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特開2023-147052地盤注入用薬液組成物、発泡体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147052
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】地盤注入用薬液組成物、発泡体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/46 20060101AFI20231004BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20231004BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20231004BHJP
   C09K 17/30 20060101ALI20231004BHJP
   C09K 17/12 20060101ALI20231004BHJP
   C09K 17/14 20060101ALI20231004BHJP
   C09K 103/00 20060101ALN20231004BHJP
【FI】
C09K17/46 P
C08G18/00 K
C08G18/08 038
C09K17/30 P
C09K17/12 P
C09K17/14 P
C09K103:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054589
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】本村 勇太
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼ 智裕
【テーマコード(参考)】
4H026
4J034
【Fターム(参考)】
4H026CA03
4H026CB08
4H026CC06
4J034BA02
4J034BA03
4J034CA04
4J034CB03
4J034CB04
4J034CB05
4J034CB07
4J034CC03
4J034CC08
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB07
4J034DC02
4J034DC43
4J034DC50
4J034DF01
4J034DF16
4J034DF20
4J034DF22
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG14
4J034DG23
4J034HA02
4J034HA06
4J034HA07
4J034HA08
4J034HB03
4J034HB12
4J034HC03
4J034HC09
4J034HC12
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034KA01
4J034KB02
4J034KB05
4J034KD07
4J034KD11
4J034KD12
4J034KE02
4J034MA04
4J034NA03
4J034NA08
4J034QA03
4J034QB01
4J034QB13
4J034QB16
4J034QC01
4J034RA10
(57)【要約】
【課題】扱い易い反応スケジュールを有しながら、反応温度依存を低減して発泡不良を防止することができる地盤注入用薬液組成物、発泡体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の地盤注入用薬液組成物は、A液及びB液の2種の薬液から構成される地盤注入用薬液組成物であって、A液は、水溶性ケイ酸塩と、触媒と、を含み、B液は、ポリイソシアネートを含み、触媒として、第1の3級アミンと、第2の3級アミンと、の2種の3級アミンを含み、第1の3級アミンは、ヒドロキシ基と、窒素原子に直結されたメチル基を有する3級アミノ基と、を備え、第2の3級アミンは、窒素原子に直結されたメチル基を有する3級アミノ基を備え、且つ、ヒドロキシ基を備えないことを特徴とする。本発明の発泡体は、本発明の地盤注入用薬液組成物を構成するA液とB液とを混合して得られることを特徴とする。本発明の発泡体の製造方法は、本発明の地盤注入用薬液組成物を構成するA液とB液とを混合して発泡体を形成することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A液及びB液の2種の薬液から構成される地盤注入用薬液組成物であって、
前記A液は、水溶性ケイ酸塩と、触媒と、を含み、
前記B液は、ポリイソシアネートを含み、
前記触媒として、第1の3級アミンと、第2の3級アミンと、の2種の3級アミンを含み、
前記第1の3級アミンは、ヒドロキシ基と、窒素原子に直結されたメチル基を有する3級アミノ基と、を備え、
前記第2の3級アミンは、窒素原子に直結されたメチル基を有する3級アミノ基を備え、且つ、ヒドロキシ基を備えないことを特徴とする地盤注入用薬液組成物。
【請求項2】
前記第1の3級アミンは、前記3級アミノ基と前記ヒドロキシ基とを備える主鎖内に酸素原子及び/又は窒素原子を有する請求項1に記載の地盤注入用薬液組成物。
【請求項3】
前記第1の3級アミンは、前記3級アミノ基と前記ヒドロキシ基とを備える主鎖内に環構造を有さない請求項1又は2に記載の地盤注入用薬液組成物。
【請求項4】
前記第1の3級アミンが有する前記3級アミノ基として、ジメチルアミノ基を有する請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の地盤注入用薬液組成物。
【請求項5】
前記第1の3級アミンと前記第2の3級アミンとの合計を100質量%とした場合に、前記第1の3級アミンの割合は5質量%以上である請求項1乃至4のうちのいずれかに記載の地盤注入用薬液組成物。
【請求項6】
前記A液は、ポリオールを含む請求項1乃至5のうちのいずれかに記載の地盤注入用薬液組成物。
【請求項7】
前記ポリオールは、数平均分子量が200超のポリエーテルポリオールである請求項6に記載の地盤注入用薬液組成物。
【請求項8】
A液全体100質量%に対して、前記ポリオールは8質量%以下である請求項6又は7に記載の地盤注入用薬液組成物。
【請求項9】
請求項1乃至8のうちのいずれかに記載の地盤注入用薬液組成物を構成する前記A液と前記B液とを混合して得られることを特徴とする発泡体。
【請求項10】
請求項1乃至8のうちのいずれかに記載の地盤注入用薬液組成物を構成する前記A液と前記B液とを混合して発泡体を形成することを特徴とする発泡体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤注入用薬液組成物、発泡体及びその製造方法に関する。更に詳しくは、ケイ酸塩とポリイソシアヌレートとを用いる地盤注入用薬液組成物、発泡体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤改良や構造物空洞充填等に用いられるグラウト材として発泡ウレタングラウトが知られている。反応生成物としての発泡ウレタングラウトは、実質的にポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得る有機材料であるため、高い難燃性を得るには難燃剤の配合が必要となる。また、発泡ウレタングラウトは、その原材料コストが高いという問題があった。
これに対して、ポリオールの一部を無機材料である水ガラス(ケイ酸塩水溶液)に置き換えた、無機材料と有機材料との複合反応生成物として得られる複合グラウトが知られている。複合グラウトは、無機材料を骨材に含むため、有機骨材のみのグラウトに比べて優れた難燃性を有する。また、複合グラウトは、原材料コストが低いという利点がある。このような複合グラウトに関する技術は、下記特許文献1及び2において知られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-152154号公報
【特許文献2】特開2011-037946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1には、発泡状の無機-有機複合固結体を形成することにより、固結強度が大きく、安定強化効果、耐久性、注入作業性及び経済性に優れた岩盤ないし地盤及び人工構造物の安定強化ないしは止水を可能ならしめることを目的(特許文献1[0007])として、(A)アルカリ珪酸塩水溶液、(B)有機ポリイソシアネート組成物、(C)分子量が120未満のイミダゾール系触媒及び(D)分子量が120未満の脂肪族系三級アミン系触媒、からなる地盤や人工構造物等の安定化用注入薬液組成物(特許文献1[請求項1])が開示されている。
【0005】
上記特許文献2には、ケイ酸塩水溶液の分離を抑制し、ケイ酸塩水溶液とイソシアネート成分との相溶性に優れ、硬化物からの有機化合物の溶出を抑制し、環境汚染(特に水質汚染)を抑制でき、さらに、硬化物に高い強度を付与するとともに、長期耐久性にも優れるロックボルト定着材用組成物等を提供することを目的(特許文献2[0010])として、トンネル掘削後の周辺地山に打設するロックボルト定着材用組成物であって、前記定着材用組成物が、ケイ酸塩水溶液を含む(A)成分と、イソシアネート化合物を含む(B)成分とからなり、前記(A)成分が、(A1)ケイ酸ナトリウム水溶液、および、(A2)トリアルカノールアミンおよびアルキルジアルカノールアミンからなる群から選ばれるアミンポリオールを含有し、前記(B)成分が、(B1)イソシアネート化合物、および、(B2)炭素数8~12の脂肪族アルコールと多塩基酸からなるエステル化合物を含有するロックボルト定着材用組成物(特許文献2[請求項1])が開示されている。
【0006】
これらグラウト材では、触媒選択により、発泡開始時間、発泡終了時間、これらの時間比等の反応スケジュールをコントロールできる一方で、触媒選択によって温度に敏感な性質を生じる場合がある。とりわけ、反応環境が高温になると発泡が不安定となり、例えば、発泡後収縮を生じたり、発泡体内に空洞を生じたり、発泡セルが不均一になったりする場合がある。このような発泡不良は、得られる複合グラウトの強度に影響するため、避けることが好ましいが、上述の通り、扱い易い反応スケジュールを確保しながら、温度依存を低減し、発泡不良を防止することは容易ではない。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、扱い易い反応スケジュールを有しながら、反応温度依存を低減して発泡不良を防止することができる地盤注入用薬液組成物、発泡体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は以下に示す通りである。
[1]A液及びB液の2種の薬液から構成される地盤注入用薬液組成物であって、
前記A液は、水溶性ケイ酸塩と、触媒と、を含み、
前記B液は、ポリイソシアネートを含み、
前記触媒として、第1の3級アミンと、第2の3級アミンと、の2種の3級アミンを含み、
前記第1の3級アミンは、ヒドロキシ基と、窒素原子に直結されたメチル基を有する3級アミノ基と、を備え、
前記第2の3級アミンは、窒素原子に直結されたメチル基を有する3級アミノ基を備え、且つ、ヒドロキシ基を備えないことを特徴とする地盤注入用薬液組成物。
[2]前記第1の3級アミンは、前記3級アミノ基と前記ヒドロキシ基とを備える主鎖内に酸素原子及び/又は窒素原子を有する上記[1]に記載の地盤注入用薬液組成物。
[3]前記第1の3級アミンは、前記3級アミノ基と前記ヒドロキシ基とを備える主鎖内に環構造を有さない上記[1]又は[2]に記載の地盤注入用薬液組成物。
[4]前記第1の3級アミンが有する前記3級アミノ基として、ジメチルアミノ基を有する上記[1]乃至[3]のうちのいずれかに記載の地盤注入用薬液組成物。
[5]前記第1の3級アミンと前記第2の3級アミンとの合計を100質量%とした場合に、前記第1の3級アミンの割合は5質量%以上である上記[1]乃至[4]のうちのいずれかに記載の地盤注入用薬液組成物。
[6]前記A液は、ポリオールを含む上記[1]乃至[5]のうちのいずれかに記載の地盤注入用薬液組成物。
[7]前記ポリオールは、数平均分子量が200超のポリエーテルポリオールである上記[6]に記載の地盤注入用薬液組成物。
[8]A液全体100質量%に対して、前記ポリオールは8質量%以下である上記[6]又は[7]に記載の地盤注入用薬液組成物。
[9]上記[1]乃至[8]のうちのいずれかに記載の地盤注入用薬液組成物を構成する前記A液と前記B液とを混合して得られることを特徴とする発泡体。
[10]上記[1]乃至[8]のうちのいずれかに記載の地盤注入用薬液組成物を構成する前記A液と前記B液とを混合して発泡体を形成することを特徴とする発泡体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の地盤注入用薬液組成物によれば、扱い易い反応スケジュールを有しながら、反応温度依存が低減されて発泡不良が防止された発泡体を得ることができる。
本発明の発泡体によれば、発泡不良が防止される。
本発明の発泡体の製造方法によれば、扱い易い反応スケジュールを有しながら、発泡不良が防止された発泡体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について具体的な実施形態に基づき説明する。但し、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。これらの実施形態はあくまでも説明のために便宜的に示す例示に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらに限定されるものではなく、目的、用途に応じて本発明を種々変更することができる。また、本明細書中で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書中にとり入れるものとする。
また、本明細書では「XX~YY」の記載は「XX以上YY以下」を意味するものとする。更に、本明細書で例示する化合物では、表記法が複数ある化合物名の一部にCAS登録番号を併記する場合があるが、CAS登録番号は異性体態等により異なるため、併記した化合物名のうちの一例を表すものであり、化合物名とCAS登録番号とが1対1で対応するものではない。
【0011】
〔1〕地盤注入用薬液組成物
本発明の地盤注入用薬液組成物(以下、単に「本組成物」ともいう)は、A液及びB液の2種の薬液から構成され、
A液は、水溶性ケイ酸塩と、触媒と、を含み、
B液は、ポリイソシアネートを含み、
触媒として、第1の3級アミン(以下、「第1-3級アミン」ともいう)と、第2の3級アミン(以下、「第2-3級アミン」ともいう)と、の2種の3級アミンを含み、
第1-3級アミンは、ヒドロキシ基と、窒素原子に直結されたメチル基を有する3級アミノ基と、を備え、
第2-3級アミンは、窒素原子に直結されたメチル基を有する3級アミノ基を備え、且つ、ヒドロキシ基を備えないことを特徴とする。
【0012】
[1]A液
A液は「水溶性ケイ酸塩」及び「触媒」を含む。
【0013】
(1)水溶性ケイ酸塩
水溶性ケイ酸塩は、水溶性を呈するケイ酸塩化合物であり、一般に水ガラスと称されるものが含まれる。メタケイ酸塩、オルトケイ酸塩等も水溶性を呈する場合は利用できる。
水溶性ケイ酸塩を構成する陽イオンの種類は限定されないが、1価のアルカリ金属イオン(Liイオン、Naイオン、Kイオン等)、アンモニウムイオン等が挙げられる。即ち、水溶性ケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸アンモニウム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。本発明では、上記のなかでも、安価且つ入手が容易である点から、ケイ酸ナトリウム(ケイ酸ソーダ)が好ましい。
【0014】
ケイ酸ナトリウムは、一般に、NaO・nSiOと表すことができ、このうち、水溶性ケイ酸ナトリウムは、通常、n>1であり、本発明で用いる水溶性ケイ酸ナトリウムにおけるnは2.0~4.0が好ましい。この範囲では、保存安定性に優れるとともに、低温凝固を抑制できる。
また、通常、A液の調製に際して、水溶性ケイ酸塩は、その水溶液(以下、単に「ケイ酸塩水溶液」ともいう)として配合される。ケイ酸塩水溶液は、適宜、調製して用いてもよいが、ケイ酸塩水溶液(ケイ酸ナトリウム水溶液)、珪酸ソーダ、水ガラス等としても市販されているため、これらの市販品を利用できる。ケイ酸ナトリウムに関しては、JIS規格(JIS K1408)に規定された、1号、2号、3号等の各ケイ酸ナトリウムを利用できる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。また、このJIS規格に準拠して配合された、例えば、4号、5号等、1.5号、2.5号等のものを利用できる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
ケイ酸塩水溶液の固形分は限定されないが、A液の安定性や固結特性等の観点から、ケイ酸塩水溶液全体に対して20~60質量%が好ましく、30~50質量%がより好ましい。
【0015】
A液に含まれる水溶性ケイ酸塩の量は限定されないが、A液全体を100質量%とした場合に、水溶性ケイ酸塩と水との合計が80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上がより好ましく、88質量%以上が更に好ましく、89質量%以上が特に好ましい。一方、この含有量は、通常、99.99質量%以下であり、99.8質量%以下がより好ましく、99.6質量%以下が更に好ましく、99.4質量%以下が特に好ましい。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。即ち、例えば、80~99.99質量%とすることができ、85~99.8質量%とすることができ、88~99.6質量%とすることができ、89~99.4質量%とすることができる。尚、上記水はA液に含まれる水の全量を意味する。即ち、このときの水とは、水溶性ケイ酸塩を水溶液(即ち、水ガラス)として用いる場合では水溶液中に含まれている水分量と、他の添加剤に含まれる水分量と、水として加えられたものの合計とする。
【0016】
(2)触媒
触媒は、A液とB液との混合後に、これらA液及びB液に含まれる成分から反応生成物である発泡体(発泡固結体)を形成する際に触媒として寄与する成分である。本組成物では、この触媒として「第1-3級アミン」及び「第2-3級アミン」の2種類の3級アミンを含む。
【0017】
(2-1)第1-3級アミン
第1-3級アミンは、ヒドロキシ基と、窒素原子に直結されたメチル基を有する3級アミノ基(以下、単に「メチル3級アミノ基」ともいう)と、を備える化合物である。
第1-3級アミンは、単独で用いると、発泡の安定性が良くないという問題が顕在するが、本組成物内では、第2-3級アミンとの併用によって触媒全体として有用に機能される。具体的には、第1-3級アミンは併用により、反応の温度依存を低減する効果と、発泡不良を抑制する効果と、を発揮しているのではないかと考えられる。その理由は定かではないが、第1-3級アミンでは、窒素原子に直結された基がメチル基であることにより、エチル基等のように炭素数がより大きい炭化水素基に比べて、3級アミノ基の立体障害が小さくなる。これにより、第1-3級アミンの反応初期の触媒活性が向上されると考えられる。また、同時に第1-3級アミンはヒドロキシ基を有するため、ヒドロキシ基を有さない3級アミンに比べて、水溶性ケイ酸塩に対する親和性が向上され、水溶性ケイ酸塩とポリイソシアネートとの反応を促進できると考えられる。このように、第1-3級アミンと第2-3級アミンとの併用により触媒全体として、扱い易い反応スケジュールを確保しながら、反応温度依存を低減して発泡不良を防止できると考えられる。
【0018】
第1-3級アミンは、3級アミノ基を1つのみ備えてもよく2つ以上を備えてもよい。また、メチル3級アミノ基(窒素原子に直結されたメチル基を有する3級アミノ基、即ち、モノメチル3級アミノ基、ジメチル3級アミノ基等)を1つのみ備えてもよく2つ以上を備えてもよい。例えば、(1)3級アミノ基を1つのみ備え、当該3級アミノ基がメチル3級アミノ基である化合物、(2)3級アミノ基を2つ以上備え、当該3級アミノ基のうちの1つのみがメチル3級アミノ基であり、他が非メチル3級アミノ基である化合物、(3)3級アミノ基を2つ以上備え、当該3級アミノ基のうちの2つ以上がメチル3級アミノ基であり、1つ以上の非メチル3級アミノ基を有する化合物、(4)3級アミノ基を2つ以上備え、当該3級アミノ基が全てメチル3級アミノ基である化合物等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、第1-3級アミンは、ヒドロキシ基を1つのみ備えてもよく2つ以上を備えてもよい。
従って、第1-3級アミンとしては、例えば、メチル3級アミノ基とヒドロキシ基とを1つずつ備えた化合物が挙げられる。また、複数のメチル3級アミノ基と1つのヒドロキシ基とを備えた化合物が挙げられる。更に、1つのメチル3級アミノ基と複数のヒドロキシ基とを備えた化合物が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0019】
より具体的には、2-(ジメチルアミノ)エタノール(CAS RN:108-01-0)、2-(エチルメチルアミノ)エタノール(CAS RN:2893-43-8)、3-(ジメチルアミノ)-1-プロパノール(CAS RN:3179-63-3)、1-(ジメチルアミノ)-2-プロパノール(CAS RN:108-16-7)、2-[エチル(メチル)アミノ]-1-プロパノール(CAS RN:1060817-16-4)、4-(ジメチルアミノ)-1-ブタノール(CAS RN:13330-96-6)、3-(ジメチルアミノ)-1-ブタノール(CAS RN:2893-65-4)、6-(ジメチルアミノ)-1-ヘキサノール(CAS RN:1862-07-3)等のメチル3級アミノ基とヒドロキシ基とを1つずつ備えた化合物が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、1,3-ビス(ジメチルアミノ)-2-プロパノール(CAS RN:5966-51-8)、2-[[2-(ジメチルアミノ)エチル]メチルアミノ]エタノール(CAS RN:2212-32-0)、1-[ビス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]アミノ]-2-プロパノール(CAS RN:67151-63-7)、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(CAS RN:90-72-2)等の複数のメチル3級アミノ基と1つのヒドロキシ基とを備えた化合物が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、3-(ジメチルアミノ)-1,2-プロパンジオール(CAS RN:623-57-4)、N-メチルジエタノールアミン(CAS RN:105-59-9)等の1つのメチル3級アミノ基と複数のヒドロキシ基とを備えた化合物が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0020】
また、2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール(CAS RN:1704-62-7)、N,N,N’-トリメチル-n’-(2-ヒドロキシエチル)ビス(2-アミノエチル)エーテル(CAS RN:83016-70-0)等のメチル3級アミノ基とヒドロキシ基とを備える主鎖内に酸素原子を有する化合物が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0021】
また、2-[[2-(ジメチルアミノ)エチル]メチルアミノ]エタノール(CAS RN:2212-32-0)、1-[ビス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]アミノ]-2-プロパノール(CAS RN:67151-63-7)、N,N,N’-トリメチル-n’-(2-ヒドロキシエチル)ビス(2-アミノエチル)エーテル(CAS RN:83016-70-0)等のメチル3級アミノ基とヒドロキシ基とを備える主鎖内に窒素原子を有する化合物が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0022】
また、4-(ジメチルアミノ)ベンジルアルコール(CAS RN:1703-46-4)、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(CAS RN:90-72-2)、2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エタノール(CAS RN:50438-75-0)等のメチル3級アミノ基とヒドロキシ基とを備える主鎖内に環構造を有する化合物が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0023】
第1-3級アミンとしては、上記のなかでも、3級アミノ基とヒドロキシ基とを備える主鎖内に酸素原子及び/又は窒素原子を有する化合物が好ましく、更には、メチル3級アミノ基とヒドロキシ基とを備える主鎖内に酸素原子及び/又は窒素原子を有する化合物がより好ましい。即ち、2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール(CAS RN:1704-62-7)、N,N,N’-トリメチル-n’-(2-ヒドロキシエチル)ビス(2-アミノエチル)エーテル(CAS RN:83016-70-0)、2-[[2-(ジメチルアミノ)エチル]メチルアミノ]エタノール(CAS RN:2212-32-0)、1-[ビス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]アミノ]-2-プロパノール(CAS RN:67151-63-7)等の3級アミンを好適に用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上記主鎖内に酸素原子及び/又は窒素原子を有する3級アミンは、上記主鎖内に酸素原子及び窒素原子を有さない3級アミンと比較して、水溶性ケイ酸塩に対する親和性が更に向上されて、水溶性ケイ酸塩とポリイソシアネートとの反応が促進できるものと考えられる。
【0024】
一方で、第1-3級アミンとしては、上記のなかでも、3級アミノ基とヒドロキシ基とを備える主鎖内に環構造を有さない化合物が好ましく、更には、メチル3級アミノ基とヒドロキシ基とを備える主鎖内に環構造を有さない化合物がより好ましい。上記主鎖内に環構造を有さない3級アミンは、上記主鎖内に環構造を有する3級アミンと比較して、水溶性ケイ酸塩に対する親和性が更に向上されて、水溶性ケイ酸塩とポリイソシアネートとの反応が促進できるものと考えられる。
【0025】
更には、第1-3級アミンとしては、上記のなかでも、メチル3級アミノ基が、ジメチルアミノ基(ジメチル3級アミノ基)である化合物が好ましい。即ち、ジメチル3級アミノ基を有する3級アミンが好ましい。即ち、ジメチル3級アミノ基を有することにより、3級アミノ基が化合物の末端を構成できる。また、3級アミノ基を構成する炭化水素基の炭素数が小さいことにより、末端3級アミノ基の立体障害を小さくできるため、第1-3級アミンの反応初期の触媒活性を更に向上されることができると考えられる。
【0026】
(2-2)第2-3級アミン
第2-3級アミンは、窒素原子に直結されたメチル基を有する3級アミノ基(メチル3級アミノ基)を備え、且つ、ヒドロキシ基を備えない化合物である。
第2-3級アミンは、単独で用いると、発泡の安定性が良くないという問題と、反応の温度依存を生じるという問題と、が顕在するが、本組成物内では、第1-3級アミンとの併用によって触媒全体として有用に機能される。具体的には、第2-3級アミンは併用により、反応全体を促進させる効果を発揮しているのではないかと考えられる。その理由は定かではないが、第2-3級アミンでは、窒素原子に直結された基がメチル基であることにより、エチル基等のように炭素数がより大きい炭化水素基に比べて、3級アミノ基の立体障害が小さくなる。これにより、第2-3級アミンの反応初期の触媒活性が向上されると考えられる。また、同時に第2-3級アミンはヒドロキシ基を有さないため、ポリイソシアネートとA液の反応全体を促進できると考えられる。このように、第1-3級アミンと第2-3級アミンとの併用により触媒全体として、扱い易い反応スケジュールを確保しながら、反応温度依存を低減して発泡不良を防止できると考えられる。
【0027】
第2-3級アミンは、3級アミノ基を1つのみ備えてもよく2つ以上を備えてもよい。また、メチル3級アミノ基(窒素原子に直結されたメチル基を有する3級アミノ基)を1つのみ備えてもよく2つ以上を備えてもよい。
即ち、例えば、(1)3級アミノ基を1つのみ備え、当該3級アミノ基がメチル3級アミノ基である化合物、(2)3級アミノ基を2つ以上備え、当該3級アミノ基のうちの1つのみがメチル3級アミノ基であり、他が非メチル3級アミノ基である化合物、(3)3級アミノ基を2つ以上備え、当該3級アミノ基のうちの2つ以上がメチル3級アミノ基であり、1つ以上の非メチル3級アミノ基を有する化合物、(4)3級アミノ基を2つ以上備え、当該3級アミノ基が全てメチル3級アミノ基である化合物等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
更に、第2-3級アミンは、ヒドロキシ基を備えない。
【0028】
より具体的には、N,N-ジメチルブチルアミン(CAS RN:927-62-8)、N,N-ジメチルヘキシルアミン(CAS RN:4385-04-0)、N,N-ジメチルオクチルアミン(CAS RN:7378-99-6)、N,N-ジメチルデシルアミン(CAS RN:1120-24-7)、N,N-ジメチルドデシルアミン(CAS RN:112-18-5)、N,N-ジメチルヘキサデシルアミン(CAS RN:112-69-6)等のN,N-ジメチルアルキルアミン類、2-(ジメチルアミノ)エチルアミン(CAS RN:108-00-9)、3-(ジメチルアミノ)プロピルアミン(CAS RN:109-55-7)等の(ジメチルアミノ)アルキルアミン類、(ジメチルアミノ)アセトニトリル(CAS RN:926-64-7)、N,N,N’-トリメチルエチレンジアミン(CAS RN:142-25-6)、トリメチルアミン(CAS RN:75-50-3)、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン(CAS RN:98-94-2)、1,2-ジメチルイミダゾール(CAS RN:1739-84-0)、1-(ジメチルアミノ)ピロール(CAS RN:78307-76-3)、1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン(CAS RN:4271-96-9)、4-ジメチルアミノトルエン(CAS RN:99-97-8)、ジメチルアニリン(CAS RN:121-69-7)、4-ジメチルアミノアニリン(CAS RN:99-98-9)、2-(ジメチルアミノ)ピリジン(CAS RN:5683-33-0)、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(CAS RN:1122-58-3)、4-(ジメチルアミノ)ベンゾニトリル(CAS RN:1197-19-9)、N,N-ジメチルベンジルアミン(CAS RN:103-83-3)、4-メチルモルホリン(CAS RN:109-02-4)等の3級アミノ基を1つのみ備え、当該3級アミノ基がメチル3級アミノ基である化合物が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0029】
また、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノメタン(CAS RN:51-80-9)、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(CAS RN:110-18-9)、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,4-ブタンジアミン(CAS RN:111-51-3)、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン(CAS RN:111-18-2)等のテトラメチルアルカンジアミン類、4,4’-ビス-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(CAS RN:90-94-8)、3,3’-イミノビス(N,N-ジメチルプロピルアミン)(CAS RN:6711-48-4)、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノブタン(CAS RN:97-84-7)、N,N’-ジメチルピペラジン(CAS RN:106-58-1)、ビス(2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル)エーテル(CAS RN:3033-62-3)、tert-ブトキシビス(ジメチルアミノ)メタン(CAS RN:5815-08-7)、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,8-ナフタレンジアミン(CAS RN:20734-58-1)等の3級アミノ基を2つ備える化合物が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0030】
また、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン(CAS RN:3030-47-5)、トリス(ジメチルアミノ)メタン(CAS RN:5762-56-1)、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)-4-ジメチルアミノ-d6-フェニルメタン(CAS RN:1173023-92-1)、1-(2-ジメチルアミノエチル)-4-メチルピペラジン(CAS RN:104-19-8)等の3級アミノ基を3つ備える化合物が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0031】
また、トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン(CAS RN:33527-91-2)、テトラキス(ジメチルアミノ)エチレン(CAS RN:996-70-3)、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン(CAS RN:3083-10-1)等の3級アミノ基を4つ備える化合物が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0032】
また、上記に例示した第2-3級アミンのなかでも、1,2-ジメチルイミダゾール(CAS RN:1739-84-0)、1-(2-ジメチルアミノエチル)-4-メチルピペラジン(CAS RN:104-19-8)、1-(ジメチルアミノ)ピロール(CAS RN:78307-76-3)、1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン(CAS RN:4271-96-9)、4-メチルモルホリン(CAS RN:109-02-4)、N,N’-ジメチルピペラジン(CAS RN:106-58-1)、4-ジメチルアミノトルエン(CAS RN:99-97-8)、ジメチルアニリン(CAS RN:121-69-7)、4-ジメチルアミノアニリン(CAS RN:99-98-9)、2-(ジメチルアミノ)ピリジン(CAS RN:5683-33-0)、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(CAS RN:1122-58-3)、4-(ジメチルアミノ)ベンゾニトリル(CAS RN:1197-19-9)、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,8-ナフタレンジアミン(CAS RN:20734-58-1)、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)-4-ジメチルアミノ-d6-フェニルメタン(CAS RN:1173023-92-1)、N,N-ジメチルベンジルアミン(CAS RN:103-83-3)、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン(CAS RN:98-94-2)、4,4’-ビス-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(CAS RN:90-94-8)等は、環構造を有する3級アミンである。
【0033】
更に、上記の環構造を有する3級アミンのなかでも、1,2-ジメチルイミダゾール(CAS RN:1739-84-0)、1-(2-ジメチルアミノエチル)-4-メチルピペラジン(CAS RN:104-19-8)、トリエチレンジアミン(CAS RN:280-57-9)、1-(ジメチルアミノ)ピロール(CAS RN:78307-76-3)、1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン(CAS RN:4271-96-9)、4-メチルモルホリン(CAS RN:109-02-4)、N,N’-ジメチルピペラジン(CAS RN:106-58-1)、2-(ジメチルアミノ)ピリジン(CAS RN:5683-33-0)、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(CAS RN:1122-58-3)は、3級アミノ基を構成する窒素原子自身が環骨格を形成するヘテロ環化合物である。
【0034】
第2-3級アミンとしては、上記のなかでも、少なくとも2つの分子末端にジメチル3級アミノ基(窒素原子に直結された置換基のうちの2つの置換基がメチル基である3級アミノ基)を備えた3級アミンや、3級アミノ基を構成する窒素原子自身が環骨格を形成したヘテロ環を備える3級アミン(即ち、3級アミンを構成する窒素原子が複素環骨格を形成している3級アミン)が好ましい。
即ち、前者(少なくとも2つの分子末端にジメチル3級アミノ基を備えた3級アミン)としては、前述のテトラメチルアルカンジアミン類、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン(CAS RN:3030-47-5)、4,4’-ビス-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(CAS RN:90-94-8)、3,3’-イミノビス(N,N-ジメチルプロピルアミン)(CAS RN:6711-48-4)、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノブタン(CAS RN:97-84-7)、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,8-ナフタレンジアミン(CAS RN:20734-58-1)、トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン(CAS RN:33527-91-2)、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン(CAS RN:3083-10-1)、トリス(ジメチルアミノ)メタン(CAS RN:5762-56-1)、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)-4-ジメチルアミノ-d6-フェニルメタン(CAS RN:1173023-92-1)等が挙げられる。
これらのなかでも、末端ジメチル3級アミノ基(分子末端に位置されたジメチル3級アミノ基)同士を繋ぐ主鎖の炭素数が3以上10以下の化合物が好ましい。即ち、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン(CAS RN:111-18-2)、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,4-ブタンジアミン(CAS RN:111-51-3)、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン(CAS RN:3030-47-5)等が好ましい。
【0035】
また、後者(3級アミノ基を構成する窒素原子自身が環骨格を形成したヘテロ環を備える3級アミン)としては、1,2-ジメチルイミダゾール(CAS RN:1739-84-0)、1-(2-ジメチルアミノエチル)-4-メチルピペラジン(CAS RN:104-19-8)、トリエチレンジアミン(CAS RN:280-57-9)、1-(ジメチルアミノ)ピロール(CAS RN:78307-76-3)、1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン(CAS RN:4271-96-9)、4-メチルモルホリン(CAS RN:109-02-4)、N,N’-ジメチルピペラジン(CAS RN:106-58-1)、2-(ジメチルアミノ)ピリジン(CAS RN:5683-33-0)、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(CAS RN:1122-58-3)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0036】
(2-3)触媒の量
A液に含まれる触媒の量(第1-3級アミンと第2-3級アミンとの合計量)は限定されないが、B液に含まれるポリイソシアネートの100質量部に対して0.05質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上とすることができ、0.3質量部以上とすることができ、0.5質量部以上とすることができ、0.7質量部以上とすることができる。一方、この含有量は、5質量部以下であることが好ましく、4質量部以下とすることができ、3質量部以下とすることができ、2質量部以下とすることができ、1.6質量部以下とすることができる。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。即ち、例えば、0.05~5質量部であることが好ましく、0.1~4質量部とすることができ、0.3~3質量部とすることができ、0.5~2質量部とすることができ、0.7~1.6質量部とすることができる。好ましい範囲では、扱い易い反応スケジュールを有しながら、反応温度依存を低減して発泡不良を防止できる。
【0037】
また、第1-3級アミンと第2-3級アミンとの量比は限定されないが、第1-3級アミンと第2-3級アミンとの合計を100質量%とした場合に、第1-3級アミンの割合が5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上とすることができ、18質量%以上とすることができる。一方、この割合は、95質量%以下とすることが好ましく、85質量%以下とすることができ、75質量%以下とすることができる。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。即ち、例えば、5~95質量%とすることができ、10~85質量%とすることができ、18~75質量%とすることができる。
【0038】
(2-4)他の触媒
尚、A液には、上述した第1-3級アミン及び第2-3級アミン以外の他の触媒を配合することができる。但し、他の触媒は、第1-3級アミンと第2-3級アミンとの合計量を100質量部とした場合に、通常、30質量部以下である。
他の触媒としては、金属触媒、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0039】
金属触媒としては、有機酸金属塩や有機金属錯体が挙げられる。
有機酸金属塩を構成する金属種としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、ジルコニウム、錫、鉛、ビスマス等が挙げられる。また、有機酸金属塩を構成する有機酸としては、酢酸、オクチル酸、ネオデカン酸、ナフテン酸、ロジン酸が挙げられる。具体的には、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、オクチル酸カリウム、オクチル酸ビスマス、オクチル酸鉛、オクチル酸鉄、オクチル酸錫、オクチル酸カルシウム、オクチル酸亜鉛、オクチル酸ジルコニウム、ネオデカン酸ビスマス、ネオデカン酸亜鉛、ネオデカン酸鉛、ネオデカン酸コバルト、ロジン酸ビスマス、ジラウリン酸ジブチル錫等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
更に、有機金属錯体を構成する金属種としては、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、ジルコニウム、錫、鉛、ビスマス等が挙げられる。また、有機金属錯体を構成する配位子としては、アセチルアセトン等が挙げられる。アセチルアセトン鉄、アセチルアセトンニッケル、アセチルアセトン亜鉛、アセチルアセトンジルコニウム、アセチルアセトン錫等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0040】
第4級アンモニウム塩を構成するカチオン種としては、アルキルアンモニウム(テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等)、ヒドロキシアルキルアンモニウム塩(ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム等)などが挙げられる。第4級アンモニウム塩を構成するアニオン種としては、これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。第4級アンモニウム塩を構成するアニオン種としては、ギ酸基、酢酸基、2-エチルヘキサン酸基、2,2-ジメチルプロパン酸基、オクチル酸基、リン酸エステル基等の有機基;ハロゲン基、ヒドロキシ基、炭酸水素基、炭酸基等の無機基等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0041】
(3)ポリオール
A液は、水溶性ケイ酸塩及び触媒以外に他の成分を含有できる。他の成分としては、ポリオールが挙げられる。ポリオールは、2以上のヒドロキシ基を有する有機化合物である。ポリオールの種類は限定されず、従来、地盤注入用薬液組成物の構成分として利用されてきたポリオールを適宜利用できる。即ち、ポリオールとしては、脂肪族ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、オレフィンポリオール、アクリルポリオール、シロキサンポリオール等が挙げられる。これらのなかでは、脂肪族ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールが好ましく、ポリエーテルポリオールが特に好ましい。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0042】
脂肪族ポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ジメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、ジアルキルプロパンジオール、テトラメチレンジオール、ヘキサメチレンジオール、ノナンジオール、メチルオクタンジオール等の2つのヒドロキシ基を有する化合物;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の3つ以上のヒドロキシ基を有する化合物;キシリトール、ソルビトール等の糖アルコール等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0043】
ポリエステルポリオールとしては、脂肪族ポリオールと多価カルボン酸との縮合重合物、環状エステル(ラクトン)の開環重合物、脂肪族ポリオール、多価カルボン酸及び環状エステルの3種類の成分による反応物等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
多価カルボン酸としては、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。環状エステルとしては、例えば、プロピオラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0044】
ポリエーテルポリオールとしては、(1)2以上の活性水素を有する化合物を開始剤としてアルキレンオキサイドとの付加反応により得られる反応物、(2)フェノール類、アルデヒド類及び第2級アミンを反応させたマンニッヒ縮合物、(3)このマンニッヒ縮合物にアルキレンオキサイドを付加させたマンニッヒ系ポリエーテルポリオール等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
尚、上記(1)における2以上の活性水素を有する化合物としては、多価アルコール、アミン化合物等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。このうち、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。また、アミン化合物としては、エチレンジアミン、トルエンジアミン、トリレンジアミン等のジアミン類;エタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。更に、上記アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0045】
本組成物では、上述した各種ポリオールのなかでも、ポリエーテルポリオールを含むことが好ましい。ポリエーテルポリオールを用いる場合は、他のポリオールを用いる場合に比べてケイ酸塩水溶液とイソシアネートとの混合性が良く、化学的安定性を良くすることができる。
【0046】
また、ポリエーテルポリオールを用いる場合、その分子量は限定されないが、数平均分子量200超であることが好ましい。ポリエーテルポリオールとして、数平均分子量200超のものを用いた場合は、数平均分子量200以下のものを用いる場合に比べて発泡安定性が高くて良好な発泡体を得ることができる。ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、250以上がより好ましく、300以上が更に好ましく、350以上が特に好ましい。一方、ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、10000以下が好ましく、7000以下がより好ましく、5000以下が更に好ましく、2500以下が特に好ましい。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。即ち、例えば、ポリエーテルポリオールの数平均分子量をMnとした場合に、Mnは、200<Mn≦10000とすることができ、250<Mn≦7000とすることができ、300<Mn≦5000とすることができ、350<Mn≦2500とすることができる。
尚、ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、JIS K7252-2による測定や、水酸基価から算出できる。
【0047】
更に、ポリオールをA液に含む場合、その含有量は限定されないが、A液に含まれる水溶性ケイ酸塩と水との合計量を100質量部とした場合に、ポリオールは20質量部以下であることが好ましい。ポリオールの含有量が20質量部以下である場合には、ポリオールの含有量が20質量部超である場合に比べて流水への泡の発生を抑えて消泡時間が短くできると共に、コストを低減することができる。ポリオールの含有量は、更に15質量部以下がより好ましく、13質量部以下が更に好ましく、12質量部以下が特に好ましい。一方、ポリオールの含有量は、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1質量部以上が更に好ましく、1.5質量部以上が特に好ましい。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。即ち、例えば、ポリオールの含有量は、A液に含まれる水溶性ケイ酸塩を100質量部とした場合に、0.1~20質量部とすることができ、0.5~15質量部とすることができ、1~13質量部とすることができ、1.5~12質量部とすることができる。また、流水への泡の発生を抑えて消泡時間が短くするために、A液全体100質量%に対してポリオールは8質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましく、6質量%以下がさらに好ましい。
【0048】
(4)A液の粘度
本組成物のうちA液の粘度は限定されず、また、B液と同じであってもよく異なってもよいが、25℃における粘度は400mPa・s以下であることが好ましく、5~300mPa・sであることがより好ましく、10~200mPa・sであることが更に好ましい。この範囲では、適切な注入時の圧力という観点において作業性に優れ、尚且つ、水に希釈され難くなり、より清浄な排水が可能となる。
尚、A液の粘度は、JIS K7117-1に準拠してB型粘度計を用いて25℃で測定できる。
【0049】
[2]B液
(1)ポリイソシアネート
B液は「ポリイソシアネート」を含む。ポリイソシアネートは、分子中に2以上のイソシアネート基(NCO基)を有する有機化合物である。ポリイソシアネートとしては、分子中に2以上のイソシアネート基(NCO基)を有する単量体を用いてもよいし、多量体(プレポリマー等)を用いてもよい。更に、多量体である場合、多量体を構成する化合物(モノマー)は1種のみ(単核)であってもよいし、2種以上(多核)であってもよい。更に、単量体と多量体との混合物を用いてもよい。このようなポリイソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0050】
芳香族ポリイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート〔2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート〕、トリレンジイソシアネート〔2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート〕、フェニレンジイソシアネート〔1,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート〕、キシリレンジイソシアネート〔1,4-キシリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート〕、テトラメチルキシリレンジイソシアネート〔1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート〕、3,3’-ジメチルジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート〔1,5-ナフタレンジイソシアネート等〕、ジアニシジンジイソシアネート、イソプロピリデンビス〔4-シクロヘキシルイソシアネート〕、トリフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)-チオリン酸等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0051】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート〔1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート〕、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート〔2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート〕、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
脂環式ポリイソシアネートとしては、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、trans-1,4-シクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート〔メチルシクロヘキサン-2,4-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン-2,6-ジイソシアネート〕、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン〔cis-1,3-(ジイソシアネートメチル)シクロヘキサン、trans-1,3-(ジイソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-(ジイソシアネートメチル)シクロヘキサン〕等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、上述の各種モノマー体は、これらの変性体(イソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体等)、これらのブロック化物、これらの水添物等であってもよい。また、活性水素基含有化合物と前記ポリイソシアネートを、公知の方法で反応させて得られるイソシアネート基含有プレポリマーを用いても良い。これらは各々1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
本組成物のB液に含まれるポリイソシアネートとしては、上述のなかでも、得られる発泡体の強度、及び、反応速度の観点から芳香族ポリイソシアネートが好ましく、更には、ジフェニルメタンジイソシアネート(モノメリックMDI、ポリメリックMDI、クルードMDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート(IPDI)がより好ましく、更には、ジフェニルメタンジイソシアネート(モノメリックMDI、ポリメリックMDI、クルードMDI)が更に好ましい。
【0053】
B液に含まれるポリイソシアネートの量は限定されず、例えば、B液はポリイソシアネートのみから構成できる。この場合、B液全体を100質量%とすると、ポリイソシアネートの量は100質量%となる。一方、B液にポリイソシアネート以外の他の成分(例えば、添加剤等)を加える場合、B液全体を100質量%とすると、ポリイソシアネートの量は85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上がより好ましく、91質量%以上が更に好ましく、92質量%以上が特に好ましい。一方、この含有量は、通常、99.99質量%以下であり、99.8質量%以下がより好ましく、99.6質量%以下が更に好ましく、99.4質量%以下が特に好ましい。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。即ち、例えば、85~99.99質量%とすることができ、90~99.8質量%とすることができ、91~99.6質量%とすることができ、82~99.4質量%とすることができる。
【0054】
(2)B液の粘度
本組成物のうちB液の粘度は限定されず、また、A液と同じであってもよく異なってもよいが、25℃における粘度は400mPa・s以下であることが好ましく、5~300mPa・sであることがより好ましく、10~200mPa・sであることが更に好ましい。この範囲では、適切な注入時の圧力という観点において作業性に優れ、尚且つ、水に希釈され難くなり、より清浄な排水が可能となる。
尚、B液の粘度は、JIS K7117-1に準拠してB型粘度計を用いて25℃で測定できる。
【0055】
[3]他の成分
本組成物のA液及びB液には、必要に応じて他の成分を配合できる。他の成分としては、発泡剤、整泡剤、難燃剤、粘度調整剤(減粘剤、増粘剤等)などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0056】
発泡剤は、得られる固結体(発泡体)の発泡状態を形成する成分である。発泡剤の種類は限定されないが、発泡剤としては、無機発泡剤、有機発泡剤等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。無機発泡剤としては、水、二酸化炭素等が挙げられる。このうち、水は、ポリイソシアネートとの共存により発泡剤として機能するため、本組成物で水を発泡剤として利用する場合にはA液に配合できる。また、水溶性ケイ酸塩を水ガラス(ケイ酸塩水溶液)として用いる場合は、水ガラスを構成する水を発泡剤として機能させることができる。有機発泡剤としては、非フロン系・フロン系発泡剤を用いることができる。有機発泡剤は、非フロン系が好ましく、ハイドロフルオロオレフィンやハイドロクロロフルオロオレフィン等のハロゲン化アルケンがより好ましい。
発泡剤を用いる場合、本組成物に含まれるポリイソシアネート全体を100質量部とすると、発泡剤は0.01~50質量部とすることができ、0.1~25質量部とすることができ、0.5~10質量部とすることができる。
【0057】
整泡剤は、得られる固結体(発泡体)を構成する発泡セルの均一性を向上させる成分である。整泡剤の種類は限定されないが、整泡剤としては、シリコーン系整泡剤(シリコーン等)、非イオン系界面活性剤、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、ポリシロキサンオキシアルキレン共重合体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ヒマシ油エチレンオキシド付加物、ラウリル脂肪酸エチレンオキシド付加物等を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
整泡剤を用いる場合、本組成物に含まれるポリイソシアネート全体を100質量部とすると、整泡剤は0.05~5質量部とすることができ、0.1~4質量部とすることができ、0.1~3質量部とすることができる。この範囲では、適切な整泡作用を得つつ、清浄な排水が可能となる。
【0058】
粘度調整剤は、本組成物を構成するA液及び/又はB液の粘度を調節できる成分である。粘度調整剤の種類は限定されないが、粘度調整剤としては、減粘剤、増粘剤等が挙げられ、本組成物では、減粘剤を好適に利用できる。減粘剤としては、アルコール類、エーテル類、エステル類、石油系炭化水素類等を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等が挙げられる。エーテル類としては、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等が挙げられる。エステル類としては、プロピレンカーボネート等の環状エステル類;ジカルボン酸メチルエステル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類(非環状エステル類)等が挙げられる。
粘度調整剤を用いる場合、本組成物に含まれるポリイソシアネート全体を100質量部とすると、減粘剤は0.1~15質量部とすることができ、0.5~10質量部とすることができ、1~8質量部とすることができる。
【0059】
難燃剤は、得られる固結体(発泡体)の難燃性を向上させる成分である。難燃剤の種類は限定されないが、難燃剤としては、リン酸エステル(モノリン酸エステル、縮合リン酸エステル、有機リン酸モノエステル、有機リン酸ジエステル、有機リン酸トリエステル、モノリン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、有機ホスフィン酸塩等)、赤リン、ホウ素系難燃剤、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤(ハロゲン化パラフィン等)、スズ酸金属塩、アンチモン含有難燃剤、金属水酸化物、金属化合物の水和物、粘土鉱物等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
難燃剤を用いる場合、本組成物に含まれるポリイソシアネート全体を100質量部とすると、難燃剤は0.1~100質量部とすることができ、0.5~50質量部とすることができ、1~10質量部とすることができる。
【0060】
[4]地盤注入用薬液組成物の用途
本組成物の用途は限定されないが、その性質から特に、建築土木分野(建築分野及び土木分野)等において好適に利用される。即ち、本組成物は、建築土木分野の地盤注入用薬液組成物として利用できる。このうち、例えば、建築分野においては、壁用難燃性発泡体、天井用難燃性発泡体、床用難燃性発泡体、壁用断熱材、天井用断熱材、床用断熱材、構造物製造時の現場吹付、内部間隙の充填、経時劣化した構造物の補強等に利用することができる。また、土木分野においては、地山、地中、土壌、地盤、岩盤、これらと構造物(建築構造物)との間隙、更には、構造物内の間隙等へ本組成物を注入し、発泡硬化させることにより、注入箇所を充填、補強することができる。
【0061】
〔2〕発泡体(発泡固結体)及びその製造方法
本発明の発泡体は、A液とB液とを混合して得られることを特徴とする。
A液とB液との混合は、発泡体の形成時に行うことができる。即ち、本組成物の注入を目的とする箇所への注入前混合、注入中混合、注入後混合のいずれでもよく、これらの2以上の混合が複合されてもよい。より具体的には、配管の吐出ノズルの手前でA液とB液を合流させて吐出される直前に混合されることが望ましい。これにより、混合量比を所望の範囲に制御し易くできる。
【0062】
また、A液とB液との混合比は、限定されず、A液とB液が反応してできる発泡体の物性に応じて適宜の範囲とすることができるが、通常、質量基準において、A液:B液=2:1~1:3とすることが好ましく、1.5:1~1:2とすることがより好ましい。
【0063】
A液とB液との混合によって得られる発泡体の発泡倍率は限定されないが、20℃において、20倍以下であることが好ましく、3~15倍であることがより好ましい。この範囲では、得られる発泡体に十分な強度を得ることができると共に、経済性にも優れる。尚、発泡倍率の測定方法は、実施例において後述する。
【0064】
A液とB液との混合によって泡立ちが始まる時間を「発泡開始時間」(T)とし、硬化反応が終了した時間を「発泡終了時間」(T)とした場合に、20℃における発泡終了時間(TE20)は、15秒以上であることが好ましく、20秒以上がより好ましく、25秒以上が更に好ましく、30秒以上が特に好ましい。一方、発泡終了時間(TE20)は、300秒以下であることが好ましく、250秒以下がより好ましく、200秒以下が更に好ましく、180秒以下が特に好ましい。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。即ち、例えば、発泡終了時間(TE20)は、15~300秒が好ましく、20~250秒がより好ましく、25~200秒が更に好ましく、30~180秒が特に好ましい。発泡終了時間(TE20)が好ましい範囲では、反応温度依存を低減して発泡不良を防止しつつ、扱い易い反応スケジュールを得ることができる。
【0065】
また、30℃における発泡終了時間(TE30)は、15秒以上であることが好ましく、20秒以上がより好ましく、25秒以上が更に好ましく、30秒以上が特に好ましい。一方、発泡終了時間(TE30)は、300秒以下であることが好ましく、250秒以下がより好ましく、200秒以下が更に好ましく、180秒以下が特に好ましい。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。即ち、例えば、発泡終了時間(TE30)は、15~300秒が好ましく、20~250秒がより好ましく、25~200秒が更に好ましく、30~180秒が特に好ましい。発泡終了時間(TE30)が好ましい範囲では、反応温度依存を低減して発泡不良を防止しつつ、扱い易い反応スケジュールを得ることができる。
【0066】
A液とB液との混合によって泡立ちが始まる時間を「発泡開始時間」(T)とし、硬化反応が終了した時間を「発泡終了時間」(T)とし、更に、「発泡開始時間」と「発泡終了時間」との比(発泡開始時間/発泡終了時間)を時間比(T)とした場合に、20℃における時間比(TC20)は、0.70以下であることが好ましく、0.69以下がより好ましく、0.68以下が更に好ましい。一方、時間比(TC20)は、0.30以上であることが好ましく、0.35以上がより好ましく、0.38以上が更に好ましい。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。即ち、例えば、時間比(TC20)は、0.30~0.70が好ましく、0.35~0.69がより好ましく、0.38~0.68が更に好ましい。時間比(TC20)が好ましい範囲では、反応温度依存を低減して発泡不良を防止しつつ、扱い易い反応スケジュールを得ることができる。
【0067】
30℃における時間比(TC30)は、0.70以下であることが好ましく、0.69以下がより好ましく、0.68以下が更に好ましい。一方、時間比(TC30)は、0.30以上であることが好ましく、0.35以上がより好ましく、0.38以上が更に好ましい。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。即ち、例えば、時間比(TC30)は、0.30~0.70が好ましく、0.35~0.69がより好ましく、0.38~0.68が更に好ましい。時間比(TC30)が好ましい範囲では、反応温度依存を低減して発泡不良を防止しつつ、扱い易い反応スケジュールを得ることができる。
【実施例0068】
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明するが、これらの実施例はあくまでも説明のために便宜的に示す例に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらの実施例に限定されるものではない。
【0069】
[1]組成物の調製
下記各成分を、各々、下記表1~表2に示す組合せ及び配合で混合し、実施例1~18及び比較例1~10の各A液及びB液を有する地盤注入用薬液組成物を得た。
【0070】
(1)水溶性ケイ酸塩(ケイ酸塩水溶液)
・2号ケイ酸Na:2号ケイ酸ソーダ、富士化学株式会社製、固形分40%
・1号ケイ酸Na:1号ケイ酸ソーダ、富士化学株式会社製、固形分48%(使用時に加水により固形分40%に調整して使用)
【0071】
(2)ポリオール
・PP400:ポリエーテルポリオール(ポリプロピレングリコール)、三洋化成株式会社製、品名「サンニックス PP-400」、数平均分子量400、官能基数2
・PP1000:ポリエーテルポリオール(ポリプロピレングリコール)、三洋化成株式会社製、品名「サンニックス PP-1000」、数平均分子量1000、官能基数2
・TPG(Mn192):トリプロピレングリコール、東京化成工業株式会社、数平均分子量192、官能基数2
【0072】
(3)触媒
(3-1)第1の3級アミン
・ジメチルアミノエトキシエタノール:2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール(CAS RN:1704-62-7)、花王株式会社製、品名「カオーライザー No.26」、OH基(有)、メチル基(有)
・トリメチルアミノエチルエタノールアミン:2-[[2-(ジメチルアミノ)エチル]メチルアミノ]エタノール(CAS RN:2212-32-0)、東ソー株式会社製、品名「トヨキャット RX-5」、OH基(有)、メチル基(有)
・ジメチルアミノヘキサノール:6-(ジメチルアミノ)-1-ヘキサノール(CAS RN:1862-07-3)、花王株式会社製、品名「カオーライザー No.25」、OH基(有)、メチル基(有)
【0073】
(3-2)第1の3級アミンに対する比較触媒
・ジエチルアミノエトキシエタノール:2-[2-(ジエチルアミノ)エトキシ]エタノール(CAS RN:140-82-9)、東京化成工業株式会社製、OH基(有)、メチル基(無)
【0074】
(3-3)第2の3級アミン
・テトラメチルヘキサメチレンジアミン:N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン(CAS RN:111-18-2)、花王株式会社製、品名「カオーライザー No.1」、OH基(無)、メチル基(有)
・ペンタメチルジエチレントリアミン:N,N,N’,N",N"-ペンタメチルジエチレントリアミン(CAS RN:3030-47-5)、花王株式会社製、品名「カオーライザー No.3」、OH基(無)、メチル基(有)
・ジメチルイミダゾール:70% 1,2-ジメチルイミダゾール(CAS RN:1739-84-0) エチレングリコール溶液、花王株式会社製、品名「カオーライザー No.350」、OH基(無)、メチル基(有)
(3-4)第2の3級アミンに対する比較触媒
・トリエチレンジアミン:33% トリエチレンジアミン(CAS RN:280-57-9) ジプロピレングリコール溶液、花王株式会社製、品名「カオーライザー No.31」、OH基(無)、メチル基(無)
【0075】
(4)ポリイソシアネート
・MDI(M100):ポリメリックMDI、錦湖三井化学社製、品名「コスモネート M100」
・MDI(M200):ポリメリックMDI、錦湖三井化学社製、品名「コスモネート M200」
・プレポリマー:プレポリマーMDI、自社合成品、上記「M100」を100部に上記「PP-1000」を5部添加して70℃で3時間反応させた反応物
【0076】
(5)整泡剤
・整泡剤:ポリエーテル変性シロキサン、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、品名「Niax Silicone L-6970」)
【0077】
(6)減粘剤
・減粘剤:プロピレンカーボネート、東京化成工業株式会社製
【0078】
(7)難燃剤
・難燃剤:トリス(クロロプロピル)ホスフェート、大八化学工業株式会社製
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
[2]測定及び評価
(1)A液及びB液の粘度測定
B型粘度計を用いて、25℃において、JIS K7117-1に準拠して、実施例1~18及び比較例1~10の各地盤注入用薬液組成物を構成するA液及びB液の粘度を測定した。その結果を、表1及び表2に示した。
【0082】
(2)発泡評価
上記[1]で得た実施例1~18及び比較例1~10の各地盤注入用薬液組成物を用い、以下の要領で発泡体を作製し、その際の発泡開始時間、発泡終了時間、時間比、発泡倍率、発泡体の外観の各測定及び評価を行った。
【0083】
(2-1)発泡開始時間、発泡終了時間、時間比の測定・算出
実施例1~18及び比較例1~10の各地盤注入用薬液組成物から、A液とB液との質量比が1:1となり、且つ、A液及びB液の合計体積が100mLとなるように、A液とB液とを分取した。これらA液とB液とを温度を20℃に調整した後、1Lのカップに両者を投入して、400rpmで10秒間攪拌(ハンドミキシング)した。撹拌完了からA液及びB液の混合物の泡立ちが始まる時間を「開始時間」(発泡開始時間TS20)とした。更に、カップ内における硬化反応が終了した時間を「終了時間」(発泡終了時間TE20)とした。そして、これらの時間の比(開始時間/終了時間)を「時間比」(TC20)として算出した。これらの「開始時間」、「終了時間」、「時間比」を表1及び表2に示した。
更に、発泡体作製・評価温度を20℃から30℃に変更した以外は、同様にして、「開始時間」(発泡開始時間TS30)、「終了時間」(発泡終了時間TE30)、「時間比」(TC30)を測定及び算出し、表1及び表2に示した。
【0084】
(2-2)発泡倍率の測定
上記(2-1)で測定された「終了時間」(発泡終了時間TE20)における発泡倍率を測定した。即ち、カップ内でA液とB液を混ぜ終えた時の混合液のカップ内での液面の高さをH1として測定した。次いで、発泡が開始されて、カップ内に形成された発泡体の高さが最大となった際の発泡体頂部高さを最大発泡高さとして測定した。その後、硬化反応終了時の発泡体の高さをH2として測定した。次いで、測定されたH1及びH2の値を用いて、H2/H1として発泡倍率を算出した。尚、測定時の各高さはゲージを使って目視にて測定した。
【0085】
(2-3)発泡体の外観評価
上記(2-1)で得られた発泡体の外観を以下の基準により評価し、表1及び表2に示した。
「○」:発泡セルが細かく、良好な発泡体である。
「△」:最大発泡高さから15%以上30%以下の収縮が認められた。
「×」:最大発泡高さから30%超の収縮が認められる、中心部に大きな空洞が形成されている、発泡体セルが粗い、のいずれか1つ又は複数に該当する外観不良が認められた。
また、上記「×」である場合、上記収縮が認められた例には「(収縮)」、上記空洞が認められた例には「(空洞)」、上記発泡体セルが粗い例には「(粗)」、と各々記載した。
【0086】
[3]実施例の効果
表1及び表2から、A液に第1-3級アミンは含まれるものの、第2-3級アミンが含まれない比較例1~3の組成物では、得られる発泡体に収縮又は粗大化が認められる。また、A液にヒドロキシ基を備えるものの、窒素原子に直結されたメチル基を有する3級アミノ基を備えないアミン化合物(第1-3級アミンではないアミン化合物)が含まれ、第2-3級アミンも含まれない比較例4の組成物では、20℃における時間比及び30℃における時間比のいずれもが0.70超と大きくなっている。更に、A液に第2-3級アミンは含まれるものの、第1-3級アミンが含まれない比較例5~7の組成物では、得られる発泡体に収縮、空洞化又は粗大化が認められるともに、20℃における時間比又は30℃における時間比のいずれかが0.70超と大きくなる傾向が認められる。また、A液にヒドロキシ基も、窒素原子に直結されたメチル基を有する3級アミノ基も、いずれの基をも備えないアミン化合物(第2-3級アミンではないアミン化合物)が含まれ、第1-3級アミンも含まれない比較例8の組成物では、得られる発泡体に粗大化が認められるともに、20℃における時間比及び30℃における時間比のいずれもが0.70超と大きくなる傾向が認められる。更に、A液に第1-3級アミンを2種含むものの、第2-3級アミンを含まない比較例9の組成物、A液に第2-3級アミンを2種含むものの、第1-3級アミンを含まない比較例10の組成物、では、得られる発泡体に収縮又は空洞化が認められる。
これに対して、A液が、第1-3級アミン及び第2-3級アミンの2種の3級アミンを共に含んだ実施例1~18の組成物では、得られる発泡体に収縮、空洞化又は粗大化を生じることを防止できると共に、20℃における時間比及び30℃における時間比のいずれの時間比も0.70未と小さく抑制できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
建築土木分野(建築分野及び土木分野)等において好適に利用される。このうち、例えば、建築分野においては、壁用充填発泡体、天井用充填発泡体、床用充填発泡体、壁用断熱材、天井用断熱材、床用断熱材、構造物製造時の内部間隙の充填、経時劣化した構造物の補強等に利用することができる。また、土木分野においては、地山、地中、土壌、地盤、岩盤、これらと構造物(建築構造物)との間隙、更には、構造物内の間隙等へ本組成物を注入し、発泡硬化させることにより、注入箇所を充填、補強することができる。