、付勢部33a、33bをラックガイド本体31の周方向において、支持部32a、32bの両側から周方向に延びてラックガイド本体31に接続する構造としているので、これらを同じ樹脂材料を用いて一体成形することが可能となり、部品点数および工数を削減することができる。したがって、本実施の形態によれば、安価に製造でき、かつ打音の発生を防止しつつラックバー20を安定的に支持することができる。
【0040】
また、本実施の形態において、支持部32a、32bは、ラックガイド本体31の外周面311から突出する支持面323を有するメイン突起部320と、ラックガイド本体31の周方向において、メイン突起部320の両側に設けられ、ラックガイド本体31の外周面311から突出しつつもメイン突起部320の支持面323より径方向内方に位置する支持面324を有する一対のサブ突起部321a、321bと、を有する。このため、メイン突起部320の支持面323がラックガイド本体31の外周面311から突出してハウジング70のシリンダケース部72の内壁面78と摺動することにより、ラックガイド30を支持するとともに、ラックガイド30に大きな荷重が径方向に加わって、この荷重によりメイン突起部320が径方向内方に移動した場合には、サブ突起部321a、321bの支持面324がハウジング70のシリンダケース部72の内壁面78と当接して、メイン突起部320とともに径方向の荷重を支持する。したがって、本実施の形態によれば、ラックガイド30に大きな荷重が径方向に加わった場合でも、打音の発生を防止しつつラックバー20を支持することができる。
【0041】
また、本実施の形態において、付勢部33a、33bは、ラックガイド本体31の周方向において、メイン突起部320の両側から周方向に延びてサブ突起部321a、321bと接続する第1板バネ部330a、330b、および、サブ突起部321a、321bから収容部312a、312bの側壁316a、316bの径方向外方端部317a、317bに向かって周方向および径方向に延びてラックガイド本体31と接続する第2板バネ部331a、331bと、を有する。これにより、メイン突起部320およびサブ突起部321a、321bをそれぞれ独立して径方向に移動させることができるとともに、ラックガイド30に大きな荷重が径方向に加わった場合には、メイン突起部320をこれに追従させて径方向に移動させつつ付勢部33a、33bでこの荷重を吸収することができる。したがって、本実施の形態によれば、ラックガイド30に大きな荷重が径方向に加わった場合でも、打音の発生をより効果的に防止することができる。
【0042】
また、本実施の形態において、ラックガイド本体31は、ラックガイド本体31の外周面311に形成され、支持部32a、32bを付勢部33a、33bとともに収容する収容部312a、312bを有する。これにより、支持部32a、32bおよび付勢部33a、33bのために、ラックガイド30が大型化するのを防止することができる。
【0043】
また、本実施の形態において、支持部32a、32bは、ラックガイド本体31の、ガイド面310とラックバー20との摺動方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)の両側に配置されている。したがって、本実施の形態によれば、ピニオンシャフト10の回転運動がラックバー20の軸O2方向(X方向)の直線運動に変換される際に、ラックバー20に加わる、ガイド面310とラックバー20との摺動方向(X方向)およびラックガイド30の軸O3方向(Z方向)に対して垂直な方向(Y方向)の荷重を支持部32a、32bで支持することができるので、ラックガイド30がシリンダケース部72内でガタつくのをより効果的に防止することができる。
【0044】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形は可能である。
【0045】
例えば、上記実施の形態では、2つの支持部32a、32bを付勢部33a、33bともに設けているが、本発明はこれに限定されない。3つ以上の支持部を付勢部とともに設けてもよい。この場合、ラックガイド本体31の、ガイド面310とラックバー20との摺動方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)に、支持部を少なくとも一つ配置することが好ましい。
【0046】
また、上記の実施の形態では、支持部32a、32bを、ラックガイド本体31の外周面311から突出する支持面323を有するメイン突起部320と、ラックガイド本体31の周方向において、メイン突起部320の両側に設けられ、ラックガイド本体31の外周面311から突出しつつもメイン突起部320の支持面323よりも径方向内方に位置する支持面324を有する一対のサブ突起部321a、321bと、により構成している。しかし、本発明はこれに限定されない。サブ突起部321a、321bは、メイン突起部320より剛性が低く、したがって、ラックガイド30に径方向に大きな荷重が加わった場合に、メイン突起部320を補強して、メイン突起部320とともにこの荷重を支持するものであればよい。メイン突起部320およびサブ突起部321a、321bの剛性の調整は、例えば、第1板バネ部330a、330bおよび第2板バネ部331a、331bの弾性力を変更することにより、具体的には、第1板バネ部330a、330bおよび第2板バネ部331a、331bの長さ、幅、厚さ、およびR部分の大きさの少なくとも一つを変えることにより実現できる。
【0047】
また、上記実施の形態では、支持部32a、32bを、メイン突起部320と、ラックガイド本体31の周方向において、メイン突起部320の両側に配置された一対のサブ突起部321a、321bと、で構成しているが、本発明はこれに限定されない。サブ突起部321a、321bの一方あるいは両方を省略してもよい。
【0048】
また、上記の実施の形態において、支持部32a、32bとは別に、ラックガイド本体31の外周面311において、ガイド面310とラックバー20との摺動方向(X方向)の両側にも、ハウジング70のシリンダケース部72の内壁面78と摺動する支持部をラックガイド本体31の径方向に移動可能に設けてもよい。
【0049】
図6(A)および図6(B)は、ラックガイド30の変形例30Aの正面図および側面図であり、図7(A)および図7(B)は、ラックガイド30の変形例30Aの平面図および底面図である。また、図8(A)および図8(B)は、図7(A)に示すラックガイド30の変形例30AのD-D断面図およびE-E断面図である。
【0050】
図6図8に示すラックガイド30Aが図2図4に示すラックガイド30と異なる点は、ラックガイド本体31に代えてラックガイド本体31Aを用いたこと、および、ラックガイド本体31Aの径方向に移動可能に設けられた一対の支持部35a、35bと、支持部35a、35bをラックガイド本体31の径方向外方に付勢する付勢部36a、36bと、を追加したことである。その他の構成はラックガイド30と同じである。
【0051】
ラックガイド本体31Aがラックガイド本体31と異なる点は、ラックガイド本体31Aの外周面311に設けられ、それぞれ支持部35a、35bを付勢部36a、36bとともに収容する一対の収容部318a、318bを追加したことである。その他の構成は、ラックガイド本体31と同じである。
【0052】
収容部318a、318bは、ラックガイド本体31Aの外周面311において、ガイド面310とラックバー20との摺動方向(X方向)の両側に、それぞれ外周面311を切り取るように形成されている。収容部318aは、支持部35aを付勢部36aとともに収容し、収容部318bは、支持部35bを付勢部36bとともに収容する。
【0053】
支持部35a、35bは、ラックガイド本体31Aの、ガイド面310とラックバーとの摺動方向(X方向)の両側に配置され、それぞれ付勢部36a、36bとともに収容部318a、318bに収容されている。
【0054】
付勢部36aは、ラックガイド本体31Aの軸O3方向において、支持部35aから収容部318aの底面319aに向かって延びてラックガイド本体31Aに接続する板バネ状部材であり、付勢部36bは、ラックガイド本体31Aの軸O3方向において、支持部35bから収容部318bの底面319bに向かって延びてラックガイド本体31Aに接続する板バネ状部材である。
【0055】
上記構成のラックガイド30Aによれば、付勢部36a、36bによってラックガイド本体31Aの径方向外方に付勢された支持部35a、35bが、ラックガイド本体31Aの、ガイド面310とラックバー20との摺動方向(X方向)の両側において、ハウジング70のシリンダケース部72の内壁面78を押圧して摺動する。これにより、ラックガイド30Aは、ガイド面310とラックバー20との摺動方向(X方向)において、ハウジング70によりガタなく収容され、ラックガイド30Aにガイド面310とラックバー20との摺動方向(X方向)の荷重が加わった場合においても、打音の発生をより効果的に防止することができる。その他の効果は、図2図4に示すラックガイド30と同様である。
【0056】
また、上記実施の形態に係るラックガイド30において、付勢部33a、33bは、ラックガイド本体31の周方向において、支持部32a、32bの両側から周方向に延びてラックガイド本体31に接続する板バネ状部材としているが、本発明はこれに限定されない。付勢部33a、33bは、支持部32a、32bをラックガイド本体31の径方向外方に付勢することができるバネ状部材であれば、どのような形状のものでもよい。同様に、上記実施の形態に係るラックガイド30の変形例30Aにおいて、付勢部36a、36bは、ラックガイド本体31Aの軸O3方向において、支持部35a、35bから収容部318a、318bの底面319a、319bに向かって延びてラックガイド本体31Aに接続する板バネ状部材としているが、本発明はこれに限定されない。付勢部36a、36bは、支持部35a、35bをラックガイド本体31の径方向外方に付勢することができるバネ状部材であれば、どのような形状のものでもよい。
【0057】
また、上記実施の形態では、車両のステアリング装置への適用例を挙げているが、本発明は、車両のステアリング装置に限らず、例えば光学機器のピント合わせ機構等、ラックアンドピニオン式のギア機構を利用している機器に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1:ギア機構 10:ピニオンシャフト
11:ピニオンギア 12:ピニオンシャフト10の外周面
13:ピニオンシャフト10の端部 20:ラックバー
21:ラックギア 22:ラックバー20の背面
30:ラックガイド 31、31A:ラックガイド本体
32a、32b、35a、35b:支持部
33a、33b、36a、36b:付勢部
34:スプリング 40:転がりベアリング
60:キャップ 62:キャップ60のネジ部
70:ハウジング 71:ラックケース部
72:シリンダケース部 73:ピニオンギア収容室
74、75:開口部 76:シリンダケース部72の開放端部
77:シリンダケース部72のネジ部
78:シリンダケース部72の内壁面
310:ガイド面 311:ラックガイド本体31の外周面
312a、312b、318a、318b:収容部
313:スプリングガイド
314:ガイド面310の摺動領域 315:凹部
316a、316b:収容部312a、312bの側壁
319a、319b:収容部318a、318bの底面
320:メイン突起部 321a、321b:サブ突起部
323、324:支持面
327a、317b:側壁316a、316bの径方向外方端部
330a、330b:第1板バネ部
331a、331b:第2板バネ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8