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特開2023-146945目地補修方法、目地補修構造及び乾式目地材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146945
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】目地補修方法、目地補修構造及び乾式目地材
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20231004BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20231004BHJP
   E04F 19/02 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
E04G23/02 A
E04F13/08 Y
E04F19/02 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054403
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004673
【氏名又は名称】パナソニックホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】永野 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】古田 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】林 利樹
(72)【発明者】
【氏名】元持 祐輝
【テーマコード(参考)】
2E110
2E176
【Fターム(参考)】
2E110AA41
2E110AA52
2E110AB04
2E110AB22
2E110AB23
2E110CA03
2E110DA03
2E110DA10
2E110DD01
2E110DD14
2E110DD15
2E110EA07
2E110GA15Z
2E110GB43Z
2E110GB44Z
2E110GB46Z
2E110GB53Z
2E110GB55Z
2E176AA05
2E176BB04
(57)【要約】
【課題】 目地補修の良好な仕上がりを得ることが可能な方法を提供する。
【解決手段】 複数の壁仕上げ材の間に形成された断面凹形の目地を補修するための方法である。目地は、上下方向に延びる縦目地と、縦目地に繋がって横方向に延びる横目地とを含む。壁仕上げ材は、縦目地の側壁を形成する縦小口面と、横目地の側壁を形成する横小口面とを含む。この方法は、縦目地内に、乾式目地材を固着する第1工程S1と、第1工程S1の後、横目地内に、可塑性を有する湿式目地材を充填する第2工程S2とを含む。乾式目地材は、縦目地に沿った長さ方向の少なくとも一端側の端面が、横小口面に沿った面を含む。第1工程は、乾式目地材の端面を、横小口面の近傍に配置する工程を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の壁仕上げ材の間に形成された断面凹形の目地を補修するための方法であって、
前記目地は、上下方向に延びる縦目地と、前記縦目地に繋がって横方向に延びる横目地とを含み、
前記壁仕上げ材は、前記縦目地の側壁を形成する縦小口面と、前記横目地の側壁を形成する横小口面とを含み、
前記方法は、
前記縦目地内に、乾式目地材を固着する第1工程と、
前記第1工程の後、前記横目地内に、可塑性を有する湿式目地材を充填する第2工程とを含み、
前記乾式目地材は、前記縦目地に沿った長さ方向の少なくとも一端側の端面が、前記横小口面に沿った面を含み、
前記第1工程は、前記乾式目地材の前記端面を、前記横小口面の近傍に配置する工程を含む、
目地補修方法。
【請求項2】
前記第1工程は、前記乾式目地材の前記端面を、前記端面と前記横目地に沿って隣り合う一対の前記横小口面と連続するように配置する工程を含む、請求項1に記載の目地補修方法。
【請求項3】
前記乾式目地材は、前記縦目地に沿った長さ方向の両端側の端面が、前記横小口面に沿った面を含み、
前記第1工程は、前記乾式目地材の前記両端側の端面を、それぞれ、前記横小口面の近傍に配置する工程を含む、請求項1又は2に記載の目地補修方法。
【請求項4】
前記第2工程は、前記湿式目地材を前記横小口面及び前記乾式目地材の前記端面と接触するように充填する工程を含む、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の目地補修方法。
【請求項5】
前記目地は、馬目地である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の目地補修方法。
【請求項6】
複数の壁仕上げ材の間に形成された断面凹形の目地を補修した目地補修構造であって、
前記目地は、上下方向に延びる縦目地と、前記縦目地に繋がって横方向に延びる横目地とを含み、
前記壁仕上げ材は、前記縦目地の側壁を形成する縦小口面と、前記横目地の側壁を形成する横小口面とを含み、
前記構造は、
前記縦目地内に固着された乾式目地材と、
前記横目地内に充填された可塑性を有する湿式目地材の硬化物とを含み、
前記乾式目地材は、前記縦目地に沿った長さ方向の少なくとも一端側の端面が、前記横小口面に沿った面を含み、
前記乾式目地材の前記端面は、前記横小口面の近傍に配置されている、
目地補修構造。
【請求項7】
前記乾式目地材の前記端面は、前記端面と前記横目地に沿って隣り合う一対の前記横小口面と連続するように配置されている、請求項6に記載の目地補修構造。
【請求項8】
前記乾式目地材は、前記縦目地に沿った長さ方向の両端側の端面が、前記横小口面に沿った面を含み、
前記乾式目地材の前記両端側の端面は、それぞれ、前記横小口面の近傍に配置されている、請求項6又は7に記載の目地補修構造。
【請求項9】
前記湿式目地材は、前記横小口面及び前記乾式目地材の前記端面と接触するように充填されている、請求項6ないし8のいずれか1項に記載の目地補修構造。
【請求項10】
前記目地は、馬目地である、請求項6ないし9のいずれか1項に記載の目地補修構造。
【請求項11】
複数の壁仕上げ材の間に形成され、かつ、目地底と、一対の側壁とを有する断面凹形の目地を補修するための乾式目地材であって、
前記目地底に面するように配される底壁部と、
前記底壁部から立ち上がり、かつ、前記一対の側壁に面するように配される一対のフランジ部とを有して、第1方向に延びる断面コ字状の長尺体であり、
前記長尺体の前記第1方向の少なくとも一端に形成された端部壁を含む、
乾式目地材。
【請求項12】
前記端部壁は、前記底壁部に対して90°±10°で交差する平面からなる端面を含む、請求項11に記載の乾式目地材。
【請求項13】
前記端部壁は、前記底壁部と前記一対のフランジ部とを繋いでいる、請求項11又は12に記載の乾式目地材。
【請求項14】
前記端部壁は、前記底壁部の前記第1方向の端部に形成される、請求項11又は12に記載の乾式目地材。
【請求項15】
前記長尺体の前記第1方向の両端に、前記端部壁がそれぞれ形成されている、請求項11ないし14のいずれか1項に記載の乾式目地材。
【請求項16】
前記一対のフランジ部は、粘着層を有する、請求項11ないし15のいずれか1項に記載の乾式目地材。
【請求項17】
前記端部壁の目地深さ方向の長さは、前記一対のフランジ部の目地深さ方向の長さよりも小さい、請求項11ないし16のいずれか1項に記載の乾式目地材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目地補修方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、建物のタイル壁の構造が記載されている。この構造は、壁下地と、壁下地の外面に配された接着層と、接着層に固着された複数のタイルとを含んでいる。複数のタイルの間には、目地が形成されている。この目地には、縦目地と横目地とが含まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-82073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構造では、接着層等の経年劣化によって、目地にひび割れが生じる場合がある。このようなひび割れを補修するには、一般に、湿式目地材が目地内に充填されている。
【0005】
湿式目地材は、可塑性を有している。このため、例えば、縦目地内に湿式目地材を充填する際に、縦目地と横目地とが繋がる交差部において、湿式目地材がはみ出しやすく、目地補修の仕上がりが悪化しやすいという問題があった。
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、目地補修の良好な仕上がりを得ることが可能な方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の壁仕上げ材の間に形成された断面凹形の目地を補修するための方法であって、前記目地は、上下方向に延びる縦目地と、前記縦目地に繋がって横方向に延びる横目地とを含み、前記壁仕上げ材は、前記縦目地の側壁を形成する縦小口面と、前記横目地の側壁を形成する横小口面とを含み、前記方法は、前記縦目地内に、乾式目地材を固着する第1工程と、前記第1工程の後、前記横目地内に、可塑性を有する湿式目地材を充填する第2工程とを含み、前記乾式目地材は、前記縦目地に沿った長さ方向の少なくとも一端側の端面が、前記横小口面に沿った面を含み、前記第1工程は、前記乾式目地材の前記端面を、前記横小口面の近傍に配置する工程を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る前記目地補修方法において、前記第1工程は、前記乾式目地材の前記端面を、前記端面と前記横目地に沿って隣り合う一対の前記横小口面と連続するように配置する工程を含んでもよい。
【0009】
本発明に係る前記目地補修方法において、前記乾式目地材は、前記縦目地に沿った長さ方向の両端側の端面が、前記横小口面に沿った面を含み、前記第1工程は、前記乾式目地材の前記両端側の端面を、それぞれ、前記横小口面の近傍に配置する工程を含んでもよい。
【0010】
本発明に係る前記目地補修方法において、前記第2工程は、前記湿式目地材を前記横小口面及び前記乾式目地材の前記端面と接触するように充填する工程を含んでもよい。
【0011】
本発明に係る前記目地補修方法において、前記目地は、馬目地であってもよい。
【0012】
本発明は、複数の壁仕上げ材の間に形成された断面凹形の目地を補修した目地補修構造であって、前記目地は、上下方向に延びる縦目地と、前記縦目地に繋がって横方向に延びる横目地とを含み、前記壁仕上げ材は、前記縦目地の側壁を形成する縦小口面と、前記横目地の側壁を形成する横小口面とを含み、前記構造は、前記縦目地内に固着された乾式目地材と、前記横目地内に充填された可塑性を有する湿式目地材の硬化物とを含み、前記乾式目地材は、前記縦目地に沿った長さ方向の少なくとも一端側の端面が、前記横小口面に沿った面を含み、前記乾式目地材の前記端面は、前記横小口面の近傍に配置されていることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る前記目地補修構造において、前記乾式目地材の前記端面は、前記端面と前記横目地に沿って隣り合う一対の前記横小口面と連続するように配置されていてもよい。
【0014】
本発明に係る前記目地補修構造において、前記乾式目地材は、前記縦目地に沿った長さ方向の両端側の端面が、前記横小口面に沿った面を含み、前記乾式目地材の前記両端側の端面は、それぞれ、前記横小口面の近傍に配置されていてもよい。
【0015】
本発明に係る前記目地補修構造において、前記湿式目地材は、前記横小口面及び前記乾式目地材の前記端面と接触するように充填されていてもよい。
【0016】
本発明に係る前記目地補修構造において、前記目地は、馬目地であってもよい。
【0017】
本発明は、複数の壁仕上げ材の間に形成され、かつ、目地底と、一対の側壁とを有する断面凹形の目地を補修するための乾式目地材であって、前記目地底に面するように配される底壁部と、前記底壁部から立ち上がり、かつ、前記一対の側壁に面するように配される一対のフランジ部とを有して、第1方向に延びる断面コ字状の長尺体であり、前記長尺体の前記第1方向の少なくとも一端に形成された端部壁を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る前記乾式目地材において、前記端部壁は、前記底壁部に対して90°±10°で交差する平面からなる端面を含んでもよい。
【0019】
本発明に係る前記乾式目地材において、前記端部壁は、前記底壁部と前記一対のフランジ部とを繋いでいてもよい。
【0020】
本発明に係る前記乾式目地材において、前記端部壁は、前記底壁部の前記第1方向の端部に形成されてもよい。
【0021】
本発明に係る前記乾式目地材において、前記長尺体の前記第1方向の両端に、前記端部壁がそれぞれ形成されていてもよい。
【0022】
本発明に係る前記乾式目地材において、前記一対のフランジ部は、粘着層を有していてもよい。
【0023】
本発明に係る前記乾式目地材において、前記端部壁の目地深さ方向の長さは、前記一対のフランジ部の目地深さ方向の長さよりも小さくてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の目地補修方法は、上記の構成を採用することにより、目地補修の良好な仕上がりを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態の目地補修方法で補修される目地及び壁仕上げ材を示す部分斜視図である。
図2図1の目地の断面図である。
図3】本実施形態の目地補修方法の処理手順を示すフローチャートである。
図4】乾式目地材の斜視図である。
図5】乾式目地材が固着された目地を示す正面図である。
図6図5の乾式目地材が固着された縦目地の断面図である。
図7図5の部分斜視図である。
図8】湿式目地材が充填された目地を示す正面図である。
図9図8の縦目地に沿った断面図である。
図10】目地補修構造を示す正面図である。
図11】本発明の他の実施形態の乾式目地材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態が図面に基づき説明される。図面は、発明の内容の理解を助けるために、誇張表現や、実際の構造の寸法比とは異なる表現が含まれることが理解されなければならない。また、各実施形態を通して、同一又は共通する要素については同一の符号が付されており、重複する説明が省略される。さらに、実施形態及び図面に表された具体的な構成は、本発明の内容理解のためのものであって、本発明は、図示されている具体的な構成に限定されるものではない。
【0027】
図1は、本実施形態の目地補修方法で補修される目地2及び壁仕上げ材3を示す部分斜視図である。本実施形態の目地補修方法では、複数の壁仕上げ材3、3の間に形成された断面凹形の目地2が補修される。
【0028】
本実施形態の目地2及び複数の壁仕上げ材3は、建物(例えば、一般的な住宅やビル等)の外壁1に形成されている。なお、目地2及び複数の壁仕上げ材3、3は、外壁1に形成される態様に限定されるわけではなく、例えば、建物内の壁(図示省略)等に形成されていてもよい。
【0029】
[目地]
目地2は、複数の壁仕上げ材3、3の間において、断面凹形に形成されている。本実施形態の目地2は、上下方向に延びる縦目地2Aと、縦目地2Aに繋がって横方向に延びる横目地2Bとを含んでいる。本実施形態の縦目地2A及び横目地2Bは、直線状に延びているが、特に限定されるわけではなく、例えば、一部分が湾曲等していてもよい。
【0030】
本実施形態の縦目地2Aは、垂直方向に延びている。一方、本実施形態の横目地2Bは、水平方向に延びている。なお、縦目地2Aは、例えば、垂直方向に対して傾斜して延びていてもよいし、横目地2Bは、例えば、水平方向に対して傾斜して延びていてもよい。
【0031】
本実施形態の横目地2Bは、横方向(本例では、水平方向)に連続して延びている。一方、縦目地2Aは、その長さ方向の端部(下端2a及び上端2b)が、横目地2Bに繋がって終端している。これにより、本実施形態の目地2は、馬目地として構成されている。なお、目地2は、馬目地に限定されるわけではなく、縦目地2Aが上下方向に連続して延びる芋目地等(図示省略)として構成されてもよい。
【0032】
図2は、図1の目地2(縦目地2A)の断面図である。本実施形態の目地2は、目地底4と、一対の側壁5、5とを有している。目地底4は、壁仕上げ材3を固着する接着剤6の硬化物で形成されている。接着剤6には、例えば、弾性接着剤や、モルタル等が用いられうる。
【0033】
一対の側壁5、5は、目地底4の幅方向の両側から、壁仕上げ材3の表面側に延びている。本実施形態の一対の側壁5、5は、図1に示した壁仕上げ材3の縦小口面9、又は、横小口面10によって形成されている。
【0034】
図2に示されるように、目地2の幅W1及び深さD1は、適宜設定することができる。本実施形態の幅W1及び深さD1は、例えば、3~8mm程度に設定されている。
【0035】
[壁仕上げ材]
本実施形態の壁仕上げ材3は、壁下地7に、接着剤6を介して固着されている。本実施形態の壁仕上げ材3は、タイル3Aとして構成されている。なお、壁仕上げ材3は、例えば、石材や、陶板等で構成されてもよい。図1に示されるように、本実施形態の複数の壁仕上げ材3は、馬目地となるように配置されているが、芋目地等となるように配置されていてもよい。
【0036】
本実施形態の壁仕上げ材3は、正面視において、矩形状に形成されている。壁仕上げ材3は、縦目地2Aの側壁5を形成する一対の縦小口面9、9と、横目地2Bの側壁5を形成する一対の横小口面10、10とを含んでいる。本実施形態において、一対の縦小口面9、9及び一対の横小口面10、10は、平面状に形成されているが、特に限定されるわけではなく、例えば、湾曲等していてもよい。
【0037】
図2に示されるように、壁仕上げ材3の底面8と、縦小口面9とがなす角度(内角)θ2aは、90°±10°に設定されている。なお、底面8や縦小口面9が湾曲する場合には、底面8と縦小口面9とが交わる交線11において、底面8の接平面と、縦小口面9の接平面との角度で、上記角度θ2aが特定されうる。また、本実施形態では、底面8と、横小口面10との角度(図示省略)も、角度θ2aと同一範囲に設定されている。
【0038】
ところで、上記のような目地2は、接着剤6(接着剤6の硬化物)の経年劣化によって、ひび割れ等が生じる場合がある。このようなひび割れ等を補修するには、一般に、湿式目地材(図示省略)が目地2に充填される。
【0039】
湿式目地材(図示省略)は、硬化前において、可塑性を有している。このため、湿式目地材を充填する際に、湿式目地材が目地2からはみ出しやすく、目地補修の仕上がりが悪化しやすいという問題があった。とりわけ、馬目地として構成された縦目地2Aに沿って湿式目地材(図示省略)を充填する際に、図1に示した縦目地2Aと横目地2BとがT字状に交差する交差部12において、湿式目地材がはみ出しやすく、目地補修の仕上がりが悪化しやすい傾向がある。
【0040】
[目地補修方法]
本実施形態の目地補修方法は、以下の手順に基づいて、目地補修の良好な仕上がりを得ることを可能としている。図3は、本実施形態の目地補修方法の処理手順を示すフローチャートである。
【0041】
[乾式目地材]
本実施形態の目地補修方法では、乾式目地材が用いられる。図4は、乾式目地材13の斜視図である。図5は、乾式目地材13が固着された目地2を示す正面図である。図6は、図5の乾式目地材13が固着された縦目地2Aの断面図である。図4では、粘着層16が色付けして示されている。図5及び図6では、乾式目地材13が色付けして示されている。
【0042】
本実施形態において、乾式目地材13の構成(寸法など)が、第1方向(長さ方向)x、第2方向(幅方向)y、及び、第3方向(目地深さ方向)zの直交座標上で特定される。さらに、乾式目地材13の構成(寸法など)は、乾式目地材13に荷重等が負荷されていない状態で特定される。
【0043】
本実施形態の乾式目地材13は、上記の断面凹形の目地2(図1及び図2に示す)を補修するためのものである。図5及び図6に示されるように、この乾式目地材13が目地2(本例では、縦目地2A)内に固着されることで、目地2が補修される。
【0044】
乾式目地材13は、目地2を補修可能(例えば、耐候性を有するもの)であれば、適宜構成されうる。本実施形態の乾式目地材13は、おり、可撓性を有しており、例えば、塩化ビニル樹脂、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、又は、アクリル樹脂等で構成されている。このような乾式目地材13は、例えば、射出成形等によって適宜製造されうる。
【0045】
図4に示されるように、本実施形態の乾式目地材13は、底壁部14と、一対のフランジ部15、15とを有しており、第1方向(長さ方向)xに延びる長尺体13Aとして構成されている。本実施形態の底壁部14及び一対のフランジ部15、15は、一体として形成されている。
【0046】
[底壁部]
本実施形態の底壁部14は、板状(図4では、第1方向xと第2方向yとの平面に広がる板状)に形成されており、第1方向xに延びている。この底壁部14は、図6に示されるように、目地補修において、目地2の目地底4に面するように配置される。図4に示されるように、底壁部14の厚さT3及び幅W3は、適宜設定されうる。本実施形態の厚さT3は、例えば、目地2の深さD1(図2に示す)の10%~60%に設定される。本実施形態の幅W3は、例えば、目地2の幅W1(図2に示す)の90%~110%に設定される。
【0047】
[一対のフランジ部]
一対のフランジ部15、15は、底壁部14から立ち上がっている。本実施形態の一対のフランジ部15、15は、底壁部14の第2方向yの両端から、第3方向zに向かって突出している(立ち上がっている)。
【0048】
本実施形態の一対のフランジ部15、15は、板状(図4において、第1方向xと第3方向zとの平面に広がる板状)に形成されており、第1方向xに延びている。なお、一対のフランジ部15、15は、第1方向xと第3方向zとの平面に対して交差する平面(第3方向zに対して傾斜する平面)に広がる板状に形成されてもよい。
【0049】
一対のフランジ部15、15は、図5及び図6に示されるように、目地補修において、目地2の一対の側壁5、5に面するように配される。図4に示されるように、一対のフランジ部15、15の厚さT4、及び、目地深さ方向(第3方向z)の長さL4は、例えば、補修対象の目地2(図2に示す)の大きさ等に基づいて、適宜設定されうる。本実施形態の厚さT4は、底壁部14の厚さT3と同一範囲に設定される。一方、本実施形態の長さL4は、例えば、目地2の深さD1(図2に示す)の30%~70%に設定される。
【0050】
本実施形態の一対のフランジ部15、15は、粘着層16を有している。本実施形態の粘着層16は、一対のフランジ部15、15において、第2方向yの外面にそれぞれ設けられている。このような粘着層16により、目地補修において、一対のフランジ部15、15を、目地2の一対の側壁5、5(図5及び図6に示す)に容易に固着することが可能となる。なお、粘着層16が設けられる態様に限定されるわけではなく、例えば、目地補修時において、一対のフランジ部15、15に接着剤(図示省略)が塗布されてもよい。
【0051】
本実施形態の粘着層16は、適宜構成することができ、例えば、ゴム系(一例として、ポリイソブチレン・ブチルゴム系、ポリイソプレン系など)、アクリル系、又は、シリコン系の粘着剤等で構成されうる。このような粘着層16は、意図しない場所への接着を防ぐために、例えば、剥離紙20によって被覆されるのが好ましい。
【0052】
本実施形態の乾式目地材13は、長尺体13Aの第1方向xの少なくとも一端に形成された端部壁17を含んでいる。本実施形態では、長尺体13Aの第1方向xの両端に、端部壁17、17がそれぞれ形成されている。
【0053】
本実施形態の端部壁17は、底壁部14から立ち上がる板状(図4において、第2方向yと第3方向zとの平面に広がる板状)に形成されており、第2方向yに延びている。なお、端部壁17は、第2方向yと第3方向zとの平面と交差していてもよい。
【0054】
本実施形態の端部壁17は、底壁部14と一対のフランジ部15、15とを繋いでいる。これにより、乾式目地材13は、底壁部14と、一対のフランジ部15、15と、端部壁17とが一体に形成される。
【0055】
本実施形態の端部壁17は、底壁部14に対して90°±10°で交差する平面からなる端面18を含んでいる。本実施形態において、端面18と底壁部14とがなす角度θ5a(本例では、90°±10°)は、底壁部14の底面14sと、端面18との内角で特定される。なお、底面14sや端面18が湾曲する場合には、底面14sと端面18とが交わる交線19において、底面14sの接平面と、端面18の接平面との角度で特定される。
【0056】
次に、乾式目地材13を用いた本実施形態の目地補修方法が、図3に示した手順に基づいて説明される。
【0057】
[第1工程]
本実施形態の目地補修方法では、先ず、図5及び図6に示されるように、縦目地2A内に、乾式目地材13が固着される(第1工程S1)。
【0058】
本実施形態の第1工程S1では、先ず、図5に示されるように、縦目地2Aに沿った長さ方向C1と、乾式目地材13の第1方向xとを一致させて、縦目地2A内に、乾式目地材13を配置する工程が実施される。これにより、乾式目地材13は、縦目地2Aに沿った長さ方向C1の少なくとも一端側の端面18(本例では、両端側の端面18)が、横小口面10に沿った面を含んでいる。また、本実施形態の工程では、図6に示されるように、乾式目地材13の底壁部14が、縦目地2Aの目地底4に面するように配置される。
【0059】
次に、本実施形態の第1工程S1では、図5に示されるように、乾式目地材13の端面18を、横小口面10の近傍に配置する工程が実施される。ここで「近傍」とは、縦目地2Aの長さ方向C1において、乾式目地材13の端面18が、横小口面10に接近して配置されることを意味しており、端面18の位置と横小口面10の位置とが完全に一致している態様が含まれる。また、縦目地2Aの長さ方向C1において、端面18の位置と横小口面10の位置とが離間している場合には、これらの位置の最短距離が1.5mm以下に設定されるのが好ましい。
【0060】
乾式目地材13の端面18が第1方向xの一端側のみに形成されている場合には、縦目地2Aの長さ方向C1の下端2a側に設けられた横小口面10の近傍に、乾式目地材13の端面18が配置される。なお、本実施形態の乾式目地材13の端面18、18は、第1方向xの両端に形成されているため、縦目地2Aの長さ方向C1の下端2a側及び上端2b側に設けられた横小口面10、10の近傍に、端面18、18がそれぞれ配置される。
【0061】
図7は、図5の部分斜視図である。図5及び図7に示されるように、本実施形態では、乾式目地材13の端面18が、端面18と横目地2Bに沿って隣り合う一対の横小口面10、10と連続するように配置される。これにより、第1工程S1では、縦目地2Aと横目地2Bとの交差部12において、縦目地2Aを塞ぐことができる。
【0062】
次に、図5図7に示されるように、本実施形態の第1工程S1では、乾式目地材13の一対のフランジ部15、15を、縦目地2Aの一対の側壁5、5(壁仕上げ材3の縦小口面9、9)に面するように配置する工程が実施される。この工程では、一対のフランジ部15、15に設けられた粘着層16(図4に示す)によって、縦目地2Aの一対の側壁5、5(縦小口面9、9)に、一対のフランジ部15、15が固着される。これにより、縦目地2A内に、乾式目地材13が固着されうる。
【0063】
本実施形態の第1工程S1では、補修対象の全ての縦目地2Aに、乾式目地材13が固着される。これにより、第1工程S1の一連の処理が終了する。
【0064】
[第2工程]
次に、本実施形態の目地補修方法では、第1工程S1の後、横目地2B内に、可塑性を有する湿式目地材が充填される(第2工程S2)。図8は、湿式目地材21が充填された目地2を示す正面図である。図9は、図8の縦目地2Aに沿った断面図である。
【0065】
図8及び図9に示されるように、本実施形態の第2工程S2では、横目地2Bの目地底4(図9に示す)が覆われるように、湿式目地材21が充填される。湿式目地材21は、目地2を補修することができれば、特に限定されない。本実施形態の湿式目地材21には、変性シリコン系補修材(変性シリコン樹脂を主成分とした補修材)が用いられる。このような湿式目地材21は、耐候性及び硬化後の弾力性に優れるため、目地2を長期間に亘って保護することが可能となる。
【0066】
湿式目地材21の充填には、例えば、従来のコーキングガン(図示省略)が用いられる。このようなコーキングガンは、横目地2Bの長さ方向C2に沿って、湿式目地材21を効率よく充填することが可能となる。図9に示されるように、湿式目地材21の最大厚さT6は、例えば、2~5mm程度に設定される。
【0067】
本実施形態では、第1工程S1において、乾式目地材13の端面18が、横小口面10の近傍に配置されている。このため、第2工程S2は、図8に示されるように、湿式目地材21を、横小口面10及び乾式目地材13の端面18と接触するように充填する工程が含まれるのが好ましい。これにより、湿式目地材21は、横小口面10及び乾式目地材13の端面によってガイドされるため、横目地2B内に安定して充填されうる。
【0068】
本実施形態の第2工程S2では、補修対象の全ての横目地2Bに、湿式目地材21が充填される。第2工程S2では、湿式目地材21が硬化する前に、湿式目地材21の表面が、例えば、ヘラ等を用いて平滑に均されてもよい。
【0069】
[第3工程]
本実施形態の目地補修方法では、第2工程S2の後、湿式目地材21を硬化させる第3工程S3が実施される。これにより、縦目地2A内に固着された乾式目地材13と、横目地2B内に充填された湿式目地材21の硬化物とを含む目地補修構造23が形成される。図10は、目地補修構造23を示す正面図である。図10では、乾式目地材13及び湿式目地材21が色付けして示されている。
【0070】
[目地補修方法、目地補修構造及び乾式目地材の作用]
このように、本実施形態の目地補修方法は、図5図7に示されるように、第1工程S1において、縦目地2A内に乾式目地材13が固着されるため、従来の補修方法のように湿式目地材21を縦目地2A内に充填する必要がない。これにより、本実施形態の目地補修方法では、従来の補修方法とは異なり、縦目地2Aと横目地2Bとが繋がっている交差部12において、湿式目地材21がはみ出すのを防ぐことができるため、縦目地2Aを容易に補修することが可能となる。
【0071】
図6に示されるように、本実施形態の第1工程S1では、乾式目地材13が、一対の側壁5、5に固着されるため、例えば、経年劣化した目地底4(接着剤6の硬化物)に直接固着される場合に比べて、乾式目地材13を縦目地2Aに安定して固着しうる。したがって、本実施形態の目地補修方法(目地補修構造23(図10に示す)及び乾式目地材13)は、目地補修の良好な仕上がりを得ることが可能となる。
【0072】
本実施形態の目地補修方法では、第2工程S2に先立ち、図5及び図7に示されるように、乾式目地材13の縦目地2Aに沿った長さ方向C1(第1方向x)の少なくとも一端側の端面18を、横小口面10の近傍に配置する工程が実施されている。このような端面18は、図8及び図9に示した第2工程S2において、横目地2B内に充填される湿式目地材21が縦目地2A側にはみ出すのを抑制し、かつ、湿式目地材21を横目地の長さ方向C2に沿って案内するガイド部材として構成される。これにより、第2工程S2では、湿式目地材21が横小口面10及び乾式目地材13の端面18と接触するように充填されることで、湿式目地材21がはみ出すのを防ぎつつ、湿式目地材21を横目地2Bに安定して充填することができる。したがって、本実施形態の目地補修方法(目地補修構造23(図10に示す)及び乾式目地材13)は、目地補修の良好な仕上がりを得ることが可能となる。
【0073】
本実施形態の目地補修方法では、図5及び図7に示した第1工程S1において、乾式目地材13の端面18が、端面18と一対の横小口面10、10と連続するように配置されている。このため、本実施形態の目地補修方法では、図8及び図9に示した第2工程S2において、縦目地2A側に湿式目地材21がはみ出すのを確実に抑制しつつ、横目地2Bに沿ってより円滑に案内しうる。さらに、湿式目地材21は、縦目地2A側にはみ出すことなく、横目地2Bに沿って直線状に充填される。したがって、本実施形態の目地補修方法(目地補修構造23(図10に示す)及び乾式目地材13)は、目地補修のより良好な仕上がりを得ることが可能となる。
【0074】
図4に示されるように、本実施形態の乾式目地材13の端面18は、底壁部14に対して90°±10°で交差する平面で形成されているため、図7に示されるように、一対の横小口面10、10と連続した平面を形成することが可能となる。これにより、図8及び図9に示した第2工程S2では、横目地2Bの長さ方向C2に沿って、湿式目地材21を横目地2B内に円滑に案内することができるため、目地補修のより良好な仕上がりを得ることが可能となる。
【0075】
本実施形態の目地補修方法では、図5及び図7に示した第1工程S1において、乾式目地材13の両側の端面18、18が、それぞれ、横小口面10の近傍に配置されている。これにより、図8及び図9に示した第2工程S2では、縦目地2Aの長さ方向C1の両側において、湿式目地材21がはみ出すのを防ぎつつ、湿式目地材21を横目地2Bに安定して充填することができる。したがって、目地補修方法(目地補修構造23(図10に示す)及び乾式目地材13)は、目地補修のより良好な仕上がりを得ることが可能となる。
【0076】
図4及び図6に示されるように、本実施形態では、乾式目地材13が断面コ字状に形成されているため、図6及び図7に示されるように、乾式目地材13が固着された縦目地2Aにおいて、断面凹形が維持される。これにより、壁仕上げ材3と縦目地2Aとの立体感(凹凸感)の維持されるため、目地補修のより良好な仕上がりを得ることが可能となる。
【0077】
図4に示されるように、端部壁17の目地深さ方向の長さL5は、一対のフランジ部15、15の目地深さ方向の長さL4よりも小さく形成されるのが好ましい。これにより、図7に示されるように、縦目地2Aの断面凹形が維持され、壁仕上げ材3と縦目地2Aとの立体感(凹凸感)の低下が抑制されうる。
【0078】
端部壁17の長さL5は、一対のフランジ部15、15の長さL4よりも小さければ、適宜設定されうる。本実施形態の端部壁17の長さL5は、例えば、湿式目地材21の最大厚さT6(図9に示す)と同一範囲に設定される。これにより、端部壁17(端面18)は、湿式目地材21のはみ出しを防ぎつつ、湿式目地材21を横目地2Bに安定して充填することが可能となる。
【0079】
図9及び図10に示されるように、本実施形態の目地補修構造23では、縦目地2Aの長さ方向C1において、下端2a側に設けられた横小口面10の近傍に、乾式目地材13の端面18(端部壁17)が設けられている。このような端面18は、横目地2Bに充填された湿式目地材21の硬化物と面接着されるため、縦目地2A(乾式目地材13)に沿って下端2a側に案内された水(雨水等)に対する止水性を高めることができる。
【0080】
[乾式目地材(第2実施形態)]
図4に示されるように、これまでの実施形態の乾式目地材13には、底壁部14と一対のフランジ部15、15とを繋ぐ端部壁17が設けられたが、このような態様に限定されない。図11は、本発明の他の実施形態の乾式目地材13を示す斜視図である。
【0081】
この実施形態の乾式目地材13は、底壁部14の厚さT3が、図4に示した底壁部14の厚さT3よりも大きく形成されている。そして、この底壁部14の第1方向xの端部14tに、端部壁17が形成されている。このような端部壁17を有する乾式目地材13は、図4に示した板状の端部壁17を有する乾式目地材13に比べて、構造が簡略化されるため、乾式目地材13の製造コストを低下させうる。
【0082】
この実施形態の端部壁17の長さL5(底壁部14の厚さT3)は、図4に示した端部壁17の長さL5と同一範囲に設定されるのが好ましい。これにより、湿式目地材21のはみ出しを防ぐことができるため、目地補修の良好な仕上がりを得ることが可能となる。さらに、湿式目地材21の硬化物と面接着することができ、目地補修構造23の止水性を高めることができる。
【0083】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【符号の説明】
【0084】
1 第1工程
2 第2工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11