(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147100
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】飲料用紙容器及び飲料用紙容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 3/14 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
B65D3/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054666
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000223193
【氏名又は名称】東罐興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】一倉 慎二
(72)【発明者】
【氏名】栗原 伸一郎
(57)【要約】
【課題】飲料用紙容器の底部に加わった衝撃により、その底部が飲料用紙容器の飲料が漏れ出す状態まで破損してしまうおそれを大幅に低減可能な飲料用紙容器を提供する。
【解決手段】飲料用紙容器1は、容器底部11と、容器底部11の周囲に立設された筒状の容器胴部12とを備え、容器底部11の外周部が下方に折り返された下方折返部110は、その外側面が、容器胴部12の内周部と対向しており、この対向部分111は、下側に容器胴部12の内周部と接着固定された接着固定部111aと、上側に容器胴部12の内周部と未接着の変位代部111bと、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器底部と、当該容器底部の周囲に立設された筒状の容器胴部とを備え、
前記容器底部の外周部が下方に折り返された下方折返部は、その外側面が、前記容器胴部の内周部と対向しており、
当該対向部分は、下側に当該容器胴部の内周部と接着固定された接着固定部と、上側に当該容器胴部の内周部と未接着の変位代部と、を有すること
を特徴とする飲料用紙容器。
【請求項2】
前記容器底部の上面の径をa、前記容器底部の上面に荷重を加え、変形したときの当該容器底部の上面の径をb、前記変位代部の長さをcとした際、a+2c≧bの関係が成り立つこと
を特徴とする請求項1に記載の飲料用紙容器。
【請求項3】
前記対向部分における前記接着固定部の占める面積割合が、70%以上、80%以下に設定されていること
を特徴とする請求項1又は2に記載の飲料用紙容器。
【請求項4】
前記下方折返部の下端部から前記容器底部の上面までの底高さは、3~14mmであること
を特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の飲料用紙容器。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の飲料用紙容器の製造方法であって、
前記下方折返部を形成するための熱融着段階で用いるボトムローラとして、その先端側の角部を面取り加工又はR加工した前記変位代部を形成可能なものを用いること
を特徴とする飲料用紙容器の製造方法。
【請求項6】
請求項1~4の何れか1項に記載の飲料用紙容器の製造方法であって、
前記下方折返部を形成するための熱融着段階で用いるボトムバーナを、前記変位代部を形成可能な位置で止め、熱溶融作業を行うこと
を特徴とする飲料用紙容器の製造方法。
【請求項7】
請求項1~4の何れか1項に記載の飲料用紙容器の製造方法であって、
前記下方折返部を形成するための熱融着段階で用いるパイロットリングとして、その後端側に逃しを設けた前記変位代部を形成可能なものを用いること
を特徴とする飲料用紙容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷飲料を収容する飲料用紙容器において、飲料用紙容器の底部に加わった衝撃により、その底部が飲料用紙容器の飲料が漏れ出す状態まで破損してしまうおそれを大幅に低減可能な飲料用紙容器、及びこの飲料用紙容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年において、ディスペンサーやコーヒーマシンからジュースやアイスコーヒー等の冷飲料をその場で抽出して提供する業態が浸透しつつある。特にアイスコーヒーは、コーヒーマシンの技術の進歩に伴い、エスプレッソ抽出やドリップ抽出等、焙煎方式の切り替えも可能になっている。このため、コーヒーショップのみならずコンビニエンスストアにおいても、このようなコーヒーマシンを設置することで、非常に上質でコクのある風味を醸し出したアイスコーヒーを顧客に提供できるようになっている。
【0003】
例えばコンビニエンストアにおいて冷飲料を提供する場合、氷を充填したプラスチック製の容器をコーヒーマシンにおける載置部に載置し、押しボタンを押圧する。これにより、注出口から冷飲料を容器内に注ぎ込むことができる。このような冷飲料を顧客に提供する上では、事前に容器内に氷を充填する必要があるが、通常は製氷会社の氷充填機により容器内に氷を自動充填し、トップシールして箱詰めし、各コンビニエンスストアにこれらを運搬する。氷充填機により氷を自動充填する場合、氷排出部から氷を容器に落下させることにより実現することができる。
【0004】
ところで、最近の環境保護への社会的要請の下、冷飲料を収容する容器も、材質をプラスチック製から紙製に変更する必要がある。従来から紙製の容器に関する技術は各種提案されているが(例えば、特許文献1参照。)、何れも紙容器を把持する手への熱伝導を抑えることで火傷を防止するために、特に暖かい飲料を収容する場合において利用されてきた。
【0005】
しかしながら、冷飲料を紙容器に注ぎこむ際には、上述したように氷を容器に対して上から氷を落下させることで充填する。暖かい飲料を収容することを前提とした従来の紙容器では、落下した氷の衝撃に耐えられる構成を備えていないことから、氷の落下衝撃により紙容器の特に底部が剥離し、或いは破損してしまうおそれがあった。
【0006】
これに加えて、このような紙容器をコーヒーショップやコンビニエンスストアに納品する際には、紙容器同士を互いに積み重ね、トラック等の車両に積んで搬送することになる。この搬送の過程で、積み重ねた紙容器同士が搬送時に加わった衝撃により互いに衝突し合ったり、或いは充填された氷による搬送時の衝撃が紙容器に加わったりすることにより、紙容器の底部が剥離し、破損してしまうおそれもあった。これに加えて、氷が充填された紙容器をコーヒーショップやコンビニエンスストアにおける冷凍庫内に陳列する際に、この紙容器を誤って落としてしまった場合、紙容器の底部が破損してしまうおそれもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、氷の落下充填時において、また互いに飲料用紙容器同士を積み重ねて搬送する際において、更に、氷が充填された飲料用紙容器を誤って落としてしまった場合において、飲料用紙容器の底部に加わった衝撃により、その底部が飲料用紙容器の飲料が漏れ出す状態まで破損してしまうおそれを大幅に低減可能な飲料用紙容器、及びこの飲料用紙容器の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明に係る飲料用紙容器は、容器底部と、当該容器底部の周囲に立設された筒状の容器胴部とを備え、前記容器底部の外周部が下方に折り返された下方折返部は、その外側面が、前記容器胴部の内周部と対向しており、当該対向部分は、下側に当該容器胴部の内周部と接着固定された接着固定部と、上側に当該容器胴部の内周部と未接着の変位代部と、を有することを特徴とする。
【0010】
第2発明に係る飲料用紙容器は、第1発明において、前記容器底部の上面の径をa、前記容器底部の上面に荷重を加え、変形したときの当該容器底部の上面の径をb、前記変位代部の長さをcとした際、a+2c≧bの関係が成り立つことを特徴とする。
【0011】
第3発明に係る飲料用紙容器は、第1発明又は第2発明において、前記対向部分における前記接着固定部の占める面積割合が、70%以上、80%以下に設定されていることを特徴とする。
【0012】
第4発明に係る飲料用紙容器は、第1発明~第3発明の何れかにおいて、前記下方折返部の下端部から前記容器底部の上面までの底高さは、3~14mmであることを特徴とする。
【0013】
第5発明に係る飲料用紙容器の製造方法は、第1発明~第4発明の何れかに係る飲料用紙容器の製造方法であって、前記下方折返部を形成するための熱融着段階で用いるボトムローラとして、その先端側の角部を面取り加工又はR加工した前記変位代部を形成可能なものを用いることを特徴とする。
【0014】
第6発明に係る飲料用紙容器の製造方法は、第1発明~第4発明の何れかに係る飲料用紙容器の製造方法であって、前記下方折返部を形成するための熱融着段階で用いるボトムバーナを、前記変位代部を形成可能な位置で止め、熱溶融作業を行うことを特徴とする。
【0015】
第7発明に係る飲料用紙容器の製造方法は、第1発明~第4発明の何れかに係る飲料用紙容器の製造方法であって、前記下方折返部を形成するための熱融着段階で用いるパイロットリングとして、その後端側に逃しを設けた前記変位代部を形成可能なものを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上述した構成からなる本発明によれば、飲料用紙容器の底部に加わった衝撃により、その底部が紙容器の飲料が漏れ出す状態まで破損してしまうおそれを大幅に低減可能な飲料用紙容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る飲料用紙容器を示す側断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る飲料用紙容器の構造を説明するための模式図である。
【
図3】
図3は、比較例となる従来一般の飲料用紙容器の構造を説明するための模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る飲料用紙容器の製造方法で用いられるボトムローラの一例を示す説明図である。
【
図5】
図4は、本発明の実施形態に係る飲料用紙容器の製造方法で用いられるボトムローラの他の例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る飲料用紙容器の製造方法で用いられるボトムバーナの位置を示す説明図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係る飲料用紙容器の製造方法で用いられるパイロットリングの一例を示す説明図である。
【
図8】
図8は、底耐荷重の試験の方法を説明するための説明図である。
【
図9】
図9は、底耐荷重の試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用して例示した実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
[実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る飲料用紙容器を示す側断面図である。
図2は、本発明の実施形態に係る飲料用紙容器の構造を説明するための模式図である。
【0020】
本発明の実施形態に係る飲料用紙容器1は、
図1に示すように、アイスコーヒーやアイスティー、ジュース等の冷飲料が収容される容器であって、容器底部11と、容器底部11の周囲に立設された筒状の容器胴部12とを備えている。すなわち、筒状に形成される容器胴部12の下端部側に設けられる容器底部11により、筒の下端部が閉塞される形態とされている。
【0021】
容器底部11は、平面視円形状に形成され、その外周部が下方に折り返された下方折返部110を有する。容器底部11は、図示は省略したが、容器胴部12と同様、紙製の基材と、基材の内側に積層されたフィルムとを有する積層体で構成されている。
【0022】
容器胴部12は、容器底部11と同様の積層体を筒状にすることで形成されている。容器胴部12は、積層体を筒状にして周方向の端部を互いに貼り合わせることによりシーム部31が形成される。容器胴部12は、上方に向かうにつれて拡径されて形成されているが、これに限らず、上下方向に拡径されることなく、円筒状等の筒状に形成されていてもよい。なお、容器胴部12の上端には外側に丸め込むことでトップカール2aが形成されている。
【0023】
そして、容器底部11の下方折返部110は、その外側面が、容器胴部12の内周部と対向しており、この対向部分111は、その下側に容器胴部12の内周部と接着固定された接着固定部111aと、その上側に容器胴部12の内周部と未接着の変位代部111bと、を有する。
【0024】
なお、容器胴部12の下端部は折返部12aを有し、この折返部12aは、下方折返部110における対向部分111の反対側の面と接着固定され、容器胴部12の下端部における容器底部11の支持強度をより大きくしている。この折返部12aの接着範囲は、接着固定部111aの反対側の面が接着していればよく、変位代部111bの反対側の面まで含めて接着していてもよい。また、折返部12aの先端(容器胴部12を構成する胴紙の下端)は接着固定部111aの反対側まで伸びていればよく、変位代部111bの反対側(容器底部11の裏面近傍)まで伸びていてもよい。
【0025】
ここで、この実施形態に係る飲料用紙容器1は、
図2に示すように、容器底部11の上面11aの径をa、容器底部11の上面11aに荷重を加え、変形したときの容器底部11の二点鎖線で示した上面11aの径b(
図2中のb1、b2に基づき、b=2×b1+b2)、一点鎖線で示した変位代部111bの長さをcとした際、a+2c≧bの関係が成り立つようになっている。
【0026】
すなわち、従来一般の飲料用紙容器1´では、対向部分111の略全てが、接着固定部111aなので、
図3に示すように、容器底部11の上面11aの径aと、容器底部11の上面11aに荷重を加え、変形したときの容器底部11の二点鎖線で示した上面11aの径b(
図3中のb1、b2に基づき、b=2×b1+b2)とは、b>aの関係が成り立ち、上記したこの実施形態に係る飲料用紙容器1の関係とは逆である。よって、この実施形態に係る飲料用紙容器1では、変形後の容器底部11の上面11aの面積が大きい分、単位面積当たりの衝撃力が小さくなり、十分な衝撃力吸収効果を期待することができる。
【0027】
また、この実施形態に係る飲料用紙容器1では、対向部分111における接着固定部111aの占める面積割合が、一例として、70%に設定されている。なお、対向部分111における接着固定部111aの占める面積割合が、70%以上、80%以下に設定されていると、想定される衝撃力が、飲料用紙容器1の容器底部11の上面11aに加わったとしても、その容器底部11から飲料が漏れ出す状態まで破損してしまうのを防止できる。また、対向部分111における接着固定部111aの占める面積割合が80%を超えると、変位代部111bの上述した面積が小さくなりすぎ、十分な衝撃力吸収効果を期待することができない。さらに、対向部分111における接着固定部111aの占める面積割合が70%を下回ると、接着固定部111aの主要な役目である容器底部11の固定強度が十分ではなくなり、逆に漏れを生じさせてしまうおそれがある。
【0028】
さらに、この実施形態に係る飲料用紙容器1では、下方折返部110の下端部から容器底部11の上面11aまでの底高さは、一例として、3mmとされている。なお、この種の飲料用紙容器は、この底高さを3~14mmで実施することが多いが、いずれの場合も、想定される最大の衝撃力が、飲料用紙容器1の容器底部11の上面11aに加わったとしても、その容器底部11から飲料が漏れ出す状態まで破損するのを防止できる。
【0029】
次に、この実施形態に係る飲料用紙容器1の製造方法について説明する。
【0030】
この実施形態に係る飲料用紙容器1の製造方法では、下方折返部110を形成するための熱融着段階で工夫するとよい。
【0031】
例えば、この熱融着段階で用いるボトムローラとして、
図4に示すように、その先端側の角部を面取り加工したボトムローラ4Aを用いると、変位代部111bを容易に形成することができる。
【0032】
或いは、この熱融着段階で用いるボトムローラとして、
図5に示すように、その先端側の角部をR加工したボトムローラ4Bを用いても、変位代部111bを容易に形成することができる。
【0033】
また、この熱融着段階で用いるボトムバーナ5を、
図6に示すように、通常の点線の位置から矢印方向にある実線の位置で止めて溶着作業を行えば、変位代部111bを容易に形成することができる。
【0034】
また、この熱融着段階で用いるパイロットリングとして、
図7に示すように、その後端側に逃し6aを設けたパイロットリング6を用い、ボトムローラには従来一般のボトムローラ4を用いると、変位代部111bを容易に形成することができる。
【0035】
以上説明した本発明の実施形態に係る飲料用紙容器1によれば、氷の落下充填時において、また互いに飲料用紙容器1同士を積み重ねて搬送する際において、更に、氷が充填された飲料用紙容器1を誤って落としてしまった場合において、飲料用紙容器1の容器底部11に加わった衝撃により、容器底部11が飲料用紙容器1の飲料が漏れ出す状態まで破損してしまうおそれを大幅に低減することができる。
【0036】
上述した本発明の実施形態に係る飲料用紙容器1の製造方法によれば、いずれも、本発明の実施形態に係る飲料用紙容器1で重要な変位代部111bを容易に形成することができる。
【0037】
[実施例1]
以下、本発明の効果を確認するために行った実験的検証結果について説明をする。実験的検証では、飲料用紙容器1の成形性と、落下衝撃に対する耐性を確認するために、以下の表1に示す本発明例1~3、比較例1、2の供試材を準備した。
【0038】
比較例1は、下方折返部110の下端部から容器底部11の表面までの底高さを2mm、比較例2は、底高さを16mmとしている。また本発明例1は底高さを3mm、本発明例2では、底高さを6mm、本発明例3では、底高さを14mmとしている。
【0039】
各本発明例1~3、比較例1~2について、実際に上述した方法に基づいて飲料用紙容器1を製造し、その成形性について確認した。所期の容器胴部12及び容器底部11の形状を成形することができた場合には“〇”とし、所期の容器胴部12及び容器底部11の形状を成形することができなかった場合には“×”としている。
【0040】
本実験的検証においては、比較例1~2については、底高さが低すぎ、或いは高すぎる結果、所期の形状に成形することができなかったため、成形性については“×”としている。
【0041】
これに対して、本発明例1~3については、何れも底高さが最適な範囲に収まっており、何れも所期の容器胴部12及び容器底部11の形状を成形することができたものと判定されたことから、成形性については“〇”としている。
【0042】
次に、この成形性については“〇”と判定した本発明例1~3の底高さの条件において、接着固定部111aの占める面積割合に対する落下衝撃に対する耐性を確認した。この面積割合は、対向部分111を全て接着固定部111aで構成した場合(100%)に加え、対向部分111において接着固定部111aの占める面積割合を80%としたもの、70%としたものを準備した。また接着固定部111aを下方折返部110から2mmとした例も比較用のため準備している。
【0043】
落下衝撃に対する耐性試験は、本発明例1~3の各飲料用紙容器1の供試材に氷を充填し、落下させる。この耐性試験では、本発明例1~3の各供試材について、アクリル氷180gを充填し、高さ120cmから落下させた。そして、その落下させた本発明例1~3の供試材について液漏れ、又は破れが発生しているか否かを目視により確認した。目視による確認の結果、液漏れ又は破れが発生している場合は、“×”とし、液漏れ又は破れがやや発生しているものの殆ど目視では目立たないレベルであれば“△”とし、液漏れ又は破れが全く発生していない場合は、“〇”と判定した。
【0044】
落下衝撃に対する耐性試験の結果、表1に示すように、本発明例1~3ともに、接着固定部111aの占める面積割合が100%の場合には、破れが発生していた。接着固定部111aを下方折返部110の下端部から2mmとした例については、何れも漏れが発生していた。接着固定部111aを下方折返部110から2mmとした例は、接着固定部111aの占める面積割合に換算した場合、本発明例1は、66%であり、本発明例2は、33%であり、本発明例3は、14.2%であるが、かかる面積割合では容器性能を満たすことが出来ず、何れも漏れが発生することが分かる。
【0045】
表1に示すように、本発明例1~3ともに70%は、液漏れ及び破れが全く発生していないため“〇”であり、80%は、破れがやや発生しているものの殆ど目視では目立たないレベルであったので“△”であった。
【0046】
以上の結果より、本発明例1~3において、接着固定部111aの占める面積割合が70%以上80%未満であれば液漏れ及び破れが全く発生しない良好な状態とすることができる。また、接着固定部111aの占める面積割合が70%以上80%以下であっても液漏れ又は破れがやや発生しているものの殆ど目視では目立たないレベルに抑えることができる。逆に70%~100%未満であっても同様に、液漏れ又は破れがやや発生しているものの殆ど目視では目立たないレベルに抑えることができる可能性があることが示唆されている。
【表1】
【0047】
[実施例2]
以下、本発明の効果を確認するために行った他の実験的検証結果について説明をする。実験的検証では、上述したように変形前長さと変形後長さの関係に対する落下衝撃に対する耐性を検証している。
【0048】
比較例3、本発明例4、5の飲料用紙容器1のサイズは同じで、底高さは何れも6mmである。
【0049】
比較例3は、対向部分111における接着固定部111aの占める面積割合が100%とした現行品である。本発明例4、5は共に、接着固定部111aと変位代部111bをそれぞれ設けている。比較例3、本発明例4~5における各接着固定部111aの高さは、表2に示す通りであり、本発明例4、5は共に比較例3よりも接着固定部111aの高さが低い分において、変位代部111bの割合が高くなっている。
【0050】
このような比較例3、本発明例4、5に示す各供試材について、変形前長さと変形後長さをそれぞれ測定したところ、表2に示すような結果となった。即ち、比較例3は、変形前長さが変形後長さよりも短いのに対して、本発明例4、5は、変形前長さが変形後長さよりも長かった。
【表2】
【0051】
このような各供試材について、以下に説明する落下試験を行った。この落下試験では、比較例3、本発明例4、5の各供試材について、アクリル氷180gを充填し、高さ120cmから落下させた。そして落下後の容器底部11が破けているか否かを、容器底部11の中央、糸底についてそれぞれ目視で確認を行った。落下試験は、各供試材について、それぞれ100回行っている。
【0052】
落下試験の結果を表3に示す。比較例3は、変形前長さが変形後長さよりも短かったため、容器底部11において中央は2%に亘り破れが生じ、糸底は10%に亘り破れが生じていた。これに対して、本発明例4、5は、変形前長さが変形後長さよりも長いため、容器底部11において、中央、糸底ともに破れが生じる確率を1%以下に抑えることができた。
【表3】
【0053】
以上の結果より、変位代部111bを設けることにより、変形前長さを変形後長さよりも長くすることができ、落下衝撃に対する容器底部11の破れを効果的に防止することができることが分かる。
【0054】
[実施例3]
以下、本発明の効果を確認するために行った他の実験的検証結果について説明をする。この実験的検証では、飲料用紙容器1の各供試材の容器底部11の底耐荷重を実際に測定し、効果の検証を行った。
【0055】
底耐荷重の試験では、実際に
図8に示すようにφ30mmの治具35の先端を容器底部11に接触させ、これに押圧力を負荷する。治具35には、図示しないロードセル(1000N)が取り付けられ、治具35に作用する荷重を計測可能としている。
【0056】
測定は荷重試験機(ストログラフ)を利用し、治具35による容器底部11の押込速度を50mm/秒とし、治具35の押し込み量(mm)に対するロードセルにより測定した荷重の関係を調査した。
【0057】
供試材に使用した飲料用紙容器1の容器底部11、容器胴部12に使用した紙材は以下の表4に示す通りである。何れも生原紙に被覆材を被覆したラミ原紙で構成している。
【表4】
【0058】
被覆材のPEは、ポリエチレンであり、膜厚については、上述した通りである。
【0059】
また、供試材の生原紙、ラミ原紙の各変形特性を以下の表5に示す。この表5は、各原紙について、抄紙機(図示せず)における抄紙方向であるMD(Machine Direction)と、MD方向と交差するCD(Cross-machine Direction)方向について、それぞれ伸びを測定した結果である。
【表5】
【0060】
このようなラミ原紙を利用した容器底部11を利用した比較例3、本発明例4、5の各供試材について、底耐荷重の試験を行った。
【0061】
図9は、この底耐荷重の試験の結果、治具35の押込み量(mm)に対するロードセルにより測定される荷重(N)の関係を示している。また表6は、比較例3、本発明例4、5の各供試材について、治具35の押込み量を6mmとした場合における、各荷重から計算したエネルギー(J)の数値を示している。
【表6】
【0062】
図9に示すように、本発明例4、5は、変位代部111bが設けられていることから、治具35による押込み量が増加した場合に、その変位代部111bがエネルギーを吸収する結果、容器底部11に及ぼす影響を低減できる。その結果、本発明例4、5は、比較例3と比較して、治具35に対して実際に負荷される荷重がその分低くなる結果、治具35の押込み量を6mmとした場合における、各荷重から計算したエネルギー(J)を低く抑えることができる。その結果、本発明例4、5は、容器底部11における単位面積当たりに加わるエネルギー(J/cm2)を低く抑えることができる結果、容器底部11において破れが生じるのを防止することができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1 飲料用紙容器
11 容器底部
11a 上面
110 下方折返部
111 対向部分
111a 接着固定部
111b 変位代部
12 容器胴部
12a 折返部
2a トップカール
31 シーム部
35 治具
4 ボトムローラ
4A ボトムローラ
4B ボトムローラ
5 ボトムバーナ
6 パイロットリング
6a 逃し