(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147096
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】モータシステム
(51)【国際特許分類】
H02K 11/33 20160101AFI20231004BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20231004BHJP
H02K 11/215 20160101ALI20231004BHJP
【FI】
H02K11/33
H02K7/116
H02K11/215
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054658
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000139023
【氏名又は名称】株式会社リケン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100179947
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】森永 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】季 磊
(72)【発明者】
【氏名】石塚 一男
(72)【発明者】
【氏名】宮山 学
【テーマコード(参考)】
5H607
5H611
【Fターム(参考)】
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB09
5H607BB13
5H607BB14
5H607CC01
5H607DD03
5H607EE21
5H607EE33
5H611AA01
5H611BB01
5H611BB08
5H611PP05
5H611QQ03
5H611RR02
5H611TT02
5H611UA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】モータの内部にパワーモジュールを組み込むことによって小型化が実現されたモータシステムを提供する。
【解決手段】モータ2をインバータ制御するための、モータシステムである。モータシステムは、モータ回転軸線の周りで周方向に間隔を置いて配置された複数のティースにコイルが巻き付けられた固定子モジュール20Aと、それぞれが各相に対応している複数の上下アームデバイスセットが、ベース部材に取り付けられたパワーモジュール30と、を備えている。固定子モジュールとパワーモジュールとは、モータ回転軸線方向に整列する位置に配置されている。固定子モジュールは、ベース部材の一方側に取り付けられており、上下アームデバイスセットは、ベース部材の他方側に取り付けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多相モータをインバータ制御するための、モータシステムであって、
モータ回転軸線の周りで周方向に間隔を置いて配置された複数のティースにコイルが巻き付けられた固定子モジュールと、それぞれが各相に対応している複数の上下アームデバイスセットが、ベース部材に取り付けられたパワーモジュールと、を備えており、
前記固定子モジュールと前記パワーモジュールとは、モータ回転軸線方向に整列する位置に配置されており、
前記固定子モジュールは、前記ベース部材のモータ回転軸線方向一方側に取り付けられており、前記複数の上下アームデバイスセットは、前記ベース部材のモータ回転軸線方向他方側に取り付けられている、モータシステム。
【請求項2】
前記固定子モジュールは、モータ回転軸線の周りで周方向に相ごとに区画された、複数の相固定子モジュールによって構成されており、
前記パワーモジュールは、モータ回転軸線の周りで周方向に相ごとに区画された、複数の相パワーモジュールによって構成されている、請求項1に記載されたモータシステム。
【請求項3】
前記相固定子モジュールと、当該相固定子モジュールに対応する前記相パワーモジュールとは、モータ回転軸線方向からみたとき、モータ回転軸線の周りの周方向で互いに整列する位置に配置されている、請求項2に記載されたモータシステム。
【請求項4】
前記相固定子モジュールは、相ごとに分割されている、請求項2または3に記載されたモータシステム。
【請求項5】
前記相パワーモジュールは、相ごとに分割されている、請求項2~4のいずれか1項に記載されたモータシステム。
【請求項6】
前記パワーモジュールを制御するパワーモジュール制御部をさらに備えており、前記パワーモジュール制御部は、モータ回転軸線方向において、前記パワーモジュールを挟んで、前記固定子モジュールと反対側の位置に配置されている、請求項1~5のいずれか1項に記載されたモータシステム。
【請求項7】
前記多相モータは、極数がPであり、スロット数がSである、ブラシレス三相交流モータであり、極数Pおよびスロット数Sが以下の関係式(1)および(2)を満たす、請求項1~6のいずれか1項に記載されたモータシステム。
P=3n±1 (n:1を除く正の奇数)・・・(1)
S=3n (n:1を除く正の奇数)・・・(2)
【請求項8】
前記コイルは、それぞれ、1つの前記ティースに対して集中巻によって巻線されている、請求項1~7のいずれか1項に記載されたモータシステム。
【請求項9】
前記固定子モジュールは、モータ回転軸線の周りで周方向に相ごとに区画された、複数の相固定子モジュールによって構成されており、各相に応じた前記上下アームデバイスとそれに対応する前記相固定子モジュールとが一対になっている請求項7または8に記載されたモータシステム。
【請求項10】
前記コイルは、それぞれ、複数の前記ティースに対して分布巻によって巻線されている、請求項1~7のいずれか1項に記載されたモータシステム。
【請求項11】
前記多相モータは、アキシャルギャップモータである、請求項1~10のいずれか1項に記載されたモータシステム。
【請求項12】
前記多相モータは、ラジアルギャップモータである、請求項1~10のいずれか1項に記載されたモータシステム。
【請求項13】
変速機を付加して備える、請求項1~12のいずれか1項に記載されたモータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のモータシステムには、例えば、三相交流モータと、パワーコントロールユニットと、を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。上記従来のモータシステムは、多相モータのケーシングに支持棚を設けることによって、当該支持棚上に、パワーコントロールユニットを搭載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、多相モータには、各相に対応した電流を供給するためのパワーモジュールが必要である。
【0005】
しかしながら、パワーモジュールは一般的に、前記パワーコントロールユニットに内蔵されている。即ち、上記従来のモータシステムにおいて、パワーモジュールは、モータの外側に配置されている。このため、上記従来のモータシステムは、多相モータと、パワーモジュールとを別々に製造(開発)する必要がある。加えて、上記従来のモータシステムには、パワーモジュールがモータの外側に配置されるため、モータシステムの小型化(省スペース化)に改善の余地があった。
【0006】
本発明の目的は、多相モータの内部にパワーモジュールを組み込むことによって小型化が実現されたモータシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る、モータシステムは、多相モータをインバータ制御するための、モータシステムであって、モータ回転軸線の周りで周方向に間隔を置いて配置された複数のティースにコイルが巻き付けられた固定子モジュールと、それぞれが各相に対応している複数の上下アームデバイスセットがベース部材に取り付けられたパワーモジュールと、を備えており、前記固定子モジュールと前記パワーモジュールとは、モータ回転軸線方向に整列する位置に配置されており、前記固定子モジュールは、前記ベース部材のモータ回転軸線方向一方側に取り付けられており、前記複数の上下アームデバイスセットは、前記ベース部材のモータ回転軸線方向他方側に取り付けられている。
【0008】
本発明に係る、モータシステムにおいて、前記固定子モジュールは、モータ回転軸線の周りで周方向に相ごとに区画された、複数の相固定子モジュールによって構成されており、前記パワーモジュールは、モータ回転軸線の周りで周方向に相ごとに区画された、複数の相パワーモジュールによって構成されていることが好ましい。
【0009】
本発明に係る、モータシステムにおいて、前記相固定子モジュールと、当該相固定子モジュールに対応する前記相パワーモジュールとは、モータ回転軸線方向からみたとき、モータ回転軸線の周りの周方向で互いに整列する位置に配置されていることが好ましい。
【0010】
本発明に係る、モータシステムにおいて、前記相固定子モジュールは、相ごとに分割されているものとすることができる。
【0011】
本発明に係る、モータシステムにおいて、前記相パワーモジュールは、相ごとに分割されているものとすることができる。
【0012】
本発明に係る、モータシステムは、前記パワーモジュールを制御するパワーモジュール制御部をさらに備えており、前記パワーモジュール制御部は、モータ回転軸線方向において、前記パワーモジュールを挟んで、前記固定子モジュールと反対側の位置に配置されていることが好ましい。
【0013】
本発明に係る、モータシステムにおいて、前記多相モータは、極数がPであり、スロット数がSである、ブラシレス三相交流モータであり、極数Pおよびスロット数Sが以下の関係式(1)および(2)を満たすブラシレス三相交流モータであることが好ましい。
P=3n±1 (n:1を除く正の奇数)・・・(1)
S=3n (n:1を除く正の奇数)・・・(2)
【0014】
本発明に係る、モータシステムにおいて、前記コイルは、それぞれ、1つの前記ティースに対して集中巻によって巻線されているものとすることができる。
【0015】
本発明に係るモータシステムにおいて、前記固定子モジュールは、モータ回転軸線の周りで周方向に相ごとに区画された、複数の相固定子モジュールによって構成されており、各相に応じた前記上下アームデバイスとそれに対応する前記相固定子モジュールとが一対になっていることが好ましい。
【0016】
本発明に係る、モータシステムにおいて、前記コイルは、それぞれ、複数の前記ティースに対して分布巻によって巻線されているものとすることができる。
【0017】
本発明に係る、モータシステムにおいて、前記多相モータは、アキシャルギャップモータであるものとすることができる。
【0018】
本発明に係る、モータシステムにおいて、前記多相モータは、ラジアルギャップモータであるものとすることができる。
【0019】
本発明に係る、モータシステムは、変速機を付加して備えるものとすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、多相モータの内部にパワーモジュールを組み込むことによって小型化が実現されたモータシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明のモータシステムを適用可能な制御機器システムの一例を概略的に示す図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る、モータシステムを、モータ回転軸線を含んだ断面で概略的に示す図である。
【
図3】
図2のモータシステムに設けられた固定子モジュールをモータ回転軸線方向一方側から概略的に示す図である。
【
図4】
図3の固定子モジュールを形成する複数の相固定子モジュールのうちの1つをモータ回転軸線方向一方側から概略的に示す図である。
【
図5】
図3の固定子モジュールを形成するコアブロックをモータ回転軸線方向一方側から概略的に示す図である。
【
図6】
図5のコアブロックを形成する複数の相コアブロックのうちの1つをモータ回転軸線方向一方側から概略的に示す図である。
【
図7】
図2のモータシステムに設けられたパワーモジュールをモータ回転軸線方向他方側から概略的に示す図である。
【
図8】
図7のパワーモジュールを形成する複数の相パワーモジュールのうちの1つをモータ回転軸線方向他方側から概略的に示す図である。
【
図9】
図2のモータシステムにおける、固定子モジュール、パワーモジュールおよびベース部材の関係を拡大して示す図である。
【
図10】
図2のモータシステムにおける、固定子モジュール、パワーモジュールおよびベース部材の、さらに他の関係を拡大して示す図である。
【
図11】
図2のモータシステムに設けられたパワーモジュール制御ドライバをモータ回転軸線方向一方側から概略的に示す図である。
【
図12】
図2のモータシステムに含まれる基本的な回路構成と、固定子モジュール、パワーモジュールおよびパワーモジュール制御部との関係を概略的に示す図である。
【
図13】
図2のモータシステムにおける、モータの回転子が1回転するまでの周期を基準として、当該回転子の磁極の配列と、固定子モジュールのティースの配列との関係を、各相パワーモジュールとともに概略的に示す図である。
【
図14】
図2のモータシステムにおける、モータ回転軸線の周りの周方向の位置で、回転子の磁極の配列と、固定子モジュールのコイルの配列との関係を、概略的に示す図である。
【
図15】本発明の第2実施形態に係る、モータシステムを、モータ回転軸線を含んだ断面で概略的に示す図である。
【
図16】
図15のモータシステムに設けられた固定子モジュールを、ベース部材に取り付けた状態で、モータ回転軸線方向一方側から概略的に示す図である。
【
図17】
図16の固定子モジュールを形成する複数の相固定子モジュールのうちの1つをモータ回転軸線方向一方側から概略的に示す図である。
【
図18】
図17の相固定子モジュールを形成する、相コアブロックをモータ回転軸線方向から概略的に示す図である。
【
図19】
図15のモータシステムにおける、固定子モジュール、パワーモジュールおよびベース部材の関係を拡大して示す図である。
【
図20】コイルを分布巻きしたときの一例を、概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照することによって、本発明の実施形態に係る、モータシステムについて説明する。
【0023】
図1には、本発明のモータシステムを適用可能な制御機器システムの一例が概略的に示されている。
【0024】
図1中、符号1は、本発明に係る、モータシステムの基本構成を示したものである。モータシステム1は、多相モータ2(以下、「モータ2」ともいう。)をインバータ制御するための、モータシステムである。
図1に示すように、モータシステム1は、変速機50を付加して備えることができる。本開示において、変速機50は、減速機である。
図1には例示的に、サンギア51と、リングギア52と、ピニオンギア53を回転可能に支持するプラネタリキャリア54とを備える、基本的な遊星歯車減速機が例示されている。
【0025】
本開示において、変速機50は、サンギア51、リングギア52およびプラネタリキャリア54のいずれかを入力要素とし、当該入力要素をモータ2のモータ軸2dに接続することができる。変速機50は、前記入力要素以外の他の要素を固定要素とするとともに、残りの要素を出力要素として、変速機50が駆動させる負荷60に接続することができる。負荷60としては、例えば、ロボットアームが挙げられる。ただし、変速機50には、遊星歯車変速機以外の、様々な構成の変速機を用いることができる。また、負荷60には、変速機50を用いることによって動作させることができるものであれば、自動車の車輪、工作機械等の、様々な負荷を用いることができる。
【0026】
本開示において、モータシステム1は、モータ2と、当該モータ2を電気的に制御する制御ドライバ3とを備えている。
【0027】
本開示において、モータ2は、三相交流モータである。モータ2は、固定子2aと、回転子2bと、モータケース2cと、を備えている。固定子2aおよび回転子2bは、モータケース2cの内部に収容されている。
【0028】
本開示において、モータ2は、極数がPであり、スロット数がSである、ブラシレス三相交流モータである。モータ2は、極数Pおよびスロット数Sが以下の関係式(1)および(2)を満たす。
【0029】
P=3n±1 (n:1を除く正の奇数)・・・(1)
S=3n (n:1を除く正の奇数)・・・(2)
【0030】
ここで、「S」は、モータ2全体のコイル数であり、「n」は、相ごとにまとめられたティースの数(以下、「ティース数」ともいう。)をいう。本開示では、極数Pは、P=8であり、スロット数SはS=9である。また、相ごとのティース数nは、n=3である。上記(1)および(2)の条件を満たす、モータは系列IIモータともいう。本実施形態に係る、モータ2は、8P9Sの、ブラシレス三相交流モータである。
【0031】
本開示において、制御ドライバ3もまた、モータケース2cの内部に収容されている。本開示において、制御ドライバ3は、各相に対応する電流を供給するためのパワーモジュール30と、パワーモジュール30を制御するパワーモジュール制御部40とを備えている。
【0032】
図2には、本発明の第1実施形態に係る、モータシステム1Aが、モータ回転軸線Оを含んだ断面で概略的に示されている。ただし、
図2の断面は、後述する、上下アームデバイスセット31を含むように示されている。
【0033】
本開示において、モータ2は、アキシャルギャップモータである。本開示において、固定子2aのティース22は、モータ回転軸線Оの延在方向(以下、「モータ回転軸線方向」ともいう。)に延びている。
【0034】
固定子2aは、固定子モジュール20Aを備えている。固定子モジュール20Aは、モータ回転軸線Оの周りで周方向に間隔を置いて配置された複数のティース22にコイル24が巻き付けられた固定子モジュールである。
【0035】
本開示において、固定子モジュール20Aは、モータ回転軸線Оの周りで周方向に間隔を置いて配置された複数のティース22と、当該複数のティース22が設けられたバックコア23とを備えている。本開示において、バックコア23は、モータ回転軸線Оを中心軸線とする位置に配置された、環状のバックコアである。本開示において、バックコア23は、ティース22よりも大きく構成されている。本開示において、バックコア23は、ヨーク(継鉄)として機能する。また、本開示において、ティース22およびバックコア23は、一体に形成されており、1つのコアブロック21を形成している。このため、本開示において、コアブロック21は全体として、ヨーク(継鉄)として機能する。
【0036】
また、固定子モジュール20Aは、複数のコイル24を備えている。本開示において、コイル24は、それぞれ、1つのティース22に対して集中巻によって巻線されている。本開示において、固定子モジュール20Aは、9つのティース22を備えている。即ち、本開示において、固定子モジュール20Aは、9つのコイル24を備えている。
【0037】
本開示において、固定子モジュール20Aは、少なくとも1つとすることができる。本開示において、固定子2aは、2つの固定子モジュール20Aを備えている。本開示において、2つの固定子モジュール20Aは、モータ回転軸線方向に間隔を置いて配置されている。
【0038】
一方、本開示において、回転子2bは、モータ回転軸線方向において、固定子モジュール20Aと隣り合う位置に配置されている。本開示において、回転子2bは、モータ回転軸線方向において、2つの固定子モジュール20Aの間に配置されている。
【0039】
回転子2bは、モータ軸2dに固定された回転子本体2b1と、複数の永久磁石2b2とを備えている。本開示において、回転子本体2b1は、モータ回転軸線Оを中心軸線とする位置に配置された、環状の回転子本体である。複数の永久磁石2b2は、それぞれ、モータ回転軸線Оの周りを周方向に間隔をおいて、回転子本体2b1に取り付けられている。複数の永久磁石2b2は、それぞれ、周方向に隣り合う永久磁石2b2の磁極(N、S)が異なるように配置されている。本開示において、回転子2bは、8つの永久磁石2b2を備えている。即ち、本開示において、回転子2bは、極数8(P=8)の回転子である。
【0040】
パワーモジュール30は、それぞれが各相に対応している複数の上下アームデバイスセット31が、ベース部材34に取り付けられたパワーモジュールである。
【0041】
本開示において、パワーモジュール30は、複数の上下アームデバイスセット31と、当該上下アームデバイスセット31が取り付けられたベース部材34と、を備えている。
【0042】
本開示において、パワーモジュール30は、3つの上下アームデバイスセット31を備えている。上下アームデバイスセット31は、上アームパワーデバイス(以下、「上アームデバイス」ともいう。)32と、下アームパワーデバイス(以下、「下アームデバイス」ともいう。)33と、を備えている。ここで、上アームデバイス32は、固定子モジュール20Aのコイル24に、電源+(プラス)側からの電流を供給するためのスイッチ回路素子であり、下アームデバイス33は、前記コイル24に、電源-(マイナス)側からの電流を供給するためのスイッチ回路素子である。前記スイッチ回路素子は、ON/OFFスイッチ機能と整流機能とを発揮できる構成であれば、様々な回路素子を組み合わせることによって形成することができる。上アームデバイス32よび下アームデバイス33は、対応するコイル24に導線5を介して電気的に接続されている。
【0043】
ベース部材34は、モータ回転軸線Оを中心軸線とする位置に配置された、環状のベース部材である。本開示において、ベース部材34は、薄板のベース板によって形成されている。本開示において、3つの上下アームデバイスセット31は、ベース部材34のモータ回転軸線方向の他方側に、モータ回転軸線Оの周りで周方向に間隔を置いて配置されている。
【0044】
本開示において、パワーモジュール30はさらに、基盤35を備えている。本開示において、上下アームデバイスセット31は、基盤35に取り付けられている。これによって、上下アームデバイスセット31は、基盤35を介して、ベース部材34に取り付けることができる。本開示において、基盤35には、上下アームデバイスセット31に伝達される熱の影響を考慮して、セラミック基盤が用いられている。前記セラミック基盤は、断熱機能を有する。ただし、基盤35は、セラミック基板に限定されるものではない。また、本開示において、パワーモジュール30はさらに、ベース部材34と基盤35との間に、少なくとも1つの中間部材36を備えている。中間部材36としては、例えば、断熱機能、磁気的又は電気的な絶縁機能を有する部材を用いることができる。ただし、中間部材36は、任意の部材であり、省略することも可能である。
【0045】
本開示において、上アームデバイス32および下アームデバイス33はそれぞれ、パワーモジュール制御部40によって、適宜ON/OFF制御される。これによって、本開示において、パワーモジュール30は、モータ2に供給する電流を制御するためのインバータ回路として機能させることができる。
【0046】
固定子モジュール20Aとパワーモジュール30とは、モータ回転軸線方向に整列する位置に配置されている。
【0047】
具体的には、本開示において、固定子モジュール20Aとパワーモジュール30とは、モータ回転軸線Оを共通の中心軸線とする、同一軸線上に配置されている。さらに、本開示において、固定子モジュール20Aは、モータ回転軸線方向の一方側に配置されており、パワーモジュール30は、モータ回転軸線方向の他方側に配置されている。即ち、本開示において、「モータ回転軸線方向に整列する位置に配置されている」とは、固定子モジュール20Aとパワーモジュール30とが、互いにモータ回転軸線Оを中心軸線としてモータ回転軸線方向に隣り合う位置に配置されていることをいう。
【0048】
さらに、固定子モジュール20Aは、ベース部材34のモータ回転軸線方向一方側に取り付けられている。その一方で、パワーモジュール30の上下アームデバイスセット31は、ベース部材34のモータ回転軸線方向他方側に取り付けられている。
【0049】
本開示において、固定子2aは、2つの固定子モジュール20Aを含み、当該2つの固定子モジュール20Aのうち、モータ回転軸線方向他方側に配置された固定子モジュール20Aがパワーモジュール30に取り付けられている。モータ回転軸線方向他方側に配置された当該固定子モジュール20Aは、パワーモジュール30におけるベース部材34のモータ回転軸線方向一方側表面に取り付けられている。ただし、固定子モジュール20Aは、ベース部材34に対して直接的に取り付けることのほか、他の部材を介して間接的に取り付けることもできる。即ち、固定子モジュール20Aは、パワーモジュール30のベース部材34に対して直接的または間接的に取り付けることができる。取付手段としては、例えば、接着剤等の接着手段、ねじ等の締結要素、溶接が挙げられる。
【0050】
その一方で、本開示において、上下アームデバイスセット31は、少なくとも、基盤35を介して、ベース部材34のモータ回転軸線方向他方側表面に取り付けられている。ただし、上下アームデバイスセット31もまた、ベース部材34に対して直接的または間接的に取り付けることができる。取付手段としては、例えば、接着剤等の接着手段、ねじ等の締結要素、ハンダ付けが挙げられる。
【0051】
上述のとおり、本開示のモータシステム1Aは、パワーモジュール30のベース部材34を共用することによって、当該パワーモジュール30のベース部材34に、上下アームデバイスセット31に加えて、モータ2の固定子モジュール20Aを一体的に結合させている。これによって、パワーモジュール30は、
図2に示すように、モータ回転軸線方向において、固定子モジュール20Aと隣接する位置に配置することができる。また、パワーモジュール30が、モータ回転軸線方向において、固定子モジュール20Aと隣接する位置に配置されることによって、パワーモジュール30を、固定子モジュール20Aとともに、モータケース2cの内部に収容させることができる。したがって、モータシステム1Aは、
図2に示すように、モータ2の内部にパワーモジュール30を組み込むことによって小型化が実現されたモータシステムとなる。
【0052】
また、本開示のモータシステム1Aによれば、従来のように、多相モータの外側にパワーコントロールユニットを配置する場合に比べて、固定子モジュール20Aとパワーモジュール30との間の配線(導線5)を短くすることができる。加えて、固定子モジュール20Aとパワーモジュール30との間の配線(導線5)が短くなる分だけ、外部からのノイズに対する耐性が強いモータシステムとなる。さらに、固定子モジュール20Aとパワーモジュール30との間の配線(導線5)が短くなる分だけ、配線作業時における誤配線を軽減することができる。
【0053】
特に、本開示において、固定子モジュール20Aは、モータ回転軸線Оの周りで周方向に相ごとに区画された、複数の相固定子モジュール201によって構成されている。加えて、本開示において、パワーモジュール30もまた、モータ回転軸線の周りで周方向に相ごとに区画された、複数の相パワーモジュール301によって構成されている。
【0054】
図3には、本開示のモータシステム1Aにおける、固定子モジュール20Aがモータ回転軸線方向一方側から概略的に示されている。
【0055】
図3を参照すれば、本開示において、固定子モジュール20Aは、モータ回転軸線Оを中心に120度の間隔で、3つの相固定子モジュール201に区画されている。具体的には、固定子モジュール20Aは、U相固定子モジュール201Uと、V相固定子モジュール201Vと、W相固定子モジュール201Wと、の、3つの相固定子モジュール201によって構成されている。本開示では、3つの相固定子モジュール201は、
図3に示すように、モータ回転軸線方向一方側からみたとき、モータ回転軸線Оを中心に反時計回りに、U相固定子モジュール201U、V相固定子モジュール201V、W相固定子モジュール201W、の順番で配列されている。
【0056】
また、本開示において、3つの相固定子モジュール201はそれぞれ、n個のティース22を備えている。本開示では、n=3である。即ち、本開示において、1つの相固定子モジュール201は、3つのティース22を備えている。これによって、本開示において、固定子モジュール20Aは全体として、9つのティース22を備えている。
【0057】
本開示において、1つのティース22には、1つのコイル24が集中巻きされている。即ち、本開示において、1つの相固定子モジュール201は、3つのコイル24を備えている。これによって、本開示において、固定子モジュール20Aは全体として、9つのコイル24を備えている。本開示では、巻き方向のうちの一方を「+」とした場合、+方向に巻かれたコイル24には、「+」の表記を付し、巻き方向のうちの他方を「-」とした場合、-方向に巻かれたコイル24には、「-」の表記を付している。
【0058】
図3に示すように、U相固定子モジュール201Uは、3つのU相ティース22Uを備えている。U相ティース22Uに巻かれたU相コイル24Uには、パワーモジュール30によって、U相の電流が供給される。ただし、本開示において、U相コイル24Uには、巻き方向の異なる2種類のコイル24Uが含まれている。本開示において、U相固定子モジュール201Uは、+方向に巻かれた1つのU相コイル24U+と、-方向に巻かれた2つのU相コイル24U-と、を備えている。本開示において、U相コイル24U+と、U相コイル24U-とは、モータ回転軸線Оの周りで周方向に交互に配置されている。
【0059】
V相固定子モジュール201Vもまた、3つのV相ティース22Vを備えている。V相ティース22Vに巻かれたV相コイル24Vには、パワーモジュール30によって、V相の電流が供給される。ただし、本開示において、V相コイル24Vにもまた、巻き方向の異なる2種類のコイル24Vが含まれている。本開示において、V相固定子モジュール201Vもまた、+方向に巻かれた1つのV相コイル24V+と、-方向に巻かれた2つのV相コイル24V-と、を備えている。本開示において、V相コイル24V+と、V相コイル24V-ともまた、モータ回転軸線Оの周りで周方向に交互に配置されている。
【0060】
W相固定子モジュール201Wもまた、3つのW相ティース22Wを備えている。W相ティース22Wに巻かれたW相コイル24Wには、パワーモジュール30によって、W相の電流が供給される。ただし、本開示において、W相コイル24Wにもまた、巻き方向の異なる2種類のコイル24Wが含まれている。本開示において、W相固定子モジュール201Wもまた、+方向に巻かれた1つのW相コイル24W+と、-方向に巻かれた2つのW相コイル24W-と、を備えている。本開示において、W相コイル24W+と、V相コイル24W-ともまた、モータ回転軸線Оの周りで周方向に交互に配置されている。
【0061】
図4には、U相固定子モジュール201Uが例示的に示されている。
図4に示すように、本開示において、環状の固定子モジュール20Aは、モータ回転軸線Оを中心に120度の間隔で、3つの相固定子モジュール201に分割することができる。V相固定子モジュール201VおよびW相固定子モジュール201Wは、供給される相電流の種類が異なるだけで、V相固定子モジュール201VおよびW相固定子モジュール201Wの構成は、
図4のU相固定子モジュール201Uと同じである。
【0062】
また、
図5には、固定子モジュール20Aのコアブロック21が概略的に示されている。
図5は、
図3の固定子モジュール20Aからコイル24を取り除いた状態を示している。本開示において、コアブロック21もまた、
図5に示すように、モータ回転軸線Оを中心に120度の間隔で、3つの相コアブロック210に区画されている。具体的には、コアブロック21は、U相コアブロック210Uと、V相コアブロック210Vと、W相コアブロック210Wと、の、3つの相コアブロック210によって構成されている。
【0063】
図6には、U相コアブロック210Uが例示的に示されている。
図6は、
図4のU相固定子モジュール201UからU相コイル24Uを取り除いた状態を示している。
図6に示すように、本開示において、コアブロック21は、モータ回転軸線Оを中心に120度の間隔で、3つの相コアブロック210に分割することができる。V相コアブロック210VおよびW相コアブロック210Wは、巻き付けられる相コイルの種類が異なるだけで、V相コアブロック210VおよびW相コアブロック210Wの構成は、
図6のU相コアブロック210Uと同じである。
【0064】
図7には、本開示のモータシステム1Aにおける、パワーモジュール30がモータ回転軸線方向他方側から概略的に示されている。
【0065】
図7を参照すれば、本開示において、パワーモジュール30は、モータ回転軸線Оを中心に120度の間隔で、3つの相パワーモジュール301に区画されている。具体的には、パワーモジュール30は、U相パワーモジュール301Uと、V相パワーモジュール301Vと、W相パワーモジュール301Wと、の、3つの相パワーモジュール301によって構成されている。本開示では、3つの相パワーモジュール301は、
図7に示すように、モータ回転軸線方向他方側からみたとき、モータ回転軸線Оを中心に時計回りに、U相パワーモジュール301U、V相パワーモジュール301V、W相パワーモジュール301Wの順番で配列されている。
【0066】
U相パワーモジュール301Uは、1つのU相上下アームデバイスセット31Uを備えている。U相上下アームデバイスセット31Uは、1つのU相上アームデバイス32Uと、1つのU相下アームデバイス33Uとを備えている。U相上アームデバイス32Uは、導線5Uを通して、U相固定子モジュール201UのU相コイル24Uに、電源+側からのU相電流を供給する。U相下アームデバイス33Uは、導線5Uを通して、U相コイル24Uに、電源-側からのU相電流を供給する。さらに、本開示において、U相パワーモジュール301Uには、U相コネクタ37U3が設けられている。
【0067】
V相パワーモジュール301Vは、1つのV相上下アームデバイスセット31Vを備えている。V相上下アームデバイスセット31Vは、1つのV相上アームデバイス32Vと、1つのV相下アームデバイス33Vとを備えている。V相上アームデバイス32Vは、導線5Vを通して、V相固定子モジュール201VのV相コイル24Vに、電源+側からのU相電流を供給する。V相下アームデバイス33Vは、導線5Vを通して、V相コイル24Vに、電源-側からのV相電流を供給する。さらに、本開示において、V相パワーモジュール301Vには、V相コネクタ37V3が設けられている。
【0068】
W相パワーモジュール301Wは、1つのW相上下アームデバイスセット31Wを備えている。W相上下アームデバイスセット31Wは、1つのW相上アームデバイス32Wと、1つのW相下アームデバイス33Wとを備えている。W相上アームデバイス32Wは、導線5Wを通して、W相固定子モジュール201WのW相コイル24Wに、電源+側からのU相電流を供給する。W相下アームデバイス33Wは、導線5Wを通して、W相コイル24Wに、電源-側からのW相電流を供給する。さらに、本開示において、W相パワーモジュール301Wには、W相コネクタ37W3が設けられている。
【0069】
加えて、本開示において、パワーモジュール30もまた、モータ回転軸線Оを中心に120度の間隔で、3つの相パワーモジュール301に分割することができる。具体的には、3つの相パワーモジュール301は、環状のベース部材34を、モータ回転軸線Оを中心に120度の間隔で、U相ベース部材34Uと、V相ベース部材34V、W相ベース部材34Wと、の、3つの相ベース部材に分割することによって形成することができる。本開示の場合、3つの相ベース部材34U~34Wは、
図7に示すように、モータ回転軸線方向他方側からみたとき、モータ回転軸線Оを中心に時計回りに、U相ベース部材34U、V相ベース部材34V、W相ベース部材34Wの順番で配列されることになる。
【0070】
図8には、U相パワーモジュール301Uが例示的に示されている。V相パワーモジュール301VおよびW相パワーモジュール301Wは、対応する相コイルの種類が異なるだけで、V相パワーモジュール301VおよびW相パワーモジュール301Wの構成は、
図8のU相パワーモジュール301Uと同じである。
【0071】
図3に示すように、固定子モジュール20Aを、モータ回転軸線Оの周りで周方向に相ごとに区画された、複数の相固定子モジュール201によって構成するとともに、
図7に示すように、パワーモジュール30を、モータ回転軸線Оの周りで周方向に、相ごとに区画された複数の相パワーモジュール301によって構成すれば、コイル24と上下アームデバイスセット31とを、相ごとに容易に関連付けることができる。これによって、本開示において、1つの相固定子モジュール201のコイル24と当該コイル24に対応する上下アームデバイスセット31とを接続する導線5は、相ごとに容易に配線することができる。具体例としては、U相固定子モジュール201Uの相コイル(24U-、24U+、24U-)と、U相上下アームデバイスセット31Uとを接続する導線5Uは、U相の組として容易に配線することができる。加えて、固定子モジュール20Aおよびパワーモジュール30を相ごとに構成したことにより、相ごとのメンテナンスも容易となる。
【0072】
特に、
図3および
図7から明らかように、本開示において、1つの相固定子モジュール201と、当該1つの相固定子モジュール201に対応する相パワーモジュール301とは、モータ回転軸線方向からみたとき、モータ回転軸線Оの周りの周方向で互いに整列する位置に配置されている。
【0073】
本開示において、「モータ回転軸線方向からみたとき、モータ回転軸線Оの周りの周方向で互いに整列する位置に配置されている」とは、固定子モジュール20Aとパワーモジュール30とが、互いにモータ回転軸線Оを中心軸線としてモータ回転軸線方向に隣り合う位置に配置されており、かつ、1つの相固定子モジュール201と、当該1つの相固定子モジュール201に対応する相パワーモジュール301とが、モータ回転軸線方向からみたとき、モータ回転軸線Оの周りの周方向で重複する位置に配置されていることをいう。この場合、1つの相固定子モジュール201と、当該1つの相固定子モジュール201に対応する上下アームデバイスセット31とは、モータ回転軸線Оの周りの周方向において、ベース部材34を挟んで、互いにほぼ真裏の位置に配置されることとなる。具体例としては、
図9に示すように、U相固定子モジュール201UとU相上下アームデバイスセット31Uとは、モータ回転軸線Оの周りの周方向において、ベース部材34を挟んで、互いにほぼ真裏の位置に配置されることとなる。
【0074】
1つの相固定子モジュール201と、当該1つの相固定子モジュール201に対応する相パワーモジュール301とが、モータ回転軸線方向からみたとき、モータ回転軸線Оの周りの周方向で互いに整列する位置に配置されている場合、相固定子モジュール201と当該1つの相固定子モジュール201に対応する上下アームデバイスセット31との間の配線(導線5)を最も短くすることができる。加えて、前記配線(導線5)が最も短くなるため、外部からのノイズに対する耐性にもより強いモータシステムとなる。さらに、前記配線(導線5)がより短くなる分だけ、配線作業時における誤配線をより軽減することができる。
【0075】
また、上述のとおり、固定子モジュール20Aは、相ごとに分割することができる。具体的には、上述のとおり、固定子モジュール20Aは、モータ回転軸線Оの周りで周方向に、複数の相固定子モジュール201に分割することができる。この場合、固定子モジュール20Aに各相に応じた相固定子モジュール201をレイアウトするときに、当該相固定子モジュール201の配列に関するレイアウトを自由に変更することができる。加えて、この場合、相ごとのメンテナンスもより容易となる。
【0076】
同様に、パワーモジュール30もまた、上述のとおり、相ごとに分割することができる。具体的には、上述のとおり、パワーモジュール30もまた、モータ回転軸線Оの周りで周方向に、複数の相パワーモジュール301に分割することができる。この場合、パワーモジュール30に各相に応じた上下アームデバイスセット31をレイアウトするときに、当該上下デバイスアームセット31の配列に関するレイアウトを自由に変更することができる。加えて、この場合、相ごとのメンテナンスもより容易となる。
【0077】
固定子モジュール20Aおよびパワーモジュール30の少なくともいずれか一方を分割した場合の具体例としては、
図10に示すように、3つの分割させたうちのU相固定子モジュール201Uと、同じく3つの分割させたうちのU相パワーモジュール301Uとを組み合わせることによって、同じ相の相固定子モジュール201と相パワーモジュール301とを、ベース部材34Uを挟んで、互いにほぼ真裏の位置に容易に配置することができる。
【0078】
また、
図2を参照すれば、本開示において、パワーモジュール制御部40は、モータ回転軸線方向において、パワーモジュール30を挟んで、固定子モジュール20Aと反対側(本開示では、モータ回転軸線方向他方側)の位置に配置されている。
【0079】
本開示において、パワーモジュール制御部40は、モータケース2cの内部の最もモータ回転軸線方向他方に配置されている。パワーモジュール制御部40は、マイクロコンピュータ、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などの制御ハードウェア41を備えている。本開示において、パワーモジュール制御部40は、制御ハードウェア41に加えて、当該制御ハードウェア41が取り付けられたプリント基板42を備えている。また、本開示において、パワーモジュール制御部40は、通信ケーブル37によってパワーモジュール30に接続されている。
【0080】
パワーモジュール制御部40を、モータ回転軸線方向において、パワーモジュール30を挟んで、モータ回転軸線方向他方側の位置に配置した場合、パワーモジュール制御部40は、
図2に示すように、モータ回転軸線方向において、パワーモジュール30と隣接する位置に配置することができる。これによって、
図2に示すように、パワーモジュール制御部40もまた、モータケース2cの内部に収容させることができる。したがって、モータシステム1Aは、
図2に示すように、モータ2の内部にパワーモジュール制御部40を組み込むことによって、さらに小型化が実現されたモータシステムとなる。
【0081】
また、パワーモジュール制御部40を、モータ回転軸線方向において、パワーモジュール30を挟んで、モータ回転軸線方向他方側の位置に配置した場合、パワーモジュール30とパワーモジュール制御部40との間の配線(通信ケーブル37)を短くすることができる。加えて、前記配線(通信ケーブル37)が短くなる分だけ、外部からのノイズに対する耐性が強いモータシステムとなる。さらに、前記配線(通信ケーブル37)が短くなる分だけ、配線作業時における誤配線を軽減することができる。
【0082】
図11には、パワーモジュール制御部40がモータ回転軸線方向一方側から概略的に示されている。
【0083】
本開示において、パワーモジュール制御部40は、複数の制御ハードウェア41と、これらの制御ハードウェア41が取り付けられた環状のプリント基板42と、を備えている。本開示において、制御ハードウェア41には、例えば、マイクロコンピュータ41a、FPGA41bが含まれる。
【0084】
さらに、本開示において、パワーモジュール制御部40には、プリント基板42上に、U相コネクタ37U4、V相コネクタ37V4、W相コネクタ37W4が設けられている。U相用の通信ケーブル37の一方の端子は、
図7のU相パワーモジュール301UのU相コネクタ37W3に接続され、U相用の通信ケーブル37の他方の端子は、
図11のU相コネクタ37U4に接続される。同様に、V相用の通信ケーブル37の一方の端子は、
図7のV相パワーモジュール301VのV相コネクタ37V3に接続され、V相用の通信ケーブル37の他方の端子は、
図11のV相コネクタ37V4に接続される。W相用の通信ケーブル37の一方の端子は、
図7のW相パワーモジュール301WのW相コネクタ37W3に接続され、W相用の通信ケーブル37の他方の端子は、
図11のWコネクタ37W4に接続される。
【0085】
特に、
図7および
図11から明らかように、本開示において、パワーモジュール30の、U相コネクタ37U3、V相コネクタ37V3、W相コネクタ37W3と、パワーモジュール制御部40の、U相コネクタ37U4、V相コネクタ37V4、W相コネクタ37W4とはそれぞれ、モータ回転軸線方向で向かい合ったとき、モータ回転軸線Оの周りの周方向で互いに整列する位置に配置されている。この場合、パワーモジュールの相コネクタと、パワーモジュール制御部の相コネクタとは、モータ回転軸線Оの周りの周方向において、互いにほぼ向かい合う位置に配置されることとなる。この場合、パワーモジュール30とパワーモジュール制御部40との間の配線(通信ケーブル37)を最も短くすることができる。加えて、パワーモジュール30とパワーモジュール制御部40との間の配線が最も短くなるため、外部からのノイズに対する耐性にもより強いモータシステムとなる。さらに、パワーモジュール30とパワーモジュール制御部40との間の配線がより短くなる分だけ、配線作業時における誤配線をより軽減することができる。
【0086】
図12には、モータシステム1Aに含まれる基本的な回路構成と、モータシステム1Aにおける、固定子モジュール20A、パワーモジュール30およびパワーモジュール制御部40との関係が概略的に示されている。
【0087】
図12に示すように、本開示において、モータ2を駆動させるための駆動回路の基本構成は、U相上下アームデバイスセット31U、V相上下アームデバイスセット31VおよびW相上下アームデバイスセット31Wの、3つの上下アームデバイスセット31によって形成されたインバータ回路を含んでいる。本開示において、前記インバータ回路の上アームおよび下アームのそれぞれは、パワーモジュール制御部40からのゲート駆動信号によって制御されている。本開示において、パワーモジュール制御部40には、モータ2のモータ軸2dの回転位置がホールIC信号またはエンコーダ信号によってフィードバックされている。
【0088】
上記インバータ回路に接続される電源には、直流電源または交流電源を使用することができる。即ち、モータ2を駆動させるための駆動回路は、直流インバータ(DC/ACコンバータ)、交流インバータ(AC/ACコンバータ)のいずれか一方を使用することができる。
【0089】
上述のとおり、本開示において、モータ2は、極数がPであり、スロット数がSである、ブラシレス三相交流モータである。モータ2は、極数Pおよびスロット数Sが以下の関係式(1)および(2)を満たしている。
【0090】
P=3n±1 (n:1を除く正の奇数)・・・(1)
S=3n (n:1を除く正の奇数)・・・(2)
【0091】
上記(1)および(2)の条件を満たす、ブラシレス三相交流モータは、「系列II」と呼ばれる種類に該当する。系列IIのブラシレス三相交流モータは、U相、V相、W相の、三相のそれぞれを、モータ回転軸線Оの周りを周方向に120度の範囲で区画することができる。この場合、固定子モジュール20Aに、U相、V相、W相の、各相に応じた相固定子モジュール201をレイアウトするとき、U相、V相、W相のいずれか1つの相に対して2つ以上の相固定子モジュール201を構成することによって対応させるような必要はなく、1つの相固定子モジュール201のみを構成することによって対応させることができる。これによって、固定子モジュール20Aに、U相、V相、W相の、各相に応じた相固定子モジュール201を容易にレイアウトすることができる。加えて、系列IIのブラシレス三相交流モータは、U相、V相、W相の、三相のそれぞれに、奇数個の相スロット(相コイル)を配置することができる。
【0092】
上述のとおり、本開示のモータ2は、系列IIの代表例である、8P9Sのブラシレス三相交流モータである。
【0093】
図13には、モータシステム1Aにおける、モータ2の回転子2b(モータ軸2d)がモータ回転軸線Оの周りを周方向に1回転するまでの周期(1回転周期)Tmを基準として、回転子2bの磁極(N、S)の配列と、固定子モジュール20Aのコイル24(ティース22)の配列との関係が、各相パワーモジュール301とともに概略的に示されている。なお、
図13中、符号「U」、「V」および「W」はそれぞれ、各相のコイル24(ティース22)であり、符号「+」および「-」は、上述のとおり、コイル24の巻き方向を示している。また、
図14には、モータシステム1Aにおける、モータ回転軸線Оの周りの周方向の位置で、回転子2bの磁極(N、S)の配列と、相固定子モジュール201の配列との関係が概略的に示されている。
【0094】
図13および
図14を参照すれば、本開示において、固定子モジュール20Aに、U相、V相、W相の、各相に応じた相固定子モジュール201をレイアウトするとき、U相、V相、W相のいずれか1つの相に対して2つ以上の相固定子モジュール201を構成することによって対応させるような必要はなく、1つの相固定子モジュール201のみを構成することによって対応させることができることがわかる。
【0095】
即ち、本開示において、固定子モジュール20Aは、モータ回転軸線Оの周りで周方向に相ごとに区画された、複数の相固定子モジュール201によって構成されており、各相に応じた上下アームデバイスセット31とそれに対応する相固定子モジュール201とが一対になっている。
【0096】
具体的には、U相において、U相上下アームデバイスセット31Uと、それに対応するU相固定子モジュール201Uとは、一対になっている。また、V相において、V相上下アームデバイスセット31Vと、それに対応するV相固定子モジュール201Vとは、一対になっている。さらに、W相において、W相上下アームデバイスセット31Wと、それに対応するW相固定子モジュール201Wとは、一対になっている。
【0097】
本開示のように、各相に応じた上下アームデバイスセット31とそれに対応する相固定子モジュール201とを一対とすれば、上述のとおり、相固定子モジュール201と当該1つの相固定子モジュール201に対応する上下アームデバイスセット31との間の配線(導線5)を最も短くすることができる。加えて、前記配線(導線5)が最も短くなるため、外部からのノイズに対する耐性にもより強いモータシステムとなる。さらに、前記配線(導線5)がより短くなる分だけ、配線作業時における誤配線をより軽減することができる。
【0098】
ただし、モータ2は、極数Pおよびスロット数Sが以下の、(3)および(4)の関係を満たす、ブラシレス三相交流モータを採用することができる。このブラシレス三相交流モータは、「系列III」と呼ばれる種類に該当する。系列IIIの代表例には、10P12S(n=2)のブラシレス三相交流モータが挙げられる。
【0099】
P=6n±2 (n:偶数)・・・(3)
S=6n (n:偶数)・・・(4)
【0100】
また、モータ2には、極数P、スロット数SがP:S=4:3の関係を満たす、ブラシレス三相交流モータを採用することができる。このブラシレス三相交流モータは、「系列I」と呼ばれる種類に該当する。系列Iの代表例には、6P9Sのブラシレス三相交流モータが挙げられる。
【0101】
次いで、
図15には、本発明の第2実施形態に係る、モータシステム1Bがモータ回転軸線Оを含んだ断面で概略的に示されている。
【0102】
本開示において、モータ2は、ラジアルギャップモータである。本開示において、固定子2aのティース27は、モータ回転軸線方向に対して直交する方向(以下、モータ径方向」ともいう。)に延びている。
【0103】
本開示において、固定子2aは、1つの固定子モジュール20Bを備えている。固定子モジュール20Bは、モータシステム1Aと同様、モータ回転軸線Оの周りで周方向に間隔を置いて配置された複数のティース27にコイル24が巻き付けられた固定子モジュールである。
【0104】
本開示において、固定子モジュール20Bは、モータ回転軸線Оの周りで周方向に間隔を置いて配置された複数のティース27と、当該複数のティース27が設けられたリングコア28とを備えている。本開示において、リングコア28は、モータ回転軸線Оを中心軸線とする位置に配置された、環状のリングコアである。本開示において、リングコア28には、外側リングコア28aと、内側リングコア28bとが含まれている。本開示において、ティース27は、外側リングコア28aと、内側リングコア28bとの間に配置されており、外側リングコア28aおよび内側リングコア28bのそれぞれに結合している。また、本開示において、ティース27およびリングコア28は、一体に形成されており、固定子モジュール20Aと同様、1つのコアブロック21を形成している。このため、本開示においても、コアブロック21は全体として、ヨーク(継鉄)として機能する。
【0105】
また、本開示においても、コイル24は、それぞれ、1つのティース27に対して集中巻によって巻線されている。本開示において、固定子モジュール20Bもまた、固定子モジュール20Aと同様、9つのティース27を備えている。即ち、本開示において、固定子モジュール20Bもまた、固定子モジュール20Aと同様、9つのコイル24を備えている。
【0106】
一方、本開示において、回転子2bは、モータ回転軸線方向において、固定子モジュール20Aと隣り合う位置に配置されている。本開示において、回転子2bは、固定子モジュール20Bよりも、モータ回転軸線方向一方側の位置に配置されている。ただし、本開示において、回転子本体2b1は、モータ回転軸線Оの周りで周方向に、固定子モジュール20Bを径方向外側から取り囲むように形成されている。
【0107】
本開示において、回転子本体2b1は、モータ回転軸線Оを中心軸線とする位置に配置された、有底円筒形状の回転子本体である。回転子本体2b1は、円筒本体部2b11と、当該円筒本体部2b11の一端を閉じる底部2b12とを備えている。複数の永久磁石2b2は、それぞれ、モータ回転軸線Оの周りを周方向に間隔をおいて、円筒本体部2b11の内周面に取り付けられている。複数の永久磁石2b2は、それぞれ、周方向に隣り合う永久磁石2b2の磁極(N、S)が異なるように配置されている。本開示において、回転子2bは、モータシステム1Aと同様、8つの永久磁石2b2を備えている。即ち、本開示において、回転子2bもまた、極数8(P=8)の回転子である。
【0108】
本開示においてもまた、パワーモジュール30は、複数の上下アームデバイスセット31と、当該上下アームデバイスセット31が取り付けられたベース部材34と、を備えている。本開示においても、パワーモジュール30は、3つの上下アームデバイスセット31を備えている。ただし、本開示において、ベース部材34は、モータシステム1Aとは異なる。
【0109】
本開示において、ベース部材34は、環状板部34aと、当該環状板部34aに連なる円筒部34bとを備えている。本開示において、円筒部34bは、環状板部34aのモータ回転軸線方向一方側表面から突出している。本開示において、ベース部材34は、モータ回転軸線Оを中心軸線とする位置に配置されている。本開示において、環状板部34aは、薄板によって形成されている。本開示において、3つの上下アームデバイスセット31は、環状板部34aのモータ回転軸線方向の他方側に、モータ回転軸線Оの周りで周方向に間隔を置いて配置されている。
【0110】
本開示においてもまた、固定子モジュール20Bとパワーモジュール30とは、モータ回転軸線方向に整列する位置に配置されている。
【0111】
具体的には、本開示においてもまた、固定子モジュール20Bとパワーモジュール30とは、モータ回転軸線Оを共通の中心軸線とする、同一軸線上に配置されている。さらに、本開示においても、固定子モジュール20Bは、モータ回転軸線方向の一方側に配置されており、パワーモジュール30は、モータ回転軸線方向の他方側に配置されている。即ち、本開示において、「モータ回転軸線方向に整列する位置に配置されている」とは、固定子モジュール20Bとパワーモジュール30とが、互いにモータ回転軸線Оを中心軸線としてモータ回転軸線方向に隣り合う位置に配置されていることをいう。
【0112】
さらに、固定子モジュール20Bもまた、モータシステム1Aと同様、ベース部材34のモータ回転軸線方向一方側に取り付けられている。ただし、本開示において、固定子モジュール20Bは、ベース部材34の円筒部34bの外周面に取り付けられている。その一方で、パワーモジュール30の上下アームデバイスセット31もまた、ベース部材34のモータ回転軸線方向他方側に取り付けられている。ただし、本開示において、上下アームデバイスセット31は、ベース部材34の環状板部34aのモータ回転軸線方向他方側表面に取り付けられている。
【0113】
本開示のモータシステム1Bもまた、パワーモジュール30のベース部材34を共用することによって、当該パワーモジュール30のベース部材34に、上下アームデバイスセット31に加えて、モータ2の固定子モジュール20Bを一体的に結合させている。これによって、パワーモジュール30は、
図15に示すように、モータ回転軸線方向において、固定子モジュール20Aと隣接する位置に配置することができる。また、パワーモジュール30が、モータ回転軸線方向において、固定子モジュール20Bと隣接する位置に配置されることによって、パワーモジュール30を、固定子モジュール20Bとともに、モータケース2cの内部に収容させることができる。したがって、モータシステム1Bもまた、
図15に示すように、モータ2の内部にパワーモジュール30を組み込むことによって小型化が実現されたモータシステムとなる。
【0114】
また、本開示のモータシステム1Bによっても、従来のように、多相モータの外側にパワーコントロールユニットを配置する場合に比べて、固定子モジュール20Bとパワーモジュール30との間の配線(導線5)を短くすることができる。加えて、固定子モジュール20Bとパワーモジュール30との間の配線(導線5)が短くなる分だけ、外部からのノイズに対する耐性が強いモータシステムとなる。さらに、固定子モジュール20Bとパワーモジュール30との間の配線(導線5)が短くなる分だけ、配線作業時における誤配線を軽減することができる。
【0115】
図16には、モータシステム1Bに設けられた固定子モジュール20が、ベース部材34に取り付けた状態で、モータ回転軸線方向一方側から概略的に示されている。
【0116】
図16を参照すれば、本開示において、固定子モジュール20Bもまた、モータ回転軸線Оの周りで周方向に、相ごとに区画された複数の相固定子モジュール201によって構成されている。また、本開示において、パワーモジュール30もまた、モータ回転軸線の周りで周方向に、相ごとに区画された複数の相パワーモジュール301によって構成されている。
【0117】
図16を参照すれば、本開示において、固定子モジュール20Bもまた、モータ回転軸線Оを中心に120度の間隔で、3つの相固定子モジュール201に区画されている。本開示においても、3つの相固定子モジュール201は、
図16に示すように、モータ回転軸線方向一方側からみたとき、モータ回転軸線Оを中心に反時計回りに、U相固定子モジュール201U、V相固定子モジュール201V、W相固定子モジュール201W、の順番で配列されている。
【0118】
また、
図17は、モータシステム1Bに設けられた固定子モジュール20Bを形成する複数の相固定子モジュール201のうちの1つがモータ回転軸線方向一方側から概略的に示されている。
【0119】
図17には、U相固定子モジュール201Uが例示的に示されている。
図17に示すように、本開示においても、環状の固定子モジュール20Bは、モータ回転軸線Оを中心に120度の間隔で、3つの相固定子モジュール201に分割することができる。本開示においても、V相固定子モジュール201VおよびW相固定子モジュール201Wは、供給される相電流の種類が異なるだけで、V相固定子モジュール201VおよびW相固定子モジュール201Wの構成は、
図17のU相固定子モジュール201Uと同じである。
【0120】
さらに、
図18には、
図17の相固定子モジュール201を形成する、相コアブロック210がモータ回転軸線方向から概略的に示されている。
図18には、
図17の相固定子モジュール201UからU相コイル24Uを取り除いた状態を示している。
【0121】
本開示においても、コアブロック21は、モータ回転軸線Оを中心に120度の間隔で、3つの相コアブロック210に区画されている。具体的には、本開示においても、コアブロック21は、U相コアブロック210Uと、V相コアブロック210Vと、W相コアブロック210Wと、の、3つの相コアブロック210によって構成されている。
【0122】
図18に示すように、本開示において、コアブロック21は、モータ回転軸線Оを中心に120度の間隔で、3つの相コアブロック210に分割することができる。V相コアブロック210VおよびW相コアブロック210Wは、巻き付けられる相コイルの種類が異なるだけで、V相コアブロック210VおよびW相コアブロック210Wの構成は、
図18のU相コアブロック210Uと同じである。
【0123】
また、本開示においても、パワーモジュール30は、3つの上下アームデバイスセット31を有し、当該3つの上下アームデバイスセット31はそれぞれ、モータ回転軸線方向他方側からみたとき、
図7と同様の配列によって、ベース部材34における環状板部34aのモータ回転軸線方向他方側表面に取り付けられている。
【0124】
したがって、
図16に示すように、固定子モジュール20Bを、モータ回転軸線Оの周りで周方向に相ごとに区画された、複数の相固定子モジュール201によって構成するとともに、
図7に示すように、パワーモジュール30を、モータ回転軸線Оの周りで周方向に、相ごとに区画された複数の相パワーモジュール301によって構成すれば、モータシステム1Aと同様、コイル24と上下アームデバイスセット31とを、相ごとに容易に関連付けることができる。これによって、本開示において、1つの相固定子モジュール201のコイル24と当該コイル24に対応する上下アームデバイスセット31とを接続する導線5は、相ごとに容易に配線することができる。具体例としては、U相固定子モジュール201Uの相コイル(24U-、24U+、24U-)と、U相上下アームデバイスセット31Uとを接続する導線5Uは、U相の組として、容易に配線することができる。加えて、本開示においても、固定子モジュール20Bおよびパワーモジュール30を相ごとに構成したことにより、相ごとのメンテナンスも容易となる。
【0125】
特に、
図16および
図7から明らかように、本開示において、1つの相固定子モジュール201と、当該1つの相固定子モジュール201に対応する相パワーモジュール301とは、モータシステム1Aと同様、モータ回転軸線方向からみたとき、モータ回転軸線Оの周りの周方向で互いに整列する位置に配置されている。本開示においても、「モータ回転軸線方向からみたとき、モータ回転軸線Оの周りの周方向で互いに整列する位置に配置されている」とは、固定子モジュール20Bとパワーモジュール30とが、互いにモータ回転軸線Оを中心軸線としてモータ回転軸線方向に隣り合う位置に配置されており、かつ、1つの相固定子モジュール201と、当該1つの相固定子モジュール201に対応する相パワーモジュール301とが、モータ回転軸線方向からみたとき、モータ回転軸線Оの周りの周方向で重複する位置に配置されていることをいう。この場合、本開示においても、モータシステム1Aと同様、1つの相固定子モジュール201と、当該1つの相固定子モジュール201に対応する上下アームデバイスセット31とは、モータ回転軸線Оの周りの周方向において、ベース部材34を挟んで、互いにほぼ真裏の位置に配置されることとなる。具体例としては、
図19に示すように、U相固定子モジュール201UとU相上下アームデバイスセット31Uとは、モータ回転軸線Оの周りの周方向において、ベース部材34の環状板部34aを挟んで、互いにほぼ真裏の位置に配置されることとなる。この場合、相固定子モジュール201と当該1つの相固定子モジュール201に対応する上下アームデバイスセット31との間の配線(導線5)を最も短くすることができる。加えて、前記配線(導線5)が最も短くなるため、外部からのノイズに対する耐性にもより強いモータシステムとなる。さらに、前記配線(導線5)がより短くなる分だけ、配線作業時における誤配線をより軽減することができる。
【0126】
また、上述のとおり、固定子モジュール20Bもまた、
図17に示すように、相ごとに分割することができる。この場合もまた、モータシステム1Aと同様、固定子モジュール20Aに各相に応じた相固定子モジュール201をレイアウトするときに、当該相固定子モジュール201の配列に関するレイアウトを自由に変更することができる。加えて、この場合、本開示においても、相ごとのメンテナンスもより容易となる。
【0127】
同様に、パワーモジュール30もまた、上述のとおり、相ごとに分割することができる。具体的には、上述のとおり、パワーモジュール30もまた、モータ回転軸線Оの周りで周方向に、複数の相パワーモジュール301に分割することができる。この場合もまた、モータシステム1Aと同様、パワーモジュール30に各相に応じた上下アームデバイスセット31をレイアウトするときに、当該上下アームデバイスセット31の配列に関するレイアウトを自由に変更することができる。加えて、この場合、本開示においても、相ごとのメンテナンスもより容易となる。
【0128】
固定子モジュール20Bおよびパワーモジュール30の少なくともいずれか一方を分割した場合の具体例としては、
図19に示すように、3つの分割させたうちのU相固定子モジュール201Uと、同じく3つの分割させたうちのU相パワーモジュール301Uとを組み合わせることによって、同じ相の相固定子モジュール201と相パワーモジュール301とを、ベース部材34Uの環状板部34aを挟んで、互いにほぼ真裏の位置に容易に配置することができる。
【0129】
なお、本開示において、パワーモジュール制御部40もまた、
図11と同様の構成である。このため、モータシステム1Bもまた、
図15に示すように、モータ2の内部にパワーモジュール制御部40を組み込むことによって、さらに小型化が実現されたモータシステムとなる。本開示においても、モータシステム1Aと同様、パワーモジュール30とパワーモジュール制御部40との間の配線(通信ケーブル37)を短くすることができる。加えて、本開示においても、前記配線(通信ケーブル37)が短くなる分だけ、外部からのノイズに対する耐性が強いモータシステムとなる。さらに、本開示においても、前記配線(通信ケーブル37)が短くなる分だけ、配線作業時における誤配線を軽減することができる。
【0130】
本開示のモータ2もまた、極数がPであり、スロット数がSである、ブラシレス三相交流モータである。モータ2は、極数Pおよびスロット数Sが以下の関係式(1)および(2)を満たしている。
【0131】
P=3n±1 (n:1を除く正の奇数)・・・(1)
S=3n (n:1を除く正の奇数)・・・(2)
【0132】
即ち、本開示のモータ2もまた、系列IIのブラシレス三相交流モータである。このため、本開示においても、上述のとおり、U相、V相、W相の、三相のそれぞれを、モータ回転軸線Оの周りを周方向に120度の範囲で区画することができる。このため、本開示のモータシステム1Bもまた、モータシステム1Aと同様、固定子モジュール20Aに、U相、V相、W相の、各相に応じた相固定子モジュール201をレイアウトするとき、U相、V相、W相のいずれか1つの相に対して2つ以上の相固定子モジュール201を構成することによって対応させるような必要はなく、1つの相固定子モジュール201のみを構成することによって対応させることができる。これによって、本開示のモータシステム1Bもまた、固定子モジュール20Aに、U相、V相、W相の、各相に応じた相固定子モジュール201を容易にレイアウトすることができる。加えて、本開示のモータシステム1Bもまた、系列IIのブラシレス三相交流モータは、U相、V相、W相の、三相のそれぞれに、奇数個の相スロット(相コイル)を配置することができる。
【0133】
上述のとおり、本開示のモータ2もまた、系列IIの代表例である、8P9Sのブラシレス三相交流モータである。
【0134】
このため、本開示のモータ2もまた、
図13および
図14に示すように、固定子モジュール20Aに、U相、V相、W相の、各相に応じた相固定子モジュール201をレイアウトするとき、U相、V相、W相のいずれか1つの相に対して2つ以上の相固定子モジュール201を構成することによって対応させるような必要はなく、1つの相固定子モジュール201のみを構成することによって対応させることができる。
【0135】
即ち、本開示のモータシステム1Bもまた、モータシステム1Aと同様、固定子モジュール20Aは、モータ回転軸線Оの周りで周方向に相ごとに区画された、複数の相固定子モジュール201によって構成されており、各相に応じた上下アームデバイスセット31とそれに対応する相固定子モジュール201とが一対になっている。
【0136】
したがって、本開示のモータシステム1Bもまた、各相に応じた上下アームデバイスセット31とそれに対応する相固定子モジュール201とを一対とすることにより、上述のとおり、相固定子モジュール201と当該1つの相固定子モジュール201に対応する上下アームデバイスセット31との間の配線(導線5)を最も短くすることができる。加えて、前記配線(導線5)が最も短くなるため、外部からのノイズに対する耐性にもより強いモータシステムとなる。さらに、前記配線(導線5)がより短くなる分だけ、配線作業時における誤配線をより軽減することができる。
【0137】
また、上記の各実施形態において、コイル24は、それぞれ、複数のティース22(27)に対して分布巻によって巻線されているものとすることができる。
【0138】
図20には、ティース22(27)に対してコイル24を布巻きで巻き付けた状態が概略的に示されている。
【0139】
図20に示すように、分布巻は、コイル24が複数のティース22(28)にまたがって巻き付けられたものである。上記の各実施形態には、前記分布巻を採用することができる。
【0140】
上述したところは、本発明に係る、例示的な実施形態を示したにすぎず、特許請求の範囲に従えば、様々な変更が可能となる。例えば、上記の各実施形態に含まれる構成又は機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能である。また、上記の一実施形態に含まれる構成又は機能等は、他の実施形態に組み合わせて用いることができ、複数の構成又は機能等を1つに組み合わせたり、分割したり、或いは一部を省略したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0141】
1:モータシステム(基本構成), 1A:モータシステム(第1実施形態), 1B:モータシステム(第2実施形態), 2:モータ(多相モータ), 2a:固定子, 2b:回転子, 2b1:回転子本体部, 2b2:永久磁石, 2c:モータケース, 2d:モータ軸, 3:制御ドライバ, 5:導線, 20A,固定子モジュール(第1実施形態), 20B,固定子モジュール(第2実施形態), 21:コアブロック, 22:ティース, 23:バックコア, 24:コイル, 27:ティース, 28:リングコア, 28a:外側リングコア, 28b:内側リングコア, 201:相固定子モジュール, 210:相コアブロック, 30:パワーモジュール, 31:上下アームデバイスセット, 32:上アームパワーデバイス, 33:下アームパワーデバイス, 34:ベース部材, 34a:環状板部3, 34b:円筒状部, 34U:U相ベース部材, 34V:V相ベース部材, 34W:W相ベース部材, 35:基盤, 36:中間部材, 37:通信ケーブル, 301:相パワーモジュール, 40:パワーモジュール制御部, 41:制御ハードウェア, 41a:マイクロコンピュータ, 41b:FPGA, 42:プリント基板, 50:変速機, О:モータ回転軸線
【手続補正書】
【提出日】2023-08-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多相モータをインバータ制御するための、モータシステムであって、
モータ回転軸線の周りで周方向に間隔を置いて配置された複数のティースにコイルが巻き付けられた固定子モジュールと、それぞれが各相に対応している複数の上下アームデバイスセットが、ベース部材に取り付けられたパワーモジュールと、を備えており、
前記固定子モジュールと前記パワーモジュールとは、モータ回転軸線方向に整列する位置に配置されており、
前記固定子モジュールは、前記ベース部材のモータ回転軸線方向一方側に取り付けられており、前記複数の上下アームデバイスセットは、前記ベース部材のモータ回転軸線方向他方側に取り付けられており、
前記固定子モジュールは、モータ回転軸線の周りで周方向に相ごとに区画された、複数の相固定子モジュールによって構成されており、
前記パワーモジュールは、モータ回転軸線の周りで周方向に相ごとに区画された、複数の相パワーモジュールによって構成されている、モータシステム。
【請求項2】
前記相固定子モジュールと、当該相固定子モジュールに対応する前記相パワーモジュールとは、モータ回転軸線方向からみたとき、モータ回転軸線の周りの周方向で互いに整列する位置に配置されている、請求項1に記載されたモータシステム。
【請求項3】
前記相固定子モジュールは、相ごとに分割されている、請求項1または2に記載されたモータシステム。
【請求項4】
前記相パワーモジュールは、相ごとに分割されている、請求項1~3のいずれか1項に記載されたモータシステム。
【請求項5】
前記パワーモジュールを制御するパワーモジュール制御部をさらに備えており、前記パワーモジュール制御部は、モータ回転軸線方向において、前記パワーモジュールを挟んで、前記固定子モジュールと反対側の位置に配置されている、請求項1~4のいずれか1項に記載されたモータシステム。
【請求項6】
前記多相モータは、極数がPであり、スロット数がSである、ブラシレス三相交流モータであり、極数Pおよびスロット数Sが以下の関係式(1)および(2)を満たす、請求項1~5のいずれか1項に記載されたモータシステム。
P=3n±1 (n:1を除く正の奇数)・・・(1)
S=3n (n:1を除く正の奇数)・・・(2)
【請求項7】
前記コイルは、それぞれ、1つの前記ティースに対して集中巻によって巻線されている、請求項1~6のいずれか1項に記載されたモータシステム。
【請求項8】
前記固定子モジュールは、モータ回転軸線の周りで周方向に相ごとに区画された、複数の相固定子モジュールによって構成されており、各相に応じた前記上下アームデバイスセットとそれに対応する前記相固定子モジュールとが一対になっている請求項6または7に記載されたモータシステム。
【請求項9】
前記コイルは、それぞれ、複数の前記ティースに対して分布巻によって巻線されている、請求項1~6のいずれか1項に記載されたモータシステム。
【請求項10】
前記多相モータは、アキシャルギャップモータである、請求項1~9のいずれか1項に記載されたモータシステム。
【請求項11】
前記多相モータは、ラジアルギャップモータである、請求項1~9のいずれか1項に記載されたモータシステム。
【請求項12】
変速機を付加して備える、請求項1~11のいずれか1項に記載されたモータシステム。