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  • 特開-ドライアイ予防装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146990
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】ドライアイ予防装置
(51)【国際特許分類】
   G09G 5/00 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
G09G5/00 550C
G09G5/00 510A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054486
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森本 輝之
【テーマコード(参考)】
5C182
【Fターム(参考)】
5C182AA02
5C182AA03
5C182AB02
5C182AB08
5C182AB14
5C182AC02
5C182AC03
5C182AC13
5C182AC43
5C182BA14
5C182BA55
5C182BA56
5C182BC26
5C182CA54
5C182CB42
5C182CB54
5C182DA65
5C182FA69
(57)【要約】
【課題】 ディスプレイを長時間目視することによって生ずるドライアイ症状にならないように、瞬き回数が減ると、利用者に光を当てて、瞬きを強制的に行うことで、ドライアイ症状となることを予防する装置を提案する。
【解決手段】 本件発明のドライアイ予防装置は、利用者の瞬きを検出する瞬き検出部と、検出された瞬きから所定時間当たりの利用者の瞬き回数を計数し、所定時間あたりに所定の回数の瞬きを行っているか否かを評価する瞬き回数評価部と、瞬き回数が所定の回数以下であると評価された場合に、ディスプレイ内に視線誘導の表示をして、利用者の視線を前記ディスプレイ領域外に移動させる視線移動制御部と、ディスプレイ領域外に前記利用者の視線が移動したら、前記ディスプレイ領域外に設置した点滅部の点滅を制御する点滅制御部と、を有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイを目視する利用者を撮影する撮像部と、
撮影された画像から前記利用者の顔画像を抽出する顔画像抽出部と、
抽出された前記顔画像から目の瞬きを検出する瞬き検出部と、
検出された前記瞬きから所定時間当たりの前記利用者の瞬き回数を計数し、前記所定時間あたりに所定の回数の瞬きを行っているか否かを評価する瞬き回数評価部と、
前記評価の結果、瞬き回数が前記所定の回数以下であると評価された場合に、前記ディスプレイ内に視線誘導の表示をして、前記利用者の視線を前記ディスプレイ領域外に移動させる視線移動制御部と、
前記ディスプレイ領域外に前記利用者の視線が移動したら、前記ディスプレイ領域外に設置した点滅部の点滅を制御する点滅制御部と、
を有することを特徴とするドライアイ予防装置。
【請求項2】
請求項1に記載のドライアイ予防装置において、
前記撮像部は、前記利用者の目の瞬きを検出するためと、前記利用者の視線が前記視線移動制御部によって前記ディスプレイ領域外に移動することを撮影するために前記ディスプレイ上部枠内に設置している、
ことを特徴とするドライアイ予防装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のドライアイ予防装置において、
前記点滅部は、前記ディスプレイの枠の外に設けられた、
ことを特徴とするドライアイ予防装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のドライアイ予防装置において、
前記視線移動制御部は、前記ディスプレイに表示されているアイコン、または文字に点滅を重畳させて、前記アイコン、または前記文字を強調し、前記利用者の視線を前記ディスプレイ領域外の前記点滅部に移動させる、
ことを特徴とするドライアイ予防装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載のドライアイ予防装置において、
前記視線移動制御部は、前記ディスプレイに点滅するアイコンを重畳させ、前記利用者の視線を前記ディスプレイ領域外の前記点滅部に移動させる、
ことを特徴とするドライアイ予防装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイを長時間目視して作業をしているとなりやすいドライアイ症状の予防に資するドライアイ予防装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータを利用した文章の作成、CAD(Computer Aided Design)、インターネット、電子メール、ビデオゲーム等の作業を行うために、それらに備えられているブラウン管、液晶又はプラズマ方式によるディスプレイを目視して作業をしていると、ドライアイ症状になり易いことが知られている。ディスプレイを見続けていると、通常は、一分間で20から30回瞬きをしているのが、約1/4程度に減少することが知られている。また、一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業までの間に10分~15分の作業休止時間を設け、かつ、一連続作業時間内において1回~2回程度の小休止を設けるべきであるという「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」が国の基準として示されている。
【0003】
ディスプレイを長時間目視しているときに、ドライアイ症状になることを予防するために、利用者の顔画像を撮像して、所定時間内の瞬きの回数を計測し、瞬きの回数が所定回数を下回ると、警告を出して、利用者に瞬きを促す工夫が種々提案されている。特許文献1には、利用者の顔画像から瞬きの回数を計数し、瞬き回数が許容範囲以下となると、注意情報を出力して、利用者に瞬きを促す技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-339438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、単に利用者に注意情報を出力して利用者に瞬きを促すだけでは、利用者の能動的、あるいは無意識の瞬き動作を誘発することは難しく、効果が少ない。また、利用者は、ディスプレイに注意を集中して作業をしているので、警告に気がつき難いという課題がある。
【0006】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、作業中の利用者の視線をディスプレイの領域外に誘導して、利用者の目周辺に光を当て、利用者の瞬きを誘発することで、ドライアイ症状となることを予防するドライアイ予防装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によると、ディスプレイを目視する利用者を撮影する撮像部と、撮影された画像から利用者の顔画像を抽出する顔画像抽出部と、抽出された顔画像から目の瞬きを検出する瞬き検出部と、検出された瞬きから所定時間当たりの利用者の瞬き回数を計数し、所定時間あたりに所定の回数の瞬きを行っているか否かを評価する瞬き回数評価部と、評価の結果、瞬き回数が所定の回数以下であると評価された場合に、ディスプレイ内に視線誘導の表示をして、利用者の視線をディスプレイ領域外に移動させる視線移動制御部と、ディスプレイ領域外に利用者の視線が移動したら、ディスプレイ領域外に設置した点滅部の点滅を制御する点滅制御部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の他の側面は、上述の発明に加えて更に、撮像部は、利用者の目の瞬きを検出するためと、利用者の視線が視線移動制御部によってディスプレイ領域外に移動することを撮影するためとにディスプレイの上部枠内に設置している、ことが好ましい。
【0009】
また、本発明の他の側面は、上述の発明に加えて更に、点滅部は、前記ディスプレイの枠外に設けられた、ことが好ましい。
【0010】
また、本発明の他の側面は、上述の発明に加えて更に、視線移動制御部は、ディスプレイに表示されているアイコン、または文字に点滅を重畳させて、アイコン、または文字を強調し、利用者の視線をディスプレイ領域外の点滅部に移動させる、ことが好ましい。
【0011】
また、本発明の他の側面は、上述の発明に加えて更に、視線移動制御部は、ディスプレイに点滅したアイコンを重畳させ、利用者の視線をディスプレイ領域外の点滅部に移動させる、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、利用者に、ディスプレイの領域の外にビデオ作業中の利用者の視線を誘導して、利用者に光を当てて、瞬きを誘発するので、利用者の意識的行動なしに瞬き回数を増加させて、目を保護することができるので、ドライアイ予防効果が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施形態のドライアイ予防装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、ディスプレイの前面から見た構成を示す図である。
図3図3は、ディスプレイに表示される誘導表示の例を示す図であり、図3(a)は、アイコンがライトの方向に移動する例、図3(b)は、表示されている文字を光らせる例、図3(c)は、表示された模様がライトの方向に移動する例である。
図4図4は、ドライアイ予防装置における瞬き回数評価、視線移動制御、点滅制御の動作を説明するフロー図である。
図5図5は、ディスプレイの側面にライトを配置した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0015】
図1は、本発明の第一の実施形態である、ドライアイ予防装置1の構成を示すブロック図である。この実施形態のドライアイ予防装置1は、ディスプレイ11を目視して作業をしている利用者2の瞬きの回数を検出し、瞬き回数が減少すると、利用者の視線をライト18方向に誘導して、ライト18を発光・点滅させて利用者の瞬きを起こし、ドライアイ症状になることを予防するものである。
【0016】
本実施の形態のドライアイ予防装置1は、ディスプレイ11、ビデオカメラ12、顔画像抽出部13、瞬き検出部14、瞬き回数評価部15、視線移動制御部16、点滅制御部17を備えており、ストロボ発光するライト18、警告灯19を有している。
【0017】
ビデオカメラ12は、ディスプレイ11を目視して作業している利用者2の顔画像を撮像し続けている。ビデオカメラ12は請求項記載の撮像部に相当する。顔画像抽出部13は、ビデオカメラ12で撮像された利用者2の動画像から、顔画像を抽出する。瞬き検出部14は、顔画像抽出部13で抽出した顔画像から利用者2の目の瞬きを検出する。瞬き回数評価部15は、瞬き検出部14で検出された一定時間当たりの瞬き回数を求め、この瞬き回数を基に正常な回数の瞬きをしているか否かの評価を行う。視線移動制御部16は、瞬き回数評価部15の評価によって、瞬き回数が低下し、利用者2のドライアイを予防するために、瞬きの回数を増加させる必要があると判断された場合に、利用者2の視線をライト18がある方向に誘導するための表示をディスプレイ11に表示する。点滅制御部17は、視線移動制御部16で利用者2の視線を誘導すると、警告灯19で瞬き回数が低下したことを警告するとともに、ライト18を発光・点滅して、その光によって利用者2が瞬きするようにする。ライト18は請求項記載の点滅部に相当する。
【0018】
図2は、ビデオカメラ12、ライト18、警告灯19のディスプレイ11に対して設置されている位置を説明する図である。この図2の例では、ビデオカメラ12は、利用者2の顔画像を撮像するために、ディスプレイ11の上枠の中央に設置されている。また、ライト18、警告灯19は、ビデオカメラ12の左右に設けられている。ライト18は、ストロボのような強い光を発光・点滅することで利用者2に瞬きをさせるものであるから、利用者2の視線がその方向に向かえる位置にあればよく、ディスプレイ11の枠の左右でもよいし、また枠の外にあってもよい。
【0019】
図3は、視線移動制御部16が、ドライアイ症状予防のために、ライト18を発光・点滅する場合に、ディスプレイ11を利用者が目視している状態から、ライト18の方向に、視線を移動するように表示する誘導表示の例を示すものである。図3(a)は、ディスプレイ11上に表示しているアイコンをライト18の方向に移動させることで、利用者2の視線を移動させる例である。図3(b)は、表示している文字のうち、ライト18方向の文字を点滅させて、利用者の注意を惹き、利用者の視線をライト18方向に向かわせる例である。図3(c)は、利用者の注意を惹く回転体をディスプレイ11に表示して移動して、利用者の視線をライト18方向に移動させる例である。
【0020】
この、利用者2の視線をディスプレイ11の外に向かわせるための表示としては、図3の例に限られず、ディスプレイ11上に表示されているアイコンに点滅を重畳させて利用者の視線をライト18方向に移動させるもの、あるいはディスプレイ11に点滅するアイコンを表示して利用者の視線をライト18方向に向かわせるものでもよい。また、開いているファイル上の文字やキャラクタの上を点滅させて文字やキャラクタを強調し、順次ライト18方向に利用者の目がいくような表示でもよい。また、点滅する表示やアニメーションが移動するものでもよく、あるいは、利用者2の注意を惹くアニメーションでライト18方向に目が行くようにしてもよい。
【0021】
次にドライアイ予防装置1の動作を説明する。
【0022】
まず、利用者2がディスプレイ11を目視しながら作業を行っている様子をビデオカメラ12で撮像している。この撮像された動画情報は、顔画像抽出部13に出力される。
【0023】
顔画像抽出部13では、ビデオカメラ12で撮像された動画像から利用者2の顔画像を抽出する。これは、人の顔の形状に相当する顔候補領域を決定し、その領域内の特徴量から顔領域を決定することにより、人の顔を抽出するなどの手法により抽出される。
【0024】
このように、顔画像抽出部13で抽出された顔画像は、瞬き検出部14へ出力され、瞬き検出部14で、その顔画像から瞬きが検出される。この瞬きの検出は、顔画像信号から、所定時間間隔で瞳孔を含む虹彩部分の面積あるいは瞼の開放面積の変化などを演算する手法などで行われる。
【0025】
このように抽出された瞬きの情報は、瞬き回数評価部15に出力され、利用者2が一定時間内に何回瞬きを行っているかが評価される。
【0026】
この評価によって評価された、所定時間当たりの瞬き回数を計数し、どの程度低下したら、ドライアイ予防のための視線の誘導のトリガとするかについて説明する。所定の時間として、30分から60分の間で、1分間の瞬きの回数を計測する。正常であれば、瞬きの回数は1分間に20~30回である。これが、瞬きの回数は、約1/4程度に低下し、1分間に5~7回に低下する。この瞬き回数が5~7回/分に低下すると、視線移動制御部16は視線移動制御の表示を行うように制御する。
【0027】
視線移動制御部16の処理を図4のフロー図を参照して説明する。視線移動制御部16は、単位時間当たりの瞬き回数を取得し(ステップS11)、瞬き回数が正常か否かを判断し、単位時間あたりの所定回数、例えば5~7回/分以下に低下する(ステップS12でN)と、図3に示すような種々の誘導表示で、利用者2の視線をディスプレイ11の領域外のライト18方向に向けるような誘導表示を行う(ステップS13)。そして、点滅制御部17は、視線移動制御部16が視線移動の表示を行ったのち、ビデオカメラ12でとらえた利用者の顔画像から視線がディスプレイ11の領域外に出たと判定したときに、ライト18を発光・点滅させる(ステップS14)。ライト18は、ストロボ発光のように、強い光を発光・点滅するので、利用者2は、その光によって瞬きを繰り返す。この時ライト18は、瞬きの回数が正常な20~30回/分の正常な瞬き回数を促すように発光・点滅を行う。これにより、目の涙液が目の表面を覆うことで、ドライアイを予防することが可能になる。また、点滅制御部17は、単位時間当たりの瞬き回数が所定値以下に低下したときに、瞬き回数が低下した旨の警告を警告灯19で利用者に警告して、瞬きを促すようにできる。なお、ライト18の発光・点滅は、利用者2の視線が移動してディスプレイ11の領域外に出たと判定してからライト18の発光・点滅を行うこととしたが、視線移動の確認を行うことなく、発光・点滅を行うこともできる。
【0028】
このように、単位時間当たりの瞬き回数が低下して、ドライアイになる危険が増加すると、利用者2の視線をライト18方向に誘導する表示をディスプレイ11に行って、ライト18を発光・点滅して、正常な瞬き回数に回復させ、目の表面のドライ化を予防するので、本発明のドライアイ予防の効果は大きい。
【0029】
なお、瞬き回数評価部15で計測した単位時間当たりの瞬き回数が40~50回/分と、正常な単位時間当たりの瞬き回数より異常に多い場合は、すでにドライアイ症状であると評価できるので、このような場合には、本発明のような、ドライアイ予防のためにライトで瞬きをさせるのではなく、病院や点眼をするように促す表示や出力をすることもできる。
【0030】
図5は、発光・点滅するライト18をディスプレイ11とは別体とし、ディスプレイ11の側面に配置した例である。瞬きを促すためのライト18は、ディスプレイ11の枠内に設けてもよいが、別体として図5のように、ディスプレイ11の枠外の側面に設けても、瞬きを促す効果には違いはない。
【0031】
上記のディスプレイ11は、机上において作業をするものの例で説明したが、小型のディスプレイであっても目視し続ければドライアイ症状となることは同様である。このため、タブレットやその他の携帯型の小型ディスプレイであっても同様に、利用者の瞬き回数を計測して、視線を誘導する表示を行って、瞬きを回復させることが可能である。この場合、携帯装置に附属するカメラ装置を利用して利用者の顔画像を撮像することができる。また、瞬きを回復させるための点滅部としては、ディスプレイに附属させてもよいし、別途のものとしてもよい。
【0032】
本発明は、SDGsの「すべての人に健康と福祉を」の実現に貢献し、ヘルスケア製品・サービスによる価値創出に寄与する事項を含む。
【符号の説明】
【0033】
1…ドライアイ予防装置、2…利用者、11…ディスプレイ、12…ビデオカメラ、13…顔画像抽出部、14…瞬き検出部、15…瞬き回数評価部、16…視線移動制御部、17…点滅制御部、18…ライト、19…警告灯
図1
図2
図3
図4
図5