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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147001
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20231004BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20231004BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALN20231004BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20231004BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M50/414
H01M10/0587
H01M10/052
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054499
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】筧 真一朗
【テーマコード(参考)】
5H021
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5H021EE02
5H028AA05
5H028AA07
5H028BB15
5H028CC04
5H028CC08
5H028CC13
5H028EE01
5H028EE06
5H028HH05
5H029AJ12
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029CJ07
5H029CJ28
5H029DJ04
5H029HJ04
(57)【要約】
【課題】ガス排出の促進が図られた電池を提供する。
【解決手段】 電池1においては、外装体10の内部に発生したガスは、中空材で構成された巻回芯22の中を流れることができる。それにより、外装体10内におけるガスの流れが促進されており、外装体10の内圧が上昇したときにガス弁40を通ってガスが排出されやすくなっている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空材で構成された巻回芯と、該巻回芯の表面に取り付けられるとともに前記巻回芯に巻回されたセパレータと、該セパレータを介して重なるとともに前記巻回芯に巻回された正極板および負極板とを有する電極体と、
前記電極体を収容する円筒状の外装体と、
前記外装体に設けられ、前記外装体の内圧に応じて開閉するガス弁と
を備える、電池。
【請求項2】
前記巻回芯の表面に前記セパレータが2枚取り付けられており、前記2枚のセパレータが前記巻回芯に巻回されている、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記巻回芯の断面がS字状である、請求項1または2に記載の電池。
【請求項4】
前記巻回芯の断面がC字状である、請求項1または2に記載の電池。
【請求項5】
前記巻回芯が環状に配置された複数の筒状部で構成されている、請求項1または2に記載の電池。
【請求項6】
前記巻回芯の少なくとも一方の端部にフランジが設けられている、請求項1~5のいずれか一項に記載の電池。
【請求項7】
前記巻回芯の厚さが50~300μmである、請求項1~6のいずれか一項に記載の電池。
【請求項8】
前記巻回芯および前記セパレータが同じ樹脂材料で構成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の電池。
【請求項9】
前記巻回芯の少なくとも一部が、多孔体、発泡体または繊維体である、請求項1~8のいずれか一項に記載の電池。
【請求項10】
前記巻回芯の内部に挿入された金属管をさらに備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、設置型の蓄電池が多数提案されている。蓄電池が一般家庭に普及することで、電力需給の安定化が期待される。蓄電池の一種として、コストに有利な金属缶を用いたリチウム二次電池が知られている。リチウム二次電池では、量産性の観点から、円筒状の外装体を用いられるのが一般的である。外装体の内部には、セパレータを介して正極板と負極板とが巻回芯に巻回された電極体が収容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-283606号公報
【特許文献2】特開平9-92339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したリチウム二次電池においては、外部環境の変化等に起因して外装体の内部にガスが発生することがある。ガスにより外装体の内圧が上昇すると、外装体に設けられたガス弁を通ってガスが外部に排出される。発明者らは、鋭意研究の末、ガスの排出を促進することができる技術を新たに見出した。
【0005】
本発明の一側面は、ガス排出の促進が図られた電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る電池は、中空材で構成された巻回芯と、該巻回芯の表面に取り付けられるとともに巻回芯に巻回されたセパレータと、該セパレータを介して重なるとともに巻回芯に巻回された正極板および負極板とを有する電極体と、電極体を収容する円筒状の外装体と、外装体に設けられ、外装体の内圧に応じて開閉するガス弁とを備える。
【0007】
上記電池においては、中空材で構成された巻回芯の中をガスが流れることで、外装体内におけるガスの流れが促進されており、外装体の内圧が上昇したときにガス弁を通ってガスが排出されやすくなっている。
【0008】
他の側面に係る電池では、巻回芯の表面にセパレータが2枚取り付けられており、2枚のセパレータが巻回芯に巻回されている。
【0009】
他の側面に係る電池では、巻回芯の断面がS字状である。
【0010】
他の側面に係る電池では、巻回芯の断面がC字状である。
【0011】
他の側面に係る電池では、巻回芯が環状に配置された複数の筒状部で構成されている。
【0012】
他の側面に係る電池では、巻回芯の少なくとも一方の端部にフランジが設けられている。
【0013】
他の側面に係る電池では、巻回芯の厚さが50~300μmである。
【0014】
他の側面に係る電池では、巻回芯およびセパレータが同じ樹脂材料で構成されている。
【0015】
他の側面に係る電池では、巻回芯の少なくとも一部が、多孔体、発泡体または繊維体である。
【0016】
他の側面に係る電池では、巻回芯の内部に挿入された金属管をさらに備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明の種々の側面によれば、ガス排出の促進が図られた電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る電池を示す概略断面図である。
図2図1に示した電池の電極体を示した斜視図である。
図3図2に示した電極体のIII-III線断面図である。
図4図2に示した電極体の巻回芯を示した斜視図である。
図5】巻回芯にセパレータが巻回される様子を示した図である。
図6】巻回芯に正極板および負極板が巻回される様子を示した図である。
図7】異なる態様の巻回芯を示した図である。
図8】異なる態様の巻回芯を示した図である。
図9】異なる態様の巻回芯を示した図である。
図10】異なる態様の巻回芯を示した図である。
図11】異なる態様の巻回芯を示した図である。
図12】異なる態様の巻回芯を示した図である。
図13】異なる態様の巻回芯を示した図である。
図14】異なる態様の巻回芯を示した図である。
図15】異なる態様の巻回芯を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しつつ本発明を実施するための形態を説明する。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0020】
一実施形態に係る電池1について、図1を参照しつつ説明する。電池1は、蓄電池の一種であるリチウム二次電池である。電池1は、外装体10と、外装体10内に収容された電極体20とを備えて構成されている。
【0021】
外装体10は、両端部の開口が塞がれた円筒状の形状を有し、その外形は略円柱状である。外装体10は、より詳しくは、円筒部11と封口板12とを備えて構成されている。円筒部11は、金属で構成されており、有底円筒状の形状を有する。封口板12は、金属で構成されており、略円板状の形状を有する。封口板12は、外装体10内が密閉されるように円筒部11の端部開口を塞いでいる。円筒部11と封口板12とによって密閉された外装体10の内部には電解液13が充填されている。
【0022】
電極体20は、略円柱状の外形を有し、外装体10の延在方向に沿うようにして外装体10内に収容されている。図2~6に示すように、電極体20は、巻回芯22とセパレータ24と正極板26と負極板28とを備えて構成されている。
【0023】
巻回芯22は、図3、4に示すような中空材で構成されている。巻回芯22は絶縁材料で構成されており、たとえば樹脂で構成することができる。巻回芯22はたとえば樹脂シートを筒状に丸めて形成することができ、樹脂シートの厚さ(すなわち巻回芯22の厚さ)は50~300μm(一例として140μm)である。本実施形態では、巻回芯22は、円筒状の軸芯22aと、軸芯22aの両端部に設けられたフランジ22bとを備える。本実施形態において、軸芯22aは円環状の断面を有する。フランジ22bは、軸芯22aの延在方向に対して直交する方向に張りだした円環状部分であり、軸芯22aと一体的に設けられている。
【0024】
図5に示すように、巻回芯22の軸芯22aの表面(外周面)には2枚のセパレータ24が取り付けられている。2枚のセパレータ24は、いずれも矩形シート状を呈し、互いに重なるようにして軸芯22aに巻回されている。2枚のセパレータ24のそれぞれの端部は軸芯22aの表面に接しており、接着材によって軸芯22aに接着されていてもよく、軸芯22aに接着されていなくてもよい。セパレータ24を構成する樹脂材料は、巻回芯22を構成する樹脂材料と同じであってもよい。
【0025】
図6に示すように、2枚のセパレータ24は、一方のセパレータ24上には正極板26が配置されるとともに他方のセパレータ24上には負極板28が配置された状態で、軸芯22aに巻回されている。そのため、正極板26と負極板28とは、セパレータ24を介して重なるようにして軸芯22aに巻回されている。正極板26および負極板28を2枚のセパレータ24で保持することで、膨張収縮に伴う位置ずれが起こりづらく、ガス経路が安定維持され得る。
【0026】
図1に示すように、電極体20の上側には円板状の絶縁板30Aが配置されており、正極板26の正極リード27は絶縁板30Aの上方まで引き延ばされて、正極端子として機能する封口板12と電気的に接続されている。電極体20の下側にも円板状の絶縁板30Bが配置されており、負極板28の負極リード29は絶縁板30Bの下方まで引き延ばされて、負極端子として機能する円筒部11の底面に電気的に接続されている。
【0027】
ここで、封口板12には、図1に示すようにガス弁40が設けられている。ガス弁40は、外装体10の内圧に開閉するように構成されている。具体的には、ガス弁40は、規定の内圧より低いときは閉じたままであり、その規定の内圧を超えたときには開いてガスを外部に排出する。ガスは、外装体10内において電解液中の気泡として存在し、ガス弁40が開放されたときにはガス弁40まで移動する。電極体20の最内近傍(具体的には、図5においてセパレータ24が軸芯22aに取り付けられる一点鎖線で示した箇所)を通過するガスに関しては、セパレータ24の捩れ等によってガスの流路が塞がれてガスの流れが阻害されやすい。この場合、外装体10の内圧が規定値を超える事態が起こり得る。
【0028】
上述した電池1においては、外装体10の内部に発生したガスは、中空材で構成された巻回芯22の中を流れることができる。それにより、外装体10内におけるガスの流れが促進されており、外装体10の内圧が上昇したときにガス弁40を通ってガスが排出されやすくなっている。
【0029】
電池1においては、巻回芯22がフランジ22bを有し、フランジ22bが絶縁板30A、30Bと接することで、電極体20の位置安定性が高められている。また、巻回芯22が絶縁材料で構成されているため、フランジ22bを設けることで、電極体20が円筒部11や封口板12に接して短絡する事態が抑制されている。さらに、フランジ22bにより、セパレータ24、正極板26および負極板28の巻き締めが緩みづらくなっており、電極体20の形状安定性が高められている。また、巻回芯22が電極体20自身によって保持されるので、巻回芯22のより画成されるガス流路が安定する。フランジ22bの径は、適宜に増減することができ、たとえば電極体20の巻回部分の径と同程度まで拡げることもできる。
【0030】
巻回芯22の厚さは50~300μmに設定することができ、50μmより薄い場合には実用上十分な強度を確保することが難しく、巻回芯22が変形してガスをガス弁40まで導くことが難しくなる。巻回芯22の厚さが300μmより厚い場合には、体積エネルギー密度が圧迫され、また、電解液13の染み込みが難しくなる。
【0031】
また、巻回芯22を構成する樹脂材料を、セパレータ24を構成する樹脂材料と同じにすることで、巻回芯22の弾性が高まるために膨張収縮を吸収しつつガス経路の維持がおこなわれる。また、電解液13との親和性が増すため、電解液13の保持機能を備える。さらに、巻回芯22の軽量化が図られ、それにより電池1の容量重量比も向上する。
【0032】
上述した巻回芯22の軸芯22aは、上述した形態に限らず、様々な形態を採用することができる。
【0033】
たとえば、軸芯22aの少なくとも一部が多孔体、発泡体または繊維体であってもよい。図7に示した軸芯22aでは、延在方向に関する両端以外の領域が多孔体23(多孔質)で構成されている。図8に示した軸芯22aでは、延在方向に関する一方端以外の領域が多孔体23で構成されている。図9に示した軸芯22aでは、複数の多孔体23が軸芯22aの延在方向に沿って延びており、周方向に沿って等間隔に並んでいる。図10に示した軸芯22aでは、等幅環状の複数の多孔体23が、横縞状に設けられており、延在方向に沿って周期的に並んでいる。図11に示した軸芯22aでは、菱形状の複数の多孔体23が規則的に配置されており、多孔体23以外の領域において網目が構成されている。図7~11に示した態様のいずれにおいても、多孔体23の領域においてガスの流れがより促進され、外装体10からのガス排出がより促進される。加えて、軸芯22aの弾性が高まるために膨張収縮を吸収しつつガス経路の維持がおこなわれる。また、電解液13との親和性がさらに増すため、電解液13の保持機能が高まる。さらに、巻回芯22の軽量化が図られ、それにより電池1の容量重量比も向上する。多孔体23は、発泡体(発泡質)または繊維体(繊維質)に適宜変更してもよい。
【0034】
また、巻回芯22の軸芯22aは、上述した円環状断面であってもよく、図12~14に示すような断面であってもよい。図12に示す軸芯22aは、S字状(または8字状)の断面を有し、内部が2区画に分かれている。軸芯22aは、2区画に限らず、3区画以上に分かれた構成であってもよい。図13に示す軸芯22aは、C字状の断面を有する。軸芯22aは、図13に示すように二重であってもよく、一重であってもよい。図14に示す軸芯22aは、、環状に配置された複数の筒状部22cで構成されている、各筒状部22cは、軸芯22aの延在方向に沿って延びており、楕円環状の断面を有する。
【0035】
さらに、図15に示すように、巻回芯22の軸芯22aは、その内部に金属管22dが挿入されていてもよい。この場合、軸芯22aの強度が向上することで、ガスの流路が維持される。また、金属管22dは、樹脂に比べて熱伝導率が高いため、電極体20の中心付近の排熱が促されることで電池1の温度安定性が向上する。
【符号の説明】
【0036】
1…電池、10…外装体、11…円筒部、12…封口板、20…電極体、22…巻回芯、22a…軸芯、22b…フランジ、22c…筒状部、23…多孔体、24…セパレータ、26…正極板、28…負極板、40…ガス弁。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15