(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146910
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/13 20060101AFI20231004BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20231004BHJP
B60C 11/12 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
B60C11/13 C
B60C11/03 100C
B60C11/12 D
B60C11/12 A
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054343
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】袁 蘇湘
(72)【発明者】
【氏名】早苗 隆平
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 賢
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 達矢
(72)【発明者】
【氏名】大石 直人
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BC44
3D131EB11X
3D131EB12V
3D131EB42V
3D131EB42X
3D131EB43V
3D131EB43X
3D131EB46V
3D131EB46X
3D131EB47V
3D131EB47X
3D131EB82V
3D131EB82X
3D131EB86V
3D131EB86X
3D131EC01V
3D131EC01X
3D131EC02V
(57)【要約】
【課題】 ノイズ性能を向上する。
【解決手段】 トレッド部2を有するタイヤ1であって、トレッド部2は、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝3と、周方向溝3で区分された複数の陸部4とを含む。複数の陸部には、それぞれ、タイヤ軸方向及びタイヤ周方向に対して傾斜した複数の横溝状要素7、8が形成されている。横溝状要素7、8のそれぞれは、タイヤ周方向の第1の側の第1端と、タイヤ周方向の第2の側の第2端とを有する。 複数の横溝状要素7、8は、タイヤ周方向の1周に亘って第1の配列にしたがって配置されている。第1の配列では、タイヤ周方向で隣接する横溝状要素7、8の全てのペアのそれぞれについて、ペアの一方の横溝状要素7及び8の一方の第1端が、ペアの他方の横溝状要素7及び8の他方の第2端と、タイヤ周方向で同じ位置に形成されている。ペアのうちの少なくとも1つのペアは、横溝状要素7、8が互いに異なる陸部に形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、前記周方向溝で区分された複数の陸部とを含み、
前記複数の陸部には、それぞれ、タイヤ軸方向及びタイヤ周方向に対して傾斜した複数の横溝状要素が形成されており、
前記横溝状要素のそれぞれは、タイヤ周方向の第1の側の第1端と、タイヤ周方向の第2の側の第2端とを有し、
前記複数の横溝状要素は、タイヤ周方向の1周に亘って第1の配列にしたがって配置されており、
前記第1の配列では、タイヤ周方向で隣接する前記横溝状要素の全てのペアのそれぞれについて、前記ペアの一方の横溝状要素の前記第1端が、前記ペアの他方の横溝状要素の前記第2端と、タイヤ周方向で同じ位置に形成されており、
前記ペアのうちの少なくとも1つのペアは、前記横溝状要素が互いに異なる前記陸部に形成されている、
タイヤ。
【請求項2】
前記横溝状要素は、幅が2mm以下のサイプを含む、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記横溝状要素は、幅が2mmよりも大きい溝を含む、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記横溝状要素のペアの少なくとも1つは、タイヤ周方向に対して互いに同じ向きに傾斜する横溝状要素からなる、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記横溝状要素のペアの少なくとも1つは、タイヤ周方向に対して互いに異なる向きに傾斜する横溝状要素からなる、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記複数の横溝状要素の少なくとも1つは、前記陸部をタイヤ軸方向に完全に横切る、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記横溝状要素の少なくとも1つは、前記第1端及び前記第2端の少なくとも一方が前記陸部内で終端している、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記横溝状要素は、第1横溝状要素及び第2横溝状要素を含み、
前記第1横溝状要素及び前記第2横溝状要素の一方のタイヤ周方向に対する角度は、前記第1横溝状要素及び前記第2横溝状要素の他方のタイヤ周方向に対する角度よりも大きく、
前記第1横溝状要素及び前記第2横溝状要素の前記一方の溝幅が、前記他方の溝幅よりも小さい、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記タイヤが、正規リムに正規内圧でリム組みされ、かつ、正規荷重を負荷してキャンバー角ゼロで平面に接触させた正規荷重負荷状態の接地面において、前記第1の配列を構成する前記横溝状要素が設けられた前記陸部を横切る接地面の縁のタイヤ周方向の長さは、当該陸部に形成された前記横溝状要素の一つのタイヤ周方向の長さの20%以下である、請求項1ないし8のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記第1の配列が、複数セット形成されている、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記ペアのそれぞれは、前記ペアに含まれる2つの前記横溝状要素が互いに異なる前記陸部に形成されている、請求項1ないし10のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記ペアの少なくとも1つは、当該ペアに含まれる2つの前記横溝状要素が互いに同じ陸部に形成されている、請求項1ないし10のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項13】
前記第1の配列を構成する前記横溝状要素は、前記複数の陸部のうちの2つの陸部に形成されている、請求項1ないし12のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項14】
前記2つの陸部は、前記周方向溝の1本を介して隣接している、請求項13に記載のタイヤ。
【請求項15】
前記2つの陸部の間には、前記周方向溝の2本以上が配されている、請求項13に記載のタイヤ。
【請求項16】
前記第1の配列を構成する前記横溝状要素は、前記複数の陸部のうちの3つ以上の陸部に配されている、請求項1ないし12のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、タイヤのトレッド部には、排水性等の観点から、タイヤ軸方向に延びるサイプや横溝が設けられる(例えば、下記特許文献1参照)。一方、サイプや横溝は、走行時にノイズを発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の車両の静粛化に伴い、タイヤについても、さらなるノイズ性能の改善が求められており、サイプや横溝に起因する走行ノイズを低減させる必要がある。
【0005】
本開示は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、ノイズ性能を向上することができるタイヤを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、前記周方向溝で区分された複数の陸部とを含み、前記複数の陸部には、それぞれ、タイヤ軸方向及びタイヤ周方向に対して傾斜した複数の横溝状要素が形成されており、前記横溝状要素のそれぞれは、タイヤ周方向の第1の側の第1端と、タイヤ周方向の第2の側の第2端とを有し、前記複数の横溝状要素は、タイヤ周方向の1周に亘って第1の配列にしたがって配置されており、前記第1の配列では、タイヤ周方向で隣接する前記横溝状要素の全てのペアのそれぞれについて、前記ペアの一方の横溝状要素の前記第1端が、前記ペアの他方の横溝状要素の前記第2端と、タイヤ周方向で同じ位置に形成されており、前記ペアのうちの少なくとも1つのペアは、前記横溝状要素が互いに異なる前記陸部に形成されている、タイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本開示のタイヤは、上記の構成を採用したことにより、ノイズ性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態のタイヤのトレッド部の展開図である。
【
図2】
図1の第1陸部及び第2陸部の拡大図である。
【
図3】他の例を示す第1陸部及び第2陸部の拡大図である。
【
図4】他の例を示す第1陸部及び第2陸部の拡大図である。
【
図5】他の例を示す第1陸部及び第2陸部の拡大図である。
【
図6】他の例を示す第1陸部及び第2陸部の拡大図である。
【
図7】他の例を示す第1陸部及び第2陸部の拡大図である。
【
図8】他の例を示す第1陸部及び第2陸部の拡大図である。
【
図9】他の例を示す第1陸部、第2陸部及び第3陸部の拡大図である。
【
図10】他の例を示す第1陸部、第2陸部及び第3陸部の拡大図である。
【
図11】他の例を示す第1陸部及び第2陸部の拡大図である。
【
図12】他の例を示す第1陸部及び第2陸部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示のいくつかの実施形態が図面に基づき説明される。
図面は、本開示の理解を助けるために、誇張表現や、実際の構造の寸法比とは異なる表現が含まれている場合がある。また、全ての実施形態を通して、同一又は共通する要素については同一の符号が付されており、重複する説明が省略される。
【0010】
図1は、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2の部分展開図であり、
図2は、
図1の要部拡大図である。本実施形態のタイヤは、例えば、空気入りタイヤとして実施される。空気入りタイヤとしては、例えば、乗用車用タイヤが好適であり、とりわけ乗用車用ラジアルタイヤが好適である。本開示は、自動二輪車用タイヤや、重荷重用タイヤとして実施されても良い。
【0011】
図1では、タイヤ1は正規状態とされている。本明細書において、タイヤ1の正規状態とは、タイヤ1が、正規リムに正規内圧でリム組みされており、かつ、無負荷の状態である。特に言及されていない場合、タイヤ1の各部の寸法等は、この正規状態で測定された値である。
【0012】
本明細書において、「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0013】
本明細書において、「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0014】
図1に示されるように、トレッド部2は、第1トレッド端Te1と、第2トレッド端Te2と、これらの間を構成する踏面2aとを含む。踏面2aは、タイヤ走行時、地面と接触することが意図された部分であって、トレッドゴムによって形成されている。第1トレッド端Te1及び第2トレッド端Te2は、それぞれ、正規荷重負荷状態の接地面において、タイヤ軸方向の最も外側に位置する縁である。
【0015】
本明細書において、「正規荷重負荷状態」とは、正規状態のタイヤ1に、正規荷重を負荷し、かつ、キャンバー角ゼロで平面に接触させた状態である。また、本明細書において、「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0016】
トレッド部2は、例えば、タイヤ周方向に延びる複数本(例えば3本)の周方向溝3が形成されている。本実施形態の周方向溝3は、例えば、タイヤ周方向と平行に直線状に延びている。特に制限されるわけではないが、ウエット走行時に十分な排水性を確保するために、周方向溝3の溝幅は、例えば、2mmよりも大きく、好ましくは3mm以上、さらに好ましくは4mm以上とされる。同様に、周方向溝3の溝深さは、例えば、3mm以上、好ましくは4mm以上、さらに好ましくは5mm以上とされる。
【0017】
トレッド部2には、複数の周方向溝3によって、複数の陸部4が区分される。本実施形態では、複数の陸部4は4つの陸部で構成される。4つの陸部は、例えば、一対の第1陸部101と、一対の第1陸部101のタイヤ軸方向の両外側に配された一対の第2陸部102とを含む。本実施形態において、第1陸部101は、トレッド部2のクラウン領域を形成し、第2陸部102は、トレッド部2のショルダー領域を形成している。
図1において、符号Cは、タイヤ赤道を示す。
【0018】
本実施形態では、複数の陸部4として、第1陸部101及び第2陸部102に、複数の横溝状要素が形成される。以下、第1陸部101に形成された横溝状要素を「第1横溝状要素7」とし、第2陸部102に形成された横溝状要素を「第2横溝状要素8」として、互いに区別する。これら第1横溝状要素7及び第2横溝状要素8を総称して、特に符号を付さず「横溝状要素」と称する場合がある。
【0019】
第1横溝状要素7及び第2横溝状要素8は、それぞれ、タイヤ軸方向及びタイヤ周方向に対して傾斜している。したがって、第1横溝状要素7及び第2横溝状要素8は、それぞれ、タイヤ軸方向及びタイヤ周方向に対して、ゼロではない角度を有する。
【0020】
図2に示されるように、第1横溝状要素7のそれぞれは、タイヤ周方向の第1の側S1の第1端7Aと、タイヤ周方向の第2の側S2の第2端7Bとを有する。同様に、第2横溝状要素8のそれぞれは、タイヤ周方向の第1の側S1の第1端8Aと、タイヤ周方向の第2の側S2の第2端8Bとを有する。
【0021】
第1横溝状要素7及び第2横溝状要素8は、いずれも、陸部4の接地面から凹んだ空隙であって、例えば、サイプ及び溝の双方を含む包括的な概念である。
図1及び
図2の例では、第1横溝状要素7及び第2横溝状要素8は、いずれも、サイプで形成されている。代替的に、第1横溝状要素7及び第2横溝状要素8は、サイプよりも大きい溝幅を有する溝であっても良い。
【0022】
本明細書において、「サイプ」は、その長手方向と直交する幅が2mm以下、好ましくは1.5mm以下のスリット状の空隙である。サイプは、例えば、正規荷重負荷状態で地面に接地したときに、一対のサイプ壁の少なくとも一部が互い接触するように機能する。したがって、サイプは、第1陸部101及び第2陸部102の剛性低下を最小限に抑え、ひいては、操縦安定性を向上させるのに役立つ。
【0023】
本明細書において、「溝」は、長手方向と、それと直交する幅を有する空隙であり、溝幅が2mmよりも大きいものを指す。溝の溝幅の上限は特に制限されないが、乗用車用タイヤの場合、例えば10mm以下とされても良い。このような溝は、排水性を高めるのに役立つ。
【0024】
本実施形態において、第1横溝状要素7及び第2横溝状要素8は、タイヤ周方向の1周に亘って、第1の配列10にしたがって配置されている。第1の配列10は、複数の第1横溝状要素7及び複数の第2横溝状要素8のセットである。
図1の例では、第1陸部101及び第2陸部102の2つの陸部に、1セットの第1の配列10が形成されている。
【0025】
本開示において、第1の配列10は、次の2つの条件a及びbを充足する:
a)タイヤ周方向で隣接する横溝状要素の全てのペアのそれぞれについて、当該ペアの一方の横溝状要素のタイヤ周方向の第1端が、当該ペアの他方の横溝状要素の第2端と、タイヤ周方向で同じ位置に形成される;
b)前記全てのペアの少なくとも1つのペアは、横溝状要素が互いに異なる陸部に形成される。
【0026】
以下、条件a及びbをより具体的に述べる。
図2の例において、例えば、最も上部に位置する第1横溝状要素7、及び、最も上部に位置する第2横溝状要素8のペアを、「ペア1」として特定する。ペア1において、第1横溝状要素7の第2端7Bは、第2横溝状要素8の第1端8Aとタイヤ周方向で同じ位置にある(タイヤ軸方向と平行に延びるより短い仮想線を参照のこと)。したがって、ペア1は、条件aを満たす。また、ペア1の第1横溝状要素7及び第2横溝状要素8は、互いに異なる陸部に形成される。したがって、ペア1は、条件bも満たす。
【0027】
次に、例えば、上から2番目に位置する第1横溝状要素7、及び、最も上部に位置する第2横溝状要素8のペアを「ペア2」として特定する。ペア2において、第2横溝状要素8の第2端8Bは、第1横溝状要素7の第1端7Aとタイヤ周方向の同じ位置にある(タイヤ軸方向と平行に延びるより長い仮想線を参照のこと)。したがって、ペア2は、条件aを満たす。また、ペア2の第1横溝状要素7及び第2横溝状要素8は、互いに異なる陸部に形成される。したがって、ペア2も条件bを満たす。
【0028】
図2の例では、ペア1及びペア2が交互に繰り返される。したがって、
図2の例の第1の配列10は、前記ペアのそれぞれは、当該ペアに含まれる横溝状要素7及び8が互いに異なる陸部に形成される。
【0029】
ここで、2つの横溝状要素の第1端と第2端とが、タイヤ周方向で同じ位置にあるか否かは、それらの中心線(
図2では、第1横溝状要素7の中心線7C及び第2横溝状要素8の中心線8C)を用いて判断される。すなわち、第1横溝状要素7及び第2横溝状要素8の第1端と第2端は、それぞれ、中心線7C及び8Cの端で特定される。ただし、タイヤという加硫ゴム製品の特性を鑑み、製造上の公差を許容しうるように、前記「同じ位置」には、2つの端部がタイヤ周方向に僅かな距離でずれる態様が含まれる。この場合、距離は、第1横溝状要素7の中心線7Cのタイヤ周方向の長さL1と第2横溝状要素8の中心線8Cのタイヤ周方向の長さL2との和(L1+L2)の5%以下とされ、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下とされる。最も好ましくは、2つの端部がタイヤ周方向でずれていない。
【0030】
タイヤ走行時のノイズとして、ピッチ音が知られている。例えば、第1横溝状要素7及び第2横溝状要素8によって区分された陸部要素11、12が路面に接触する度にインパクト力が生じる。このインパクト力は、トレッド部2やサイドウォール部(図示省略)を周期的に振動させることで、ピッチ音を生じさせる。しかしながら、上述の第1の配列10は、タイヤ走行時、第1横溝状要素7及び第2横溝状要素8が交互に、かつ、絶え間なく連続的に接地することから、上記インパクト力の変動を小さくする。したがって、本実施形態のタイヤ1は、第1陸部101及び第2陸部102から生じるピッチ音を低減することにより、ノイズ性能を改善することができる。
【0031】
特に制限されるものではないが、上述の作用をより高めるために、第1陸部101及び第2陸部102には、
図1に描かれているように、第1の配列10を構成する第1横溝状要素7及び第2横溝状要素8のみが形成されるのが望ましい。
【0032】
図1及び2の例では、各ペア(上記ペア1及びペア2)は、タイヤ周方向に対して互いに同じ向き(例えば、右上がり)に傾斜している第1横溝状要素7及び第2横溝状要素8から構成される。
【0033】
図3に示されるように、各ペアは、タイヤ周方向に対して互いに逆向きに傾斜する第1横溝状要素7及び第2横溝状要素8から構成されても良い。
【0034】
図2に戻ると、第1横溝状要素7のタイヤ周方向に対する角度θ1及び第2横溝状要素8のタイヤ周方向に対する角度θ2は、特に制限されるものではないが、操縦安定性を向上させる観点では、例えば、40度以上とされ、好ましくは50度以上とされ、さらに好ましくは60度以上とされる。角度θ1及びθ2の上限は、90度未満であれば良いが、好ましくは85度以下、より好ましくは80度以下とされる。本実施形態では、角度θ1と角度θ2とは互いに等しい(θ1=θ2)。他の例では、θ1≠θ2であっても良い。
【0035】
複数の横溝状要素の少なくとも1本は、陸部をタイヤ軸方向に完全に横切ることが望ましい。
図2の例では、第1横溝状要素7は、第1陸部101をタイヤ軸方向に完全に横切っている。同様に、第2横溝状要素8は、第2陸部102をタイヤ軸方向に完全に横切っている。このような態様では、第1陸部101及び第2陸部102は、優れた排水性を提供する。
【0036】
他の例では、横溝状要素の少なくとも1本は、第1端及び第2端の少なくとも一方が陸部内で終端しても良い。例えば、
図4に示されるように、第1横溝状要素7のそれぞれは、第1端7A及び第2端7Bの少なくとも一方が第1陸部101内で終端しても良い。
図4の例では、第1横溝状要素7のそれぞれにおいて、第1端7Aが第1陸部101内で終端し、第2端7Bは、周方向溝3に連通している。同様に、第2横溝状要素8のそれぞれは、第1端8A及び第2端8Bの少なくとも一方が第2陸部102内で終端しても良い。
図4の例では、第2横溝状要素8のそれぞれにおいて、第2端8Bが第2陸部102内で終端し、第1端8Aは、周方向溝3に連通している。このような態様では、第1陸部101及び第2陸部102の剛性低下が最小限に抑えられ、操縦安定性が向上する。
【0037】
図5は、さらに他の例を示す。
図5は、
図4に比べて、第1横溝状要素7の傾斜の向きが逆である点で異なる。また、第1横溝状要素7の第2端7Bが、第2陸部102とは反対側の周方向溝3に連通している点で異なる。この例では、第1陸部101及び第2陸部102のタイヤ軸方向の一方側(
図5では左側)にタイヤ周方向に連続するリブ要素14を形成することができる。このような態様は、車両への装着の向きが指定されたタイヤに適用し、例えば、車両装着時に第2陸部102側が車両の外側に位置するように構成されることが望ましい。これにより、操縦安定性がさらに向上する。操縦安定性の向上を図るために、リブ要素14のタイヤ軸方向の幅は、第1陸部101のタイヤ軸方向の幅の20%以上、好ましくは25%~50%が望ましい。
【0038】
図6には、さらに他の例を示す。
図6は、第1横溝状要素7及び/又は第2横溝状要素8が、非直線状に延びる点で、上述の例とは異なる。
【0039】
第1横溝状要素7は、例えば、直線状に延びる第1傾斜部71と、直線状に延びる第2傾斜部72とが屈曲部を構成するように接続されている。本実施形態では、第1傾斜部71は第2端7Bを含み、第2傾斜部72は、第1端7Aを含む。第1端7Aは、第1陸部101内で終端している。これにより、第1陸部101は、第1端7Aの左側に、タイヤ周方向に連続して延びるリブ要素14が形成され得る。
【0040】
第1傾斜部71のタイヤ周方向に対する角度θ11は、第2傾斜部72のタイヤ周方向に対する角度θ12よりも大きい。横溝状要素のタイヤ周方向に対する角度に関し、前記角度が大きいほど、操縦安定性には有利に働く。また、車両の旋回走行時には陸部のエッジ付近に作用する力が大きくなる傾向がある。本実施形態では第1陸部101のエッジに位置する第1傾斜部71の角度θ11が、第2傾斜部72の角度θ12よりも大きいことで、操縦安定性がさらに向上する。また、第1傾斜部71が開口している第1陸部101のエッジ付近での偏摩耗が抑制される。さらに、第1横溝状要素7を上述のように屈曲させることで、タイヤ走行時、隣接する陸部要素11が互いに支え合えやすい。これは、操縦安定性をさらに向上させるのに役立つ。なお、傾斜が急な第2傾斜部72は、接地時のインパクト力を低減するのに役立つ。
【0041】
上述の作用をより高めるために、第1傾斜部71のタイヤ周方向に対する角度θ11は、例えば、50度以上とされ、好ましくは60度以上とされる。また、前記角度θ11の上限は、90度未満であれば良いが、好ましくは85度以下、より好ましくは80度以下とされる。同様に、第2傾斜部72のタイヤ周方向に対する角度θ12は、例えば、20度以上とされ、好ましくは30度以上とされ、好ましくは70度以下、より好ましくは60度以下とされる。
【0042】
第2横溝状要素8は、例えば、第2陸部102をタイヤ軸方向に完全に横切るように延びている。本実施形態の第2横溝状要素8は、第3傾斜部83、第4傾斜部84及び第5傾斜部85を備え、各傾斜部は、いずれも直線状に延びる。第3傾斜部83は、第1端8Aを含む部分である。第5傾斜部85は、第2端8Bを含む部分である。第4傾斜部84は、第3傾斜部83と第5傾斜部85との間の部分である。本実施形態では、第3傾斜部83、第4傾斜部84及び第5傾斜部85は、屈曲部を構成するように接続されている。好ましい態様では、各屈曲部は、曲率半径Rの円弧部によって形成されても良い。
【0043】
本実施形態において、第3傾斜部83のタイヤ周方向に対する角度θ23及び第5傾斜部85のタイヤ周方向に対する角度θ25は、第4傾斜部84のタイヤ周方向に対する角度θ24よりも小さい。これにより、旋回走行時、第2陸部102の陸部要素12は、互いに係合して効果的に支え合うことができる。また、第2横溝状要素8が、相対的に角度の大きい第4傾斜部84を備えることにより、陸部要素12の横剛性の悪化を抑制できる。以上により、本実施形態の第2陸部102は、優れた操縦安定性を発揮するのに役立つ。
【0044】
上述の作用をより高めるために、第3傾斜部83のタイヤ周方向に対する角度θ23及び第5傾斜部85のタイヤ周方向に対する角度θ25は、例えば、20度以上とされ、好ましくは30度以上とされる一方、好ましくは80度以下、より好ましくは70度以下とされる。同様に、第4傾斜部84のタイヤ周方向に対する角度θ24は、例えば、50度以上とされ、好ましくは60度以上とされ、好ましくは85度以下、より好ましくは80度以下とされる。好ましい態様では、接地する順番を考慮して、これらの5つの傾斜部の隣接する傾斜部の角度が、大小大小を交互に繰り返すのが望ましい。すなわち、下記を満足するのが望ましい。これにより、第1横溝状要素7及び第2横溝状要素8に起因するノイズ周波数が広い周波数帯域に分散され、さらにノイズ性能が向上する。
θ12<θ11
θ11>θ23
θ23<θ24
θ24>θ25
【0045】
図6の例では、非直線状の横溝状要素として、屈曲溝が示された。他の例では、横溝状要素は、連続的に角度が変化する湾曲溝であっても良いし、そのような湾曲溝と直線溝との複合溝であっても良い。
【0046】
図7は、第1の配列10のさらに他の例を示す。
図7の例では、横溝状要素は、第1横溝状要素7及び第2横溝状要素8を含む。第1横溝状要素7及び第2横溝状要素8の一方のタイヤ周方向に対する角度は、第1横溝状要素7及び第2横溝状要素8の他方のタイヤ周方向に対する角度よりも大きい。また、第1横溝状要素7及び第2横溝状要素8の前記一方の溝幅(サイプ幅)が、前記他方の溝幅(サイプ幅)よりも小さい。
図7の例では、第2横溝状要素8の角度θ2が、第1横溝状要素7の角度θ1よりも大きく、かつ、第2横溝状要素8の溝幅(サイプ幅)W2が、第1横溝状要素7の溝幅(サイプ幅)W1よりも小さく構成されている。このような態様では、陸部101、102の接地面と垂直、かつ、タイヤ軸方向と平行な平面での陸部断面において、第1横溝状要素7の開口幅と、第2横溝状要素8の開口幅とが互いに近似ないし等しくなる。これは、タイヤ走行時のインパクト力の変動をさらに小さくし、より一層、ノイズ性能を改善するのに役立つ。
【0047】
図8は、第1の配列10のさらに他の例を示す。
図8の例では、タイヤ周方向で隣接する横溝状要素の全てのペアのうちの少なくとも1つのペアは、横溝状要素が互いに同じ陸部に形成されている。例えば、第1陸部101には、第1横溝状要素7として、第1右側横溝状要素7Rと、第1左側横溝状要素7Lとがタイヤ周方向に交互に配置されている。第2陸部102には、
図4で説明された第2横溝状要素8が形成されている。
【0048】
この例の第1の配列10は、タイヤ周方向で隣接する横溝状要素のペアとして、ペア1、ペア2及びペア3の3種類で構成される。
【0049】
ペア1は、例えば、第1陸部101において、最も上部に描かれている第1左側横溝状要素7Lとそれにタイヤ周方向の第2の側S2で隣接している第1右側横溝状要素7Rとからなる。このペア1では、第1左側横溝状要素7Lの第2端7LBと、第1右側横溝状要素7Rの第1端7RAとがタイヤ周方向の同じ位置にある。したがって、ペア1は、それを構成する横溝状要素が互いに同じ陸部(第1陸部101)に形成されている。
【0050】
ペア2は、ペア1の第2の側S2に続く。ペア2は、例えば、第1陸部101の第1右側横溝状要素7Rのうち最も上部に描かれている第1右側横溝状要素7Rと、それに第2の側S2で隣接している第2横溝状要素8とからなる。このペア2では、第1右側横溝状要素7Rの第2端7RBと、第2横溝状要素8の第1端8Aとがタイヤ周方向の同じ位置にある。したがって、ペア2は、それを構成する横溝状要素が互いに異なる陸部(第1陸部101及び第2陸部102)に形成されるペアである。
【0051】
ペア3は、ペア2の第2の側S2に続く。ペア3は、例えば、第2陸部102の第2横溝状要素8と、それに第2の側S2で隣接している第1左側横溝状要素7Lとからなる。このペア3では、第2横溝状要素8の第2端8Bと、第1左側横溝状要素7Lの第1端7LAとがタイヤ周方向の同じ位置にある。したがって、ペア3は、それを構成する横溝状要素が互いに異なる陸部(第1陸部101及び第2陸部102)に形成されるペアである。
【0052】
このように、第1の配列10のペアの少なくとも1つは、ペアを構成する横溝状要素が互いに同じ陸部に形成されても良く、この例でも上述の作用を奏し得る。
図8の例では、第1陸部101に、2種類の横溝状要素が設けられているが、これに代えて、又は、これとともに、第2陸部102に、2種類の横溝状要素が設けられても良い。また、1つの陸部に設けられる横溝状要素は、3種類以上であっても良い。
【0053】
図9は、第1の配列10のさらに他の例を示す。
図9の例では、第1の配列10を構成する横溝状要素は2つの陸部に形成されているが、2つの陸部の間には、周方向溝の2本以上が配されている点で、上の例とは異なる。すなわち、これまでの第1の配列10の例では、第1陸部101と第2陸部102とは、1本の周方向溝3を介して隣接していた。これに対して、
図9の例では、第1陸部101と第2陸部102との間には、周方向溝3の2本以上が配されても良い。また、例えば、第1陸部101と第2陸部102との間には、第3陸部103が配される。第3陸部103は、タイヤ周方向に連続するリブとされている。第3陸部は、例えば、溝やサイプが設けられてないプレーンなリブとされても良い。
【0054】
図10は、第1の配列10のさらに他の例を示す。
図10の例のように、第1の配列10を構成する横溝状要素は、複数の陸部のうちの3つ以上の陸部に配されてもよい。
図10の例では、第1の配列10は、第1陸部101、第2陸部102及び第3陸部103の3つの陸部に配されている。第3陸部103には、横溝状要素として、第3横溝状要素9がタイヤ周方向に複数形成されている。この第1の配列10は、ペア1、ペア2及びペア3の3種類で構成される。ペア1は、第1横溝状要素7と第2横溝状要素8とからなる。ペア2は、ペア1の第2の側S2にあり、第2横溝状要素8と第3横溝状要素9とからなる。ペア3は、ペア2の第2の側S2にあり、第3横溝状要素9と第1横溝状要素7とからなる。これらの各ペアは、いずれも、ペアを構成する横溝状要素が互いに異なる陸部に形成されている。第1の配列10は、4以上の陸部で形成されても良い。
【0055】
図11には、本開示の別の実施形態が示される。この実施形態では、第1陸部101及び第2陸部102に、第1の配列10が複数セット形成されている。例えば、第1の配列10の複数のセットは、内側の第1の配列10Xと、それとは別の外側の第1の配列10Yとを含む。このような実施形態においても、ピッチ音を低減することで、ノイズ性能を改善しつつ、操縦安定性能を向上することができる。
【0056】
図11では、内側の第1の配列10Xは、第1横溝状要素7Xと第2横溝状要素8Xとから構成される。第1横溝状要素7Xは、第1陸部101の第2陸部102側に形成されている。第2横溝状要素8Xは、第2陸部102の第1陸部101側に形成されている。
図11において、内側の第1の配列10Xを構成する第1横溝状要素7X及び第2横溝状要素8Xは、理解を助けるために、黒く塗りつぶされている。
【0057】
外側の第1の配列10Yは、第1横溝状要素7Yと第2横溝状要素8Yとから構成される。第1横溝状要素7Yは、第1陸部101の第2陸部102とは反対側に形成されている。第2横溝状要素8Yは、第2陸部102の第1陸部101とは反対側に形成されている。
図11において、外側の第1の配列10Yを構成する第1横溝状要素7Y及び第2横溝状要素8Yは、内側の第1の配列10Xとの区別を容易にするために、塗りつぶされていない。
【0058】
このように、第1陸部101及び第2陸部102からなる陸部範囲に、複数セットの第1の配列10を設けても先の実施形態と同様に、ピッチ音を低減することで、ノイズ性能の向上を図ることができる。
【0059】
図12は、横溝状要素の他の例を示す。この例では、横溝状要素は、横溝(傾斜溝)
として構成されている。具体的には、この例の第1の配列10の横溝状要素は、例えば、第1横溝状要素7及び第2横溝状要素8を含み、これらが横溝で形成されている。このように、本開示の横溝状要素(第1横溝状要素7及び第2横溝状要素8)は、サイプに制限されるものではない。
【0060】
図13は、
図1のトレッド部2の正規荷重負荷状態の接地面GLを仮想線で示す。第1陸部101を横切る接地面GLの縁GL1のタイヤ周方向の長さD1は、第1横溝状要素7の一つのタイヤ周方向の長さL1の20%以下とされる。同様に、第2陸部102を横切る接地面GLの縁GL2のタイヤ周方向の長さD2は、第2横溝状要素8の一つのタイヤ周方向の長さL2の20%以下とされる。
【0061】
発明者らは、ノイズ改善効果をより高く発揮させるために、第1横溝状要素7及び第2横溝状要素8のタイヤ周方向の長さL1及びL2と、それぞれの接地面GLの縁GL1及びGL2のタイヤ周方向の長さD1、D2との関係性に着目した。第1の配列10が期待するインパクト力の変動抑制効果を得るためには、各陸部101、102を横切る接地面GLの縁GL1及びGL2がタイヤ軸方向と平行であることが最も有効である。しかし、実際のタイヤでは、接地面GLの縁GL1及びGL2は
図13に示されるように、円弧状になる傾向がある。このような場合でも、接地面GLの縁GL1及びGL2のタイヤ周方向の長さD1及びD2が、それぞれ、第1横溝状要素7のタイヤ周方向の長さL1及び第2横溝状要素8のタイヤ周方向の長さL2の20%以下である場合、陸部4の第1エッジe1と第2エッジe2との接地タイミングのずれを極力小さくできる。これは、上述のインパクト力の変動をさらに小さくし、より一層、ノイズ性能を改善するのに役立つ。特に望ましい態様では、前記長さD1は、第1横溝状要素7の一つのタイヤ周方向の長さL1の10%以下、さらに好ましくは5%以下とされ、前記長さD2は、第2横溝状要素8の一つのタイヤ周方向の長さL2の10%以下、さらに好ましくは5%以下とされる。
【0062】
以上、本開示のいくつかの実施形態が説明されたが、実施形態及び図面に表された具体的な構成は、本開示の内容理解のためのものであり、本開示は、図示されている具体的構成に限定されるものではない。
【実施例0063】
本開示の効果を確認するため、表1の仕様に基づいたタイヤサイズ195/65R15 91H(装着リムは15×6.0、内圧230kPa)の乗用車用空気入りラジアルタイヤが準備され、ノイズ性能が試験された。なお、第1陸部はクラウン陸部に、第2陸部はショルダー陸部にそれぞれ適用された。実施例の具体的な第1の配列は
図6とした。一方、比較例の横溝状要素の配列は、
図1のパターンを基調とするが、第1横溝状要素と第2横溝状要素は、それらの長さの約50%でタイヤ周方向にオーバラップしている。第1横溝状要素と第2横溝状要素は、いずれも、タイヤ周方向に対する角度は75度、溝幅(サイプ幅)は2mmである。タイヤの内部構造は、いずれも同一である。試験内容は、次のとおりである。
【0064】
ノイズ性能試験(実車評価):
テスト車両(排気量2000ccの前輪駆動車)の四輪に、テストタイヤが装着された。そして、前記テスト車両を、ドライ路面上を速度40~100km/hで走行させ、このときのノイズの最大の音圧が測定された。結果は、比較例の前記音圧を100とする指数であり、数値が小さいほど、走行ノイズが小さく(音圧が小さく)、ノイズ性能に優れることを示す。
試験結果等は、表1に示される。
【0065】
【0066】
試験の結果、実施例は、比較例に比べて、ノイズ性能を向上していることが確認できた。
【0067】
[付記]
本開示は以下の態様を含む。
【0068】
[本開示1]
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、前記周方向溝で区分された複数の陸部とを含み、
前記複数の陸部には、それぞれ、タイヤ軸方向及びタイヤ周方向に対して傾斜した複数の横溝状要素が形成されており、
前記横溝状要素のそれぞれは、タイヤ周方向の第1の側の第1端と、タイヤ周方向の第2の側の第2端とを有し、
前記複数の横溝状要素は、タイヤ周方向の1周に亘って第1の配列にしたがって配置されており、
前記第1の配列では、タイヤ周方向で隣接する前記横溝状要素の全てのペアのそれぞれについて、前記ペアの一方の横溝状要素の前記第1端が、前記ペアの他方の横溝状要素の前記第2端と、タイヤ周方向で同じ位置に形成されており、
前記ペアのうちの少なくとも1つのペアは、前記横溝状要素が互いに異なる前記陸部に形成されている、
タイヤ。
[本開示2]
前記横溝状要素は、幅が2mm以下のサイプを含む、本開示1に記載のタイヤ。
[本開示3]
前記横溝状要素は、幅が2mmよりも大きい溝を含む、本開示1又は2に記載のタイヤ。
[本開示4]
前記横溝状要素のペアの少なくとも1つは、タイヤ周方向に対して互いに同じ向きに傾斜する横溝状要素からなる、本開示1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
[本開示5]
前記横溝状要素のペアの少なくとも1つは、タイヤ周方向に対して互いに異なる向きに傾斜する横溝状要素からなる、本開示1ないし4のいずれか1項に記載のタイヤ。
[本開示6]
前記複数の横溝状要素の少なくとも1つは、前記陸部をタイヤ軸方向に完全に横切る、本開示1ないし5のいずれか1項に記載のタイヤ。
[本開示7]
前記横溝状要素の少なくとも1つは、前記第1端及び前記第2端の少なくとも一方が前記陸部内で終端している、本開示1ないし6のいずれか1項に記載のタイヤ。
[本開示8]
前記横溝状要素は、第1横溝状要素及び第2横溝状要素を含み、
前記第1横溝状要素及び前記第2横溝状要素の一方のタイヤ周方向に対する角度は、前記第1横溝状要素及び前記第2横溝状要素の他方のタイヤ周方向に対する角度よりも大きく、
前記第1横溝状要素及び前記第2横溝状要素の前記一方の溝幅が、前記他方の溝幅よりも小さい、本開示1ないし7のいずれか1項に記載のタイヤ。
[本開示9]
前記タイヤが、正規リムに正規内圧でリム組みされ、かつ、正規荷重を負荷してキャンバー角ゼロで平面に接触させた正規荷重負荷状態の接地面において、前記第1の配列を構成する前記横溝状要素が設けられた前記陸部を横切る接地面の縁のタイヤ周方向の長さは、当該陸部に形成された前記横溝状要素の一つのタイヤ周方向の長さの20%以下である、本開示1ないし8のいずれか1項に記載のタイヤ。
[本開示10]
前記第1の配列が、複数セット形成されている、本開示1ないし9のいずれか1項に記載のタイヤ。
[本開示11]
前記ペアのそれぞれは、前記ペアに含まれる2つの前記横溝状要素が互いに異なる前記陸部に形成されている、本開示1ないし10のいずれか1項に記載のタイヤ。
[本開示12]
前記ペアの少なくとも1つは、当該ペアに含まれる2つの前記横溝状要素が互いに同じ陸部に形成されている、本開示1ないし10のいずれか1項に記載のタイヤ。
[本開示13]
前記第1の配列を構成する前記横溝状要素は、前記複数の陸部のうちの2つの陸部に形成されている、本開示1ないし12のいずれか1項に記載のタイヤ。
[本開示14]
前記2つの陸部は、前記周方向溝の1本を介して隣接している、本開示13に記載のタイヤ。
[本開示15]
前記2つの陸部の間には、前記周方向溝の2本以上が配されている、本開示13に記載のタイヤ。
[本開示16]
前記第1の配列を構成する前記横溝状要素は、前記複数の陸部のうちの3つ以上の陸部に配されている、本開示1ないし12のいずれか1項に記載のタイヤ。