(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147012
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】めっき装置とメタルマスク、およびめっき材料ユニット
(51)【国際特許分類】
C25D 21/12 20060101AFI20231004BHJP
C25D 17/12 20060101ALI20231004BHJP
C25D 21/00 20060101ALI20231004BHJP
C25D 1/00 20060101ALI20231004BHJP
C25D 1/10 20060101ALI20231004BHJP
C25D 5/02 20060101ALI20231004BHJP
C25D 17/08 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
C25D21/12 A
C25D17/12 A
C25D21/00 J
C25D1/00 Z
C25D1/10 311
C25D5/02 B
C25D17/08 S
C25D21/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054515
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】永沼 智也
【テーマコード(参考)】
4K024
【Fターム(参考)】
4K024BB28
4K024CA06
4K024CA16
4K024CB04
4K024CB08
4K024CB21
4K024CB26
(57)【要約】
【課題】多数独立の通孔を有する電鋳品を作製するためのめっき装置において、電鋳用母型の被めっき面に形成されるめっき層すなわち電鋳品の厚みのばらつきを抑える。
【解決手段】めっき液10中で陰極となる電鋳用母型12の被めっき面16には、レジスト体17が相対的に密に配置されるレジスト形成領域29と、レジスト体17が相対的に疎に配置される平坦領域30とが形成されている。これに対応して、めっき液10中で陽極となるめっき材料ユニット13において、電鋳用母型12のレジスト形成領域29に対向する第1領域31を、平坦領域30に対向する第2領域32よりも低電位とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき液(10)を貯留するめっき槽(11)と、めっき液(10)に浸漬されて互いに対向する電鋳用母型(12)およびめっき材料ユニット(13)と、電鋳用母型(12)が陰極、めっき材料ユニット(13)が陽極となるように電圧を印加する電源部(14)とを備えており、
めっき材料ユニット(13)に対向する電鋳用母型(12)の被めっき面(16)に、レジスト体(17)が相対的に密に配置されるレジスト形成領域(29)と、レジスト体(17)が相対的に疎に配置される平坦領域(30)とが形成されており、
めっき材料ユニット(13)において、電鋳用母型(12)のレジスト形成領域(29)に対向する第1領域(31)が、平坦領域(30)に対向する第2領域(32)よりも低電位であることを特徴とするめっき装置。
【請求項2】
めっき材料ユニット(13)が、複数の収容小室(21)を区画する絶縁性の保持体(20)と、各収容小室(21)に収容される導電性の籠(22)と、めっき液(10)に可溶で各籠(22)に収容されるめっき材料体(23)とを備えており、
電源部(14)から各籠(22)に印加する電圧を個別に制御可能である請求項1に記載のめっき装置。
【請求項3】
めっき材料ユニット(13)が、めっき液(10)に可溶な複数のめっき材料体(23)と、めっき材料体(23)を間隔を空けて保持する絶縁性の保持体(20)とを備えており、
電源部(14)から各めっき材料体(23)に印加する電圧を個別に制御可能である請求項1に記載のめっき装置。
【請求項4】
電鋳用母型(12)に、レジスト形成領域(29)の電流密度の低減化を図るための制御構造(42)が設けられている請求項1から3のいずれかひとつに記載のめっき装置。
【請求項5】
制御構造(42)が、レジスト形成領域(29)の裏側に凹み形成された陥没部(43)である請求項4に記載のめっき装置。
【請求項6】
陥没部(43)内に抵抗部材(49)が配設されている請求項5に記載のめっき装置。
【請求項7】
制御構造(42)が、レジスト形成領域(29)の奥方に埋設された抵抗部材(50)である請求項4に記載のめっき装置。
【請求項8】
抵抗部材(49・50)が、多数独立状に形成された非導電体(52)と、この非導電体(52)の間を埋めるように形成された導電体(53)とで構成されている請求項6又は7に記載のめっき装置。
【請求項9】
多数独立の通孔(3)を有するパターン形成領域(4)と、該パターン形成領域(4)を囲むように形成されたベタ領域(5)とを備えるマスク本体(2)を含み、
マスク本体(2)が、請求項1乃至8のいずれかひとつに記載のめっき装置の被めっき面(16)に形成されためっき層からなるメタルマスク。
【請求項10】
めっき装置のめっき液(10)中で陽極となるめっき材料ユニット(13)であって、
めっき液(10)に可溶で互いに電気的に絶縁されている複数のめっき材料体(23)を備えることを特徴とするめっき材料ユニット。
【請求項11】
複数の収容小室(21)を区画する絶縁性の保持体(20)と、各収容小室(21)に収容される導電性の籠(22)とを含み、各籠(22)にめっき材料体(23)が収容されており、
めっき装置の電源部(14)から各籠(22)に印加する電圧を個別に制御可能である請求項10に記載のめっき材料ユニット。
【請求項12】
複数のめっき材料体(23)を間隔を空けて保持する絶縁性の保持体(20)を含み、
めっき装置の電源部(14)から各めっき材料体(23)に印加する電圧を個別に制御可能である請求項10に記載のめっき材料ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数独立の通孔を有する電鋳品を作製するためのめっき装置と、当該めっき装置で作製されるマスク本体を含むメタルマスク、および、当該めっき装置に用いられるめっき材料ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のめっき装置は、例えば特許文献1に示すように、めっき液を貯留するめっき浴槽と、多数個の球状半田を収容してめっき浴槽の一側に浸漬される導電性の籠(メッシュ)と、めっき浴槽の他側に浸漬される被めっき体などで構成されている。被めっき体が陰極(カソード)、導電性の籠が陽極(アノード)となるように電圧を印加すると、籠に収容された球状半田がめっき液に溶出するとともに、被めっき体の表面に半田成分のめっき層が形成される。
【0003】
特許文献1の電気めっき装置は、通孔を有する電鋳品の作製にも用いることができる。この場合は被めっき体として、通孔に対応するレジスト体が予め形成された電鋳用母型を用意する。この電鋳用母型を陰極として電圧を印加すると、電鋳用母型の表面の露出部分(レジスト体で覆われていない部分)に、電鋳品となるめっき層が形成される。得られためっき層すなわち電鋳品は、例えばレジスト体の除去後に電鋳用母型から分離(剥離など)することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通孔を有する電鋳品の作製に用いる電鋳用母型において、レジスト体が均等に配置されることは少なく、殆どの場合は、レジスト体が相対的に密に配置されるレジスト形成領域と、レジスト体が相対的に疎に配置される平坦領域(レジスト体が一切配置されない場合も含む)とが形成される。例えば、一般的な構造のメタルマスク、すなわち、多数独立の通孔が設けられる中央のパターン形成領域と、パターン形成領域を囲むベタ領域とを有するメタルマスクを作製する場合には、電鋳用母型の表面の中央にレジスト形成領域を形成し、これを囲むように平坦領域を形成する。
【0006】
一般的に、メタルマスクのパターン形成領域とベタ領域の厚み寸法は同一であることが望ましい。しかし実際には、上記の電鋳用母型を用いてメタルマスクを作製すると、パターン形成領域がベタ領域よりも厚くなり易い。その理由としては、電鋳用母型に電圧を印加したとき、そのレジスト形成領域における表面の露出部分(レジスト体で覆われていない部分)の電流密度が、平坦領域における同電流密度よりも高くなることが挙げられる。表面の全体または大部分が露出する平坦領域に比べて、レジスト形成領域は露出部分の割合が小さく、そこに電流が集中することで電流密度が高くなる。この電流密度の差により、電鋳用母型の表面に形成されるめっき層すなわちメタルマスクの厚みにばらつきが生じてしまう。
【0007】
本発明は、多数独立の通孔を有する電鋳品を作製するためのめっき装置において、電鋳用母型の被めっき面に形成されるめっき層すなわち電鋳品の厚みのばらつきを抑えることを目的とする。また本発明は、以上のようなめっき装置を用いて作製されたマスク本体を含むメタルマスクと、当該めっき装置に用いられるめっき材料ユニットとを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るめっき装置は、めっき液10を貯留するめっき槽11と、めっき液10に浸漬されて互いに対向する電鋳用母型12およびめっき材料ユニット13と、電鋳用母型12が陰極、めっき材料ユニット13が陽極となるように電圧を印加する電源部14とを備える。めっき材料ユニット13に対向する電鋳用母型12の被めっき面16に、レジスト体17が相対的に密に配置されるレジスト形成領域29と、レジスト体17が相対的に疎に配置される平坦領域30とが形成されている。めっき材料ユニット13において、電鋳用母型12のレジスト形成領域29に対向する第1領域31が、平坦領域30に対向する第2領域32よりも低電位であることを特徴とする。
【0009】
めっき材料ユニット13が、複数の収容小室21を区画する絶縁性の保持体20と、各収容小室21に収容される導電性の籠22と、めっき液10に可溶で各籠22に収容されるめっき材料体23とを備えており、電源部14から各籠22に印加する電圧を個別に制御可能である形態を採ることができる。
【0010】
めっき材料ユニット13が、めっき液10に可溶な複数のめっき材料体23と、めっき材料体23を間隔を空けて保持する絶縁性の保持体20とを備えており、電源部14から各めっき材料体23に印加する電圧を個別に制御可能である形態を採ることができる。
【0011】
電鋳用母型12に、レジスト形成領域29の電流密度の低減化を図るための制御構造42が設けられている形態を採ることができる。
【0012】
制御構造42が、レジスト形成領域29の裏側に凹み形成された陥没部43である形態を採ることができる。
【0013】
陥没部43内に抵抗部材49が配設されている形態を採ることができる。
【0014】
制御構造42が、レジスト形成領域29の奥方に埋設された抵抗部材50である形態を採ることができる。
【0015】
抵抗部材49・50が、多数独立状に形成された非導電体52と、この非導電体52の間を埋めるように形成された導電体53とで構成されている形態を採ることができる。
【0016】
また本発明は、多数独立の通孔3を有するパターン形成領域4と、該パターン形成領域4を囲むように形成されたベタ領域5とを備えるマスク本体2を含み、マスク本体2が、上記のいずれかひとつに記載のめっき装置の被めっき面16に形成されためっき層からなるメタルマスクである。
【0017】
また本発明は、めっき装置のめっき液10中で陽極となるめっき材料ユニット13に関するものであって、めっき液10に可溶で互いに電気的に絶縁されている複数のめっき材料体23を備えることを特徴とする。
【0018】
複数の収容小室21を区画する絶縁性の保持体20と、各収容小室21に収容される導電性の籠22とを含み、各籠22にめっき材料体23が収容されており、めっき装置の電源部14から各籠22に印加する電圧を個別に制御可能である形態を採ることができる。
【0019】
複数のめっき材料体23を間隔を空けて保持する絶縁性の保持体20を含み、めっき装置の電源部14から各めっき材料体23に印加する電圧を個別に制御可能である形態を採ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明で対象とするめっき装置は、めっき液10に浸漬されて互いに対向する電鋳用母型12およびめっき材料ユニット13などで構成されており、電鋳用母型12の被めっき面16には、レジスト体17が相対的に密に配置されるレジスト形成領域29と、レジスト体17が相対的に疎に配置される平坦領域30とが形成されている。この電鋳用母型12において、レジスト形成領域29における表面の露出部分(レジスト体17で覆われていない部分)の電流密度が、平坦領域30における同電流密度よりも高くなること、および、レジスト形成領域29では平坦領域30よりもめっき層が厚くなり易いことは、上述したとおりである。
【0021】
そこで本発明では、陽極となるめっき材料ユニット13において、電鋳用母型12のレジスト形成領域29に対向する第1領域31を、平坦領域30に対向する第2領域32よりも低電位とした。これによれば、従来のようにめっき材料ユニットの全体を同電位とする場合に比べて、第1領域31からレジスト形成領域29へ向かうめっき液10中の金属イオンを減らして、レジスト形成領域29の表面に形成されるめっき層を薄くすることができる。あるいは、第2領域32から平坦領域30へ向かうめっき液10中の金属イオンを増やして、平坦領域30の表面に形成されるめっき層を厚くすることができる。つまり、被めっき面16に形成されるめっき層の厚みのばらつきを抑えることができ、このめっき層からなる電鋳品例えばメタルマスクの高精度化を図ることができる。
【0022】
めっき材料ユニット13が、複数の収容小室21を区画する絶縁性の保持体20と、各収容小室21に収容される導電性の籠22と、めっき液10に可溶で各籠22に収容されるめっき材料体23とを備えるものであると、電源部14から各籠22に印加する電圧を変更するだけで、めっき材料ユニット13における第1領域31と第2領域32の位置を変更することができる。つまり、レジスト体17の配置が異なる電鋳用母型12毎に、それに対応するめっき材料ユニット13を用意する必要がなく、その分だけめっき装置の全体コストを削減することができる。
【0023】
めっき材料ユニット13が、めっき液10に可溶な複数のめっき材料体23と、めっき材料体23を間隔を空けて保持する絶縁性の保持体20とを備えるものであると、電源部14から各めっき材料体23に印加する電圧を変更するだけで、めっき材料ユニット13における第1領域31と第2領域32の位置を変更することができる。つまり、レジスト体17の配置が異なる電鋳用母型12毎に、それに対応するめっき材料ユニット13を用意する必要がなく、その分だけめっき装置の全体コストを削減することができる。
【0024】
電鋳用母型12に、レジスト形成領域29の電流密度の低減化を図るための制御構造42を設けると、レジスト形成領域29へ向かうめっき液10中の金属イオンを減らして、レジスト形成領域29の表面に形成されるめっき層を薄くすることができる。従って、レジスト形成領域29では平坦領域30よりもめっき層が厚くなり易いという上記課題の解決に寄与することができる。本発明の電鋳用母型12を用いると、上記のようにめっき材料ユニット13の第1領域31(レジスト形成領域29に対向する領域)を第2領域32(平坦領域30に対向する領域)よりも低電位としたことと相俟って、被めっき面16に形成されるめっき層の厚みのばらつきをさらに抑えることができ、このめっき層からなる電鋳品例えばメタルマスクのさらなる高精度化を図ることができる。
【0025】
制御構造42をレジスト形成領域29の裏側に凹み形成された陥没部43とすると、レジスト形成領域29における電鋳用母型12の厚み寸法を、平坦領域30における同厚み寸法よりも小さくすることができる。つまり、レジスト形成領域29を平坦領域30よりも電気抵抗値が高いものとして、レジスト形成領域29の電流密度の低減化を図ることができる。また、レジスト形成領域29と平坦領域30を同じ材料で一体に形成することができるので、両領域29・30を電気抵抗値が異なる材料で個別に形成する場合に比べて、電鋳用母型12の製造コストを削減することができる。
【0026】
陥没部43内に抵抗部材49を配設すると、抵抗部材49の材料の選択によりレジスト形成領域29の電流密度を調整することができる。レジスト形成領域29の電流密度を変更する必要が生じた場合に、抵抗部材49を交換するだけで当該電流密度を変更することができ、電鋳用母型12の全体を交換する場合に比べて経済的である。
【0027】
制御構造42をレジスト形成領域29の奥方に埋設された抵抗部材50とすると、レジスト形成領域29の電気抵抗値を平坦領域30のそれよりも高くして、レジスト形成領域29の電流密度の低減化を図ることができる。また、抵抗部材50がめっき液10に侵されないようにして、その材料の選択の自由度を高めることができる。
【0028】
抵抗部材49・50を、多数独立状に形成された非導電体52と、この非導電体52の間を埋めるように形成された導電体53とで構成すると、非導電体52と導電体53の比率を設定するだけでレジスト形成領域29の電流密度を調整することができる。
【0029】
上記の各めっき装置の被めっき面16に形成されためっき層を、メタルマスクのマスク本体2とすると、そのパターン形成領域4とベタ領域5の厚みのばらつきを抑えて、メタルマスクの高精度化を図ることができる。
【0030】
本発明に係るめっき材料ユニット13は、めっき装置のめっき液10中で陽極となるものであって、めっき液10に可溶で互いに電気的に絶縁されている複数のめっき材料体23を備える。このめっき材料ユニット13は、めっき液10中で陰極となる電鋳用母型12の被めっき面16に、レジスト体17が相対的に密に配置されるレジスト形成領域29と、レジスト体17が相対的に疎に配置される平坦領域30とが形成されている場合に有用である。詳しくは、レジスト形成領域29に対向するめっき材料体23の電位を、平坦領域30に対向するめっき材料体23の電位よりも低くすることにより、第1領域31からレジスト形成領域29へ向かうめっき液10中の金属イオンを減らして、レジスト形成領域29の表面に形成されるめっき層を薄くすることができる。あるいは、第2領域32から平坦領域30へ向かうめっき液10中の金属イオンを増やして、平坦領域30の表面に形成されるめっき層を厚くすることができる。つまり、レジスト形成領域29では平坦領域30よりもめっき層が厚くなり易いという上記課題を解消して、被めっき面16に形成されるめっき層の厚みのばらつきを抑えることができ、このめっき層からなる電鋳品例えばメタルマスクの高精度化を図ることができる。
【0031】
複数の収容小室21を区画する絶縁性の保持体20と、各収容小室21に収容される導電性の籠22とを含み、各籠22にめっき材料体23が収容されているめっき材料ユニット13によれば、電源部14から各籠22に印加する電圧を制御することにより、電鋳用母型12の被めっき面16におけるレジスト体17の配置に対応するように、各めっき材料体23の電位を変更することができる。つまり、レジスト体17の配置が異なる電鋳用母型12毎に、それに対応するめっき材料ユニット13を用意する必要がなく、その分だけめっき装置の全体コストを削減することができる。
【0032】
複数のめっき材料体23を間隔を空けて保持する絶縁性の保持体20を含むめっき材料ユニット13によれば、電源部14から各めっき材料体23に印加する電圧を制御することにより、電鋳用母型12の被めっき面16におけるレジスト体17の配置に対応するように、各めっき材料体23の電位を変更することができる。つまり、レジスト体17の配置が異なる電鋳用母型12毎に、それに対応するめっき材料ユニット13を用意する必要がなく、その分だけめっき装置の全体コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るめっき装置を模式的に示す正面図である。
【
図2】同めっき装置で作製されるメタルマスクのマスク本体の斜視図である。
【
図4】同めっき装置のめっき材料ユニットの外観斜視図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係るめっき装置のめっき材料ユニットと電鋳用母型の斜視図である。
【
図6】本発明の第3実施形態に係るめっき材料ユニットの側面図である。
【
図7】同めっき材料ユニットの要部の縦断正面図である。
【
図8】本発明の第4実施形態に係るめっき材料ユニットの側面図である。
【
図9】本発明の第5実施形態に係るめっき装置の電鋳用母型の斜視図である。
【
図11】本発明の第6実施形態に係るめっき装置の電鋳用母型の縦断正面図である。
【
図12】本発明の第7実施形態に係るめっき装置の電鋳用母型の縦断正面図である。
【
図13】本発明の第8実施形態に係るめっき装置の電鋳用母型の縦断正面図である。
【
図14】本発明の第9実施形態に係るめっき装置の電鋳用母型の縦断正面図である。
【
図15】本発明の第10実施形態に係るめっき装置の電鋳用母型の縦断正面図である。
【
図16】本発明の第11実施形態に係るめっき装置の電鋳用母型の縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(第1実施形態) 本発明に係るめっき装置の第1実施形態を
図1ないし
図4に示す。本実施形態における前後、左右、上下とは、
図1などに示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。第2実施形態以降においても同様とする。
【0035】
先に、本実施形態のめっき装置1で作製するメタルマスクのマスク本体2について説明する。
図2および
図3に示すようにマスク本体2は、多数独立の通孔3を有するパターン形成領域4と、パターン形成領域4を囲むように形成された通孔3の無いベタ領域5とを備える。パターン形成領域4とベタ領域5はそれぞれ正方形状に形成されている。各通孔3は横長の四角形状の開口であり、パターン形成領域4内には多数個の通孔3がマトリクス状に開設されている。マスク本体2のベタ領域5に図外の枠体などを固定すると、メタルマスクの完成品を得ることができる。このメタルマスクは、印刷用マスク、ボール配列用マスク、蒸着用マスクなどとして用いられる。なおベタ領域5には、枠体固定用の通孔が設けられていてもよい。
【0036】
図1に示すようにめっき装置1は、めっき液10を貯留するめっき槽11と、めっき液10に浸漬されて左右に対向する電鋳用母型12およびめっき材料ユニット13と、電鋳用母型12およびめっき材料ユニット13に電圧を印加する電源部14とを備える。めっき材料ユニット13に対向する電鋳用母型12の右面すなわち被めっき面16には、マスク本体2の通孔3に対応する多数独立のレジスト体17が予め形成されている。この電鋳用母型12が陰極、めっき材料ユニット13が陽極となるように、電源部14から電圧を印加すると、電鋳用母型12に対向するめっき材料ユニット13の左面すなわち溶出面18から、めっき材料体23(後述)がめっき液10に溶出するとともに、電鋳用母型12の被めっき面16の露出部分(レジスト体17で覆われていない部分)に、マスク本体2となるめっき層が形成される。
【0037】
図4に示すようにめっき材料ユニット13は、左右に開口する格子枠状の保持体20と、保持体20の各収容小室21に1個ずつ収容される籠22と、各籠22に収容される多数個のめっき材料体23とで構成される。保持体20は、めっき液10に不溶な絶縁性の樹脂などで形成されて、上下前後に5×5のマトリクス状に並ぶ収容小室21を区画する。各籠22は、めっき液10に不溶なチタンなどの金属で形成されており、クリップ状のコネクタ25および導線26を介して電源部14に電気的に接続されている。めっき材料体23は、金属素材であり、マスク本体2の材料に適したニッケルやニッケル合金(ニッケルコバルト等)などを素材として球状、コイン状、柱状に形成されており、籠22の内面に接するようにぎっしりと詰め込まれている。これにより、籠22の内面から一群のめっき材料体23に電力が供給される。隣接する籠22どうしは保持体20の壁面によって互いに絶縁されている。つまり本実施形態では、各籠22に収容される一群のめっき材料体23どうしが互いに絶縁されている。
【0038】
図1に示すように、電鋳用母型12の被めっき面16には、レジスト体17が配置される中央のレジスト形成領域29と、レジスト体17が配置されない周囲の平坦領域30とが形成されている。レジスト形成領域29がマスク本体2のパターン形成領域4に対応し、平坦領域30がベタ領域5に対応する。電鋳用母型12に電圧を印加したとき、レジスト形成領域29における被めっき面16の露出部分(レジスト体17で覆われていない部分)の電流密度が、平坦領域30における同電流密度よりも高くなること、および、レジスト形成領域29では平坦領域30よりもめっき層が厚くなり易いことは、上述したとおりである。
【0039】
そこで本実施形態では、陽極となるめっき材料ユニット13において、電鋳用母型12のレジスト形成領域29に対向する第1領域31を、平坦領域30に対向する第2領域32よりも低電位とした。具体的には、
図4に示すように、保持体20の中央部に位置する9個(3×3)の籠22を囲む領域を第1領域31とし、また、その周囲の16個の籠22を囲む領域を第2領域32とし、第1領域31の各籠22に印加する正電圧を、第2領域32の各籠22に印加する正電圧よりも低くした。
【0040】
これによれば、従来のようにめっき材料ユニットの全体を同電位とする場合に比べて、第1領域31からレジスト形成領域29へ向かうめっき液10中の金属イオンを減らして、レジスト形成領域29の表面に形成されるめっき層を薄くすることができる。あるいは、第2領域32から平坦領域30へ向かうめっき液10中の金属イオンを増やして、平坦領域30の表面に形成されるめっき層を厚くすることができる。つまり、被めっき面16に形成されるめっき層の厚みのばらつきを抑えることができ、このめっき層からなる電鋳品すなわちメタルマスクのマスク本体2の高精度化を図ることができる。加えて、めっき層(マスク本体2)の組成のばらつきを抑えることもできる。
【0041】
めっき材料ユニット13が、複数の収容小室21を区画する絶縁性の保持体20と、各収容小室21に収容される導電性の籠22と、各籠22に収容されるめっき液10に可溶なめっき材料体23とを備えるものであると、電源部14から各籠22に印加する電圧を変更(選択)するだけで、めっき材料ユニット13における第1領域31と第2領域32の位置を変更することができる。つまり、レジスト体17の配置が異なる電鋳用母型12毎に、それに対応するめっき材料ユニット13を用意する必要がなく、その分だけめっき装置1の全体コストを削減することができる。なお、保持体20を多数の収容小室21に細分化して籠22の個数を増やすほど、レジスト体17の配置が異なるより多様な電鋳用母型12に適切に対応することができる。
【0042】
(第2実施形態)
図5は、本発明に係るめっき装置の第2実施形態を示しており、電鋳用母型12とめっき材料ユニット13の構成が第1実施形態と相違する。具体的には、電鋳用母型12が上下縦長に形成されており、その被めっき面16には、上下に並ぶ3個の矩形状のレジスト形成領域29と、これを囲む「目」字状の平坦領域30とが形成されている。これに対応してめっき材料ユニット13にも、溶出面18から見て上下に並ぶ3個の矩形状の第1領域31と、これを囲む「目」字状の第2領域32とが形成されている。これらの電鋳用母型12とめっき材料ユニット13を備えるめっき装置1によれば、3個の矩形状のパターン形成領域4が「目」字状のベタ領域5で囲まれたマスク本体2を得ることができる。
【0043】
具体的には、めっき材料ユニット13の保持体20は、3個の小型の内枠35と1個の大型の外枠36とを組み合わせて構成される。内枠35と外枠36はそれぞれ矩形枠状に形成されており、外枠36の内側に3個の内枠35が並べて配置されている。内枠35の内面で区画される矩形状の収容小室21A(21)には、1個の籠22が収容されている。内枠35の外面と外枠36の内面とで区画される「目」字状の収容小室21B(21)には、これを埋めるように2個の縦長の籠22と4個の横長の籠22とが収容されている。「目」字状の収容小室21Bにおいて隣接する籠22どうしは接触しており互いに通電可能である。本実施形態から明らかなように、収容小室21には複数個の籠22を収容することもできる。また、収容小室21と籠22の形状や大きさは不均一であってもよい。
【0044】
各内枠35の内面で囲まれる空間が第1領域31となり、各内枠35の外面と外枠36の内面とで囲まれる空間が第2領域32となる。第1領域31と第2領域32は内枠35で絶縁されている。そして、先の第1実施形態と同様に、第1領域31を第2領域32よりも低電位とすることにより、パターン形成領域4とベタ領域5を備えるマスク本体2の厚みと組成のばらつきを抑えることができる。他は第1実施形態と同様であるので、同じ部材には同じ符号を付してその説明を省略する。次の第3実施形態以降においても同様とする。
【0045】
(第3実施形態)
図6および
図7は、本発明に係るめっき装置の第3実施形態を示しており、めっき材料ユニット13の構成が第1実施形態と相違する。具体的には、めっき材料ユニット13が、矩形(正方形)板状に形成された多数枚のめっき材料体23と、これらを保持する保持体20などで構成される。保持体20の一面には、めっき材料体23用の装着部38が5×5のマトリクス状に設けられており、各めっき材料体23は、その一方の面が露出して電鋳用母型12に対向する姿勢で装着部38に係合装着される。各装着部38においてめっき材料体23は、その四辺の中央を爪40により捕捉される。各爪40は保持体20と一体に形成されており、上下または前後に隣接するめっき材料体23どうしは、爪40の分だけ間隔を空けて配置されて互いに絶縁されている。
【0046】
各装着部38の中央には、コイルばね状のコネクタ25の挿通を許す通電孔39が貫通状に設けられている。コネクタ25の一端は皿状の接点部材41と導線26を介して図外の電源部14に接続され、コネクタ25の他端はめっき材料体23の裏面(露出する面の裏側)に弾性的に密着している。以上の構成によれば、電源部14から各めっき材料体23に印加する電圧を個別に制御することができ、例えば先の第1実施形態と同様に、保持体20の中央部に位置する9個のめっき材料体23を囲む領域を、相対的に低電位の第1領域31とし、その周囲の16個のめっき材料体23を囲む領域を、相対的に高電位の第2領域32とすることができる。
【0047】
めっき材料ユニット13が、めっき液10に可溶な複数のめっき材料体23と、めっき材料体23を間隔を空けて保持する絶縁性の保持体20とを備えるものであると、電源部14から各めっき材料体23に印加する電圧を変更するだけで、めっき材料ユニット13における第1領域31と第2領域32の位置を変更することができる。つまり、レジスト体17の配置が異なる電鋳用母型12毎に、それに対応するめっき材料ユニット13を用意する必要がなく、その分だけめっき装置1の全体コストを削減することができる。なお、保持体20の装着部38を細分化してめっき材料体23の個数を増やすほど、レジスト体17の配置が異なるより多様な電鋳用母型12に適切に対応することができる。
【0048】
上記各実施形態では、めっき材料ユニット13の一部を第1領域31とし、その残部を第2領域32としたが、本発明はこれに限られず、第1領域31と第2領域32の他に、例えば第2領域32よりも高電位の第3領域を形成してもよい。つまり、めっき材料ユニット13を、電位が異なる3以上の領域に区分することもできる。この電圧制御は、例えば被めっき面16におけるレジスト体17の密集の度合いが中央部から周縁部にかけて漸次変化するような電鋳用母型12を用いる場合に有用であり、その被めっき面16に形成されるめっき層の厚みをより緻密にコントロールすることができる。
【0049】
(第4実施形態)
図8は、本発明に係るめっき装置の第4実施形態を示しており、保持体20とめっき材料体23の形態が第3実施形態と相違する。(a)では各めっき材料体23が上下縦長の矩形板状に形成されて、保持体20の一面に前後方向に間隔を空けて並べて配置されている。(b)では各めっき材料体23が前後横長の矩形板状に形成されて、保持体20の一面に上下方向に間隔を空けて並べて配置されている。
【0050】
(第5実施形態)
図9および
図10は、本発明に係るめっき装置の第5実施形態を示しており、電鋳用母型12の構成が第1実施形態と相違する。電鋳用母型12のレジスト形成領域29の裏側には、同領域29の電流密度の低減化を図るための制御構造42、具体的には陥没部43が設けられている。陥没部43は、電鋳用母型12の被めっき面16の裏面すなわち左面から右方に向かって段付き状に凹み形成されている。この陥没部43の存在により、レジスト形成領域29における電鋳用母型12の厚み寸法T1は、平坦領域30における電鋳用母型12の厚み寸法T2よりも小さくなる。つまり、レジスト形成領域29の電気抵抗値が平坦領域30のそれよりも高くなり、これによりレジスト形成領域29の電流密度が低減化される。
【0051】
レジスト形成領域29の電流密度を低減化すると、めっき装置1においてレジスト形成領域29へ向かうめっき液10中の金属イオンを減らして、レジスト形成領域29の表面に形成されるめっき層を薄くすることができる。従って、レジスト形成領域29では平坦領域30よりもめっき層が厚くなり易いという課題の解決に寄与することができる。本実施形態の電鋳用母型12を用いると、上記各実施形態のようにめっき材料ユニット13の第1領域31(レジスト形成領域29に対向する領域)を第2領域32(平坦領域30に対向する領域)よりも低電位としたことと相俟って、被めっき面16に形成されるめっき層の厚みのばらつきをさらに抑えることができ、このめっき層からなる電鋳品すなわちメタルマスクのマスク本体2のさらなる高精度化を図ることができる。加えて、めっき層(マスク本体2)の組成のばらつきをさらに抑えることができる。
【0052】
また電鋳用母型12は、相対的に厚いベース体45と薄いコート層46を重ねて構成されており、コート層46の表面(右面)が被めっき面16を構成する。ベース体45は、SUS304などの金属製の板材からなり、その一方の面すなわち左面の中央に陥没部43(制御構造42)が形成されている。コート層46は、ベース体45の他方の面すなわち右面に積層一体化された3層の導電層(ベース体45の側から順に第1導電層46a、第2導電層46b、第3導電層46c)で構成される。各導電層46a~46cは、ベース体45から離れるにしたがって薄くなっている。
【0053】
ベース体45とコート層46は、被めっき面16に形成されためっき層から剥離除去(機械的除去)することができる。また、ベース体45とコート層46の境界部、および各導電層46a~46cの境界部には、図外の接着層を形成してもよい。これによれば、被めっき面16にめっき層が形成された電鋳完了後に、ベース体45とコート層46の間の接着層を溶剤等で溶解することで、ベース体45をコート層46から分離除去することができ、さらに第1~第3導電層46a~46cの間の各接着層を溶解することで、めっき層から第1導電層46aと第2導電層46bと第3導電層46cを記載順に分離除去することができる。
【0054】
電鋳用母型12は第1実施形態などのように単層構造(例えば、電鋳用母型12がベース体45で構成)であってもよいが、本実施形態のように電鋳用母型12を多層構造とすると、これを構成する各層を電鋳品(めっき層)から剥離除去、或いは各層の間に位置する接着層を溶解させるだけで、電鋳品から電鋳用母型12を容易且つ効率良く分離除去することができる。電鋳用母型12の分離除去の際に電鋳品に加わる力を小さくすることができるので、電鋳品が変形等することを抑えることもできる。なおコート層46は、第1導電層46a~第3導電層46cの3層構造に限られず、例えば単層構造であってもよい。
【0055】
(第6実施形態)
図11は、本発明に係るめっき装置の第6実施形態を示しており、制御構造42の構成が第5実施形態と相違する。本実施形態の制御構造42は、ベース体45のレジスト形成領域29に対応する箇所に凹み形成された陥没部43と、当該陥没部43を埋めるように配設された抵抗部材49とで構成されている。抵抗部材49は、非導電性の部材またはベース体45よりも高い電気抵抗値を有する導電性の部材で構成されている。非導電性の部材としては、樹脂やレジストなどの絶縁性部材が挙げられる。
【0056】
本実施形態に係る電鋳用母型12においても、陥没部43の存在に基づく先の第5実施形態と同様の作用効果を得ることができる。加えて、陥没部43内に配設した抵抗部材49によれば、その材料の選択によりレジスト形成領域29の電流密度を調整することができる。レジスト形成領域29の電流密度を変更する必要が生じた場合に、抵抗部材49を交換するだけで当該電流密度を変更することができ、電鋳用母型12の全体を交換する場合に比べて経済的である。
【0057】
(第7実施形態)
図12は、本発明に係るめっき装置の第7実施形態を示しており、制御構造42の構成が第5実施形態と相違する。本実施形態の制御構造42は、電鋳用母型12におけるレジスト形成領域29の奥方に埋設された抵抗部材50で構成されている。より詳しくは、ベース体45とコート層46の境界部に、薄肉のシート状の抵抗部材50を配置している。抵抗部材50は、例えば樹脂やレジストなどの絶縁性部材で構成される。抵抗部材50の厚み寸法は、コート層46の厚み寸法よりも小さいものとされている。
【0058】
本実施形態に係る電鋳用母型12においても、先の第5実施形態と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、抵抗部材50の存在により、レジスト形成領域29の電気抵抗値を平坦領域30の電気抵抗値よりも高くして、レジスト形成領域29の電流密度の低減化を図ることができる。また、抵抗部材50がめっき液10に侵されないようにして、その材料の選択の自由度を高めることができる。
【0059】
(第8実施形態)
図13は、本発明に係るめっき装置の第8実施形態を示しており、抵抗部材50の構成が第7実施形態と相違する。本実施形態の抵抗部材50は、多数独立状に形成された非導電体52と、この非導電体52の間を埋めるように形成された導電体53とで構成されている。この第8実施形態では、単位面積あたりの非導電体52の配設密度は、レジスト形成領域29に対応する領域において、均一に設定されている。このように抵抗部材50を非導電体52と導電体53とで構成した場合においても、先の第7実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0060】
(第9実施形態)
図14は、本発明に係るめっき装置の第9実施形態を示しており、抵抗部材50を構成する非導電体52の配設密度が第8実施形態と相違する。具体的には、被めっき面16から見て抵抗部材50の中心に近づくほど、非導電体52の配設密度が高くなるように構成されている。この場合にも抵抗部材50を設けたことで、先の第8実施形態と同様の作用効果を得ることができる。加えて、抵抗部材50の中央部で非導電体52の配設密度を高くすると、レジスト形成領域29の中央寄りの電流密度を特に低くすることができる。例えばマスク本体2のパターン形成領域4内の中央寄りの部分における通孔3の配設密度が高いなどのように、何等かの事情により、レジスト形成領域29内における中央寄りの電流密度が高くなりやすい傾向にある場合には、上記構成を採ることで、中央寄りの電流密度を低くして、レジスト形成領域29内における電流密度差を小さくすることができる。
【0061】
(第10実施形態)
図15は、本発明に係るめっき装置の第10実施形態を示しており、抵抗部材50を構成する非導電体52の形状が第8実施形態と相違する。具体的には、各非導電体52の先端が、被めっき面16に近づくほど外形寸法が小さくなる尖形状に形成されている。当該構成においても、先の第8実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0062】
(第11実施形態)
図16は、本発明に係るめっき装置の第11実施形態を示しており、抵抗部材50を構成する非導電体52の形状が第8実施形態と相違する。具体的には、被めっき面16から見て抵抗部材50の中心に近づくほど、非導電体52の左右方向(電鋳用母型12の厚み方向)の高さ寸法が大きくなるように構成されている。この場合にも抵抗部材50を設けたことで、先の第8実施形態と同様の作用効果を得ることができる。加えて、抵抗部材50の中央部で非導電体52の高さ寸法を大きくすると、レジスト形成領域29の中央寄りの電流密度を特に低くすることができる。例えばマスク本体2のパターン形成領域4内の中央寄りの部分における通孔3の配設密度が高いなどのように、何等かの事情により、レジスト形成領域29内における中央寄りの電流密度が高くなりやすい傾向にある場合には、上記構成を採ることで、中央寄りの電流密度を低くして、レジスト形成領域29内における電流密度差を小さくすることができる。
【0063】
上記の各実施形態の電鋳用母型12では、被めっき面16の中央部にレジスト形成領域29を形成し、同領域29を囲むように平坦領域30を形成していたが、本発明はこれに限られない。例えば被めっき面16の中央部に平坦領域30を形成し、同領域30を囲むようにレジスト形成領域29を形成してもよく、あるいは、レジスト形成領域29と平坦領域30を一方向に沿って交互に形成してもよい。また平坦領域30には、レジスト形成領域29よりも低密度でレジスト体17が配置されていてもよい。平坦領域30のレジスト体17は、例えばマスク本体2のベタ領域5に設けられる枠体固定用の通孔に対応するものである。
【0064】
第5実施形態などの電鋳用母型12においては、制御構造42を構成する陥没部43は被めっき面16の裏側に設けられていたが、本発明はこれに限られず、陥没部43は被めっき面16の表側に設けることができる。陥没部43の形状は、その開口面から見て四角形状に限られず、円形状や台形状などであってもよい。陥没部43の形状は、円錐状、四角錐状、截頭錐体状、ホームベース状など、電鋳用母型12の厚み方向で形状が変わるものであってもよく、この場合の陥没部43の形状は、被めっき面16へ向かって拡がっていてもよく、また窄まっていてもよい。陥没部43の個数は一つに限られず、複数個の陥没部43が電鋳用母型12に設けられていてもよい。陥没部43の形状や深さ寸法によってレジスト形成領域29の電流密度を調整することができる。
【0065】
第6実施形態においては、陥没部43内を埋めるように抵抗部材49を配設した構成を示したが、本発明はこれに限られず、陥没部43の一部に(陥没部43を部分的に埋めるように)抵抗部材49を配設してもよい。陥没部43内に配される抵抗部材49は、多数独立状に形成された非導電体52であってもよい。また、陥没部43内に配される抵抗部材49は、多数独立状に形成された導電体53と、この導電体53の間を埋めるように形成された非導電体52とで構成されていてもよい。レジスト形成領域29に対応する箇所に、電鋳用母型12を厚み方向に貫通する貫通孔を形成し、当該貫通孔に抵抗部材が配設された構成を採ることもできる。本発明に係るめっき装置とメタルマスク、およびめっき材料ユニットは、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs : Sustainable Development Goals)の目標9(産業と技術革新の基盤をつくろう)および目標12(つくる責任 つかう責任)に貢献することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 めっき装置
2 マスク本体
3 通孔
4 パターン形成領域
5 ベタ領域
10 めっき液
11 めっき槽
12 電鋳用母型
13 めっき材料ユニット
14 電源部
16 被めっき面
17 レジスト体
20 保持体
21 収容小室
22 籠
23 めっき材料体
29 レジスト形成領域
30 平坦領域
31 第1領域
32 第2領域
42 制御構造
43 陥没部
49 抵抗部材
50 抵抗部材
52 非導電体
53 導電体