(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147059
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】調整装置、調整方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G05F 1/10 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
G05F1/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054602
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】100205833
【弁理士】
【氏名又は名称】宮谷 昂佑
(72)【発明者】
【氏名】平野 大輔
【テーマコード(参考)】
5H410
【Fターム(参考)】
5H410BB02
5H410BB04
5H410CC02
5H410CC10
5H410EA12
5H410FF05
5H410FF09
5H410FF22
(57)【要約】
【課題】被調整回路の調整時間を短縮することにより、検査コストを低減することができる技術を提供する。
【解決手段】本開示の調整装置100は、可変電圧源111、可変電圧源111に対して直列に接続されるフィルタ抵抗112、並びに可変電圧源111及びフィルタ抵抗112に対して並列に接続されるフィルタ容量113を含む被調整回路110と、可変電圧源111のインピーダンスとフィルタ抵抗112のインピーダンスとの合計値よりもインピーダンスが小さく、且つ所望の電圧値の電圧が印加される外部電源120と、被調整回路110と外部電源120との間の電流の少なくとも向きを検出する検出回路130と、フィルタ容量113の充電完了後に、当該電流の少なくとも向きに基づいて、可変電圧源111の出力電圧を調整する調整システム140と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変電圧源、前記可変電圧源に対して直列に接続されるフィルタ抵抗、並びに前記可変電圧源及び前記フィルタ抵抗に対して並列に接続されるフィルタ容量を含む被調整回路と、
前記可変電圧源のインピーダンスと前記フィルタ抵抗のインピーダンスとの合計値よりもインピーダンスが小さく、且つ所望の電圧値の電圧が印加される外部電源と、
前記被調整回路と前記外部電源との間の電流の少なくとも向きを検出する検出回路と、
前記フィルタ容量の充電完了後に、前記電流の前記少なくとも向きに基づいて、前記可変電圧源の出力電圧を調整する調整システムと、
を備える、調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載の調整装置であって、
前記検出回路は、電流検出器の検出回路であって、
前記調整システムは、前記電流検出器によって検出された前記電流の大きさ及び向きに基づいて、前記出力電圧を調整する、調整装置。
【請求項3】
請求項1に記載の調整装置であって、
前記検出回路は、抵抗及びコンパレータを含む、調整装置。
【請求項4】
可変電圧源、前記可変電圧源に対して直列に接続されるフィルタ抵抗、並びに前記可変電圧源及び前記フィルタ抵抗に対して並列に接続されるフィルタ容量を含む被調整回路と、
前記可変電圧源のインピーダンスと前記フィルタ抵抗のインピーダンスとの合計値よりもインピーダンスが小さい外部電源と、
を含む調整回路を用いて実行される、前記被調整回路の出力電圧の調整方法であって、
前記外部電源に所望の電圧値の電圧を印加すること、
前記フィルタ容量を充電すること、
前記フィルタ容量の充電完了後に、前記外部電源と前記被調整回路との間の電流の少なくとも向きを検出すること、及び
前記電流の前記少なくとも向きに基づいて、前記可変電圧源の出力電圧を調整すること
を含む、調整方法。
【請求項5】
請求項4に記載の調整方法であって、
前記フィルタ容量の充電は1回のみである、調整方法。
【請求項6】
可変電圧源、前記可変電圧源に対して直列に接続されるフィルタ抵抗、並びに前記可変電圧源及び前記フィルタ抵抗に対して並列に接続されるフィルタ容量を含む被調整回路と、
前記可変電圧源のインピーダンスと前記フィルタ抵抗のインピーダンスとの合計値よりもインピーダンスが小さい外部電源と、
を含む調整回路を用いて、
コンピュータに、
前記フィルタ容量の充電完了後に、前記外部電源と前記被調整回路との間の電流の少なくとも向きに基づいて、前記可変電圧源の出力電圧を調整することを実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、調整装置、調整方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
高精度な温度測定が要求されるアナログ・フロント・エンドでは、リファレンス電圧を高精度に調整することが必要となる。従来のシステムでは、出力電圧が測定され、当該出力電圧が所与の固定値となるような調整が実行される。
【0003】
例えば、特許文献1には、スイッチ回路が、電源投入時に、またリファレンス電圧のトリミング動作中に、電圧フォロワを選択することにより、リファレンス電圧のトリミング動作中にリファレンス電圧の電圧低下による誤差を低減すると共に、半導体集積回路の電源投入時にリファレンス電圧の高速な立ち上がりを実現するための半導体リーク電流検出器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、例えば可変電圧源又はトリミングを必要とするリファレンス電圧源等、調整を必要とする電圧源においては、出力インピーダンスが高かったり、或いは負荷容量が大きかったりする場合に、調整時間が長くなり、検査コスト、ひいては製造コストが大きくなるという問題がある。
【0006】
そこで、本開示は、被調整回路の調整時間を短縮することにより、検査コスト、ひいては製造コストを低減することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
幾つかの実施形態に係る調整装置は、可変電圧源、前記可変電圧源に対して直列に接続されるフィルタ抵抗、並びに前記可変電圧源及び前記フィルタ抵抗に対して並列に接続されるフィルタ容量を含む被調整回路と、前記可変電圧源のインピーダンスと前記フィルタ抵抗のインピーダンスとの合計値よりもインピーダンスが小さく、且つ所望の電圧値の電圧が印加される外部電源と、前記被調整回路と前記外部電源との間の電流の少なくとも向きを検出する検出回路と、前記フィルタ容量の充電完了後に、前記電流の前記少なくとも向きに基づいて、前記可変電圧源の出力電圧を調整する調整システムと、を備える。これにより、前記被調整回路の調整時間を短縮することにより、検査コスト、ひいては製造コストを低減することができる。
【0008】
一実施形態において、前記検出回路は、電流検出器の検出回路であって、前記調整システムは、前記電流検出器によって検出された前記電流の大きさ及び向きに基づいて、前記出力電圧を調整してもよい。これにより、前記調整装置の製造コストを低減することができる。
【0009】
一実施形態において、前記検出回路は、抵抗及びコンパレータを含んでもよい。これにより、前記調整装置の製造コストを低減することができる。
【0010】
幾つかの実施形態に係る調整方法は、可変電圧源、前記可変電圧源に対して直列に接続されるフィルタ抵抗、並びに前記可変電圧源及び前記フィルタ抵抗に対して並列に接続されるフィルタ容量を含む被調整回路と、前記可変電圧源のインピーダンスと前記フィルタ抵抗のインピーダンスとの合計値よりもインピーダンスが小さい外部電源と、を含む調整回路を用いて実行される、前記被調整回路の出力電圧の調整方法であって、前記外部電源に所望の電圧値の電圧を印加すること、前記フィルタ容量を充電すること、前記フィルタ容量の充電完了後に、前記外部電源と前記被調整回路との間の電流の少なくとも向きを検出すること、及び前記電流の前記少なくとも向きに基づいて、前記可変電圧源の出力電圧を調整することを含む。これにより、前記被調整回路の調整時間を短縮することにより、検査コスト、ひいては製造コストを低減することができる。
【0011】
一実施形態において、前記フィルタ容量の充電は1回のみであってもよい。これにより、前記可変電圧源の調整に必要な時間も大幅に低減することができる。
【0012】
幾つかの実施形態に係るプログラムは、可変電圧源、前記可変電圧源に対して直列に接続されるフィルタ抵抗、並びに前記可変電圧源及び前記フィルタ抵抗に対して並列に接続されるフィルタ容量を含む被調整回路と、前記可変電圧源のインピーダンスと前記フィルタ抵抗のインピーダンスとの合計値よりもインピーダンスが小さい外部電源と、を含む調整回路を用いて、コンピュータに、前記フィルタ容量の充電完了後に、前記外部電源と前記被調整回路との間の電流の少なくとも向きに基づいて、前記可変電圧源の出力電圧を調整することを実行させる。これにより、前記被調整回路の調整時間を短縮することにより、検査コスト、ひいては製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、被調整回路の調整時間を短縮することにより、検査コスト、ひいては製造コストを低減することができる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】比較例に係る調整装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図1に示される調整システムの概略構成を示す図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る調整装置の概略構成を示す図である。
【
図4】
図3に示される調整システムの概略構成を示す図である。
【
図5】
図3に示される調整装置の動作を説明する図である。
【
図6】本開示の一変形例に係る調整装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。各図において、同一符号は、同一又は同等の構成要素を示す。
【0016】
図1に示されるように、比較例に係る調整装置300は、製品基板310と、電圧計320と、調整システム330と、を備える。
【0017】
製品基板310は、リファレンス電圧源311、調整回路312、及びフィルタ抵抗313を含むIC(集積回路)314と、フィルタ容量315と、を含む。
【0018】
電圧計320は、リファレンス電圧源311の電圧値を読み取ることが可能な汎用的な電圧計である。
【0019】
調整システム330は、
図2に示されるように、電圧読取部331と、比較部332と、調整値演算部333と、調整値送信部334と、を含む。
【0020】
電圧読取部331は、タイマー等を用いて所定の時間が経過したことを検知すると、電圧計320を介してリファレンス電圧源311の電圧値を読み取り、比較部332に送信する。なお、所定の時間は、フィルタ抵抗313とフィルタ容量315とによる時定数から算出されるフィルタ容量315の充電に必要な時間に基づいて、調整装置300のユーザ等により適宜設定可能である。例えば、所定の時間は、フィルタ容量315の充電に必要な時間と上記時定数のばらつきとを合計した時間であってもよい。
【0021】
比較部332は、電圧読取部331から受信したリファレンス電圧源311の電圧値を所望の電圧値と比較し、比較結果を調整値演算部333に送信する。
【0022】
調整値演算部333は、比較部332から受信した比較結果に基づいて、リファレンス電圧源311に印加すべき電圧値(すなわち、調整後の電圧値)を算出し、算出した電圧値を調整値送信部334に送信する。
【0023】
調整値送信部334は、調整値演算部333から受信した電圧値を示す信号をリファレンス電圧源311に送信する。これにより、リファレンス電圧源311の出力電圧が調整後の電圧値となる。
【0024】
なお、調整システム330は、調整システム330の各部を制御しながら、調整システム330の動作に関わる処理を実行するプロセッサと、調整システム330の動作に用いられる各種情報が記憶されるメモリとを含む。当該プロセッサは、CPU等の汎用的な集積回路によって構成される。当該メモリは、半導体メモリ等によって構成される。
【0025】
以上述べたとおり、比較例に係る調整装置300では、電圧値の測定に基づいて製品基板等の被調整回路の調整が行われるため、被調整回路の容量及び電圧測定器の容量等で遅延が発生し、被調整回路の調整に時間がかかり、検査コスト、ひいては製造コストが大きくなるという問題がある。
【0026】
そこで、本開示は、被調整回路の調整時間を短縮することにより、検査コスト、ひいては製造コストを低減することができる技術について説明する。
【0027】
(調整装置)
図3に示されるように、本開示の一実施形態に係る調整装置100は、被調整回路110と、外部電源120と、被調整回路110と外部電源120との間の電流の大きさ及び向きを検出する電流検出器130と、調整システム140と、を備える。
【0028】
被調整回路110は、可変電圧源111、可変電圧源111に対して直列に接続されるフィルタ抵抗112、並びに可変電圧源111及びフィルタ抵抗112に対して並列に接続されるフィルタ容量113を含む。可変電圧源111及びフィルタ容量113は、それぞれ接地される。以下、可変電圧源111の出力電圧の電圧値をVtrimと表記し、フィルタ抵抗112の抵抗値をRと表記し、フィルタ容量113のキャパシタンスをCと表記する。
【0029】
外部電源120は、可変電圧源111のインピーダンスとフィルタ抵抗112のインピーダンスとの合計値よりもインピーダンスが小さい任意の外部電源であり、所望の電圧値(調整目標値)の電圧が印加される。なお、外部電源120のインピーダンスと電流検出器130のインピーダンスとの合計値が可変電圧源111のインピーダンスとフィルタ抵抗112のインピーダンスとの合計値よりも1/10以下であれば、フィルタ容量113の充電時間が1/10以下になり、検査コストが1/10以下となる。ただし、本開示はこれに限られず、外部電源120のインピーダンスと電流検出器130のインピーダンスとの合計値は、可変電圧源111のインピーダンスとフィルタ抵抗112のインピーダンスとの合計値の1/2等であってもよい。外部電源120は、プログラマブル電圧源等の汎用的な電源であってもよい。以下、外部電源120に印加される電圧の値をVtargと表記する。
【0030】
電流検出器130は、外部電源120に対して直列に接続され、且つ被調整回路110に任意の調整端子150を介して接続される。以下、電流検出器130によって検出される電流をImonと表記する。ここで、Imonの絶対値は、外部電源120と被調整回路110との間の電流の大きさを示し、Imonの正負は、外部電源120と被調整回路110との間の電流の向きを示す。なお、電流検出器130の被調整回路110側端子から外部電源120側端子に電流が流れる場合を「負」と定義し、その逆を「正」と定義する。
【0031】
調整システム140は、フィルタ容量113の充電完了後に、電流検出器130によって検出された電流I
monの大きさ及び向きに基づいて、可変電圧源111の出力電圧の電圧値V
trimを調整する。ここで、調整システム140は、
図4に示されるように、電流読取部141と、比較部142と、調整値演算部143と、調整値送信部144と、を含んでもよい。
【0032】
電流読取部141は、タイマー等を用いて、外部電源120に電圧が印加されてから所定の時間が経過したことを検知すると、電流検出器130によって検出された電流Imonの大きさ及び向きを読み取り、読み取った電流Imonを比較部142に送信する。なお、所定の時間は、フィルタ抵抗112とフィルタ容量113とによる時定数から算出されるフィルタ容量113の充電に必要な時間に基づいて、調整装置100のユーザ等により適宜設定可能である。例えば、所定の時間は、フィルタ容量113の充電に必要な時間と上記時定数のばらつきとを合計した時間であってもよい。
【0033】
比較部142は、電流読取部141から受信した電流Imonを比較基準(例えば0A)と比べ、比較結果を調整値演算部143に送信する。ここで、比較結果は、Imonの絶対値とImonの正負(すなわち、電流の向き)とを含んでもよい。
【0034】
調整値演算部143は、比較部142から受信した比較結果に基づいて、可変電圧源111の出力電圧の電圧値(すなわち、調整後の電圧値)を算出し、算出した電圧値を調整値送信部144に送信する。
【0035】
ここで、Imon=(Vtarg-Vtrim)/Rという関係が近似的に成立する。したがって、Imon>0Aの場合、Vtarg>Vtrimを示しており、可変電圧源111の出力電圧の電圧値をVtrim+R×Imon(正)に調整すべきであること、すなわち、現在の出力電圧の電圧値VtrimにR×Imon分の電圧値を加える必要があることがわかる。また、Imon<0Aの場合、Vtarg<Vtrimを示しており、可変電圧源111の出力電圧の電圧値をVtrim+R×Imon(負)に調整すべきであること、すなわち、現在の出力電圧の電圧値Vtrimから|R×Imon|分の電圧値を下げる必要があることがわかる。また、Imon=0Aの場合、Vtarg=Vtrimを示しており、調整が完了したことがわかる。なお、本実施形態における「0」とは、数学的に厳密な0を意味するものではない。
【0036】
調整値送信部144は、調整値演算部143から受信した電圧値を示す信号を可変電圧源111に送信する。これにより、可変電圧源111の出力電圧が調整後の電圧値となる。
【0037】
なお、調整システム140は、調整システム140の各部を制御しながら、調整システム140の動作に関わる処理を実行するプロセッサと、調整システム140の動作に用いられる各種情報が記憶されるメモリとを含んでもよい。当該プロセッサは、CPU等の汎用的な集積回路によって構成されてもよい。当該メモリは、半導体メモリ等によって構成されてもよい。なお、当該プロセッサは、所定のプログラムを実行することによって、種々の機能が実現される。したがって、本開示は、コンピュータ(より具体的にはコンピュータに含まれるプロセッサ)が実行可能なプログラム、又は当該プログラムを記憶する非一時的なコンピュータ可読媒体としても実現可能である。
【0038】
(調整装置の動作)
図5を参照して、本実施形態に係る調整装置100の動作について説明する。この動作は、本開示の一実施形態に係る調整方法に相当する。
【0039】
ステップS1:Vtargの印加
調整装置100のユーザ等により、外部電源120に対して所望の電圧値Vtargの電圧を印加する操作が行われる。
【0040】
ステップS2:フィルタ容量の充電
外部電源120に印加された電圧に起因して、電流検出器130の外部電源120側端子から被調整回路110側端子の向きに電流が流れることにより、フィルタ容量113が充電される。
【0041】
ここで、比較例に係る調整装置300では、リファレンス電圧源311がフィルタ容量315を充電する。このため、製品基板310の内部インピーダンスが影響し、フィルタ容量315の充電に時間がかかる。これに対して、本実施形態によれば、可変電圧源111のインピーダンスとフィルタ抵抗112のインピーダンスとの合計値よりもインピーダンスが小さい外部電源120がフィルタ容量113を充電する。このため、フィルタ容量113の充電に必要な時間が比較例よりも短くなる。その結果、後述するステップS4において可変電圧源111の調整に必要な時間を大きく節約することができる。
【0042】
ステップS3:Imonの検出
調整システム140の電流読取部141は、タイマー等を用いて、外部電源120に電圧を印加してから所定の時間が経過したことを検知すると、電流検出器130によって検出された電流Imonを読み取る。そして、調整システム140の電流読取部141は、読み取った電流Imonを比較部142に送信する。なお、所定の時間は、フィルタ抵抗112とフィルタ容量113とによる時定数から算出されるフィルタ容量113の充電に必要な時間に基づいて、調整装置100のユーザ等により適宜設定可能である。例えば、所定の時間は、フィルタ容量113の充電に必要な時間と上記時定数のばらつきとを合計した時間であってもよい。
【0043】
ステップS4:Vtrimの調整
調整システム140の調整値演算部143は、比較部142から受信した比較結果に基づいて、可変電圧源111の出力電圧の電圧値Vtrimを算出し、算出した電圧値を調整値送信部144に送信する。算出方法の詳細については、本実施形態につき上述した説明を援用する。そして、調整値送信部144は、調整値演算部143から受信した電圧値を示す信号を可変電圧源111に送信する。これにより、可変電圧源111の出力電圧の電圧値は、調整後の電圧値となる。なお、可変電圧源111の調整方法は、半導体製造工程で実施される各種トリミングであってもよい。
【0044】
ここで、可変電圧源111の出力電圧の電圧値が変更されても、外部電源120に印加される電圧の電圧値は一定値であるため、フィルタ容量113を再び充電する必要がない。すなわち、被調整回路110の出力電圧を調整するにあたって、フィルタ容量113の充電は1回のみでよい。このため、可変電圧源111の調整に必要な時間を大きく節約することができる。
【0045】
このように、本実施形態によれば、可変電圧源111のインピーダンスとフィルタ抵抗112のインピーダンスとの合計値よりもインピーダンスが小さい外部電源120と、電流の大きさ及び向きを検出する電流検出器130と、を用いることにより、被調整回路110の出力電圧を一定値(目標電圧値)に調整する。このため、被調整回路110の調整時間を短縮することができ、検査コスト、ひいては製造コストを低減することができる。
【0046】
以上、本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び改変を行ってもよいことに注意されたい。したがって、これらの変形及び改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0047】
一変形例として、被調整回路110と外部電源120との間の電流の少なくとも向きを検出する検出回路を用いて、被調整回路110の出力電圧を一定値(目標電圧値)に調整してもよい。例えば、
図6に示されるように、調整装置200が備える被調整回路110と外部電源120との間の電流の向きを検出する検出回路は、抵抗160及びコンパレータ170を含んでもよい。抵抗160としては、外部電源120のインピーダンスと抵抗160のインピーダンスとの合計値が可変電圧源111のインピーダンスとフィルタ抵抗112のインピーダンスとの合計値よりも小さい限り、任意の抵抗が採用可能である。一例として、抵抗160としては、外部電源120のインピーダンスと抵抗160のインピーダンスとの合計値が可変電圧源111のインピーダンスとフィルタ抵抗112のインピーダンスとの合計値の1/10以下である抵抗が採用可能である。ただし、本開示はこれに限られず、外部電源120のインピーダンスと抵抗160のインピーダンスとの合計値は、可変電圧源111のインピーダンスとフィルタ抵抗112のインピーダンスとの合計値の1/2等であってもよい。また、コンパレータ170としては、任意のコンパレータが採用可能である。その他については、上述した実施形態における説明を援用する。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本開示は、温度計測器向けの共通アナログ・フロント・エンド、製造におけるリファレンス電圧値の調整工程、又はトリミング若しくはキャリブレーション等の調整工程等に適用可能である。ただし、本開示の適用範囲は、当該例に限定されるものではなく、特定の製品に限定されるものでもない。
【符号の説明】
【0049】
100、200 調整装置
110 被調整回路
111 可変電圧源
112 フィルタ抵抗
113 フィルタ容量
120 外部電源
130 電流検出器
140 調整システム
141 電流値読取部
142 比較部
143 調整値演算部
144 調整値送信部
150 調整端子
160 抵抗
170 コンパレータ