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特開2023-147095クリンカ付着評価システム、情報処理装置、及び、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147095
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】クリンカ付着評価システム、情報処理装置、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/94 20060101AFI20231004BHJP
   F22B 37/38 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
G01N21/94
F22B37/38 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054657
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】吉川 広治
(72)【発明者】
【氏名】森田 愛士
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA90
2G051AB01
2G051AC21
2G051AC30
2G051EB01
(57)【要約】
【課題】加熱配管の健全性を判定するシステムを提供する
【解決手段】クリンカ付着評価システム100は、ボイラ5の加熱配管6をスキャンできるように設置された3Dレーザスキャン装置2と、ボイラ5の加熱配管6に設けられたメタル温度測定装置3と、情報処理装置1とを有し、情報処理装置1は、ボイラ5中の加熱配管6に対する3Dレーザスキャン装置2のレーザスキャン結果を受け付けるレーザスキャン結果受付部101と、加熱配管6表面に付着したクリンカ7を評価する第1のクリンカ評価部103と、メタル温度測定装置3により測定されたメタル温度を受け付けるメタル温度受付部102と、メタル温度の低下値からクリンカ7を評価する第2のクリンカ評価部104と、第1のクリンカ評価部103の評価結果と第2のクリンカ評価部104の評価結果とに基づいて加熱配管6の健全性を判定するクリンカ判定部105と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラの加熱配管をスキャンできるように設置された3Dレーザスキャン装置と、
前記ボイラの前記加熱配管に設けられたメタル温度測定装置と、
情報処理装置と、
を有し、
前記情報処理装置は、
前記ボイラ中の前記加熱配管に対する前記3Dレーザスキャン装置のレーザスキャン結果を受け付けるレーザスキャン結果受付部と、
前記レーザスキャン結果受付部が受け付けた前記レーザスキャン結果と予め記憶されている健全時の前記加熱配管のレーザスキャン結果との差分から前記加熱配管の表面に付着したクリンカを評価する第1のクリンカ評価部と、
前記メタル温度測定装置により測定されたメタル温度を受け付けるメタル温度受付部と、
予め記憶されている健全時の前記メタル温度に比しての前記メタル温度受付部が受け付けた前記メタル温度の低下値からクリンカを評価する第2のクリンカ評価部と、
前記第1のクリンカ評価部の評価結果と前記第2のクリンカ評価部の評価結果とに基づいて前記加熱配管の健全性を判定するクリンカ判定部とを有する、
クリンカ付着評価システム。
【請求項2】
前記差分が、前記3Dレーザスキャン装置で得られる形状に基づいて得られる前記加熱配管の体積に基づいている、
請求項1に記載のクリンカ付着評価システム。
【請求項3】
前記第1のクリンカ評価部が評価する前記差分が予め記憶されている閾値を超えた場合に、前記加熱配管に対する前記クリンカの付着により前記ボイラの健全性が損なわれた可能性があると前記クリンカ判定部が判定する、
請求項1又は請求項2に記載のクリンカ付着評価システム。
【請求項4】
前記第2のクリンカ評価部の評価した前記メタル温度が予め記憶されている値以上低下する場合に、前記メタル温度測定装置の設置されている前記加熱配管に対する前記クリンカの付着により前記ボイラの健全性が損なわれた可能性があると前記クリンカ判定部が判定する、
請求項1又は請求項2に記載のクリンカ付着評価システム。
【請求項5】
前記第1のクリンカ評価部が評価する前記差分が予め記憶されている閾値を超え、且つ、前記第2のクリンカ評価部の評価した前記メタル温度が予め記憶されている値以上低下する場合に、前記加熱配管に対する前記クリンカの付着により前記ボイラの健全性が損なわれたと前記クリンカ判定部が判定する、
請求項1又は請求項2に記載のクリンカ付着評価システム。
【請求項6】
前記3Dレーザスキャン装置が前記ボイラ内の前記加熱配管に対して、複数の方向からレーザスキャンを行う、
請求項1から5の何れか1項に記載のクリンカ付着評価システム。
【請求項7】
前記3Dレーザスキャン装置のレーザ光が届かない前記加熱配管に前記メタル温度測定装置が設けられる、
請求項1から6の何れか1項に記載のクリンカ付着評価システム。
【請求項8】
ボイラ中の加熱配管に対する3Dレーザスキャン装置のレーザスキャン結果を受け付けるレーザスキャン結果受付部と、
前記レーザスキャン結果受付部が受け付けた前記レーザスキャン結果と予め記憶されている健全時の前記加熱配管に対するレーザスキャン結果との差分から前記加熱配管の表面に付着したクリンカを評価する第1のクリンカ評価部と、
メタル温度測定装置により測定されたメタル温度を受け付けるメタル温度受付部と、
予め記憶されている健全時の前記メタル温度に比しての前記メタル温度受付部が受け付けた前記メタル温度の低下値からクリンカを評価する第2のクリンカ評価部と、
前記第1のクリンカ評価部の評価結果と前記第2のクリンカ評価部の評価結果とに基づいて前記加熱配管の健全性を判定するクリンカ判定部とを有する、
情報処理装置。
【請求項9】
ボイラ中の加熱配管に対する3Dレーザスキャン装置のレーザスキャン結果を受け付けるレーザスキャン結果受付機能と、
前記レーザスキャン結果受付機能が受け付けた前記レーザスキャン結果と予め記憶されている健全時の前記加熱配管に対するレーザスキャン結果との差分から前記加熱配管の表面に付着したクリンカを評価する第1のクリンカ評価機能と、
メタル温度測定装置により測定されたメタル温度を受け付けるメタル温度受付機能と、
予め記憶されている健全時の前記メタル温度に比しての前記メタル温度受付機能が受け付けた前記メタル温度の低下値からクリンカを評価する第2のクリンカ評価機能と、
前記第1のクリンカ評価機能の評価結果と前記第2のクリンカ評価機能の評価結果とに基づいて前記加熱配管の健全性を判定する健全性判定機能とを、
コンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリンカ付着評価システム、情報処理装置、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、石炭炊きの火力発電所では、ボイラ燃焼に伴い発生するクリンカ(灰分等、石炭が保有する成分溶出分の塊)がボイラ内に配列された加熱配管に付着する事は避けられず、これが付着することで加熱配管の表面の熱伝達が阻害され、ボイラ熱吸収の低下及びボイラ効率の低下に繋がっていた。これらボイラ内の加熱配管は、ボイラケーシングで囲まれた高温で閉塞、且つ暗所な場所に設置されているため、目視によるクリンカ付着状況の確認は不可能に近く、ボイラ内の正確な汚損状態を把握することは困難である。
【0003】
この解決手法としてボイラのクリンカ付着或いは汚損の確認方法として、ボイラ出口煙道に設置した排煙濃度計の濃度信号と温度計で測定した温度信号を用いて演算し、ボイラ燃焼の状況を判断して内部の汚損状況を把握する技術が提案されている。例えばこの種の技術が記載されているものとして、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2954730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、クリンカ付着の影響がボイラ燃焼で発生する排ガスの濃度や温度が変化を生じる点に着目しボイラ全体の汚損度合を把握するものである。ところが、石炭焚きボイラで使用する石炭は銘柄が数多く存在し、単一銘柄であったとしても同じ成分の石炭は、ほぼ無いに等しい。更に、銘柄が異なる石炭の混炭燃焼や単一銘柄での燃焼の際に、同じ質量の石炭を燃焼してもボイラ排ガス中における窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)の濃度は常に同じ値を示す事はない。そして、燃焼時に用いる燃焼空気は、夏季と冬季でかなり温度差が生じており、ボイラ排ガス温度の動向にも影響を及ぼす。これらのため、汚損の把握は依然難しい。また、「どの箇所」に「どの程度」のクリンカ付着があるのか詳細に把握することができない。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、ボイラの加熱配管の健全性を判定するシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)クリンカ付着評価システムは、ボイラの加熱配管をスキャンできるように設置された3Dレーザスキャン装置と、ボイラの加熱配管に設けられたメタル温度測定装置と、情報処理装置とを有し、情報処理装置は、ボイラ中の加熱配管に対する3Dレーザスキャン装置のレーザスキャン結果を受け付けるレーザスキャン結果受付部と、レーザスキャン結果受付部が受け付けたレーザスキャン結果と予め記憶されている健全時の加熱配管のレーザスキャン結果との差分から加熱配管の表面に付着したクリンカを評価する第1のクリンカ評価部と、メタル温度測定装置により測定されたメタル温度を受け付けるメタル温度受付部と、予め記憶されている健全時のメタル温度に比してのメタル温度受付部が受け付けたメタル温度の低下値からクリンカを評価する第2のクリンカ評価部と、第1のクリンカ評価部の評価結果と第2のクリンカ評価部の評価結果とに基づいて加熱配管の健全性を判定するクリンカ判定部と、を有する。
【0008】
(1)の発明によれば、加熱配管の健全性を判定するシステムが提供される。
【0009】
(2)(1)のクリンカ付着評価システムにおいて、差分が、3Dレーザスキャンで得られる形状に基づいて得られる加熱配管の体積に基づいている。
【0010】
(2)の発明によれば、クリンカ付着体積が求められることとなり、クリンカ起因の加熱配管の損傷を未然に防ぐことが可能となる。
【0011】
(3)(1)又は(2)のクリンカ付着評価システムにおいて、第1のクリンカ評価部が評価する差分が予め記憶されている閾値を超えた場合に、加熱配管に対するクリンカの付着によりボイラの健全性が損なわれた可能性があるとクリンカ判定部が判定する。
【0012】
(3)の発明によれば、断定の一つ前の段階である健全性が損なわれた可能性があるとの判定がもたらされる。
【0013】
(4)(1)又は(2)のクリンカ付着評価システムにおいて、第2のクリンカ評価部の評価したメタル温度が予め記憶されている値以上低下する場合に、メタル温度測定装置の設置されている加熱配管に対するクリンカの付着によりボイラの健全性が損なわれた可能性があるとクリンカ判定部が判定する。
【0014】
(4)の発明によれば、3Dレーザスキャンが行えない場所に位置する加熱配管におけるクリンカ付着についても評価がなされる。従って、クリンカ付着の可能性を確実に抽出することができる。
【0015】
(5)(1)又は(2)のクリンカ付着評価システムにおいて、第1のクリンカ評価部が評価する差分が予め記憶されている閾値を超え、且つ、第2のクリンカ評価部の評価したメタル温度が予め記憶されている値以上低下する場合に、加熱配管に対するクリンカの付着によりボイラの健全性が損なわれたとクリンカ判定部が判定する。
【0016】
(5)の発明によれば、二つの評価結果を合わせることにより、確実にボイラの健全性の評価ができる。従って、健全性が損なわれていると断定する結果を提供することができる。
【0017】
(6)(1)から(5)のクリンカ付着評価システムにおいて、3Dレーザスキャン装置がボイラ内の加熱配管に対して、複数の方向からレーザスキャンを行う。
【0018】
(6)の発明によれば、死角の少ない3Dレーザスキャンが行われ、より正確にクリンカの付着量を見積もることができる。
【0019】
(7)(1)から(6)の何れかのクリンカ付着評価システムにおいて、3Dレーザスキャン装置のレーザが届かない加熱配管にメタル温度測定装置が設けられる。
【0020】
(7)の発明によれば、複数の3Dレーザスキャン装置を用意しても発生する死角を補うことができる。
【0021】
(8)情報処理装置は、ボイラ中の加熱配管に対する3Dレーザスキャン装置のレーザスキャン結果を受け付けるレーザスキャン結果受付部と、レーザスキャン結果受付部が受け付けたレーザスキャン結果と予め記憶されている健全時の加熱配管に対するレーザスキャン結果との差分から加熱配管の表面に付着したクリンカを評価する第1のクリンカ評価部と、メタル温度測定装置により測定されたメタル温度を受け付けるメタル温度受付部と、予め記憶されている健全時のメタル温度に比してのメタル温度受付部が受け付けたメタル温度の低下値からクリンカを評価する第2のクリンカ評価部と、第1のクリンカ評価部の評価結果と第2のクリンカ評価部の評価結果とに基づいて加熱配管の健全性を判定するクリンカ判定部とを有する。
【0022】
(8)の発明によれば、確実に加熱配管の健全性を判定する情報処理装置を提供することができる。
【0023】
(9)プログラムは、ボイラ中の加熱配管に対する3Dレーザスキャン装置のレーザスキャン結果を受け付けるレーザスキャン結果受付機能と、レーザスキャン結果受付機能が受け付けたレーザスキャン結果と予め記憶されている健全時の加熱配管に対するレーザスキャン結果との差分から加熱配管の表面に付着したクリンカを評価する第1のクリンカ評価機能と、メタル温度測定装置により測定されたメタル温度を受け付けるメタル温度受付機能と、予め記憶されている健全時のメタル温度に比してのメタル温度受付機能が受け付けたメタル温度の低下値からクリンカを評価する第2のクリンカ評価機能と、第1のクリンカ評価機能の評価結果と第2のクリンカ評価機能の評価結果とに基づいて加熱配管の健全性を判定する健全性判定機能とを、コンピュータに実行させる。
【0024】
(9)の発明によれば、確実に加熱配管の健全性を判定するプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る確実に加熱配管の健全性を判定するシステムの外観を示す模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成を示す模式図である。
図3】本発明の一実施形態に係る情報処理装置の機能的構成を示すブロック図である。
図4】本発明の一実施形態に係る3Dスキャン装置の実装形態の詳細を示す側面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る3Dレーザスキャン装置及びメタル温度測定装置の実装配置を示す、ボイラの側面図である。
図6】本発明の一実施形態に係るクリンカの評価から除去までの工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態に係る加熱配管6の健全性を判定するクリンカ付着評価システム100について図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同一構成要素には同一符号を付す。
【0027】
図1は本発明の実施形態に係る加熱配管6の健全性を判定するクリンカ付着評価システム100の全体概要を示す。ボイラ5に第1の3Dレーザスキャン装置2aと、第2の3Dレーザスキャン装置2bとメタル温度測定装置3とが設置されている。以下、第1の3Dレーザスキャン装置2aと第2の3Dレーザスキャン装置2bとの機能が同様で区別しない場合には、3Dレーザスキャン装置2と称することがある。3Dレーザスキャン装置2とメタル温度測定装置3とは、情報処理装置1と無線送受信機4により接続されている。
【0028】
情報処理装置1は、3Dレーザスキャン装置2とメタル温度測定装置3と、から受信した情報にもとづいて、ボイラ5の有する加熱配管6に付着するクリンカ7を評価する。情報処理装置1は、クリンカ7の評価結果に基づいて、加熱配管6の健全性を判定する。
【0029】
図2は、情報処理装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。図2に示すように、情報処理装置1は、制御部10と、入出力部16と、通信手段17と、記憶部18と、を備える。制御部10は、プロセッサ11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、バス14と、入出力インタフェース15とを有する。情報処理装置1は、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な汎用のパーソナルコンピュータであってもよいし、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。
【0030】
プロセッサ11は、各種演算及び処理を行う。プロセッサ11は、例えば、CPU(central processing unit)、MPU(micro processing unit)、SoC(system on a chip)、DSP(digital signal processor)、GPU(graphics processing unit)、ASIC(application specific integrated circuit)、PLD(programmable logic device)又はFPGA(field-programmable gate array)等である。或いは、プロセッサ11は、これらのうちの複数を組み合わせたものである。また、プロセッサ11は、これらにハードウェアアクセラレーター等を組み合わせたものであってもよい。
【0031】
プロセッサ11、ROM12及びRAM13は、バス14を介して相互に接続されている。プロセッサ11は、ROM12に記録されているプログラム又はRAM13にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。プログラムの一部又は全部は、プロセッサ11の回路内に組み込まれていてもよい。
【0032】
バス14は入出力インタフェース15にも接続される。入出力インタフェース15には、入出力部16と、通信手段17と、記憶部18と、が接続されている。
【0033】
入出力部16は、有線又は無線により電気的に入出力インタフェース15に接続される。入出力部16は例えばキーボード及びマウス等の入力部と撮影画像を表示するディスプレイ及び音声を拡声するスピーカ等の出力部とによって構成される。なお、入出力部16はタッチパネルのように表示機能と入力機能が一体的な構成であってもよい。
【0034】
通信手段17は、プロセッサ11が、本発明の実施形態に係る3Dレーザスキャン装置2、メタル温度測定装置3、更には、例えば図示されないインターネット等のネットワークを介して他の装置との間で通信を行うための装置である。記憶部18は、3Dレーザスキャン結果、メタル温度評価結果、クリンカ評価結果等を記憶する例えばハードディスクドライブ(HDD)、半導体ドライブ(SSD)等の記憶装置である。
【0035】
図2に関して示したハードウェア構成は、あくまで一例であり、特にこの構成に限定されるわけではない。シングルプロセッサ、マルチプロセッサ及びマルチコアプロセッサ等の各種処理装置単体によって構成されるものの他、これら各種処理装置と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)及びFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の処理回路とが組み合わせられたものを、プロセッサとしての機能的構成を実現するものとして採用してもよい。情報処理装置1が記憶部18を有するのではなく、記憶部18が別途設けられる構成が採用されてもよい。
【0036】
図3は、本実施形態に係る情報処理装置1の機能的構成を示すブロック図である。図3に示すように、情報処理装置1は、図2に示すプロセッサ11等により実現されるレーザスキャン結果受付部101、メタル温度受付部102、第1のクリンカ評価部103、第2のクリンカ評価部104、クリンカ判定部105、警報発信部106、スートブロワ起動部107を機能的構成として有する。
【0037】
図1図2図4から図6を参照しつつ、図3の各機能部の機能について説明する。
【0038】
レーザスキャン結果受付部101は、3Dレーザスキャン装置2がボイラ5内の加熱配管6の表面をスキャンした結果を受け付ける。
【0039】
図4は3Dレーザスキャン装置2がボイラ室51のボイラ壁52に設けられている様子を示す模式図である。図4はボイラ室51を加熱配管6の伸びる方向に切った断面図である。ボイラ室51内には、加熱配管6が上下に伸びて配置されている。図4においてはその一部が示されているが、加熱配管6については、理解を助けるために斜視図になっている。加熱配管6は図4では模式的に示しているが、内部に水又は水蒸気が流通する部材である。ボイラ室51内には熱気53が導入されており、加熱配管6中の水を加熱して水蒸気に変化させる。
【0040】
石炭火力発電所においては、石炭の燃焼に伴い発生する石炭灰の付着性が高い場合,ボイラ室51中の加熱配管6上及びボイラ室51の壁に石炭灰が成長する。これがクリンカ7である。ボイラ室51中の加熱配管6に付着するクリンカ7を検知するため、3Dレーザスキャン装置2がボイラ壁52に設けられた球面の断熱ガラス54に隣接して設けられる。断熱ガラス54とボイラ室51との間には、送風機55から冷却空気が送風され、エアカーテン56が形成されている。エアカーテン56は冷却効果と、ボイラ排ガスに含まれる石炭灰の断熱ガラス54への付着を防止する2つの効果を有する。エアカーテン56は、断熱ガラス54の破損を防止するとともに、断熱ガラス54の汚れを防止し、視認性或いはレーザの透過性を確保する。
【0041】
3Dレーザスキャン装置2は上下左右の首振りによりレーザ光の出射方向が変えられ、加熱配管6が代表するボイラ室51の構成物に付着したクリンカ7についてレーザスキャン23が行われる。エアカーテン56が設けられているので、レーザスキャン23は、ボイラ5の運転中でも可能であり、3Dレーザスキャン装置2が稼働する。
【0042】
3Dレーザスキャン装置2は、例えば、位相差距離方式により距離を測定する。投光したレーザはレンズを介して測定対象である加熱配管6に照射され、その反射光がレンズで集光され受光部に受光する。距離に応じた時間経過があり、投光波長と受光波長の間には位相差が生じる。測定対象までの距離が異なる場合、位相差も異なるため、この位相差を算出することで距離が測定できる。
【0043】
図3に戻る。レーザスキャン結果受付部101は、ボイラ5の稼働前、或いは、後述する蒸気噴霧式スートブロワによりクリンカ7が除去された後の、加熱配管6が健全である状態において行われるレーザスキャン結果を受け付け、予め記憶部18に記憶する。第1のクリンカ評価部103は、クリンカ7の評価時にレーザスキャン結果受付部101が受け付けたレーザスキャン結果と予め記憶されている健全時の加熱配管6のレーザスキャン結果との差分から加熱配管6の表面に付着したクリンカ7を直接計測評価する。レーザスキャン結果受付部101が受け付けたレーザスキャン結果と予め記憶されている健全時の加熱配管6のレーザスキャン結果との差分は、例えば、3Dレーザスキャンによって得られる健全時の加熱配管6の体積と3Dレーザスキャンによって得られるクリンカ7の付着可能性のある加熱配管6の体積との差分に相当する。
【0044】
第1のクリンカ評価部103は、ディスプレイ画面に表示したボイラ5の加熱配管6の配置図上に計測結果を重ね合わせ、大きさや形状を捉えてクリンカ7の付着結果を表示することもできる。これにより、立体的に付着状態が把握できる。クリンカ付着箇所、大きさ、形状、及び、付着量等付着状態が直接計測される。
【0045】
クリンカ7の大きさや形状が捉えられディスプレイ画面上に表示される事により、誰もが正確に視認による加熱配管6の汚損度合いを確認することができる。
【0046】
図5に示すように、3Dレーザスキャン装置2としては、ボイラ5の側面に設けられた第1の3Dレーザスキャン装置2a、及び、ボイラ5の上壁に設けられた3Dレーザスキャン装置2c~2dが例えば設けられる。加熱配管6には水或いは水蒸気が流れており、上下ともに他の配管につながっているが、図5においてはその接続は省略され見やすいように断面を含めた斜視図となっている。
【0047】
第1の3Dレーザスキャン装置2aは第1の3Dスキャン領域21aをスキャンする。第3の3Dレーザスキャン装置2cは第3の3Dスキャン領域21cをスキャンする。第4の3Dレーザスキャン装置2dは第4の3Dスキャン領域21dをスキャンする。
【0048】
3Dレーザスキャン装置2はボイラ5に対して複数設けられる。ボイラ5内の加熱配管6を網羅すべく、複数の方向から3Dレーザスキャンが行われる。
【0049】
然るに、集合した加熱配管6内部までの十分なスキャニングは不可能である。3Dレーザスキャン装置2に対して表面側に露出していない領域においては、レーザスキャン23ができない、3Dスキャン困難領域22が存在する。
【0050】
3Dスキャン困難領域22には、特に、メタル温度測定装置3が配置される。図5に示すように、3Dスキャン困難領域22にはメタル温度測定装置3eが配置される。3Dスキャン領域21a、21c、21dにもメタル温度測定装置3a、3c、3dがそれぞれ設置されてもよい。メタル温度測定装置3は複数配置される。ここを区別する場合には、3a、3cのように表記される。同様の機能を有するので、区別がなされない場合には、メタル温度測定装置3のように表記される。
【0051】
スキャン機能は、加熱配管6の表面形状の測定が主であり、内部までの計測は不可となるため、欠点をメタル温度の測定が補う形となる。メタル温度測定装置3は、加熱配管6の温度を測定する。メタル温度測定装置3は、例えば、加熱配管6を構成する金属製チューブの断面に熱電対が設置された温度計であり、加熱配管6中を流れる水或いは蒸気に接触する加熱配管6の部分の温度が測定される。加熱配管6の局部的な加熱を含めて、メタル温度測定装置3は温度を測定監視している。クリンカ7が加熱配管6の伝熱面に付着した際には、排ガスと加熱配管6内を流れるボイラ水との熱交換が阻害され、結果としてメタル温度が低下する。
【0052】
メタル温度受付部102は、メタル温度測定装置3からメタル温度を受け付ける。第2のクリンカ評価部104は、ボイラ室51の温度を基準として、予め記憶されている健全時の加熱配管6のメタル温度に比しての、クリンカ評価時におけるメタル温度受付部102が受け付けた加熱配管6のメタル温度の低下値からクリンカ7の付着量を推定評価する。
【0053】
クリンカ判定部105は、第1のクリンカ評価部103の評価結果と第2のクリンカ評価部104の評価結果とに基づいて加熱配管6の健全性を判定する。
【0054】
クリンカ判定部105は、第1のクリンカ評価部103が評価する、測定された3Dスキャン結果と予め測定された健全時の3Dスキャン結果との差分が予め記憶されている閾値を超えた場合に、加熱配管6に対するクリンカ7の付着によりボイラ5の健全性が損なわれた可能性があると判定する。
【0055】
例えば第1のクリンカ評価部103は、測定された3Dスキャン結果と予め測定された健全時の3Dスキャン結果との差分からクリンカ7の推定の付着厚さを求める。そして、その厚さが例えば、閾値である60mmを超えると、ボイラ5の健全性が損なわれた可能性があるとの判定がなされる。
【0056】
クリンカ判定部105は、第2のクリンカ評価部104の評価した加熱配管6のメタル温度が予め記憶されている値以上低下する場合に、メタル温度測定装置3の設置されている加熱配管6に対するクリンカ7の付着によりボイラ5の健全性が損なわれた可能性があると判定する。
【0057】
例えば第2のクリンカ評価部104は、測定された加熱配管6の温度と予め測定された健全時の加熱配管6の温度との差分を求める。そして、その温度の低下が例えば閾値である100度Cを超えると、ボイラ5の健全性が損なわれた可能性があるとの判定がなされる。
【0058】
クリンカ判定部105は、第1のクリンカ評価部103が評価する、測定された3Dスキャン結果と予め測定された健全時の3Dスキャン結果との差分が予め記憶されている閾値を超え、且つ、第2のクリンカ評価部104の評価したメタル温度が予め記憶されている値以上低下する場合に、加熱配管6に対するクリンカ7の付着によりボイラ5の健全性が損なわれたと判定する。
【0059】
例えば第1のクリンカ評価部103は、測定された3Dスキャン結果と予め測定された健全時の3Dスキャン結果との差分からクリンカ7の推定の付着厚さを求める。そして、その厚さが例えば、閾値である60mmを超えると、ボイラ5の健全性が損なわれた可能性があるとの判定がなされる。更に、例えば第2のクリンカ評価部104は、測定された加熱配管6の温度と予め測定された健全時の加熱配管6の温度との差分を求める。そして、その温度の低下が例えば、閾値である100度Cを超えると、ボイラ5の健全性が損なわれた可能性があるとの判定がなされる。これらの判定の双方が同時になされた場合に、ボイラ5の健全性が損なわれたと判定がなされる。
【0060】
3Dレーザスキャン装置2でスキャニングしたクリンカ7の付着結果に、加熱配管6のメタル温度の低下傾向を照合させ、クリンカ付着画像とメタル温度の低下の二つの物理的要素に基づくことで、精度をあげたクリンカ付着の範囲及び程度の判定が可能となる。
【0061】
図3に戻り、警報発信部106は、クリンカ判定部105による判定に基づいて、ボイラ5の健全性が損なわれた可能性があるとの注意報、或いは、ボイラ5の健全性が損なわれたとの警報とを発信する。
【0062】
ボイラ5には、加熱配管6に代表されるボイラ室51内の構成物に対して蒸気を吹き付けてクリンカ7を除去する設備として蒸気噴霧式スートブロワが例えば設置されている。警報発信部106からの注意報或いは警報に基づいて、スートブロワ起動部107は、スートブロワ起動回路を起動させる。これにより、より効果的なクリンカ除去が可能となり、ボイラ効率維持に貢献できる。
【0063】
スートブロワ実施に伴う効果は、加熱配管6の熱吸収率の回復、ガス偏流の改善による蒸気温度制御の安定化、ボイラ排ガス酸素濃度の不均衡是正によるボイラ燃焼の安定等である。
【0064】
一般的に、スートブロワの自動起動回路は、ボイラ5に流入する水或いはボイラ内で発生する蒸気のエンタルピを用いて、汚損度合を予測してスートブロワを起動している。この自動回路に、上記の警報発信部106からの注意報及び警報を取り込みきめ細やかな運転管理を行う事で、早期クリンカ除去及びクリンカ7による熱吸収の不均衡が回避され得る。
【0065】
図6により、ボイラ5に付着するクリンカ7の評価から除去までの処理の流れを説明する。
【0066】
工程がスタートすると、レーザスキャン結果受付部101は、正常3Dスキャン結果取得処理として、クリンカ7が付着していない健全時のボイラ5について、3Dレーザスキャン装置2に対して加熱配管6を3Dスキャンさせ、スキャン結果を受け付け、結果を記憶部18に記憶する(ステップS11)。次に、メタル温度受付部102は、クリンカ7が付着していない健全時のボイラ5について、メタル温度測定装置3から測定温度結果を受け付け、結果を記憶部18に記憶する(ステップS12)。所定時間待機処理として所定時間経過後(ステップS13)、レーザスキャン結果受付部101は、ボイラ5について、3Dレーザスキャン装置2に対して加熱配管6を3Dスキャンさせ、スキャン結果を受け付け、結果を記憶部18に記憶する(ステップS11)。次に、メタル温度受付部102は、ボイラ5について、メタル温度測定装置3から測定温度結果を受け付け、結果を記憶部18に記憶する(ステップS12)。
【0067】
クリンカ判定処理として、まず第1のクリンカ評価部103は、ボイラ5中の加熱配管6に対する3Dレーザスキャン装置2のレーザスキャン結果と予め記憶されている健全時の加熱配管6のレーザスキャン結果とを記憶部18から抽出し、これらの差分から加熱配管6の表面に付着したクリンカ7を評価する。更に、クリンカ判定処理として、第2のクリンカ評価部104は、予め記憶されている健全時のメタル温度に比してのメタル温度受付部102が受け付けたメタル温度の低下値からクリンカ7を評価する(ステップS16)。
【0068】
クリンカ判定部105は、クリンカ判定処理として、第1のクリンカ評価部103の評価と第2のクリンカ評価部104との双方の評価が異常なしの場合(ステップS16:異常なし)には、工程をステップS13に戻す。
【0069】
クリンカ判定部105は、第1のクリンカ評価部103の評価と第2のクリンカ評価部104との一方の評価に異常があると判定した場合、クリンカ7の付着によりボイラ5の健全性が損なわれた可能性があると判定し(ステップS16:一方のみに異常)、工程をクリンカ判定部追加判定処理(ステップS17)に進ませる。追加判定処理として、警報発信部106は注意報を発報し、クリンカ判定部105は追加判定処理として、注意報が発報された領域の周辺の領域におけるクリンカ7の付着についての情報を取得する。
【0070】
クリンカ判定部105は、周辺の領域の状況を加味し、クリンカ7の付着に伴う異常はないと判定した場合には、工程をステップS13に戻す。例えば、周辺の領域の全てにおいてクリンカ7の付着に伴う異常はないと判定されているような場合には、クリンカ判定部105は判定対象に領域について異常なしと判定する。
【0071】
ステップS16のクリンカ判定処理において、クリンカ判定部105は、第1のクリンカ評価部103の評価と第2のクリンカ評価部104の評価との双方の評価に異常があると判定した場合(ステップS16:双方に異常)、及び、ステップS17の追加判定処理において異常有りと判定された場合(ステップS17:異常有り)、スートブロワ起動処理(ステップS18)に工程を進める。
【0072】
スートブロワ起動処理として、スートブロワ起動部107は、スートブロワ起動回路を起動させる。
【0073】
監視が継続される場合(ステップS19:Yes)、ステップS13に戻る。監視が継続されない場合(ステップS19:No)、監視は終了する(ステップEND)。
【0074】
以上の説明においては、主に、クリンカ付着評価システム100について説明した。クリンカ付着評価システム100が有する情報処理装置1は独立して使用することが可能である。また、情報処理装置1の機能をコンピュータに実行させるプログラムが行っているのと同様のステップに則ったクリンカ付着評価方法を使用することが可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 情報処理装置
2 3Dレーザスキャン装置
3 メタル温度測定装置
4 無線送受信機
5 ボイラ
6 加熱配管
7 クリンカ
8 レーザ光
100 クリンカ付着評価システム
101 レーザスキャン結果受付部
102 メタル温度受付部
103 第1のクリンカ評価部
104 第2のクリンカ評価部
105 クリンカ判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6