IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カネカの特許一覧

<>
  • 特開-カテーテル 図1
  • 特開-カテーテル 図2
  • 特開-カテーテル 図3
  • 特開-カテーテル 図4
  • 特開-カテーテル 図5
  • 特開-カテーテル 図6
  • 特開-カテーテル 図7
  • 特開-カテーテル 図8
  • 特開-カテーテル 図9
  • 特開-カテーテル 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147081
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
A61M25/00 600
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054638
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】生駒 和明
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA01
4C267AA06
4C267AA56
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB06
4C267BB27
4C267BB52
4C267CC07
4C267HH08
4C267HH30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】処置部に搬送する際に体腔の壁の損傷を防ぎやすくすることができ、体腔内における通過性も向上させやすくすることができるカテーテルを提供する。
【解決手段】遠位端10dと近位端10pを有し、長手方向xに延在している内腔を備えている第1部材10と、第1部材の遠位部に設けられており、環状に形成され、外表面、内表面および内部空間を有し、内径が第1部材の内径よりも小さい袋状体30と、袋状体の内部空間に配置されている第2部材20と、を有しており、第1部材は、第2部材に対して長手方向xに移動可能であり、袋状体の内部に第2部材が配置されている状態において、袋状体の内部空間側の表面の少なくとも一部は、第2部材の表面と接触しており、袋状体の内表面と第2部材の外表面とが接触している状態における袋状体の最小内径は、第2部材が袋状体の近位側に位置している状態における袋状体の最小内径よりも大きいカテーテル1。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位端と近位端を有し、長手方向に延在している内腔を備えている第1部材と、
前記第1部材の遠位部に設けられており、環状に形成され、外表面、内表面および内部空間を有し、内径が前記第1部材の内径よりも小さい袋状体と、
前記袋状体の前記内部空間に配置されている第2部材と、を有しており、
前記第1部材は、前記第2部材に対して長手方向に移動可能であり、
前記袋状体の内部に前記第2部材が配置されている状態において、前記袋状体の前記内部空間側の表面の少なくとも一部は、前記第2部材の表面と接触しており、
前記袋状体の内表面と前記第2部材の外表面とが接触している状態における前記袋状体の最小内径は、前記第2部材が前記袋状体の近位端よりも近位側に位置している状態における前記袋状体の最小内径よりも大きいカテーテル。
【請求項2】
前記第1部材の延在方向の中心軸を中心とした長手方向に垂直な断面における前記第2部材の表面と接する最大の円の直径は、前記袋状体に外力が加わっていない自然状態における前記袋状体の最小内径よりも大きい請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記第1部材は、内腔を形成している壁を有しており、
前記第1部材の壁内に、前記第2部材が挿通される挿通路が形成されている請求項1または2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記第1部材は、外筒と、前記外筒の内腔に配置されている内筒と、を有しており、
前記挿通路は、前記外筒の内表面および前記内筒の外表面によって区画されている空間である請求項3に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記内部空間は、前記挿通路と連通している請求項3または4に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記内部空間は、前記第1部材の内腔と連通していない請求項1~5のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記第1部材における前記袋状体の近位端から10cm近位側までの領域、および前記第2部材の遠位端から10cm近位側までの領域の少なくとも一方にX線不透過部を有している請求項1~6のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記第2部材の遠位端から10cm近位側までの領域に配されている前記X線不透過部の数は、前記第1部材における前記袋状体の近位端から10cm近位側までの領域に配されている前記X線不透過部の数よりも多い請求項7に記載のカテーテル。
【請求項9】
少なくとも前記袋状体に、第1形状記憶部材が設けられており、
前記第1形状記憶部材の弾性は、前記袋状体の弾性よりも高く、
前記第1形状記憶部材に外力が加わっていない自然状態において、前記第1部材の延在方向の中心軸を中心とした長手方向に垂直な断面における前記第1形状記憶部材の表面と接する最小の円の直内径は、前記第1部材の内径よりも小さい請求項1~8のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項10】
前記第2部材は、少なくともその遠位部に第2形状記憶部を有しており、
前記第2形状記憶部に外力が加わっていない自然状態における前記第2形状記憶部の、前記第1部材の延在方向の中心軸を中心とした長手方向に垂直な断面における前記第2形状記憶部の表面と接する最大の円の直径は、前記第1部材の延在方向の中心軸を中心とした長手方向に垂直な断面における前記第2部材の表面と接する最大の円の直径よりも大きい請求項1~9のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項11】
前記第2部材は、長手方向に延在している内腔を備えている請求項1~10のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項12】
第1線状部材を有しており、
前記第1線状部材は、前記第1部材の近位部に固定されている請求項1~11のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項13】
最大外径が前記第1部材の最大外径よりも小さい筒状部材をさらに有し、
前記筒状部材の遠位部は、前記第2部材の近位部に固定されており、
前記第1線状部材は、前記筒状部材の内腔に配置されている請求項12に記載のカテーテル。
【請求項14】
第2線状部材を有しており、
前記第2線状部材は、前記第2部材の近位部に固定されている請求項1~13のいずれか一項に記載カテーテル。
【請求項15】
最大外径が前記第1部材の最大外径よりも小さい筒状部材をさらに有し、
前記筒状部材の遠位部は、前記第1部材の近位部に固定されており、
前記第2線状部材は、前記筒状部材の内腔に配置されている請求項14に記載のカテーテル。
【請求項16】
前記第2部材は、前記第2部材の近位部に、長手方向に垂直な方向から観察したときの径方向の長さが近位側に向かって短くなっている第2減径領域を有している請求項11に記載のカテーテル。
【請求項17】
前記第1部材は、前記第1部材の近位部に、長手方向に垂直な方向から観察したときの径方向の長さが近位側に向かって短くなっている第1減径領域を有している請求項1~16のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項18】
前記第1部材の内腔に、前記第1部材に対して移動可能な状態で配置されているシャフトと、
前記シャフトの遠位部に設けられており、径方向に拡張する拡張部材と、を備えている請求項1~17のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項19】
前記第1部材の内腔における前記シャフトの長手方向への移動を抑制する制御機構をさらに備えている請求項18に記載のカテーテル。
【請求項20】
前記拡張部材は、外面にコーティング層が形成されているバルーンまたはステントである請求項18または19に記載のカテーテル。
【請求項21】
前記コーティング層は、生理活性薬剤が含まれている請求項20に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
バルーンやステント等の医療用具を処置対象である処置部に搬送するに当たっては、例えば、樹脂チューブが用いられる。具体的には、医療用具が樹脂チューブの内腔に配された状態で血管等の体腔に挿入され、処置部まで運ばれる。このとき用いられる樹脂チューブが単純な筒の形状である場合、その先端部分が体腔の壁に当たることで、体腔の壁を損傷させることや、通過性が悪くなるという問題があった。
【0003】
特許文献1には、体腔の壁を傷つけにくくすることができるカテーテルについて記載されている。該カテーテルは、少なくとも1個の内腔を有する長い弾性チューブ状部品を有するものである。カテーテルの遠位末端には軟かく変形可能な先端部品が付けられており、該先端部品は比較的静止した表面におしつけられることによって外径が広がり、接触面積が増加するものである。これにより、組織に加えられる単位面積当たりの圧力または力を小さくすることができる旨が記載されている。
【0004】
特許文献2には、操作性のよい医療技術用器具について記載されている。該器具は、縦長の管状をした可変性の内部体と、これを少なくとも断片的に円周側で取り巻く縦長の外側の包被体と、本器具を可変状態から硬直状態、及びその逆、に移行する為の装置とを有するものである。内部体は、内壁を構成する内管と外壁を構成して内管を同心円状に取り囲んでいる外管とを有する二重管の形態に形成されているものである。本器具を可変状態から硬直状態、及びその逆、に移行する為の装置は、環状間隙内の圧力を高めて外管を放射方向に膨張させることによって包被体に圧力を加えて該器具を硬直状態にさせるものであって、操作がしやすいものである旨が記載されている。また、内部体が有する二重管の外径は大きくなるが、内部体が有する内部空間は大きさが固定されたままである旨も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60-040069号公報
【特許文献2】特表2009-505700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載されているカテーテルは先端部品の外径を拡径させることによって体腔の損傷を防いでいるものであり、特許文献1に記載されているカテーテルが有している構成では、拡径される先端部分が体腔の壁に引っかかりやすく、体腔内における通過性が悪いという問題を解決することができなかった。
【0007】
特許文献2に記載されている医療技術用器具についても、圧力を加えて外径を拡径させることによって硬直状態をつくりだして操作性を向上させるものであるため、その拡径した部分は体腔内の壁に対して引っかかりやすくなってしまい、体腔内における通過性の向上という点においては未だ改善の余地があった。
【0008】
また、特許文献1のカテーテルおよび特許文献2の医療技術用器具のいずれにおいても、バルーンやステント等の医療用具を処置対象である処置部に搬送した後にその医療用具を処置部に載置するため、医療用具が通過できるだけの大きさの内径を確保しておく必要があった。
【0009】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、処置部に搬送する際に体腔の壁の損傷を防ぎやすくすることができ、体腔内における通過性も向上させやすくすることができるカテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決できた本発明のカテーテルの一実施態様は、遠位端と近位端を有し、長手方向に延在している内腔を備えている第1部材と、第1部材の遠位部に設けられており、環状に形成され、外表面、内表面および内部空間を有し、内径が第1部材の内径よりも小さい袋状体と、袋状体の内部空間に配置されている第2部材と、を有しており、第1部材は、第2部材に対して長手方向に移動可能であり、袋状体の内部に第2部材が配置されている状態において、袋状体の内部空間側の表面の少なくとも一部は、第2部材の表面と接触しており、袋状体の内表面と第2部材の外表面とが接触している状態における袋状体の最小内径は、第2部材が袋状体の近位端よりも近位側に位置している状態における袋状体の最小内径よりも大きい点に要旨を有する。まず、第2部材が袋状体の近位端よりも近位側に位置している状態のカテーテルを処置部まで搬送する。第2部材が袋状体の近位端よりも近位側に位置していることにより、袋状体の内径が小さい状態となる。袋状体の内径が小さい状態であることにより、カテーテルを処置部まで搬送する際に、カテーテルが体腔の壁に接触しにくくなって体腔の壁を傷付けにくく、また、カテーテルが体腔の壁に引っ掛かりにくくすることができる。さらに、カテーテルが処置部へ到達した後に、第2部材の外表面が袋状体の内表面と接触している状態とすることにより、袋状体の最小内径が、第2部材が袋状体の近位端よりも近位側に位置している状態での袋状体の最小内径よりも大きくなる。その結果、第1部材の内腔にバルーンやステント、バスケット、針等の医療用具を配置して処置部まで搬送する場合に、袋状体から医療用具を突出させやすくすることができる。
【0011】
本発明のカテーテルにおいて、第1部材の延在方向の中心軸を中心とした長手方向に垂直な断面における第2部材の表面と接する最大の円の直径は、袋状体に外力が加わっていない自然状態における袋状体の最小内径よりも大きいことが好ましい。
【0012】
本発明のカテーテルにおいて、第1部材は、内腔を形成している壁を有しており、第1部材の壁内に、第2部材が挿通される挿通路が形成されていることが好ましい。
【0013】
本発明のカテーテルにおいて、第1部材は、外筒と、外筒の内腔に配置されている内筒と、を有しており、挿通路は、外筒の内表面および内筒の外表面によって区画されている空間であることが好ましい。
【0014】
本発明のカテーテルにおいて、内部空間は、挿通路と連通していることが好ましい。
【0015】
本発明のカテーテルにおいて、内部空間は、第1部材の内腔と連通していないことが好ましい。
【0016】
本発明のカテーテルにおいて、第1部材における袋状体の近位端から10cm近位側までの領域、および第2部材の遠位端から10cm近位側までの領域の少なくとも一方にX線不透過部を有していることが好ましい。
【0017】
本発明のカテーテルにおいて、第2部材の遠位端から10cm近位側までの領域に配されているX線不透過部の数は、第1部材における袋状体の近位端から10cm近位側までの領域に配されているX線不透過部の数よりも多いことが好ましい。
【0018】
本発明のカテーテルにおいて、少なくとも袋状体に、第1形状記憶部材が設けられており、第1形状記憶部材の弾性は、袋状体の弾性よりも高く、第1形状記憶部材に外力が加わっていない自然状態において、第1部材の延在方向の中心軸を中心とした長手方向に垂直な断面における第1形状記憶部材の表面と接する最小の円の直径は、第1部材の内径よりも小さいことが好ましい。
【0019】
本発明のカテーテルにおいて、第2部材は、少なくともその遠位部に第2形状記憶部を有しており、第2形状記憶部に外力が加わっていない自然状態における第2形状記憶部の、第1部材の延在方向の中心軸を中心とした長手方向に垂直な断面における第2形状記憶部の表面と接する最大の円の直径は、第1部材の延在方向の中心軸を中心とした長手方向に垂直な断面における第2部材の表面と接する最大の円の直径よりも大きいことが好ましい。
【0020】
本発明のカテーテルにおいて、第2部材は、長手方向に延在している内腔を備えていることが好ましい。
【0021】
本発明のカテーテルにおいて、第1線状部材を有しており、第1線状部材は、第1部材の近位部に固定されていることが好ましい。
【0022】
本発明のカテーテルにおいて、最大外径が第1部材の最大外径よりも小さい筒状部材をさらに有し、筒状部材の遠位部は、第2部材の近位部に固定されており、第1線状部材は、筒状部材の内腔に配置されていることが好ましい。
【0023】
本発明のカテーテルにおいて、第2線状部材を有しており、第2線状部材は、第2部材の近位部に固定されていることが好ましい。
【0024】
本発明のカテーテルにおいて、最大外径が第1部材の最大外径よりも小さい筒状部材をさらに有し、筒状部材の遠位部は、第1部材の近位部に固定されており、第2線状部材は、筒状部材の内腔に配置されていることが好ましい。
【0025】
本発明のカテーテルにおいて、第2部材は、第2部材の近位部に、長手方向に垂直な方向から観察したときの径方向の長さが近位側に向かって短くなっている第2減径領域を有していることが好ましい。
【0026】
本発明のカテーテルにおいて、第1部材は、第1部材の近位部に、長手方向に垂直な方向から観察したときの径方向の長さが近位側に向かって短くなっている第1減径領域を有していることが好ましい。
【0027】
本発明のカテーテルにおいて、第1部材の内腔に、第1部材に対して移動可能な状態で配置されているシャフトと、シャフトの遠位部に設けられており、径方向に拡張する拡張部材と、を備えていることが好ましい。
【0028】
本発明のカテーテルにおいて、第1部材の内腔におけるシャフトの長手方向への移動を抑制する制御機構をさらに備えていることが好ましい。
【0029】
本発明のカテーテルにおいて、拡張部材は、外面にコーティング層が形成されているバルーンまたはステントであることが好ましい。
【0030】
本発明のカテーテルにおいて、コーティング層は、生理活性薬剤が含まれていることが好ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明のカテーテルは、バルーンやステント、バスケット、針等の医療用具を処置部まで搬送するような場合であっても医療用具を突出させやすく、処置部に搬送する際に体腔の壁の損傷を防ぎやすくすることができ、体腔内における通過性も向上させやすくすることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施の形態に係るカテーテルの一例を示す側面図を表す。
図2図1に示すカテーテルの長手方向に平行な断面図であって、第2部材が袋状体の近位端よりも近位側に位置している状態を表す。
図3図1に示すカテーテルにおける第2部材の側面図を表す。
図4図3に示す第2部材のIV-IV断面図を表す。
図5図3に示す第2部材の変形例の側面図を表す。
図6図5に示す第2部材のVI-VI断面図を表す。
図7図1に示すカテーテルの長手方向に平行な断面図であって、袋状体の内部に第2部材が配置されている状態を表す。
図8図7に示すカテーテルのVIII-VIII断面図を表す。
図9】本発明の他の実施の形態に係るカテーテルの長手方向に平行な断面図を表す。
図10】本発明のさらに他の実施の形態に係るカテーテルの長手方向に平行な断面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0034】
本発明のカテーテルの一実施態様は、遠位端と近位端を有し、長手方向に延在している内腔を備えている第1部材と、第1部材の遠位部に設けられており、環状に形成され、外表面、内表面および内部空間を有し、内径が第1部材の内径よりも小さい袋状体と、袋状体の内部空間に配置されている第2部材と、を有しており、第1部材は、第2部材に対して長手方向に移動可能であり、袋状体の内部に第2部材が配置されている状態において、袋状体の内部空間側の表面の少なくとも一部は、第2部材の表面と接触しており、袋状体の内表面と第2部材の外表面とが接触している状態における袋状体の最小内径は、第2部材が袋状体の近位端よりも近位側に位置している状態における袋状体の最小内径よりも大きい点に要旨を有する。
【0035】
図1図10を参照して本発明の実施の形態に係るカテーテルの全体構成について説明する。図1図2図8図10では、第1部材10および第2部材20を有しているカテーテル1を示す。本図面においては、第1部材10の長手方向をx、径方向をyで示している。径方向yは、長手方向xに垂直な方向であるが、ここでは長手方向xに垂直な一方向のみを示している。
【0036】
本明細書において、近位側とは第1部材10の延在方向に対して使用者の手元側を指し、遠位側とは近位側の反対側、即ち処置対象側を指す。また、各部材の遠位部とは各部材のうちの遠位側半分を指し、各部材の近位部とは各部材のうちの近位側半分を指す。
【0037】
図1は本発明の実施の形態に係るカテーテル1の一例を示す側面図であり、図2はカテーテル1の長手方向xに平行な断面図であって、第2部材20が袋状体30の近位端30pよりも近位側に位置している状態を表す。
【0038】
図1および図2に示すように、カテーテル1は、第1部材10、袋状体30、および第2部材20を有している。第1部材10は、遠位端10dと近位端10pを有し、長手方向xに延在している内腔を備えている。
【0039】
第1部材10は、可撓性を有していることが好ましい。第1部材10が可撓性を有していることにより、第1部材10を体内に挿入した際に、体腔の形状に沿って第1部材10を変形させることができる。また、第1部材10は、弾性を有していることが好ましい。第1部材10が弾性を有していることにより、体腔の形状に合わせて第1部材10を変形させても、第1部材10の形状を保持することができ、第1部材10の内腔を潰れにくくすることができる。
【0040】
第1部材10としては、例えば、一または複数の線材を所定のパターンで配置することによって形成された中空体、上記中空体の内側表面または外側表面の少なくともいずれか一方に樹脂をコーティングしたもの、樹脂チューブ、これらを長手方向xに接続したもの等が挙げられる。線材が所定のパターンで配置された中空体としては、線材が単に交差される、または編み込まれる、もしくは金属チューブや高分子材料からなるチューブをレーザー等で切り抜き加工することによって形成された網目構造を有する筒状体や、線材が巻回されたコイル等が示される。線材は、一または複数の単線であってもよく、一または複数の撚線であってもよい。樹脂チューブは、例えば、押出成形によって製造することができる。中でも、第1部材10は、樹脂チューブであることが好ましい。第1部材10が樹脂チューブであることにより、可撓性と弾性の両方が優れた第1部材10とすることが容易となる。
【0041】
第1部材10が樹脂チューブである場合、第1部材10は、単層または複数層から構成することができる。第1部材10は、長手方向xまたは周方向の一部が単層から構成されており、他部が複数層から構成されていてもよい。
【0042】
第1部材10を構成する材料としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、PET等のポリエステル系樹脂、PEEK等の芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、PTFEやPFA、ETFE等のフッ素系樹脂等の合成樹脂や、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケルチタン合金等の金属を用いることができる。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
第1部材10の外表面に、親水性ポリマーのコーティングが施されていることが好ましい。第1部材10の外表面に親水性ポリマーのコーティングが施されていることにより、第1部材10の外表面の滑り性が向上し、挿通性のよいカテーテル1とすることができる。
【0044】
親水性ポリマーとしては、例えば、ポリ2-ヒドロキシエチルメタアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体等の無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0045】
第1部材10の内表面に、フッ素系樹脂およびポリオレフィン系樹脂の少なくとも一方を含む層を有していることが好ましい。第1部材10の内面の一部のみがフッ素系樹脂やポリオレフィン系樹脂によって構成されていてもよいし、第1部材10の内面全体がフッ素系樹脂やポリオレフィン系樹脂によって構成されていてもよい。第1部材10の内表面にフッ素系樹脂およびポリオレフィン系樹脂の少なくとも一方を含む層を有していることにより、第1部材10の内表面の摺動性が高まり、第1部材10の内腔に配置される部材の移動や放出が行いやすくなる。
【0046】
第1部材10が、内表面にフッ素系樹脂およびポリオレフィン系樹脂の少なくとも一方を含む層を有する構成とするには、例えば、第1部材10を多層構造として、最内層を構成する材料にフッ素系樹脂およびポリオレフィン系樹脂の少なくとも一方を用いることや、第1部材10の内表面に、フッ素系樹脂およびポリオレフィン系樹脂の少なくとも一方を含むコーティングを施すこと等が挙げられる。
【0047】
第1部材10の長手方向xの長さは、第1部材10の内腔よりも外方に配置する第2部材20の長手方向xの長さや、第1部材10の内腔に配置する物品の長手方向xの長さ等に応じて適切な長さを選択することができる。例えば、第1部材10の長手方向xの長さは、30mm以上、700mm以下とすることができる。
【0048】
第1部材10の外径は、適宜、適切な大きさを選択することができる。第1部材10の外径は、例えば、1mm以上、5mm以下とすることができ、2mm以下とすることが好ましい。第1部材10の外径を上記の範囲に設定することにより、第1部材10の外径を小さく保つことができる。
【0049】
図2および図8に示すように、袋状体30は、第1部材10の遠位部に設けられており、環状に形成され、外表面30A、内表面30Bおよび内部空間30Cを有する。袋状体30の内径は、第1部材10の内径よりも小さい。袋状体30は環状に形成されている袋状の部材であり、第1部材10よりも外径が小さくなっている部分を有している。袋状体30は、長手方向xから見た時の形状が環状であることが好ましい。
【0050】
袋状体30を構成する材料としては、第1部材10と同様の合成樹脂、金属等を用いることができる。
【0051】
図2に示すように、袋状体30の近位部が第1部材10の遠位部と接続されていてもよく、袋状体30の近位端30pが第1部材10の遠位端10dと接続されていてもよい。
【0052】
袋状体30は、袋状体30に外力が加わっていない自然状態において、外表面30Aから内表面30Bまでの最短距離が第1部材10の外表面から内表面までの最短距離よりも小さいことが好ましい。袋状体30の外表面30Aから内表面30Bまでの最短距離が第1部材10の外表面から内表面までの最短距離よりも小さいことにより、カテーテル1の遠位端部の外径を小さくすることができ、カテーテル1の挿通性を向上させることができる。
【0053】
袋状体30のうち、第1部材10の外表面から内表面までの最短距離よりも外表面30Aから内表面30Bまでの最短距離が小さくなっている部分は、袋状体30の遠位部に位置していることが好ましく、袋状体30の遠位端部に位置していることがより好ましく、袋状体30の遠位端30dに位置していることがさらに好ましい。袋状体30がこのように構成されていることにより、袋状体30のうち特に遠位側の外径が小さいままの状態が維持されやすくなることとなるため、体腔の壁に引っかかりにくくすることができ、処置部まで搬送される際にカテーテル1が体腔の壁を損傷させることを防ぎやすくすることができる。また、体腔内におけるカテーテル1の通過性も向上させやすくすることができる。
【0054】
袋状体30は環状に形成されているものであるが、例えば、袋状体30は中空円錐台状の形状であってもよい。袋状体30は環状に形成されており、かつ、袋状体30の外部と連通する内部空間30Cを有していてもよい。
【0055】
図2および図8に示すように、内部空間30Cは環状の袋状体30の壁内に形成されている空間である。より詳細には、内部空間30Cは、袋状体30の内腔を形成する壁内に形成されている空間である。内部空間30Cは袋状体30の壁内において周方向全体に存在していることが好ましい。なお、図示していないが、内部空間30Cは袋状体30の壁内において周方向の一部にのみ存在していてもよい。
【0056】
袋状体30の遠位端30dでの外表面30Aから内表面30Bまでの最短距離は、袋状体30の近位端30pでの外表面30Aから内表面30Bまでの最短距離よりも小さいことが好ましい。袋状体30の遠位端30dでの外表面30Aから内表面30Bまでの最短距離が、袋状体30の近位端30pでの外表面30Aから内表面30Bまでの最短距離よりも小さいことにより、袋状体30の遠位側の剛性が、袋状体30の近位側の剛性よりも低くなり、第2部材20と袋状体30との接触によって、袋状体30の最小内径を変化させやすくすることができる。
【0057】
袋状体30の近位端30pの厚みは、本体部11の遠位端11dの厚み等に応じて適切な厚みを選択することができる。袋状体30の近位端30pの厚みは、本体部11の遠位端11dの厚みと同程度とすることができ、例えば、0.01mm以上、0.5mm以下とすることができる。
【0058】
袋状体30は、近位側から遠位側に向かって先細りとなっているテーパー状であることが好ましい。袋状体30がテーパー状であることにより、カテーテル1の遠位端部の外径を小さくすることができ、カテーテル1の挿通性を高めることができる。
【0059】
図1および図2図7および図8に示すように、第2部材20は、袋状体30の内部空間30Cに配置されており、第1部材10は、第2部材20に対して長手方向xに移動可能である。
【0060】
図3は第2部材20の側面図であり、図4図3に示す第2部材20の長手方向xに垂直な断面図である。また、図5図3に示す第2部材20の変形例であって、第2部材20の側面図であり、図6図5に示す第2部材20の長手方向xに垂直な断面図である。
【0061】
第2部材20としては、例えば、図3および図4に示すような筒状体、図5および図6に示すような線材によって形成されているもの、一または複数の線材を所定のパターンで配置することによって形成された中空体、上記中空体の内側表面または外側表面の少なくともいずれか一方に樹脂をコーティングしたもの、これらを長手方向xに接続したもの等が挙げられる。図5および図6に示すように、第2部材20が線材によって構成されている場合、線材の数は1つであってもよく、複数であってもよい。線材が所定のパターンで配置された中空体としては、線材が単に交差される、または編み込まれる、もしくは金属チューブや高分子材料からなるチューブをレーザー等で切り抜き加工することによって形成された網目構造を有する筒状体や、線材が巻回されたコイル等が示される。線材は、一または複数の単線であってもよく、一または複数の撚線であってもよい。
【0062】
第2部材20を構成する材料としては、例えば、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケルチタン合金等の金属、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、PET等のポリエステル系樹脂、PEEK等の芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、PTFEやPFA、ETFE等のフッ素系樹脂等の合成樹脂を用いることができる。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
第2部材20の長手方向xの長さは、第1部材10の長手方向xの長さ等に応じて適切な長さを選択することができる。例えば、第2部材20の長手方向xの長さは、15mm以上、600mm以下とすることができる。
【0064】
第2部材20の外径は、第2部材20と接触する第1部材10の外径や袋状体30の外径等に応じて、適宜、適切な大きさを選択することができる。例えば、第2部材20の外径は、0.5mm以上、4.8mm以下とすることができる。第2部材20の内径も、適宜、適切な大きさを選択することができる。
【0065】
第2部材20の厚みは、適切な厚みを選択することができ、例えば、0.01mm以上、0.4mm以下とすることができる。第2部材20の厚みの平均値は、例えば、0.075mmとすることができる。
【0066】
図7はカテーテル1の長手方向xに平行な断面図であって、袋状体30の内部に第2部材20が配置されている状態を表しており、図8はカテーテル1の長手方向xに垂直な断面図である。図7および図8に示すように、袋状体30の内部に第2部材20が配置されている状態において、袋状体30の内部空間30C側の表面の少なくとも一部は、第2部材20の表面と接触している。
【0067】
図2図7および図8に示すように、袋状体30の内表面と第2部材20の外表面とが接触している状態における袋状体30の最小内径は、第2部材20が袋状体30の近位端30pよりも近位側に位置している状態における袋状体30の最小内径よりも大きい。
【0068】
袋状体30の内表面と第2部材20の外表面とが接触している状態における袋状体30の最小内径は、第2部材20が袋状体30の近位端30pよりも近位側に位置している状態における袋状体30の最小内径よりも大きいことにより、第2部材20を袋状体30の近位端30pよりも遠位側に移動させることによって、袋状体30の内径を拡径させることができる。
【0069】
まず、第2部材20が袋状体30の近位端30pよりも近位側に位置している状態のカテーテル1を処置部まで搬送する。第2部材20が袋状体30の近位端30pよりも近位側に位置していることにより、袋状体30の内径が小さい状態となる。袋状体30の内径が小さい状態であることにより、カテーテル1を処置部まで搬送する際に、カテーテル1が体腔の壁に接触しにくくなって体腔の壁を傷付けにくく、また、カテーテル1が体腔の壁に引っ掛かりにくくすることができる。さらに、カテーテル1が処置部へ到達した後に、第2部材20の外表面が袋状体30の内表面と接触している状態とすることにより、袋状体30の最小内径が、第2部材20が袋状体30の近位端30pよりも近位側に位置している状態での袋状体30の最小内径よりも大きくなる。その結果、第1部材10の内腔にバルーンやステント、バスケット、針等の医療用具を配置して処置部まで搬送する場合に、袋状体30から医療用具を突出させやすくすることができる。
【0070】
袋状体30の最小内径は、袋状体30の遠位端30dに位置していることが好ましい。つまり、袋状体30の最も内径が小さい部分は、袋状体30の遠位端30dであることが好ましい。袋状体30の最も内径が小さい部分が袋状体30の遠位端30dであることにより、カテーテル1の遠位端の外径が小さくなり、カテーテル1の挿通性を高めることができる。
【0071】
図示していないが、第1部材10と第2部材20との間に、潤滑性コーティング層を有していることが好ましい。第1部材10と第2部材20との間に潤滑性コーティング層を有していることにより、第1部材10に対する長手方向xへの第2部材20の移動を円滑に行うことが可能となる。潤滑性コーティング層を構成する材料としては、シリコーン、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等が挙げられ、中でも、シリコーンを好適に用いることができる。
【0072】
袋状体30の内表面と第2部材20の外表面とが接触している状態における袋状体30の最小内径は、第2部材20が袋状体30の近位端30pよりも近位側に位置している状態における袋状体30の最小内径の1.1倍以上であることが好ましく、1.3倍以上であることがより好ましく、1.5倍以上であることがさらに好ましい。袋状体30の内表面と第2部材20の外表面とが接触している状態と、第2部材20が袋状体30の近位端30pよりも近位側に位置している状態と、における袋状体30の最小内径の比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、袋状体30の内表面と第2部材20の外表面とを接触させることによって、袋状体30を十分に拡径させることができ、袋状体30から医療用具を突出させやすくすることができる。なお、袋状体30の内表面と第2部材20の外表面とが接触している状態と、第2部材20が袋状体30の近位端30pよりも近位側に位置している状態と、における袋状体30の最小内径の比率の上限値は特に限定されないが、例えば、100倍以下、90倍以下、80倍以下とすることができる。
【0073】
第2部材20が袋状体30の近位端30pよりも近位側に位置している状態における袋状体30の最小内径は、第1部材10の内径の30%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。袋状体30の最小内径と第1部材10の内径との比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、袋状体30の最小内径を小さい状態としつつ、袋状体30の内腔を確保することができ、袋状体30の内方にガイドワイヤ等の物品を挿通しやすくすることができる。また、第2部材20が袋状体30の近位端30pよりも近位側に位置している状態における袋状体30の最小内径は、第1部材10の内径の70%以下であることが好ましく、65%以下であることがより好ましく、60%以下であることがさらに好ましい。袋状体30の最小内径と本体部11の内径との比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、袋状体30の最小内径が第1部材10に対して十分に小さい状態となりやすくなる。その結果、袋状体30が体腔の壁等に接触しにくくなり、カテーテル1の挿通性を高めることができる。
【0074】
第2部材20が袋状体30の近位端30pよりも近位側に位置している状態における袋状体30の最小内径は、適切な大きさを選択することができるが、例えば、0.3mm以上、2.0mm以下とすることができる。
【0075】
第2部材20が袋状体30の近位端30pよりも近位側に位置している状態における袋状体30の最小外径についても、袋状体30の最小内径等に応じて、適宜、適切な大きさを選択することができる。第2部材20が袋状体30の近位端30pよりも近位側に位置している状態における袋状体30の最小外径は、例えば、0.31mm以上、3.0mm以下とすることができる。
【0076】
袋状体30の内表面と第2部材20の外表面とが接触している状態における袋状体30の最小内径は、第1部材10の内径等に応じて適切な大きさを選択することができる。袋状体30の内表面と第2部材20の外表面とが接触している状態における袋状体30の最小内径は、第1部材10の内径と同程度とすることができ、例えば、0.4mm以上、0.8mm以上、1.2mm以上とすることができ、また、4.0mm以下とすることができる。
【0077】
袋状体30の内表面と第2部材20の外表面とが接触している状態における、袋状体30の長手方向xの長さは、適宜、適切な長さを選択することができるが、例えば、1mm以上、20mm以下とすることができる。
【0078】
図1および図2では、シャフト90の遠位側から近位側に至る途中までガイドワイヤ120を挿通する、所謂ラピッドエクスチェンジ型(RX型)の構成例を示している。本発明のカテーテル1は、ラピッドエクスチェンジ型の他、シャフト90の遠位側から近位側にわたってガイドワイヤ120を挿通する、所謂オーバーザワイヤ型(OTW型)であっても適用することが可能である。
【0079】
図6に示すように、第1部材10の延在方向の中心軸を中心とした長手方向xに垂直な断面における第2部材20の表面と接する最大の円C2の直径は、袋状体30に外力が加わっていない自然状態における袋状体30の最小内径よりも大きいことが好ましい。第2部材20の表面と接する最大の円C2の直径が自然状態における袋状体30の最小内径よりも大きいことにより、袋状体30の内表面と第2部材20の外表面とが接触している状態となった際に、第2部材20によって袋状体30を十分に拡径させやすくすることができ、第1部材10の内腔に配置されている医療用具を袋状体30から円滑に突出させやすくなる。
【0080】
第1部材10の延在方向の中心軸を中心とした長手方向xに垂直な断面における第2部材20の表面と接する最大の円C2の直径は、第1部材10に外力が加わっていない自然状態における袋状体30の最小内径の1.05倍以上であることが好ましく、1.1倍以上であることがより好ましく、1.3倍以上であることがさらに好ましい。第2部材20の表面と接する最大の円C2の直径と自然状態における袋状体30の最小内径との比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、第2部材20の外表面が袋状体30の内表面と接触した際に、袋状体30が拡径しやすくなる。なお、第2部材20の表面と接する最大の円C2の直径と自然状態における袋状体30の最小内径との比率の上限値は特に限定されないが、例えば、100倍以下、90倍以下、80倍以下とすることができる。
【0081】
図2に示すように、第1部材10は、内腔を形成している壁を有しており、第1部材10の壁内に、第2部材20が挿通される挿通路14が形成されていることが好ましい。第1部材10の壁内に挿通路14が形成されていることにより、第2部材20を挿通する経路を形成するための部材を別途設ける必要がなくなるため、カテーテル1のさらなる細径化を図ることができる。
【0082】
図2および図8に示すように、第1部材10は、外筒15と、外筒15の内腔に配されている内筒16を有しており、挿通路14は、外筒15の内表面と内筒16の外表面によって区画されている空間であってもよい。第1部材10が外筒15と内筒16を有している構成とすることで、挿通路14を形成するための部材を別途設ける必要がなくなり、カテーテル1を細くすることができる。
【0083】
外筒15の厚みは、例えば、0.010mm以上、0.015mm以上、0.020mm以上とすることができる。また、外筒15の厚みは、例えば、0.500mm以下、0.450mm以下、0.400mm以下とすることができる。
【0084】
内筒16の厚みは、例えば、0.010mm以上、0.015mm以上、0.020mm以上とすることができる。また、内筒16の厚みは、例えば、0.500mm以下、0.450mm以下、0.400mm以下とすることができる。
【0085】
図7に示すように、長手方向xに垂直な断面において、外筒15の内表面と内筒16の外表面との距離は0.01mm以上、1.0mm以下であることが好ましい。外筒15の内表面と内筒16の外表面との距離を上記の範囲に設定することにより、第1部材10の外径が大きくなり過ぎないようにしながら挿通路14の広さを十分に確保することができ、第2部材20の長手方向xへの移動を円滑に行うことが可能となる。
【0086】
図2および図8に示すように、袋状体30の内部空間30Cは、挿通路14と連通していることが好ましい。内部空間30Cが挿通路14と連通していることにより、挿通路14に挿通されている第2部材20を袋状体30の内部空間30Cへ送り込むことが行いやすくなる。
【0087】
図2および図8に示すように、内部空間30Cは、第1部材10の内腔と連通していないことが好ましい。また、内部空間30Cは袋状体30の内腔とも連通していないことも好ましい。内部空間30Cが第1部材10の内腔や袋状体30の内腔と連通していないことにより、内部空間30Cに挿通させる第2部材20の移動を円滑に行いやすく、また、第2部材20が意図せず第1部材10の内腔や袋状体30の内腔に入り込んでしまうことを防止することができる。
【0088】
図2図7および図9に示すように、第1部材10における袋状体30の近位端30pから10cm近位側までの領域A1、および第2部材20の遠位端20dから10cm近位側までの領域A2の少なくとも一方にX線不透過部40を有していることが好ましい。領域A1および領域A2の少なくとも一方にX線不透過部40を有していることにより、X線撮像装置を用いることによってカテーテル1の遠位端部の位置を視認することが可能となる。
【0089】
X線不透過部40は、X線不透過性物質を含む部分である。X線不透過性物質としては、例えば、鉛、バリウム、ヨウ素、タングステン、金、白金、イリジウム、ステンレス、チタン、コバルトクロム合金等よりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0090】
X線不透過部40は、X線不透過性物質から形成される部分を含んでいるか、もしくは合成樹脂等の素材にX線不透過性物質を混練して形成された部分であってもよい。中でも、X線不透過部40は、X線不透過性物質を含むX線不透過マーカーによって形成されていることが好ましい。X線不透過部40がX線不透過マーカーであることにより、カテーテル1の製造において、目的の位置に精度よくX線不透過部40を形成しやすくすることができる。
【0091】
X線不透過部40を形成するX線不透過マーカーの形状は、円筒状、多角筒状、筒に切れ込みが入った断面C字状の形状、線材を巻回したコイル形状等が挙げられる。中でも、X線不透過マーカーの形状は、筒状であることが好ましい。X線不透過マーカーの形状が筒状であることにより、X線撮像装置によるX線不透過部40の視認性を向上させることができる。
【0092】
第1部材10における袋状体30の近位端30pから10cm近位側までの領域A1に配されているX線不透過部40の数は、1つであってもよく、複数であってもよい。また、第2部材20の遠位端20dから10cm近位側までの領域A2に配されているX線不透過部40の数も、1つであってもよく、複数であってもよい。
【0093】
X線不透過部40は、第1部材10における袋状体30の近位端30pから10cm近位側までの領域A1および第2部材20の遠位端20dから10cm近位側までの領域A2に有していることが好ましい。つまり、X線不透過部40は、領域A1と領域A2の両方に配されていることが好ましい。X線不透過部40が、領域A1と領域A2の両方に配されていることにより、X線撮像装置によって第1部材10と第2部材20の両方の遠位端部の位置を確認することができ、手技を行いやすくすることができる。
【0094】
図2図7および図9に示すように、第2部材20の遠位端20dから10cm近位側までの領域A2に配されているX線不透過部40の数は、第1部材10における袋状体30の近位端30pから10cm近位側までの領域A1に配されているX線不透過部40の数よりも多いことが好ましい。領域A2に配されているX線不透過部40の数が領域A1に配されているX線不透過部40の数よりも多いことにより、カテーテル1の遠位端部の位置をX線撮像装置によって確認しやすくすることができる。
【0095】
図2図7および図9に示すように、少なくとも袋状体30に、第1形状記憶部材51が設けられており、第1形状記憶部材51の弾性は、袋状体30の弾性よりも高く、第1形状記憶部材51に外力が加わっていない自然状態において、第1部材10の延在方向の中心軸を中心とした長手方向xに垂直な断面における第1形状記憶部材51の表面と接する最小の円の直径は、第1部材10の内径よりも小さいことが好ましい。ここで弾性とは、弾性限界におけるひずみの大きさを指し、弾性が高いことは、大きなひずみを与えても元の形状に戻り、復元力が大きいことを表す。第1形状記憶部材51は、袋状体30よりも弾性が高く、第1形状記憶部材51に外力を加えて変形させても、第1形状記憶部材51に加えている外力を除くと、自然状態での第1形状記憶部材51の形状に戻りやすいものである。第1形状記憶部材51が少なくとも袋状体30に設けられていることにより、第2部材20の外表面が袋状体30の内表面に接触している状態から、第1部材10を処置部側に押し込む等して第2部材20の外表面が袋状体30の内表面に接触している面積が減少するに従って、第1形状記憶部材51によって袋状体30が縮径しやすくなり、袋状体30を閉じやすくすることができる。
【0096】
第1形状記憶部材51を構成する材料としては、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、Ni-Ti合金等の形状記憶合金、形状記憶樹脂等が挙げられる。中でも、第1形状記憶部材51を構成する材料は、形状記憶合金であることが好ましく、Ni-Ti合金であることがより好ましい。第1形状記憶部材51を構成する材料がNi-Ti合金であることにより、第1形状記憶部材51が形状記憶性および弾性に優れたものとなる。
【0097】
第1形状記憶部材51に外力が加わっていない自然状態において、第1部材10の延在方向の中心軸を中心とした長手方向xに垂直な断面における第1形状記憶部材51の表面と接する最小の円の直径は第1部材10の内径の99%以下であることが好ましく、97%以下であることがより好ましく、95%以下であることがさらに好ましい。自然状態における第1形状記憶部材51の表面と接する最小の円の直径と第1部材10の内径との比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、袋状体30を第1形状記憶部材51によって縮径しやすくすることができる。また、第1形状記憶部材51に外力が加わっていない自然状態において、第1部材10の延在方向の中心軸を中心とした長手方向xに垂直な断面における第1形状記憶部材51の表面と接する最小の円の直径は第1部材10の内径の1%以上であることが好ましく、3%以上であることがより好ましく、5%以上であることがさらに好ましい。自然状態における第1形状記憶部材51の表面と接する最小の円の直径と第1部材10の内径との比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、自然状態における第1形状記憶部材51の表面と接する最小の円の直径が小さくなりすぎず、第2部材20に対する第1部材10の長手方向xへの移動を円滑に行いやすくなる。
【0098】
第1形状記憶部材51は、袋状体30と第1部材10の両方にわたって設けられていることが好ましい。袋状体30と第1部材10の両方に第1形状記憶部材51が設けられていることにより、第1形状記憶部材51に外力を加えて変形させた後に第1形状記憶部材51から外力を除いた際に、第1形状記憶部材51が元の形状に戻りやすくなり、袋状体30の縮径が行いやすくなる。
【0099】
図2図7および図9に示すように、第2部材20は、少なくともその遠位部に第2形状記憶部52を有しており、第2形状記憶部52に外力が加わっていない自然状態における第2形状記憶部52の、第1部材10の延在方向の中心軸を中心とした長手方向xに垂直な断面における第2形状記憶部52の表面と接する最大の円の直径は、第1部材10の延在方向の中心軸を中心とした長手方向xに垂直な断面における第2部材20の表面と接する最大の円の直径よりも大きいことが好ましい。第2形状記憶部52は、第2形状記憶部52に外力を加えて変形させても、第2形状記憶部52に加えている外力を除くと、自然状態での第2形状記憶部52の形状に戻りやすいものである。第2部材20が、第2部材20の少なくとも遠位部に第2形状記憶部52を有していることにより、第2形状記憶部52によって、自然状態における第1部材10の延在方向の中心軸を中心とした長手方向xに垂直な断面における第2部材20の表面と接する最大の円の直径が大きくなりやすくなる。そのため、第2部材20によって、袋状体30を拡径させやすくすることができる。
【0100】
第2形状記憶部52は、第2部材20の少なくとも遠位部に設けられている、第2部材20とは別の部材であってもよく、第2部材20の少なくとも一部であってもよい。第2部材20の全体が第2形状記憶部52であってもよい。
【0101】
第2形状記憶部52を構成する材料としては、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、Ni-Ti合金等の形状記憶合金、形状記憶樹脂等が挙げられる。中でも、第2形状記憶部52を構成する材料は、形状記憶合金であることが好ましく、Ni-Ti合金であることがより好ましい。第2形状記憶部52を構成する材料がNi-Ti合金であることにより、形状記憶性および弾性に優れた第2形状記憶部52とすることができる。
【0102】
第2形状記憶部52に外力が加わっていない自然状態における第2形状記憶部52の、第1部材10の延在方向の中心軸を中心とした長手方向xに垂直な断面における第2形状記憶部52の表面と接する最大の円の直径は、第1部材10の延在方向の中心軸を中心とした長手方向xに垂直な断面における第2部材20の表面と接する最大の円の直径の1.1倍以上であることが好ましく、1.2倍以上であることがより好ましく、1.3倍以上であることがさらに好ましい。自然状態における第2形状記憶部52の表面と接する最大の円の直径と、第2部材20の表面と接する最大の円の直径との比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、自然状態における第2部材20の表面と接する最大の円の直径を大きくなりやすくすることができる。また、第2形状記憶部52に外力が加わっていない自然状態における第2形状記憶部52の、第1部材10の延在方向の中心軸を中心とした長手方向xに垂直な断面における第2形状記憶部52の表面と接する最大の円の直径は、第1部材10の延在方向の中心軸を中心とした長手方向xに垂直な断面における第2部材20の表面と接する最大の円の直径の100倍以下とすることが好ましく、90倍以下とすることがより好ましく、80倍以下とすることがさらに好ましい。自然状態における第2形状記憶部52の表面と接する最大の円の直径と、第2部材20の表面と接する最大の円の直径との比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、第2形状記憶部52の表面と接する最大の円の直径が大きくなりすぎず、第2部材20に対する第1部材10の長手方向xへの移動を円滑に行いやすくなる。
【0103】
図2図7および図9に示すように、第2部材20は、長手方向xに延在している内腔を備えていることが好ましい。つまり、図3および図4に示すように、第2部材20は、筒状体であることが好ましい。第2部材20が内腔を備えていることにより、第2部材20の外表面と袋状体30の内表面とが接触する面積を大きくすることができる。
【0104】
第2部材20が筒状体である場合、第2部材20は、単層または複数層から構成することができる。第2部材20は、長手方向xまたは周方向の一部が単層から構成されており、他部が複数層から構成されていてもよい。
【0105】
図2および図7に示すように、カテーテル1は、さらに、第1線状部材61を有しており、第1線状部材61は、第1部材10の近位部に固定されていることが好ましい。カテーテル1が第1部材10の近位部に固定されている第1線状部材61を有していることにより、第1部材10を手元側へ引きやすくなる。第1部材10を手元側へ引くことによって、相対的に第2部材20の遠位端20dを遠位側へ移動させ、第2部材20によって袋状体30を拡径させることができる。
【0106】
第1線状部材61は、長尺の線材である。第1線状部材61を構成する線材は、単線であってもよく、複数の単線からなる撚線であってもよい。
【0107】
第1線状部材61を構成する材料は、ステンレス鋼、チタン、ニッケルチタン合金、コバルトクロム合金等、タングステン合金等の金属であることが好ましく、ステンレス鋼またはタングステン合金であることがより好ましい。第1線状部材61を構成する材料が金属であることにより、第1線状部材61が柔軟かつ剛性の高いものとすることができ、屈曲した体腔であっても第1線状部材61を引きやすくすることができる。
【0108】
第1線状部材61の長手方向xの長さは、手元から操作可能になる長さであればよく、適宜、適切な長さを選択することができる。
【0109】
長手方向xに垂直な第1線状部材61の断面形状としては、例えば、正方形、長方形、台形、円形等の形状が挙げられる。中でも、長手方向xに垂直な第1線状部材61の断面形状は、円形であることが好ましい。第1線状部材61の断面形状が円形であることにより、第1線状部材61を引く際等に第1線状部材61が他物に接触しても、第1線状部材61が他物を傷付けにくくすることができる。
【0110】
第1線状部材61の外径は、例えば、0.2mm以上、1.0mm以下とすることができる。長手方向xに垂直な第1線状部材61の断面形状が多角形である場合、第1線状部材61の外径は、第1線状部材61の断面形状の外接円の直径を指す。
【0111】
第1線状部材61を第1部材10の近位部に固定する方法としては、例えば、レーザー等による溶接、溶着、ろう付け、かしめ加工、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系等の接着剤による接着等により接合する方法、熱収縮チューブによって固定する方法等が挙げられる。中でも、第1線状部材61は、第1部材10の近位部に接着剤による接着によって固定されていることが好ましい。第1線状部材61が接着剤による接着によって第1部材10の近位部に固定されていることにより、第1線状部材61と第1部材10との接合強度を容易に高めることができる。
【0112】
図示していないが、第1線状部材61の近位側には、把持部が設けられていることが好ましい。把持部を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等の合成樹脂が挙げられる。
【0113】
図2および図7に示すように、カテーテル1は、最大外径が第1部材10の最大外径よりも小さい筒状部材82をさらに有し、筒状部材82の遠位部は、第2部材20の近位部に固定されており、第1線状部材61は、筒状部材82の内腔に配置されていることが好ましい。第1線状部材61が筒状部材82の内腔に配置されていることにより、第1線状部材61が外部へ露出しにくくなる。そのため、第1線状部材61が絡まることや他物に引っ掛かることが起こりにくく、第1線状部材61を円滑に手元側へ引くことができる。
【0114】
筒状部材82は、内腔を有する筒状の部材であって、最大外径が第1部材10の最大外径よりも小さいものである。筒状部材82の最小外径は、第1部材10の最小外径よりも小さい構成であってもよい。
【0115】
筒状部材82を構成する材料としては、第2部材20を構成する材料と同様の合成樹脂や金属等が挙げられる。筒状部材82を構成する材料は、第2部材20を構成する材料と異なる材料であってもよいが、第2部材20を構成する材料と同じ材料であることが好ましい。筒状部材82を構成する材料が第2部材20を構成する材料と同じ材料であることにより、筒状部材82と第2部材20との固定の強度を高めやすくすることができる。
【0116】
筒状部材82の長手方向xの長さは、筒状部材82の内腔に配置する第1線状部材61の長手方向xの長さ等に応じて適切な長さを選択することができる。例えば、筒状部材81の長手方向xの長さは、100mm以上、2400mm以下とすることができる。
【0117】
筒状部材82の外径は、適宜、適切な大きさを選択することができ、例えば、0.6mm以上、3.0mm以下とすることができる。中でも、筒状部材82の外径は、0.6mm以上、1.0mm以下であることが好ましい。筒状部材82の外径を上記の範囲に設定することにより、筒状部材82の外径が大きくなりにくく、筒状部材82の外径に合わせてカテーテル1の外径が大きくなることを防止することができる。
【0118】
筒状部材82の内径は、例えば、0.3mm以上、2.5mm以下とすることができる。中でも、筒状部材82の内径は、0.5mm以上、0.9mm以下であることが好ましい。筒状部材82の内径を上記の範囲に設定することにより、筒状部材82の内腔に第1線状部材61を挿通しやすく、かつ、筒状部材82の外径を小さく保つことが可能となる。
【0119】
図9に示すように、カテーテル1は、さらに、第2線状部材62を有しており、第2線状部材62は、第2部材20の近位部に固定されていることが好ましい。カテーテル1が第2部材20の近位部に固定されている第2線状部材62を有していることにより、第2部材20を処置部側へ押しやすくなる。第2部材20を処置部側へ押すことによって、第2部材20を遠位側へ移動させ、第2部材20の外表面が袋状体30の内表面と接触し、袋状体30を十分に拡径させることができる。
【0120】
第2線状部材62は、長尺の線材である。第2線状部材62を構成する線材は、単線であってもよく、複数の単線からなる撚線であってもよい。
【0121】
第2線状部材62を構成する材料は、ステンレス鋼、チタン、ニッケルチタン合金、コバルトクロム合金等、タングステン合金等の金属であることが好ましく、ステンレス鋼またはタングステン合金であることがより好ましい。第2線状部材62を構成する材料が金属であることにより、柔軟であって剛性の高い第2線状部材62とすることができ、屈曲している体腔であっても第2線状部材62が押しやすくなる。
【0122】
第2線状部材62の長手方向xの長さは、手元から操作可能になる長さや、後述する筒状部材81の内腔に挿通できる長さ等であればよく、適宜、適切な長さを選択することができる。
【0123】
長手方向xに垂直な第2線状部材62の断面形状としては、例えば、正方形、長方形、台形、円形等の形状が挙げられる。中でも、長手方向xに垂直な第2線状部材62の断面形状は、円形であることが好ましい。第2線状部材62の断面形状が円形であることにより、第2線状部材62を押す際等において第2線状部材62が他物に接触しても、第2線状部材62が他物を傷付けにくくなる。
【0124】
第2線状部材62の外径は、例えば、0.2mm以上、1.0mm以下とすることができる。長手方向xに垂直な第2線状部材62の断面形状が多角形である場合、第2線状部材62の外径は、第2線状部材62の断面形状の外接円の直径を指す。
【0125】
第2線状部材62を第2部材20の近位部に固定する方法としては、例えば、レーザー等による溶接、溶着、ろう付け、かしめ加工、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系等の接着剤による接着等により接合する方法、熱収縮チューブによって固定する方法等が挙げられる。中でも、第2線状部材62は、第2部材20の近位部に接着剤による接着によって固定されていることが好ましい。第2線状部材62が接着剤による接着によって第2部材20の近位部に固定されていることにより、第2線状部材62と第2部材20との接合強度を容易に高めやすくなる。
【0126】
図示していないが、第2線状部材62の近位側には、把持部が設けられていることが好ましい。把持部を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等の合成樹脂が挙げられる。
【0127】
図9に示すように、カテーテル1は、最大外径が第1部材10の最大外径よりも小さい筒状部材81をさらに有し、筒状部材81の遠位部は、第1部材10の近位部に固定されており、第2線状部材62は、筒状部材81の内腔に配置されていることが好ましい。第2線状部材62が筒状部材81の内腔に配置されていることにより、第2線状部材62が外部へ露出しにくくなり、第2線状部材62が絡まることや他物に引っ掛かることが起こりにくく、第2線状部材62を円滑に処置部側へ押すことができる。
【0128】
筒状部材81の遠位部を第1部材10の近位部に固定する方法としては、例えば、レーザー等による溶接、溶着、ろう付け、かしめ加工、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系等の接着剤による接着等により接合する方法等が挙げられる。中でも、筒状部材81の遠位部は、接着剤による接着によって第1部材10の近位部に固定されていることが好ましい。接着剤による接着によって筒状部材81の遠位部が第1部材10の近位部に固定されていることにより、筒状部材81および第1部材10を容易かつ強固に固定することが可能となる。
【0129】
筒状部材81は、内腔を有する筒状の部材であって、最大外径が第1部材10の最大外径よりも小さいものである。筒状部材81の最小外径は、第1部材10の最小外径よりも小さい構成であってもよい。
【0130】
筒状部材81を構成する材料としては、第1部材10を構成する材料と同様の合成樹脂や金属等が挙げられる。筒状部材81を構成する材料は、第1部材10を構成する材料と異なる材料であってもよいが、第1部材10を構成する材料と同じ材料であることが好ましい。筒状部材81を構成する材料が第1部材10を構成する材料と同じ材料であることにより、筒状部材81と第1部材10との固定の強度を高めやすくすることができる。
【0131】
筒状部材81の長手方向xの長さは、筒状部材81の内腔に配置する第2線状部材62の長手方向xの長さ等に応じて適切な長さを選択することができる。例えば、筒状部材81の長手方向xの長さは、100mm以上、2400mm以下とすることができる。
【0132】
筒状部材81の外径は、適宜、適切な大きさを選択することができ、例えば、0.6mm以上、3.0mm以下とすることができる。中でも、筒状部材81の外径は、0.6mm以上、1.0mm以下であることが好ましい。筒状部材81の外径を上記の範囲に設定することにより、筒状部材81の外径が大きくなりにくく、筒状部材81の外径に合わせてカテーテル1の外径が大きくなることを防止することができる。
【0133】
筒状部材81の内径は、例えば、0.3mm以上、2.5mm以下とすることができる。中でも、筒状部材81の内径は、0.5mm以上、0.9mm以下であることが好ましい。筒状部材81の内径を上記の範囲に設定することにより、筒状部材81の内腔に第2線状部材62を挿通しやすく、かつ、筒状部材81の外径を小さく保つことが可能となる。
【0134】
筒状部材81、82は、外面に潤滑性コーティングが施されていてもよい。潤滑性コーティングとしては、PTFEやPFA、ETFE等のフッ素系樹脂等を用いることができる。筒状部材81、82の外面に潤滑性コーティングが施されていることにより、筒状部材81、82の外面の滑り性が高まり、その結果、カテーテル1の挿通性を向上させることができる。
【0135】
図示していないが、カテーテル1が体腔内に挿通されている長さを確認するために、筒状部材81、82に位置マーカーが設けられていてもよい。筒状部材81、82に位置マーカーを設ける方法としては、例えば、筒状部材81、82にマーカーを配置することや、筒状部材81、82の外面に施されているコーティングを部分的に剥離させること等が挙げられる。筒状部材81、82の位置マーカーは、複数存在することができる。具体的には、例えば、カテーテル1の長手方向xの長さが2400mmである場合、カテーテル1の遠位端から600mm近位側の位置、900mm近位側の位置、および1200mm近位側の位置に、それぞれ位置マーカーを設ける構成が挙げられる。
【0136】
図2図3図7および図9に示すように、第2部材20は、第2部材20の近位部に、長手方向xに垂直な方向から観察したときの径方向yの長さが近位側に向かって短くなっている第2減径領域72を有していることが好ましい。第2部材20が第2減径領域72を有していることにより、第2部材20の柔軟性を高めることができ、屈曲している体腔に沿って第2部材20を湾曲しやすくすることができる。
【0137】
長手方向xにおける第2減径領域72の長さは、第2部材20の長さの50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。第2減径領域72の長さと第2部材20の長さとの比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、第2部材20の剛性を保つことができ、カテーテル1の挿通性が高まる。また、長手方向xにおける第2減径領域72の長さは、第2部材20の長さの2%以上であることが好ましく、4%以上であることがより好ましく、6%以上であることがさらに好ましい。第2減径領域72の長さと第2部材20の長さとの比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、第2部材20の柔軟性が高まり、曲がりやすい第2部材20とすることができる。
【0138】
図1図2図7および図9に示すように、第1部材10は、第1部材10の近位部に、長手方向xに垂直な方向から観察したときの径方向yの長さが近位側に向かって短くなっている第1減径領域71を有している構成とすることができる。第1部材10が第1減径領域71を有していることにより、第1部材10の柔軟性が高まり、屈曲している体腔に合わせて第1部材10が曲がりやすくなる。
【0139】
長手方向xにおける第1減径領域71の長さは、第1部材10の長さの50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。第1減径領域71の長さと第1部材10の長さとの比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、第1部材10の剛性を保ち、カテーテル1の挿通性を高めることができる。また、長手方向xにおける第1減径領域71の長さは、第1部材10の長さの2%以上であることが好ましく、4%以上であることがより好ましく、6%以上であることがさらに好ましい。第1減径領域71の長さと第1部材10の長さとの比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、第1部材10の柔軟性を高めて、第1部材10を湾曲させやすくすることができる。
【0140】
図1に示すように、カテーテル1は、さらに、第1部材10の近位端部、もしくは筒状部材81、82にハブ110を有していることが好ましい。ハブ110は、その内部に第1部材10、もしくは筒状部材81、82の内腔と連通したポートを有しており、第1部材10、もしくは筒状部材81、82の内腔に部材や流体を導入する際に用いられる部材である。ハブ110は、第1部材10の近位端10p、もしくは筒状部材81、82の近位端に直接接続されていてもよく、他部材を介して間接的に第1部材10の近位端10p、もしくは筒状部材81、82の近位端に接続されていてもよい。
【0141】
図10は本発明のさらに他の実施の形態に係るカテーテル1の長手方向xに平行な断面図である。図10に示すように、第1部材10の内腔に、第1部材10に対して移動可能な状態で配置されているシャフト90と、シャフト90の遠位部に設けられており、径方向yに拡張する拡張部材100と、を備えている構成とすることができる。
【0142】
シャフト90は、長手方向xに延在している内腔を有している構成とすることができる。なお、シャフト90の内腔は、図10に示すように、ガイドワイヤ120等の挿通路として用いることができる。
【0143】
シャフト90を構成する材料としては、第1部材10を構成する材料と同様の合成樹脂や金属等が挙げられる。シャフト90を構成する材料は、第1部材10を構成する材料と同じ材料であってもよく、第1部材10を構成する材料と異なる材料であってもよい。
【0144】
拡張部材100としては、例えば、バルーンやステントを用いることができる。
【0145】
バルーンは、樹脂から構成されていることが好ましい。バルーンを構成する樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、バルーンを構成する樹脂として、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂が好適に用いられる。バルーンの薄膜化や柔軟性の点からは、エラストマー樹脂を用いることができる。
【0146】
ステントは、例えばメッシュ等の網目構造で構成されている拡径可能な構造体であり、複数の支柱を含んでいる。ステントは、例えば、周方向および軸方向に伸縮する、相互に連結している構造要素のパターンから形成することができる。ステントは、1本の線状の金属もしくは高分子材料からなるコイル状のもの、金属チューブや高分子材料からなるチューブをレーザー等で切り抜き加工したもの、線状の部位を溶接し組み立てたもの、複数の線状金属を織って構成したもの等が挙げられる。
【0147】
ステントは、形状記憶合金または形状記憶樹脂から構成されることが好ましい。ステントが形状記憶合金または形状記憶樹脂から構成されていることにより、ステントの拡張を円滑に行うことができる。ステントは、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、白金、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、タングステン、アルミニウム、金、銀、Ni-Ti合金、Co-Cr合金等から構成されていてもよい。
【0148】
ステントは、自己拡張型ステントであってもよく、バルーン拡張型ステントであってもよい。
【0149】
カテーテル1は、第1部材10の内腔におけるシャフト90の長手方向xへの移動を抑制する制御機構をさらに備えている構成とすることができる。カテーテル1が制御機構を備えていることにより、制御機構によって、第1部材10の内腔におけるシャフト90の長手方向xの移動を抑制した状態でカテーテル1を処置部まで搬送することが可能となるため、カテーテル1を処置部まで搬送しやすくすることができる。
【0150】
図示していないが、制御機構として、例えば、第1部材10にシャフト90を把持可能な把持部材が設けられている態様が挙げられる。第1部材10に把持部材が設けられていることにより、把持部材によってシャフト90を把持し、第1部材10の内腔におけるシャフト90の長手方向xへの移動を一時的に抑制することができる。そして、当該把持部材からシャフト90を外すことによって、シャフト90を第1部材10に対して移動可能な状態に戻すことができる。把持部材としては、例えば、シャフト90を挟むようにして把持するスリットが設けられたゴム部材、合成樹脂からなるクリップ等が挙げられる。
【0151】
拡張部材100は、外面にコーティング層が形成されているバルーンまたはステントであることが好ましい。拡張部材100が外面にコーティング層が形成されているバルーンまたはステントであることにより、拡張部材100の外面の滑り性が高まり、袋状体30から拡張部材100を放出させやすくすることができる。
【0152】
コーティング層は、バルーンまたはステントの外面にコーティング剤を塗布することによって形成することができる。コーティング層は、バルーンまたはステントの外面の一部にのみ形成されていてもよく、バルーンまたはステントの外面の全てに形成されていてもよい。コーティング層には、潤滑性のコーティング剤や生理活性薬剤が含まれていてもよい。
【0153】
潤滑性コーティング剤としては、例えば、シリコーン、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン系コーティング剤や、ソディウム(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート等のアクリル系コーティング剤、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系コーティング、ポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸、ポリエチレングリコール等の親水性コーティング剤等が挙げられる。
【0154】
生理活性薬剤としては、例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、シロリムス、テムシロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、バイオリムスA9、シロスタゾール、シクロスポリン、NF-κBデコイオリゴ等が挙げられる。生理活性薬剤は単体で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。また、生理活性物質を単独でバルーンまたはステントにコーティングしてもよく、適宜添加剤を併用してもよい。
【0155】
コーティング層は、生理活性薬剤が含まれていることが好ましい。バルーンまたはステントが有しているコーティング層に生理活性薬剤が含まれていることにより、カテーテル1を用いて処置部にバルーンまたはステントを留置することにより、治療の効率を高めることができる。
【0156】
カテーテル1は、カテーテル1のコントローラーやカテーテル1とともに使用するデバイスやハブ等をさらに有していてもよい。図示していないが、カテーテル1の基端部にコントローラーやデバイス、ハブ等を固定するロック機構を有する構成とすることができる。
【0157】
カテーテル1の長手方向xの長さは、適宜、適切な長さを選択することができる。例えば、カテーテル1の長手方向xの長さは、200mm以上、2500mm以下とすることができる。
【符号の説明】
【0158】
1:カテーテル
10:第1部材
10d:第1部材の遠位端
10p:第1部材の近位端
11:本体部
11d:本体部の遠位端
14:挿通路
15:外筒
16:内筒
20:第2部材
20d:第2部材の遠位端
30:袋状体
30d:袋状体の遠位端
30p:袋状体の近位端
40:X線不透過部
51:第1形状記憶部材
52:第2形状記憶部
61:第1線状部材
62:第2線状部材
71:第1減径領域
71p:第1減径領域の近位端
72:第2減径領域
81:筒状部材
82:筒状部材
90:シャフト
100:拡張部材
110:ハブ
120:ガイドワイヤ
x:長手方向
y:径方向
C2:第1部材の延在方向の中心軸を中心とした長手方向に垂直な断面における第2部材の表面と接する最大の円
A1:第1部材における袋状体の近位端から10cm近位側までの領域
A2:第2部材の遠位端から10cm近位側までの領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10