(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014702
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】吸引システム、及び吸引システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/00 20060101AFI20230124BHJP
【FI】
A61M1/00 131
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118805
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000200677
【氏名又は名称】泉工医科工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099645
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100161090
【弁理士】
【氏名又は名称】小田原 敬一
(72)【発明者】
【氏名】桑名 克之
(72)【発明者】
【氏名】東泉 貴昭
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA26
4C077DD01
4C077DD11
4C077DD12
4C077DD19
4C077DD21
4C077EE04
4C077JJ05
4C077JJ16
4C077JJ19
4C077JJ24
4C077KK27
(57)【要約】
【課題】吸引システムが複数の吸引経路を利用する場合に、より少ない吸引源を用いて患者から液体を吸引する。
【解決手段】患者から液体を吸引する吸引圧を複数の吸引経路に作用させる吸引システム100は、複数の吸引経路のそれぞれを閉鎖する閉鎖部20と、複数の吸引経路のうち一つの吸引経路を開放すると共に、複数の吸引経路のうち残りの吸引経路を閉鎖し、その後、残りの吸引経路のうち一つの吸引経路とは異なる別の吸引経路を開放すると共に、複数の吸引経路のうち一つの吸引経路を含む他の吸引経路を閉鎖するように、閉鎖部を制御する制御部19とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者から液体を吸引する吸引圧を複数の吸引経路に作用させる吸引システムであって、
前記複数の吸引経路のそれぞれを閉鎖する閉鎖部と、
前記複数の吸引経路のうち一つの吸引経路を開放すると共に、前記複数の吸引経路のうち残りの吸引経路を閉鎖し、その後、前記残りの吸引経路のうち前記一つの吸引経路とは異なる別の吸引経路を開放すると共に、前記複数の吸引経路のうち前記一つの吸引経路を含む他の吸引経路を閉鎖するように、前記閉鎖部を制御する制御部とを備える、吸引システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記一つの吸引経路の開放から所定の時間が経過した後に、前記別の吸引経路を開放するように、前記閉鎖部を制御する、請求項1に記載の吸引システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記残りの吸引経路のうち、先に開放された先開放経路がある場合、前記残りの吸引経路のうち前記先開放経路を除いた中から前記別の吸引経路を開放し、且つ全ての前記複数の吸引経路が開放された後に、前記一つの吸引経路を再度開放するように、前記閉鎖部を制御する、請求項1又は2に記載の吸引システム。
【請求項4】
前記複数の吸引経路に作用させる前記吸引圧を発生させる吸引部をさらに備え、
前記吸引経路には、前記液体を溜める液体槽が設けられている、請求項1から3のいずれか一項に記載の吸引システム。
【請求項5】
前記液体槽は、吸引された前記液体の吸引量を示す吸引量部を有している、請求項4に記載の吸引システム。
【請求項6】
前記閉鎖部は、前記複数の吸引経路のそれぞれの内部流路を閉鎖するソレノイド機構を有している、請求項1から5のいずれか一項に記載の吸引システム。
【請求項7】
前記閉鎖部は、前記複数の吸引経路のそれぞれの一部を圧迫して閉鎖するカムと、前記カムを回転させるモータとを有している、請求項1から5のいずれか一項に記載の吸引システム。
【請求項8】
患者から液体を吸引する吸引圧を複数の吸引経路に作用させ、前記複数の吸引経路のそれぞれを閉鎖する閉鎖部を備える吸引システムの制御方法であって、
前記複数の吸引経路のうち一つの吸引経路を開放すると共に、前記複数の吸引経路のうち残りの吸引経路を閉鎖し、その後、前記残りの吸引経路のうち前記一つの吸引経路とは異なる別の吸引経路を開放すると共に、前記複数の吸引経路のうち前記一つの吸引経路を含む他の吸引経路を閉鎖するように、前記閉鎖部を制御する、吸引システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の順序に従って複数の吸引経路を順次開放する吸引システム、及び吸引システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
唾液を吸引する吸引器として、特許文献1には、吸引圧を吸引流路に作用させる吸引器が開示されている。この吸引器は、吸引圧を発生させるポンプ手段と、吸引圧を調整する圧力調整手段とを備えている。さらに、吸引器は、圧力調整手段の動作を制御する制御手段を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、複数の吸引経路を利用する吸引システムであって、より少ない吸引源を用いて患者から液体を吸引できる吸引システムの供給を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る吸引システムは、患者から液体を吸引する吸引圧を複数の吸引経路に作用させる吸引システムであって、前記複数の吸引経路のそれぞれを閉鎖する閉鎖部と、前記複数の吸引経路のうち一つの吸引経路を開放すると共に、前記複数の吸引経路のうち残りの吸引経路を閉鎖し、その後、前記残りの吸引経路のうち前記一つの吸引経路とは異なる別の吸引経路を開放すると共に、前記複数の吸引経路のうち前記一つの吸引経路を含む他の吸引経路を閉鎖するように、前記閉鎖部を制御する制御部とを備える。
【0006】
また、本発明の一態様に係る吸引システム制御方法は、患者から液体を吸引する吸引圧を複数の吸引経路に作用させ、前記複数の吸引経路のそれぞれを閉鎖する閉鎖部を備える吸引システムの制御方法であって、前記複数の吸引経路のうち一つの吸引経路を開放すると共に、前記複数の吸引経路のうち残りの吸引経路を閉鎖し、その後、前記残りの吸引経路のうち前記一つの吸引経路とは異なる別の吸引経路を開放すると共に、前記複数の吸引経路のうち前記一つの吸引経路を含む他の吸引経路を閉鎖するように、前記閉鎖部を制御する。
【発明の効果】
【0007】
これにより、吸引システムが複数の吸引経路を利用する場合に、より少ない吸引源を用いて患者から液体を吸引できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1排液チューブを開放した状態の吸引システムの概略図。
【
図2】第2排液チューブを開放した状態の吸引システムの概略図。
【
図7】第3実施形態に係る吸引システムにおける第1吸引経路の概略図。
【
図8】第3実施形態に係る吸引システムにおける第2吸引経路の概略図。
【
図9】第3実施形態に係る吸引システムにおける第3吸引経路の概略図。
【
図11】第1から第3カムの概略断面図であり、Aは回転角度0°の状態を示し、Bは回転角度60°の状態を示し、Cは回転角度180°の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための例示的な実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態において説明する寸法、材料、形状及び構成要素の相対的な位置は任意に設定でき、本発明が適用される装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。また、特別な記載がない限り、本発明の範囲は、以下に具体的に記載された実施形態に限定されない。
【実施例0010】
唾液用排液チューブは、唾液を自力で呑み込めない患者、例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、筋ジストロフィー、パーキンソン病、アルツハイマー病、若しくは意識障害の患者、又は障害児等に使用できる。例えば、誤嚥性肺炎等を防止するために、吸引システム100の一例である持続低陰圧吸引システムは、患者の口腔内に留置される唾液用排液チューブを利用できる。例えば、唾液用排液チューブの内径側には針金が挿入されており、この針金を曲げることによって、患者の口内形状に針金の形状を合わせることができる。ただし、針金を曲げるだけでは、針金の形状を患者の口内形状に十分に合わせることが困難である場合がある。
【0011】
唾液用排液チューブの唾液を吸引する先端部は、患者の口腔内の唾液が溜まりやすい箇所に配置することが望ましい。ただし、患者の舌の動き又は体動により、先端部を患者の口腔内の適切な箇所に留置し続けることが困難である場合がある。さらに、唾液が溜まりやすい箇所は、患者毎に異なり、患者の体位によっても異なる。また、各患者の唾液の溜まりやすい箇所は、複数ある場合がある。そこで、唾液用排液チューブを複数利用すれば唾液を効率的に吸引できる。例えば、口腔内において先端部が移動した場合、又は唾液の溜まりやすい箇所が複数ある場合であっても唾液を効率的に吸引できる。
【0012】
[第1実施形態]
図1から
図4を参照して、患者から液体を吸引する吸引圧を複数の吸引経路に作用させる吸引システム100について説明する。
図1は、第1排液チューブ11を開放した状態の吸引システム100を示す概略図である。
図1に示す状態においては、第2排液チューブ12が閉鎖されており、第1排液チューブ11を介して唾液が吸引される。また、
図2は、第2排液チューブ12を開放した状態の吸引システム100を示す概略図である。
図2に示す状態においては、第1排液チューブ11が閉鎖されており、第2排液チューブ12を介して唾液が吸引される。また、
図3は、経過時間に対するカム21の回転角度の変化を説明する説明図であり、縦軸がカム21の回転開始からの回転角度を示しており、横軸がカム21の回転開始からの経過時間を示している。
図4は、吸引処理を説明するフローチャートである。
【0013】
図1に示すように、吸引システム100は、複数の吸引経路の一例として、第1排液チューブ11と吸引チューブ16を含む第1吸引経路と、第2排液チューブ12と吸引チューブ16を含む第2吸引経路とを備えている。例えば、吸引経路は、吸引部による吸引圧が作用する経路であり、液体又は空気等の気体が流れる流路を有している。また、吸引システム100は、第1吸引経路及び第2吸引経路に作用させる吸引圧を発生させる吸引部の一例として、ポンプ15をさらに備えている。ポンプ15は、複数の吸引経路のそれぞれに接続されている。なお、以下の説明では、第1吸引経路及び第2吸引経路を総称して、単に吸引経路という場合がある。
【0014】
第1排液チューブ11及び第2排液チューブ12は、吸引される液体の一例としての唾液が流れる内部流路を有している。また、吸引チューブ16は、ポンプ15が発生させる陰圧(又は負圧)に応じた吸引圧を吸引経路に作用させるように、空気が流れる流路を有しており、流れる空気の流量に応じた吸引圧が吸引経路に作用する。第1排液チューブ11及び第2排液チューブ12は、吸引システム100が接続される。そして、第1排液チューブ11及び第2排液チューブ12の先端部は、患者の口腔内に留置されている。それぞれの先端部は、口腔内の異なる箇所に留置されることが望ましい。ただし、口腔内の同じ箇所から唾液を吸引するように、両先端部が隣接して留置されていてもよい。なお、第1排液チューブ11及び第2排液チューブ12は、吸引システム100から取り外し可能に構成されている。ただし、吸引システム100は、第1排液チューブ11及び第2排液チューブ12を備えていてもよい。この場合、第1排液チューブ11及び第2排液チューブ12は、吸引システム100の一部と一体的に構成されていてもよい。
【0015】
吸引システム100によって、患者の体内の一例である口腔内から液体の一例である唾液が吸引される。そして、吸引システム100が吸引した唾液は、第1排液チューブ11及び第2排液チューブ12のそれぞれの内部流路を流れる。なお、複数の吸引経路の数は、二つには限定されず、三つ以上であってもよい。この場合、ポンプ15の数は、複数の吸引経路の数よりも少ない。すなわち、少なくとも一つのポンプ15に、二つ以上の吸引経路が接続されていればよい。また、吸引経路が三つ以上ある場合、カム機構20によって閉鎖されない排液チューブを含む別の吸引経路がポンプ15に接続されていてもよい。
【0016】
また、吸引システム100は、複数の吸引経路のそれぞれを閉鎖する閉鎖部の一例として、カム機構20を備えている。カム機構20は、回転体の一例であるカム21を有している。そして、カム21は、複数の吸引経路のそれぞれの一部の一例として、第1排液チューブ11及び第2排液チューブ12のそれぞれの一部を圧迫して閉鎖する。また、カム機構20は、カム21を回転させるモータ22を有している。モータ22は、一例としてDCモータ、ACモータ又は超音波モータ等である。また、モータ22とカム21との間には、不図示のシャフト及びギア等を含む回転伝達機構が設けられていてもよい。この場合、モータ22からの回転力は、回転伝達機構を介してカム21に伝達される。
【0017】
図1の例では、回転開始時の回転角度が0°である状態のカム21を実線によって示しており、回転開始後の回転角度が90°である状態のカム21を破線によって示している。ここで、回転角度とは、位置VP’とカム21の回転中心CPとを結んだ線分と、位置VPと回転中心CPとを結んだ線分とが成す角度である。位置VP’は、基準点の一例であるカム21の基礎円の円周上にある頂点の回転開始時の位置である。また、位置VPは、カム21の基礎円の円周上にある頂点の回転中の位置である。なお、基準点は基礎円の円周上にあればよく、カム21の頂点でなくともよい。また、
図1に示すカム21は、略半円状の形状を有しているが、涙形等の他の形状を有していてもよい。
【0018】
カム21がモータ22によって回転されると、カム21と当接している第1排液チューブ11及び第2排液チューブ12のそれぞれは、カム21と圧迫部23とによって挟まれて圧迫される。これにより、内部流路が押し潰されて、第1排液チューブ11及び第2排液チューブ12のそれぞれが閉鎖される。そのため、押し潰されている排液チューブにおいては、唾液の流動が阻害されて吸引が停止する。
図1の例では、実線で示すカム21によって、第2排液チューブ12が圧迫されており、第2排液チューブ12を介した唾液の吸引が停止している。一方、カム21によって圧迫されていない第1排液チューブ11においては、内部流路が押し潰されていない。そのため、唾液の流動が阻害されておらず、矢印DAで示す方向に第1排液チューブ11を介した唾液の吸引が行われている。
【0019】
回転するカム21の外周面が圧迫部23から離れる方向に移動すると、第1排液チューブ11及び第2排液チューブ12のそれぞれは、自らの弾性力によって元の形状に復帰する。これにより、内部流路も元の形状に復帰して、唾液の流動の阻害が解除されるため、唾液の吸引が行われる。
図1の例では、回転角度に応じて、カム21の外周面が圧迫部23から離れる方向に移動し、回転角度が90°である破線で示す状態においては、第2排液チューブ12が元の形状に復帰する。そのため、唾液の流動の阻害が解除され、第2排液チューブ12を介した唾液の吸引が行われる。なお、流れる唾液の量が極わずかであり、流動が実質的に阻害されていれば、内部流路が完全に押し潰されていなくともよい。
【0020】
さらに、吸引システム100は、複数の吸引経路に作用する吸引圧を発生させる吸引部の一例として、ポンプ15を有している。ここで、唾液の吸引に適した吸引圧は、吸引する唾液の粘度により異なる。ただし、唾液の粘度が高い場合であっても、痰の粘度を超えることはないと考えられる。そのため、第1排液チューブ11及び第2排液チューブ12に作用させる吸引圧は、一例として、最大陰圧-20kPから最小陰圧-2kPの範囲内に設定される。また、吸引経路には、液体槽の一例として、唾液を溜める唾液槽17が設けられている。
図1の例では、第1排液チューブ11及び第2排液チューブ12と、吸引チューブ16との間に唾液槽17が配置されている。また、唾液槽17には、第1排液チューブ11及び第2排液チューブ12が接続されている。すなわち、ポンプ15は、吸引チューブ16及び唾液槽17を介して、第1排液チューブ11及び第2排液チューブ12と接続されている。そして、第1排液チューブ11及び第2排液チューブ12を介して吸引された唾液は、唾液槽17に溜められる。
【0021】
[吸引の順序]
複数の吸引経路を利用することにより、口腔内の唾液が溜まりやすい複数の箇所のそれぞれに、各排液チューブの先端部を配置できる。ここで、一台のポンプ15によって、持続的に低い吸引圧(又は低陰圧)で複数の排液チューブを同時に吸引すると、他の排液チューブと比較して唾液を吸引し難くなる排液チューブが生じる。すなわち、唾液がより溜まりやすい箇所に位置する排液チューブの吸引抵抗は、唾液がより溜まりにくい箇所に位置する排液チューブよりも大きい。そのため、唾液が溜まりやすく且つより多量の唾液が溜まった箇所に配置された排液チューブは、比較的に唾液を吸引し難くなる。
【0022】
しかし、吸引圧を調整するために、複数の吸引経路のそれぞれに異なるポンプ15を接続すると、複数のポンプ15を備える必要がある。そのため、吸引システム100のサイズが大きくなり、且つ価格が高くなる。そこで、本実施形態の吸引システム100では、より少ないポンプ15によって、複数の吸引経路の閉鎖と開放とを交互に行う。これにより、唾液を吸引し難くなる排液チューブの発生を抑制できる。同時に、吸引システム100のサイズが大きくなること、及び価格が高くなることを抑制できる。
【0023】
具体的には、一台のポンプ15に接続されている複数の吸引経路の中の任意の一つを開放して、ポンプ15と連通する。そして、複数の吸引経路の他の全てを閉鎖して、ポンプ15との連通を阻害する。その後、所定の時間を経過した時に、閉鎖されていた吸引経路の中の任意の一つを開放して、ポンプ15と連通させる。そして、複数の吸引経路の他の全てを閉鎖して、ポンプ15との連通を阻害する。その後、所定の時間を経過した時に、閉鎖されていた吸引経路の中から先に開放した吸引経路を除く任意の一つの吸引経路を開放して、ポンプ15と連通させる。そして、複数の吸引経路の他の全てを閉鎖して、ポンプ15との連通を阻害する。同様に、開放する吸引経路を順次交代して、任意の一つの吸引経路から唾液を吸引する。
【0024】
図1及び
図2を参照して説明すると、吸引システム100は、カム機構20を制御する制御部19を備えている。一例として、制御部19は、不図示のプロセッサと、制御プログラムを記憶したコンピュータ読取可能な非一時的記憶媒体としてのメモリとを有しているコンピュータである。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)、又はMPU(Micro-Processing Unit)であり、メモリに記憶されたプログラムに基づいて、カム機構20及びポンプ15を含む吸引システム100の全体を制御すると共に、各種処理についても統括的に制御する。また、メモリは、プロセッサが動作するためのシステムワークメモリであるRAM(Random Access Memory)、並びにプログラム及びシステムソフトウェアを格納するROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disc Drive)及びSSD(Solid State Drive)等の記憶装置を含む。
【0025】
さらに、制御部19は、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、CF(Compact Flash)カード、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の可搬記録媒体、又はインターネット上のサーバ等の外部記憶媒体に記憶されたプログラムに従って制御を行うこともできる。また、制御部19は、不図示の流量センサ及び圧力センサがそれぞれ出力する流量及び吸引圧に基づいて、ポンプ15の動作を制御してもよい。一例として、流量センサ及び圧力センサは、唾液槽17に設けられる。そして、吸引される唾液の流量は、必要十分な流量となるように設定又は制御されることが望ましい。例えば、唾液を飲み込めない患者から唾液を吸引するときは、患者が口を閉じていない場合が多い。そして、口を閉じていない場合、吸引される唾液の流量が多いと患者の口内が乾燥してしまう。そこで、吸引される唾液の流量は、最大流量10L/min以下に設定される。なお、制御部19は、ハードウェア回路によって実現されてもよいし、コンピュータハードウェアとソフトウェアとを組み合わせた論理装置として実現されてもよい。
【0026】
制御部19は、カム機構20を制御して、第1排液チューブ11を含む第1吸引経路と、第2排液チューブ12を含む第2吸引経路のうち一つの吸引経路を開放すると共に、第1吸引経路及び第2吸引経路のうち残りの吸引経路である他の一つの吸引経路を閉鎖する。例えば、制御部19は、カム機構20のカム21の回転速度を制御する。その後、制御部19は、カム機構20を制御して、残りの吸引経路のうち、先に開放していた一つの吸引経路とは異なる別の吸引経路を開放すると共に、第1吸引経路及び第2吸引経路のうち、先に開放していた一つの吸引経路を含む他の吸引経路を閉鎖する。
【0027】
例えば、カム機構20は、
図1に示すように、第1排液チューブ11及び第2排液チューブ12のうち、先に第1吸引経路の第1排液チューブ11を開放すると共に、残りの第2吸引経路の第2排液チューブ12を閉鎖する。なお、開放の開始と閉鎖の開始とは同時でなくともよく、両者の間に時間的なずれがあってもよい。その後、カム21が回転し、
図2に示すように、回転開始時の頂点の位置VP’と回転中心CPとを結んだ線分と、回転中のカム21の頂点の位置VPと回転中心CPとを結んだ線分とが成す角度が180°になる。
【0028】
ここでは残りの吸引経路が第2吸引経路の一つであるので、カム機構20は、先に開放していた第1吸引経路とは異なる別の吸引経路として第2吸引経路を開放する。すなわち、カム機構20は、第2吸引経路の第2排液チューブ12を開放する。加えて、他の第1吸引経路が第1吸引経路の一つであるので、カム機構20は、先に開放していた第1吸引経路を含む他の吸引経路として第1吸引経路を閉鎖する。なお、開放の終了と閉鎖の終了とは同時でなくともよく、両者の間に時間的なずれがあってもよい。
【0029】
図2においては、カム21によって第1排液チューブ11が圧迫されて、第1排液チューブ11を介した唾液の吸引が停止している。一方、カム21によって圧迫されていない第2排液チューブ12は、内部流路が押し潰されていない。そのため、唾液の流動が阻害されておらず、矢印DBで示す方向に第2排液チューブ12を介した唾液の吸引が行われている。
【0030】
図3を参照して、60秒で一回転するカム機構20の動作について詳細に説明する。まず、回転開始時の経過時間が0秒の時は回転角度が0°である。このときは、第1排液チューブ11が開放されており、第2排液チューブ12が閉鎖されている。そして、15秒が経過して回転角度が90°となると、第1排液チューブ11及び第2排液チューブ12のいずれもが開放されている。その後、第1排液チューブ11は閉鎖され、第2排液チューブ12のみが開放されている。
【0031】
30秒が経過して回転角度が180°のときは、第2排液チューブ12が開放されており、第1排液チューブ11が閉鎖されている。また、45秒が経過して回転角度が90°のときは、第1排液チューブ11及び第2排液チューブ12のいずれもが開放されている。その後、第2排液チューブ12は閉鎖され、第1排液チューブ11のみが開放されている。そして、60秒が経過して回転角度が0°のときは、第1排液チューブ11が開放されており、第2排液チューブ12が閉鎖されている。その後、吸引の終了まで、同様の開放と閉鎖が繰り返される。
【0032】
図3の例では、第1排液チューブ11及び第2排液チューブ12のいずれもが開放される状態が存在する。そのため、カム21が一回転する間に第1排液チューブ11及び第2排液チューブ12が開放されている時間は、それぞれ30秒よりも僅かに長い。また、カム21が一回転する間に第1排液チューブ11及び第2排液チューブ12が閉鎖されている時間は、それぞれ30秒よりも短くなる。ただし、第1排液チューブ11及び第2排液チューブ12のいずれもが開放される状態が続くのは、わずかの時間である。そのため、吸引に与える影響は少ない。代替的に、第1排液チューブ11及び第2排液チューブ12のいずれもが閉鎖される状態が存在するように、カム21の形状を変えてもよい。
【0033】
一例として、制御部19は、一つの吸引経路の開放から所定の時間が経過した後に、別の吸引経路を開放する。例えば、所定の時間は、カム21が0°から90°まで回転するのに要する時間である。他の例の所定の時間は、カム21が一回転に要す時間の半分の時間である。なお、所定の時間は、カム21の形状等に応じて変更されてもよい。また、吸引経路の開放後から次の吸引経路を開放するまでの時間は、複数の吸引経路同士で異なっていてもよい。例えば、第1吸引経路を開放してから第2吸引経路を開放するまでの時間は、第2吸引経路を開放してから第1吸引経路を開放するまでの時間よりも長くてもよく、短くてもよい。
【0034】
また、制御部19は、複数の吸引経路が順番に開放されるようにカム機構20を制御する。一例として、制御部19は、複数の吸引経路の残りの吸引経路のうち、先に開放された先開放経路がある場合、残りの吸引経路のうち先開放経路を除いた中から別の一つの吸引経路を開放するように、カム機構20を制御する。さらに、制御部19は、全ての複数の吸引経路が開放された後に、最初に開放された一つの吸引経路を再度開放するように、カム機構20を制御する。
【0035】
図1を例に説明すると、第1排液チューブ11及び第2排液チューブ12のうち、第1吸引経路の第1排液チューブ11を開放すると、残りの吸引経路は第2排液チューブ12を含む第2吸引経路となる。ここで、第2排液チューブ12は、先に開放されていない。そのため、第2吸引経路が開放の対象から除かれず、第1吸引経路の次に開放される別の吸引経路として第2吸引経路が開放される。さらに、第1排液チューブ11及び第2排液チューブ12の全てが開放された後に、最初に開放された第1排液チューブ11が再度開放される。
【0036】
また、三つの吸引経路がある例では、三つの吸引経路のうち一つ目の吸引経路を開放すると、残りの吸引経路は二つとなる。ここで、二つの吸引経路は先に開放されていないため、開放の対象から除かれず、次に開放される別の吸引経路として二つの吸引経路のいずれかが開放される。続いて、三つの吸引経路のうち二つ目の吸引経路を開放すると、残りの吸引経路は一つ目の吸引経路と三つ目の吸引経路の二つとなる。ここで、一つ目の吸引経路は先に開放されている先開放経路である。そのため、一つ目の吸引経路が開放の対象から除かれる結果、二つ目の吸引経路の次に開放される別の吸引経路として、三つ目の吸引経路が開放される。さらに、三つの吸引経路の全てが開放された後に、最初に開放された一つ目の吸引経路が再度開放される。
【0037】
なお、開放される吸引経路の順番は、任意に設定できてもよい。例えば、順番は、並んでいる吸引経路の左側から右側に向かう順番又は右側から左側に向かう順番であってもよい。さらに、順番は、排液チューブのサイズが大きい順又は小さい順、排液チューブに連通する液体槽の大きい順又は小さい順、若しくは、排液チューブに連通する液体槽に溜まっている液体の液量が多い順又は少ない順等であってもよい。また、順番はランダムでもよく、各吸引経路に連続する番号が関連付けられている場合には、その番号順であってもよい。
【0038】
[吸引処理]
図4のフローチャートを参照して、吸引システム100における吸引処理について説明する。一例として、吸引処理は、吸引開始のユーザ操作により開始して、吸引終了のユーザ操作により終了する。例えば、ユーザ操作は、吸引システム100の操作部に設けられたボタンの押し下げ、又は吸引システム100の表示操作部であるタッチパネルに設けられたボタンのタッチ操作である。
【0039】
ユーザが吸引開始のユーザ操作を行うと、カム機構20は、複数の排液チューブのうちの一つである第1吸引経路の第1排液チューブ11を開放して、残りの吸引経路である第2吸引経路の第2排液チューブ12を閉鎖する(S101)。なお、吸引開始時に、一つの吸引経路が既に開放されている場合、開放のためのカム機構20の回転動作は行われない。同様に、吸引開始時に、残りの吸引経路が既に閉鎖されている場合、閉鎖のためのカム機構20の回転動作は行われない。その後、所定時間が経過していない場合(S102でNO)、第1排液チューブ11の開放と第2排液チューブ12の閉鎖とが継続する。
【0040】
一方、所定時間が経過すると(S102でYES)、カム機構20は、複数の吸引経路のうち別の吸引経路である第2吸引経路の第2排液チューブ12を開放して、残りのカム機構20である第1排液チューブ11を閉鎖する(S103)。その後、所定時間が経過していない場合(S104でNO)、第1排液チューブ11の閉鎖と第2排液チューブ12の開放とが継続する。一方、所定時間が経過して(S104でYES)、ユーザが吸引終了のユーザ操作を行うと(S105でYES)、吸引処理が終了する。吸引終了ではない場合(S105でNO)、カム機構20は、複数の吸引経路のうち別の吸引経路である第1排液チューブ11を再度開放して、残りの吸引経路である第2排液チューブ12を再度閉鎖する(S103)。以降、吸引終了まで、順次一つの吸引経路が開放され、残りの吸引経路が閉鎖される。
【0041】
以上説明した第1実施形態の吸引システム100によれば、複数の吸引経路を利用する場合に、より少ない吸引源を用いて液体を吸引できる。また、一つの吸引源に複数の吸引経路が接続されていても効率的に液体を吸引できる。すなわち、複数の排液チューブのそれぞれの先端部を、唾液の溜まりやすい複数の位置のそれぞれに配置できる。さらに、各排液チューブから間欠的且つ確実に唾液を吸引できるので、定期的な唾液の溜まり状況の確認頻度を削減できる。例えば、患者が就寝している夜間には、患者の介護者又は患者の家族が、必要に応じて排液チューブの先端部を移動して患者の唾液を吸引する。そのために、定期的に患者の唾液の溜まり状況を確認する必要がある。これに対して、吸引システム100によれば、口腔内に唾液が溜まり難くなるため、確認頻度を削減できる。
【0042】
[第2実施形態]
図5及び
図6を参照して第2実施形態について説明する。第2実施形態は、胸腔及び腹腔等の閉鎖空間から血液等の体液を含む排液が吸引される点において、第1実施形態と異なる。
図5は吸引システム200を示す概略図であり、
図6はソレノイド機構220の動作の説明図である。なお、第2実施形態の説明においては、第1実施形態との相違点について説明し、既に説明した構成要素については同じ参照番号を付し、その説明を省略する。特に説明した場合を除き、同じ参照符号を付した構成要素は略同一の動作及び機能を奏し、その作用効果も略同一である。
【0043】
吸引システム200は、複数の吸引経路の一例として、第1吸引経路、第2吸引経路、及び第3吸引経路を備えている。第1吸引経路は、第1排液チューブ211及び第1吸引チューブ216Aを含んでいる。第2吸引経路は、第2排液チューブ212及び第2吸引チューブ216Bを含んでいる。そして、第3吸引経路は、第3排液チューブ213及び第3吸引チューブ216Cを含んでいる。さらに、吸引システム200は、第1吸引経路から第3吸引経路に作用させる吸引圧を発生させる吸引部の一例として、吸引装置215を備えている。そして、吸引装置215は、複数の吸引経路のそれぞれに接続されている。なお、以下の説明では、第1吸引経路から第3吸引経路を総称して、単に吸引経路という場合がある。また、第1吸引チューブ216A、第2吸引チューブ216B、及び第3吸引チューブ216Cを総称して、単に吸引チューブ216という場合がある。
【0044】
第1排液チューブ211、第2排液チューブ212、及び第3排液チューブ213のそれぞれは、患者の胸腔又は腹腔等の内部に留置されているドレインチューブに接続されている。また、各ドレインチューブは吸引経路に含まれており、それぞれのドレインチューブの先端部は、胸腔及び腹腔等の内部の異なる箇所に留置されることが望ましい。ただし、胸腔及び腹腔等の内部の同じ箇所から血液等の体液を吸引するように、複数のドレインチューブの先端部の少なくとも二つが、隣接して留置されていてもよい。なお、第1排液チューブ211、第2排液チューブ212、及び第3排液チューブ213は、吸引システム200から取り外し可能に構成されている。ただし、吸引システム200は、第1排液チューブ211、第2排液チューブ212、及び第3排液チューブ213を備えていてもよい。この場合、第1排液チューブ211、第2排液チューブ212、及び第3排液チューブ213は、吸引システム200の一部と一体的に構成されていてもよい。
【0045】
吸引システム200によって、患者の体内の一例である胸腔及び腹腔等の内部から液体の一例である体液(以下、「排液」ともいう)が吸引される。また、第1排液チューブ211、第2排液チューブ212、及び第3排液チューブ213は、排液が流れる内部流路を有している。また、吸引チューブ216は、吸引装置215が発生させる陰圧に応じた吸引圧を吸引経路に作用させるように、空気が流れる流路を有している。例えば、腹腔内又は胸腔内から外科手術後に不要な排液を吸引する場合、最大陰圧-5kPを超えない範囲の吸引圧を作用させる。ただし、治療を目的として、吸引圧が陰圧-5kPを超えてもよい。一例として、慢性創傷に対する陰圧閉鎖療法を行う場合、吸引圧が-16.7kPから-20.0kPの範囲内となってもよい。また、腹腔内又は胸腔内から排液を吸引する場合、各吸引箇所の適正な吸引量の制御が必要となる場合がある。この場合には、各吸引経路に異なる吸引圧を作用させてもよい。一例として、第1吸引経路を開放しているときの吸引圧と、第2又は第3吸引経路を開放しているときの吸引圧とが異なるように、必要に応じて吸引装置215において吸引圧が設定されてもよい。そして、吸引システム200が吸引した排液は、第1排液チューブ211、第2排液チューブ212、及び第3排液チューブ213のそれぞれを流れる。複数の吸引経路の数は、三つには限定されず、四つ以上であってもよい。この場合、吸引装置215の数は、複数の吸引経路の数よりも少ない。すなわち、少なくとも一つの吸引装置215に、二つ以上の吸引経路が接続されていればよい。そのため、吸引システム200は、二つ以上の吸引装置215を備えていてもよい。
【0046】
また、吸引システム200は、複数の吸引経路のそれぞれを閉鎖する閉鎖部の一例として、第1ソレノイド機構220A、第2ソレノイド機構220B、及び第3ソレノイド機構220Cを備えている。以下、第1ソレノイド機構220A、第2ソレノイド機構220B、及び第3ソレノイド機構220Cを総称して、単にソレノイド機構220という場合もある。ソレノイド機構220のそれぞれは、周知の構造を有しており、一例としてコイルの中で可動式のピンが動く仕組みを有している。また、ソレノイド機構220のそれぞれは、吸引チューブ216のそれぞれの一部を圧迫して閉鎖する。なお、ソレノイド機構220によって閉鎖されない吸引チューブが、吸引システム200に接続されていてもよい。
【0047】
ソレノイド機構220に電圧が印加されていない状態では、吸引チューブ216はピンによって圧迫されている。これにより、内部流路が押し潰されて、吸引チューブ216のそれぞれが閉鎖される。そのため、押し潰されている吸引チューブ216においては、空気の流れが阻害されて吸引が停止する。代替的に、ソレノイド機構220は、吸引チューブ216の内部流路を閉塞する閉塞部材を進退移動させてもよい。この場合、ソレノイド機構220は、吸引チューブ216の内部流路内に突出する閉塞位置と内部流路から退避する開放位置との間で閉塞部材を移動させる。閉塞位置にある閉塞部材は、吸引チューブ216の内部流路を閉鎖して、吸引チューブ216を流れる空気の流れを阻害する。
【0048】
さらに、吸引システム200は、複数の吸引経路に作用する吸引圧を発生させる吸引部の一例として、吸引装置215を有している。一例として、吸引装置215は、陰圧ポンプ、壁吸引、又は排液バッグ等である。例えば、壁吸引は、手術室又は病室の壁面等に設けられている負圧源である。また、排液バッグは、内部にバネが配置されているバッグであり、バネが伸びる力によって膨らんで陰圧を生じさせる。
【0049】
吸引経路には、排液を溜める液体槽の一例として排液槽217が設けられている。
図5の例では、第1排液チューブ211、第2排液チューブ212、及び第3排液チューブ213と、吸引チューブ216との間に排液槽217が配置されている。また、各排液槽217には、第1排液チューブ211、第2排液チューブ212、又は第3排液チューブ213が接続されている。すなわち、吸引装置215は、吸引チューブ216及び排液槽217を介して第1排液チューブ211、第2排液チューブ212、及び第3排液チューブ213と接続されている。そして、第1排液チューブ211、第2排液チューブ212、及び第3排液チューブ213を介して吸引された排液は、排液槽217に溜められる。
【0050】
排液槽217は、吸引された液体の吸引量として、それぞれの吸引経路を介して吸引された液体の吸引量と、全ての吸引経路を介して吸引された液体の合計した吸引量との少なくとも一方を示す吸引量部214を有している。例えば、吸引量部214は吸引された排液の大まかな体積又は重量を示し、これによりユーザは、第1排液チューブ211、第2排液チューブ212、及び第3排液チューブ213を介して吸引された液体の吸引量を知ることができる。なお、吸引量部214は、所定時間毎、例えば一時間、十二時間又は一日毎の吸引量を示してもよい。一例として、吸引量部214は、吸引システム200が備える表示装置であり、タッチパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等である。また、吸引量部214は、制御部219と接続されていてもよい。この場合、制御部219は、排液槽217に設けられた不図示の液量検知部から液量を示すデータを受け取り、吸引量部214に表示させる。一例として、液量検知部は、排液槽217内の液体の重量を計測する計量器である。また、液量検知部は、排液槽217内の液体の体積を検知するセンサであってもよい。例えば、当該センサは、溜まった排液の液面の位置を検知することによって、液面の位置に対応する体積を検知する。
【0051】
代替的に、吸引量部214は、液量を示す目盛であってもよい。例えば、排液槽217の少なくとも一部が透過性を有しており、ユーザは、排液槽217の外側から液面の位置を視認する。そして、ユーザは、排液槽217に設けられた目盛と液面の位置とを比較して、排液の総吸引量を認識できる。すなわち、吸引量部214としての目盛は、液面との比較によってユーザに排液の総吸引量を示すように機能する。
【0052】
[吸引の順序]
胸腔又は腹腔の患部の外科治療において、患部の処理後に胸腔又は腹腔を閉じるときに、患部を処置した部位からの血液等の流出が閉胸又は閉腹の後も継続することがある。この場合、吸引システム200の一例である持続低陰圧吸引システムに接続した排液チューブに接続されたドレインチューブを、胸腔又は腹腔の内部に留置する。これにより、閉胸又は閉腹の後に、患者の体外へ排液を取り出すことができる。症例によっては、複数の患部を処理する場合があり、症状に合わせて複数のドレインチューブを留置する。例えば、患者が重症の場合、留置するドレインチューブが三つ以上となる場合がある。
【0053】
複数のドレインチューブを利用する場合、患者の体内の排液の溜まりやすい複数の箇所のそれぞれに、ドレインチューブの先端部を配置する。ここで、各排液チューブに吸引装置215を接続することもできる。しかし、各排液チューブに吸引装置215を接続すると、複数の吸引装置215を備える必要があるため、吸引システム200のサイズが大きくなり且つ価格が高くなる。そこで、より少ない吸引装置215によって、複数の吸引経路の開放を順番に行う。これにより、吸引システム200のサイズが大きくなること、及び価格が高くなることを抑制できる。
【0054】
具体的に、一台の吸引装置215に接続されている複数の吸引経路の中の任意の一つを開放して、吸引装置215と連通する。そして、複数の吸引経路の他の全てを閉鎖して、吸引装置215との連通を阻害する。その後、所定の時間を経過した時に、閉鎖されていた吸引経路の中の任意の一つを開放して、吸引装置215と連通する。そして、複数の吸引経路の他の全てを閉鎖して、吸引装置215との連通を阻害する。その後、所定の時間を経過した時に、閉鎖されていた吸引経路の中から先に開放した吸引経路を除く任意の一つを開放して、吸引装置215と連通する。そして、複数の吸引経路の他の全てを閉鎖して、吸引装置215との連通を阻害する。同様に、開放する吸引経路を順次変えて、複数の吸引経路の中の任意の一つの吸引経路から排液を吸引する。
【0055】
図5を参照して説明すると、吸引システム200は、ソレノイド機構220を制御する制御部219を備えている。一例として、制御部219は、不図示のプロセッサと、制御プログラムを記憶したコンピュータ読取可能な非一時的記憶媒体としてのメモリとを有しているコンピュータである。プロセッサは、メモリに記憶されたプログラムに基づいて、ソレノイド機構220及び吸引装置215を含む吸引システム200の全体を制御すると共に、各種処理についても統括的に制御する。なお、制御部219は、ハードウェア回路によって実現されてもよいし、コンピュータハードウェアとソフトウェアとを組み合わせた論理装置として実現されてもよい。
【0056】
制御部219は、ソレノイド機構220を制御して、複数の吸引経路のうち一つの吸引経路として第1吸引経路の第1吸引チューブ216Aを開放すると共に、複数の吸引経路のうち残りの吸引経路である第1及び第2吸引経路の第2吸引チューブ216B及び第3吸引チューブ216Cを閉鎖する。その後、制御部219は、ソレノイド機構220を制御して、残りの吸引経路のうち、先に開放していた第1吸引経路とは異なる別の一つの吸引経路として、第2吸引経路の第2吸引チューブ216Bを開放すると共に、先に開放していた第1吸引経路を含む他の吸引経路として、第1及び第3吸引経路の第1吸引チューブ216A及び第3吸引チューブ216Cを閉鎖する。
【0057】
例えば、第1ソレノイド機構220Aは、吸引チューブ216のうち先に第1吸引チューブ216Aを開放すると共に、残りの吸引チューブである第2吸引チューブ216B及び第3吸引チューブ216Cを閉鎖する。これにより、第2ソレノイド機構220B及び第3ソレノイド機構220Cによって、第2吸引チューブ216B及び第3吸引チューブ216Cが圧迫されて、第1排液チューブ211及び第3排液チューブ213を介した排液の吸引が停止する。一方、第1吸引チューブ216Aは、内部流路が押し潰されていない。そのため、空気の流動が阻害されておらず、第1排液チューブ211を介した排液の吸引が行われる。なお、開放の開始と閉鎖の開始とは同時でなくともよく、両者の間の時間的なずれがあってもよい。
【0058】
第1吸引チューブ216Aの開放の後、所定の時間が経過すると、第2ソレノイド機構220Bが、残りの吸引チューブのうち、先に開放していた第1吸引チューブ216Aとは異なる別の吸引チューブとして第2吸引チューブ216Bを開放する。ここで、残りの吸引チューブは、第2吸引チューブ216B及び第3吸引チューブ216Cの二つである。そのため、先に開放していた第1吸引チューブ216Aとは異なる別の吸引チューブは、第2吸引チューブ216B及び第3吸引チューブ216Cのいずれかとなる。加えて、第1ソレノイド機構220A及び第3ソレノイド機構220Cは、先に開放していた第1吸引チューブ216Aを含む他の吸引チューブとして、第1吸引チューブ216A及び第3吸引チューブ216Cを閉鎖する。これにより、第1ソレノイド機構220A及び第3ソレノイド機構220Cによって第1吸引チューブ216A及び第3吸引チューブ216Cが圧迫されて、第1排液チューブ211及び第3排液チューブ213を介した排液の吸引が停止する。一方、第2吸引チューブ216Bは、内部流路が押し潰されていない。そのため、空気の流動が阻害されておらず、第2排液チューブ212を介した排液の吸引が行われる。なお、開放の終了と閉鎖の終了とは同時でなくともよく、両者の間の時間的なずれがあってもよい。
【0059】
第2吸引チューブ216Bが開放されると、複数の吸引チューブのうち残りの吸引チューブは、第1吸引チューブ216A及び第3吸引チューブ216Cの二つとなる。そして、残りの吸引チューブのうち第1吸引チューブ216Aは、先に開放された先開放経路である第1吸引経路に含まれている。この場合、制御部219は、ソレノイド機構220を制御して、残りの吸引チューブのうち第1吸引チューブ216Aを除いた中から、別の吸引チューブとしての第3吸引チューブ216Cを開放する。加えて、第1ソレノイド機構220A及び第2ソレノイド機構220Bは、他の吸引チューブとして、第1吸引チューブ216A及び第2吸引チューブ216Bを閉鎖する。これにより、第1ソレノイド機構220A及び第2ソレノイド機構220Bによって第1吸引チューブ216A及び第2吸引チューブ216Bが圧迫されて、第1排液チューブ211及び第2排液チューブ212を介した排液の吸引が停止する。一方、第3吸引チューブ216Cは、内部流路が押し潰されていない。そのため、空気の流動が阻害されておらず、第3排液チューブ213を介した排液の吸引が行われる。
【0060】
これにより、吸引チューブ216の全てが開放されたことになる。そのため、制御部219はソレノイド機構220を制御して、最初に開放された第1吸引チューブ216Aを再度開放すると共に、第2吸引チューブ216B及び第3吸引チューブ216Cを閉鎖する。以降、同様に開放と閉鎖が順次行われる。
【0061】
図6を参照して、ソレノイド機構220の動作について詳細に説明する。ソレノイド機構220は、ON状態の時に吸引チューブ216を開放し、OFF状態の時に吸引チューブ216を閉鎖する。吸引開始直後のタイミングt0においては、第1ソレノイド機構220AがON状態となり、第1吸引チューブ216Aが開放される。このとき、第2ソレノイド機構220B及び第3ソレノイド機構220CはOFF状態であり、第2吸引チューブ216B及び第3吸引チューブ216Cは閉鎖されている。そのため、第1排液チューブ211が接続される排液槽217が吸引装置215と連通し、タイミングt0からt1の間は第1排液チューブ211のみが吸引状態となる。
【0062】
タイミングt0から所定の時間を経過したタイミングt1においては、第2ソレノイド機構220BがON状態となり、第2吸引チューブ216Bが開放される。このとき、第1ソレノイド機構220A及び第3ソレノイド機構220CはOFF状態であり、第1吸引チューブ216A及び第3吸引チューブ216Cは閉鎖されている。そのため、第2排液チューブ212が接続される排液槽217が吸引装置215と連通し、タイミングt1からt2の間は第2排液チューブ212のみが吸引状態となる。
【0063】
タイミングt1から所定の時間を経過したタイミングt2においては、第3ソレノイド機構220CがON状態となり、第3吸引チューブ216Cが開放される。このとき、第1ソレノイド機構220A及び第2ソレノイド機構220BはOFF状態であり、第1吸引チューブ216A及び第2吸引チューブ216Bは閉鎖されている。そのため、第3排液チューブ213が接続される排液槽217が吸引装置215と連通し、タイミングt2からt3の間は第3排液チューブ213のみが吸引状態となる。その後、タイミングt2から所定の時間を経過すると、第1ソレノイド機構220AがON状態となる。以降、吸引終了まで同様の開放と閉鎖が繰り返される。
【0064】
制御部219は、複数の吸引経路が順番に開放されるようにソレノイド機構220を制御する。一例として、複数の吸引経路を開放する所定の順序は、複数の吸引経路の残りの吸引経路のうち、先に開放された先開放経路がある場合には、残りの吸引経路のうち先開放経路を除いた中から一つの別の吸引経路を開放するように設定されている。さらに、所定の順序は、複数の吸引経路の全てが開放された後に、最初に開放された一つの吸引経路を再度開放するように設定されている。
【0065】
図5を例に説明すると、吸引チューブ216のうち第1吸引チューブ216Aが開放されると、残りの吸引チューブは第2吸引チューブ216B及び第3吸引チューブ216Cとなる。そのため、第1吸引チューブ216Aの次に開放される別の吸引チューブとして、第2吸引チューブ216B及び第3吸引チューブ216Cのいずれかが開放される。また、次に第2吸引チューブ216Bが開放されると、その次に解放される別の吸引チューブとしては、残りの吸引チューブである第1吸引チューブ216A及び第3吸引チューブ216Cのうち、先に開放された第1吸引チューブ216Aが除かれる。そのため、別の吸引チューブとして第3吸引チューブ216Cが開放される。これにより、複数の吸引チューブの全てが開放されるため、その次には、最初に開放された第1吸引チューブ216Aが再度開放される。
【0066】
以上説明した第2実施形態の吸引システム200によれば、複数の吸引経路を利用する場合に、より少ない吸引源を用いて液体を吸引できる。また、一つの吸引源に複数の吸引経路が接続されていても効率的に液体を吸引できる。すなわち、複数の吸引経路のそれぞれの先端部を、排液の溜まりやすい複数の位置のそれぞれに配置できる。また、腹腔内又は胸腔内から吸引される排液の吸引量は、腹腔内又は胸腔内においてリークしている体液の量を超えることはない。そのため、リークしている体液の量が多いことが、排液の吸引量等に基づいて確認された場合、必要に応じて医師が治療又は措置を行うことができる。
【0067】
なお、次にON状態となるソレノイド機構220が、先にON状態となっているソレノイド機構220がOFF状態となるタイミングよりも僅かに早く、OFF状態からON状態となってもよい。すなわち、僅かな時間、二つのソレノイド機構220が重複してON状態となる状態が生じてもよい。僅かな時間であれば、吸引への影響はほとんどないためである。また、僅かな時間、全てのソレノイド機構220がOFF状態となる状態が生じてもよい。
【0068】
[第3実施形態]
図7から
図11を参照して第3実施形態の吸引システム300について説明する。第3実施形態は、複数のカムを備える点において、第1実施形態と異なる。
図7は、第1排液チューブ311を開放した状態の吸引システム300を示す概略図である。また、
図8は、第2排液チューブ312を閉鎖した状態の吸引システム300を示す概略図である。
図9は、第3排液チューブ313を閉鎖した状態の吸引システム300を示す概略図である。
図7から
図9に示す状態においては、第2排液チューブ312及び第3排液チューブ313が閉鎖されており、第1排液チューブ311を介して唾液が吸引される。
【0069】
また、
図10は、経過時間に対する第1カム321Aの回転角度の変化を説明する説明図であり、縦軸が第1カム321Aの回転開始からの回転角度を示しており、横軸が第1カム321Aの回転開始からの経過時間を示している。また、
図11は、第1カム321A、第2カム321B、及び第3カム321Cの概略断面図である。そして、
図11は、一点鎖線で示す回転中心CPを通り圧迫部323のカム321側の面に直交する断面を示し、回転中心CPに対して直交する水平方向から見た断面を示している。なお、以下の説明では、第1カム321A、第2カム321B、及び第3カム321Cを総称して、単にカム321という場合がある。
【0070】
図7に示すように、吸引システム300は、複数の吸引経路の一例として、第1排液チューブ311と吸引チューブ16を含む第1吸引経路と、第2排液チューブ312と吸引チューブ16を含む第2吸引経路と、第3排液チューブ313と吸引チューブ16を含む第3吸引経路とを備えている。そして、第1排液チューブ311、第2排液チューブ312、及び第3排液チューブ313は、圧迫部323と対向する位置において互いに重なる位置に配置されている。なお、以下の説明では、第1吸引経路、第2吸引経路、及び第3吸引経路を総称して、単に吸引経路という場合がある。
【0071】
第1排液チューブ311、第2排液チューブ312、及び第3排液チューブ313は、唾液が流れる内部流路を有している。また、吸引チューブ16は、ポンプ15が発生させる陰圧に応じた吸引圧を吸引経路に作用させるように、空気が流れる流路を有しており、流れる空気の流量に応じた吸引圧が吸引経路に作用する。第1排液チューブ311、第2排液チューブ312、及び第3排液チューブ313には、吸引システム300が接続される。そして、第1排液チューブ311、第2排液チューブ312、及び第3排液チューブ313の先端部は、患者の口腔内に留置されている。吸引システム300が吸引した唾液は、第1排液チューブ311、第2排液チューブ312、及び第3排液チューブ313のそれぞれの内部流路を流れる。
【0072】
また、吸引システム300は、複数の吸引経路のそれぞれを閉鎖する閉鎖部の一例として、カム機構320を備えている。カム機構320は、回転体の一例である第1カム321A、第2カム321B、及び第3カム321Cを有している。各カム321は、いずれも同じ形状を有しており、回転中心CPの周りを同一方向に回転する。例えば、各カム321は、回転中心CPを中心とする円形から中心角が120°の扇形の円弧部分を除いた残りからなる形状を有している。そして、回転中心CPを基準として、第2カム321Bは、第1カム321Aに対して120°傾いた姿勢であり、第3カム321Cは、第1カム321Aに対して240°傾いた姿勢である。なお、第1カム321A、第2カム321B、及び第3カム321Cの少なくとも二つは、互いに異なる形状を有していてもよい。また、第2カム321B及び第3カム321Cの第1カム321Aに対する傾きが、互いに異なっていてもよい。カムの形状又はカムの姿勢を異ならせることにより、各吸引経路の開放時間の長さを異ならせることができる。
【0073】
ただし、
図7の例では、説明の便宜上、回転角度が0°である状態の第1カム321Aのみを図示している。実際には、回転中心CPの延在方向において第1カム321Aと重なる位置に、第2カム321B(
図8)と、第3カム321C(
図9)とが配置されている。また、カム機構320は、各カム321を回転させるモータ22を有している。カム321がモータ22によって回転されると、カム321と当接している第1排液チューブ311、第2排液チューブ312、及び第3排液チューブ313のそれぞれは、カム321と圧迫部323とによって挟まれて圧迫される。これにより、内部流路が押し潰されて、第1排液チューブ311、第2排液チューブ312、及び第3排液チューブ313のそれぞれが閉鎖される。そのため、押し潰されている排液チューブにおいては、唾液の流動が阻害されて吸引が停止する。
図7の例では、第1カム321Aによって圧迫されていない第1排液チューブ311においては、内部流路が押し潰されていない。そのため、唾液の流動が阻害されておらず、矢印DAで示す方向に第1排液チューブ311を介した唾液の吸引が行われている。
【0074】
さらに、吸引経路には、液体槽の一例として、唾液を溜める唾液槽17が設けられている。
図7から
図9の例では、第1排液チューブ311、第2排液チューブ312、及び第3排液チューブ313と、吸引チューブ16との間に唾液槽17が配置されている。また、唾液槽17には、第1排液チューブ311、第2排液チューブ312、及び第3排液チューブ313が接続されている。そして、第1排液チューブ311、第2排液チューブ312、及び第3排液チューブ313を介して吸引された唾液は、唾液槽17に溜められる。なお、第1排液チューブ311、第2排液チューブ312、及び第3排液チューブ313は、三つに分岐した接続チューブを介して唾液槽17に接続されている。ただし、第1排液チューブ311、第2排液チューブ312、及び第3排液チューブ313のそれぞれが、個別に唾液槽17に接続されていてもよい。
【0075】
[吸引の順序]
図7から
図9を参照して吸引の順序について説明する。吸引システム300は、カム機構320を制御する制御部19を備えている。制御部19は、カム機構320を制御して、第1排液チューブ311を含む第1吸引経路、第2排液チューブ312を含む第2吸引経路、及び第3排液チューブ313を含む第3吸引経路のうち一つの吸引経路を開放すると共に、第1吸引経路、第2吸引経路、及び第3吸引経路のうち残りの吸引経路を閉鎖する。例えば、制御部19は、カム機構320のカム321の回転速度を制御する。その後、制御部19は、カム機構320を制御して、残りの吸引経路のうち、先に開放していた一つの吸引経路とは異なる別の吸引経路を開放すると共に、第1吸引経路、第2吸引経路、及び第3吸引経路のうち、先に開放していた一つの吸引経路を含む他の吸引経路を閉鎖する。
【0076】
例えば、カム機構320は、
図7に示すように、先に第1排液チューブ311を開放する。このとき、回転角度が0°の状態である第1カム321Aは、第1排液チューブ311を圧迫していない。そのため、第1排液チューブ311を含む第1吸引経路は開放状態となっている。そして、唾液の流動が阻害されておらず、矢印DAで示す方向に第1排液チューブ311を介した唾液の吸引が行われている。このとき、カム機構320は、
図8及び
図9に示すように、残りの第2吸引経路及び第3吸引経路の第2排液チューブ312と第3排液チューブ313を閉鎖する。
【0077】
すなわち、第1カム321Aに対して120°傾いている第2カム321Bは、
図8に示すように、第2排液チューブ312を圧迫している。そのため、第2排液チューブ312を含む第2吸引経路は閉鎖状態となっている。そして、第2排液チューブ312を介した唾液の吸引が停止している。同様に、第1カム321Aに対して240°傾いている第3カム321Cは、
図9に示すように、第3排液チューブ313を圧迫している。そのため、第3排液チューブ313を含む第3吸引経路は閉鎖状態となっている。そして、第3排液チューブ313を介した唾液の吸引が停止している。なお、説明の便宜上、
図8の例では第2カム321Bのみを図示しており、
図9の例では第3カム321Cのみを図示している。しかし、実際には、回転中心CPの延在方向において第1カム321Aと重なる位置に、第2カム321B及び第3カム321Cが配置されている。
【0078】
その後、カム機構320は、複数の吸引経路の中から一つの吸引経路を順次開放して、その他の残りの吸引経路を閉鎖する。すなわち、各カム321が回転すると、カム機構320は、先に開放していた第1吸引経路とは異なる別の吸引経路として第3吸引経路を開放する。すなわち、カム機構320は、第3吸引経路の第3排液チューブ313を開放する。加えて、カム機構320は、先に開放していた第1吸引経路を含む他の吸引経路として第1吸引経路及び第2吸引経路を閉鎖する。その後、各カム321がさらに回転すると、カム機構320は、別の吸引経路として第2吸引経路を開放する。すなわち、カム機構320は、第2吸引経路の第2排液チューブ312を開放する。加えて、カム機構320は、他の吸引経路として第1吸引経路及び第3吸引経路を閉鎖する。
【0079】
図10を参照して、60秒で一回転する第1カム321Aの動作について詳細に説明する。まず、回転開始時の経過時間が0秒の時は、第1カム321Aの回転角度が0°である。このときは、第1排液チューブ311が開放されており、第2排液チューブ312及び第3排液チューブ313が閉鎖されている。すなわち、
図11Aに示すように、第1カム321Aが第1排液チューブ311から離隔しており、第1排液チューブ311は開放されている。一方、第2カム321Bは第2排液チューブ312を圧迫しており、第3カム321Cは第3排液チューブ313を圧迫している。そのため、第2排液チューブ312及び第3排液チューブ313は閉鎖されている。
【0080】
そして、10秒が経過して第1カム321Aの回転角度が60°のときは、第1排液チューブ311及び第2排液チューブ312が閉鎖されており、第3排液チューブ313が開放されている。すなわち、
図11Bに示すように、第3カム321Cが第3排液チューブ313から離隔しており、第3排液チューブ313は開放されている。一方、第1カム321Aは第1排液チューブ311を圧迫しており、第2カム321Bは第2排液チューブ312を圧迫している。そのため、第1排液チューブ311及び第2排液チューブ312は閉鎖されている。
ている。
【0081】
30秒が経過して第1カム321Aの回転角度が180°のときは、第1排液チューブ311及び第3排液チューブ313が閉鎖されており、第2排液チューブ312が開放されている。すなわち、
図11Cに示すように、第2カム321Bが第2排液チューブ312から離隔しており、第2排液チューブ312は開放されている。一方、第1カム321Aは第1排液チューブ311を圧迫しており、第3カム321Cは第3排液チューブ313を圧迫している。そのため、第1排液チューブ311及び第3排液チューブ313は閉鎖されている。
【0082】
50秒が経過して第1カム321Aの回転角度が60°のときは、第1排液チューブ311が再び開放されており、第2排液チューブ312及び第3排液チューブ313が閉鎖されている。すなわち、第1排液チューブ311が開放されている一方、第2排液チューブ312及び第3排液チューブ313は閉鎖されている。その後、吸引の終了まで、同様の開放と閉鎖が繰り返される。
【0083】
以上説明した第3実施形態の吸引システム300によっても、複数の吸引経路を利用する場合に、より少ない吸引源を用いて液体を吸引できる。また、一つの吸引源に複数の吸引経路が接続されていても効率的に液体を吸引できる。すなわち、複数の排液チューブのそれぞれの先端部を、唾液の溜まりやすい複数の位置のそれぞれに配置できる。さらに、各排液チューブから間欠的且つ確実に唾液を吸引できるので、定期的な唾液の溜まり状況の確認頻度を削減できる。
【0084】
なお、三つのカム321に代えて、各排液チューブに対応する箇所に凹部を備える一つのカムを用いてもよい。例えば、当該カムは、カムの厚み(すなわち、回転中心CPの延在方向における高さ)が、第1排液チューブ311、第2排液チューブ312、及び第3排液チューブ313を重ねた高さとなるように構成されてもよい。一例として、当該カムは、第1カム321A、第2カム321B、及び第3カム321Cを貼り合わせて一体化したような、略円柱状の形状を有する。この場合、第1排液チューブ311、第2排液チューブ312、及び第3排液チューブ313のうち、開放する排液チューブに凹部が対向する。そのため、凹部と対向する排液チューブは開放される。一方、残りの排液チューブは、カムによって圧迫されて閉鎖される。そして、カムが回転すると、次に開放する排液チューブに別の箇所に形成されている凹部が対向する。カムがさらに回転すると、その次に開放する排液チューブにまた別の箇所に形成されている凹部が対向する。このような形状のカムであっても、複数の吸引経路を順番に開放することができる。
【0085】
以上、各実施形態を参照して本発明について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明に反しない範囲で変更された発明、及び本発明と均等な発明も本発明に含まれる。また、各実施形態及び各変形形態は、本発明に反しない範囲で適宜組み合わせることができる。
【0086】
例えば、各排液チューブ又は各ドレインチューブの先端部は、患者の体の他の部位(例えば気管)の内部に配置されてもよい。また、制御部19,219は、一つの吸引経路の開放後、当該吸引経路に対応する液体槽に所定の量の液体が溜った後に、別の吸引経路を開放してもよい。また、吸引システム100又は吸引システム300の唾液槽17が、吸引量部214を有していてもよい。
【0087】
また、吸引システム200がカム機構20又はカム機構320を有していてもよい。この場合、制御部219は、カム機構20又はカム機構320による第1排液チューブ211、第2排液チューブ212、及び第3排液チューブ213の開放及び閉鎖と、ソレノイド機構220による第1吸引チューブ216A、第2吸引チューブ216B、及び第3吸引チューブ216Cの開放及び閉鎖とを同期させる。