(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147028
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】コンクリート打設管理装置、コンクリート打設管理方法およびコンクリート打設管理プログラム
(51)【国際特許分類】
E04G 21/02 20060101AFI20231004BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20231004BHJP
【FI】
E04G21/02 103Z
E04G21/02 ESW
G06Q50/08
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054555
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣中 哲也
(72)【発明者】
【氏名】高尾 篤志
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆弘
【テーマコード(参考)】
2E172
5L049
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172DB09
2E172DE02
5L049CC07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】生成ブロックが属する打設層の層厚を変更して、打設層を分割する。
【解決手段】コンクリート打設管理装置は、所定のサイズの中ブロックに区分して、中ブロックの夫々を、所定の方向に対して垂直な平面により区切られて形成される所定の層厚の打設層毎に、所定のサイズの小ブロックに分割した分割データを有する構造物の3次元設計情報を取得する取得部と、3次元設計情報に従ってコンクリートを打設している間において、小ブロックのうち所定の小ブロックが属する打設層に含まれる小ブロックの全てが、未打設の小ブロックであるか否かを判定する判定部と、判定部が、所定の小ブロックが属する打設層に含まれる全ての小ブロックが、未打設の小ブロックであると判定し、所定の小ブロックが属する打設層が未打設の打設層である場合、所定の小ブロックが属する打設層の層厚を変更して、少なくとも2つの打設層に分割する分割部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の3次元設計情報であって、前記3次元設計情報を所定サイズの中ブロックに区分して、区分された前記中ブロックのそれぞれを、前記中ブロックの所定方向に対して垂直な平面により区切られて形成される所定層厚の打設層ごとに、所定サイズの小ブロックに分割した分割データを有する3次元設計情報を取得する取得部と、
取得した前記3次元設計情報に従ってコンクリートを打設している間において、前記小ブロックのうち所定小ブロックが属する打設層に含まれる小ブロックの全てが、コンクリートが打設されていない未打設の小ブロックであるか否かを判定する判定部と、
前記判定部において、前記所定小ブロックが属する打設層に含まれる全ての小ブロックが、未打設の小ブロックと判定され、前記所定小ブロックが属する打設層が未打設の打設層である場合、前記所定小ブロックが属する打設層の層厚を変更して、少なくとも2つの打設層に分割する分割部と、
を備えたコンクリート打設管理装置。
【請求項2】
前記3次元設計情報は、前記小ブロックの打設順に関する打設番号を含み、
前記分割部により、少なくとも2つの打設層に分割された層において、下層の打設層に対して、分割前の打設層に含まれる小ブロックに付与されていた打設番号と同じ打設番号を付与し、上層以降の打設層に含まれる小ブロックに対して前記下層に含まれる小ブロックに付与した打設番号からの連番となるように打設番号を付与する打設番号付与部をさらに備えた請求項1に記載のコンクリート打設管理装置。
【請求項3】
前記分割部は、前記未打設の打設層の層厚を変更して、少なくとも2つの打設層に分割した場合、分割された打設層のうち、最下層の打設層に属する小ブロックの層番号は、層厚変更前の層番号を付与し、最下層の打設層より上の打設層に属する小ブロックの層番号は、前記最下層の打設層に付与された層番号からの連番となるように層番号を付与する請求項1または2に記載のコンクリート打設管理装置。
【請求項4】
前記分割部は、前記分割された打設層よりも上の打設層に対して、前記分割された打設層に付与された層番号からの連番となるように層番号を付与し直す請求項3に記載のコンクリート打設管理装置。
【請求項5】
前記分割部は、少なくとも2つの打設層に分割された層のいずれかの打設層において、打設層の層厚を変更して、さらに、少なくとも2つの打設層に分割する請求項1~4のいずれか1項に記載のコンクリート打設管理装置。
【請求項6】
前記打設番号付与部は、前記分割部により、少なくとも2つの打設層に分割された層において、上層の打設層に対して、前記下層の打設層に付与した打設番号を反転させた打設番号を付与する請求項2に記載のコンクリート打設管理装置。
【請求項7】
構造物の3次元設計情報であって、前記3次元設計情報を所定サイズの中ブロックに区分して、区分された前記中ブロックのそれぞれを、前記中ブロックの所定方向に対して垂直な平面により区切られて形成される所定層厚の打設層ごとに、所定サイズの小ブロックに分割した分割データを有する3次元設計情報を取得する取得ステップと、
取得した前記3次元設計情報に従ってコンクリートを打設している間において、前記小ブロックのうち所定小ブロックが属する打設層に含まれる小ブロックの全てが、コンクリートが打設されていない未打設の小ブロックであるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいて、前記所定小ブロックが属する打設層に含まれる全ての小ブロックが、未打設の小ブロックと判定され、前記所定小ブロックが属する打設層が未打設の打設層である場合、前記所定小ブロックが属する打設層の層厚を変更して、少なくとも2つの打設層に分割する分割ステップと、
を含むコンクリート打設管理方法。
【請求項8】
構造物の3次元設計情報であって、前記3次元設計情報を所定サイズの中ブロックに区分して、区分された前記中ブロックのそれぞれを、前記中ブロックの所定方向に対して垂直な平面により区切られて形成される所定層厚の打設層ごとに、所定サイズの小ブロックに分割した分割データを有する3次元設計情報を取得する取得ステップと、
取得した前記3次元設計情報に従ってコンクリートを打設している間において、前記小ブロックのうち所定小ブロックが属する打設層に含まれる小ブロックの全てが、コンクリートが打設されていない未打設の小ブロックであるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいて、前記所定小ブロックが属する打設層に含まれる全ての小ブロックが、未打設の小ブロックと判定され、前記所定小ブロックが属する打設層が未打設の打設層である場合、前記所定小ブロックが属する打設層の層厚を変更して、少なくとも2つの打設層に分割する分割ステップと、
をコンピュータに実行させるコンクリート打設管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート打設管理装置、コンクリート打設管理方法およびコンクリート打設管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、管理者が、リフト領域を指定し、指定されたリフト領域について、所定値以下であって、ほぼ均等分割となる位置を指定し、指定された高さ位置を境界面として、リフト領域を各層に分割して輪切りモデルを生成し、生成した輪切りモデルの上面図において、所定の個数となるように複数のブロックに分割し、他の各層についても、同様にブロックに分割することにより、領域分割処理を行うことが開示されている(同文献段落[0056]~[0059]、
図4等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、生成ブロックが属する打設層の層厚を変更して、打設層を分割できなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係るコンクリート打設管理装置は、
構造物の3次元設計情報であって、前記3次元設計情報を所定サイズの中ブロックに区分して、区分された前記中ブロックのそれぞれを、前記中ブロックの所定方向に対して垂直な平面により区切られて形成される所定層厚の打設層ごとに、所定サイズの小ブロックに分割した分割データを有する3次元設計情報を取得する取得部と、
取得した前記3次元設計情報に従ってコンクリートを打設している間において、前記小ブロックのうち所定小ブロックが属する打設層に含まれる小ブロックの全てが、コンクリートが打設されていない未打設の小ブロックであるか否かを判定する判定部と、
前記判定部において、前記所定小ブロックが属する打設層に含まれる全ての小ブロックが、未打設の小ブロックと判定され、前記所定小ブロックが属する打設層が未打設の打設層である場合、前記所定小ブロックが属する打設層の層厚を変更して、少なくとも2つの打設層に分割する分割部と、
を備えた。
【0006】
また、上記課題を解決するため、本発明に係るコンクリート打設管理方法は、
構造物の3次元設計情報であって、前記3次元設計情報を所定サイズの中ブロックに区分して、区分された前記中ブロックのそれぞれを、前記中ブロックの所定方向に対して垂直な平面により区切られて形成される所定層厚の打設層ごとに、所定サイズの小ブロックに分割した分割データを有する3次元設計情報を取得する取得ステップと、
取得した前記3次元設計情報に従ってコンクリートを打設している間において、前記小ブロックのうち所定小ブロックが属する打設層に含まれる小ブロックの全てが、コンクリートが打設されていない未打設の小ブロックであるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいて、前記所定小ブロックが属する打設層に含まれる全ての小ブロックが、未打設の小ブロックと判定され、前記所定小ブロックが属する打設層が未打設の打設層である場合、前記所定小ブロックが属する打設層の層厚を変更して、少なくとも2つの打設層に分割する分割ステップと、
を含む。
【0007】
さらに、上記課題を解決するため、本発明に係るコンクリート打設管理プログラムは、
構造物の3次元設計情報であって、前記3次元設計情報を所定サイズの中ブロックに区分して、区分された前記中ブロックのそれぞれを、前記中ブロックの所定方向に対して垂直な平面により区切られて形成される所定層厚の打設層ごとに、所定サイズの小ブロックに分割した分割データを有する3次元設計情報を取得する取得ステップと、
取得した前記3次元設計情報に従ってコンクリートを打設している間において、前記小ブロックのうち所定小ブロックが属する打設層に含まれる小ブロックの全てが、コンクリートが打設されていない未打設の小ブロックであるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいて、前記所定小ブロックが属する打設層に含まれる全ての小ブロックが、未打設の小ブロックと判定され、前記所定小ブロックが属する打設層が未打設の打設層である場合、前記所定小ブロックが属する打設層の層厚を変更して、少なくとも2つの打設層に分割する分割ステップと、
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、生成ブロックが属する打設層の層厚を変更して、打設層を分割できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置の前提技術におけるコンクリート打設管理の概要を説明するための図である。
【
図1B】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置による分割基準点設定の概要を説明するための図である。
【
図1C】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置による軸線設定の概要を説明するための図である。
【
図1D】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置による分割操作の概要を説明するための図である。
【
図1E】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置による複数モデルを含む場合の分割基準点設定の概要を説明するための図である。
【
図1F】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置による打設層の分割前の状態を説明するための図である。
【
図1G】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置による打設層の分割後の状態を説明するための図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置の構成を説明するためのブロック図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置が有する小ブロックテーブルの一例を説明するための図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置のハードウェア構成を説明するための図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【
図6】本発明の第2実施形態に係るコンクリート打設管理装置の構成を説明するための図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係るコンクリート打設管理装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して、例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている、構成、数値、処理の流れ、機能要素などは一例に過ぎず、その変形や変更は自由であって、本発明の技術範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0011】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態としてのコンクリート打設管理装置100について、
図1A~
図5を用いて説明する。コンクリート打設管理装置100は、コンクリートの打設計画に合わせて構造物を所定サイズの小ブロックに分割して、コンクリートの打設計画等を立て、効率的なコンクリート打込みを管理するための装置である。
【0012】
通常、構造物のコンクリート打設を行う場合、アジテータ車(コンクリート運搬車)で未硬化のコンクリートを運搬し、例えば、1日の施工領域に組み立てられた型枠内に、順次、未硬化のコンクリートを打ち込む。そして、先に打ち込まれたコンクリートが硬化する前に、次のコンクリートを打ち重ね、バイブレータなどによりコンクリートを締め固め、打ち重ねたコンクリートと打ち重ねられたコンクリートとの両方のコンクリートを一体化させる。この打ち込みから一体化までの作業を繰り返すことで、施工領域へのコンクリート打込みが完了する。コンクリートの打込み完了後は、一定期間養生して硬化させ、組み立てた型枠の脱型を行う。
【0013】
この場合、例えば、
図1Aに示したような構造物のコンクリートを打設する場合に、コンクリートを順次打ち込むときに、先行して打込んだコンクリートが硬化する前に、打ち重ねられたコンクリートと打ち重ねたコンクリートとをバイブレータなどによって一体化させる必要がある。このとき、コンクリートの打重ね時間が管理時間(例えば、コンクリート標準示方書に準ずる管理時間)を超過すると、コンクリートの打継ぎ部分にコールドジョイントなどが発生し、弱部となるおそれがある。そのため、構造物のコンクリート打込みにおいては、材料練り混ぜからの時間管理や、コンクリートの打込み順序、打重ね時間の管理などが重要となる。
【0014】
ここで、コンクリートの施工領域の規模が大きくなると、多量のコンクリートが必要となり、コンクリートを運搬するために必要となるアジテータ車の台数が多くなる。さらに、大規模構造物のコンクリートを打ち込むためには、アジテータ車の運搬可能量などに応じて、当該構造物を複数の層に分けるなどして、順序立ててコンクリートを打ち込まなければならず、コンクリートの層数も多くなる傾向にある。そのため、打ち継ぎ部も多くなるので、コールドジョイント150などの弱部が発生することがないように、コンクリートの打重ね時間などを考慮した上で、打込み順序や打込み層厚などを決めてコンクリートの打設計画160を立てる必要があった。
【0015】
しかしながら、コンクリートの打設計画160を立てるために、構造物をいくつかの層へ分割したり、所定サイズの小ブロックへ分割したりする作業は、構造物の2次元設計図を用いて、現場において現場作業者の手作業で行われていた。そのため、層分割や小ブロック分割を行って厳密な打設計画を立てることは困難な場合が多く、現場作業者の負担になっていた。そこで、ユーザは、コンクリート打設管理装置100を用いることにより、層分割や小ブロック分割、各小ブロックの打込み順序の設定を容易に行えるようになる。
【0016】
次に、
図1B~
図1Eを参照して、コンクリート打設管理装置100を用いた、打設計画の管理について説明する。まず、
図1Bに示したように、3次元CAD(Computer-Aided Design)などを用いて設計した構造物の3次元データ等を含む3次元設計情報120が、コンクリート打設管理装置100に接続されたモニターやディスプレイ、ユーザが所持するタブレットやスマートフォンなどの携帯端末等のディスプレイ140などに表示される。なお、3次元設計情報120には、例えば、工区や工期などの情報も含まれている。また、3次元設計情報120は、予め3次元CADなどを用いて作成されている。
【0017】
3次元設計情報120は、所定期間に打設可能なコンクリートの量に応じて設定された打設領域であり、複数の中ブロック123,124,125,126に分けられている。例えば、中ブロック123に着目して、この中ブロック123を所定サイズの小ブロックに分割する場合を考える。
【0018】
まず、
図1Bに示したように、ユーザは、小ブロックへの分割対象として着目する中ブロック123(着目中ブロック)において、小ブロックへの分割の基準となる分割基準点121を指定する。そして、コンクリート打設管理装置100は、ユーザが指定した位置に分割基準点121を設定する。ここで、分割基準点121は、中ブロック123を、どの位置を基準にどの方向へ分割するかの基準となる点である。
【0019】
図1Bに示した例では、中ブロック123の頂点部分(底面左下)に、分割基準点121を設定している。なお、分割基準点121は、頂点部分以外にも設定することが可能であり、例えば、頂点と頂点との間の辺の部分や、側面部分(表面部分)の任意の位置、中ブロック123の内部の任意の位置などに設定することができる。ユーザは、他の中ブロック124,125,126についても、中ブロック123と同様の操作を行って、分割基準点を設定することができる。
【0020】
次に、
図1Cに示したように、軸線の設定を行う。すなわち、分割基準点121を原点と考えて、コンクリート打設管理装置100は、ユーザが、指定した位置にX軸方向の端点122を設定する。そして、コンクリート打設管理装置100は、分割基準点121から、端点122を通過する線分として、X軸127を生成させる。生成された軸線(X軸127)は、図示したように、例えば、中ブロック123の傍に表示しても、3次元設計情報120から離れた位置に表示してもよい。
【0021】
また、Y軸、Z軸についても同様に、ユーザが、指定した各軸線の端点の位置に基づいて、コンクリート打設管理装置100は、分割基準点121から、指定した各端点を通過する線分として、Y軸、Z軸を生成させる。そして、生成された各軸線(Y軸、Z軸)は、中ブロック123の傍に表示しても、3次元設計情報120から離れた位置に表示してもよい。各軸線(X軸127、Y軸、Z軸)は、中ブロック123の縦横高さ方向に平行な線分となっている。
【0022】
続いて、
図1Dに示したように、ユーザは、3次元設計情報120を所定サイズの小ブロックに分割するために必要なパラメータの設定を行う。ユーザが設定するパラメータは、例えば、等幅分割(分割の間隔)、均等分割(分割数及び丸め幅)、層厚などである。これらのパラメータは、例えば、ディスプレイ140の右側に表示されたパラメータ設定用ウィンドウの所定のボックスに数値を入力することにより設定される。
【0023】
ここで、等幅分割は、所定幅(所定の分割間隔)で構造物を分割して、所定サイズの小ブロックを得る場合をいう。この場合、例えば、分割基準点121から、800mm間隔で構造物の分割線が生成され、表示されるようになる(
図1D参照)。
【0024】
また、均等分割は、所定の分割数の小ブロックが生成されるように構造物を分割する場合をいう。丸め幅は、例えば、均等分割する際の、分割により生成される各小ブロックの大きさの単位を決めるものである。例えば、丸め幅を100mmと設定すると、生成される小ブロックの大きさの単位(1辺の長さの単位)が、100mm刻みの単位である、600mm、700mm、800mmなどのサイズの小ブロックが生成されるようになる。同様に、例えば、丸め幅を10mmと設定すると、生成されるブロックの大きさの単位(1辺の長さの単位)が、10mm刻みの単位である、810mm、820mm、830mmなどのサイズの小ブロックが生成されるようになる。
【0025】
このように、丸め幅を設定して、小ブロックのサイズの端数を調整することにより、各小ブロックの体積等の管理が容易になるため、コンクリートの打設管理を容易に行えるようになる。そして、コンクリート打設管理装置100は、設定されたパラメータに従って、3次元設計情報120を所定サイズの小ブロックに分割する。所定サイズの小ブロックに分割したら、小ブロックのそれぞれに、打込み順を設定することにより、コンクリートの打設を適切に管理することができる。打込み順の設定は、例えば、層毎に行われるが、これには限定されない。
【0026】
図1Eに示したように、構造物全体として、複数の異なる形状を有する構造物が含まれている場合には、例えば、それぞれの構造物に対して分割基準点を設定することにより、構造物全体として、小ブロックに分割する。なお、このような、1つの構造物として、複雑な形状を有している構造物と考えられる場合には、複数の異なる形状を有する構造物同士が結合したものと考えることが可能である。
【0027】
そして、構造物全体として、複数の異なる形状を有する構造物を含む場合、それぞれの構造物の接続部分は、Z軸方向から、構造物全体を見た場合、断面変化が不連続となる位置である断面変化面となっている。
【0028】
そして、このような断面変化面が存在するときに、例えば、1つの分割基準点131を基準に、構造物を分割する場合、断面変化面を跨る部分で連続してコンクリートを打ち込むことになり、断面変化面が弱部となってしまう。そのため、この断面変化面に境界を設けて管理する必要がある。したがって、断面変化面が出現するたびに、分割基準点131の設定が必要となる。例えば、断面変化面を跨いでコンクリートを打ち込んだ場合、未硬化のコンクリートからの水分上昇(ブリーディング)等が発生し、断面変化面にブリーディングが集中して、弱部となる恐れがある。よって、断面変化面が存在する場合には、断面変化面が境界面となるように、分割基準点131を設定することが好ましい。このように、断面変化面に分割基準点131を設定することで(断面変化面を境界面とすることで)、断面変化面を跨ぐ小ブロックが生成されることを抑制することができる。
【0029】
以上のように、ユーザは、3次元設計情報120に対して、分割基準点131を複数設定し、設定した分割基準点131のそれぞれについて、分割幅や分割数などのパラメータを設定する。そして、コンクリート打設管理装置100は、設定された分割基準点131やパラメータに基づいて、構造物を所定サイズの小ブロックに分割する。
【0030】
図1Fには、例えば、3次元設計情報120として、ボックスカルバート175の施工領域(一日の打設範囲)が画面170に表示されている。ボックスカルバート175の施工領域は、断面形状がU字形状となっており、断面に垂直な方向に所定長さを有している。そして、ボックスカルバート175は、分割データとして、4層に区切られて形成される打設層を有している。なお、各打設層には、所定サイズの小ブロックが含まれているが、図示は省略している。
【0031】
そして、各打設層は、所定層厚(600mm)を有しており、最下層が、ボックスカルバート175の床版となっており、2層目から4層目までは、ボックスカルバート175の両側壁を形成する打設層となっている。
【0032】
ボックスカルバート175において、1層目から2層目までについては、これらの打設層に属する全ての小ブロックは、コンクリートの打設が完了しているものとする。そのため、1層目から2層目までの打設層は、打設済小ブロックを含む打設層であるとする。また、3層目の打設層に属する小ブロックについて、現在コンクリートが打設されている小ブロック(打設中小ブロック)であるものとする。さらに、最上層の4層目の打設層に属する小ブロックのそれぞれは、コンクリートの打設が完了しておらず、そのため、4層目の打設層171は、全ての小ブロックが、未打設小ブロックとなっている。
【0033】
そして、コンクリートの打設計画に従って、3層目に属する小ブロックのコンクリートの打設を行っているときに、例えば、生コンクリート工場から次の層のコンクリートを運搬してくるアジテータ車が、何らかの理由により、到着が遅れることがある。
【0034】
しかしながら、例えば、アジテータ車の到着遅れに対し何ら手当をせずに、打設計画に従って、4層目の打設層171に属する小ブロック対して、コンクリートの打設を始めてしまうことを考える。この場合、4層目の打設層171に属するいずれかの小ブロックの打設中に、コンクリートの供給が間に合わなくなり、4層目の打設層171に属する小ブロックのコンクリートの打設が、途中で終わってしまうこととなる。このような状態となると、4層目の打設層171に属する全ての小ブロックについて、打設計画通りにコンクリートを打設することができなくなる。
【0035】
このような場合、コンクリート打設管理装置100は、これからコンクリートの打設対象となる打設層に属する全ての小ブロックが、コンクリートが打設されていない未打設の小ブロックである場合に、当初の層厚を変更して、打重ね時間内に打ち重ねられるように、当該打設層を分割する。すなわち、コンクリート打設管理装置100は、コンクリートの供給に支障が生じそうな場合などに、緊急避難的に、打設層の層厚を変更して、打設層を分割し、供給可能なコンクリート量に合わせて、その場で、打設計画を変更して、打重ね時間を守ることができるようになっている。
【0036】
これにより、当初計画よりもコンクリートの供給量が少なくなっても、全体の打設計画を変更することなく、1層の打設層の打設計画を変更することにより、急場をしのぐことができるようになっている。コンクリート打設管理装置100は、打設計画の全体を変更するのではなく、例えば、コンクリートの供給の滞りにより直接影響を受けそうな小ブロックが属する打設層の打設計画を変更することで、予想される事態の収拾を図る。
【0037】
具体的には、作業者が、画面170のボックスカルバート175の右側に表示されているボタン群174を操作すると、打設層171の層厚が変更されて複数の打設層に分割することができるようになっている。ボタン群174には、分割を実行するための実行ボタンや、新たに生成される打設層の層厚を設定するためのプルダウンメニューや入力ボックスなどが含まれている。
【0038】
そして、
図1Gに示したように、コンクリート打設管理装置100は、作業者が設定した値に従って、打設層171を2つの新たな打設層172,173へ分割する。すなわち、元の4層目の打設層171が、2つの打設層に分割され、新たな4層目としての打設層172と、新たな5層目としての打設層173とが生成されることとなる。新たに生成された4層目の打設層172は、400mmの層厚を有し、新たに生成された5層目の打設層173は、200mmの層厚を有している。つまり、元の打設層171は、600mmの層厚であったものが、400mmの層厚の打設層172と、200mmの層厚の打設層173とに分割され、新たに2つの打設層が生成されたものと見ることができる。
【0039】
また、新たに生成された打設層172は、元の打設層171において(打設層173に対して)、下層側の打設層となり、層厚は、400mmとなっている。また、同様に、新たに生成された打設層173は、元の打設層171において(打設層172に対して)、上層側の打設層となり、層厚は、200mmとなっている。
【0040】
このように、打設層171を分割して新たに生成された打設層172の層厚が400mmとなるので、元の打設層171と新たに生成された打設層172とを体積で比較すると、打設層172の体積は、打設層171の体積の2/3となる。よって、コンクリート打設管理装置100においては、当初の打設計画よりも供給できるコンクリート量が減ったとしても、対象の層厚のみ部分的に変更することで、全体の打設計画を変更することなく、コンクリートの打設を継続することができることとなる。
【0041】
次に
図2を参照して、コンクリート打設管理装置100の構成について説明する。コンクリート打設管理装置100は、取得部201、判定部202および分割部203を有する。
【0042】
取得部201は、コンクリートを打設する構造物の3次元設計情報120であって、3次元設計情報120を所定サイズの中ブロックに区分して、区分された中ブロックのそれぞれを、所定サイズの小ブロックに分割した分割データを有する3次元設計情報120を取得する。3次元設計情報120は、3次元設計情報120を所定サイズの中ブロックに区分されている。そして、区分された中ブロックのそれぞれは、中ブロックの所定方向に対して垂直な平面により区切られて形成される所定層厚の打設層ごとに、所定サイズの小ブロックに分割されている。3次元設計情報120は、分割された分割データを有している。
【0043】
3次元設計情報120が、コンクリート打設管理装置100とは異なる装置で生成された場合、取得部201は、3次元設計情報120を有線接続または無線接続により当該装置から取得する。また、取得部201は、3次元設計情報120が記録された記録媒体等を介して3次元設計情報120を取得してもよい。
【0044】
判定部202は、取得した3次元設計情報120に従ってコンクリートを打設している間において、小ブロックのうち所定小ブロックが属する打設層に含まれる小ブロックの全てが、コンクリートが打設されていない未打設の小ブロックであるか否かを判定する。
【0045】
コンクリート打設管理装置100においては、例えば、現場の作業者が、携帯端末等を用いて、コンクリートの打設が完了した小ブロックのデータを入力している。そして、判定部202は、入力されたデータに基づいて、小ブロックのそれぞれについて、コンクリートの打設が完了しているか否かを判定することができる。そして、判定部202は、この打設済みの小ブロックのデータを総合的に勘案することにより、所定小ブロックが属する打設層に含まれる小ブロックの全てについて、コンクリートの打設が完了しているか否かを判定できる。
【0046】
例えば、既に打設が開始されている打設層において、打設の途中で様々な変更があっても、対応することが困難であることが多い。そのため、上述したように、判定部202は、所定小ブロックが属する打設層が全体として、コンクリートが未打設の打設層であることを判定している。つまり、判定部202により、所定小ブロックが属する打設層全体が、未打設の打設層である場合にのみ、打設層の分割を行うようにすることで、全体の打設管理に影響が及ばないようにすることが可能となる。
【0047】
分割部203は、判定部202による判定により、所定条件を満たしていると判定された場合、以下の処理を行う。ここで、判定部202により判定される所定条件は、所定小ブロックが属する打設層171に含まれる全ての小ブロックが、コンクリートが未打設の小ブロックであることである。そして、分割部203は、所定小ブロックが属する打設層171の層全体としての層厚を変更して、少なくとも2つの打設層172,173に分割する。なお、ここでは、分割部203は、打設層171を2つの打設層172,173に分割したが、3つ以上の打設層に分割することも可能である。
【0048】
また、分割部203における打設層の分割処理は、例えば、元の打設層171の層厚が、600mmであったとすると、この打設層171の層厚を400mmと200mmとにすることにより行われる。このような処理を行うことにより、分割部203は、元の打設層171を、層厚が400mmの打設層172と、層厚が200mmの打設層173とに分割する。例えば、分割部203は、元の打設層171の層厚を、層厚が200mmの3つの打設層に分割することも可能である。分割部203は、上述のような処理を行うことにより、打設層を少なくとも2つの打設層に分割する。なお、分割部203における打設層171の分割処理は、ここに示した方法には、限定されない。
【0049】
さらに、分割部203は、未打設の打設層171の層厚を変更して、少なくとも2つの打設層172,173に分割した場合、分割された打設層172,173のうち、最下層の打設層172に属する小ブロックの層番号として、分割前の層番号を付与する。すなわち、分割部203は、打設層172に属する小ブロックの層番号として4層目を付与する。
【0050】
これに対して、分割部203は、最下層の打設層172よりも上の打設層173に属する小ブロックの層番号として、打設層172に属する小ブロックの層番号(4層目)からの連番となるような層番号(5層目)を付与する。なお、ここでは、1つの打設層を2つの打設層に分割する例で説明をしたが、3つ以上の打設層に分割する場合であっても、分割部203は、同様の層番号付与を行う。
【0051】
つまり、分割部203は、打設層173よりも上に打設層がある場合には、打設層173からの連番となるように層番号を付与する。すなわち、1つの打設層が2つの打設層に分割されると、打設層が1つ増えることとなる。そのため、分割部203は、分割された新たに生成された打設層のうち最下層の打設層172に属する小ブロックには、元の層番号を付与し、上の打設層173に属す小ブロックには、元の層番号に1を足した層番号を付与する。上の打設層173に後続する打設層に属する小ブロックついても、元々の層番号に1を足した層番号(層番号を1インクリメントした層番号)を付与する。
【0052】
同様にして、分割部203は、打設層を4つの打設層に分割した場合には、最下層の打設層に属する小ブロックには、元の層番号を付与し、最下層よりも上の打設層に属する小ブロックには、最下層の打設層に属する小ブロックの層番号からの連番となるように、各小ブロックに層番号を付与する。
【0053】
そして、分割部203は、分割対象となった打設層171よりも上に存在していた打設層に属する小ブロックに対して、分割された打設層171に属する小ブロックに付与された層番号からの連番となるように層番号を付与し直す。すなわち、分割部203は、例えば、打設層171が4層目の打設層であり、打設層171を2つに分割した場合、打設層172に属する小ブロックが4層目、打設層173に属する小ブロックが5層目となるように層番号を付与する。
【0054】
しかしながら、分割対象となった打設層171よりも上に打設層が存在していた場合、分割により新たに生成された打設層173に属する小ブロックの層番号と重複することとなる。そのため、分割部203は、このような重複が発生しないように、打設層171よりも上に存在していた打設層に属する小ブロックの層番号を1つインクリメントすることにより、層番号の重複が発生しないようにする。なお、分割対象の打設層171が3つの打設層に分割された場合には、分割部203は、打設層171の上に存在していた打設層に属する小ブロックの層番号を2つインクリメントした層番号を付与する。インクリメントする数は、分割により新たに生成される打設層の数(N)から1を引いた数(N-1)となる。
【0055】
分割部203は、打設層171を分割することで生成された新たな打設層172,173について、これらの打設層172,173についても、打設層171と同様に、層厚を変更して、少なくとも2つの打設層に分割することもできる。このように、分割部203においては、打設層の分割を繰り返し行うことが可能となっている。
【0056】
図3は、コンクリート打設管理装置100が有する小ブロックテーブルの一例を説明するための図である。小ブロックテーブル301は、小ブロック番号311に関連付けて、層番号312、打設順313、層厚314および打設状況315を格納する。小ブロック番号311は、小ブロックのそれぞれを識別するために、小ブロックのそれぞれに付与された番号である。層番号312は、小ブロックのそれぞれが属する打設層を示す番号である。打設順313は、小ブロックのそれぞれのコンクリート打設の順番を示す番号である。層厚314は、各打設層の層厚を示す値である。打設状況315は、各小ブロックが属する打設層に対するコンクリートの打設が完了または開始されているか、あるいは、未打設かを示す。そして、コンクリート打設管理装置100は、小ブロックテーブル301を参照して、所定小ブロックが属する打設層が未打設の打設層であれば、打設層の層厚を変更して、少なくとも2つの打設層に分割する。
【0057】
図4を参照して、コンクリート打設管理装置100のハードウェア構成について説明する。CPU(Central Processing Unit)410は、演算制御用のプロセッサであり、プログラムを実行することで
図2のコンクリート打設管理装置100の各機能構成を実現する。CPU410は複数のプロセッサを有し、異なるプログラムやモジュール、タスク、スレッドなどを並行して実行してもよい。ROM(Read Only Memory)420は、初期データおよびプログラムなどの固定データおよびその他のプログラムを記憶する。また、ネットワークインタフェース430は、ネットワークを介して他の装置などと通信する。なお、CPU410は1つに限定されず、複数のCPUであっても、あるいは画像処理用のGPU(Graphics Processing Unit)を含んでもよい。また、ネットワークインタフェース430は、CPU410とは独立したCPUを有して、RAM(Random Access Memory)440の領域に送受信データを書き込みあるいは読み出しするのが望ましい。また、RAM440とストレージ450との間でデータを転送するDMAC(Direct Memory Access Controller)を設けるのが望ましい(図示なし)。さらに、CPU410は、RAM440にデータが受信あるいは転送されたことを認識してデータを処理する。また、CPU410は、処理結果をRAM440に準備し、後の送信あるいは転送はネットワークインタフェース430やDMACに任せる。
【0058】
RAM440は、CPU410が一時記憶のワークエリアとして使用するランダムアクセスメモリである。RAM440には、本実施形態の実現に必要なデータを記憶する記憶領域が確保されている。3次元設計情報データ441は、コンクリートの打設対象となる構造物の3次元CADデータなどを含むデータである。層番号データ442は、各小ブロックが属する打設層の番号であり、構造物の3次元設計情報120において、構造物の鉛直方向に垂直な平面で構造物を切ったときに生成される各層の番号であり、通常、下から昇順となるように層番号が付与される。打設順データ443は、各小ブロックが属する打設層における、打設の順番を示す番号である。層厚データ444は、各小ブロックが属する打設層の厚みを示すデータである。打設状況データ445は、各小ブロックが属する打設層において、コンクリートの打設が完了しているのか、現在行われているのか、未だ行われていないのか、を示すデータである。
【0059】
送受信データ446は、ネットワークインタフェース430を介して送受信されるデータである。また、RAM440は、各種アプリケーションモジュールを実行するためのアプリケーション実行領域447を有する。
【0060】
ストレージ450には、データベースや各種パラメータ、あるいは本実施形態の実現に必要な以下のデータまたはプログラムが記憶されている。ストレージ450は、小ブロックテーブル301を格納する。小ブロックテーブル301は、
図3に示した、小ブロック番号311と層番号312などとの関係を管理するテーブルである。
【0061】
ストレージ450は、さらに、取得モジュール451、判定モジュール452および分割モジュール453を格納する。取得モジュール451は、構造物の3次元設計情報120であって、3次元設計情報120を所定サイズの小ブロックに分割した分割データを有する情報を取得する。判定モジュール452は、3次元設計情報120に従ってコンクリートを打設している間において、所定小ブロックが属する打設層に含まれる小ブロックの全てが、コンクリートが打設されていない未打設の小ブロックであるか否かを判定するモジュールである。分割モジュール453は、所定小ブロックが属する打設層が未打設の打設層である場合、当該打設層の層厚を変更して、少なくとも2つの打設層に分割するモジュールである。これらのモジュール451~453は、CPU410によりRAM440のアプリケーション実行領域447に読み出され、実行される。制御プログラム454は、コンクリート打設管理装置100の全体を制御するためのプログラムである。
【0062】
入出力インタフェース460は、入出力機器との入出力データをインタフェースする。入出力インタフェース460には、表示部461、操作部462、が接続される。また、入出力インタフェース460には、さらに、記憶媒体464が接続されてもよい。さらに、音声出力部であるスピーカ463や、音声入力部であるマイク(図示せず)、あるいは、GPS位置判定部が接続されてもよい。なお、
図4に示したRAM440やストレージ450には、コンクリート打設管理装置100が有する汎用の機能や他の実現可能な機能に関するプログラムやデータは図示されていない。
【0063】
次に
図5に示したフローチャートを参照して、コンクリート打設管理装置100の処理手順について説明する。このフローチャートは、
図4のCPU410がRAM440を使用して実行し、
図2のコンクリート打設管理装置100の各機能構成を実現する。
【0064】
ステップS501において、取得部201は、3次元設計情報120を取得する。ステップS503において、判定部202は、所定小ブロックが属する打設層(分割対象となっている打設層)に属する全ての小ブロックについて、コンクリートが打設されていない未打設の小ブロックであるか否かを判定する。未打設の小ブロックでないと判定した場合(ステップS503のNO)、コンクリート打設管理装置100は、処理を終了する。未打設の小ブロックであると判定した場合(ステップS503のYES)、コンクリート打設管理装置100は、次のステップへ進む。
【0065】
ステップS505において、分割部203は、所定小ブロックが属する打設層の層厚を変更して、少なくとも2つの打設層に分割する。ステップS507において、コンクリート打設管理装置100は、打設層の分割が終了したか否かを判定する。打設層の分割が終了していないと判定した場合(ステップS507のNO)、コンクリート打設管理装置100は、ステップS505へ戻る。打設層の分割が終了したと判定した場合(ステップS507のYES)、コンクリート打設管理装置100は、次のステップへ進む。ステップS509において、分割部203は、分割された打設層に属する小ブロックのそれぞれに対して層番号を付与する。また、分割部203は、分割対象となった打設層よりも上に存在している打設層がある場合、上に存在している打設層に属する小ブロックに対しても、新たな層番号を付与する。新たな層番号は、分割対象となった打設層に属する小ブロックからの連番となるように付与される。
【0066】
本実施形態によれば、生成ブロックが属する打設層の層厚を変更して、打設層を分割できる。コンクリートの打設が開始された後に、アジテータ車の配車等が当初の計画通り進められない等の緊急事態が発生した場合であっても、全体の打設計画を変更する必要がないので、打設現場において対処することができる。
【0067】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態に係るコンクリート打設管理装置600について、
図6~
図9を用いて説明する。
図6は、本実施形態に係るコンクリート打設管理装置600の構成を説明するためのブロック図である。本実施形態に係るコンクリート打設管理装置600は、上記第1実施形態と比べると、打設番号付与部601を有する点で異なる。その他の構成および動作は第1実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0068】
3次元設計方法120には、小ブロックの打設順に関する打設番号が含まれている。そして、打設番号付与部601は、分割部203により、少なくとも2つの打設層172,173に分割された層において、下層の打設層172に属する小ブロック対して、分割前の打設層171に含まれる小ブロックに付与されていた打設番号と同じ打設番号を付与する。つまり、打設番号付与部601は、打設層172において、例えば、手前側から奥側に向かって打設番号が昇順(または降順)となるように打設番号を付与する。このように、打設番号を付与することで、分割されて、新たに生成された打設層172において、元の打設層171と同様の打設管理を行うことができるようになる。
【0069】
そして、打設番号付与部601は、分割された打設層のうち上層の打設層173に属する小ブロックに対して、下層の打設層172に属する小ブロックに付与された打設番号からの連番となるように打設番号を付与する。例えば、下層の打設層172および上層の打設層173に属する小ブロックがそれぞれ9個である場合、下層の打設層172に属する小ブロックに対して、1~9の打設番号が付与され、上層の打設層173に属する小ブロックに対して10~18の打設番号が付与される。
【0070】
なお、元の打設層171の上層にさらに打設層が存在する場合には、元の打設層171よりも上層の打設層に属する小ブロックに対しては、上層の打設層173に付与された打設番号からの連番となるように、打設番号が付与し直される。つまり、上述の例で説明すると、元の打設層171よりも上層の打設層に属する小ブロックに対して、19番以降の打設番号が付与し直されることとなる。このように、分割部203により、コンクリートが打ち込まれていない打設層を少なくとも2つの打設層に分割した場合には、構造物のうち既打設の打設層を除いて、新たな小ブロックが生成されたものとみなせるため、打設番号付与部601は、分割対象となった打設層の最下層の打設層から順番に打設番号を付与し直していると見ることもできる。
【0071】
また、打設番号付与部601は、分割部203により、少なくとも2つの打設層172,173に分割された層において、上層の打設層173に対して、下層の打設層172に付与した打設番号を反転させた打設番号を付与してもよい。
【0072】
例えば、
図1Gの例を参照しながら説明すると、打設番号付与部601が、下層の打設層172に属する小ブロックについて、手前側から奥側に向かって昇順となるように打設番号を付与したとする。そうすると、打設番号付与部601は、上層の打設層173に属する小ブロックについて、奥側から手前側に向かって昇順となるように打設番号を付与してもよい。
【0073】
すなわち、打設番号付与部601は、新たに生成された打設層172,173に属する小ブロックについて、一筆書きの順序で、コンクリートの打設が行えるように打設層172,173に属する小ブロックに対して、打設番号を付与する。このように打設番号を付与することにより、コンクリートの打設管理を容易に行うことが可能となる。また、現場の作業者の手間も簡略化でき、より効率のよいコンクリートの打設を行うことができるようになる。
【0074】
次に
図6を参照して、コンクリート打設管理装置600の構成について説明する。コンクリート打設管理装置600は、打設番号付与部601を有する。打設番号付与部601は、分割部203により、少なくとも2つの打設層に分割された層において、下層の打設層および上層の打設層に対して、分割前の打設層に含まれる小ブロックに付与されていた打設番号と同じ打設番号を付与する。つまり、この場合、打設層171が、2つの打設層172,173に分割されることとなるが、上層および下層の打設層172,173に含まれる小ブロックの打設順は、同じ方向に向かって昇順(または降順)となるような打設順となる。
【0075】
また、打設番号付与部601は、分割部203により、少なくとも2つの打設層に分割された層において、上層の打設層173に属す小ブロック対して、下層の打設層172に属する小ブロックに対して付与した打設番号を反転させた打設番号を付与する。これにより、コンクリート打設において、一筆書きの要領で、コンクリート供給用のノズルを移動させながら、コンクリートを打設できるので、短時間で効率よくコンクリートを打設することができる。
【0076】
次に
図7に示したフローチャートを参照して、コンクリート打設管理装置600の処理手順について説明する。このフローチャートは、不図示のCPUがRAMを使用して実行し、
図6のコンクリート打設管理装置600の各機能構成を実現する。
【0077】
ステップS701において、打設番号付与部601は、分割部203により、分割された上層および下層の打設層172,173に属する小ブロックに対して、同じ打設順を示す打設番号を付与する。また、ステップS701において、打設番号付与部601は、分割部203により、分割された打設層において、上層の打設層173に属する小ブロックに対して、下層の打設層172に属する小ブロックに付与した打設番号を反転させた打設番号を付与する。
【0078】
本実施形態によれば、分割された打設層に属する小ブロックに対して、元の打設層に属していた小ブロックと同じ打設番号を付与するので、設計時に想定していた打設順によりコンクリート打設を管理できる。よって、コンクリートの打設順も含めた、打設層の分割を効率的に行うことができる。また、分割されて生成された新たな打設層に属する小ブロックにおいて、打設番号が互いに反転するように番号を付与するので、無駄のない、より効率のよいコンクリート打設を行うことができる。
【0079】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されず適宜変更可能である。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の範疇に含まれる。
【0080】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に供給され、内蔵されたプロセッサによって実行される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるWWW(World Wide Web)サーバも、プログラムを実行するプロセッサも本発明の技術的範囲に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の技術的範囲に含まれる。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の3次元設計情報であって、前記3次元設計情報を所定サイズの中ブロックに区分して、区分された前記中ブロックのそれぞれを、前記中ブロックの所定方向に対して垂直な平面により区切られて形成される所定層厚の打設層ごとに水平方向に分割することで、所定サイズの小ブロックからなる分割データを有する3次元設計情報を取得する取得部と、
取得した前記3次元設計情報に従ってコンクリートを打設している間において、前記小ブロックのうち所定小ブロックが属する打設層に含まれる小ブロックの全てが、コンクリートが打設されていない未打設の小ブロックであるか否かを判定する判定部と、
前記判定部において、前記所定小ブロックが属する打設層に含まれる全ての小ブロックが、未打設の小ブロックと判定され、前記所定小ブロックが属する打設層が未打設の打設層である場合、前記所定小ブロックが属する打設層の層厚を部分的に変更して、水平方向に同じ分割をしている少なくとも2つの打設層に分割する分割部と、
を備えたコンクリート打設管理装置。
【請求項2】
前記3次元設計情報は、前記小ブロックの打設順に関する打設番号を含み、
前記分割部により、少なくとも2つの打設層に分割された層において、下層の打設層に対して、分割前の打設層に含まれる小ブロックに付与されていた打設番号と同じ打設番号を付与し、上層以降の打設層に含まれる小ブロックに対して前記下層に含まれる小ブロックに付与した打設番号からの連番となるように打設番号を付与する打設番号付与部をさらに備えた請求項1に記載のコンクリート打設管理装置。
【請求項3】
前記分割部は、前記未打設の打設層の層厚を変更して、少なくとも2つの打設層に分割した場合、分割された打設層のうち、最下層の打設層に属する小ブロックの層番号は、層厚変更前の層番号を付与し、最下層の打設層より上の打設層に属する小ブロックの層番号は、前記最下層の打設層に付与された層番号からの連番となるように層番号を付与する請求項1または2に記載のコンクリート打設管理装置。
【請求項4】
前記分割部は、前記分割された打設層よりも上の打設層に対して、前記分割された打設層に付与された層番号からの連番となるように層番号を付与し直す請求項3に記載のコンクリート打設管理装置。
【請求項5】
前記分割部は、少なくとも2つの打設層に分割された層のいずれかの打設層において、打設層の層厚を変更して、さらに、少なくとも2つの打設層に分割する請求項1~4のいずれか1項に記載のコンクリート打設管理装置。
【請求項6】
前記打設番号付与部は、前記分割部により、少なくとも2つの打設層に分割された層において、上層の打設層に対して、前記下層の打設層に付与した打設番号を反転させた打設番号を付与する請求項2に記載のコンクリート打設管理装置。
【請求項7】
構造物の3次元設計情報であって、前記3次元設計情報を所定サイズの中ブロックに区分して、区分された前記中ブロックのそれぞれを、前記中ブロックの所定方向に対して垂直な平面により区切られて形成される所定層厚の打設層ごとに水平方向に分割することで、所定サイズの小ブロックからなる分割データを有する3次元設計情報を取得する取得ステップと、
取得した前記3次元設計情報に従ってコンクリートを打設している間において、前記小ブロックのうち所定小ブロックが属する打設層に含まれる小ブロックの全てが、コンクリートが打設されていない未打設の小ブロックであるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいて、前記所定小ブロックが属する打設層に含まれる全ての小ブロックが、未打設の小ブロックと判定され、前記所定小ブロックが属する打設層が未打設の打設層である場合、前記所定小ブロックが属する打設層の層厚を部分的に変更して、水平方向に同じ分割をしている少なくとも2つの打設層に分割する分割ステップと、
を含むコンクリート打設管理方法。
【請求項8】
構造物の3次元設計情報であって、前記3次元設計情報を所定サイズの中ブロックに区分して、区分された前記中ブロックのそれぞれを、前記中ブロックの所定方向に対して垂直な平面により区切られて形成される所定層厚の打設層ごとに水平方向に分割することで、所定サイズの小ブロックからなる分割データを有する3次元設計情報を取得する取得ステップと、
取得した前記3次元設計情報に従ってコンクリートを打設している間において、前記小ブロックのうち所定小ブロックが属する打設層に含まれる小ブロックの全てが、コンクリートが打設されていない未打設の小ブロックであるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいて、前記所定小ブロックが属する打設層に含まれる全ての小ブロックが、未打設の小ブロックと判定され、前記所定小ブロックが属する打設層が未打設の打設層である場合、前記所定小ブロックが属する打設層の層厚を部分的に変更して、水平方向に同じ分割をしている少なくとも2つの打設層に分割する分割ステップと、
をコンピュータに実行させるコンクリート打設管理プログラム。