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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146982
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】防草シート
(51)【国際特許分類】
   A01M 21/00 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
A01M21/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054465
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】508179545
【氏名又は名称】東洋紡STC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 将志
(72)【発明者】
【氏名】表 雄一郎
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA19
2B121BB28
2B121EA21
2B121FA07
2B121FA12
2B121FA20
(57)【要約】
【課題】表面温度の上昇を抑制することができ、繊維が傷みにくくなることによって長期的な使用が可能であり、発電に寄与する波長の光を反射させやすくすることができる防草シートを提供する。
【解決手段】繊維基材を有する防草シートであって、繊維基材は金属が蒸着されている金属蒸着面を有しており、金属蒸着面における280nm以上400nm以下の波長域の光の反射率が50%以上95%以下であって、金属蒸着面における780nm以上2600nm以下の波長域の光の反射率が50%以上95%以下である防草シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維基材を有する防草シートであって、前記繊維基材は金属が蒸着されている金属蒸着面を有しており、
前記金属蒸着面における280nm以上400nm以下の波長域の光の反射率が50%以上95%以下であって、前記金属蒸着面における780nm以上2600nm以下の波長域の光の反射率が50%以上95%以下である防草シート。
【請求項2】
目付が60g/m以上400g/m以下であり、長手方向における引張強度が150N/5cm以上であり、幅方向における引張強度が100N/5cm以上であり、透水係数が0.001cm/sec以上であり、通気性が100cm/(cm・sec)以下である請求項1に記載の防草シート。
【請求項3】
厚みが0.5mm以上3mm以下である請求項1または2に記載の防草シート。
【請求項4】
前記繊維基材は、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、および、ポリプロピレン繊維のうち少なくともいずれか一つによって構成されている請求項1~3のいずれか一項に記載の防草シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防草シートに関する。
【背景技術】
【0002】
大規模な地上設置型太陽光発電施設では、広大な敷地に太陽光パネルが設置されているが、ここに雑草が繁茂すると、雑草の影で太陽光パネルが覆われることによって発電効率が低下する可能性がある。このため、何らかの手段によって雑草の繁茂を防止する必要があった。
【0003】
雑草の繁茂を物理的に防止し、美観を維持するための手段としては、従来、アスファルト被覆またはコンクリート被覆による手段や、砂利やバラスを敷設する工法が知られている。しかしながら、アスファルト被覆やコンクリート被覆による手段は、十分な防草効果を発揮するものの非常に高価であり、美観を損なううえ、土地の再利用時にはアスファルトやコンクリートを除去する必要があって、その分のコストや手間がかかるという問題があった。また、砂利やバラスのみを敷設する方法では十分な防草効果を発揮する事は困難であった。
【0004】
そこで、繊維で構成された防草シートが開発された。繊維で構成された防草シートは施工やメンテナンスが簡易であり、ある程度の期間雑草の繁茂を防止することができるという利点があった。
【0005】
しかしながら、繊維で構成された防草シートは、太陽光を受けることで赤外線を吸収し、表面温度が上昇しやすいという問題があった。このような防草シートを太陽光パネルが設置された周囲の地面に設置する場合には、防草シートの表面温度が上昇することによって太陽光パネルの周囲の温度も上昇し、太陽光パネル自体の温度も上昇するため、発電効率が低下するという問題があった。このため、表面温度が上昇しにくい防草シートが求められるようになった。
【0006】
また、太陽光パネルとしては、表裏の両面で発電を行うことができる両面太陽光パネルとも呼ばれるものが存在しているが、これは太陽光が直接照射される表面において発電できるだけでなく、地面や他の部材に当たって反射した光が裏面に照射されることによっても発電を行うことができるものである。このため、太陽光パネルが設置された周囲の地面に設置される防草シートには、光の反射性についても求められるようになった。
【0007】
以上のようなことから開発されたのが特許文献1~3に記載されているものである。
【0008】
特許文献1には、表面に樹脂塗料を塗布することで、樹脂塗料を塗布する前よりも赤外線反射率が高くなるように構成された防草シートについて記載されている。これにより、防草シートの表面温度の上昇を抑制することができ、敷設場所の近傍の温度の上昇も抑制することができるものであることが記載されている。また、光の反射性を向上させる方法として、白色の塗料を採用することが記載されている。
【0009】
特許文献2には、夏期の地表温度の上昇を抑制するために敷かれるマルチング資材について記載されている。このマルチング資材は、地面からの水分蒸発による放熱を程よく促進させることによって、マルチング資材で覆われている地面の温度を直射日光にさらされている地面の温度以下に保持することができるものであることが記載されている。
【0010】
特許文献3には、金属層と、可視光線域の最大反射率が70%~85%である拡散反射性樹脂シートとを有することを特徴とする、反射性マルチシートについて記載されている。この反射性マルチシートは、拡散反射性樹脂シートよりも地面側に金属層を設けることによって拡散反射性を付与しているものであることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2015-28241号公報
【特許文献2】実開平1-155749号公報
【特許文献3】特開2019-68795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載されている防草シートは、ポリエステル不織布の層と高密度ポリエステル長繊維不織布の層からなる2層構造で構成されているものであることから、空隙率が大きかった。このため、空隙部分では光が反射できないため、光の反射性について充分な性能を得られなかった。また、光の反射性を向上させる方法として白色の塗料を採用することが記載されているが、光の反射性向上については未だ改善の余地があった。さらに、この防草シートは、長期的な使用を可能とする耐久性に係る機能面についても改善の余地があった。
【0013】
特許文献2のマルチング資材は夏期の使用を前提としており、目付が軽く設計されているため、放熱性には優れるものの、耐久性が低く、防草性が十分なものとは言えなかった。また、空隙部分では光が反射できないため、両面太陽光パネルの裏面に光を反射させることも困難であった。
【0014】
特許文献3の反射性マルチシートは、金属層が拡散反射性樹脂シートよりも地面側に配置されるものであり、太陽光によって拡散反射性樹脂シートの温度が上昇しやすく、シート自体の温度上昇抑制効果や、シートの周囲の温度上昇抑制効果は充分なものではなかった。
【0015】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来よりも表面温度の上昇を抑制することができ、繊維が傷みにくくなることによって長期的な使用が可能であり、発電に寄与する波長の光を反射させやすくすることができる防草シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決できた本発明の防草シートの一実施態様は、繊維基材を有する防草シートであって、繊維基材は金属が蒸着されている金属蒸着面を有しており、金属蒸着面における280nm以上400nm以下の波長域の光の反射率が50%以上95%以下であって、金属蒸着面における780nm以上2600nm以下の波長域の光の反射率が50%以上95%以下である点に要旨を有する。上記防草シートは、金属蒸着面側が上側、即ち、地面とは反対側を向くように地面に配置されることで、金属蒸着面が赤外線の波長域の光を反射することができる。このため、防草シートが赤外線を吸収するのを抑制できるため、防草シートの表面温度の上昇を抑制することができ、防草シートを設置した周囲の温度の上昇も抑制することが可能となる。また、防草シートの表面温度の上昇を抑制することができることにより、金属蒸着面よりも地面側に配置される繊維基材を構成する繊維が傷みにくくなるため、防草シートの耐久性を向上させることができ、長期的に使用することが可能となる。さらに、金属蒸着面が紫外線の領域の光を反射することで、両面太陽光パネルの裏面に効率よく紫外線の領域の光を照射することができ、発電効率の向上を図ることも可能となる。加えて、金属が蒸着されていることにより、繊維基材の持つ生地としての性能、即ち、通気性や透水性等を損なうことなく、金属による光の反射性能を付与することができる。これにより、防草シートの透水性や通気性が0となることを防止し、雨水が防草シート上にたまりにくくすることで、降雨後の光の反射のしやすさを確保しやすくすることもできる。
【0017】
上記防草シートは、目付が60g/m以上400g/m以下であり、長手方向における引張強度が150N/5cm以上であり、幅方向における引張強度が100N/5cm以上であり、透水係数が0.001cm/sec以上であり、通気性が100cm/(cm・sec)以下であることが好ましい。これにより、植物が成長することによって防草シートが破れることを防止しやすくすることができる。また、上記のような透水性、通気性を有していることによって防草シート上に雨水がたまりにくくすることができ、降雨後の光の反射のしやすさを確保しやすくすることができる。また、雨水がたまりにくくすることで防草シートを傷みにくくすることもでき、防草性や光反射性を長期に亘って維持しやすくすることができる。
【0018】
上記防草シートは、厚みが0.5mm以上3mm以下であることが好ましい。これにより、植物が成長することによって防草シートが破れることを防止しやすくすることができる。このため、防草シートは傷みにくく、防草性や光反射性を長期に亘って維持しやすくすることができる。
【0019】
上記繊維基材は、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、および、ポリプロピレン繊維のうち少なくともいずれか一つによって構成されていることが好ましい。これにより、耐久性が向上しやすくなり、防草性や光反射性を長期に亘って維持しやすくすることができ、また防草シートの製造コストも低く抑えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の防草シートは、表面温度の上昇を抑制することができ、繊維が傷みにくくなることによって長期的な使用が可能であり、発電に寄与する波長の光を反射させやすくすることができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に関して具体的に説明するが、本発明はもとより例示したものに限定される訳ではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0022】
本発明の防草シートの一実施態様は、繊維基材を有する防草シートであって、繊維基材は金属が蒸着されている金属蒸着面を有しており、金属蒸着面における280nm以上400nm以下の波長域の光の反射率が50%以上95%以下であって、金属蒸着面における780nm以上2600nm以下の波長域の光の反射率が50%以上95%以下である点に要旨を有する。
【0023】
防草シートは、繊維基材を有する。繊維基材は、織物、編物、および不織布の少なくともいずれか1つによって構成される。
【0024】
繊維基材は、金属が蒸着されている金属蒸着面を有する。金属蒸着面は物理蒸着法により形成されることができる。物理蒸着法を採用することにより繊維基材の持つ生地としての性能、即ち、通気性や透水性等を損なうことなく、金属による光の反射性能を付与することができる。なお、金属蒸着面は、繊維基材に金属が直接蒸着されることによって形成されてもよいし、金属が蒸着されたフィルムを繊維基材に貼り付けることによって形成されてもよい。金属が蒸着されたフィルムを繊維基材に貼り付ける方法を採用する場合には、繊維基材に貼り付けたときに繊維基材の持つ生地としての性能、即ち、通気性や透水性等を損なうことがない程度の通気性や透水性を有しているフィルムを使用する。
【0025】
上記防草シートの金属蒸着面における280nm以上400nm以下の波長域の光の反射率は50%以上95%以下であって、金属蒸着面における780nm以上2600nm以下の波長域の光の反射率は50%以上95%以下である。なお、金属蒸着面における280nm以上400nm以下の波長域の光の反射率が50%以上95%以下とは、金属蒸着面において、280nm以上400nm以下の波長域に含まれるいずれかの波長の光の反射率が50%以上95%以下の範囲内に入っていればよいことを意味する。金属蒸着面における780nm以上2600nm以下の波長域の光の反射率が50%以上95%以下とは、金属蒸着面において、780nm以上2600nm以下の波長域に含まれるいずれかの波長の光の反射率が50%以上95%以下の範囲内に入っていればよいことを意味する。金属蒸着面における光の反射率は下記のようにして測定される。
【0026】
<防草シートの光反射率>
(1)防草シートから縦6cm×横3cmの長方形の試料を3つ切り出す。
(2)(1)で切り出した試料のうちの1つについて積分球付属装置(ISR-3100積分球内径60mmφ)を取付けた分光光度計(島津製作所製、UV-3100PC)に取り付ける。このとき、金属蒸着面側を光源側に向ける。
(3)分光光度計の光源から所定の波長域の光を射出させ、反射率を測定する。
(4)(1)で切り出していた残りの2つの試料についても(2)、(3)の手順で所定の波長域の光の反射率を測定する。
(5)3つの試料において測定された所定の波長域の光の反射率の平均を該波長域の光反射率とする。
【0027】
本発明の実施の形態に係る防草シートは、金属蒸着面側が上側、即ち、地面とは反対側を向くように地面に配置されることで、金属蒸着面が赤外線の波長域の光を反射することができる。このため、防草シートが赤外線を吸収するのを抑制できるため、防草シートの表面温度の上昇を抑制することができ、防草シートを設置した周囲の温度の上昇も抑制することが可能となる。また、防草シートの表面温度の上昇を抑制することができることにより、金属蒸着面よりも地面側に配置される繊維基材を構成する繊維が傷みにくくなるため、防草シートの耐久性を向上させることができ、長期的に使用することが可能となる。さらに、金属蒸着面が紫外線の領域の光を反射することで、両面太陽光パネルの裏面に効率よく紫外線の領域の光を照射することができ、発電効率の向上を図ることも可能となる。加えて、金属が蒸着されていることにより、繊維基材の持つ生地としての性能、即ち、通気性や透水性等を損なうことなく、金属による光の反射性能を付与することができる。これにより、防草シートの透水性や通気性が0となることを防止し、雨水が防草シート上にたまりにくくすることで、降雨後の光の反射のしやすさを確保しやすくすることもできる。
【0028】
上記防草シートを使用する際は、防草シートの少なくとも一部が地面と両面太陽光パネルを結ぶ鉛直線上に配置されることが好ましい。防草シートの全体が、地面と両面太陽光パネルを結ぶ鉛直線上に配置されていてもよいし、防草シートの一部のみが、地面と両面太陽光パネルを結ぶ鉛直線上に配置されていてもよい。
【0029】
上記防草シートは、目付が60g/m以上400g/m以下であることが好ましい。60g/m以上とすることにより、植物が成長することによって防草シートが破れることを防止しやすくすることができる。また、400g/m以下にすることにより、重量が重すぎないようにすることができるため、設置作業をスピーディーに行いやすくすることができる。400g/mより重くする場合には、その分多くの材料が必要になることから製造コストが高くなりやすくなる。防草シートの目付は下記のようにして測定する。
【0030】
<防草シートの目付>
(1)防草シートから1辺が100mmの正方形の試料を3つ切り出す。
(2)3つの試料の重量(g)を精密秤にて測定し、3つの試料の重さ(g)の平均を算出する。
(3)(2)で算出した重さ(g)の平均を10000mmあたりの重さ(g/10000mm)とし、これを1mあたりの重さ(g/m)に換算する。
【0031】
上記防草シートの長手方向における引張強度は、150N/5cm以上であることが好ましい。長手方向における引張強度は、1000N/5cm以下、900N/5cm以下等にしてもよい。また、上記防草シートの幅方向における引張強度が100N/5cm以上であることが好ましい。幅方向における引張強度は、800N/5cm以下、750N/5cm以下等にしてもよい。防草シートの長手方向とは、防草シートのうち最も長い長さ部分の延在方向である。防草シートの幅方向とは、防草シートの長手方向に垂直な方向である。引張強度を上記のようにすることにより、防草シートの耐久性を高めやすくすることができる。これにより、設置作業時に破れが発生したり、頻繁な交換が必要となる可能性が低くなる。防草シートの引張強度は下記のようにして測定する。
【0032】
<防草シートの引張強度>
(1)防草シートから50mm×300mmの長方形の試料を切り出す。防草シートの長手方向の引張強度を測定する際には、防草シートの長手方向と試料の300mmの辺とが平行となるように、長方形の試料を切り出す。防草シートの幅方向の引張強度を測定する際には、防草シートの幅方向と試料の300mmの辺とが平行となるように、長方形の試料を切り出す。
(2)(1)の試料をつかみ間隔が200mmとなるように引張試験機に取り付ける。
(3)100±10mm/minの引張速度で試験片が切断するまで荷重を加え、破断したときの値を引張強度とする。
【0033】
上記防草シートの透水係数は0.001cm/sec以上であることが好ましい。これにより、防草シート上に雨水などの液体が溜まりにくくすることができるため、降雨後であっても光を効率よく反射しやすくすることができる。また、透水係数が0.001cm/sec未満である場合、水の浸み込みがほとんどなく、敷設したシートの下の地面が乾燥状態となって土壌が崩れやすくなってしまう可能性がある。透水係数を0.001cm/sec以上とすることにより、防草シートの下の土壌を崩れにくくすることができ、周囲の安全性を高めやすくすることができる。なお、防草シートの透水係数は、2.0cm/sec以下、1.5cm/sec以下等にしてもよい。防草シートの透水係数は下記のようにして測定する。
【0034】
<防草シートの透水係数>
JISA1218の方法で防草シートの透水係数を測定する。
【0035】
上記防草シートの通気性は100cm/(cm・sec)以下であることが好ましい。これにより、防草シート上に雨水などの液体が溜まりにくくすることができるため、降雨後であっても光を効率よく反射しやすくすることができる。また、防草シートの下側に存在する植物への酸素供給を減らすことができるため、防草性を向上させやすくすることができる。なお、防草シートの通気性は、1cm/(cm・sec)以上、3cm/(cm・sec)以上等にしてもよい。防草シートの通気性は下記のようにして測定する。
【0036】
<防草シートの通気性>
JISL1096A法(フラジール形法)の方法で防草シートの通気性を測定する。
【0037】
上記防草シートは、目付が60g/m以上400g/m以下であり、長手方向における引張強度が150N/5cm以上であり、幅方向における引張強度が100N/5cm以上であり、透水係数が0.001cm/sec以上であり、通気性が100cm/(cm・sec)以下であることが好ましい。これにより、植物が成長することによって防草シートが破れることを防止しやすくすることができる。また、上記のような透水性、通気性を有していることによって防草シート上に雨水がたまりにくくすることができ、降雨後の光の反射のしやすさを確保しやすくすることができる。また、雨水がたまりにくくすることで防草シートを傷みにくくすることもでき、防草性や光反射性を長期に亘って維持しやすくすることができる。
【0038】
上記防草シートは、厚みが0.5mm以上3mm以下であることが好ましい。これにより、植物が成長することによって防草シートが破れることを防止しやすくすることができる。このため、防草シートは傷みにくく、防草性や光反射性を長期に亘って維持しやすくすることができる。防草性や加工容易性を踏まえると、防草シートの厚みは1mm以上2mm以下であることがより好ましい。防草シートの厚みは下記のようにして測定する。
【0039】
<防草シートの厚み>
JISL1913:2010(JIS一般不織布試験方法)の厚さ測定方法のA法にて防草シートの厚みを測定する。
【0040】
繊維基材としては、不織布や、平織、綾織、朱子織、等の織物、シングルジャージ等の緯編の編物等を用いることができる。いずれの組織も採用可能であるが、組織を密に形成することができ、遮光性を高めることができる観点から、織物もしくは不織布を採用することが好ましい。
【0041】
上記繊維基材は、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、および、ポリプロピレン繊維のうち少なくともいずれか一つによって構成されていることが好ましい。これにより、耐久性が向上しやすくなり、防草性や光反射性を長期に亘って維持しやすくすることができ、また防草シートの製造コストも低く抑えることができる。
【0042】
金属を蒸着させる物理蒸着法としては、例えば真空蒸着、分子線蒸着、イオンプレーティング、イオンビーム蒸着などの蒸発系の方法や、スパッタリング系の方法等が挙げられる。これらの中でも、安易性や生産効率の観点から、蒸発系の方法を採用することが好ましい。
【0043】
防草シートは、紫外線から赤外線までの幅広い波長の光を反射することが望ましい。このため、蒸着される金属は、紫外線から赤外線までの幅広い波長の光を反射することが望ましい。蒸着される金属としては、例えばアルミニウム、ステンレス、チタン、金、銀、銅、プラチナ、クロム、ニッケルなどが挙げられるが、金属に対する光の反射率について記載されている新版物理定数表(朝倉書店、1988年)に挙げられている金属のうち、赤外線から紫外線までの波長の光に対する反射率が90%以上となる反射率の金属を用いることが好ましい。これらの金属は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。中でも、コスト、安全性、蒸着加工の安易性等の観点からは、アルミニウム単独もしくはアルミニウムとその他の金属を組み合わせたものを用いることが好ましい。
【0044】
蒸着された金属の厚みは、10nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましく、また、500nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましい。金属の厚みが薄くなり過ぎると、光の反射性や耐久性が低下する可能性がある。また、厚みが厚くなり過ぎると、繊維基材の風合いや通気度の低下が生じる可能性があり、なおかつ金属の変色等の現象も起こりやすくなる傾向にある。蒸着された金属の厚みは下記のようにして測定する。
【0045】
<蒸着された金属の厚み>
(1)防草シートから糸を一本静かに取り出し、糸を張った状態でエポキシ樹脂中に包埋し、包埋試料を作成する。
(2)(1)の包埋試料の樹脂をナイフで削って糸を露出させ、これをウルトラミクロトームの試料ホルダに固定し、包埋した糸の長手方向に垂直な断面薄切片を作製する。
(3)(2)の断面薄切片を、透過型電子顕微鏡(JEOL社製、JEM-2010)にセットし、加速電圧200kV、明視野で、観察倍率1万倍にて写真を撮影し、得られた写真において金属の厚みを測定する。
【0046】
上記防草シートの金属蒸着面における280nm以上400nm以下の波長域の光の反射率は50%以上90%以下であることが好ましく、50%以上85%以下であることがより好ましく、50%以上80%以下であることがさらに好ましい。金属蒸着面における780nm以上2600nm以下の波長域の光の反射率は55%以上95%以下であることが好ましく、55%以上90%以下であることがより好ましく、55%以上85%以下であることがさらに好ましい。
【実施例0047】
以下、本発明の防草シートについて、実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではない。
【0048】
<実施例1>
まず、スパンボンド紡糸設備を用いて繊維基材を得た。詳細には、固有粘度が0.62のポリエチレンテレフタレート(以下PETと記載する)を、ノズルオリフィスがL/D=3.0のノズルによって、紡糸温度295℃、単孔吐出量0.7g/分で溶融紡糸し、紡糸速度5000m/分にて引取り、ネットコンベア上に堆積させることによって得た繊度1.8dtexの長繊維ウェブに対して、圧着面積率22%のエンボスロールで線圧30kN/mで圧着加工を行った。このときのエンボスロール表面温度は250℃、フラットロール表面温度は150℃である。このようにして得られた目付130g/mの長繊維不織布を繊維基材として使用する。この長繊維不織布を株式会社アルバック製の真空蒸着機にセットし、蒸着材料用容器に入れたアルミニウムを真空環境下で加熱蒸発させ、長繊維不織布に対してアルミニウムを約60nmの厚さで蒸着(真空度3.0×10-4Torr)させた。上記のようにして得られたのが実施例1に係る防草シートである。
【0049】
<実施例2>
繊維基材となる長繊維不織布の製造工程において、長繊維不織布の目付が100g/mになるようにネットコンベアの速度を調整すること以外は、実施例1と同様にして得られたものが実施例2に係る防草シートである。
【0050】
<実施例3>
まず、スパンボンド紡糸設備を用いて繊維基材を得た。詳細には、結晶性ポリプロピレンを、ノズルオリフィスがL/D=3.0のノズルによって、紡糸温度220℃、単孔吐出量0.7g/分にて溶融紡糸し、紡糸速度3000m/分にて引取り、ネットコンベア上に堆積させることによって得た繊度1.8dtexの長繊維ウェブに対して、圧着面積率22%のエンボスロールで線圧30kN/mで圧着加工を行った。このときのエンボスロール表面温度は250℃、フラットロール表面温度は130℃である。このようにして得られた目付300g/mの長繊維不織布を繊維基材として使用する。この長繊維不織布を株式会社アルバック製の真空蒸着機にセットし、蒸着材料用容器に入れたアルミニウムを真空環境下で加熱蒸発させ、長繊維不織布に対してアルミニウムを約60nmの厚さで蒸着(真空度3.0×10-4Torr)させた。上記のようにして得られたのが実施例3に係る防草シートである。
【0051】
<実施例4>
まず、スパンボンド紡糸設備を用いて繊維基材を得た。詳細には、ナイロン6樹脂をノズルオリフィスがL/D=3.0のノズルによって、紡糸温度295℃、単孔吐出量0.9g/分にて溶融紡糸し、紡糸速度5000m/分にて引取り、ネットコンベア上に堆積させることによって得た繊度2.0dtexの長繊維ウェブに対して、圧着面積率22%のエンボスロールで線圧305kN/mで圧着加工を行った。このときのエンボスロール表面温度は250℃で、フラットロール表面温度は150℃である。このようにして得られた目付70g/mの長繊維不織布を繊維基材として使用する。この長繊維不織布を予め乾燥させた状態で株式会社アルバック製の真空蒸着機にセットし、蒸着材料用容器に入れたアルミニウムを真空環境下で加熱蒸発させ、長繊維不織布に対してアルミニウムを約60nmの厚さで蒸着(真空度3.0×10-4Torr)させた。上記のようにして得られたのが実施例4に係る防草シートである。
【0052】
<実施例5>
酸化チタン含有量が0.5重量%の繊度84デシテックスであって72フィラメントのPET繊維を経糸及び緯糸の双方に用い、津田駒工業製ウォータージェット織機により経密度132本/2.54cm、緯密度92本/2.54cmの高密度タフタを製織した。通常の方法により連続精練機で精練処理を行い、シリンダー乾燥後、テンターを使って熱セット(190℃×30秒)して繊維基材を得た。この繊維基材の仕上密度は経144本/2.54cm、緯92本/2.54cmであった。このようにして得られた繊維基材を株式会社アルバック製の真空蒸着機にセットし、蒸着材料用容器に入れたアルミニウムを真空環境下で加熱蒸発させ、アルミニウムを約60nmの厚さで蒸着(真空度3.0×10-4Torr)させた。上記のようにして得られたのが実施例5に係る防草シートである。
【0053】
<実施例6>
まず、42ゲージのダブル丸編機(福原精機製M-8ME)を用いて繊維基材を得た。詳細には、33デシテックス、36フィラメントのPET繊維の2ヒーター仮撚加工糸を給糸して、モックロディ組織で編成し、この生機を開反して、通常の方法により連続精練機で精練処理を行い、脱水後開反して、テンターを使って熱セット(190℃×30秒)して繊維基材を得た。この繊維基材のループ密度はコース数75個/2.54cm、ウェール数73個/2.54cmであった。このようにして得られた繊維基材を株式会社アルバック製の真空蒸着機にセットし、蒸着材料用容器に入れたアルミニウムを真空環境下で加熱蒸発させ、アルミニウムを約60nmの厚さで蒸着(真空度3.0×10-4Torr)させた。上記のようにして得られたのが実施例6に係る防草シートである。
【0054】
<比較例1>
固有粘度0.62のPETをノズルオリフィスがL/D=3.0のノズルによって、紡糸温度295℃、単孔吐出量0.7g/分にて溶融紡糸し、紡糸速度5000m/分にて引取り、ネットコンベア上に堆積させることによって得られた繊度1.8dtexの長繊維ウェブに対して、圧着面積率22%のエンボスロールで線圧30kN/mで圧着加工を行った。このときのエンボスロール表面温度は250℃で、フラットロール表面温度は150℃である。これにより得られた目付130g/mの長繊維不織布が比較例1に係るシートである。
【0055】
<比較例2>
まず、スパンボンド紡糸設備を用いて長繊維不織布を得た。詳細には、固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレート(以下PETという)をノズルオリフィスがL/D=3.0のノズルによって、紡糸温度295℃、単孔吐出量0.7g/分にて溶融紡糸し、紡糸速度5000m/分にて引取り、ネットコンベア上に堆積させることによって得た繊度1.8dtexの長繊維ウェブに対して、圧着面積率22%のエンボスロールで線圧30kN/mで圧着加工を行った。このときのエンボスロール表面温度は250℃で、フラットロール表面温度は150℃である。このようにして得られた目付130g/mの長繊維不織布と、厚さが30μmのアルミ箔をアクリル系樹脂接着剤によって接着させた。アクリル系樹脂接着剤の塗布量は2g/mである。上記のようにして得られたのが比較例2に係るシートである。
【0056】
<比較例3>
まず、スパンボンド紡糸設備を用いて長繊維不織布を得た。詳細には、固有粘度0.62のPETをノズルオリフィスがL/D=3.0のノズルによって、紡糸温度295℃、単孔吐出量0.7g/分にて溶融紡糸し、紡糸速度5000m/分にて引取り、ネットコンベア上に堆積させることによって得た繊度1.8dtexの長繊維ウェブに対して、圧着面積率22%のエンボスロールで線圧30kN/mで圧着加工を行った。このときのエンボスロール表面温度は250℃で、フラットロール表面温度は150℃である。これにより得られた目付50g/mの長繊維不織布を、株式会社アルバック製の真空蒸着機にセットし、蒸着材料用容器に入れたアルミニウムを真空環境下で加熱蒸発させ、アルミニウムを約60nmの厚さで蒸着(真空度3.0×10-4Torr)させた。上記のようにして得られたのが比較例3に係るシートである。
【0057】
上記のようにして得られた実施例1~6に係る防草シートの性能について、太陽光パネルの出力向上率に係る項目以外については、上述した方法によって測定した結果を下記表1に示す。上記のようにして得られた比較例1~3に係るシートの性能について、太陽光パネルの出力向上率に係る項目以外については、上述した方法によって測定した結果を下記表2に示す。太陽光パネルの出力向上率については下記の方法で測定する。
【0058】
<太陽光パネルの出力向上率>
(1)地面と両面太陽光パネルの面内方向とが45度の角度をなすように両面太陽光パネルのみを設置した第1の区画と、地面の上に実施例1~6に係る防草シートおよび比較例1~3に係るシートのいずれかを設置し、地面と両面太陽光パネルの面内方向とが45度の角度をなすように両面太陽光パネルを設置した第2の区画を準備する。
(2)第1の区画に設けられた両面太陽光パネルと第2の区画に設けられた両面太陽光パネルの接続箱の端子に英弘精機製I-VチェッカーMP-11のプローブを接続し、第1の区画に設けられた両面太陽光パネルと第2の区画に設けられた両面太陽光パネルにおける発電量を測定する。
(3)第2の区画に設けられた両面太陽光パネルにおける最大出力値と、第1の区画に設けられた両面太陽光パネルにおける最大出力値の差を求める。
(4)第1の区画に設けられた両面太陽光パネルにおける最大出力値に対する(3)で求めた値の割合(%)を算出し、この割合を太陽光パネルの出力向上率とする。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
上記のように、金属が蒸着されており、金属蒸着面における280nm以上400nm以下の波長域の光の反射率が50%以上95%以下であって、金属蒸着面における780nm以上2600nm以下の波長域の光の反射率が50%以上95%以下である実施例1~実施例6までの防草シートにおいては、太陽光パネルの出力向上率が4%~8%となっており、発電効率を高めることができていることが示されている。
【0062】
実施例に係る防草シートは、赤外線領域の光を反射することできるため、防草シートの表面温度の上昇を抑制することができ、防草シートを設置した周囲の温度の上昇も抑制することが可能となるため、両面太陽光パネル自体の温度上昇を抑えることができ、発電効率の低下を抑制することができたものと考えられる。また、紫外線領域の光を反射することで、該光が両面太陽光パネルの裏面に効率的に照射されることによって発電に活用されたものと考えられる。これらの効果によって、太陽光発電効率を高めることができたと考えられる。
【0063】
なお、比較例2に示すように、アルミニウム箔を不織布に貼り付ける場合は、金属蒸着面における280nm以上400nm以下の波長域の光の反射率および780nm以上2600nm以下の波長域の光の反射率が高いため、太陽光パネルの出力向上率は高くなっている。しかしながら、透水性に係る値が0である。このようなシートは、雨水が溜まりやすいため、降雨後のシートによる光の反射が阻害されやすくなる傾向にある。しかしながら、金属が蒸着されている金属蒸着面を有している実施例1~6であれば、繊維基材の持つ生地としての性能、即ち、通気性や透水性等を損なうことなく、金属による光の反射性能を付与することができる。これにより、防草シートの透水性が0となることを防止し、雨水がたまりにくくすることで、降雨後の光の反射のしやすさを確保しやすくすることができる。