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特開2023-146915クラッドロッド、それを用いた光ファイバ用母材の製造方法、及び光ファイバの製造方法
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  • 特開-クラッドロッド、それを用いた光ファイバ用母材の製造方法、及び光ファイバの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146915
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】クラッドロッド、それを用いた光ファイバ用母材の製造方法、及び光ファイバの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/012 20060101AFI20231004BHJP
   C03B 37/027 20060101ALI20231004BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
C03B37/012 A
C03B37/027 Z
G02B6/02 356A
G02B6/02 466
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054352
(22)【出願日】2022-03-29
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人情報通信研究機構、「高度通信・放送研究開発委託研究/マルチコアファイバの実用化加速に向けた研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】梶川 翔太
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 翼
(72)【発明者】
【氏名】福本 良平
(72)【発明者】
【氏名】竹永 勝宏
【テーマコード(参考)】
2H250
4G021
【Fターム(参考)】
2H250AA53
2H250AB04
2H250AB05
2H250AB10
2H250AC64
2H250AC83
2H250AC95
2H250BB32
2H250BB33
4G021BA02
4G021HA00
(57)【要約】
【課題】ガラスロッドの挿入が困難となることを抑制し得るクラッドロッド、それを用いた光ファイバ用母材の製造方法、及び光ファイバの製造方法を提供する。
【解決手段】 光ファイバ1におけるクラッド20の少なくとも一部となるクラッドガラス体20Pを含むクラッドロッド20Rは、長手方向に沿って延在し少なくとも一方側の端に開口を有し、光ファイバ1におけるコア10となるコアガラス体10Pを含むコアロッド10R及びマーカ15となるマーカガラス体15Pから成るマーカロッドを上記の開口から挿入可能な孔25a~25eが設けられ、孔25a~25eの内周面26は、一方側の端部において、開口から離隔した位置から当該開口に向かって当該孔25a~25eの直径が拡径し、クラッドロッド20Rの一方側の端面20Rfまで延在するテーパ部27を有する。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバにおけるクラッドの少なくとも一部となるクラッドガラス体を含むクラッドロッドであって、
長手方向に沿って延在し少なくとも一方側の端に開口を有し、前記光ファイバにおける前記クラッドと異なる所定部となる所定のガラス体を含むガラスロッドを前記開口から挿入可能な孔が設けられ、
前記孔の内周面は、前記一方側の端部において、前記開口から離隔した位置から前記開口に向かって前記孔の直径が拡径し、前記クラッドロッドの前記一方側の端面まで延在するテーパ部を有する
ことを特徴とするクラッドロッド。
【請求項2】
前記テーパ部の前記開口側の縁部は、前記一方側の前記端面の外周縁部から離隔している
ことを特徴とする請求項1に記載のクラッドロッド。
【請求項3】
前記クラッドロッドが、前記孔を複数備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載のクラッドロッド。
【請求項4】
少なくとも互いに隣り合う2つの前記孔の前記テーパ部における前記開口側の縁部は、互いに離隔している
ことを特徴とする請求項3に記載のクラッドロッド。
【請求項5】
少なくとも互いに隣り合う2つの前記孔の前記テーパ部において、一方の前記テーパ部の前記開口側の縁部の一部は、他方の前記テーパ部の前記開口側の縁部の一部を兼ねると共に、前記クラッドロッドの前記一方側の前記端面より他方側に位置する
ことを特徴とする請求項3に記載のクラッドロッド。
【請求項6】
長手方向に沿って延在し少なくとも一方側の端に開口を有する孔が設けられ、光ファイバにおけるクラッドの少なくとも一部となるクラッドガラス体を含むクラッドロッドと、前記光ファイバにおける前記クラッドと異なる所定部となる所定のガラス体を含むガラスロッドと、を準備する準備工程と、
前記ガラスロッドを前記開口から前記孔内に挿入する挿入工程と、
を備え、
前記孔の内周面は、前記一方側の端部において、前記開口から離隔した位置から前記開口に向かって前記孔の直径が拡径し、前記クラッドロッドの前記一方側の端面まで延在するテーパ部を有する
ことを特徴とする光ファイバ用母材の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の光ファイバ用母材の製造方法により製造された光ファイバ用母材を線引きする線引工程を備える
ことを特徴とする光ファイバの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッドロッド、それを用いた光ファイバ用母材の製造方法、及び光ファイバの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを製造するための光ファイバ用母材の製造方法として、例えば、孔開法が知られており、下記特許文献1には、当該方法が開示されている。孔開法では、ドリル等を用いてクラッドとなるクラッドロッドに貫通孔を設け、当該貫通孔の一方の開口から当該貫通孔内にコアとなるコアロッド、マーカとなるマーカロッドや応力付与部となるガラス体等を挿入することで、光ファイバ用母材が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-031427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような孔開法では、貫通孔内にコアロッド等のガラスロッドを挿入する前にクラッドロッドの端部をバーナ等の火炎によって外周側から加熱し当該クラッドロッドの端面にガラス管等を溶着することがある。このような加熱では、火炎の一部がクラッドロッドの端面に当たるように、クラッドロッドの長手方向における火炎の位置が調節される。このため、クラッドロッドにおける開口を規定する縁部が溶融して、当該開口での直径が小さくなることがある。この場合、コアロッド等のガラスロッドを開口から貫通孔内に挿入する事が困難となる懸念がある。
【0005】
そこで、本発明は、ガラスロッドの挿入が困難となることを抑制し得るクラッドロッド、それを用いた光ファイバ用母材の製造方法、及び光ファイバの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的の達成のため、本発明は、光ファイバにおけるクラッドの少なくとも一部となるクラッドガラス体を含むクラッドロッドであって、長手方向に沿って延在し少なくとも一方側の端に開口を有し、前記光ファイバにおける前記クラッドと異なる所定部となる所定のガラス体を含むガラスロッドを前記開口から挿入可能な孔が設けられ、前記孔の内周面は、前記一方側の端部において、前記開口から離隔した位置から前記開口に向かって前記孔の直径が拡径し、前記クラッドロッドの前記一方側の端面まで延在するテーパ部を有することを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明の光ファイバ用母材の製造方法は、長手方向に沿って延在し少なくとも一方側の端に開口を有する孔が設けられ、光ファイバにおけるクラッドの少なくとも一部となるクラッドガラス体を含むクラッドロッドと、前記光ファイバにおける前記クラッドと異なる所定部となる所定のガラス体を含むガラスロッドと、を準備する準備工程と、前記ガラスロッドを前記開口から前記孔内に挿入する挿入工程と、を備え、前記孔の内周面は、前記一方側の端部において、前記開口から離隔した位置から前記開口に向かって前記孔の直径が拡径し、前記クラッドロッドの前記一方側の端面まで延在するテーパ部を有することを特徴とするものである。
【0008】
上記のクラッドロッド及び光ファイバ用母材の製造方法では、クラッドロッドにおける一方側の開口を規定する縁部はテーパ部における開口側の縁部であり、当該縁部での孔の直径は、テーパ部における開口側と反対側の縁部での孔の直径より大きい。このため、一方側の端に火炎が当たるようなクラッドロッドの加熱によってテーパ部の開口側の縁部が溶融して開口での直径が小さくなったとしても、当該直径はテーパ部の開口側と反対側の縁部での孔の直径より小さくなり難い。従って、このクラッドロッド及び光ファイバ用母材の製造方法によれば、孔の内周面が上記のテーパ部を有さず孔の直径が上記のテーパ部の開口側と反対側の縁部での孔の直径と同じ場合と比べて、クラッドロッドが上記のように加熱されたとしても、ガラスロッドを一方側の開口から孔内に挿入する事が困難となることを抑制し得る。
【0009】
上記のクラッドロッド及び光ファイバ用母材の製造方法では、前記テーパ部の前記開口側の縁部は、前記クラッドロッドの前記一方側の前記端面の外周縁部から離隔してもよい。このクラッドロッドによれば、一方側の端面に外周縁部の全周に沿って延在する環状の平坦な領域を形成し得る。従って、テーパ部の開口側の縁部がクラッドロッドの一方側の端面の外周縁部に接続している場合と比べて、外径がクラッドロッドの外径と同じガラス管を同軸となる状態でクラッドロッドの一方側の端面に強固に溶着させ易い。
【0010】
上記のクラッドロッドが前記孔を複数備えてもよい。
【0011】
この場合、少なくとも互いに隣り合う2つの前記孔の前記テーパ部における前記開口側の縁部は、互いに離隔してもよい。このような構成によれば、2つのテーパ部における開口側の縁部同士が繋がっている場合と比べて、2つのテーパ部間の強度を高くし得る。
【0012】
或いは、少なくとも互いに隣り合う2つの前記孔の前記テーパ部において、一方の前記テーパ部の前記開口側の縁部の一部は、他方の前記テーパ部の前記開口側の縁部の一部を兼ねると共に、前記クラッドロッドの前記一方側の前記端面より他方側に位置してもよい。このような構成によれば、一方のテーパ部の開口側の縁部のうち他方のテーパ部の開口側の縁部の一部を兼ねる部位のクラッドロッドの長手方向における位置がクラッドロッドの一方側の端面と同じ場合と比べて、一方側の端面に火炎が当たるようにクラッドロッドが加熱される際に、上記部位に火炎が当たり難くし得る。このため、このクラッドロッドによれば、上記の場合と比べて、上記の部位を溶融し難くし得る。
【0013】
また、本発明の光ファイバの製造方法は、上記の光ファイバ用母材の製造方法により製造された光ファイバ用母材を線引きする線引工程を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、ガラスロッドの挿入が困難となることを抑制し得るクラッドロッド、それを用いた光ファイバ用母材の製造方法、及び光ファイバの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るクラッドロッドを用いて製造される光ファイバ用母材から製造される光ファイバの長手方向に垂直な断面図である。
図2図1に示す光ファイバを製造するための光ファイバ用母材の長手方向に沿った断面図である。
図3図2に示す光ファイバ用母材の長手方向に垂直な断面図である。
図4図2に示す光ファイバ用母材を製造するために用いられる本実施形態のクラッドロッドを示す図である。
図5図4のV-V線に沿ったクラッドロッドの断面図である。
図6図4に示すクラッドロッドを用いて製造される光ファイバ用母材の製造方法を含む光ファイバの製造方法の工程を示すフローチャートである。
図7】ダミーガラス管溶着工程の様子を示す図である。
図8】エッチング工程の様子を示す図である。
図9】挿入工程後の様子を示す図である。
図10】閉塞工程の様子を示す図である。
図11】変形例におけるクラッドロッドを図4と同様に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るクラッドロッド、それを用いた光ファイバ用母材の製造方法、及び光ファイバの製造方法を実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。また、本明細書では、理解を容易にするために、各部材の寸法が誇張して示されている場合がある。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係るクラッドロッドを用いて製造される光ファイバ用母材から製造される光ファイバの長手方向に垂直な断面図である。図1に示すように、本実施形態の光ファイバ1は、マルチコアファイバであり、複数のコア10と、マーカ15と、それぞれのコア10及びマーカ15の外周面を囲むクラッド20と、クラッド20の外周面を被覆する被覆層30とを主な構成として備える。本実施形態では、コア10の数は4つであり、それぞれのコア10は、光ファイバ1の中心軸を中心とした円周上に概ね等間隔で配置されている。また、当該断面におけるコア10、マーカ15、及びクラッド20の外形のそれぞれは円形であるが、これらの外形は楕円形等の非円形であってもよい。また、コア10の数は制限されるものではなく、例えば、光ファイバ1は、1つのコア10を有するシングルコアファイバであってもよい。
【0018】
コア10の屈折率はクラッド20の屈折率よりも高い。本実施形態では、コア10はゲルマニウム等の屈折率が高くなるドーパントが添加されたシリカガラスから成り、クラッド20は何ら添加物の無いシリカガラスから成る。なお、コア10が何ら添加物の無いシリカガラスから成り、クラッド20がフッ素(F)等の屈折率が低くなるドーパントが添加されたシリカガラスから成っていてもよく、屈折率を変化させるドーパントは制限されるものではない。
【0019】
マーカ15は、クラッド20とは屈折率が異なるシリカガラスによって構成され、マーカ15の屈折率は、クラッド20の屈折率より高くても低くてもよい。なお、マーカ15の直径はコア10の直径より小さい。また、マーカ15の位置、数等は制限されるものではなく、例えば、光ファイバ1は、マーカ15を備えなくてもよい。
【0020】
被覆層30は、例えば熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等の樹脂から成る。
【0021】
図2は、図1に示す光ファイバ1を製造するための光ファイバ用母材の長手方向に沿った断面図である。図3は、図2に示す光ファイバ用母材1Pの長手方向に垂直な断面図であり、後述する本体部における断面図である。図2図3に示すように、光ファイバ用母材1Pは、複数のコアロッド110Rと、マーカロッド115Rと、クラッドロッド120Rと、を主に備える。コアロッド110Rの数は、光ファイバ1のコア10の数と同じ4つである。
【0022】
それぞれのコアロッド110Rは、互いに同様の構成であり、光ファイバ1におけるクラッド20と異なる所定部としてのコア10となるロッド状のコアガラス体10Pを含む。本実施形態のコアロッド110Rは、コアガラス体10Pの外周面が後述するクラッドガラス体と同じガラス体から成る被覆層110RLで被覆されたガラスロッドである。
【0023】
マーカロッド115Rは、光ファイバ1におけるクラッド20と異なる所定部としてのマーカ15となるロッド状のマーカガラス体15Pから成るガラスロッドである。
【0024】
クラッドロッド120Rは、光ファイバ1のクラッド20の少なくとも一部となるクラッドガラス体20Pを含む。本実施形態のクラッドロッド120Rは、ロッド状のクラッドガラス体20Pから成る。クラッドロッド120Rには、長手方向に沿って延在する5つの孔125a~125eが設けられ、4つの孔125a~125dはコアロッド110Rに1対1で対応し、孔125eはマーカロッド115Rに対応している。このため、コアロッド110Rやマーカロッド115Rの数に応じて、クラッドロッド120Rに設けられる孔125a~125eの数が変化する。
【0025】
それぞれの孔125a~125dにはコアロッド110Rが保持され、孔125eにはマーカロッド115Rが保持される。クラッドロッド120Rの中心軸を基準としたそれぞれの孔125a~125dの位置及び孔125eの位置は、光ファイバ1の中心軸を基準としたコア10の位置及びマーカ15の位置と概ね相似となる位置である。
【0026】
クラッドロッド120Rは、一方側の端部に第1封止部121を有し、他方側の端部に第2封止部122を有し、第1封止部121と第2封止部122の間の部位が本体部123である。なお、以下では、一方側の端部を一端部、他方側の端部を他端部と呼ぶことがある。
【0027】
第1封止部121は、他方側から一方側に向かって外径が縮径した先細り形状に形成され、それぞれのコアロッド110R及びマーカロッド115Rの一端部を囲って当該一端部に溶着されてそれぞれの孔125a~125dの一方側の端を塞いでいる。コアロッド110Rにおける第1封止部121に囲われる部位は、他方側から一方側に向かって外径が縮径した先細り形状に形成されている。この第1封止部121の先端部にはシリカガラスから成る支持棒40の一端が溶着され、支持棒40の中心軸とクラッドロッド120Rの中心軸とが概ね一致している。
【0028】
第2封止部122は、一方側から他方側に向かって外径が縮径した先細り形状に形成され、それぞれのコアロッド110R及びマーカロッド115Rの他端部を囲って当該他端部に溶着されてそれぞれの孔125a~125eの他方側の端を塞いでいる。コアロッド110Rにおける第2封止部122に囲われる部位は、一方側から他方側に向かって外径が縮径した先細り形状に形成されている。このように、第1封止部121と第2封止部122によってそれぞれの孔125a~125eの両端が塞がれ、それぞれの孔125a~125d内は閉空間である。これら孔125a~125e内の空間であるクラッドロッド120Rとコアロッド110Rとの間の空間及びクラッドロッド120Rとマーカロッド115Rとの間の空間の圧力は大気圧より低く、例えば、10-5Paから10-8Pa程度である。
【0029】
本体部123の断面の外形は円形であり、外径は長手方向において概ね一定である。本体部123における孔125a~125eの直径は長手方向において概ね一定であり、コアロッド110Rに対応する孔125a~125dの直径は互いに概ね同じであり、マーカロッド115Rに対応する孔125eの直径は他の孔125a~125dの直径より小さい。また、それぞれのコアロッド110Rにおける本体部123に囲われる部位での直径は、長手方向において概ね一定であり、これらコアロッド110Rの当該部位での直径は互いに概ね同じである。また、マーカロッド115Rにおける本体部123に囲われる部位での直径は、長手方向において概ね一定であり、マーカロッド115Rの当該部位での直径は、コアロッド110Rにおける本体部123に囲われる部位での直径より小さい。
【0030】
次に、このような光ファイバ用母材1Pを製造するために用いられるクラッドロッドについて説明する。
【0031】
図4は、図2に示す光ファイバ用母材1Pを製造するために用いられる本実施形態のクラッドロッドを示す図であり、クラッドロッドを長手方向に沿って一方側から見た図である。図4に示すように、本実施形態のクラッドロッド20Rは、断面の外形が円形のロッド状の部材であり、光ファイバ用母材1Pのクラッドロッド120Rと同様に、クラッドガラス体20Pから成る。クラッドロッド20Rの外径は、長手方向において概ね一定であり、クラッドロッド120Rの本体部123の外径と同じである。クラッドロッド20Rは、クラッドロッド120Rより長く、クラッドロッド20Rの両端面はクラッドロッド20Rの中心軸と垂直な平坦面である。クラッドロッド20Rには、長手方向に沿って延在する5つの孔25a~25eが設けられている。クラッドロッド20Rの中心軸を基準としたこれら孔25a~25eの位置は、本体部123における中心軸を基準とした孔125a~125eの位置と同じである。また、これら孔25a~25eは、クラッドロッド20Rの長手方向における両側の端に開口を有する貫通孔であり、当該開口はクラッドロッド20Rの両端面において開口している。これら孔25a~25eでは、孔25aと孔25b、孔25bと孔25c、孔25cと孔25d、孔25dと孔25a、及び孔25eと孔25dのそれぞれの組が互いに隣り合っている。なお、孔25a~25dは同じ構成であり、孔25eは、直径が小さいことを除いて概ね他の孔25a~25dと同じ構成である。このため、以下では、孔25aについて説明し、他の孔25b~25eについての説明は適宜省略する。
【0032】
図5は、図4のV-V線に沿ったクラッドロッド20Rの断面図であり、孔25a及び孔25bの中心軸に沿った断面図である。図4図5に示すように、孔25aを規定するクラッドロッド20Rの内周面26は、一方側の端部において、開口から離隔した位置から当該開口に向かって孔25aの直径が拡径し、クラッドロッド20Rの一方側の端面20Rfまで延在するテーパ部27を有する。このため、孔25aの一方側の開口はテーパ部27の当該開口側の縁部28によって規定され、この縁部28での孔25aの直径D1は、テーパ部27における上記開口側と反対側の縁部29での孔25aの直径D2より大きい。縁部29を基準とする上記開口側と反対側における孔25aの直径は、直径D2と概ね同じであり、長手方向において概ね一定である。孔25a~25dにおける直径D2は、光ファイバ用母材1Pのクラッドロッド120Rの本体部123における孔125a~125dの直径と同じであり、孔25eにおける直径D2は、本体部123における孔125eの直径と同じである。このため、孔25a~25dには、両端部の直径が縮径していない直線状のコアロッド110Rを挿入可能であり、孔25eには、両端部の直径が縮径していない直線状のマーカロッド115Rを挿入可能である。また、テーパ部27と端面20Rfとの開口側のなす角θは、例えば、190度以上240度以下である。また、縁部29での孔25a~25eの直径D2に対する縁部28での当該孔25a~25eの直径D1の比D1/D2は、例えば、1.1以上2.0以下である。なお、少なくとも2つの孔におけるテーパ部27に対する上記のなす角θ及び比D1/D2は、互いに異なっていても互いに同じであってもよい。また、本実施形態では、端面20Rfはクラッドロッド20Rの中心軸と垂直であるが、非垂直であってもよい。
【0033】
これら孔25a~25eにおけるテーパ部27の縁部28は、クラッドロッド20Rの端面20Rfの外周縁部20Rfeから離隔している。このため、端面20Rfは、外周縁部20Rfeの全周に沿って延在する環状の平坦な領域FAを有する。従って、本実施形態のクラッドロッド20Rによれば、縁部28が外周縁部20Rfeに接続している場合と比べて、外径がクラッドロッド20Rの外径と同じガラス管の一方の端面を同軸となる状態でクラッドロッド20Rの端面20Rfに強固に溶着させ易い。なお、図4では、領域FAの境界が破線で示されている。また、縁部28は、外周縁部20Rfeに接続していてもよい。
【0034】
また、互いに隣り合う孔25a,25bのテーパ部27において、孔25aのテーパ部27の縁部28の一部28Pは、孔25bのテーパ部27の縁部28の一部を兼ねる。また、孔25a,25bの組と同様に、孔25bにおける縁部28の一部28Pは、孔25cにおける縁部28の一部を兼ね、孔25cにおける縁部28の一部28Pは、孔25dにおける縁部28の一部を兼ね、孔25dにおける縁部28の一部28Pは、孔25aにおける縁部28の一部を兼ね、孔25eにおける縁部28の一部28Pは、孔25dにおける縁部28の一部を兼ねる。これら縁部28の一部28Pは、クラッドロッド20Rの端面20Rfより他方側に位置している。
【0035】
次に、光ファイバ用母材1Pの製造方法、及び、光ファイバ1の製造方法について説明する。
【0036】
図6は、本実施形態に係る光ファイバ用母材1Pの製造方法を含む光ファイバ1の製造方法の工程を示すフローチャートである。図6に示すように、本実施形態の光ファイバ用母材1Pの製造方法は、準備工程P1と、ダミーガラス管溶着工程P2と、エッチング工程P3と、挿入工程P4と、閉塞工程P5と、溶断工程P6と、を備える。光ファイバ1の製造方法は、製造された光ファイバ用母材1Pを線引きする線引工程P7を備える。
【0037】
<準備工程P1>
本工程は、複数のガラス部材を準備する工程である。本実施形態において準備する複数のガラス部材は、複数のコアロッド、マーカロッド、及び図4に示すクラッドロッド20Rである。コアロッドは、両端部の直径が縮径せずに直線状に延在する点、長さが長くされた点を除いて、光ファイバ用母材1Pのコアロッド110Rと同じ構成である。また、マーカロッドは、両端部の直径が縮径せずに直線状に延在する点、長さが長くされた点を除いて、光ファイバ用母材1Pのマーカロッド115Rと同じ構成である。このため、コアロッド及びマーカロッドの図示による説明は省略する。本実施形態では、コアロッド、マーカロッド、及びクラッドロッド20Rの長さは同じであり、コアロッドの数は4つである。なお、事前にこれらガラス部材を、純水やエタノール、フッ酸等を用いて洗浄しておいても良い。
【0038】
<ダミーガラス管溶着工程P2>
本工程は、準備工程P1で準備したクラッドロッド20Rの両端面のそれぞれにダミーガラス管を溶着する工程である。本実施形態のダミーガラス管は、外径がクラッドロッド20Rの外径と概ね同じでシリカガラスから成る円筒状の管である。以下では、クラッドロッド20Rの内周面26におけるテーパ部27が位置する側である一方側の端面20Rfに溶着されるダミーガラス管を第1ガラス管とし、他方側の端面に溶着されるダミーガラス管を第2ガラス管として説明する。
【0039】
図7は、本工程の様子を示す図である。本実施形態では、不図示の旋盤によってクラッドロッド20Rを当該クラッドロッド20Rの中心軸が概ね水平となる状態で当該中心軸周りに回転させながらクラッドロッド20Rの一方側の端部を酸水素バーナ50によって加熱する。次に、クラッドロッド20Rの一方側の端面20Rfに一方の端面が所定の間隔をあけて対向するように配置される第1ガラス管41を不図示の旋盤によって当該第1ガラス管41の中心軸周りに回転させる。クラッドロッド20Rと第1ガラス管41との回転は同期されており、この状態で、クラッドロッド20Rの一方側の端部と第1ガラス管41のクラッドロッド20R側の端部とを酸水素バーナ50の火炎によって加熱する。この際、火炎の一部がクラッドロッドの端面20Rfに当たるように、クラッドロッド20Rの長手方向における酸水素バーナ50の位置が調節される。次に、クラッドロッド20Rの端面20Rfに第1ガラス管41の一方の端面を突き合わせ、クラッドロッド20Rと第1ガラス管41とが概ね同軸となるように第1ガラス管41をクラッドロッド20Rの端面20Rfに溶着させる。また、第1ガラス管41と同様にして、クラッドロッド20Rの他方側の端面に第2ガラス管を溶着させる。第1ガラス管41及び第2ガラス管が溶着された状態において、クラッドロッド20Rのそれぞれの孔25a~25eの一方側の開口の全体は第1ガラス管41の内部空間に開口し、それぞれの孔25a~25eの他方側の開口の全体は第2ガラス管の内部空間に開口している。
【0040】
<エッチング工程P3>
本工程は、クラッドロッド20Rにおけるそれぞれの孔25a~25eを規定する内周面26をエッチングする工程である。図8は、本工程の様子を示す図である。本実施形態では、不図示の旋盤によってガラス管41,42が溶着されたクラッドロッド20Rを中心軸が概ね水平となる状態で当該中心軸周りに回転させつつ、六フッ化硫黄(SF6)ガス等のエッチングガスを第2ガラス管42からクラッドロッド20Rの孔25a~25e内に流す。この際、酸水素バーナ50をクラッドロッド20Rの長手方向に沿ってトラバースさせてクラッドロッド20Rを加熱する。このようにして、内周面26をエッチングする。なお、エッチングの方法は特に制限されるものではなく、例えば、フッ化水素酸(HF)等のエッチング液によってエッチングを行ってもよい。
【0041】
<挿入工程P4>
本工程は、準備工程P1で準備したコアロッド及びマーカロッドを、クラッドロッド20Rの孔25a~25e内にテーパ部27が位置する側である一方側の開口から挿入する工程である。図9は、本工程後の様子を示す図である。本実施形態では、まず、酸水素バーナ50を用いて第1ガラス管41の一部を溶断し、当該第1ガラス管41を短くする。次に、準備したコアロッド及びマーカロッドをそれぞれのロッドが対応する孔25a~25e内に一方側の開口から挿入し、コアロッド、マーカロッド、及びクラッドロッド20Rから成るロッド集合体RAを形成する。このロッド集合体RAの長手方向に垂直な断面図は、図3と同様の図である。本実施形態では、コアロッド10Rの一端部がクラッドロッド20Rの一端部によって囲われ、他端部がクラッドロッド20Rの他端部によって囲われるように、コアロッド10Rを挿入する。また、図示による説明は省略するが、コアロッド10Rと同様に、マーカロッドの一端部がクラッドロッド20Rの一端部によって囲われ、他端部がクラッドロッド20Rの他端部によって囲われるように、マーカロッド115Rを挿入する。
【0042】
<閉塞工程P5>
本工程は、孔25a~25eの一方側の開口の少なくとも一部を塞ぐように、クラッドロッド20Rの一方側の端面20Rfに閉塞部材を取り付ける工程である。図10は、本工程の様子を示す図である。本実施形態では、閉塞部材はシリカガラスから成る円柱状のダミーロッド43とされ、ダミーロッド43の直径は、第1ガラス管41の内径より小さい。このダミーロッド43の一方の端面がクラッドロッド20Rの端面20Rfに接するようにダミーロッド43を第1ガラス管41の内部空間に挿入する。クラッドロッド20Rの中心軸とダミーロッド43の中心軸とは概ね一致しており、本実施形態では、この状態においてそれぞれの孔25a~25eの一方側の開口の全体がダミーロッド43によって覆われている。次に、不図示の旋盤によってロッド集合体RA及びダミーロッド43を中心軸が概ね水平となる状態で当該中心軸周りに同期回転させながら、ロッド集合体RAの一端部とダミーロッド43のロッド集合体RA側の端部と第1ガラス管41とを酸水素バーナ50によって加熱する。そして、第1ガラス管41をダミーロッド43に溶着させると共に、ロッド集合体RAのクラッドロッド20Rの端面20Rfにダミーロッド43を溶着させる。こうして、クラッドロッド20Rの端面20Rfにダミーロッド43を取り付け、その結果、本実施形態では、クラッドロッド20Rのそれぞれの孔25a~25eの一方側の開口の全体がダミーロッド43と第1ガラス管41とによって塞がれる。
【0043】
<溶断工程P6>
本工程は、ロッド集合体RAの両端部をそれぞれ溶断して、クラッドロッド20Rの一端部に第1封止部121を形成し、クラッドロッド20Rの他端部に第2封止部122を形成する工程である。本工程については、特に図示せずに説明をする。本実施形態では、第2ガラス管42に接続される不図示の真空ポンプによってロッド集合体RAのクラッドロッド20Rのそれぞれの孔25a~25e内を真空引きしつつ、不図示の旋盤によってロッド集合体RAをクラッドロッド20Rの中心軸が概ね水平となる状態で当該中心軸周りに回転させる。この状態において、ロッド集合体RAの一端部を酸水素バーナ50によって加熱して溶断する。この溶断によって第1封止部121が形成され、当該第1封止部121の先端に支持棒40の一端を溶着させる。また、一端部の溶断と同様に、孔25a~25e内を真空引きしつつ、不図示の旋盤によってロッド集合体RAを回転させ、この状態において、ロッド集合体RAの他端部を酸水素バーナ50によって加熱して溶断する。この溶断によって第2封止部122が形成される。
【0044】
このように第1封止部121及び第2封止部122が形成されることで、ロッド集合体RAのクラッドロッド20Rが光ファイバ用母材1Pのクラッドロッド120Rとなり、ロッド集合体RAのクラッドロッド20Rの孔25a~25eが光ファイバ用母材1Pのクラッドロッド120Rの孔125a~125eとなり、ロッド集合体RAのコアロッド10Rが光ファイバ用母材1Pのコアロッド110Rとなり、ロッド集合体RAのマーカロッドが光ファイバ用母材1Pのマーカロッド115Rとなり、図2に示す光ファイバ用母材1Pを得る。
【0045】
<線引工程P7>
本工程は、光ファイバ用母材1Pを線引きして光ファイバ1を得る工程である。本工程については、特に図示せずに説明をする。本工程では、光ファイバ用母材1Pを紡糸炉で加熱して、光ファイバ用母材1Pの第2封止部122側の端部からガラスを線引きする。この線引きされたガラスは、すぐに固化して、コアガラス体10Pがコア10となり、マーカガラス体15Pがマーカ15となり、クラッドガラス体20Pがクラッド20となり、コア10とマーカ15とクラッド20とから構成される光ファイバ裸線となる。この光ファイバ裸線の外周面上に、被覆層30を設けて、図1に示す光ファイバ1が得られる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態のクラッドロッド20Rは、光ファイバ1におけるクラッド20の少なくとも一部となるクラッドガラス体20Pを含む。本実施形態のクラッドロッド20Rには、長手方向に沿って延在し両端に開口を有する複数の孔25a~25eが設けられる。孔25a~25dには、ガラスロッドとしてのコアロッド10Rを一方側の開口から挿入可能であり、孔25eには、ガラスロッドとしてのマーカロッドを一方側の開口から挿入可能である。孔25a~25eの内周面26は、一方側の端部において、一方側の開口から離隔した位置から当該開口に向かって孔25a~25eの直径が拡径し、クラッドロッド20Rの一方側の端面20Rfまで延在するテーパ部27を有する。
【0047】
また、本実施形態の光ファイバ用母材1Pの製造方法は、準備工程P1と挿入工程P4とを備える。準備工程P1では、上記のクラッドロッド20Rと、ガラスロッドとしてのコアロッド10R及びマーカロッドとを準備し、挿入工程P4では、コアロッド10R及びマーカロッドをクラッドロッド20Rの一方側の開口から孔25a~25d内に挿入する。
【0048】
本実施形態のクラッドロッド20R及び光ファイバ用母材1Pの製造方法では、クラッドロッド20Rにおける一方側の開口を規定する縁部はテーパ部27における一方側の開口側の縁部28である。この縁部28での孔25a~25eの直径D1は、テーパ部27における一方側の開口側と反対側の縁部29での当該孔25a~25eの直径D2より大きい。このため、前述のダミーガラス管溶着工程P2のように、一方側の端である端面20Rfに火炎が当たるようなクラッドロッド20Rの加熱によって孔25a~25eのそれぞれにおけるテーパ部27の縁部28が溶融して開口での直径D1が小さくなったとしても、当該直径D1は直径D2より小さくなり難い。また、テーパ部27における一方側の開口側と反対側は、クラッドロッド20Rの一方側の端面20Rfより他方側に位置するため、当該テーパ部27における一方側の開口側と反対側には火炎が当たり難く、テーパ部27の縁部28より溶融し難い。このため、孔25a~25eの内周面26がテーパ部27を有さず孔25a~25eの直径がテーパ部27の縁部29での孔25a~25eの直径D2と同じ場合と比べて、端面20Rfに火炎が当たるようにクラッドロッド20Rが加熱されたとしても、一方側の開口近傍での孔25a~25eの直径が当該孔25a~25eに挿入可能なコアロッド10Rやマーカロッドの直径より小さくなり難い。このため、本実施形態のクラッドロッド20R及び光ファイバ用母材1Pの製造方法によれば、上記の場合と比べて、前述のダミーガラス管溶着工程P2のように、クラッドロッド20Rが上記のように加熱されたとしても、コアロッド10Rやマーカロッドを一方側の開口から孔25a~25e内に挿入することが困難となることを抑制し得る。
【0049】
本実施形態のクラッドロッド20R及び光ファイバ用母材1Pの製造方法では、互いに隣り合う孔のテーパ部27において、一方のテーパ部27の縁部28の一部28Pは、他方のテーパ部27の縁部28の一部を兼ねる。また、この縁部28の一部28Pは、クラッドロッド20Rの端面20Rfより他方側に位置する。このため、一方のテーパ部27の縁部28のうち他方のテーパ部27の縁部28の一部を兼ねる部位である上記の一部28Pのクラッドロッド20Rの長手方向における位置がクラッドロッド20Rの端面20Rfと同じ場合と比べて、端面20Rfに火炎が当たるようにクラッドロッド20Rが加熱される際に、縁部28の一部28Pに火炎が当たり難くし得る。このため、本実施形態のクラッドロッド20R及び光ファイバ用母材1Pの製造方法によれば、上記の場合と比べて、この縁部28の一部28Pを溶融し難くし得る。なお、この観点では、少なくとも互いに隣り合う2つの孔のテーパ部27において、一方のテーパ部27の縁部28の一部28Pが、他方のテーパ部27の縁部28の一部を兼ねると共に、端面20Rfより他方側に位置していればよい。また、クラッドロッド20Rの長手方向における上記の一部28Pの位置は、端面20Rfと同じであってもよい。
【0050】
以上、本発明について上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0051】
例えば、上記実施形態では、互いに隣り合う孔におけるテーパ部27の縁部28同士が繋がっているクラッドロッド20Rを例に説明した。しかし、図11に示すように、互いに隣り合う孔のテーパ部27における縁部28は、互いに離隔していてもよい。なお、図11は、変形例におけるクラッドロッド20Rを図4と同様に示す図である。このような構成によれば、テーパ部27における縁部28同士が繋がっている場合と比べて、クラッドロッド20Rにおけるテーパ部27間の強度を高くし得る。なお、少なくとも互いに隣り合う2つの孔のテーパ部27の縁部28同士が互いに離隔していてもよい。このような構成によれば、縁部28同士が互いに離隔している2つのテーパ部27間の強度を高くし得る。
【0052】
また、上記実施形態では、クラッドガラス体20Pから成るクラッドロッド20Rを例に説明した。しかし、クラッドロッド20Rは、クラッドガラス体20Pを含んでいればよく、光ファイバ1におけるクラッド20と異なる所定部となる所定のガラス体を更に含んでいてもよい。このような所定部としては、コア10、マーカ15、コア10に応力を付与する応力付与部等が挙げられる。また、クラッドロッド20Rには、ガラスロッドが挿入されない長手方向に沿って延在する空孔が設けられてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、コアロッド10Rを挿入可能な孔25a~25dと、マーカロッドを挿入可能な孔25eと、が設けられるクラッドロッド20Rを例に説明した。しかし、クラッドロッド20Rに設けられる孔は、光ファイバ1におけるクラッド20と異なる所定部となる所定のガラス体を含むガラスロッドを一方側の開口から挿入可能であればよい。例えば、挿入可能なガラスロッドが含む所定のガラス体は、所定部としての応力付与部となるガラス体であってもよい。また、挿入可能なガラスロッドは、コア10となるコアガラス体10Pがコア10を囲う低屈折率層となるガラス体で覆われたガラスロッドであってもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、両端に開口を有する複数の孔25a~25eが設けられるクラッドロッド20Rを例に説明した。しかし、クラッドロッド20Rが備える孔の数は制限されるもではない。また、孔は少なくとも一方側の端に開口を有していればよく、孔の他方側の端は塞がっていてもよい。また、孔が両端に開口を有する場合、当該孔の内周面26は、他方側の端部において、他方側の開口から離隔した位置から当該開口に向かって孔の直径が拡径し、クラッドロッド20Rの他方側の端面まで延在する別のテーパ部を更に有していてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、ガラス部材の加熱に酸水素バーナ50を用いていた。しかし、ガラス部材を加熱する加熱装置は、制限されるものではなく、例えば、電気炉等であってもよい。なお、加工無駄を低減する観点では、溶断工程P6におけるロッド集合体RAの溶断は、酸水素バーナ50で行うことが好ましい。一般的に、酸水素バーナのヒートスポットは、電気炉のヒートスポットより狭い。このため、酸水素バーナを用いることで、電気炉を用いる場合と比べて、溶断工程によって形成される第1封止部121及び第2封止部122の長さを短くし得、加工無駄を低減し得る。また、加熱源はCO2レーザーのようなガラスの吸収率が高い光でも良い。レーザーを熱源にする場合、ヒートスポットを任意の分布にすることが可能であり、母材のサイズや材質に最適な加熱を実現することが可能となる。
【0056】
また、上記実施形態では、ロッド集合体RAの両端部を溶断する溶断工程P6を例に説明した。しかし、溶断工程P6において、ロッド集合体RAの他方側の端部を溶断せず、第1封止部121のみを形成し、当該第1封止部121の先端に支持棒40を溶着させなくてもよい。この場合の光ファイバ用母材1Pの構成は、第2封止部122を有さない構成であり、例えば、線引工程P7において、第2ガラス管42に接続される不図示の真空ポンプによって孔25a~25e内を真空引きしつつ、第1封止部121側の端部から線引きする。
【0057】
本発明によれば、ガラスロッドの挿入が困難となることを抑制し得るクラッドロッド、それを用いた光ファイバ用母材の製造方法、及び光ファイバの製造方法が提供され、光ファイバに関連する種々の分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1・・・光ファイバ
1P・・・光ファイバ用母材
10・・・コア
10P・・・コアガラス体
10R・・・コアロッド(ガラスロッド)
15・・・マーカ
15P・・・マーカガラス体
20・・・クラッド
20P・・・クラッドガラス体
20R・・・クラッドロッド
25a,25b,25c,25d,25e・・・孔
26・・・内周面
27・・・テーパ部
28・・・開口側の縁部
P1・・・準備工程
P2・・・ダミーガラス管溶着工程
P3・・・エッチング工程
P4・・・挿入工程
P5・・・閉塞工程
P6・・・溶断工程
P7・・・線引工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11