(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147056
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】流路構造体および半導体製造装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20231004BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20231004BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20231004BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20231004BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20231004BHJP
G01K 7/02 20210101ALI20231004BHJP
【FI】
H01L21/02 Z
C23C16/44 B
H01L21/302 101G
H01L21/31 C
H01L21/68 N
G01K7/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054594
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 美紀
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 大貴
(72)【発明者】
【氏名】小川 雄也
【テーマコード(参考)】
2F056
4K030
5F004
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
2F056KA12
2F056KA18
4K030EA03
5F004AA01
5F004BA04
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB29
5F004BC08
5F004BD04
5F004CB12
5F045AA08
5F045DP03
5F045EB03
5F045EF05
5F045EH05
5F045EH14
5F045EM09
5F045GB05
5F131AA02
5F131BA04
5F131BA19
5F131CA03
5F131EA03
5F131EB78
5F131EB81
5F131EB82
5F131KA23
5F131KA47
5F131KA54
(57)【要約】
【課題】温度を精度よく測定することができる流路構造体および半導体製造装置を提供する。
【解決手段】流路構造体は、基体と、流路と、複数の開口と、第1金属配線と、第2金属配線と、を備える。基体は、第1面を有し、セラミックスで構成される。流路は、基体の内部に位置し、複数の分岐路を有する。複数の開口は、第1面に位置し、複数の分岐路とそれぞれ連結する。第1金属配線は、少なくとも一部が基体の内部に位置し、第1金属で構成される。第2金属配線は、少なくとも一部が基体の内部に位置し、第1金属とは異なる第2金属で構成される。また、第1金属配線および第2金属配線は、基体の内部で接続されることで熱電対機能を有する熱電対部を構成する。そして、第1面を正面視した場合に、熱電対部は、複数の開口で構成される開口群よりも第1面の中心から離れた位置に位置する。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面を有し、セラミックスで構成される基体と、
前記基体の内部に位置し、複数の分岐路を有する流路と、
前記第1面に位置し、複数の前記分岐路とそれぞれ連結する複数の開口と、
少なくとも一部が前記基体の内部に位置し、第1金属で構成される第1金属配線と、
少なくとも一部が前記基体の内部に位置し、前記第1金属とは異なる第2金属で構成される第2金属配線と、
を備え、
前記第1金属配線および前記第2金属配線は、前記基体の内部で接続されることで熱電対機能を有する熱電対部を構成し、
前記第1面を正面視した場合に、前記熱電対部は、複数の前記開口で構成される開口群よりも前記第1面の中心から離れた位置に位置する
流路構造体。
【請求項2】
前記基体は、内部に位置するRF電極をさらに有し、
前記第1面を正面視した場合に、前記熱電対部は、前記RF電極よりも前記第1面の中心から離れた位置に位置する
請求項1に記載の流路構造体。
【請求項3】
前記基体は、内部に位置するRF電極をさらに有し、
前記熱電対部は、前記RF電極よりも前記第1面から離れた位置に位置する
請求項1または2に記載の流路構造体。
【請求項4】
載置台と、
チャンバと、
請求項1~3のいずれか一つに記載の流路構造体と、
を備える半導体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、流路構造体および半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置において、複数の種類のセンサを用いて取得したデータに基づいて各種プロセスデータを推定しながらプロセスを行う技術が開示されている。例えば、特許文献1には、センサの例として温度センサS1が搭載された載置台に半導体ウェハを載置し、かかる半導体ウェハ近傍の温度データを取得することが記載されている。また、シャワープレートの裏面に温度センサS2を配置することも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術では、温度測定において、更なる改善の余地があった。
【0005】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、温度を精度よく測定することができる流路構造体および半導体製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一態様に係る流路構造体は、基体と、流路と、複数の開口と、第1金属配線と、第2金属配線と、を備える。基体は、第1面を有し、セラミックスで構成される。流路は、前記基体の内部に位置し、複数の分岐路を有する。複数の開口は、前記第1面に位置し、複数の前記分岐路とそれぞれ連結する。第1金属配線は、少なくとも一部が前記基体の内部に位置し、第1金属で構成される。第2金属配線は、少なくとも一部が前記基体の内部に位置し、前記第1金属とは異なる第2金属で構成される。また、前記第1金属配線および前記第2金属配線は、前記基体の内部で接続されることで熱電対機能を有する熱電対部を構成する。そして、前記第1面を正面視した場合に、前記熱電対部は、複数の前記開口で構成される開口群よりも前記第1面の中心から離れた位置に位置する。
【発明の効果】
【0007】
実施形態の一態様によれば、温度を精度よく測定することができる流路構造体および半導体製造装置が提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る半導体製造装置の構成の一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る流路構造体の構成の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る流路構造体の構成の一例を示す正面図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る熱電対部の構成の一例を示す正面図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る熱電対部の構成の一例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る熱電対部の構成の一例を示す断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る熱電対部の構成の一例を示す断面図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る熱電対部の構成の別の一例を示す正面図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る熱電対部の構成の別の一例を示す断面図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る熱電対部の構成の別の一例を示す断面図である。
【
図12】
図12は、実施形態の変形例1に係る流路構造体の構成の一例を示す正面図である。
【
図13】
図13は、実施形態の変形例2に係る流路構造体の構成の一例を示す断面図である。
【
図14】
図14は、実施形態の変形例3に係る流路構造体の構成の一例を示す正面図である。
【
図15】
図15は、実施形態の変形例3に係る流路構造体の構成の一例を示す正面図である。
【
図16】
図16は、実施形態の変形例4に係る流路構造体の構成の一例を示す正面図である。
【
図17】
図17は、実施形態の変形例5に係る流路構造体の構成の一例を示す拡大断面図である。
【
図18】
図18は、実施形態の変形例6に係る流路構造体の構成の一例を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する流路構造体および半導体製造装置の実施形態について説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
また、以下に示す実施形態では、「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」といった表現が用いられる場合があるが、これらの表現は、厳密に「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」であることを要しない。すなわち、上記した各表現は、例えば製造精度、設置精度などのずれを許容するものとする。
【0011】
半導体製造装置において、温度センサを用いて、半導体製造装置内の温度データを取得することで、各種プロセスデータを推定しながらプロセスを行う技術が開示されている。
【0012】
しかしながら、上記の従来技術では、流路構造体であるシャワープレートについてみるとシャワープレートの裏面側の温度データしか取得できないことから、更なる改善の余地があった。例えば、シャワープレートのうち、より半導体ウェハに近い位置に温度センサが配置されていれば、プロセスが起こっている位置により近い温度データが得られる。
【0013】
<半導体製造装置>
最初に、実施形態に係る半導体製造装置100の構成について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、実施形態に係る半導体製造装置100の構成の一例を示す断面図である。
【0014】
実施形態に係る半導体製造装置100は、たとえば、プラズマを用いて半導体ウェハWを処理するプラズマ処理装置である。このような半導体製造装置100としては、たとえば、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置やドライエッチング装置などが挙げられる。
【0015】
実施形態に係る半導体製造装置100は、流路構造体1と、チャンバ110と、載置台120と、シャフト130とを備える。チャンバ110は、流路構造体1と、載置台120の少なくとも一部と、シャフト130の少なくとも一部とを収容する。
【0016】
チャンバ110の内部は、図示しない排気部などによって排気や減圧が可能である。また、チャンバ110の側部には、半導体ウェハWを搬入出するための開口部111が位置する。
【0017】
載置台120は、チャンバ110内において流路構造体1よりも下方に位置する。載置台120は、流路構造体1に対向する面、ここでは、載置台120の上面において半導体ウェハWを支持する。
【0018】
シャフト130は、チャンバ110の内部において流路構造体1を支持するとともに、流路構造体1の内部にプロセスガスなどの媒体を導入する。シャフト130の内部には貫通孔131が形成され、かかる貫通孔131と流路構造体1の開口3(
図2参照)とが接続される。載置台120やシャフト130は、セラミックスで構成されてもよい。セラミックスとして、例えば、酸化アルミニウムや窒化アルミニウムが用いられてもよい。
【0019】
半導体製造装置100において、プラズマ処理に用いられるプロセスガスは、シャフト130の貫通孔131から流路構造体1の流路4(
図4参照)を通じて、複数の開口5(
図3参照)からチャンバ110の内部に導出される。すなわち、実施形態に係る流路構造体1は、たとえば、半導体製造装置100におけるシャワープレートとして機能する。
【0020】
<流路構造体>
つづいて、実施形態に係る流路構造体1の構成について、
図2~
図4を参照しながら説明する。
図2は、実施形態に係る流路構造体1の構成の一例を示す斜視図であり、
図3は、実施形態に係る流路構造体1の構成の一例を示す正面図である。また、
図4は、
図3に示すA-A線の矢視断面図である。
【0021】
図2~
図4に示すように、実施形態に係る流路構造体1は、基体2と、かかる基体2に形成される開口3、流路4および複数の開口5とを備える。
【0022】
図2に示すように、基体2は、たとえば円板状であり、第1面2aおよび第2面2bを有する。
図2においては、下面が第1面2aであり、上面が第2面2bである。なお、本開示では、基体2の形状が円板状である例を示しているが、基体2の形状は円板状に限られず、どのような形状であってもよい。
【0023】
図4に示すように、開口3は、基体2の第2面2bに位置し、複数の開口5は、基体2の第1面2aに位置する。そして、かかる開口3と複数の開口5との間が、流路4で接続される。
【0024】
たとえば、開口3は、
図2に示すように、基体2の第2面2bにおける中央部に位置する。また、複数の開口5は、
図3に示すように、基体2の第1面2aの全体に均等に分布するように位置していてもよい。
【0025】
なお、本開示では、プロセスガスなどの媒体の流入口である開口3が1つ設けられ、媒体の吐出口である開口5が複数設けられる例について示したが、本開示はかかる例に限られない。たとえば、開口3が複数設けられてもよいし、開口5が1つ設けられてもよい。
【0026】
図4に示すように、流路4は、開口3に繋がる側から順に、導入路4aと、拡幅路4bと、複数の分岐路4cとを有する。導入路4aは、たとえば、開口3から、第2面2bに対して垂直に延びる部位である。
【0027】
拡幅路4bは、たとえば、導入路4aにおける第1面2a側の端部から、第1面2aに対して平行に延びる部位である。複数の分岐路4cは、たとえば、拡幅路4bから、複数の開口5に対してそれぞれ延びる部位である。なお、本開示における流路4の構成は、
図4の例に限られない。
【0028】
実施形態に係る基体2は、樹脂、金属およびセラミックスなど、どのような材料で構成されてもよい。一方で、基体2がセラミックスで構成される場合、機械的強度、耐熱性および耐食性などの点において樹脂や金属よりも優れる。
【0029】
ここで、セラミックスとは、酸化アルミニウム質セラミックス、酸化ジルコニウム質セラミックス、酸化イットリウム質セラミックス、酸化マグネシウム質セラミックス、窒化珪素質セラミックス、窒化アルミニウム質セラミックス、炭化珪素質セラミックス、コージェライト質セラミックスまたはムライト質セラミックスなどである。
【0030】
そして、たとえば、酸化アルミニウム質セラミックスとは、セラミックスを構成する全成分100質量%のうち、酸化アルミニウムを70質量%以上含有するものである。なお、他のセラミックスについても同様である。
【0031】
また、対象基体の材質は、以下の方法により確認することができる。まず、X線回折装置(XRD)を用いて対象基体を測定し、得られた回折角度である2θの値より、JCPDSカードと照合する。ここでは、XRDにより対象基体に酸化アルミニウムの存在が確認された場合を例に挙げて説明する。
【0032】
次に、ICP発光分光分析装置(ICP)または蛍光X線分析装置(XRF)を用いて、アルミニウム(Al)の定量分析を行なう。そして、ICPまたはXRFで測定したAlの含有量から酸化アルミニウム(Al2O3)に換算した含有量が70質量%以上であれば、対象基体は酸化アルミニウム質セラミックスで構成されている。
【0033】
そして、本開示の流路構造体1が複数の開口5を備え、基体2がセラミックスで構成される場合には、耐食性が必要とされる半導体製造装置100(
図1参照)に用いられるシャワープレートに好適に用いることができる。さらに、実施形態に係る流路構造体1は、流入ガスの品質低下が少ないものであることから、被処理物の品質が高い。
【0034】
ここで、実施形態では、
図3に示すように、基体2の内部に複数、図では2つの熱電対部10が位置する。かかる熱電対部10は、第1金属で構成される第1金属配線11(
図5参照)と、かかる第1金属とは異なる第2金属で構成される第2金属配線12(
図5参照)とが接続されることで構成され、熱電対機能を有する。
【0035】
そして、実施形態では、基体2の内部に複数の熱電対部10が位置することで、シャワープレート内に複数の温度測定ポイントを設けることができる。これにより、シャワープレート内部の温度を測定できるとともに、シャワープレート内の温度分布を測定することができる。
【0036】
また、実施形態では、
図3に示すように、複数の熱電対部10が、第1面2aの中心からの距離がそれぞれ異なる位置に位置する。たとえば、
図3の例では、1つの熱電対部10が第1面2aの中心に位置し、別の熱電対部10が第1面2aの端部に位置する。
【0037】
これにより、流路構造体1から吐出される媒体の広がりに応じた温度分布を計測することができる。
【0038】
また、実施形態では、複数の熱電対部10が、チャンバ110(
図1参照)の開口部111(
図1参照)からの距離がそれぞれ異なる位置に位置してもよい。たとえば、実施形態では、基体2における開口部111に近い側の部位と、基体2における開口部111から離れた部位とにそれぞれ熱電対部10が位置してもよい。
【0039】
これにより、温度が下がりやすい開口部111近傍の温度と、温度が下がりにくい開口部111から離れた部位の温度とを両方とも測定することができる。したがって、実施形態によれば、チャンバ110内部の温度分布を精度よく計測できる。
【0040】
なお、
図4の例では、拡幅路4bが円板状である例について示したが、本開示はかかる例に限られず、拡幅路4bの中に支柱が設けられていてもよい。
【0041】
<熱電対部>
つづいて、実施形態に係る熱電対部10の構成について、
図5~
図11を参照しながら説明する。
図5は、実施形態に係る熱電対部10の構成の一例を示す正面図であり、
図6は、実施形態に係る熱電対部10の構成の一例を示す断面図である。また、
図6は、
図5に示すB-B線の矢視断面図である。
【0042】
図5に示すように、熱電対部10は、第1金属で構成される第1金属配線11と、第2金属で構成される第2金属配線12とが接する部位に構成される。
【0043】
かかる第1金属および第2金属は、たとえば、W(タングステン)およびRe(レニウム)を含み、かかるWおよびReの比率が互いに異なるように構成されていてもよい。これにより、第1金属配線11および第2金属配線12において互いに接する部位に、ゼーベック効果による起電力を生じさせることができる。
【0044】
この合金は、熱電対部10を形成する材質としてJISなどの工業規格で定められたものではないが、3000℃以上の融点を有することから、基体2を構成するセラミックスと同時に焼成することができるとともに、起電力が大きいため、市販されている熱電対の温度測定に用いられている計器をそのまま適用することができる。
【0045】
具体的には、第1金属配線11を体積比がW:Re=94:6~97:3である合金により形成し、第2金属配線12を体積比がW:Re=73:27~76:24である合金により形成してもよい。第1金属配線11および第2金属配線12を構成するW-Re合金のWとReとの体積比を上記範囲とすることで、容易に精度の高い測定を実現することができる。
【0046】
なお、本開示において、第1金属配線11および第2金属配線12の材質としては、WとReとを含む合金だけに限定されるものではなく、Pt(白金)とRh(ロジウム)とを含む合金やNi(ニッケル)とCr(クロム)とを含む合金、あるいはJIS C1602で規格されている合金などであってもよい。
【0047】
そして、本開示では、第1金属配線11および第2金属配線12の材質が、測定精度を高める観点から起電力が大きく、異なる抵抗温度係数が得られ、基体2を構成するセラミックスの焼成温度に耐え得る高融点のものであって、かつ市販の計器で使える合金であればよい。
【0048】
第1金属配線11および第2金属配線12を含んだ基体2の製造工程は、まず、セラミックスを原料としバインダを含んだテープを準備する。なお、必要に応じて、工具や金型やレーザを用いて形状の加工を行ってもよい。
【0049】
次に、テープに第1金属配線11および第2金属配線12となる導電性ペーストを印刷、充填する。そして、テープを乾燥後に積層し、テープの材質に応じた条件で、脱脂、焼成することによって、流路構造体1を得ることができる。
【0050】
実施形態では、このようなテープ積層工法を用いることによって、基体2の内部に簡便に熱電対部10を形成することができる。また、実施形態では、基体2の内部に熱電対部10を印刷された導電性ペーストで形成することによって、長期間使用した後でも熱電対部10の較正を不要とすることができる。
【0051】
図5に示すように、第1金属配線11は、囲み部11aと、配線部11bと、ビア部11c(
図14参照)とを有していてもよい。
図5の例では、囲み部11aは、分岐路4cを囲むように位置する。囲み部11aは、たとえば、
図5および
図6に示すように、分岐路4cの全周を切れ目なく囲んでいてもよい。
【0052】
配線部11bは、基体2の第1面2a(
図6参照)に対して平行に延びるように位置する。ビア部11cは、基体2の第1面2aに対して垂直に延びるように位置する。
【0053】
また、第2金属配線12は、囲み部12aと、配線部12bと、ビア部12c(
図14参照)とを有する。囲み部12aは、分岐路4cを囲むように位置する。配線部12bは、基体2の第1面2aに対して平行に延びるように位置する。
【0054】
また、配線部12bは、
図6に示すように、第1金属配線11の囲み部11aを乗り上げるように位置する。ビア部12cは、基体2の第1面2aに対して垂直に延びるように位置する。
【0055】
そして、囲み部11aおよび囲み部12aは、分岐路4cの外側を同心円状に囲むように位置する。さらに、囲み部11aおよび囲み部12aは、互いに接するように位置する。これにより、囲み部11aおよび囲み部12aが接する部位に円状の熱電対部10が形成される。
【0056】
ここまで説明したように、実施形態では、
図5に示すように、第1面2aを正面視した場合に、第1金属配線11および第2金属配線12は、開口5の周囲を取り囲んでいるとともに、熱電対部10は、開口5の周囲に位置する。
【0057】
これにより、プロセスガスが吐出される分岐路4cおよび開口5の温度を精度よく測定することができる。
【0058】
また、実施形態では、第1面2aを正面視した場合に、熱電対部10は、開口5を取り囲んでいてもよい。これにより、プロセスガスが吐出される分岐路4cおよび開口5の近傍の温度をさらに精度よく測定することができる。
【0059】
また、実施形態において、
図5に示した熱電対部10の断面形状は、
図6の例に限られない。
図7および
図8は、実施形態に係る熱電対部10の構成の一例を示す断面図であり、上述の
図6に対応する図である。
図7に示すように、実施形態では、第1金属配線11の囲み部11aが第2金属配線12の配線部12bに分断されるように、一部が切り欠かれてもよい。
【0060】
また、実施形態では、
図8に示すように、第1金属配線11と第2金属配線12とが基体2の内部で積層されるように位置してもよい。そして、第2金属配線12の囲み部12aが第1金属配線11の囲み部11aに接しながら積層されることで、熱電対部10が形成されてもよい。
【0061】
このように、第1面2aを正面視した場合に、熱電対部10において、第1金属配線11および第2金属配線12が重なって位置することで、囲み部11aと囲み部12aとの接触面積を増やすことができる。
【0062】
そのため、プロセスガスが吐出される分岐路4cおよび開口5の近傍の温度をさらに精度よく測定することができる。
【0063】
また、実施形態において、熱電対部10の平面形状は、
図5の例に限られない。
図9は、実施形態に係る熱電対部10の構成の別の一例を示す正面図であり、
図10は、実施形態に係る熱電対部10の構成の別の一例を示す断面図である。また、
図10は、
図9に示すC-C線の矢視断面図である。
【0064】
図9および
図10に示すように、実施形態では、半円状の囲み部11aと半円状の囲み部12aとが互いに繋がって円状になることで、第1金属配線11および第2金属配線12が、全体として開口5の周囲を囲むように位置してもよい。
【0065】
これによっても、プロセスガスが吐出される分岐路4cおよび開口5の近傍の温度を精度よく測定することができる。
【0066】
なお、本開示では、
図9に示すように、第1金属配線11と第2金属配線12とが接する部位(すなわち、熱電対部10)が離れて位置していたとしても、1(cm)以下の距離に位置するとともに、同じ第1金属配線11および第2金属配線12に接続されている場合、1つの熱電対部10とみなすことができる。
【0067】
また、実施形態において、
図9に示した熱電対部10の断面形状は、
図10の例に限られない。
図11は、実施形態に係る熱電対部10の構成の別の一例を示す断面図である。
【0068】
図11に示すように、実施形態では、第1金属配線11と第2金属配線12とが基体2の内部で積層されるように位置してもよい。そして、第2金属配線12の囲み部12aが第1金属配線11の囲み部11aに接しながら積層されることで、熱電対部10が形成されてもよい。
【0069】
このように、第1面2aを正面視した場合に、熱電対部10において、第1金属配線11および第2金属配線12が重なって位置することで、囲み部11aと囲み部12aとの接触面積を増やすことができる。
【0070】
そのため、プロセスガスが吐出される分岐路4cおよび開口5の近傍の温度をさらに精度よく測定することができる。
【0071】
また、実施形態では、熱電対部10が、第1金属および第2金属を含んだ領域を有してもよい。すなわち、実施形態では、第1金属および第2金属が混ざり合った領域を熱電対部10が有してもよい。これにより、熱電対部10の信頼性を向上させることができる。
【0072】
<変形例1>
つづいて、実施形態の各種変形例について、
図12~
図18を参照しながら説明する。
図12は、実施形態の変形例1に係る流路構造体1の構成の一例を示す正面図であり、実施形態の
図3に対応する図である。
【0073】
図12に示すように、変形例1では、3つ以上、図では3つの熱電対部10が基体2の内部に位置してもよい。たとえば、変形例1では、1つの熱電対部10が第1面2aの中心に位置し、別の熱電対部10が第1面2aの端部に位置し、さらに別の熱電対部10が第1面2aの中心と端部との中間に位置する。
【0074】
これにより、流路構造体1から吐出される媒体の広がりに応じた温度分布を精度よく計測することができる。
【0075】
また、変形例1では、3つ以上の熱電対部10が、一直線上に並んで位置してもよい。これにより、チャンバ110内部の温度の傾向を把握することができる。
【0076】
なお、
図12の例では、3つの熱電対部10が基体2の内部に位置する例について示したが、本開示はかかる例に限られず、4つ以上の熱電対部10が基体2の内部に位置してもよい。
【0077】
<変形例2>
図13は、実施形態の変形例2に係る流路構造体1の構成の一例を示す断面図であり、実施形態の
図4に対応する図である。
【0078】
図13に示すように、変形例2では、分岐路4cの周囲に加えて、導入路4aの周囲にも熱電対部10が位置してもよい。これにより、流路4の上流側および下流側における温度変化を測定できる。
【0079】
また、変形例2では、分岐路4cの周囲に位置する複数の熱電対部10が、第1面2aからの距離がそれぞれ互いに異なる位置に位置してもよい。これにより、分岐路4cの上流側および下流側におけるプロセスガスの温度変化を測定できる。
【0080】
また、変形例2では、分岐路4cの周囲に位置する複数の熱電対部10が、第1面2aを正面視した場合に、重なる位置に位置してもよい。これにより、同じ分岐路4cの上流側および下流側におけるプロセスガスの温度変化を測定できる。
【0081】
<変形例3>
図14および
図15は、実施形態の変形例3に係る流路構造体1の構成の一例を示す正面図である。なお、
図14は、基体2の第1面2a側から見た場合の正面図であり、
図15は、基体2の第2面2b側から見た場合の正面図である。
【0082】
図14および
図15に示すように、変形例3では、複数(図では3つ)の熱電対部10が、共通の第1金属配線11の配線部11bおよびビア部11cを介して、第2面2bに位置する1つの端子13に接続される。
【0083】
一方で、変形例3では、複数の熱電対部10が、個別の第2金属配線12の配線部12bおよびビア部12cを介して、第2面2bに位置する複数の端子14にそれぞれ接続される。
【0084】
このように、第1金属配線11および第2金属配線12の少なくとも一方を共通化することで、通常、合わせて熱電対部10の2倍の数だけ必要となる端子13、14の数を削減することができる。したがって、変形例3によれば、流路構造体1の製造工程を簡素化することができる。
【0085】
なお、変形例3の流路構造体1では、図示しない温度測定器において測定する端子14を切り替えることで、各熱電対部10の温度を測定することができる。
【0086】
また、
図13および
図14の例では、第1金属配線11を共通化する例について示したが、本開示はかかる例に限られず、第2金属配線12が共通化されてもよい。すなわち、第1金属配線11または第2金属配線12のいずれかが共通化されていてもよい。
【0087】
また、
図13および
図14の例では、ビア部11c、12cが基体2の周縁部に位置する例について示したが、本開示はかかる例に限られない。たとえば、拡幅路4b(
図4参照)に支柱が設けられる場合、ビア部11c、12cがかかる支柱に位置してもよい。これにより、第1金属配線11および第2金属配線12の設計自由度を向上させることができる。
【0088】
<変形例4>
図16は、実施形態の変形例4に係る流路構造体1の構成の一例を示す正面図である。
図16に示すように、変形例4では、第1面2aを正面視した場合に、熱電対部10が、複数の開口5で構成される開口群5Aよりも第1面2aの中心から離れた位置に位置してもよい。
【0089】
このように、熱電対部10が開口群5Aよりも外側に位置することで、プロセス中に温度が下がりやすい開口群5Aよりも外側の温度を測定することができる。
【0090】
<変形例5>
図17は、実施形態の変形例5に係る流路構造体1の構成の一例を示す拡大断面図である。なお、
図17は、基体2の周縁部を拡大した断面図である。
図17に示すように、変形例5では、基体2の内部にRF電極20が第1面2aに沿って位置する。
【0091】
かかるRF電極20は、図示しない高周波電源に接続される。そして、かかる高周波電源からRF電極20に高周波が印加されることで、半導体製造装置100(
図1参照)の内部にプラズマを発生させることができる。
【0092】
そして、変形例5では、
図17に示すように、第1面2aを正面視した場合に、熱電対部10は、RF電極20よりも第1面2aの中心から離れた位置に位置してもよい。
【0093】
このように、熱電対部10がRF電極20よりも外側に位置することで、基体2の第1面2a側にプラズマを発生させる際に、導電体の熱電対部10によって基体2の第1面2a側に向けた高周波の伝達が阻害されることを抑制することができる。
【0094】
したがって、変形例5によれば、半導体製造装置100における半導体ウェハWのプロセスを安定して実施することができる。
【0095】
<変形例6>
図18は、実施形態の変形例6に係る流路構造体1の構成の一例を示す拡大断面図である。
図18に示すように、熱電対部10は、RF電極20よりも第1面2aから離れた位置に位置してもよい。
【0096】
このように、熱電対部10が第1面2aに対してRF電極20よりも離れて位置することで、基体2の第1面2a側にプラズマを発生させる際に、導電体の熱電対部10によって基体2の第1面2a側に向けた高周波の伝達が阻害されることを抑制することができる。
【0097】
したがって、変形例6によれば、半導体製造装置100における半導体ウェハWのプロセスを安定して実施することができる。
【0098】
実施形態に係る流路構造体1は、基体2と、流路4と、複数の開口5と、第1金属配線11と、第2金属配線12と、を備える。基体2は、第1面2aを有し、セラミックスで構成される。流路4は、基体2の内部に位置し、複数の分岐路4cを有する。複数の開口5は、第1面2aに位置し、複数の分岐路4cとそれぞれ連結する。第1金属配線11は、少なくとも一部が基体2の内部に位置し、第1金属で構成される。第2金属配線12は、少なくとも一部が基体2の内部に位置し、第1金属とは異なる第2金属で構成される。また、第1金属配線11および第2金属配線12は、基体2の内部で接続されることで熱電対機能を有する熱電対部10を構成する。そして、第1面2aを正面視した場合に、熱電対部10は、複数の開口5で構成される開口群5Aよりも第1面2aの中心から離れた位置に位置する。これにより、プロセス中のプロセスデータを精度よく推定することができる。
【0099】
また、実施形態に係る流路構造体1において、基体2は、内部に位置するRF電極20をさらに有する。また、第1面2aを正面視した場合に、熱電対部10は、RF電極20よりも第1面2aの中心から離れた位置に位置する。これにより、プロセス中のプロセスデータを精度よく推定することができるとともに、半導体製造装置100における半導体ウェハWのプロセスを安定して実施することができる。
【0100】
また、実施形態に係る流路構造体1において、基体2は、内部に位置するRF電極20をさらに有する。また、熱電対部10は、RF電極20よりも第1面2aから離れた位置に位置する。これにより、プロセス中のプロセスデータを精度よく推定することができるとともに、半導体製造装置100における半導体ウェハWのプロセスを安定して実施することができる。
【0101】
また、実施形態に係る半導体製造装置100は、チャンバ110と、上記に記載の流路構造体1と、を備える。これにより、プロセス中のプロセスデータを精度よく推定しながら半導体ウェハWの処理を実施することができる。
【0102】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。たとえば、本開示の流路構造体1には、基体2の内部にヒータが設けられてもよい。これにより、流路4を通流するプロセスガスを加熱することができる。また、熱電対部10によって、ヒータの温度を測定することもできる。本発明では、熱電対部10を用いることで、局所的な温度測定が可能であり、複数の熱電対部10を有することでシャワープレート内の温度分布を精密に測定することができる。
【0103】
さらなる効果や他の態様は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0104】
1 流路構造体
2 基体
2a 第1面
3 開口
4 流路
4a 導入路
4b 拡幅路
4c 分岐路
5 開口
5A 開口群
10 熱電対部
11 第1金属配線
12 第2金属配線
100 半導体製造装置
110 チャンバ
111 開口部
120 載置台