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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146957
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】電流センサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/18 20060101AFI20231004BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20231004BHJP
   G01R 19/32 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
G01R15/18 B
G01R19/00 A
G01R19/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054424
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000134257
【氏名又は名称】株式会社トーキン
(74)【代理人】
【識別番号】100117341
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 拓哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148840
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 健志
(74)【代理人】
【識別番号】100191673
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 久典
(72)【発明者】
【氏名】浦田 純悦
(72)【発明者】
【氏名】阿部 洋
(72)【発明者】
【氏名】吉成 哲也
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 益人
(72)【発明者】
【氏名】森 賢史
【テーマコード(参考)】
2G025
2G035
【Fターム(参考)】
2G025AA07
2G025AA08
2G025AB14
2G025AC01
2G035AA06
2G035AD10
2G035AD23
2G035AD47
(57)【要約】
【課題】 温度変化による影響を受け難く、精度よく電流検出を行うことができる電流センサ装置を提供すること。
【解決手段】 電流センサ装置10において、磁性コア12は、環状で、その内側に一次導体50が通されている。駆動回路14の負荷143は、磁性コア12に巻き回された二次導体151である。検出抵抗16は、二次導体151に流れる電流を電圧に変換し、その一端に検出電圧を生成する。駆動部141は、パルス信号に基づいて二次導体151に流れる電流の方向を切り替える。検出部20は、パルス信号のデューティ比に基づいて一次導体50に流れた電流を検出する。パルス信号生成回路18は、検出抵抗16の一端に生じる検出電圧を監視して、パルス信号のオンとオフとを反転する。検出部20のクロック生成部201は、所定周期のクロック信号を生成する。カウンタ211は、パルス信号のデューティ比を、クロック信号を用いてカウントする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次導体に流れる電流を検知する電流センサ装置であって、
磁性コアと、駆動回路と、検出抵抗と、パルス信号生成回路と、検出部とを備えており、
前記磁性コアは、環状で、その内側に前記一次導体が通されており、
前記駆動回路は、駆動部と負荷とを有しており、
前記負荷は、前記磁性コアに巻き回された二次導体であり、
前記検出抵抗は、前記駆動回路に直列に接続され、前記二次導体に流れる電流を電圧に変換し、その一端に検出電圧を生成するものであり、
前記パルス信号生成回路は、前記検出電圧に応じてパルス信号を生成するものであり、
前記駆動部は、前記パルス信号に基づいて前記二次導体に流れる電流の方向を切り替えるものであり、
前記検出部は、前記パルス信号のデューティ比に基づいて前記一次導体に流れた電流を検出するものであり、
前記パルス信号生成回路は、前記検出抵抗の前記一端に生じる検出電圧を監視して、前記パルス信号のオンとオフとを反転するものであり、
前記検出部は、クロック生成部と、カウンタとを備えており、
前記クロック生成部は、所定周期のクロック信号を生成するものであり、
前記カウンタは、前記パルス信号のデューティ比を、前記クロック信号を用いてカウントする
電流センサ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電流センサ装置であって、
前記駆動部は、四つのスイッチを有するHブリッジ回路である
電流センサ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電流センサ装置であって、
前記パルス信号生成回路は、前記検出電圧と所定閾値電圧とを比較して、前記検出電圧が前記所定閾値電圧を超えるたびに前記パルス信号のオンとオフとを反転するものであり、
前記所定閾値電圧は、前記磁性コアの磁気飽和を考慮して予め定められたものである
電流センサ装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の電流センサ装置であって、
前記駆動回路は、前記負荷として、チョッパ回路を更に備えており、
前記二次導体は、前記チョッパ回路を介して前記駆動部に接続されている
電流センサ装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれかに記載の電流センサ装置であって、
前記電流センサ装置は、温度センサと、温度と補正値とを対応付けて記憶する補正値記憶部とを更に備えており、
前記補正値は、前記電流センサ装置の感度とオフセット出力の温度変化に基づくものであり、
前記検出部は、前記温度センサで検出した検出温度に応じて前記補正値記憶部から当該検出温度に対応する補正値を得て、その補正値を用いて前記一次導体に流れた電流の検出を補正する
電流センサ装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれかに記載の電流センサ装置であって、
前記電流センサ装置は、オーバーカレント検出部を更に備えており、
前記オーバーカレント検出部は、前記パルス信号の周波数を監視し、当該周波数が所定周波数を超えたときにオーバーカレントフラグを発行する
電流センサ装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれかに記載の電流センサ装置であって、
前記電流センサ装置は、自己診断部を更に備えており、
前記自己診断部は、少なくとも部分的に前記磁性コアの内側に通された付加的導体と、テスト時に前記付加的導体に電流を供給する電流供給部とを有している
電流センサ装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれかに記載の電流センサ装置であって、
前記検出抵抗は、予め設けられた複数の抵抗から前記磁性コアに応じて選択されたものである
電流センサ装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれかに記載の電流センサ装置であって、
前記電流センサ装置は、シールドケースを更に備えており、
前記磁性コアは、帯状の磁性体を巻きまわして形成されており、
前記磁性体は、二つの端部を有しており、
前記シールドケースには、開口が設けられており、
前記二次導体の両端は、前記開口からシールドケースの外に引き出されており、かつ前記シールドケースの外で前記駆動回路に接続されており、
前記シールドケースを前記開口に近い第一領域と前記開口から遠い第二領域との二つの領域に等しく分けた場合、前記磁性体の前記端部は、いずれも前記第二領域に位置している
電流センサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流センサ装置に関し、特に、フラックスゲート方式の電流センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、フラックスゲート方式の電流センサの一例を開示している。
【0003】
図17に示されるように、特許文献1に記載の電流センサ90は、可磁化部材901に巻き回された巻線903のセンタータップに生じる電圧と参照電圧とを比較器905によって比較する。比較器905の比較結果は、フリップフロップ907へ供給される。フリップフロップ907は、比較器905の出力に応じて、“1”信号又は“0”信号を出力する。“1”信号及び“0”信号はアンド回路909,911に夫々入力され、クロック信号Ckとの論理積が求められる。アンド回路909は、“1”信号の継続時間に対応する数のクロックパルスを出力し、アンド回路911は、“0”信号の継続時間に対応する数のクロックパルスを出力する。アンド回路909,911の出力は、アップダウンカウンター913に入力され、そのカウント値をアップ又はダウンさせる。アップダウンカウンター913のカウント値は、連続する“1”信号と“0”信号によって規定される周期毎に、“1”信号の継続時間と“0”信号の継続期間との差を表す。この差は、可磁化部材901に巻き回された巻線920に流れる電流の大きさに依存する。したがって、アップダウンカウンター907のカウント値に基づいて巻線920に流れる電流の大きさを知ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4899103号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の電流センサ90は、“1”信号の継続時間に対応するクロックパルスの数と“0”信号の継続期間に対応するクロックパルスの数との差に基づいて巻線920に流れる電流の大きさを求めている。しかしながら、この方法は、温度変化による可磁化部材901の特性変化によって誤差を生じる可能性がある。詳しくは、“1”信号の継続時間及び“0”信号の継続時間は、温度変化による影響を受けて変動する。その一方で、クロック信号Ckは、実質的に温度変化による影響を受けない。その結果、アンド回路909,911の出力は温度変化による影響を受けたものとなり、検出された電流の大きさは温度変化の影響を受けたものとなる。
【0006】
本発明は、温度変化による影響を受け難く、精度よく電流検出を行うことができる電流センサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1の電流センサ装置として、一次導体に流れる電流を検知する電流センサ装置であって、
磁性コアと、駆動回路と、検出抵抗と、パルス信号生成回路と、検出部とを備えており、
前記磁性コアは、環状で、その内側に前記一次導体が通されており、
前記駆動回路は、駆動部と負荷とを有しており、
前記負荷は、前記磁性コアに巻き回された二次導体であり、
前記検出抵抗は、前記駆動回路に直列に接続され、前記二次導体に流れる電流を電圧に変換し、その一端に検出電圧を生成するものであり、
前記パルス信号生成回路は、前記検出電圧に応じてパルス信号を生成するものであり、
前記駆動部は、前記パルス信号に基づいて前記二次導体に流れる電流の方向を切り替えるものであり、
前記検出部は、前記パルス信号のデューティ比に基づいて前記一次導体に流れた電流を検出するものであり、
前記パルス信号生成回路は、前記検出抵抗の前記一端に生じる検出電圧を監視して、前記パルス信号のオンとオフとを反転するものであり、
前記検出部は、クロック生成部と、カウンタとを備えており、
前記クロック生成部は、所定周期のクロック信号を生成するものであり、
前記カウンタは、前記パルス信号のデューティ比を、前記クロック信号を用いてカウントする
電流センサ装置を提供する。
【0008】
また、本発明は第2の電流センサ装置として、第1の電流センサ装置であって、
前記経路切替回路は、四つのスイッチを有するHブリッジ回路である
電流センサ装置を提供する。
【0009】
また、本発明は、第3の電流センサ装置として、第1又は第2の電流センサ装置であって、
前記パルス信号生成回路は、前記検出電圧と所定閾値電圧とを比較して、前記検出電圧が前記所定閾値電圧を超えるたびに前記パルス信号のオンとオフとを反転するものであり、
前記所定閾値電圧は、前記磁性コアの磁気飽和を考慮して予め定められたものである
電流センサ装置を提供する。
【0010】
また、本発明は、第4の電流センサ装置として、第1から第3の電流センサ装置のいずれかであって、
前記駆動回路の前記負荷として、チョッパ回路を更に備えており、
前記二次導体は、前記チョッパ回路を介して前記駆動部に接続されている
電流センサ装置を提供する。
【0011】
また、本発明は、第5の電流センサ装置として、第1から第4までのいずれかの電流センサ装置であって、
前記電流センサ装置は、温度センサと、温度と補正値とを対応付けて記憶する補正値記憶部とを更に備えており、
前記補正値は、前記電流センサ装置の感度とオフセット出力の温度変化に基づくものであり、
前記検出部は、前記温度センサで検出した検出温度に応じて前記補正値記憶部から当該検出温度に対応する補正値を得て、その補正値を用いて前記一次導体に流れた電流の検出を補正する
電流センサ装置を提供する。
【0012】
また、本発明は、第6の電流センサ装置として、第1から第5までのいずれかの電流センサ装置であって、
前記電流センサ装置は、オーバーカレント検出部を更に備えており、
前記オーバーカレント検出部は、前記パルス信号の周波数を監視し、当該周波数が所定周波数を超えたときにオーバーカレントフラグを発行する
電流センサ装置を提供する。
【0013】
また、本発明は、第7の電流センサ装置として、第1から第6までのいずれかの電流センサ装置であって、
前記電流センサ装置は、自己診断部を更に備えており、
前記自己診断部は、少なくとも部分的に前記磁性コアの内側に通された付加的導体と 、テスト時に前記付加的導体に電流を供給する電流供給部とを有している
電流センサ装置を提供する。
【0014】
また、本発明は、第8の電流センサ装置として、第1から第7までのいずれかの電流センサ装置であって、
前記検出抵抗は、予め設けられた複数の抵抗から前記磁性コアに応じて選択されたものである
電流センサ装置を提供する。
【0015】
また、本発明は、第9の電流センサ装置として、第1から第8までのいずれかの電流センサ装置であって、
前記電流センサ装置は、シールドケースを更に備えており、
前記磁性コアは、帯状の磁性体を巻きまわして形成されており、
前記磁性体は、二つの端部を有しており、
前記シールドケースには、開口が設けられており、
前記二次導体の両端は、前記開口からシールドケースの外に引き出されており、かつ前記シールドケースの外で前記駆動回路に接続されており、
前記シールドケースを前記開口に近い第一領域と前記開口から遠い第二領域との二つの領域に等しく分けた場合、前記磁性体の前記端部は、いずれも前記第二領域に位置している
電流センサ装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電流センサ装置は、パルス信号のデューティ比に基づいて一次導体に流れた電流を検出する。温度変化によりパルス信号の周期が変動しても、そのデューティ比は温度変化の影響をほとんど受けない。したがって、パルス信号のデューティ比は、一次導体に流れた電流を精度よく反映する。よって、本発明の電流センサ装置は、温度変化による影響を受け難く、精度よく電流検出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態による電流センサ装置を示す回路ブロック部である。
図2図1の電流センサ装置の主要部を示す回路ブロック図である。説明を簡略化するため、チョッパ回路は、取り除かれている。
図3図2の主要部に含まれる磁性コアのB-H曲線を示すグラフであって、一次導体に電流が流れていないときのB-H曲線を示すグラフである。
図4図2の主要部に含まれる磁性コアのB-H曲線を示すグラフであって、一次導体に任意の電流が流れているときのB-H曲線を示すグラフである。
図5図2の主要部に含まれるパルス信号生成回路と、二次導体を流れる電流の第1方向を示す回路ブロック図である。
図6図5のパルス信号生成回路において、二次導体から見た磁性コアのB-H曲線と、二次導体に流れる電流によって生じる磁束密度Bと磁界Hの変化とを示すグラフである。
図7図2の主要部に含まれるパルス信号生成回路と、二次導体を流れる電流の第2方向を示す回路ブロック図である。
図8図7のパルス信号生成回路において、二次導体から見た磁性コアのB-H曲線と、二次導体に流れる電流によって生じる磁束密度Bと磁界Hの変化とを示すグラフである。
図9図5及び図7に示されるパルス信号生成回路における各部の電圧の時間変化を示すタイムチャートである。
図10】(a)、(b)、(c)及び(d)は、図1の電流センサ装置に含まれるチョッパ回路の状態とHブリッジ回路の状態との組み合わせにより決まる四つの状態を、各状態における電流の流れと、二次導体から見た磁性コアのB-H特性とともに夫々示している。
図11図1の電流センサ装置に含まれる遅延器へ供給されるパルス信号VHの時間変化と、チョッパ回路に供給される1/n分周器の出力電圧VCHの時間変化とを示すタイムチャートである。カッコつきアルファベットは、図10(a)、図10(b)、図10(c)及び図10(d)に対応している。
図12図1の電流センサ装置に含まれる検出部における温度補正の効果を示すグラフである。
図13図1の電流センサ装置に含まれる磁性コアの過入力特性の測定方法を説明するための図である。
図14図1の電流センサ装置に含まれる磁性コアを形成する帯状の磁性体の一対の端部と、磁性コアを収容するシールドケースの開口との第1位置関係を示す概略図である。
図15図1の電流センサ装置に含まれる磁性コアを形成する帯状の磁性体の一対の端部と、磁性コアを収容するシールドケースの開口との第2位置関係を示す概略図である。
図16図1の電流センサ装置に含まれる磁性コアに許容される過入力特性を説明するためのグラフである。
図17】特許文献1に開示された電流センサを示す回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1を参照すると、本発明の一実施の形態による電流センサ装置10は、磁性コア12と、駆動回路14と、検出抵抗16と、パルス信号生成回路18と、検出部20とを備えている。
【0019】
図2を参照すると、磁性コア12は、環状である。磁性コア12は、高い透磁率を有していることが好ましい。磁性コア12の内側には、一次導体50が通されている。本実施の形態による電流センサ装置10は、この一次導体50に流れる電流を検知する電流センサ装置である。
【0020】
図1に示されるように、駆動回路14は、駆動部141と負荷143とを有している。本実施の形態において、駆動部141は、四つのスイッチ145を有するHブリッジ回路141である。また、本実施の形態において負荷143は、二次導体151とチョッパ回路153とを有する。ただし、本発明において、チョッパ回路153は必須ではない。したがって、図2では、チョッパ回路153が省略された駆動回路14を示している。以下の説明では、チョッパ回路153は省略されているものとする。チョッパ回路153については、図10及び図11を参照して後述する。
【0021】
図2に示されるように、二次導体151は、磁性コア12に巻き回され、Hブリッジ回路141に接続されている。Hブリッジ回路141は、所定の電源に接続されている。Hブリッジ回路141は、二次導体151に流れる電流の向きを、第1方向と第2方向との間で切り替える回路である。第1方向と第2方向とは、互いに逆向きの方向である。
【0022】
図1又は図2から理解されるように、本実施の形態における駆動回路14は、単一の二次導体151を用いて磁性コア12を励磁する。それゆえ、一対の二次導体を用いる公知の駆動回路に比べて、製造ばらつきが少なく、所望の特性を実現することが容易である。
【0023】
図2に示されるように、検出抵抗16は、駆動部141に直列に接続されている。検出抵抗16は、単一の抵抗器で構成されてもよい。しかしながら、複数の抵抗器を用意し、その抵抗器の中から磁性コア12の特性に応じて選択するように構成されることが好ましい。検出抵抗16は、二次導体151に流れる電流を電圧に変換し、その一端に検出電圧VRsを生成する。詳しくは、検出抵抗16は、検出抵抗16とHブリッジ回路141との接続点に検出電圧VRsを生成する。
【0024】
図2に示されるように、パルス信号生成回路18は、比較器181と、Tフリップフロップ183と、インバーター185とを有している。比較器181には、所定閾値電圧Vth(図示せず)が入力されている。所定閾値電圧Vthは、磁性コア12の磁気飽和を考慮して予め設定される。本実施の形態において、Tフリップフロップ183を用いているが、他の手段を用いてもよい。
【0025】
図2から理解されるように、比較器181は、検出抵抗16の一端に生成された検出電圧VRsと所定閾値電圧Vthとを比較する。比較器181は、比較結果に応じて、その出力電圧VCを変化させる。詳しくは、検出電圧VRsが所定閾値電圧Vthを超えるとオン、下回るとオフとなる出力電圧VCを出力する。
【0026】
Tフリップフロップ183は、比較器181からの出力電圧VCの立ち上がり(又は立ち下がり)エッジを検出する毎に、その出力であるパルス信号VHのオンとオフとを反転させる。パルス信号VHは、そのままパルス信号VH1として駆動部141へ送られる。また、パルス信号VHは、インバーター185において反転され、パルス信号VH2として駆動部141へ送られる。このように、パルス信号生成回路18は、検出抵抗16の一端に生じる検出電圧VRsを監視し、検出電圧VRsに応じてパルス信号VH(VH1,VH2)を生成する。換言すると、パルス信号生成回路18は、検出電圧VRsと所定閾値電圧Vthとの比較結果に基づいて、検出電圧VRsが所定閾値電圧Vthを超えるたびにパルス信号VHのオンとオフとを反転する。
【0027】
図2から理解されるように、Tフリップフロップ183からのパルス信号VH1は、駆動部141を構成するスイッチ145のうちスイッチSW2とスイッチSW4とを制御する。詳しくは、パルス信号VH1は、スイッチSW2及びスイッチSW4の一方をオン(又はオフ)し、他方をオフ(又はオン)するよう制御する。また、インバーター185からのパルス信号VH2は、駆動部141を構成するスイッチ145のうちスイッチSW1とスイッチSW3とを制御する。詳しくは、パルス信号VH2は、スイッチSW1及びスイッチSW3の一方をオン(又はオフ)に、他方をオフにするよう制御する。なお、パルス信号VH2は、パルス信号VH1を反転したものなので、スイッチSW1は、スイッチSW4と同時にオンまたはオフし、スイッチSW3は、スイッチSW2と同時にオンまたはオフする。駆動部141は、スイッチSW1、SW2、SW3及びSW4のオン、オフに応じて、二次導体151に流れる電流の向きを制御する。このように、駆動回路14の駆動部141は、パルス信号生成回路18からのパルス信号VH1,VH2に基づいて、二次導体151に流れる電流の向きを切り替える。
【0028】
ここで、理想的な電流センサ装置10において、一次導体50に電流が流れていない状態を想定する。この場合、駆動回路14とパルス信号生成回路18とは、パルス信号VHのデューティ比が50%となるように動作する。換言すると、理想的な電流センサ装置10において、駆動回路14とパルス信号生成回路18とは、一次導体50に電流が流れていないとき、パルス信号VHのオフ期間とオン期間とが互いに等しくなるように動作する。
【0029】
図1を再度参照すると、検出部20は、クロック生成部201とカウンタ211とを備えている。クロック生成部201は、パルス信号VHの周期に対して十分に短い所定周期のクロック信号を生成する。換言すると、クロック生成部201は、パルス信号VHの周波数に対して十分に高い所定周波数のクロック信号を生成する。
【0030】
カウンタ211は、クロック信号を用いて、パルス信号VHのデューティ比をカウントする。詳しくは、カウンタ211は、パルス信号VHの各周期におけるオフ期間とオン期間とに夫々対応するクロックパルスをカウントする。
【0031】
図1に示されるように、検出部20は、更に、デューティ変換部213と、温度補正回路22と、温度センサ24と、フィルタ回路215と、比較器217とを備えている。ただし、本発明において、温度補正回路22及び温度センサ24は必須ではない。
【0032】
図1から理解されるように、デューティ変換部213は、カウンタ211のカウント値に基づいて、パルス信号VHのデューティ比を表すデューティ比信号を生成する。このデューティ比信号は、一次導体50に流れる電流(被検出電流)に依存して変化するものである。
【0033】
デューティ変換部213からのデューティ比信号は、温度補正回路22を介してフィルタ回路215に入力される。温度補正回路22及び温度センサ24については、後述する。フィルタ回路215は、デューティ比信号を積分する。積分されたデューティ比信号は、比較器217において、所定の閾値(アラート電流)と比較される。比較器217は、比較結果に応じて、一次導体50に電流が流れたか否かを示す検出信号を出力する。比較器217は、所定の閾値として、直流電流用、交流電流用及び過電流検出用の閾値に対応することができる。比較器217は、直流電流用、交流電流用及び過電流検出用の閾値に対応している場合、検出信号として、直流電流用、交流電流用及び過電流検出用の検出信号を、夫々対応する出力端子に出力する。
【0034】
以上のように、検出部20は、パルス信号VHのデューティ比に基づいて一次導体50に流れた電流を検出する。デューティ比は、パルス信号VHの周期が温度変化の影響を受けた場合であっても、影響を受け難い。したがって、パルス信号のオン期間に対応するクロックパルスの数とオフ期間に対応するクロックパルスの数との差に基づいて電流検出を行う特許文献1の電流センサに比べ、高い精度で電流検出を行うことができる。
【0035】
以下、駆動回路14とパルス信号生成回路18の動作について、詳細に説明する。なお、図5において、駆動部141のスイッチ145は、一対のCMOSを用いて構成されている。
【0036】
ここで、磁性コア12は、図3に示されるようなB-H曲線で表される特性を有しているものと仮定する。この場合、磁性コア12の内側を通る一次導体50に電流が流れると、磁性コア12のB-H曲線は図4に示されるように強磁界側へシフトする。この影響を受けて、パルス信号生成回路18が生成するパルス信号VHのデューティ比は、以下のように変化する。なお、一次導体50に電流が流れていないとき、パルス信号VHのデューティ比は50%であるとする。
【0037】
図5に示されるように、スイッチQP1及びスイッチQN1がオンし、かつスイッチQP2及びスイッチQN2がオフしているとき、二次導体151には第1方向の電流I1が流れる。このとき、二次導体151から見た磁性コア12のB-H特性は、図6に示されるようになる。
【0038】
図7に示されるように、スイッチQP1及びスイッチQN1がオフし、かつスイッチQP2及びスイッチQN2がオンしているとき、二次導体151には第2方向の電流I2が流れる。このとき、二次導体151から見た磁性コア12のB-H特性は、図8に示されるようになる。
【0039】
図9から理解されるように、二次導体151に電流が流れると、その電流の大きさに応じて検出電圧VRsが上昇する。検出電圧VRsが所定閾値電圧Vthを超えると、比較器181の出力電圧VCがオフからオンへ変化する。比較器181の出力電圧VCがオフからオンへ変化すると、その立ち上がりに応じて、Tフリップフロップ183の出力電圧VHは、オフからオン又はオンからオフへ変化する。Tフリップフロップ183の出力電圧VHがオフからオン又はオンからオフへ変化すると、二次導体151に流れる電流の向きは第1方向(図5)から第2方向(図7)へ又は第2方向(図7)から第1方向(図5)へ変化する。このとき、検出電圧VRsは瞬時に低下する。検出電圧VRsが所定閾値電圧Vth以下になると比較器181の出力電圧VCはオンからオフへ変化する。その後検出電圧VRsは、再び上昇する。以降、駆動回路14とパルス信号生成回路18は、上述した動作を繰り返す。
【0040】
以上のようにして、パルス信号生成回路18は、第1方向に電流が流れる時間に対応する第1期間T1と、第2方向に電流が流れる時間に対応する第2期間T2とを1周期とするパルス信号VHを生成する。そして、パルス信号VHのデューティ比=T1/(T1+T2)は、一次導体50に流れる電流の大きさに比例する。本実施の形態の電流センサ装置10は、このデューティ比に基づいて一次導体50に流れる電流を検出する。
【0041】
本実施の形態のパルス信号生成回路18は、所定閾値電圧Vthを用いて、検出電圧VRsが飽和する前にパルス信号VHのオンとオフとを切り替える。これにより、パルス信号VHの周期を短縮し、電流センサ装置10の電流検出速度を高めることができる。
【0042】
上記説明では、一次導体50に電流が流れていないとき、パルス信号VHのデューティ比は理想的には50%になる。しかしながら、SW1、SW2、SW3、SW4のオン抵抗ばらつきやパルス信号生成回路18のオフセットの影響で、パルス信号VHのデューティ比が50%ではないことがある。チョッパ回路153(図1参照)は、駆動部141の動作に加えて、二次導体151に流れる電流の向きを反転させる。オフセットは、チョッパ回路153によって二次導体151に流れる電流の向きを反転させても、その極性は変わらない。したがって、チョッパ回路153を用いることにより、パルス信号VHのディーティ比が50%でないことにより生じる影響を相殺することが可能となる。なお、オフセットとは、その回路等から出力される出力が理想的には0であるべきときに出力される0以外の出力である。以下、チョッパ回路153の動作について説明する。
【0043】
図1に示されるように、二次導体151、チョッパ回路153を介して駆動部141に接続されている。チョッパ回路153は、例えば、複数のスイッチ(図示せず)で構成される。
【0044】
図1に示されるように、電流センサ装置10は、更に、遅延器191と、1/n分周器193とを備えている。遅延器191には、Tフリップフロップ183からのパルス信号VH1又はインバーター185からのパルス信号VH2が入力される。
【0045】
図1から理解されるように、遅延器191は、電流の反転が適切なタイミングで行われるように、パルス信号VHを遅延させる。1/n分周器193は、遅延器191からの遅延パルス信号VHdを1/n分周する。例えば、1/n分周器193は、遅延パルス信号VHdを1/4分周する。換言すると、1/n分周器193におけるnは、例えば、2又は4である。図10は、n=4の場合、即ち、遅延パルス信号VHdを1/4分周した場合の、チョッパ回路153の動作を示すものである。
【0046】
図10から理解されるように、チョッパ回路153は、図10(a)及び図10(b)に示される経路1と、図10(c)及び図10(d)に示される経路2とを、交互に切り替える。一方、Hブリッジ回路141は、チョッパ回路153が経路1を形成している期間中及び経路2を形成している期間中の夫々において、Hブリッジ回路141を流れる電流の向きを、図10(b)又は図10(d)に示される第1方向と、図10(a)又は図10(c)に示される第2方向との間で切り替える。
【0047】
図11に示されるように、1/n分周器193(図1参照)の出力信号VCHは、オンとオフとを繰り返す。出力信号VCHがオフの期間中、チョッパ回路153において経路1(図10(a)又は図10(b)参照)が選択される。この間、Hブリッジ回路141へ供給されるパルス信号VHは、オン、オフ、オン、オフと変化する。また、1/n分周器193の出力信号VCHがオンの期間中、チョッパ回路153において経路2(図10(c)又は図10(d)参照)が選択される。この間、Hブリッジ回路141へ供給されるパルス信号VHは、オン、オフ、オン、オフと変化する。
【0048】
図11から理解されるように、チョッパ回路153において経路が変更された直後のパルス信号VHは、過渡現象によりパルスの幅が極端に狭い。このパルスは、一次導体50に流れる電流を反映したものとならない。したがって、チョッパ回路153において経路が変更された後、パルス信号VHの最初の周期は、検出部20において無視される。
【0049】
図10及び図11から理解されるように、経路1のときのパルス信号VHのオン期間T1及びオフ期間T2は、二次導体151に第2方向及び第1方向の電流が夫々流れた期間に対応する。一方、経路2のときのパルス信号VHのオン期間T1’及びオフ期間T2’は、二次導体151に第1方向及び第2方向の電流が夫々流れた期間に対応する。このように、オン期間T1とオン期間T1’とでは、二次導体151に流れる電流の向きが逆であり、また、オフ期間T2とオフ期間T2’とでは、二次導体151に流れる電流の向きが逆である。したがって、オン期間T1及びオフ期間T2のデューティ比と、オン期間T1’及びオフ期間T2’のデューティ比との差分を求めることにより、SW1、SW2、SW3、SW4間のオン抵抗ばらつきやパルス信号生成回路18のオフセットの影響を相殺することができる。こうして、検出部20は、パルス信号VHのデューティ比に基づいて、一次導体50に流れた電流を精度よく検出することができる。
【0050】
再び図1を参照して、温度補正回路22及び温度センサ24について説明する。温度センサ24は、電流センサ装置10の温度、好ましくは、磁性コア12周辺の温度を検出し、温度検出信号を温度補正回路22へ出力する。温度補正回路22は、補正値記憶部(図示せず)を備えている。補正値記憶部は、温度と補正値とを対応付けて記憶している。補正値は、電流センサ装置10の感度とオフセット出力の温度変化に基づくものである。補正値は、予め電流センサの温度特性等を測定して取得したものである。
【0051】
温度補正回路22は、温度センサ24からの温度検出信号に基づいて、補正値記憶部から検出温度に対応する補正値を読み出し、その補正値を用いてデューティ変換部213が求めたデューティ比を補正する。これにより、電流センサ装置10の使用時の温度に応じて、ディーティ比の適切な補正が行わる。その結果、後段で行われる電流の検出判断の精度が向上する。こうして、検出部20は、温度センサ24で検出した検出温度に応じて補正値記憶部から検出温度に対応する補正値を得て、その補正値を用いて一次導体50に流れた電流の検出を補正する。
【0052】
図12から理解されるように、一次導体50に流れる一定の電流(4.5mA)を、電流センサ装置10にて検出する場合、温度補正を行わないと、検出された電流値は、温度に依存して変化する。一方、温度補正を行った場合、電流センサ装置10により検出された電流値は、温度に依存することなくほぼ一定の値となる。したがって、本実施の形態の電流センサ装置10は、デューティ比を用いることで温度変化による影響を抑えたことに加え、積極的に温度補正を行うようにしたことで、広い温度範囲で高精度の電流検出を行うことができる。
【0053】
図1に示されるように、本実施の形態の電流センサ装置10は更に自己診断部28を備えている。自己診断部28は、付加的導体281と、自己テスト駆動回路(電流供給部)283とを有している。付加的導体281は、少なくとも部分的に磁性コア12の内側に通されている。本実施の形態において、付加的導体281は、磁性コア12に巻き回されたコイルである。自己テスト駆動回路283は、テスト時に付加的導体281に電流を供給する。
【0054】
図1から理解されるように、テストを行う場合、テスト実施を命じる指示を自己テスト駆動回路283に外部から与えると、自己テスト駆動回路283は、付加的導体281に直流又は交流の所定のテスト電流を供給する。そして、電流センサ装置10の出力端子を監視することで、テスト電流を適切に検出しているか否かを知ることができる。テスト電流として、電流センサ装置10で検出可能な直流電流、検出出可能な交流電流及び過電流を用いることができる。
【0055】
図1に示されるように、本実施の形態の電流センサ装置10は更にオーバーカレント検出部30を備えている。オーバーカレント検出部30は、過電流比較器301と、周波数比較器303と、OR(論理和)回路305とを備えている。
【0056】
過電流比較器301は、温度補正回路22からのデューティ比信号が示す電流値と、予め設定された過電流閾値とを比較する。過電流比較器301は、デューティ比信号が示す電流値が過電流閾値を超えると、過電流検出信号を出力する。
【0057】
周波数比較器303には、予め設定された周波数閾値Fthが入力されている。周波数比較器303は、カウンタ211のカウント値からパルス信号VHの周波数を求め、周波数閾値Fthと比較する。パルス信号VHの周波数が周波数Fthを超えると、周波数比較器303は、過電流検出信号を出力する。
【0058】
過電流比較器301からの過電流検出信号及び周波数比較器303からの過電流検出信号は、OR回路305へ入力され、OR回路305は、過電流を示すオーバーカレントフラグとしていずれかの過電流検出信号を外部へ出力する。
【0059】
本実施の形態の電流センサ装置10において、オーバーカレント検出部30が、過電流比較器301に加え、周波数比較器303を備える理由は、次のとおりである。
【0060】
本実施の形態による電流センサ装置10は、フラックスゲート方式を採用している。フラックスゲート方式の電流センサ装置10では、想定される被検出電流を大きく上回る電流が一次導体50に流れると、パルス信号VHの周波数が著しく上昇する。その結果、電流センサ装置10は、パルス信号VHのデューティ比に基づいて一次導体50に流れる電流を検出できなくなる。オーバーカレント検出部30は、パルス信号VHのデューティ比に基づく電流検出が行えないほどの大きな電流が一次導体50に流れたことを検出する。このように、オーバーカレント検出部30は、パルス信号の周波数を監視し、その周波数が所定周波数を超えたときオーバーカレントフラグを発行する。
【0061】
図13から図15を参照すると、磁性コア12は、シールドケース32に収容されている。このように、本実施の形態において、電流センサ装置10は、シールドケース32を更に備えている。本実施の形態において、二次導体151(図1参照)は、磁性コア12に巻き回されており、磁性コア12とともにシールドケース32に収容されている。磁性コア12、二次導体151及びシールドケース32は、センサ部40を構成する。
【0062】
図13から図15に示されるように、シールドケース32には開口321が設けられている。磁性コア12に巻き回された二次導体151の両端を外部へ引き出すためである。二次導体151の両端は、シールドケース32の開口321からシールドケース32の外に引き出され、シールドケース32の外において駆動回路14に接続される。本実施の形態による電流センサ装置10では、付加的導体281の両端も、シールドケース32の開口321からシールドケース32の外に引き出される。そして、付加的導体281の両端は、シールドケース32の外において自己テスト駆動回路283に接続される。
【0063】
図14及び図15から理解されるように、本実施の形態において、磁性コア12は、帯状の磁性体を巻き回して形成されている。それゆえ、磁性コア12は、一対の端部121を有している。
【0064】
図14及び図15に示されるように、磁性コア12の二つの端部121は、互いに重ならないように、近接配置されている。図14において、磁性コア12の端部121は、シールドケース32の開口321の向きに対して逆の向きに向けられている。一方、図15において、磁性コア12の端部121は、シールドケース32の向きと同じ向きに向けられている。このように、磁性コア12の端部121とシールドケース32との間の位置関係には、様々な場合がありえる。そして、発明者の実験によれば、磁性コア12の端部121とシールドケース32との間の位置関係が、センサ部40の特性に影響を与えることが分かった。
【0065】
図1の電流センサ装置10において、センサ部40は、所定の過入力特性を有している必要がある。センサ部40と一次導体50を図13のように配置し、一次導体50に所定の過電流(例えば30A100ms)を瞬間的に流した場合、電流センサ装置10のデューティ比は図16の応答を示す。図16の基準中心線(図16の細い線)はデューティ比が50%を示す。デューティ比は電流が流れている瞬間で大きく変化するが、電流を切っている状態でも50%から僅かにシフトすることがある。このシフト量を過入力特性と呼び、少ないほど誤差が小さいことを示す。過入力特性は例えば、図16に示されるように電流を切ってから2秒後のデューティ比が電流換算で0.6mA以下である必要がある。このシフト量を過入力特性と呼び、少ないほど誤差が小さいことを示す。
【0066】
発明者の実験によれば、過入力特性に関して、図14の構成を持つセンサ部40の不良品率は低い。これに対して、図15の構成を持つセンサ部40は、過入力特性に関する不良率は高い。したがって、磁性コア12は、その端部121がシールドケース32の開口321の反対側を向くように、シールドケース32に収容されることが好ましい。ただし、磁性コア12の端部121の向きとシールドケース32の開口321の向きとは真逆である必要はない。詳しくは、シールドケース32を開口321に近い第一領域と開口321から遠い第二領域との二つの領域に等しく分けた場合、磁性コア12の端部121は、ともに第二領域に位置していればよい。好ましくは、端部121は、開口321と真逆の方向を中心とする45度の範囲内に位置していればよい。
【0067】
以上、本発明について、実施の形態を掲げて説明してきたが、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0068】
10 電流センサ装置
12 磁性コア
121 端部
14 駆動回路
141 駆動部(Hブリッジ回路)
143 負荷
145 スイッチ
151 二次導体
153 チョッパ回路
16 検出抵抗
18 パルス信号生成回路
181 比較器
183 Tフリップフロップ
185,187 インバーター
191 遅延器
193 1/n分周器
20 検出部
201 クロック生成部
211 カウンタ
213 デューティ変換部
215 フィルタ回路
217 比較器
22 温度補正回路
24 温度センサ
28 自己診断部
281 付加的導体
283 自己テスト駆動回路
30 オーバーカレント検出部
301 過電流比較器
303 周波数比較器
305 OR回路(論理和回路)
32 シールドケース
321 開口
40 センサ部
50 一次導体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17