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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146971
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】車両用吊手
(51)【国際特許分類】
   B60N 3/02 20060101AFI20231004BHJP
   B61D 37/00 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
B60N3/02 B
B61D37/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054450
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 エミリ
【テーマコード(参考)】
3B088
【Fターム(参考)】
3B088EA01
3B088EB02
(57)【要約】
【課題】車両の車室に吊り下げられる車両用吊手において、乗客が両手でも片手でも手掛を握りやすくすること。
【解決手段】車室7に設けられた吊手棒20に吊り下げられる吊手帯40と、吊手帯40の吊手棒20と反対側に位置する端部に取り付けられる手掛30と、を備える車両用吊手50において、手掛30は、第1取手部32aと、第2取手部33aと、第1取手部32aと第2取手部33aとの間であって、第1取手部32a及び前記第2取手部33aより上方に位置し、吊手帯40に支持される主軸31と、を有する。主軸31から第1取手部32aまでの第1距離L1と、主軸31から第2取手部33aまでの第2距離L2とは異なっている。吊手50を吊手棒20に吊り下げた場合、手掛30が主軸31を支点として吊手棒20に沿って揺動する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室に設けられた吊手棒に吊り下げられる吊手帯と、前記吊手帯の前記吊手棒と反対側に位置する端部に取り付けられる手掛と、を備える車両用吊手において、
前記手掛は、
第1取手部と、
第2取手部と、
前記第1取手部と前記第2取手部との間であって、前記第1取手部及び前記第2取手部より上方に位置し、前記吊手帯に支持される取付部と、
を有し、
前記取付部から前記第1取手部までの第1距離と、前記取付部から前記第2取手部までの第2距離とが異なり、
前記吊手棒に吊り下げられた場合に、前記手掛が前記取付部を支点として前記吊手棒に沿って揺動可能である
ことを特徴とする車両用吊手。
【請求項2】
請求項1に記載する車両用吊手において、
前記吊手棒に吊り下げられた場合に、前記取付部が前記吊手棒に対して直交するように配置される、
ことを特徴とする車両用吊手。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する車両用吊手において、
前記手掛が前記吊手帯を介して前記吊手棒に吊り下げられた場合に、前記第1取手部と前記第2取手部が鉛直方向からずれた位置に配置される
ことを特徴とする車両用吊手。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1つに記載する車両用吊手において、
前記手掛は、
前記第1取手部を含む第1フレーム部と、
前記第2取手部を含む第2フレーム部と、
を有し、
前記手掛が前記吊手帯を介して前記吊手棒に吊り下げられた場合に、前記第1取手部と前記第2取手部が鉛直方向からずれた位置に配置されるように、前記第1フレーム部と前記第2フレーム部とが傾斜して接続している
ことを特徴とする車両用吊手。
【請求項5】
請求項1から請求項3の何れか1つに記載する車両用吊手において、
前記手掛は、
前記取付部の両端部に接続される一対の中間フレーム部と、
前記第1取手部を含み、前記一対の中間フレームに接続する第1フレーム部と、
前記第2取手部を含み、前記一対の中間フレームに接続する第2フレーム部と、
を有し、
前記手掛が前記吊手帯を介して前記吊手棒に吊り下げられた場合に、前記一対の中間フレーム部が水平状態になるように、前記第1フレーム部と前記第2フレーム部とが前記一対の中間フレーム部に対して傾斜している
ことを特徴とする車両用吊手。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1つに記載する車両用吊手において、
前記取付部は、棒形状をなし、前記吊手帯が摺接可能に装着される環状溝が外周面に沿って形成されている
ことを特徴とする車両用吊手。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか1つに記載する車両用吊手において、
前記吊手帯は、所定幅を有する帯形状をなし、車両前後方向に沿って配置される前記吊手棒に保持具を介して吊り下げられ、
前記保持具は、下方に開口部を有する断面が逆U字形状をなし、前記吊手帯を保持する支軸が前記吊手棒に対して直交するように前記保持具の開口部に架設されている
ことを特徴とする車両用吊手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両やバスなどの車両に用いられる車両用吊手に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両やバスなどの車両の車室には、立客を支持する車両用吊手が吊り下げられている。例えば、特許文献1には、高位置用グリップと低位置用グリップとを備える手掛を、回転軸を中心に回転させることにより、グリップの位置を変える車両用吊手が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-184653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、乗車姿勢の安定や痴漢冤罪防止のため、両手で車両用吊手を握りたい場合がある。上記従来の車両用吊手は、手掛が吊手棒に対して直交する方向に回転するよう回転軸に支持されていた。車両の側面窓に向かって立っている時に、この車両用吊手を両手で握る場合、乗客は、体の前で手を前後にずらし、さらに手首をねじって手の平の向きを変えて低位置用グリップと高位置用グリップとを握らなければならなかった。よって、このような姿勢では安定しないため、従来の車両用吊手の形状には改善の余地があった。
【0005】
本明細書において開示する発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、車両の車室に吊り下げられる車両用吊手において、乗客が両手でも片手でも手掛を握りやすくなる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、(1)車両の車室に設けられた吊手棒に吊り下げられる吊手帯と、前記吊手帯の前記吊手棒と反対側に位置する端部に取り付けられる手掛と、を備える車両用吊手において、前記手掛は、第1取手部と、第2取手部と、前記第1取手部と前記第2取手部との間であって、前記第1取手部及び前記第2取手部より上方に位置し、前記吊手帯に支持される取付部と、を有し、前記取付部から前記第1取手部までの第1距離と、前記取付部から前記第2取手部までの第2距離とが異なり、前記吊手棒に吊り下げられた場合に、前記手掛が前記取付部を支点として前記吊手棒に沿って揺動可能であることを特徴とする。
【0007】
上記構成の車両用吊手は、吊手棒に吊り下げられた場合に、手掛が、第1取手部と第2取手部との間に位置する取付部を支点として、吊手棒に沿って揺動することができる。取付部の両側に位置する第1取手部と第2取手部は、取付部からの距離が異なるので、車両用吊手が吊手棒に吊り下げられた状態で、車室の床面からの高さが異なる。このような車両用吊手では、乗客が、例えば自分の身長に応じて、第1取手部と第2取手部の何れかを選択して片手で握ることができる。また、乗客は、第1取手部と第2取手部とを両手で握ることができる。この際、手掛が揺動するので、乗客は第1取手部と第2取手部との位置を自由に調整することができ、手掛を両手で握りやすい。よって、上記構成によれば、車両の車室に吊り下げられる車両用吊手において、乗客が両手でも片手でも手掛を握りやすくなる。
【0008】
(2)(1)に記載する車両用吊手において、前記吊手棒に吊り下げられた場合に、前記取付部が前記吊手棒に対して直交するように配置される、ことが好ましい。
【0009】
上記構成の車両用吊手は、取付部が吊手棒に対して直交するように配置されているので、取付部を支点として手掛を吊手棒に沿って揺動させる構造を簡素化しやすい。
【0010】
(3)(1)または(2)に記載する車両用吊手において、前記手掛が前記吊手帯を介して前記吊手棒に吊り下げられた場合に、前記第1取手部と前記第2取手部が鉛直方向からずれた位置に配置されることが好ましい。
【0011】
上記構成の車両用吊手は、吊手棒に吊り下げられた場合に、第1取手部と第2取手部とが鉛直方向からずれた位置に配置されるので、第1取手部と第2取手部との高低差が抑制され、乗客が第1取手部と第2取手部とを両手でつかみやすい。
【0012】
(4)(1)から(3)の何れか1つに記載する車両用吊手において、前記手掛は、前記第1取手部を含む第1フレーム部と、前記第2取手部を含む第2フレーム部と、を有し、前記手掛が前記吊手帯を介して前記吊手棒に吊り下げられた場合に、前記第1取手部と前記第2取手部が鉛直方向からずれた位置に配置されるように、前記第1フレーム部と前記第2フレーム部とが傾斜して接続していることが好ましい。
【0013】
上記構成の車両用吊手は、吊手棒に吊り下げられた場合に、第1取手部と第2取手部とが鉛直方向からずれた位置に配置されるように第1フレーム部と第2フレーム部とに傾斜が設けられているので、乗客が手を離した手掛が自動的に揺動して、第1取手部と第2取手部とを鉛直方向からずれた位置に戻すことができる。
【0014】
(5)(1)から(3)の何れか1つに記載する車両用吊手において、前記手掛は、前記取付部の両端部に接続される一対の中間フレーム部と、前記第1取手部を含み、前記一対の中間フレームに接続する第1フレーム部と、前記第2取手部を含み、前記一対の中間フレームに接続する第2フレーム部と、を有し、前記手掛が前記吊手帯を介して前記吊手棒に吊り下げられた場合に、前記一対の中間フレーム部が水平状態になるように、前記第1フレーム部と前記第2フレーム部とが前記一対の中間フレーム部に対して傾斜していることが好ましい。
【0015】
上記構成の車両用吊手は、吊手棒に吊り下げられた場合に、一対の中間フレーム部が水平状態になるように、第1フレーム部と第2フレーム部とが一対の中間フレーム部に対して傾斜しているので、乗客が手を離した手掛が自動的に揺動して、第1取手部と第2取手部とを鉛直方向からずれた位置に配置することができる。
【0016】
(6)(1)から(5)の何れか1つに記載する車両用吊手において、前記取付部は、棒形状をなし、前記吊手帯が摺接可能に装着される環状溝が外周面に沿って形成されていることが好ましい。
【0017】
上記構成の車両用吊手は、棒形状をなす取付部の外周面に沿って形成された環状溝に吊手帯が摺動可能に装着されているので、手掛が揺動する場合に吊手帯と取手部との間に作用する摩擦抵抗を抑制し、車両用吊手の劣化を抑制することができる。
【0018】
(7)(1)から(6)の何れか1つに記載する車両用吊手において、前記吊手帯は、所定幅を有する帯形状をなし、車両前後方向に沿って配置される前記吊手棒に保持具を介して吊り下げられ、前記保持具は、下方に開口部を有する断面が逆U字形状をなし、前記吊手帯を保持する支軸が前記吊手棒に対して直交するように前記保持具の開口部に架設されていることが好ましい。
【0019】
上記構成の車両用吊手は、車両前後方向に沿って配置される吊手棒に装着された保持具が、吊手棒に対して直交するように配置された支軸を有し、その支軸に帯形状の吊手帯が回動可能に支持されるので、吊手棒に対して直交するように主軸を配置するように手掛を吊手帯に結合する構造を簡単にすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本明細書において開示する技術によれば、車両の車室に吊り下げられる車両用吊手において、乗客が両手でも片手でも手掛を握りやすくなる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態に係る車両用吊手ユニットを適用した鉄道車両の一部断面図を示す。
図2】車両用吊手の外観斜視図である。
図3】手掛を示す図である。
図4】手掛の変形例を示す図である。
図5】車両用吊手の揺動を説明する図である。
図6】車両用吊手を両手で持った状態を示す図である。
図7】車両用吊手を片手で持った状態を示す図である。
図8】急ブレーキ時の動作を説明する図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る車両用吊手の外観斜視図である。
図10】車両用吊手の揺動を説明する図である。
図11】本発明の第3実施形態に係る車両用吊手の外観斜視図である。
図12】手掛を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る車両用吊手及び車両用吊手ユニットの実施形態について図面に基づいて説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1に、本発明の第1実施形態に係る車両用吊手ユニットを適用した鉄道車両1の一部断面図を示す。鉄道車両1は、通勤用の鉄道車両であり、鉄道車両構体2の下面に台車8が取り付けられている。
【0024】
鉄道車両構体2は、床構体3と、一対の妻構体4と、一対の側構体5と、屋根構体6とを備えている。床構体3の車両前後方向Xの両端部には、一対の妻構体4の下部が接続している。床構体3の枕木方向Y(図2参照)の両端部には、一対の側構体5の下部が接続している。一対の妻構体4の上部と一対の側構体5の上部には、屋根構体6が接続している。鉄道車両構体2の内部には、車室7が設けられている。
【0025】
屋根構体6の内側には、天井内骨61が車両前後方向Xに沿って配設されている。天井内骨61には、吊手棒取付部材10が所定間隔を空けて取り付けられている。吊手棒取付部材10は、先端部が車室7に突き出し、吊手棒20を支持している。吊手棒20は、車両前後方向Xに沿って配設されている。吊手棒20には、立客が手で掴むための車両用吊手(以下「吊手」とする)50が複数個懸垂して取り付けられている。
【0026】
図2は、吊手50の外観斜視図である。吊手50は、吊手帯40と手掛30とを備えている。吊手帯40は、保持具21を介して吊手棒20に吊り下げられている。保持具21は、U字形をなし、吊手棒20に上方から装着して固定されている。保持具21の開口部には、支軸22が架設されている。支軸22は、吊手棒20の下側に、吊手棒20と直交して配置されている。
【0027】
吊手帯40は、帯状をなす。吊手帯40の両端部には、第1ループ部41と第2ループ部42が設けられている。第1ループ部41は一端部の一例であり、第2ループ部42は他端部の一例である。吊手帯40は、保持具21の支軸22が第1ループ部41に貫き通されている。これにより、吊手帯40は、保持具21を介して、車両前後方向X(吊手棒20の軸方向)に揺動可能に吊手棒20に吊り下げられている。このような吊手帯40の第2ループ部42には、手掛30が取り付けられている。
【0028】
図3(a)および図3(b)は、手掛30を示す図である。図3(a)は、手掛30の平面図であり、図3(b)は、図3(a)に示す手掛30を図中下方から見た側面図である。手掛30は、主軸31と、第1フレーム部32と、第2フレーム部33とを備えている。主軸31は取付部の一例である。
【0029】
図3(a)に示すように、主軸31は、棒形状をなす。主軸31の中央部には、環状溝34が外周面に沿って形成されている。環状溝34の溝幅W1と、吊手帯40の幅W2(図2参照)とは、同程度に設定されている。図2に示すように、主軸31には、第2ループ部42が環状溝34によって位置決めされた状態で摺接可能に取り付けられている。つまり、吊手50は、手掛30が吊手帯40に揺動可能に支持された状態で、吊手棒20に吊り下げられる。
【0030】
図3(a)および図3(b)に示すように、第1フレーム部32と第2フレーム部33は、主軸31から二股に分岐して設けられている。
【0031】
図3(a)に示すように、第1フレーム部32は、第1取手部32aと、一対の第1接続部32b,32cとを有する。第1取手部32aは、主軸31と同じ長さを有している。一対の第1接続部32b,32cは、同じ長さを有し、平行に配置されている。一対の第1接続部32b,32cの一端は、それぞれ、第1取手部32aの端部に垂直に接続され、当該接続部分は角がない滑らかな形状(本実施形態では円弧形状)に形成されている。一対の第1接続部32b,32cの他端は、主軸31に垂直に接続している。主軸31と第1取手部32aとは平行に設けられている。手掛30は、主軸31と第1フレーム部32とにより矩形状の第1空間部35が形成されている。
【0032】
第2フレーム部33は、第2取手部33aと、一対の第2接続部33b,33cとを有する。第2取手部33aは、主軸31と同じ長さを有している。一対の第2接続部33b,33cは、同じ長さを有し、平行に配置されている。一対の第2接続部33b,33cの一端は、それぞれ、第2取手部33aの端部に垂直に接続され、当該接続部分は角がない滑らかな形状(本実施形態では円弧形状)に形成されている。一対の第2接続部33b,33cの他端は、主軸31に垂直に接続している。主軸31と第2取手部33aとは平行に設けられている。手掛30は、主軸31と第2フレーム部33とにより矩形状の第2空間部36が形成されている。
【0033】
図3(b)に示すように、手掛30では、主軸31から第1取手部32aまでの第1距離L1が、主軸31から第2取手部33aまでの第2距離L2より短くされている。手掛30は、吊手帯40を介して吊手棒20に吊り下げられた場合に、第1取手部32aと第2取手部33aが鉛直方向からずれた位置に配置されるように、第1フレーム部32と第2フレーム部33とが傾斜(平行でない所定の角度で接続)している。つまり、手掛30は、側方からみた形状が「へ」の字形に形成されている。
【0034】
なお、第1フレーム部32と第2フレーム部33の形状は上記に限定されない。例えば、手掛30に代えて、図4(a)に示す手掛30Bあるいは図4(b)に示す手掛30Cを使用してもよい。
【0035】
図4(a)に示す手掛30Bの第1フレーム部32Bは、一対の第1接続部32bx,32cxが第1取手部32aに対して鋭角に接続している。第2フレーム部33Bは、一対の第2接続部33bx,33cxが第2取手部33aに対して鋭角に接続している。手掛30Bの第1空間部35B及び第2空間部36Bは台形形状に形成されている。
【0036】
図4(b)に示す手掛30Cの第1フレーム部32Cは、第1取手部32aの一端に直角に接続する取手側接続部32byと、取手側接続部32byと主軸31との間に斜めに設けられる主軸側接続部32bzとにより、一方の第1接続部が形成されている。第1フレーム部32Cは、同様に、取手側接続部32cy及び主軸側接続部32czにより、他方の第1接続部が形成されている。第2フレーム部33Cは、これと同様に、第2取手部33a、取手側接続部33by,33cy及び主軸側接続部33bz,33czにより、一対の第2接続部が形成されている。手掛30Cの第1空間部35Cと第2空間部36Cは六角形形状に形成されている。
【0037】
続いて、吊手50の揺動動作について、図5を参照して説明する。図5(a)に示すように、吊手50は、手掛30が吊手帯40と保持具21を介して、吊手棒20に吊り下げられる。吊手帯40は、吊手棒20に対して直交する方向に架設された保持具21の支軸22に第1ループ部41が揺動可能に吊り下げられている。吊手帯40の第2ループ部42は、手掛30の主軸31に形成された環状溝34に摺接可能に装着され、図5(b)あるいは図5(c)に示すように、手掛30を揺動可能に支持している。
【0038】
このように吊手50を吊手棒20に吊り下げた状態では、手掛30の主軸31が吊手棒20の軸方向に対して直交するように配置されている。そして、主軸31に対して平行に設けた第1取手部32aと第2取手部33aは、吊手棒20の軸方向に並んで配置され、さらに吊手棒20に対して直交するように配置されている。手掛30は、吊手棒20の軸線方向に沿って第2ループ部42が環状溝34に巻回され、主軸31を支点として吊手棒20の軸方向に沿って揺動することができる。
【0039】
図5(a)に示すように、手掛30では、主軸31から第1取手部32aまでの第1距離L1より、主軸31から第2取手部33aまでの第2距離L2の方が長く(図3(b)参照)、第2取手部33aが第1取手部32aより車室7(図1参照)の低い(床面に近い)位置に配置される。
【0040】
このような吊手50では、低身長の乗客は、図7に示すように、低位置にある第2取手部33aを片手101でつかみやすい。乗客が片手101でつかんだ第2取手部33aを下向きに引っぱると、図5(c)に示すように、手掛30が主軸31を支点として揺動し、第2取手部33aの位置をさらに低い位置にすることができる。
【0041】
一方、高身長の乗客は、図5(a)に示すように高位置にある第1取手部32aを片手でつかみやすい。乗客が片手101でつかんだ第1取手部32aを下向きに引っぱると、図5(b)に示すように、手掛30が主軸31を支点として揺動し、第1取手部32aの位置が保持具21の支軸22のほぼ真下の位置になる。
【0042】
よって、乗客は、1つの吊手50において、身長などに応じて握る取手を選択することができる。
【0043】
また、吊手50の前に立った乗客は、図6に示すように、手掛30の両側から第1取手部32aと第2取手部33aとを両手101,101でつかみ、握ることができる。このとき、第1取手部32aと第2取手部33aが乗客の肩幅方向に並んで配置されているので、乗客は、腕や手首をねじらずに、第1取手部32aと第2取手部33aとを両手101,101で握ることができる。
【0044】
第1取手部32aと第2取手部33aを握った乗客は、主軸31を支点として手掛30を吊手棒20の軸方向に沿って揺動させ、第1取手部32aと第2取手部33aとを水平位置に配置できる。よって、乗客は、両手101,101の高さを揃えて、第1取手部32aと第2取手部33aの両手101,101で握ることができる。つまり、乗客は、無理のない姿勢で、吊手50を両手で握ることができる。
【0045】
ところで、図8に示すように、例えば、鉄道車両1が急ブレーキをかけた場合、乗客100が車両進行方向にバランスを崩し、吊手50を強く引っぱる。この場合、図8(a)に示す本実施形態の吊手50は、吊手帯40が保持具21の支軸22によって吊手棒20の軸方向に沿って揺動可能に支持され、手掛30が吊手帯40によって吊手棒20の軸方向に沿って揺動可能に支持されている。そのため、乗客100が吊手50を進行方向に強く引っぱっても、吊手帯40と手掛30がその荷重に応じて揺動できる。これにより、吊手帯40が支軸22に支持される部分P1と、吊手帯40が手掛30を支持する部分P2に作用する荷重の向きが同じになり、部分P1,P2に作用する荷重を抑制することができる。その結果、吊手50が劣化しにくくなる。
【0046】
なお、図8(b)に示すように、支持部材401を介して手掛30xが吊手帯40xに揺動可能に支持される場合、吊手帯40xが吊手棒20に支持される部分P5と、支持部材401と吊手帯40xが結合する部分P3と、吊手帯40xと手掛30xが結合する部分P4に荷重が作用する。荷重の向きが、部分P3~P5でばらつくので、部分P3~P5の各所に作用する荷重の大きさが抑制されない。その結果、吊手50xが劣化しやすくなる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態の吊手50は、吊手棒20に吊り下げられた場合に、手掛30が、第1取手部32aと第2取手部33aとの間に位置する主軸31を支点として、吊手棒20に沿って揺動することができる。主軸31の両側に位置する第1取手部32aと第2取手部33aは、主軸31からの距離が異なるので、吊手50が吊手棒20に吊り下げられた状態で、車室7の床面からの高さが異なる。このような吊手50では、乗客が、例えば自分の身長に応じて、第1取手部32aと第2取手部33aの何れかを選択して片手で握ることができる。また、乗客は、第1取手部32aと第2取手部33aとを両手で握ることができる。この際、手掛30が揺動するので、乗客は第1取手部32aと第2取手部33aとの位置を自由に調整することができ、手掛30を両手で握りやすい。よって、本実施形態によれば、鉄道車両1の車室7に吊り下げられる吊手50において、乗客が両手でも片手でも手掛30を握りやすくなる。
【0048】
(第2実施形態)
続いて、本発明の第2実施形態について図面を参照して説明する。図9は、本発明の第2実施形態に係る吊手50Aの外観斜視図である。図10は、50Aの揺動を説明する図である。本実施形態の吊手50Aは、手掛30Aの形状が第1実施形態の手掛30と相違する。ここでは、第1実施形態と相違する構成を中心に説明し、共通する構成については、図面及び説明において第1実施形態と同じ符号を使用して説明を適宜省略する。
【0049】
図9に示す手掛30Aは、第1フレーム部32と第2フレーム部33との間に一対の中間フレーム部301,301が設けられている。一対の中間フレーム部301,301は、主軸31の両端部に対してそれぞれ垂直に接続している。第1フレーム部32と第2フレーム部33は、手掛30Aが吊手帯40を介して吊手棒20に吊り下げられた場合に、一対の中間フレーム部301,301が水平状態になるように、第1フレーム部32と第2フレーム部33とが一対の中間フレーム部301,301に対して傾斜して接続している。
【0050】
本実施形態の吊手50Aは、図10(a)に示すように吊手棒20に吊り下げられた場合に、乗客が第1取手部32aを片手で握って図10(b)に手掛30Aを揺動させた後、あるいは、第2取手部33aを片手で握って図10(c)に示すように手掛30Aを揺動させた後、手を手掛30Aから離した場合に、手掛30Aが自動的に揺動して、図10(a)に示すように、第1取手部32aと第2取手部33aとを鉛直方向からずれた位置に戻すことができる。
【0051】
吊手50の手掛30Aは、一対の中間フレーム部301,301を有するので、第1実施形態の手掛30より、第1取手部32aと第2取手部33aとの吊手棒20の軸方向(車両前後方向X)における離間距離を広げることができ、乗客が両手で第1取手部32aと第2取手部33aとを両手で握りやすくなる。
【0052】
(第3実施形態)
続いて、本発明の第3実施形態について図面を参照して説明する。図11は、本発明の第3実施形態に係る吊手50Dの外観斜視図である。図12は、手掛30Dを示す図である。本実施形態の吊手50Dは、吊手帯40Dと手掛30Dが第2実施形態の吊手50と相違する。ここでは、第2実施形態と相違する構成を中心に説明し、共通する構成については、図面及び説明において第2実施形態と同じ符号を使用して説明を適宜省略する。
【0053】
図11に示す吊手50Dに示すように、吊手帯40Dは、第1ループ部41が吊手棒20に直接引っ掛けられて吊り下げられている。第1ループ部41は、図示しないストッパ部材を介して、吊手棒20の所定位置に固定されている。第1ループ部41は、結合部441を介して第2ループ部42に結合されている。第1ループ部41と第2ループ部42は、同一幅を有する帯状をなし、輪の向きが揃えられている。第2ループ部42には、手掛30Dが取り付けられている。
【0054】
図12に示すように、手掛30Dは、一対の中間フレーム部301,301の間に、プレート部31Dが架設されている。プレート部31Dは取付部の一例である。プレート部31Dは、所定の厚さを有し、第2ループ部42を通して引っ掛けるためのベルト穴342が形成されている。
【0055】
図12(a)及び図12(c)に示すように、ベルト穴342は、プレート部31Dの上面に開口する一対の開口部342a,342aを連通させるようにU字形状に設けられている。一対の開口部342a,342aの間には、第2ループ部42を引っ掛けるための引掛部341が設けられている。図12(b)及び図12(c)に示すように、ベルト穴342は、一対の開口部342a,342aをプレート部31Dの下面に貫通させるように形成され、引掛部341の下部が外部に露出している。これにより、第2ループ部42を引掛部341に引っ掛けやすくしている。
【0056】
図11に示すように、吊手棒20に吊り下げられた吊手帯40Dでは、第2ループ部42が、吊手棒20と直交する方向(枕木方向Y)にループ状に形成されている。ベルト穴342は、吊手帯40Dをねじらずに第2ループ部42を引掛部341に引っ掛けるため、プレート部31Dの全長方向に一対の開口部342a,342aが並ぶように形成されている。
【0057】
なお、第2実施形態の保持具21を備える吊手帯40(図9参照)を使用する場合には、ベルト穴342は、一対の開口部342a,342aがプレート部31Dの幅方向に並ぶように、プレート部31Dに形成されているとよい。
【0058】
本実施形態の吊手50Dによれば、図11に示すように吊手棒20に吊り下げられた場合に、乗客が第1取手部32a又は第2取手部33aを持って手掛30Dを揺動させた後、手掛30Dから手を離すと、手掛30Dが自動的に揺動して、第1取手部32aと第2取手部33aとを鉛直方向からずれた位置に戻すことができる。
【0059】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。例えば、上記実施形態の吊手50,50A,50B,50C,50Dは、バスなど、鉄道車両1以外の車両に適用してもよい。
【0060】
例えば、吊手50を吊手棒20に吊り下げた場合に、主軸31が吊手棒20に対して直交するように配置されなくてもよい。ただし、主軸31が吊手棒20に対して直交するように配置されるようにすれば、主軸31を支点として手掛30を吊手棒20に沿って揺動させる構造を簡素化しやすくなる。
【0061】
また例えば、第1取手部32aと第2取手部33aの何れか一方が鉛直方向に配置されてもよい。ただし、上記実施形態の吊手50のように、吊手棒20に吊り下げられた場合に、第1取手部32aと第2取手部33aとが鉛直方向からずれた位置(即ち、吊手棒方向(本実施形態では車両前後方向X)に離間した位置)に配置されることで、第1取手部32aと第2取手部33aとの高低差が抑制され、乗客が第1取手部32aと第2取手部33aとを両手でつかみやすくなる。
【0062】
また例えば、第1フレーム部32と第2フレーム部33は、第1取手部32aと第2取手部33aの何れか一方が鉛直方向に配置されるように接続していてもよい。ただし、上記実施形態の吊手50のように、吊手棒20に吊り下げられた場合に、第1取手部32aと第2取手部33aとが鉛直方向からずれた位置に配置されるように第1フレーム部32と第2フレーム部33とに傾斜が設けられていることで、乗客が手を離した手掛30が自動的に揺動して、第1取手部32aと第2取手部33aとを鉛直方向からずれた位置に戻すことができる。また、手掛30の非使用時に、第1取手部32aと第2取手部33aの位置が高くなり、例えば、吊手50の下方の座席に座る乗客の邪魔になりにくい。
【0063】
また例えば、吊手50に吊手帯を係止するための貫通孔を設けるなど、吊手帯40と手掛30との取付構造は上記実施形態に限定されない。ただし、上記実施形態の吊手50のように、取付部を棒形状の主軸31とし、主軸31の外周面に沿って形成された環状溝34に吊手帯40の第2ループ部42が摺動可能に装着されることで、手掛30が揺動する場合に吊手帯40と主軸31との間に作用する摩擦抵抗を抑制し、車両用吊手の劣化を抑制することができる。また、乗客の姿勢などに応じて手掛30が揺動しやすくなる。
【0064】
また例えば、保持具21を介さずに、吊手帯40を吊手棒20に吊り下げてもよい。この場合、手掛30の主軸31を吊手棒20に対して直交するように配置するための機構を吊手帯40に設けてもよい。あるいは、吊手棒20に対して直交するように吊手帯40が取り付けられる取付部を主軸31に設けてもよい。ただし、上記実施形態の吊手50のように、車両前後方向Xに沿って配置される吊手棒20に装着された保持具21が、吊手棒20に対して直交するように配置された支軸22を有し、その支軸22に帯形状の吊手帯40が回動可能に支持されることで、吊手棒20に対して直交するように主軸31が配置され、手掛30を吊手帯40に結合する構造を簡単にすることができる。
【符号の説明】
【0065】
1……鉄道車両、7……車室、20……吊手棒、30,30A,30B,30C,30D……手掛、31……主軸、31D……プレート部、32a……第1取手部、33a……第2取手部、40,40D……吊手帯、50,50A,50D……車両用吊手
図1
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図12