(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147048
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】漏洩磁束探傷ヘッド及び漏洩磁束探傷装置システム
(51)【国際特許分類】
G01N 27/83 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
G01N27/83
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054583
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】592244376
【氏名又は名称】日鉄テクノロジー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142767
【弁理士】
【氏名又は名称】田ノ上 修二
(72)【発明者】
【氏名】中川 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】福田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】二木 政光
(72)【発明者】
【氏名】西野 卓也
(72)【発明者】
【氏名】兵 景
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 千尋
(72)【発明者】
【氏名】猪木 英明
(72)【発明者】
【氏名】阿相 秀明
(72)【発明者】
【氏名】釣谷 慶次
【テーマコード(参考)】
2G053
【Fターム(参考)】
2G053AA11
2G053AB22
2G053BA03
2G053BA12
2G053BA13
2G053BB04
2G053BC14
2G053CA01
2G053DA01
2G053DB16
2G053DB22
(57)【要約】
【課題】丸棒の漏洩磁束探傷における不感帯部分を0mm~20mm程度まで短縮して、次工程のための追加の検査工数を削減できる漏洩磁束探傷ヘッド及び漏洩磁束探傷装置システムを提供する。
【解決手段】漏洩磁束探傷ヘッド2は、ヨーク21と励磁コイル22からなる磁化器20と、磁化器20が磁化した丸棒Wの表面疵から漏洩する漏洩磁束を検出するセンサー部23と、磁化器20とセンサー部23を支持する本体24と、本体24に取り付けられる左右2対のガイドローラー25と、左右2対のガイドローラー25の長手方向の間に、本体24又は磁化器20に取り付けられ、左右2対のガイドローラー25のうち、どちらか1対のガイドローラー25が丸棒Wの端部を越えると、丸棒Wの表面に接触して、本体24の平衡を支持する平衡支持機構と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に回転する丸棒の表面を長手方向に進行して丸棒の表面疵を漏洩磁束探傷法によって探傷する漏洩磁束探傷ヘッドであって、ヨークと励磁コイルからなる磁化器と、前記磁化器が磁化した前記丸棒の表面疵から漏洩する漏洩磁束を検出するセンサー部と、前記磁化器と前記センサー部を支持する本体と、前記本体に取り付けられる左右2対のガイドローラーと、前記左右2対のガイドローラーの長手方向の間に、前記本体又は前記磁化器に取り付けられ、前記左右2対のガイドローラーのうち、どちらか1対のガイドローラーが前記丸棒の端部を越えると、前記丸棒の表面に接触して、前記本体の平衡を支持する平衡支持機構と、を備えたことを特徴とする漏洩磁束探傷ヘッド。
【請求項2】
周方向に回転する丸棒の表面を長手方向に進行して丸棒の表面疵を漏洩磁束探傷法によって探傷する漏洩磁束探傷ヘッドであって、ヨークと励磁コイルからなる磁化器と、前記磁化器が磁化した前記丸棒の表面疵から漏洩する漏洩磁束を検出するセンサー部と、前記磁化器と前記センサー部を支持する本体と、前記本体に取り付けられる左右2対のガイドローラーと、前記左右2対のガイドローラーの長手方向の間に、前記本体又は前記磁化器に取り付けられ、前記左右2対のガイドローラーのうち、どちらか1対のガイドローラーが前記丸棒の端部の所定の位置から端部を越える領域では、前記丸棒の表面に接触して、前記本体の平衡を支持する平衡支持機構を作動させ、前記左右2対のガイドローラーが前記丸棒の端部の所定の位置の間の領域では、前記平衡支持機構を解除する解除機構と、を備えたことを特徴とする漏洩磁束探傷ヘッド。
【請求項3】
前記平衡支持機構が、回転部材からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の漏洩磁束探傷ヘッド。
【請求項4】
前記平衡支持機構の長手方向の長さが、前記センサー部の長さより長く、前記左右2対のガイドローラー間の長さより短いことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の漏洩磁束探傷ヘッド。
【請求項5】
丸棒を周方向に回転させる回転ローラー機構と、前記丸棒の表面疵を探傷する漏洩磁束探傷ヘッドと、前記漏洩磁束探傷ヘッドを昇降し、前記丸棒の表面を長手方向に進行させる探傷ヘッド操作機構と、探傷動作の制御を行う探傷動作制御装置と、を備えた丸棒の漏洩磁束探傷装置システムにおいて、請求項1~4のいずれかに記載の漏洩磁束探傷ヘッドを備えたことを特徴とする漏洩磁束探傷装置システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏洩磁束探傷ヘッド及び漏洩磁束探傷装置システムに関するもので、特に断面が丸形の棒鋼や管状の鋼管などの表面疵の探傷を行う漏洩磁束探傷ヘッド及び漏洩磁束探傷装置システムに関する。
【背景技術】
【0002】
圧延等の塑性変形を受けた棒鋼や鋼管は、その表面に種々の表面疵を有することがあり、この疵を内在したまま次工程に送ると製品としての品質に問題が生ずる。そのため、次工程に送る前に、上記の棒鋼や鋼管の表面を探傷し、検出された表面疵は、グラインダー等の研削を行い、除去することで製品の歩留まりと品質の保証を確保している。
【0003】
棒鋼や鋼管の表面疵を検出する検査方法として、漏洩磁束探傷法が知られている。漏洩磁束探傷法は、磁性体からなる被探傷材に磁界を作用させて磁化した場合に、被探傷材の表面に磁束を遮る表面疵があると、磁束が表面から漏洩する性質を利用して、その漏洩磁束をセンサーで検出して表面疵を探傷する方法である。
【0004】
図4は、従来の漏洩磁束探傷装置システムの概略構成を示す図である。従来の漏洩磁束探傷装置システム51は、丸棒Wを周方向に回転させる回転ローラー機構3と、丸棒Wの表面疵を探傷する漏洩磁束探傷ヘッド52と、漏洩磁束探傷ヘッド52を昇降し、探傷ヘッド走行装置42が走行ライン44上を走行することで漏洩磁束探傷ヘッド52を丸棒Wの表面を長手方向に進行させる探傷ヘッド操作機構4と、探傷動作の制御を行う探傷動作制御装置55とを備えている。
【0005】
探傷動作は、以下のように行われる。丸棒Wが回転ローラー機構3に載せられると漏洩磁束探傷ヘッド52が、待機位置から探傷ヘッド昇降装置40により回転ローラー35上の丸棒Wに降ろされる。漏洩磁束探傷ヘッド52が、探傷ヘッド走行装置42により丸棒Wの端部まで移動すると、回転ローラー機構3が丸棒Wを周方向に回転させるとともに、探傷ヘッド走行装置42が、漏洩磁束探傷ヘッド52を丸棒Wの長手方向に進行させて、丸棒Wの表面を螺旋状に探傷し、表面疵と判定した部分には、塗料等を吹き付けるマーキングガン等(図示せず)を作動させる。漏洩磁束探傷ヘッド52が、丸棒Wの反対側の端部まで進行すると探傷を終了し、丸棒Wの回転が停止し、漏洩磁束探傷ヘッド52は、探傷ヘッド昇降装置40により丸棒Wから上昇した後、探傷ヘッド走行装置42により反対向きの左向きに走行して、元の待機位置へと戻る。
【0006】
図5に、従来の漏洩磁束探傷ヘッドの丸棒の端部での説明図を示す。
図5(a)は正面図であり、
図5(b)は左側面図であり、
図5(c)は、
図5(a)のA-A線断面図である。漏洩磁束探傷ヘッド52は、逆U字状のヨーク21と励磁コイル22からなる磁化器20と、磁化器20が磁化した丸棒Wの表面疵から漏洩する漏洩磁束を検出するセンサー部23と、磁化器20とセンサー部23を支持する本体24と、本体24に取り付けられる左右2対のガイドローラー25から構成されている。ガイドローラー25は、丸棒Wの表面に接触して丸棒Wの回転方向と逆向きに回転し、また、ガイドローラー25の取り付け軸の垂直方向への回転も可能なため、探傷ヘッド走行装置42による本体24の丸棒Wの長手方向への進行も接触抵抗が小さく円滑に行えるようになっている。位置センサー26は、丸棒Wの端部を検出するため、ガイドローラー25やセンサー部23の丸棒Wの端部からの距離の位置制御に役立つ。また、センサー部23は、複数の差動コイルがヨーク21の両磁極間に長手方向に並べられて構成されている。
【0007】
センサー部23の磁束の均一性を図るためにセンサー部23の長さSはヨーク21の長さの1/2~2/3程度の長さになる。ガイドローラー25の外側間の長さをLとするとガイドローラー25の片側が丸棒Wの端部から探傷を開始すると、センサー部23が探傷を開始できる位置は、丸棒Wの端部から(L-S)/2の位置であり、丸棒Wの端部からこの位置までが、漏洩磁束探傷ができない不感帯部分となっていた。センサー部23が探傷を終了する丸棒Wの反対側の端部位置でも同様であり、丸棒Wの反対側の端部から(L-S)/2の位置であり、丸棒Wの反対側の端部からこの位置までが、漏洩磁束探傷ができない不感帯部分となっていた。
【0008】
上記の漏洩磁束探傷ができない丸棒Wの両端部の不感帯部分は、丸棒Wのサイズにもよるが、150mm~300mm程度であり、両端部の不感帯部分を保証するために、不感帯部分の目視検査、又は不感帯部分専用の探傷装置で不感帯部分の探傷を追加で行うなどの工数が必要であった(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、丸棒の漏洩磁束探傷における不感帯部分を0mm~20mm程度まで短縮して、次工程のための追加の検査工数を削減できる漏洩磁束探傷ヘッド及び漏洩磁束探傷装置システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明者らが鋭意検討した結果、以下の知見を得た。
(1)従来の漏洩磁束探傷ヘッドでは、どちらか1対のガイドローラーが丸棒の端部を越えると、漏洩磁束探傷ヘッドが傾いて、センサー部の長さ方向のリフトオフが変化して探傷が困難になるため、更には丸棒の表面に近接するヨークの磁極又はセンサー部が丸棒に接触して損傷するため、ガイドローラーが丸棒の端部までしか移動できなかった。
(2)どちらか1対のガイドローラーが丸棒の端部を越えた場合に、2対のガイドローラーの長手方向の間に、丸棒の表面にヨークの磁極又はセンサー部より先に接触して、漏洩磁束探傷ヘッドが、傾かないように平衡を支持する機能を付加すれば、センサー部の長さ方向のリフトオフが変化せず、丸棒の表面に近接するヨークの磁極又はセンサー部が丸棒に接触して損傷することもなく、またそれにより、探傷範囲が広がり不感帯部分を短縮できる。
(3)どちらか1対のガイドローラーが丸棒の端部を越えた場合に、丸棒の表面にヨークの磁極又はセンサー部より先に接触して、漏洩磁束探傷ヘッドが、傾かないように平衡を支持する機能として、シューのような摺動部材で支持する方式やローラーのような回転部材で支持する方式を検討したが、回転する丸棒に接するので、より接触抵抗の小さいローラーのような回転部材で支持する方式の方が好ましい。
(4)2対のガイドローラーが丸棒の端部の内側領域にある場合には、回転する丸棒に接して平衡を支持する機能は不要であり、平衡を支持する機能が維持される場合には解除する機能を持たせることが好ましい。
【0012】
上記の知見から、本発明の漏洩磁束探傷ヘッドは、周方向に回転する丸棒の表面を長手方向に進行して丸棒の表面疵を漏洩磁束探傷法によって探傷する漏洩磁束探傷ヘッドであって、ヨークと励磁コイルからなる磁化器と、前記磁化器が磁化した前記丸棒の表面疵から漏洩する漏洩磁束を検出するセンサー部と、前記磁化器と前記センサー部を支持する本体と、前記本体に取り付けられる左右2対のガイドローラーと、前記左右2対のガイドローラーの長手方向の間に、前記本体又は前記磁化器に取り付けられ、前記左右2対のガイドローラーのうち、どちらか1対のガイドローラーが前記丸棒の端部を越えると、前記丸棒の表面に接触して、前記本体の平衡を支持する平衡支持機構と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、左右2対のガイドローラーの長手方向の間に、本体又は磁化器に取り付けられ、左右2対のガイドローラーのうち、どちらか1対のガイドローラーが丸棒の端部を越えると、丸棒の表面に接触して、本体の平衡を支持する平衡支持機構を備えたため、漏洩磁束探傷ヘッドが傾くことがなく、センサー部の長さ方向のリフトオフが変化せず、丸棒の表面に近接するヨークの磁極又はセンサー部が丸棒に接触して損傷することもなく、またそれにより、探傷範囲が広がり丸棒の端部の不感帯部分を短縮できる。
【0014】
また、本発明の漏洩磁束探傷ヘッドは、周方向に回転する丸棒の表面を長手方向に進行して丸棒の表面疵を漏洩磁束探傷法によって探傷する漏洩磁束探傷ヘッドであって、ヨークと励磁コイルからなる磁化器と、前記磁化器が磁化した前記丸棒の表面疵から漏洩する漏洩磁束を検出するセンサー部と、前記磁化器と前記センサー部を支持する本体と、前記本体に取り付けられる左右2対のガイドローラーと、前記左右2対のガイドローラーの長手方向の間に、前記本体又は前記磁化器に取り付けられ、前記左右2対のガイドローラーのうち、どちらか1対のガイドローラーが前記丸棒の端部の所定の位置から端部を越える領域では、前記丸棒の表面に接触して、前記本体の平衡を支持する平衡支持機構を作動させ、前記左右2対のガイドローラーが前記丸棒の端部の所定の位置の間の領域では、前記平衡支持機構を解除する解除機構と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、左右2対のガイドローラーの長手方向の間に、本体又は磁化器に取り付けられ、左右2対のガイドローラーのうち、どちらか1対のガイドローラーが丸棒の端部の所定の位置から端部を越える領域では、丸棒の表面に接触して、本体の平衡を支持する平衡支持機構を作動させ、前記左右2対のガイドローラーが丸棒の端部の所定の位置の間の領域では、平衡支持機構を解除する解除機構とを備えたため、どちらか1対のガイドローラーが丸棒の端部の所定の位置から端部を越える領域では、丸棒の表面に接触して、本体の平衡を支持する平衡支持機構が働き、漏洩磁束探傷ヘッドが傾くことがなく、センサー部の長さ方向のリフトオフが変化せず、丸棒の表面に近接するヨークの磁極又はセンサー部が丸棒に接触して損傷することもなく、またそれにより、探傷範囲が広がり丸棒の端部の不感帯部分を短縮できる。更に、左右2対のガイドローラーが丸棒の端部の所定の位置の間の領域では、平衡支持機構を解除する解除機構が働き、丸棒の表面との接触が解除され、左右2対のガイドローラーのみが、丸棒の表面と接触するようになり、漏洩磁束探傷ヘッドの長手方向への進行が、円滑になる。
【0016】
好ましくは、前記平衡支持機構が、回転部材からなることを特徴とする漏洩磁束探傷ヘッドである。
【0017】
漏洩磁束探傷ヘッドが傾かないように、本体の平衡を支持する平衡支持機構は、回転する丸棒に接触するので、より接触抵抗の小さいローラーのような回転部材からなることが好適である。
【0018】
また、好ましくは、前記平衡支持機構の長手方向の長さが、前記センサー部の長さより長く、前記左右2対のガイドローラーの間の長さより短いことを特徴とする漏洩磁束探傷ヘッドである。
【0019】
平衡支持機構の長手方向の長さは、センサー部の長さより長い方が、丸棒の端部の不感帯部分を短縮できるが、左右2対のガイドローラー間の長さより長くしても、自重が増えるため、また機構的にも設置も困難なことから左右2対のガイドローラーの間の長さより短いことが好適である。
【0020】
また、本発明の漏洩磁束探傷装置システムは、丸棒を周方向に回転させる回転ローラー機構と、前記丸棒の表面疵を探傷する漏洩磁束探傷ヘッドと、前記漏洩磁束探傷ヘッドを昇降し、前記丸棒の表面を長手方向に進行させる探傷ヘッド操作機構と、探傷動作の制御を行う探傷動作制御装置と、を備えた漏洩磁束探傷装置システムにおいて、上記のいずれかに記載の漏洩磁束探傷ヘッドを備えたことを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、丸棒の端部の不感帯部分を短縮できる漏洩磁束探傷ヘッドを適用して、従来の漏洩磁束探傷装置システムを再構築したため、本発明の漏洩磁束探傷装置システムは、次工程のための追加の不感帯部分の目視検査、又は不感帯部分専用の探傷装置で不感帯部分の探傷を追加で行うなどの工数を削減できる漏洩磁束探傷装置システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の漏洩磁束探傷ヘッドによれば、左右2対のガイドローラーのうち、どちらか1対のガイドローラーが丸棒の端部を越えても、丸棒の表面に接触して、本体の平衡を支持する平衡支持機構を備えたため、漏洩磁束探傷ヘッドが傾くことがなく、センサー部の長さ方向のリフトオフが変化せず、丸棒の表面に近接するヨークの磁極又はセンサー部が丸棒に接触して損傷することもなく、またそれにより、探傷範囲が広がり丸棒の端部の不感帯部分を短縮できる。また本発明の漏洩磁束探傷ヘッドを適用した漏洩磁束探傷装置システムは、次工程のための追加の不感帯部分の目視検査、又は不感帯部分専用の探傷装置で不感帯部分の探傷を追加で行うなどの工数を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る漏洩磁束探傷ヘッドの1対のガイドローラーが丸棒の端部を越えた場合の説明図であり、
図1(a)は、正面図、
図1(b)は、左側面図、
図1(c)は、
図1(a)のA-A線断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る漏洩磁束探傷ヘッドの丸棒の端部での説明図であり、
図2(a)は、漏洩磁束探傷ヘッドが丸棒の所定の位置にある場合の正面図、
図2(b)は、漏洩磁束探傷ヘッドの1対のガイドローラーが丸棒の端部を越えた位置にある場合の正面図、
図2(c)は、
図2(a)のA-A線断面図、
図2(d)は、
図2(b)のA-A線断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の漏洩磁束探傷ヘッドを用いた場合の探傷動作制御を示す一例であり、
図3(a)は第1の実施形態の漏洩磁束探傷ヘッドの探傷動作制御に、
図3(b)は第2の実施形態の漏洩磁束探傷ヘッドの探傷動作制御に対応する。
【
図4】
図4は、従来の漏洩磁束探傷装置システムの概略構成を示す図である。
【
図5】
図5は、従来の漏洩磁束探傷ヘッドの丸棒の端部での説明図であり、
図5(a)は正面図、
図5(b)は左側面図であり、
図5(c)は、
図5(a)のA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本発明において「丸棒」とは、中実の棒状体のみに限らず、中空の管状体も含むものである。
【0025】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る漏洩磁束探傷ヘッドの1対のガイドローラーが丸棒の端部を越えた場合の説明図であり、
図1(a)は、正面図、
図1(b)は、左側面図、
図1(c)は、
図1(a)のA-A線断面図である。
【0026】
本実施形態の漏洩磁束探傷ヘッド2は、逆U字状のヨーク21と励磁コイル22からなる磁化器20と、磁化器20が磁化した丸棒Wの表面疵から漏洩する漏洩磁束を検出するセンサー部23と、磁化器20とセンサー部23を支持する本体24と、本体24に取り付けられる左右2対のガイドローラー25と、左右2対のガイドローラー25の長手方向の間に、棒状のローラー28とそれを支持する平衡支持部27が本体24の平衡を支持する平衡支持機構として本体24に取り付けられている。
【0027】
左右2対のガイドローラー25が、丸棒Wの表面に接触している場合は、棒状のローラー28の表面は、丸棒Wの表面と0.5mm程度の間隔が空くように設定され、直接丸棒Wに接触しないようになっている。左右2対のガイドローラー25のうち、どちらか1対のガイドローラー25が丸棒Wの端部を越えると、棒状のローラー28の表面は、丸棒Wの表面に接触して、漏洩磁束探傷ヘッド2が傾かないように、本体24の平衡を支持することができる。
図1(a)と
図1(b)では、左側1対のガイドローラー25が丸棒Wの端部を越え、センサー部23の左側が、丸棒Wの端部まで到達した場合の正面図と左側面図を示している。
図1(c)では、
図1(a)のA-A線断面図を示すが、棒状のローラー28とそれを支持する平衡支持部27が平衡支持機構として働き、左右2対のガイドローラー25のうち、どちらか1対のガイドローラー25が丸棒Wの端部を越えても漏洩磁束探傷ができるようになった。このため従来の漏洩磁束探傷ヘッドの問題点であった丸棒Wの端部に生ずる不感帯部分をほぼ零にすることができた。
【0028】
また、棒状ローラー28の長手方向の長さは、センサー部23の長さより長い方が、本体24の平衡が安定し、丸棒Wの端部の不感帯部分を短縮できるが、左右2対のガイドローラー25の間の長さより長くしても、自重が増えるため、また機構的にも設置も困難なことから左右2対のガイドローラー25の間の長さより短いことが好ましい。
【0029】
本実施形態では、平衡支持機構の回転部材として棒状のローラー28とそれを支持する平衡支持部27を用いたが、棒状のローラー28に代り、回転部材としてボールローラーを長手方向に埋め込んだ板状のものを平衡支持部27に取り付けて、棒状のローラー28と同様の働きをさせても良い。この場合も、ボールローラーの表面と丸棒Wの表面とは0.5mm程度の間隔が空くように設定される。また、平衡支持部27は、本体24に取り付けたが、磁化器20に取り付けても良い。なお、上記の平衡支持機構の部材は、非磁性のステンレス鋼等が好ましい。
【0030】
また、ガイドローラー25が丸棒Wの端部を越えてどの程度まで移動できるかは、漏洩磁束探傷ヘッド2の位置センサー26が、丸棒Wの端部を越えたことを検出した地点から漏洩磁束探傷ヘッド2の重心の位置と安全を考慮した距離になるように探傷動作制御装置5が探傷ヘッド走行装置42を制御する。そのため、左右のガイドローラー25の間の距離、センサー部23の長さの関係によっては、不感帯部分を零にすることは出来ない場合も生ずるが、不感帯部分を20mm程度までは短縮できるため、次工程のために不感帯部分の追加の検査工数は不要となる。
【0031】
<第2の実施形態>
図2は、本発明の第2の実施形態に係る漏洩磁束探傷ヘッドの丸棒の端部での説明図であり、
図2(a)は、漏洩磁束探傷ヘッドが丸棒の所定の位置にある場合の正面図、
図2(b)は、漏洩磁束探傷ヘッドの1対のガイドローラーが丸棒の端部を越えた位置にある場合の正面図、
図2(c)は、
図2(a)のA-A線断面図、
図2(d)は、
図2(b)のA-A線断面図である。
【0032】
本実施形態の漏洩磁束探傷ヘッド2は、逆U字状のヨーク21と励磁コイル22からなる磁化器20と、磁化器20が磁化した丸棒Wの表面疵から漏洩する漏洩磁束を検出するセンサー部23と、磁化器20とセンサー部23を支持する本体24と、本体24に取り付けられる左右2対のガイドローラー25と、左右2対のガイドローラー25の長手方向の間に、平衡支持機構の回転部材としてボールローラーを長手方向に埋め込んだボールローラー付き金属板29と平衡支持部27からなる丸棒Wの表面に接触して本体24の平衡を支持する平衡支持機構と、丸棒Wの表面に接触する平衡支持機構を解除する解除機構とが、磁化器20に取り付けられている。
【0033】
左右2対のガイドローラー25のうち、どちらか1対のガイドローラー25が丸棒Wの端部の所定の位置から端部を越える領域では、丸棒Wの表面に接触して、本体24の平衡を支持する平衡支持機構を作動させ、左右2対のガイドローラー25が丸棒Wの端部の所定の位置の間の領域では、平衡支持機構を解除する解除機構と、を備えている。
【0034】
まず、左右2対のガイドローラー25のうち、どちらか1対のガイドローラー25が丸棒Wの端部の所定の位置(例えば、
図2(a)の左側の位置センサー26が丸棒Wの端部を検知する位置)から端部を越える領域(
図2(b)参照)では、所定の位置でボールローラー付き金属板29を平衡支持部27の水平の位置(
図2(c)参照)から丸棒Wの表面にボールローラーが接触する位置まで回転させて本体24の平衡を支持する平衡支持機構を作動させる(
図2(d)参照)。これにより、1対のガイドローラー25が丸棒Wの端部を越えても、ボールローラー付き金属板29のボールローラーが、丸棒Wの表面に接して、本体24の平衡を支持するので、漏洩磁束探傷ヘッド2が傾くことがなく、センサー部23の長さ方向のリフトオフが変化せず、丸棒Wの表面に近接するヨーク21の磁極又はセンサー部23が丸棒Wに接触して損傷することもなく、またそれにより、探傷範囲が広がり丸棒Wの端部の不感帯部分を短縮できる。更にボールローラー付き金属板29のボールローラーは、丸棒Wの回転方向だけでなく、長手方向への移動の回転方向にも自由度があり追随ができるため、接触抵抗を減らすことで有利である。
【0035】
左右2対のガイドローラー25が丸棒Wの端部の所定の位置の間の領域では、平衡支持機構を解除することを、
図2(a)、
図2(c)を用いて説明する。所定の位置の間(例えば、左側の位置センサー26が丸棒Wの左側の端部を検知する位置と右側の位置センサー26が丸棒Wの右側の端部を検知する位置との間)の領域では、精度の高いガイドローラー25で進行すれば良く、ボールローラー付き金属板29を所定の位置で丸棒Wの表面にボールローラーが接触する位置から平衡支持部27の水平の位置に逆回転させて、平衡支持機構が解除されるようになっている。
【0036】
ボールローラー付き金属板29の平衡支持部27の水平の位置からの回転と逆回転による平衡支持機構の作動と解除は、例えばボールローラー付き金属板29の回転軸を平衡支持部27に取り付けたギヤ付きモータで直接駆動する方法やボールローラー付き金属板29の回転軸から離れた部分を平衡支持部27に取り付けたモータ付きラッチギヤ又は偏平ギヤで押圧上下させて間接的にボールローラー付き金属板29を軸回転させる方法等、種々可能である。
【0037】
<第3の実施形態>
第3の実施形態は、本発明の漏洩磁束探傷ヘッドを適用した漏洩磁束探傷装置システムである。本発明の漏洩磁束探傷装置システムでは、漏洩磁束探傷ヘッドのどちらか1対のガイドローラーが丸棒の端部を越えるので、探傷動作制御も従来とは異なったものになる。そのため、
図4で示した従来の漏洩磁束探傷装置システムの概略構成を示す図で、従来の漏洩磁束探傷ヘッド52を本発明の漏洩磁束探傷ヘッド2に、従来の探傷動作制御装置55を本発明の探傷動作制御装置5に入れ替えれば本発明の漏洩磁束探傷装置システムになる。本実施形態の漏洩磁束探傷装置システム1は、丸棒Wを周方向に回転させる回転ローラー機構3と、丸棒Wの表面疵を探傷する本発明の漏洩磁束探傷ヘッド2と、漏洩磁束探傷ヘッド2を昇降し、丸棒Wの表面を長手方向に進行させる探傷ヘッド操作機構4と、探傷動作の制御を行う探傷動作制御装置5と、を備えた漏洩磁束探傷装置システム1である。
【0038】
図3(a)は、第1の実施形態の漏洩磁束探傷ヘッドを用いた場合の探傷動作制御を示す一例である。実線矢印は、漏洩磁束探傷ヘッド2の左側のガイドローラー25の動きを示し、破線矢印は漏洩磁束探傷ヘッド2の右側のガイドローラー25の動きを示す。なお、図面の説明上、ステップS2とS3は違う高さになっているが、ステップS2とS3は丸棒Wの表面に接触する同じ高さである。探傷動作制御は、以下のように行われる。丸棒Wが回転ローラー35に載せられ、回転を始めると漏洩磁束探傷ヘッド2が、待機位置から探傷ヘッド昇降装置40により回転ローラー35上の丸棒Wに降ろされる(ステップS1)。漏洩磁束探傷ヘッド2は、探傷ヘッド走行装置42により左向きに移動を開始し、左側のガイドローラー25が、丸棒Wの左側の端部を越えると棒状のローラー28の表面が丸棒Wの表面に接触して、本体24の平衡を支持し、安全を考慮した位置まで移動する(ステップS2)。その位置から探傷を開始し、探傷ヘッド走行装置42が、漏洩磁束探傷ヘッド2を丸棒Wの長手方向の右向きに進行させて、丸棒Wの表面を螺旋状に探傷し、漏洩磁束探傷ヘッド2の右側のガイドローラー25が、丸棒Wの右側の端部を越えると棒状のローラー28の表面が再び丸棒Wの表面に接触して、本体24の平衡を支持し、安全を考慮した位置まで移動して探傷を終了する(ステップS3)。なお、ステップS3で、2対のガイドローラー25が、丸棒Wの両端部の間にある場合は、棒状のローラー28の表面は丸棒Wの表面と0.5mm程度の間隔が空くように設定されているため、丸棒Wの表面には接触しない。探傷を終了すると漏洩磁束探傷ヘッド2は、探傷ヘッド昇降装置40により丸棒Wから引き上げられる(ステップS4)。探傷ヘッド走行装置42が反対向きの左向きに走行して、漏洩磁束探傷ヘッド2は元の待機位置へと戻る(ステップS5)。その後、回転ローラー35の回転を止めて丸棒Wの回転を停止する。
【0039】
図3(b)は、第2の実施形態の漏洩磁束探傷ヘッドを用いた場合の探傷動作制御を示す一例である。実線矢印は、漏洩磁束探傷ヘッド2の左側のガイドローラー25の動きを示し、破線矢印は漏洩磁束探傷ヘッド2の右側のガイドローラー25の動きを示す。なお、図面の説明上、ステップT2、T3とステップT4、T5、T6は違う高さになっているが、これらのステップは丸棒Wの表面に接触する同じ高さである。探傷動作は、以下のように行われる。丸棒Wが回転ローラー35に載せられ、回転を始めると漏洩磁束探傷ヘッド2が、待機位置から探傷ヘッド昇降装置40により回転ローラー35上の丸棒Wに降ろされる(ステップT1)。漏洩磁束探傷ヘッド2は、探傷ヘッド走行装置42により左向きに移動を開始し、左側のガイドローラー25が、丸棒Wの端部から所定の位置に来ると、ボールローラー付き金属板29を平衡支持部27の水平の位置からボールローラーが丸棒Wの表面に接触する位置に回転させて本体24の平衡を支持する平衡支持機構を作動させる(ステップT2)。更に左側のガイドローラー25が、丸棒Wの端部を越えても、本体24の平衡を支持し、安全を考慮した位置まで移動する(ステップT3)。その位置から探傷を開始し、探傷ヘッド走行装置42が、漏洩磁束探傷ヘッド2を丸棒Wの長手方向の右向きに進行させて、丸棒Wの表面を螺旋状に探傷し、漏洩磁束探傷ヘッド2の左側のガイドローラー25が、丸棒Wの端部から所定の位置に来るとボールローラー付き金属板29をボールローラーが丸棒Wの表面に接触する位置から逆回転させて本体24の平衡を支持する平衡支持機構を解除する(ステップT4)。平衡支持機構を解除したまま、丸棒Wの表面を螺旋状に探傷を続け、今度は右側のガイドローラー25が、丸棒Wの端部から所定の位置に来ると再び平衡支持機構を作動させる(ステップT5)。更に右側のガイドローラー25が、丸棒Wの端部を越えても、本体24の平衡を支持し、安全を考慮した位置まで移動すると探傷を終了する(ステップT6)。探傷を終了すると漏洩磁束探傷ヘッド2は、探傷ヘッド昇降装置40により丸棒Wから引き上げられ、その後、平衡支持機構を解除する(ステップT7)。探傷ヘッド走行装置42が反対向きの左向きに走行して、漏洩磁束探傷ヘッド2は元の待機位置へと戻る(ステップT8)。その後、回転ローラー35の回転を止めて丸棒Wの回転を停止する。
【0040】
いずれの探傷動作制御でも丸棒Wの表面を螺旋状に探傷し、表面疵と探傷した部分には、塗料等を吹き付けるマーキングガン等(図示せず)を作動させる。マーキングされた表面疵は、次工程に送る前にグラインダー等の研削を行い、除去することで製品の歩留まりと品質の保証を確保する。
【0041】
なお、上記実施形態の漏洩磁束探傷装置システム1では、漏洩磁束探傷ヘッド2が、1台の場合を示したが、漏洩磁束探傷ヘッド2を2台にして、1台は丸棒Wの左側の端部から中央部まで、もう1台は丸棒Wの中央部から右側の端部まで、同時に探傷するようにしても良い。
【0042】
以上、本発明の漏洩磁束探傷ヘッド及び漏洩磁束探傷装置システムについて、実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構造や探傷動作制御に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で、適宜その構造や探傷動作制御を変更することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 漏洩磁束探傷装置システム
2 漏洩磁束探傷ヘッド
3 回転ローラー機構
4 探傷ヘッド操作機構
5 探傷動作制御装置
20 磁化器
21 ヨーク
22 励磁コイル
23 センサー部
24 本体
25 ガイドローラー
26 位置センサー
27 平衡支持部
28 棒状のローラー
29 ボールローラー付き金属板
35 回転ローラー
40 探傷ヘッド昇降装置
42 探傷ヘッド走行装置
44 走行ライン
51 従来の漏洩磁束探傷装置システム
52 従来の漏洩磁束探傷ヘッド
55 従来の探傷動作制御装置
W 丸棒