IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日鐵住金建材株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人 新潟大学の特許一覧

<>
  • 特開-地中構造物の施工方法 図1
  • 特開-地中構造物の施工方法 図2
  • 特開-地中構造物の施工方法 図3
  • 特開-地中構造物の施工方法 図4
  • 特開-地中構造物の施工方法 図5
  • 特開-地中構造物の施工方法 図6
  • 特開-地中構造物の施工方法 図7
  • 特開-地中構造物の施工方法 図8
  • 特開-地中構造物の施工方法 図9
  • 特開-地中構造物の施工方法 図10
  • 特開-地中構造物の施工方法 図11
  • 特開-地中構造物の施工方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147049
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】地中構造物の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/08 20060101AFI20231004BHJP
   E02D 5/08 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
E02D17/08 A
E02D5/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054584
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 哲也
(72)【発明者】
【氏名】阿部 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】原田 剛男
(72)【発明者】
【氏名】大高 範寛
(72)【発明者】
【氏名】藤本 雄充
【テーマコード(参考)】
2D044
2D049
【Fターム(参考)】
2D044AA12
2D049EA02
2D049FB03
2D049FB12
2D049FC01
(57)【要約】
【課題】施工を容易に、かつ安全に行うことが可能となる地中構造物の施工方法を提供する。
【解決手段】実施形態における地中構造物の施工方法は、上下方向を長手方向とし、短手方向の両端部に継手部11、12が形成される側壁部材1を地盤に対して起立した状態に保持し、保持した側壁部材1の一方の継手部11と、当該側壁部材1とは異なる他の側壁部材10の他方の継手部12と、を接続し、複数の側壁部材1により筒状に形成される筒状壁体10を地上に立設する筒状壁体立設工程と、筒状壁体10を構成する複数の側壁部材1を順次地中に打設し、筒状壁体10を地中に埋設する打設工程と、筒状壁体10の内側を掘削する掘削工程と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中構造物を施工する地中構造物の施工方法であって、
上下方向を長手方向とし、短手方向の両端部に継手部が形成される側壁部材を地盤に対して起立した状態に保持し、保持した前記側壁部材の一方の継手部と、当該側壁部材とは異なる他の側壁部材の他方の継手部と、を接続し、複数の前記側壁部材により筒状に形成される筒状壁体を地上に立設する筒状壁体立設工程と、
前記筒状壁体を構成する複数の前記側壁部材を順次地中に打設し、前記筒状壁体を地中に埋設する打設工程と、
前記筒状壁体の内側を掘削する掘削工程と、を備えること
を特徴とする地中構造物の施工方法。
【請求項2】
前記筒状壁体立設工程では、前記側壁部材の下端部を地中に埋設して前記側壁部材を起立した状態に保持すること
を特徴とする請求項1記載の地中構造物の施工方法。
【請求項3】
前記筒状壁体立設工程では、前記側壁部材を打設する際のガイドとなるガイド部材を地盤に設置し、
前記打設工程では、前記ガイド部材により前記側壁部材をガイドさせて前記側壁部材を打設すること
を特徴とする請求項1又は2記載の地中構造物の施工方法。
【請求項4】
前記掘削工程は、所定の深さを掘削した後に、前記筒状壁体の内側に梁材を設置する梁材設置工程を有すること
を特徴とする請求項1~3の何れか1項記載の地中構造物の施工方法。
【請求項5】
前記掘削工程は、
前記筒状壁体の外側に向けて延びる集水管を設置する集水管設置工程と、
前記筒状壁体の下端部に、前記筒状壁体の外側に向けて延びる排水管を設置する排水管設置工程と、
を有すること
を特徴とする請求項1~4の何れか1項記載の地中構造物の施工方法。
【請求項6】
前記側壁部材は、鋼矢板であること
を特徴とする請求項1~5の何れか1項記載の地中構造物の施工方法。
【請求項7】
前記側壁部材は、板厚10mm以下の鋼矢板であること
を特徴とする請求項1~6の何れか1項記載の地中構造物の施工方法。
【請求項8】
前記側壁部材は、ステンレス製の鋼矢板であること
を特徴とする請求項1~7の何れか1項記載の地中構造物の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中構造物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集水井、深礎杭、水中仮締切、橋脚等の地中構造物を施工する際、土留めとして主にライナープレートが用いられる。例えばライナープレートを用いて集水井等の地中構造物を施工する技術として、特許文献1の開示技術が開示されている。
【0003】
特許文献1のライナープレートの連結方法は、一のライナープレートの周方向フランジに仮止め具を取り付け、他のライナープレートの周方向フランジに仮止め具を取り付けることで仮止めし、各々の周方向フランジの各々の孔に締結金具を挿通し、締結部材を介して各々の周方向フランジを連結する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-188865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の開示技術は、ライナープレートの周方向フランジに仮止め具を適用することでライナープレートを所定の高さに保持するための作業員が不要となる。しかしながら、所定の高さに保持する前に、人力により、多数のライナープレートを所定位置まで運搬し位置決めする必要があり、その後、数多くのボルトナットによりライナープレート同士を連結していく必要がある。
【0006】
このため、特許文献1の開示技術は、ライナープレートを組み立てる際、ボルトナットによる連結箇所が非常に多くなり、施工に時間が掛かる。また、ライナープレート1枚の重量は約30kgであり、これを相当枚数、人力で移動、位置決めする必要があり、作業者への負荷が大きかった。このため、地中構造物の施工を容易に行うことが可能となる技術が求められていた。さらに、特許文献1の開示技術は、地盤を掘削した後、ライナープレートを組み立てる前、地盤の側方に掘削面がむき出しとなるため、崩壊に対する安全性の面で懸念があった。したがって、地中構造物の施工の安全性を向上させることが可能となる技術が求められていた。
【0007】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、施工を容易に、かつ安全に行うことが可能となる地中構造物の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係る地中構造物の施工方法は、地中構造物を施工する地中構造物の施工方法であって、上下方向を長手方向とし、短手方向の両端部に継手部が形成される側壁部材を地盤に対して起立した状態に保持し、保持した前記側壁部材の一方の継手部と、当該側壁部材とは異なる他の側壁部材の他方の継手部と、を接続し、複数の前記側壁部材により筒状に形成される筒状壁体を地上に立設する筒状壁体立設工程と、前記筒状壁体を構成する複数の前記側壁部材を順次地中に打設し、前記筒状壁体を地中に埋設する打設工程と、前記筒状壁体の内側を掘削する掘削工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
第2発明に係る地中構造物の施工方法は、第1発明において、前記筒状壁体立設工程では、前記側壁部材の下端部を地中に埋設して前記側壁部材を起立した状態に保持することを特徴とする。
【0010】
第3発明に係る地中構造物の施工方法は、第1発明又は第2発明において、前記筒状壁体立設工程では、前記側壁部材を打設する際のガイドとなるガイド部材を設置し、前記打設工程では、前記ガイド部材により前記側壁部材をガイドさせて前記側壁部材を打設することを特徴とする。
【0011】
第4発明に係る地中構造物の施工方法は、第1発明~第3発明の何れかにおいて、前記掘削工程は、所定の深さを掘削した後に、前記筒状壁体の内側に梁材を設置する梁材設置工程を有することを特徴とする。
【0012】
第5発明に係る地中構造物の施工方法は、第1発明~第4発明の何れかにおいて、前記掘削工程は、前記筒状壁体の外側に向けて延びる集水管を設置する集水管設置工程と、前記筒状壁体の下端部に、前記筒状壁体の外側に向けて延びる排水管を設置する排水管設置工程と、を有することを特徴とする。
【0013】
第6発明に係る地中構造物の施工方法は、第1発明~第5発明の何れかにおいて、前記側壁部材は、鋼矢板であることを特徴とする。
【0014】
第7発明に係る地中構造物の施工方法は、第1発明~第6発明の何れかにおいて、前記側壁部材は、板厚10mm以下の鋼矢板であることを特徴とする。
【0015】
第8発明に係る地中構造物の施工方法は、第1発明~第7発明の何れかにおいて、前記側壁部材は、ステンレス製の鋼矢板であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1発明~第8発明によれば、上下方向を長手方向とし、短手方向の両端部に継手部が形成される側壁部材を地盤に対して起立した状態に保持し、保持した側壁部材の一方の継手部と、当該側壁部材とは異なる他の側壁部材の他方の継手部と、を接続し、複数の側壁部材により筒状に形成される筒状壁体を地上に立設する筒状壁体立設工程を備える。これにより、側壁部材の配置位置の誤差、製作誤差等により、筒状壁体が平面視で閉断面とならない場合でも、保持した側壁部材を再度位置合わせし、筒状壁体を平面視で閉断面に修正することができる。その結果、施工を容易に行うことが可能となる。
【0017】
また、第1発明~第8発明によれば、筒状壁体立設工程は、筒状の筒状壁体を地上に立設するため、地上で予め筒状壁体の出来形が確認できる。
【0018】
また、第1発明~第8発明によれば、筒状壁体を構成する複数の側壁部材を順次地中に打設し、筒状壁体を地中に埋設する打設工程を備える。これにより、振動式杭打機により、側壁部材を迅速に地中に打設することができる。このため、従来のようなライナープレートを人力で連結する作業を省略することができる。また、振動式杭打機による打設のため、作業者への負荷が軽減でき、省力化を図ることができる。このため、施工を容易に行うことが可能となる。
【0019】
また、第1発明~第8発明によれば、筒状壁体立設工程の後に、筒状壁体を構成する複数の側壁部材を順次地中に打設し、筒状壁体を地中に埋設する打設工程を備える。これにより、一の側壁部材を打設する際に、両側に配置される他の側壁部材の継手部にスライドさせながら一の側壁部材を打設することができる。このため、確実に所定形状の筒状壁体を地中に施工することが可能となる。
【0020】
また、第1発明~第8発明によれば、打設工程の後に、筒状壁体の内側を掘削する掘削工程を備える。これにより、側方に掘削面が露出されることがなく、地盤の崩壊を抑制することができる。このため、安全に施工を行うことが可能となる。
【0021】
特に、第2発明によれば、筒状壁体立設工程は、側壁部材の下端部を地中に埋設して側壁部材を起立した状態に保持する。これにより、側壁部材が地盤に対して起立した状態を安定化させることができる。このため、側壁部材の配置位置の誤差、製作誤差等により、筒状壁体が平面視で閉断面とならない場合でも、側壁部材を地中から引き抜いて再度位置合わせし、筒状壁体を平面視で閉断面に修正することができる。その結果、施工を容易に行うことが可能となる。
【0022】
特に、第3発明によれば、筒状壁体立設工程では、側壁部材を打設する際のガイドとなるガイド部材を地盤に設置し、打設工程では、ガイド部材により側壁部材をガイドさせて側壁部材を打設する。これにより、側壁部材を所定位置に打設することが容易となる。このため、地中構造物の形状の精度が向上する。
【0023】
特に、第4発明によれば、掘削工程は、所定の深さを掘削した後に、筒状壁体の内側に梁材を設置する梁材設置工程を有する。これにより、筒状壁体10を適宜補強できるため、更に安全に施工を行うことが可能となる。
【0024】
特に、第5発明によれば、掘削工程は、筒状壁体の外側に向けて延びる集水管を設置する集水管設置工程と、筒状壁体の下端部に、筒状壁体の外側に向けて延びる排水管を設置する排水管設置工程と、を有する。これにより、地中構造物を集水井として構築できる。
【0025】
特に、第6発明によれば、側壁部材は、鋼矢板である。一般に流通している鋼矢板を用いることにより、品質や断面性能が安定した部材で地中構造物を構築することが可能となる。
【0026】
特に、第7発明によれば、側壁部材は、板厚10mm以下の軽量鋼矢板である。これにより、板厚が10mmを超えるU形鋼矢板等に比べて、板厚が10mm以下の軽量鋼矢板は、継手部に余裕があり、継手部の回転可能角度が大きい。このため、平面視で閉断面となる筒状壁体を構築する際、組み立てやすくなる。また、側壁部材の板厚が薄いため、集水管設置工程、及び、排水管設置工程において、地盤をボーリングする際、筒状壁体に孔を開け易くできる。
【0027】
特に、第8発明によれば、ステンレス製の鋼矢板である。これにより、耐食性が向上し、地中構造物のライフサイクルコストを抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、第1実施形態における地中構造物の一例を示す一部破断正面図である。
図2図2は、第1実施形態における地中構造物の一例を示す平面図である。
図3図3は、第1実施形態における地中構造物の施工方法の一例の筒状壁体立設工程を示す正面図である。
図4図4は、第1実施形態における地中構造物の施工方法の一例の筒状壁体立設工程を示す斜視図である。
図5図5は、第1実施形態における地中構造物の施工方法の一例の筒状壁体立設工程を示す正面図である。
図6図6は、第1実施形態における地中構造物の施工方法の一例の打設工程を示す正面図である。
図7図7は、第1実施形態における地中構造物の施工方法の一例の打設工程を示す正面図である。
図8図8は、第1実施形態における地中構造物の施工方法の一例の掘削工程を示す一部破断正面図である。
図9図9は、第1実施形態における地中構造物の施工方法の一例の掘削工程を示す一部破断正面図である。
図10図10は、第2実施形態における地中構造物の施工方法の一例の筒状壁体立設工程を示す側面図である。
図11図11は、第3実施形態における地中構造物の施工方法の一例の打設工程を示す正面図である。
図12図12は、第3実施形態における地中構造物の施工方法の一例の打設工程を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を適用した地中構造物の施工方法を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における地中構造物100の一例を示す一部破断正面図である。図2は、第1実施形態における地中構造物100の一例を示す平面図である。
【0031】
地中構造物100は、例えば集水井として用いられる。地中構造物100は、深礎杭、水中仮締切、橋脚等として用いられてもよい。
【0032】
地中構造物100は、地中に埋設される筒状壁体10を備える。地中構造物100は、更に、梁材2と、集水管3と、排水管4と、を備えてもよい。
【0033】
筒状壁体10は、複数の側壁部材1が周方向に接続されて円筒状等の筒状に形成される。
【0034】
側壁部材1は、例えばハット形の鋼矢板が用いられる。側壁部材1は、正面側から見て矩形状に形成される。側壁部材1は、上下方向を長手方向とし、短手方向の両端部に継手部11、12が形成される。
【0035】
側壁部材1は、板厚10mm以下の鋼矢板であることが好ましい。また、側壁部材1は、ステンレス製の鋼矢板であることが好ましい。
【0036】
梁材2は、例えばH形鋼が用いられる。梁材2は、筒状壁体10を補強するものであり、筒状壁体10の内側に設けられる。梁材2は、筒状壁体10の内周面に沿って配置される。梁材2は、角形鋼管等が用いられてもよい。
【0037】
集水管3は、筒状壁体10の外側に向けて延びて形成され、地中に埋設される。集水管3は、例えば塩化ビニル管等の公知の配管材である。集水管3は、筒状壁体10に近づくにつれて下方に傾斜するように配置される。集水管3は、筒状壁体10の外側の地中の雨水、地下水等を、筒状壁体10の内側に集水する。集水管3は、上下方向に離間して複数配置される。
【0038】
排水管4は、筒状壁体10の外側に向けて延びて形成され、地中に埋設される。排水管4は、筒状壁体10の下端部に設けられる。排水管4は、例えば鋼管等の公知の配管材である。排水管4は、筒状壁体10の内側に集水された水を、筒状壁体10の外側に排水する。
【0039】
次に、第1実施形態における地中構造物の施工方法の一例について説明する。
【0040】
地中構造物の施工方法は、地中構造物100を施工する方法であって、筒状壁体立設工程と、打設工程と、掘削工程と、を備える。
【0041】
<筒状壁体立設工程>
筒状壁体立設工程は、先ず、図3に示すように、地盤に側壁部材1を打設する際のガイドとなるガイド部材5を載置する。ガイド部材5は、鋼板が用いられ、開口部51が形成される。
【0042】
筒状壁体立設工程では、図4及び図5に示すように、ガイド部材5の開口部51の内面に側壁部材1の外面を接触させながら、図示しないクレーンに吊り下げられた振動式杭打機により側壁部材1の下端部1aを埋設する。振動式杭打機を側壁部材1から離し、側壁部材1を地盤に対して起立した状態で保持する。このとき、側壁部材1の下端部1aと側壁部材1の上端部1bとの中央部は、地上に露出される。
【0043】
筒状壁体立設工程では、下端部1aを地盤に埋設して保持した側壁部材1の継手部11と、当該側壁部材1とは異なる他の側壁部材1の継手部12とを接続し、他の側壁部材1の下端部1aを埋設して地盤に保持する。側壁部材1の保持と、保持した一の側壁部材1の継手部11と他の側壁部材1の継手部12との接続と、を繰り返し行い、複数の側壁部材1により筒状に形成される筒状壁体10を地上に立設する。
【0044】
このように、筒状壁体立設工程では、上下方向を長手方向とし、短手方向の両端部に継手部11、12が形成される側壁部材1を地盤に対して起立した状態で保持し、保持した側壁部材1の一方の継手部11と、当該側壁部材1とは異なる他の側壁部材1の他方の継手部12と、を接続し、複数の側壁部材1により筒状に形成される筒状壁体10を地上に立設する。筒状壁体10は、側壁部材1の下端部1aが地中に埋設されるため、地盤に対して起立した状態となる。
【0045】
これにより、側壁部材1の配置位置の誤差、製作誤差等により、筒状壁体10が平面視で閉断面とならない場合でも、保持した側壁部材1を地盤から引き抜いて再度位置合わせし、筒状壁体10を平面視で閉断面に修正することができる。
【0046】
<打設工程>
次に、打設工程では、図6及び図7に示すように、図示しないクレーンに吊り下げられた振動式杭打機により、筒状壁体10を構成する複数の側壁部材1を順次地中に打設し、筒状壁体10を地中に埋設する。
【0047】
図6に示すように、地中に打設される一の側壁部材1の継手部11は、当該一の側壁部材1に隣接する他の側壁部材1の継手部12に接続される。また、地中に打設される一の側壁部材1の継手部12は、当該一の側壁部材1に隣接する他の側壁部材1の継手部11に接続される。すなわち、地中に打設される一の側壁部材1は、両側の他の側壁部材1の継手部11、12にスライドさせながら、地中に埋設される。このとき、側壁部材1の下端部1aと側壁部材1の上端部1bとの中央部は、地中に埋設される。側壁部材1の上端部1bは、地中に埋設されてもよいし、わずかに地上に露出されてもよい。
【0048】
打設工程では、ガイド部材5により側壁部材1をガイドさせて側壁部材1を地中に打設する。打設工程では、開口部51の内周面に側壁部材1の外面を接触させながら、側壁部材1を打設する。
【0049】
そして、図7に示すように、打設工程では、筒状壁体10を構成する全ての側壁部材1を地中に埋設する。打設工程では、筒状壁体10を地中に埋設した後、ガイド部材5を撤去する。
【0050】
<掘削工程>
次に、掘削工程では、図8及び図9に示すように、筒状壁体10の内側を掘削する。掘削工程は、梁材設置工程と、集水管設置工程と、排水管設置工程と、を有する。
【0051】
図8に示すように、掘削工程では、所定の深さを掘削した後に、筒状壁体10の内側に梁材2を設置する梁材設置工程を有する。これにより、筒状壁体10を補強することができる。
【0052】
図9に示すように、掘削工程は、所定の深さを掘削した後に、又は、掘削が完了した後に、筒状壁体10の外側に向けて延びる集水管3を設置する集水管設置工程を有する。集水管設置工程は、ボーリング等により筒状壁体10及び地中に孔を形成し、形成した孔に集水管3を設置する。
【0053】
掘削工程は、掘削が完了した後に、筒状壁体10の下端部に、筒状壁体10の外側に向けて延びる排水管4を設置する排水管設置工程を有する。排水管設置工程は、ボーリング等により筒状壁体10及び地中に孔を形成し、形成した孔に排水管4を設置する。
【0054】
以上により、地中構造物の施工方法の一例が完了する。
【0055】
本実施形態によれば、上下方向を長手方向とし、短手方向の両端部に継手部11、12が形成される側壁部材1を地盤に対して起立した状態に保持し、保持した側壁部材1の一方の継手部11と、当該側壁部材1とは異なる他の側壁部材1の他方の継手部12と、を接続し、複数の側壁部材1により筒状に形成される筒状壁体10を地上に立設する筒状壁体立設工程を備える。これにより、側壁部材1の配置位置の誤差、製作誤差等により、筒状壁体10が平面視で閉断面とならない場合でも、保持した側壁部材1を再度位置合わせし、筒状壁体10を平面視で閉断面に修正することができる。その結果、施工を容易に行うことが可能となる。
【0056】
また、本実施形態によれば、筒状壁体立設工程は、筒状の筒状壁体10を地上に立設するため、地上で予め筒状壁体10の出来形が確認できる。
【0057】
また、本実施形態によれば、筒状壁体10を構成する複数の側壁部材1を順次地中に打設し、筒状壁体10を地中に埋設する打設工程を備える。これにより、振動式杭打機により、側壁部材1を迅速に地中に打設することができる。このため、従来のようなライナープレートを人力で連結する作業を省略することができる。また、振動式杭打機による打設のため、作業者への負荷が軽減でき、省力化が図れる。このため、施工を容易に行うことが可能となる。
【0058】
また、本実施形態によれば、クレーン、振動式杭打機とも、一般に入手できるものであり、サイレントパイラー等の特殊な装置でなくても施工ができる。このため、施工時の制約が少なく、施工の汎用性を向上させることが可能となる。
【0059】
また、本実施形態によれば、筒状壁体立設工程の後に、筒状壁体10を構成する複数の側壁部材1を順次地中に打設し、筒状壁体10を地中に埋設する打設工程を備える。これにより、一の側壁部材1を打設する際に、両側に配置される他の側壁部材1の継手部11、12にスライドさせながら一の側壁部材1を打設することができる。このため、確実に所定形状の筒状壁体10を地中に施工することが可能となる。
【0060】
また、本実施形態によれば、打設工程の後に、筒状壁体10の内側を掘削する掘削工程を備える。これにより、側方に掘削面が露出されることがなく、地盤の崩壊を抑制することができる。このため、安全に施工を行うことが可能となる。
【0061】
本実施形態によれば、筒状壁体立設工程は、側壁部材1の下端部1aを地中に埋設して側壁部材1を起立した状態に保持する。これにより、側壁部材1が地盤に対して起立した状態を安定化させることができる。このため、側壁部材1の配置位置の誤差、製作誤差等により、筒状壁体10が平面視で閉断面とならない場合でも、側壁部材1を地中から引き抜いて再度位置合わせし、筒状壁体10を平面視で閉断面に修正することができる。その結果、施工を容易に行うことが可能となる。
【0062】
本実施形態によれば、筒状壁体立設工程では、側壁部材1を打設する際のガイドとなるガイド部材5を設置し、打設工程では、ガイド部材5により側壁部材1をガイドさせて側壁部材1を打設する。これにより、側壁部材1を所定位置に打設することが容易となる。このため、地中構造物100の形状の精度が向上する。
【0063】
本実施形態によれば、掘削工程は、所定の深さを掘削した後に、筒状壁体10の内側に梁材2を設置する梁材設置工程を有する。これにより、筒状壁体10を適宜補強できるため、更に安全に施工を行うことが可能となる。
【0064】
本実施形態によれば、掘削工程は、筒状壁体10の外側に向けて延びる集水管3を設置する集水管設置工程と、筒状壁体10の下端部に、筒状壁体10の外側に向けて延びる排水管4を設置する排水管設置工程と、を有する。これにより、地中構造物100を集水井として構築できる。
【0065】
本実施形態によれば、側壁部材1は、鋼矢板である。一般に流通している鋼矢板を用いることにより、品質や断面性能が安定した部材で地中構造物100を構築することが可能となる。
【0066】
本実施形態によれば、側壁部材1は、板厚10mm以下の軽量鋼矢板である。これにより、板厚が10mmを超えるU形鋼矢板等に比べて、板厚が10mm以下の軽量鋼矢板は、継手部に余裕があり、継手部の回転可能角度が大きい。このため、平面視で閉断面となる筒状壁体10を構築する際、組み立てやすくなる。また、側壁部材1の板厚が薄いため、集水管設置工程、及び、排水管設置工程において、地盤をボーリングする際、筒状壁体10に孔を開け易くできる。
【0067】
本実施形態によれば、ステンレス製の鋼矢板である。これにより、耐食性が向上し、地中構造物100のライフサイクルコストを抑えることが可能となる。
【0068】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態における地中構造物の施工方法の一例について説明する。以下、第1実施形態と同様の構成については、以下での詳細な説明を省略する。
【0069】
地中構造物の施工方法は、地中構造物100を施工する方法であって、筒状壁体立設工程と、打設工程と、掘削工程と、を備える。
【0070】
<筒状壁体立設工程>
筒状壁体立設工程は、先ず、図10に示すように、側壁部材1の起立した状態を保持するための保持部材6を地盤に載置する。保持部材6は、例えば断面L字状に形成され、地盤に沿って延びる底板部61と、底板部61から起立した板状のガイド部材62と、を有する。
【0071】
筒状壁体立設工程では、一対の保持部材6を互いに離間して地盤に載置する。そして、筒状壁体立設工程では、一対の保持部材6の間に側壁部材1を配置して、保持部材6により側壁部材1を地盤に対して起立した状態を保持する。側壁部材1は、一対の保持部材6により挟まれて、地盤に対して起立した状態を保持する。このとき、側壁部材1の下端部1aは、地盤に載置されてもよいし、地中に埋設されてもよい。また、保持した側壁部材1は、下端部1aと側壁部材1の上端部1bとの中央部が地上に露出される。
【0072】
そして、筒状壁体立設工程では、複数の側壁部材1により筒状壁体10を地上に立設する。
【0073】
<打設工程>
その後、打設工程では、保持部材6のガイド部材62により側壁部材1をガイドさせて側壁部材1を地中に打設する。打設工程では、一対のガイド部材62に側壁部材1の内面と外面とを接触させながら、側壁部材1を打設する。
【0074】
そして、打設工程では、筒状壁体10を構成する全ての側壁部材1を地中に埋設する。打設工程では、筒状壁体10を地中に埋設した後、保持部材6を撤去する。
【0075】
<掘削工程>
その後、第1実施形態と同様に、掘削工程を行って、地中構造物の施工方法の一例が完了する。
【0076】
本実施形態によれば、筒状壁体立設工程では、保持部材6を地盤に設置し、保持部材6により側壁部材1を地盤に対して起立した状態を保持する。これにより、側壁部材1が起立した状態を安定化させることができる。このため、側壁部材1の配置位置の誤差、製作誤差等により、筒状壁体10が平面視で閉断面とならない場合でも、起立した側壁部材1を保持部材6から取り外して再度位置合わせし、筒状壁体10を平面視で閉断面に修正することができる。その結果、施工を容易に行うことが可能となる。
【0077】
本実施形態によれば、筒状壁体立設工程では、互いに離間して一対の保持部材6を設置し、一対の保持部材6により側壁部材1を挟んで地盤に対して起立した状態に保持する。これにより、側壁部材1が起立した状態を更に安定化させることができる。
【0078】
本実施形態によれば、打設工程では、一対のガイド部材62に側壁部材1の内面と外面とを接触させながら、側壁部材1を打設する。これにより、側壁部材1を所定位置に打設することが更に容易となる。このため、地中構造物100の形状の精度が更に向上する。
【0079】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態における地中構造物の施工方法の一例について説明する。
【0080】
<筒状壁体立設工程>
地中構造物の施工方法では、第1実施形態と同様に、筒状壁体立設工程を行う。
【0081】
<打設工程>
打設工程では、図11に示すように、一の側壁部材1を打設した後に、当該一の側壁部材1の上方に縦継用側壁部材1’を配置する。縦継用側壁部材1’は、側壁部材1と同様のものが用いられる。縦継用側壁部材1’は、例えばハット形の鋼矢板が用いられる。縦継用側壁部材1’は、正面側から見て矩形状に形成される。縦継用側壁部材1’は、上下方向を長手方向とし、短手方向の両端部に継手部11’、12’が形成される。
【0082】
そして、打設工程では、図12に示すように、側壁部材1と縦継用側壁部材1’とに当て板13を溶接することにより縦継する。打設工程では、側壁部材1と縦継用側壁部材1’とを縦継した後、必要に応じて、縦継用側壁部材1’を振動式杭打機により打設してもよい。
【0083】
<掘削工程>
その後、第1実施形態と同様に、掘削工程を行って、地中構造物の施工方法の一例が完了する。
【0084】
本実施形態によれば、打設工程では、一の側壁部材1を打設した後に、一の側壁部材1の上方に縦継用側壁部材1’を縦継する。これにより、側壁部材1の長さが地中構造物100の設計深さに対して短い場合に、縦継用側壁部材1’により地中への根入れ長を確保することができる。また、縦継用側壁部材1’の継手部11’、12’は、両側に隣接する他の側壁部材1の継手部11、12にスライドさせることができる。このため、縦継用側壁部材1’を側壁部材1の上方に配置する際にふら付くことがなく、縦継する下側の側壁部材1と位置を合わせやすい。
【0085】
以上、この発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。さらに、この発明は、上記の実施形態の他、様々な新規な形態で実施することができる。例えば、上記の実施形態において、筒状壁体10は平面視で円形としているが、小判形や馬蹄形、矩形など、その形状は限定しない。したがって、上記の実施形態は、この発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更が可能である。このような新規な形態や変形は、この発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明、及び特許請求の範囲に記載された発明の均等物の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
100 :地中構造物
10 :筒状壁体
1 :側壁部材
1a :下端部
1b :上端部
11 :継手部
12 :継手部
1’ :縦継用側壁部材
11’ :継手部
12’ :継手部
13 :当て板
2 :梁材
3 :集水管
4 :排水管
5 :ガイド部材
51 :開口部
6 :保持部材
61 :底板部
62 :ガイド部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12