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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014704
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】木製防音室
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/12 20060101AFI20230124BHJP
   E04B 1/82 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
E04H1/12 302C
E04B1/82 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118813
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】509019440
【氏名又は名称】有限会社西脇建築
(74)【代理人】
【識別番号】100078673
【弁理士】
【氏名又は名称】西 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】西脇 豊二
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DF01
2E001FA03
2E001FA14
2E001GA11
2E001HC01
2E001HF11
2E001HF14
(57)【要約】
【課題】主として屋内に設置する木材を主材料とする防音室に関し、屋根を付加するのみで屋外設置にも対応可能な防音室を提供する。
【解決手段】工場生産された壁パネルW、床パネルF及び天井パネルCを結合した箱形の本体20と、屋外設置の際に設置される屋根ユニット30とを備える。前記パネルW、F及びCは、合板からなる内装板1、面板2及び外装板3を備え、内装板1と面板2との間に防音材8が配置され、面板2と外装板3との間に断熱材9が配置されている。直角に結合される2枚の前記パネルの一方には、他方のパネル厚さに相当する張り出し寸法の張出部11設けられており、この張出部11を他方のパネルの内外の枠材4、5にボルトナット、木ねじ、接着剤などで結合する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁パネル、床パネル及び天井パネルを結合して組み立てられた箱形の防音室であって、前記パネルのそれぞれは、内側に防水シートを添着した合板からなる外装板と、合板からなる内装板と、パネルの厚さ中間に配置された合板からなる面板と、前記外装板と面板との間隔を保持している木製の外側枠材と、前記面板と内装板との間隔を保持している木製の内側枠材と、外装板と面板との間隙に配置された断熱材と、面板と内装板との間に配置された防音材とを備え、一方のパネルの端面から突出する外装板の張出部を他方のパネルの端面に突き合わせ結合されて箱形に組み立てられている、木製防音室。
【請求項2】
前記張出部が壁パネルの下縁に設けられ、当該張出部が床パネルの周端面に突き合わせ結合されている、請求項1記載の木製防音室。
【請求項3】
前記張出部が天井パネルの周辺に設けられ、当該張出部が壁パネルの上端面に突き合わせ結合されている、請求項1又は2記載の木製防音室。
【請求項4】
前記天井パネルの上に取り外し可能な屋根ユニットを備えている、請求項1、2又は3記載の木製防音室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、屋内に設置することを主目的とした防音室に関し、環境負荷の少ない木材を主材料とする防音室に関するものである。
【背景技術】
【0002】
楽器の演奏や発声の練習をするため、あるいはカラオケ愛好家が自宅で楽しむなどのために、屋内に防音室を設置したいという要望がある。従来、既設の屋内に設置する防音室として、合成樹脂製のパネルに防音層を設けた構造のものが広く用いられている。
【0003】
一方、地球温暖化の原因物質である炭酸ガスの発生を抑制することが要請されており、合成樹脂の使用を極力避けることが要望されている。炭酸ガスの発生を抑制するためには、実質的に炭酸ガスの発生のない木材を使用するのが好ましい。
【0004】
また、屋内に設置する防音室は、その性質上、簡易に設置できる構造であることが要請される。主として木材を使用した防音室で比較的組立が容易なパネル構造の防音室は、特許文献1-4などで提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-20546号公報
【特許文献2】特開2014-20070号公報
【特許文献3】特開平11-287004号公報
【特許文献4】特許第6271797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1-4で提案されている防音室は、工場生産可能なパネルを結合して組立可能な構造とされており、地球温暖化を防止することができる簡易に設置可能な防音室であると認められる。しかし、既設の建物が手狭で屋内用の防音室を設置するスペースがないが、建物の回りに空地があり、その空地に防音室が設置できる場合もある。
【0007】
このような場合、特許文献1-4に提案されている防音室は、それらの構造上、屋外設置することについての考慮がされておらず、屋外設置用に設計された防音室を用いる必要があり、施工者は、屋内設置用のものと屋外設置用のものとの2種類のものを設計しなければならない。
【0008】
更に、防音室を屋内に設置したが家族が増えたために屋外に出したいとか、屋外に設置したが、空き部屋ができたので、出入りしやすい屋内設置に変更したいという事情が生じたとき、従来構造では、既設の防音室を撤去して新たに設置し直すことになり、費用がかかるばかりでなく、廃棄物を増大させ、新たに建築素材を消費するため、環境に多大な悪影響を及ぼすという問題が生ずる。
【0009】
そこでこの発明は、組立ないし設置が容易な屋内設置用の防音室であって、屋根を付加するのみで屋外設置にも対応可能な、屋内設置用の防音室を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の防音室は、工場生産された壁パネルW、床パネルF及び天井パネルCを結合して組み立てられた箱形の本体20と、屋外設置の際に本体20の天井パネルCの上に設置される屋根ユニット30とを備えている。
【0011】
壁パネルW、床パネルF及び天井パネルCは、合板からなる内装板1、面板2及び外装板3(3w、3f、3c)並びに外装板3の内側面に添設された防水シート3sを備え、内装板1と面板2との間隔がそれらの周縁に接合した木製の内側枠材4(4w、4f)で保持され、面板2と外装板3との間隔がそれらの周縁に接合した木製の外側枠材5(5w、5f)で保持されている。そして、内装板1と面板2との間に防音材8が配置され、面板2と外装板3との間に断熱材9が配置されている。
【0012】
壁パネルW相互の角部並びに床パネルF及び天井パネルCと壁パネルWとの角部は、一方のパネルの外装板3を防水シート3sと共に他方のパネルの厚さB(Bw、Bf)分突出させて形成した張出部11(11w、11f、11c)と他方のパネルの端面12(12w、12f)、14wとを突き合わせてボルト、木ねじ、接着などにより結合する。床パネルFと壁パネルWとの角部は、壁パネルW側に張出部11fを設け、天井パネルCと壁パネルWとの角部は、天井パネルC側に張出部11cを設けるのが好ましい。これらの結合部は、コーキング材を施工して気密性を付与する。
【0013】
屋外設置の場合は、天井パネルCの上に、木製、シート、鋼製波板などの適宜な屋根を設ける。この屋根は、本体20から取り外すことができるように設ける。
【発明の効果】
【0014】
この発明の防音室は、同一構造の本体20で屋内及び屋外設置が可能で、屋根を取り付けることにより屋内設置から屋外設置に変更すること、屋根を取り外すことにより屋外設置から屋内設置に変更することが容易に可能である。
【0015】
また、構造材が木製のため、地球温暖化防止に貢献できるという特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】屋内設置時の防音室の第1実施例を示す側面図
図2】同正面図
図3】壁の角部の横断面図
図4】壁と床及び天井との結合部の縦断面図
図5】同一面での部分パネル相互の結合部を示す断面図
図6】屋外設置時の防音室の第2実施例を示す側面図
図7】同正面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照してこの発明を具体的に説明する。図1、2は、この発明の防音室本体20を示す外観図で、防音室本体20の壁には、防音ドア21、二重ガラスの小窓22、吸排気口23などが、後述する壁パネルWに作り付けで設けられている。この防音室本体20は、図3~5に断面構造を示した壁パネルW、床パネルF及び天井パネルCを結合して組み立てられている。
【0018】
壁パネルW、床パネルF及び天井パネルCの隣接するパネルと直角に結合される角部を除く部分の基本構造は同一で、内装板1、面板2及び外装板3の3枚の合板と、外装板3の内側面に添設された防水シート3sと、これらの合板間の間隔を保持する木製の内外の枠材4、5及び必要により配置される内外の間柱6w、7wないし間梁6f、7fと、内装板1と面板2との間の間隙に配置された防音材8と、外装板3と面板2との間に配置された断熱材9とを備えている。
【0019】
実施例では、内外の間柱6w、7wや間梁6f、7fの断面寸法は、それぞれ内外の枠材4w、5w、4f、5fの断面寸法と同一としている。一方、外装板3や内装板1の厚さは、それぞれのパネルに作用する外力に基づいて決定されている。
【0020】
図3に示すように、直角に結合される2枚の壁パネルW、Wの一方には、他方のパネル厚さBwに相当する張り出し寸法の張出部11wが、当該パネルの側端面12wから添着された防水シート3sと共に外装板3wを突出させて設けられており、この張出部11wを他方の壁パネルの内外の枠材4w、5wにボルトナット、木ねじ、接着剤などで結合する。
【0021】
図4に示すように、床パネルFと結合される壁パネルWの下縁には、床パネルFのパネル厚さBfに相当する張り出し寸法の張出部11fが、外装板3fを当該パネルの下端面から突出させて設けられている。壁パネルWは、その下縁の張出部11fを床パネルFの周端面12fに突き合わせて、張出部11fを床パネルFの内外の枠材4f、5fにボルトナット、木ねじ、接着剤などで接合することにより結合される。
【0022】
また、図4に示すように、壁パネルWの上縁に結合される天井パネルCの周端面には、壁パネルWのパネル厚さBwに相当する張り出し寸法の外装板の張出部11cが、天井パネルCの周端面から外装板3cを突出させて設けられている。天井パネルCは、その周端面の張出部11cを壁パネルWの上端面14wと突き合わせて、張出部11cを壁パネルWの内外の枠材4w、5wにボルトナット、木ねじ、接着剤などで結合される。
【0023】
既設の建屋の屋内にこの発明の防音室を設置可能にするために、建屋に搬入可能な寸法の部分パネルPの複数枚を同一面で結合してそれぞれのパネルW、F、Cとするときは、図5に示すように、同一面内で結合される隣接する壁パネルW、床パネルF及び天井パネルの部分パネルP相互は、両者の内枠材4をボルトナット15で結合する。この結合作業のために、当該ボルトナット15を挿入して締結するために、内枠材4にはボルト穴を設けておき、防音材8及び内装板1に切り欠き部16を設けておく。
【0024】
上記の構造の床パネルF、壁パネルW及び天井パネルCを結合して、防音室本体20を組み立てる。新築の家屋や大規模改修の建屋に防音室本体20を設置するときは、防音室本体20を工場で組み立ててクレーン付きトラックで現場に搬送して設置スペースの床上に吊り下ろす。組み立てた防音室本体20を吊り下ろすことができないときは、部分パネルPを現場に搬入して、現場で組み立てて屋内の防音室とする。
【0025】
屋外に防音室を設置するときは、床パネルFの下面の適宜箇所に台脚35を取付け、防音室本体20の天井パネルCの上に屋根ユニット30を取り付ける。
【0026】
屋根ユニット30は、屋外に設置した防音室本体20の上に現場で施工することができるので、既存の種々の屋根構造が採用可能で、不要になったときに取り外すことができるようにして設けられていれば良い。図の実施例では、カルバー鋼板葺きの片流れ屋根としている。
【0027】
図示の屋根ユニット30は、防音室本体20の天井パネルの周縁に角材(図示されていない)、楔状の両側板33及び屋根勾配に対応する高さの背面板(図示されていない)を、例えばL形金具で天井パネルCの外装板3cに固定し、その上に必要な屋根梁を配置してカルバー鋼板31を固定することで組み立てられている。屋根梁(図示されていない)を前記角材と前記背面板の上縁に固定することにより、片流れ屋根の下縁と上縁とに空気が流通可能な隙間が形成されている。また、カルバー鋼板31の周縁の折曲げ端には、化粧材34を取り付けてある。
【0028】
屋内設置に変更するときは、カルバー鋼板31を取り外した後、L形金具を取り外して前記角材、側板33及び前記背面板を取り外し、吊り上げて台脚35を取り外してやれば良い。
【符号の説明】
【0029】
1 内装板
2 面板
3(3w、3f、3c) 外装板
3s 防水シート
4(4w、4f) 内側枠材
5(5w、5f) 外側枠材
8 防音材
11(11w、11f、11c) 張出部
12(12w、12f) 端面
20 本体
30 屋根ユニット
B(Bw、Bf) パネルの厚さ
C 天井パネル
F 床パネル
W 壁パネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7