(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146946
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】非焼成菓子
(51)【国際特許分類】
A23G 3/54 20060101AFI20231004BHJP
A23L 29/281 20160101ALN20231004BHJP
【FI】
A23G3/54
A23L29/281
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054404
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】390020189
【氏名又は名称】ユーハ味覚糖株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】北中 進介
(72)【発明者】
【氏名】藤井 亜衣
(72)【発明者】
【氏名】山邊 史貴
(72)【発明者】
【氏名】中川 秀美
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 潔
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰正
【テーマコード(参考)】
4B014
4B041
【Fターム(参考)】
4B014GE03
4B014GG07
4B014GG14
4B014GG17
4B014GK03
4B014GK05
4B014GL10
4B014GL11
4B014GP02
4B014GP14
4B014GQ06
4B041LC03
4B041LD01
4B041LE06
4B041LH13
4B041LK09
4B041LK11
4B041LK17
4B041LK18
4B041LP01
4B041LP13
(57)【要約】
【課題】外皮層と中心層との間で焼成菓子のような食感差を有し、この食感差が長期間維持される小粒の非焼成菓子を提供すること。
【解決手段】厚さ0.1~4mmの外皮層及び、前記外皮層と実質的に同一の化学組成からなる厚さ5~30mmのゲル状中心層との2層からなる非焼成菓子であって、テクスチャーアナライザーによる貫入試験において、第1極大点、極小点、第2極大点の3点を有し、前記極小点が前記第1極大点の10~80%の荷重であり、前記第2極大点は前記第1極大点の90%~300%の荷重を示す、焼成菓子のような外皮層とゲル状中心層との食感差を有することを特徴とした非焼成菓子。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ0.1~4mmの外皮層及び、前記外皮層と実質的に同一の化学組成からなる厚さ5~30mmのゲル状中心層との2層からなる非焼成菓子であって、
テクスチャーアナライザーによる貫入試験において、第1極大点、極小点、第2極大点の3点を有し、前記極小点が前記第1極大点の10~80%の荷重であり、前記第2極大点は前記第1極大点の90%~300%の荷重を示す、焼成菓子のような外皮層とゲル状中心層との食感差を有することを特徴とした非焼成菓子。
【請求項2】
前記非焼成菓子が澱粉を含有し、前記非焼成菓子の粘着力が0.2~1.5N、弾力性が0.8以上である請求項1に記載の非焼成菓子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼成菓子のような外と中の食感差のある非焼成菓子に関する。
【背景技術】
【0002】
カヌレ、マカロン、ケーキ、パン等の、焼成によって外皮層と中心層とが形成される二層構造の焼成菓子は、外皮層と中心層との食感差が好まれる要因の一つである。これらの焼成菓子は、焼成によって表面がカラメル化及びメイラード反応とともに硬度が増加し、クラスト(外皮層)が形成される。このクラストの形成によって中心層の水分蒸散が抑えられることで、中心層は軟らかさを維持し、外皮層と中心層の食感差が生まれる。
【0003】
一方、焼成されずに作製される非焼成菓子では、焼成菓子のような外皮層と中心層とを形成させることは困難であった。
例えば、菓子の外側と内側とで食感差のある非焼成菓子としては、グミ等の菓子基材を糖衣したものが提案されている(特許文献1、2)。また、マシュマロのような食感とサクサクした歯ごたえを兼ね備えた砂糖菓子(特許文献3)や、サクッとした食感としっとりとした食感を併せ持つソフトクッキー様の含気グミキャンディ(特許文献4)も提案されている。これらはいずれも糖の結晶を利用したものであり、澱粉の焼成によって形成されるクラストとは食感が全く異なるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6965354号公報
【特許文献2】特開2018-108044号公報
【特許文献3】特許第4093527号公報
【特許文献4】特開2010-148475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
まず、本発明者らは、外皮層と中心層との間の食感差が長期間維持された小粒の焼成菓子の作製を試みた。すると、単重5g以下の小粒サイズになった途端、外皮層と中心層の食感差を生み出すのが非常に困難になることが判明した。その理由としては、(1)表面のクラスト化までにある程度の時間を有するため、小粒であればあるほどクラスト化までに中心層の水分も蒸散してしまい内部も硬くなりやすいこと、(2)外皮層を形成する場合、ある程度の厚みが絶対的に必要になるため、焼成菓子が小粒になればなるほど外皮層に対する中心層の比率が相対的に小さくなり、二つの食感差が感じにくくなること、(3)小粒であればあるほど一個体のもつ絶対的な水分量が少なくなるため、焼成オーブン内での加熱ムラによる最終水分値の個体差が顕著に出やすいこと、等が挙げられる。
【0006】
続いて、本発明者らは、糖液をスターチモールドで乾燥させて表面だけを結晶化させることによって、焼成菓子のような外と中の食感差を生じさせられないかを試みた。具体的には、砂糖と水飴を加熱溶解した生地をスターチモールドに充填し、表面が結晶化するまで乾燥させ、表面を固化させた菓子を作製した。しかし、出来上がった菓子は、表面と内部との間に食感差はあるものの、表面はジャリジャリした砂糖結晶の食感であり、焼成菓子の表面の食感とは程遠いものとなった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、外皮層と中心層との間で焼成菓子のような食感差を有し、この食感差が長期間維持される小粒の非焼成菓子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、澱粉を含有する外皮層及びゲル状の中心層の2層からなる菓子を、各層の厚みを所定の範囲に設定し、かつ所定のテクスチャープロファイルに設定することにより、焼成菓子のような外と中の食感差を特徴とした非焼成菓子を提供できることを見出した。
すなわち、本発明は、好ましい実施形態として、下記(1)、(2)の実施形態の、焼成菓子のような外と中の食感差を特徴とした非焼成菓子を提供する。
(1)厚さ0.1~4mmの外皮層及び、前記外皮層と実質的に同一の化学組成からなる厚さ5~30mmのゲル状中心層との2層からなる非焼成菓子であって、
テクスチャーアナライザーによる貫入試験において、第1極大点、極小点、第2極大点の3点を有し、前記極小点が前記第1極大点の10~80%の荷重であり、前記第2極大点は前記第1極大点の90%~300%の荷重を示す、焼成菓子のような外皮層とゲル状中心層との食感差を有することを特徴とした非焼成菓子。
(2)前記非焼成菓子が澱粉を含有し、前記非焼成菓子の粘着力が0.2~1.5N、弾力性が0.8以上である前記(1)に記載の非焼成菓子。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、焼成することなく、焼成で作り上げたような外皮層の硬さと中心層の軟らかさを長期間維持できる菓子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施例1の非焼成菓子の断面形状の概略図を示す。
【
図2】
図2は、実施例1の非焼成菓子における貫入試験の結果のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0012】
本発明において、焼成とは、原料を高温で焼いて性質を変化させることを言い、焼成菓子とは、焼成によって成形された菓子のことを言う。
本発明において、非焼成菓子とは、焼成による成形でなく、加温して流動性を持たせた生地をスターチモールドに充填して乾燥させて成形された菓子をいう。
【0013】
本発明の非焼成菓子は、厚さ0.1~4mmの外皮層及び、前記外皮層と実質的に同一の化学組成からなる厚さ5~30mmのゲル状中心層との2層からなる。前記ゲル状中心層の周囲を前記外皮層が覆うように構成される。
【0014】
(a)外皮層
本発明の非焼成菓子における外皮層は、硬い食感を有する皮膜の層である。
【0015】
前記外皮層は、ゲル状中心層と見た目や食感が異なるため、例えば、非焼成菓子の断面を目視することや触ったりする等の官能によって確認できる。
前記外皮層は、分厚いほど保形性にすぐれ、薄いほど軟らかい食感となる。
本発明の非焼成菓子を切断し、外皮層の断面から外皮層の厚さを測定することができる。
前記外皮層は、0.1~4mmの範囲の厚さであればよく、0.5~2mmの範囲であることが好ましい。
前記外皮層の厚さや硬さは、外皮層に含有される澱粉や糖質の種類及び含有量によって調整できる。
【0016】
(b)ゲル状中心層
本発明の非焼成菓子におけるゲル状中心層は、前記外皮層と実質的に同一の化学組成からなり、ゲル状で前記外皮層よりも軟らかい食感を有する。
【0017】
本発明において、ゲル状とは、高分子が三次元網目構造を形成し、流動性を失って力学的に固体に近い性質を示す状態をいい、具体的には、澱粉やゲル化剤によって固化した状態をいい、軟らかく弾力のある食感を有する。
【0018】
前記ゲル状中心層の組成は、前記外皮層と実質的に同一の化学組成からなる。つまり、水分を除く全固形分中の成分の種類や含有率は前記外皮層と同一である。
【0019】
水分値については、外皮層が皮膜を形成することによりゲル状中心層の水分が保持されるため、ゲル状中心層の方が外皮層よりも水分値は高くなる。例えば、本発明の非焼成菓子全体の水分値が15重量%の場合、ゲル状中心層の水分値は17~19重量%程度である。
なお、前記ゲル状中心層の水分値は、非焼成菓子から外皮層を取り除いたものを用い、公知の水分値測定方法により測定することができる。
【0020】
前記ゲル状中心層は、外皮層と見た目や食感が異なるため、目視や官能によって確認できる。本発明の非焼成菓子の切断面からゲル状中心層の厚さは測定することができ、5~30mmの範囲の厚さであればよい。
【0021】
本発明の非焼成菓子の形状は、外皮層及びゲル状中心層の厚みが前記範囲内であれば、特に限定はない。例えば、
図1に示すように全体として扁平な形状であってもよいし、また、略円形状、略円錐形状、略立方体状等でもよい。
なお、
図1においては、ゲル状中心層(中心層)の厚みは、上下方向の長さをいう。また、外皮層の厚みは、前記ゲル状中心層表面から外皮層表面までの長さをいう。
【0022】
(c)食感
前記外皮層と前記ゲル状中心層との食感差は、焼成菓子のような食感差となる。
前記の食感差は、テクスチャーアナライザーによる貫入試験において、第1極大点、極小点、第2極大点の3点を有し、前記極小点が前記第1極大点の10~80%の荷重であり、前記第2極大点が前記第1極大点の90%~300%の荷重であることで示される。
【0023】
具体的には、テクスチャーアナライザー(Stable Micro Systems社製「Texture Analyzer TA.XT.plus」)による貫入試験において、(i)第1極大点、(ii)極小点、(iii)第2極大点の3点を有し、下記のテクスチャープロファイルを有する。
【0024】
なお、各点付近に複数のピークが見られる場合、極大点付近では最大の値を、極小点付近では最小の値を採用する。
【0025】
(i)第1極大点
第1極大点は、外側から外皮層にプローブが貫入する際の硬さを示す。測定で最初に確認される極大点をいう。
第1極大点の荷重は、特に限定はないが、小さ過ぎると中心層との食感差が出にくいため、好ましい荷重としては1N以上である。
【0026】
(ii)極小点
極小点は、ゲル状中心層の噛み出しの軟らかさを示す。測定で最初に確認される極小点をいう。
極小点の荷重は、第1極大点の10~80%に調整されていればよい。前記荷重の割合が10%を下回るとゲル状中心層が軟らかすぎ、また、80%を超えると噛んだ時に食感差を感じにくい。
【0027】
(iii)第2極大点
第2極大点は、内側から外皮層にプローブが貫入する際の硬さを示す。測定で前記極小点の後に確認される極大点をいう。
第2極大点は、第1極大点の90%~300%の荷重を示す。
第1極大点の90%~300%の範囲の荷重に調整されることで、本発明の非焼成菓子の外皮層が焼成菓子の外皮層に近い食感になる。前記第2極大点の荷重の割合は、90~200%でもよい。
【0028】
具体的な貫入試験条件は、後述の実施例に記載するが、プローブの太さや形、貫入速度、測定温度は特に限定されず、それらを変えた場合も、第1極大点の荷重に対する極小点及び第2極大点の荷重の比は同様の傾向を示す。
【0029】
ここで、カヌレ、マカロン、クロワッサン、メロンパン、デニッシュ、ワッフル等の外と中の食感差のある各種焼成菓子を測定したところ、いずれも貫入試験において第1極大点、極小点、第2極大点の3点を有し、各値は下記の範囲であった。
・極小点;第1極大点の10~80%の荷重
・第2極大点;第1極大点の90%~300%の荷重
前記いずれの焼成菓子も、外皮層の硬い食感と、中心層の軟らかい食感との食感差を感じられるものであった。しかし、いずれの焼成菓子も、時間の経過とともに表面は軟らかくなり、中心層も澱粉の老化により脆い食感となり、長くて1週間程度しか食感差は維持できなかった。
【0030】
本発明の非焼成菓子は、さらに、前記テクスチャーアナライザーによる反復圧縮試験における粘着力が0.2~1.5N、弾力性が0.8以上に調整されていることが好ましい。
【0031】
前記反復圧縮試験は、前記テクスチャーアナライザーを用い、非焼成菓子を圧縮して元の位置まで戻す動作を2回反復する試験であり、元の位置まで戻る時(引張り時)の最大荷重が「粘着力」であり、2回反復時のくぼみ変位の比が「弾力性」である。
具体的な試験条件は、後述の実施例に記載するが、試験速度、試験温度は後述の実施例に限定されず、プローブも円柱形であれば同様の値を示す。
ここで、カヌレ、パン類等の、しっとりもちもちした食感を有する焼成菓子を各種測定したところ、いずれも粘着力は0.2~1.5N、弾力性は0.8以上であった。
【0032】
(d)組成
本発明の非焼成菓子を構成する成分としては、前記外皮層の皮膜形成のために澱粉を含有する。例えば、本発明の非焼成菓子は、澱粉を4~30重量%含有する。
前記澱粉以外の成分(その他成分ともいう)としては、その他の糖質を40~80重量%含有し、その他任意成分を0~30重量%含有する。
水分値については、本発明の非焼成菓子全体で10~30重量%に調整されていればよい。
【0033】
前記澱粉の種類としては、粘性等の物性の安定化の面で、化学的加工が加えられた澱粉であることが好ましく、酢酸澱粉、酸化又はアセチル化又はヒドロキシプロピル化又はリン酸化された澱粉、アジピン酸又はリン酸によって架橋された澱粉から選ばれる一種以上を使用することがより好ましい。
【0034】
前記その他の糖質としては、澱粉以外の糖質として、ショ糖(砂糖)、ブドウ糖、果糖、マルトース、キシリトール、エリスリトール、トレハロース、マルチトール、パラチノース、還元パラチノース、水飴、還元水飴、還元麦芽糖水飴、グリセリン、ソルビトール等が挙げられる。
【0035】
前記その他任意成分としては、卵、乳製品、食物繊維、酸味料、pH調整剤、果汁、香料、着色料、油脂、乳化剤、甘味料、コーヒー、紅茶、抹茶、カカオ、小麦粉等の穀物粉、酒類、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類、ゲル化剤等を含有してもよい。中でも、糖類やたんぱく質を焦がしたシロップ、カラメル色素、キャラメルソース、コーヒー、麦芽エキス、カカオ、その他焼成品や焙煎品の粉末や液体を適宜使用することで、焼成菓子と同様のカラメル化やメイラード反応による風味を付与することができるため好ましい。
【0036】
本発明の非焼成菓子には、ゲル状中心層を得る観点から、澱粉以外にもゲル化剤を含有させてもよい。
【0037】
前記ゲル化剤としては、ゼラチン、寒天、こんにゃく粉、増粘多糖類(ペクチン、カラギーナン、ジェランガム、アルギン酸、アルギン酸塩類、キサンタンガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、グアガム、カラヤガム、タマリンドシードガム、アラビアガム、サイリウムシードガム等)から選ばれる一種以上を使用すればよい。
前記ゲル化剤の含有量としては、ゲル状中心層を得る観点から、0.1~5重量%が好ましい。
【0038】
(e)製造方法
本発明の非焼成菓子は、前記澱粉等の各成分を水に加熱溶解した液をスターチモールドに充填し、乾燥させて表面を固化させることによって製造することができる。
【0039】
具体的には、澱粉及びその他成分を水に加熱溶解した液を作製し、40~90℃に保ったままスターチモールドに充填する。スターチモールドとは、コーンスターチ等のスターチの粉を平らに容器に敷き詰めた表面に、石膏や樹脂で造形した型を上から押し込んで、できた凹みのことを言う。できた凹みに液を流し、固めることで、石膏や樹脂で造形した型と同形状の非焼成菓子ができあがる。
【0040】
前記スターチモールドに充填した液は、次いでそのまま所望の水分値まで乾燥させる。
前記乾燥の手段としては、例えば、室温~90℃の保温庫、乾燥庫等で乾燥させる。この工程で外皮層が形成されるが、50~80℃の温度で乾燥させることが好ましい。乾燥時間は所望の水分値に達するまでの時間でよく、例えば、20~100時間程度で乾燥を行えばよい。
【0041】
前記乾燥後、前記スターチモールドから取り出して、本発明の非焼成菓子を得る。
得られた非焼成菓子は、光沢を出すために、油脂、ミツロウ、カルナウバロウ、シェラック等で表面をコーティングしてもよい。
【0042】
前記のようにして得られた非焼成菓子は、スターチモールド等での表面乾燥によって、外皮層とゲル状中心層の2層構造を有し、外皮層の硬い食感とゲル状中心層のゲルの軟らかい食感差を長期間維持できる非焼成菓子である。
【0043】
前記のように、乾燥されていることで、焼成菓子に見られるように比較的短期間で前記外皮層と前記ゲル状中心層の食感差がなくなるという現象が生じにくく、前記食感差が長期間維持されると考えられる。
【実施例0044】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。
【0045】
(実施例1)
砂糖、水飴及び澱粉を水に加熱溶解し、そこに、ゼラチン(商品名:#100、新田ゼラチン株式会社製、以下同じ)を同量の60℃の水にあらかじめ溶かしておいたものを添加し、混合した。さらにその他成分を混合し、最終的にBx.76に調製した液を、凹みをつけておいたスターチモールドに流し込んで、60℃で60時間乾燥させた。乾燥後、型から取り出し、表面に植物油0.1重量部を塗布した。得られた非焼成菓子は、単重5g、外皮層の厚さ1mm、ゲル状中心層の厚さ10mm、水分値15重量%であった。最終的な配合を表1に示す。また、非焼成菓子の断面形状の概略を
図1に示す。
このようにして得られた非焼成菓子は、表面は硬く、中はしっとりとした焼成菓子のような外皮層と中心層との食感差を有する菓子となった。
【0046】
(実施例2~4)
表1に示す組成とした以外は、実施例1と同様に非焼成菓子を作製した。
得られた非焼成菓子は、表面は硬く、中はしっとりとした焼成菓子のような外皮層と中心層との食感差を有する菓子となった。
【0047】
(比較例1)
表1に示す組成とした以外は、実施例1と同様に非焼成菓子を作製した。
得られた非焼成菓子は、中心層のゲルの食感が強く、外と中の食感差に乏しいものであった。
【0048】
(比較例2)
表1に示す組成とした以外は、実施例1と同様に非焼成菓子を作製した。
得られた非焼成菓子は、表面は砂糖の結晶によって脆く、中心層はゲルになっておらず、焼成菓子のような食感にはならなかった。
【0049】
<試験例1>貫入試験
実施例1~4及び比較例1~2で得られた各非焼成菓子について、テクスチャーアナライザー(Stable Micro Systems社製「Texture Analyzer TA.XT.plus」)を用い、下記条件で測定した。
[試験条件]
プローブ:直径5mmの球形プローブ
測定速度:1mm/秒
貫入距離:100%
測定温度:20℃
得られた第1極大点、極小点、第2極大点の値を表1に示す。
また、
図2に実施例1の非焼成菓子における貫入試験の結果のグラフを示す。
表1の結果から、実施例1~4で得られた各非焼成菓子は、いずれも極小点が第1極大点の10~80%の範囲内の荷重であり、前記第2極大点は前記第1極大点の90%~300%の範囲内の荷重を示すものであった。
【0050】
<試験例2>反復圧縮試験
実施例1~4及び比較例1~2で得られた各非焼成菓子について、テクスチャーアナライザーを用い、下記条件で測定した。
[試験条件]
プローブ:直径2mmの円柱プローブ
測定速度:1mm/秒
貫入距離:100%
測定温度:20℃
反復回数:2回
得られた粘着力(引張り時の最大荷重)と弾力性(圧縮1回目と2回目とのくぼみ変位の比)との結果を表1に示す。
【0051】
表1の結果から、実施例1~4の菓子は、いずれも外皮層が硬く、中心層のゲルは軟らかい食感差のある菓子であった。また、1ヶ月以上経過しても外皮層が中心層のように軟らかくなることはなく、中心層のゲルが脆くなることもなく、前記食感差が長期間維持されることがわかった。
【0052】