(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146925
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】流体の循環システム
(51)【国際特許分類】
B08B 9/032 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
B08B9/032
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054368
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】堀川 透理
【テーマコード(参考)】
3B116
【Fターム(参考)】
3B116AA12
3B116BB03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、流体の循環システムの、循環ポンプの吸引用配管のスケール付着および閉塞に対して、プロセスを止めることなく逆洗しスケール付着や閉塞を防止すること。
【解決手段】タンクから流体を吸引する吸引用配管と吸引した流体を排出させる排出用配管とを備えた循環ポンプを複数有する流体の循環システム1において、前記複数の循環ポンプのそれぞれの流体の排出用配管には流体の逆流を防止する手段と、前記逆流を防止する手段の下流側の排出用配管から前記複数の循環ポンプの吸引用配管をつなぐ逆洗用配管と、前記逆洗用配管に備えた開閉バルブと、を有し、前記複数の循環ポンプのうち1つ以上の循環ポンプに接続された吸引用配管を逆洗するときは、逆洗を行う吸引用配管に接続された逆洗用配管に備えた開閉バルブを開くように構成されたことを特徴とする、流体の循環システム1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクから流体を吸引する吸引用配管と吸引した流体を排出させる排出用配管とを備えた循環ポンプを複数有する流体の循環システムにおいて、
前記複数の循環ポンプのそれぞれの流体の排出用配管には流体の逆流を防止する手段と、
前記逆流を防止する手段の下流側の排出用配管から前記複数の循環ポンプの吸引用配管をつなぐ逆洗用配管と、
前記逆洗用配管に備えた開閉バルブと、を有し、
前記複数の循環ポンプのうち1つ以上の循環ポンプに接続された吸引用配管を逆洗するときは、逆洗を行う吸引用配管に接続された逆洗用配管に備えた開閉バルブを開くように構成されたことを特徴とする、流体の循環システム。
【請求項2】
前記流体の逆流を防止する手段が、逆止弁および/または開閉バルブであることを特徴とする、請求項1に記載の流体の循環システム。
【請求項3】
前記吸引用配管の先端部に複数の貫通孔を有した吸引部材を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の流体の循環システム。
【請求項4】
前記吸引部材の末端には逆止弁を有し、該逆止弁は前記逆洗するときに開くことを特徴とする、請求項3に記載の流体の循環システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の循環システムにおいて、スケール、ダスト等による、流体の循環ポンプの吸引用配管の閉塞を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板を水冷するプロセス(以下、水冷プロセスともいう。)においては、水使用量の抑制のため、循環システムにて水冷プロセスで使用した水を循環して再使用することが一般的である。
【0003】
一般に、鋼板の製造過程において、鋼板表面には鉄の酸化スケールが存在する。そのため、水冷プロセスの循環水中に鋼板表面由来のスケールが混入し、循環ポンプの吸引側の配管の内部や機器に付着して、圧損が大きくなって流量が低下し、最終的には配管を閉塞するなどの問題が発生する。
【0004】
配管の閉塞は、流体の循環システムの流路のどこでも発生しうる問題である。例えば特許文献1や特許文献2には、水冷プロセス側の吐出ヘッダーの閉塞防止または洗浄技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献3では、洗浄液や空気、圧力などを用いることにより洗浄力を向上させ、流体の流路全体を洗浄する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-022875公報
【特許文献2】特開2007-130613公報
【特許文献3】特開平7-275822公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1や特許文献2では、ポンプの上流側の吸引配管の閉塞防止や洗浄技術を対象としていない。
また、特許文献3のように、流路全体を洗浄するシステムでは、操業中の実施が困難であり、プロセスを止め、必要に応じて排水後に作業を行う必要があるため、水冷プロセスの稼働率が低下するという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題を解決するために、循環ポンプの吸引側の配管(以下、吸引用配管ともいう。)のスケール付着および閉塞に対して、プロセスを止めることなく逆洗する方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1]タンクから流体を吸引する吸引用配管と吸引した流体を排出させる排出用配管とを備えた循環ポンプを複数有する流体の循環システムにおいて、
前記複数の循環ポンプのそれぞれの流体の排出用配管には流体の逆流を防止する手段と、
前記逆流を防止する手段の下流側の排出用配管から前記複数の循環ポンプの吸引用配管をつなぐ逆洗用配管と、
前記逆洗用配管に備えた開閉バルブと、を有し、
前記複数の循環ポンプのうち1つ以上の循環ポンプに接続された吸引用配管を逆洗するときは、逆洗を行う吸引用配管に接続された逆洗用配管に備えた開閉バルブを開くように構成されたことを特徴とする、流体の循環システム。
[2]前記流体の逆流を防止する手段が、逆止弁および/または開閉バルブであることを特徴とする、[1]に記載の流体の循環システム。
[3]前記吸引用配管の先端部に複数の貫通孔を有した吸引部材を備えることを特徴とする、[1]または[2]に記載の流体の循環システム。
[4]前記吸引部材の末端には逆止弁を有し、該逆止弁は前記逆洗するときに開くことを特徴とする、[3]に記載の流体の循環システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、複数の循環ポンプを用いるので、鋼板の水冷システムの操業中でも、循環ポンプ上流の配管を逆洗により洗浄することができ、吸引用配管のスケール付着による流量低下や閉塞を防止することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
図3に、鋼板製造時の冷却プロセスなどで流体を再利用するシステムにおいて、2台の循環ポンプを有する場合の従来の流体の循環システムの一例を示す。
【0013】
従来の流体の循環システム1は、循環タンク3に貯められた循環水を、循環ポンプ4で循環し、循環ポンプ用逆止弁5を通って鋼板の冷却プロセス2で使用される。その後、循環水は戻り配管6を通って循環タンク3に戻る。ここで循環ポンプ用逆止弁5は、2台以上の循環ポンプ4が存在し、循環ポンプの1台以上が非稼働の場合に、非稼働の循環ポンプへ流体が逆流しないようにするための手段で、一般的に設置されるものである。
【0014】
上記従来の循環システムにおいて、循環ポンプの上流側の吸引用配管13にスケール等が付着し、循環水の流量が低下するという問題が存在する。これは、前述のように2台以上の循環ポンプ4が存在し、一定の期間にわたって停止する予備の循環ポンプが存在する場合に顕著に起こる現象で、運転停止中に吸引用配管内にスケール等が堆積して固着することが一因である。
【0015】
また、予備の循環ポンプを起動する際、堆積したスケールを循環ポンプが一気に吸込み、循環ポンプの内部のインペラー等を損傷するリスクも存在する。
【0016】
図1に、鋼板の冷却プロセスにおける本発明の流体の循環システムの全体図を示す。以下、説明の便宜のため
図1中の記号に小文字aが付いている設備をA系列、小文字bがついている設備をB系列とし、循環ポンプを単にポンプという場合がある。
【0017】
図1の例では、吸引用配管13a及び13bと、排出用配管16a及び16bと、循環ポンプ15a及び15bと、を有し、2系列の配管で流体を吸引することができる構成である。この系列は2つであってもよいし、3つ以上であっても適用できる。それぞれのポンプの排出用配管16a及び16bの下流には逆止弁5a及び5bと開閉バルブ14a及び14bと、を有する。使用しないポンプへ流体を流さなければよいため、逆止弁と開閉バルブは片方のみでもよいし、両方有していてもよい。逆流防止の手段として、安全性の為に逆止弁と開閉バルブの両方を有していることが好ましい。
【0018】
また、排出用配管16aと16bに設けた開閉バルブ14aと14bの下流側から循環ポンプ15aの上流側の吸引用配管13aとは逆洗系統12と逆洗バルブ11aを通じて接続される。この配管のことを逆洗用配管という。同様に、排出用配管上の開閉バルブ14aと14bの下流側から循環ポンプ15bの上流側の吸引用配管13bとは逆洗系統12と逆洗バルブ11bを通じて接続される構造を有する。循環ポンプ15aが1台運転中に、停止中の循環ポンプ15b側の下流バルブ14bを閉め、逆洗バルブ11bを開くことで、逆洗系統12を通って流体が吸引用配管13bへ逆流し、吸引配管13b内のスケールを除去することができる。吸引用配管13a内のスケールを除去したい場合にはA系列とB系列のバルブの操作を逆にすることにより洗浄可能である。
【0019】
本逆洗作業は水冷プロセス稼働中にも行うことができるため、稼働率を下げることは無い。定期的に実施してもよいし、停止中の循環ポンプと運転中の循環ポンプの切替前に実施してもよい。
【0020】
図2に、流体の循環システムにおいて用いられる吸引用配管に取り付けられる好適な吸引部材の一例を示す。一般的に用いられる循環システムの吸引部材には、
図2の吸引口21の様に複数の貫通孔が存在する。これは、循環タンク3の内部の流体が不均一である場合や、2のプロセスがスケール除去系統(例えばサイクロンセパレータなど)でスケールの濃度の高い流体を吸引する必要がある場合など、循環タンク3内の一か所から吸引するのが適当ではない場合に適用することが好ましい。このような吸引部材23においては、逆洗用の流体を排出する面積が小さく吸引口21が目詰まりしてしまうなど逆洗効果が小さくなる場合がある。そのような場合、吸引部材の末端の構造は、逆洗用逆止弁22を有することが好ましい。タンクから流体を吸引する場合は、逆止弁22が閉じるため吸引用配管の複数の貫通孔(吸引口21)から流体を吸引することができ、逆洗するときは複数の貫通孔に加えて端部の逆洗時の排出口24からも流体を排出することができる。逆洗用の逆止弁の孔、多孔の孔の径および形状は特に定めるものではないが、逆洗用の逆止弁の孔の断面積は、多孔の孔の断面積の合計の0.5~10倍程度が好ましい。0.5倍以下だと逆洗時の洗浄効果が得られず、また、10倍を超えると配管径が大きくなりすぎるため不経済となる。
【0021】
通常運転時には逆止弁が閉まって吸引口21から従来通り吸引され、逆洗時には逆止弁が開き多量の水が吸引用配管の先端部に取り付けられた吸引部材の先端からタンクへ流れることでより吸引用配管内の洗浄効果を向上させることができる。
【0022】
吸引部材には、
図2の様に貫通孔を有しており、その形状は多孔状でもよいし他の形状でもよい。吸引部の流路面積が小さく、逆洗しても逆洗効果が大きくない場合に有効である。
【0023】
また、本発明における流体は、水以外、例えば雰囲気ガスや集塵機における気体などでも同様の効果が得られ、適用の分野は多岐にわたる。
【0024】
以上は、2台の循環ポンプの場合を例に説明したが、複数の循環ポンプを設置しても、上記の技術が適用できることを確認した。
【実施例0025】
図1に記載の循環システムを、発明を実施するための形態に記載の方法で使用した。
【0026】
循環ポンプで逆洗しないで使用した場合、使用当初の流量に比較して3か月後に流量が低下し始めた。そのため、プロセスを止め、配管の一部を外し、洗浄作業が必要であった。これに対し、1か月ごとに交互に循環ポンプを逆洗して使用した場合、使用当初の流量に比較して1年後の流量でも低下は見られず、詰まりもなく、洗浄効果が確認できた。プロセスを止めることなく逆洗することができ、プロセスの稼働率の向上と、洗浄作業の省略可が達成できた。