(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147101
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】デッキプレートと支持部材の接合構造及び方法
(51)【国際特許分類】
E04B 5/40 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
E04B5/40 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054667
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】川端 洋介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 由悟
(72)【発明者】
【氏名】木下 尭之
(57)【要約】
【課題】施工性が良く、比較的低コストで実施でき、デッキプレートと支持部材との間の接合耐力を容易に大きくすることができる、デッキプレートと支持部材の接合構造を提供する。
【解決手段】デッキプレート2の下面2aが支持部材1の上面1aに重ねられ、デッキプレート2と支持部材1とが溶接によって接合されたデッキプレートと支持部材の接合構造10Aであって、デッキプレート2側に孔20が設けられており、デッキプレート2と支持部材1との重なり部分において、デッキプレート2の孔20の全周又は一部と重なるように溶接ビードB1を形成して溶接されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デッキプレートの下面が支持部材の上面に重ねられ、当該デッキプレートと当該支持部材とが溶接によって接合されたデッキプレートと支持部材の接合構造であって、
前記デッキプレート側に孔が設けられており、
前記デッキプレートと前記支持部材との重なり部分において、前記孔の全周又は一部と重なるように溶接ビードを形成して溶接されていること
を特徴とするデッキプレートと支持部材の接合構造。
【請求項2】
前記溶接ビードは、中央に前記支持部材の上面が露出した隙間を有すること
を特徴とする請求項1に記載のデッキプレートと支持部材の接合構造。
【請求項3】
前記デッキプレートの前記孔は、円形、楕円形、正方形、又は長方形であること
を特徴とする請求項1又は2に記載のデッキプレートと支持部材の接合構造。
【請求項4】
デッキプレートの下面を支持部材の上面に重ね、当該デッキプレートと当該支持部材とを溶接によって接合するデッキプレートと支持部材の接合方法であって、
前記デッキプレート側に孔を設ける工程と、
前記支持部材の上面に前記デッキプレートの下面を重ねる工程と、
前記デッキプレートと前記支持部材との重なり部分において、前記デッキプレートの前記孔の全周又は一部と重なるように、中央に前記支持部材の上面が露出した隙間を有する溶接ビードを形成するように溶接を行う工程と、を備えていること
を特徴とするデッキプレートと支持部材の接合方法。
【請求項5】
前記デッキプレートの前記孔は、当該デッキプレートを、デッキを施工する際の所定の長さに切断後もしくは切断と同時に設けること
を特徴とする請求項4に記載のデッキプレートと支持部材の接合方法。
【請求項6】
前記デッキプレートの前記孔は、当該デッキプレートのエンドクローズ加工時もしくはエンドクローズ加工後に設けること
を特徴とする請求項4に記載のデッキプレートと支持部材の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デッキプレートと支持部材の接合構造及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、デッキプレートと支持部材の接合は、焼き抜き栓溶接による接合と、発射打ち込み鋲による接合と、頭付きスタッドによる接合とスポット溶接による接合又は隅肉溶接による接合とを組み合わせた接合の3種類の接合方法で行うのが一般的である。
【0003】
焼き抜き栓溶接による接合では、デッキプレートを貫通させて接合するため、支持部材とコンクリートが打設されたデッキプレートからなる合成デッキ床板とのシャーコネクタの機能と、支持部材とデッキプレートとを緊結させる機能と、を有する。
【0004】
発射打ち込み鋲による接合でも、デッキプレートを貫通させて接合するため、支持部材とコンクリートが打設されたデッキプレートからなる合成デッキ床板とのシャーコネクタの機能と、支持部材とデッキプレートとを緊結させる機能と、を有する。
【0005】
しかしながら、発射打ち込み鋲による接合では、火薬を用いることから他の接合に比べて危険性が高く、その施工は国土交通大臣の材料認定を取得した打ち込み鋲のメーカーが施行指示した作業者が施行する必要があるため、汎用性が焼き抜き栓溶接による接合に比べて劣る。
【0006】
一方で、頭付きスタッドによる接合とスポット溶接による接合又は隅肉溶接による接合とを組み合わせた接合では、頭付きスタッドをデッキ貫通溶接とする場合、裏面塗装或いは亜鉛メッキ及び支持部材のフランジ部の塗装などの影響が考えられるため、デッキ非貫通で溶接されることが多い。そのため、頭付きスタッドによる接合とスポット溶接による接合又は隅肉溶接による接合とを組み合わせた接合では、支持部材とコンクリートが打設されたデッキプレートからなる合成デッキ床板とのシャーコネクタの性能は高いが、支持部材とデッキプレートとを緊結させる機能は、スポット溶接又は隅肉溶接が負担する。
【0007】
すなわち、頭付きスタッドによる接合とスポット溶接による接合又は隅肉溶接による接合とを組み合わせた接合が、支持部材とコンクリートが打設されたデッキプレートからなる合成デッキ床板とのシャーコネクタの機能と、支持部材とデッキプレートとを緊結させる機能と、で、焼き抜き栓溶接による接合、及び発射打ち込み鋲による接合に優る。
【0008】
しかしながら、頭付きスタッドによる接合とスポット溶接による接合又は隅肉溶接による接合とを組み合わせた接合は、2種類の接合方法の組合せのため、焼き抜き栓溶接による接合、及び発射打ち込み鋲による接合に比べて費用高く、手間も掛かる。
【0009】
そのため、デッキプレートと支持部材の接合には、焼き抜き栓溶接による接合が最も広く汎用的に用いられている。さらに、デッキプレートは合成デッキ床板の一部として使用されることが多いが、デッキプレート単体でも剛性および耐力が高いことから乾式屋根等として用いられることがある。前記の乾式屋根等にデッキプレートが用いられる際も、デッキプレートと支持部材の接合には、焼き抜き栓溶接による接合が広く汎用的に用いられている。
【0010】
ここで、焼き抜き栓溶接による接合は、被覆アーク溶接棒でデッキプレート母材を溶かしながら支持部材に溶接金属を円形に盛り上げ、支持部材とデッキプレートを、円形の溶接金属とで接合する方法である。
【0011】
なお、支持部材は、H形鋼には限定されず、例えば溝形鋼や山形鋼などの各種の形鋼を支持部材として用いることができる。また、支持部材は、鉄骨構造の鉄骨骨組みである梁に限定されず、鉄骨造、RC造、木造等の骨組みである梁、乾式屋根等に用いられる梁や、それら梁に緊結されたデッキプレート受材である。また、デッキプレート受材は、例えばH形鋼や溝形鋼や山形鋼や鋼板などの各種の鋼材を含めた部材の総称である。
【0012】
一般的に焼き抜き栓溶接による接合は、支持部材と溶接金属は円形断面全面で接合し、その全面で応力を負担できるのに対し、デッキプレートと溶接金属の接合耐力は両者が接する円形断面の外周の接合耐力で決定される。
【0013】
また、従来技術を示した文献である、合成スラブの設計・施工マニュアル、鉄骨工事技術指針・工事現場施工編、デッキプレート版に関する告示-国土交通省告示第326号(平成14年4月16日)第二接合、(4)によると、焼き抜き栓溶接の余盛径寸法は,18mm以上確保することが規定されているが、デッキプレートは0.8~1.6mm程度と薄肉のため、デッキプレートと溶接金属の接合耐力は主に焼き抜き栓溶接周りのデッキプレート母材の耐力で決定する。
【0014】
上述した従来技術を示した文献では、余盛径寸法を18mm以上とすることで、一般的な設計仕様においては長期設計許容耐力に対して3以上の安全率の確保できるとされているが、焼き抜き栓溶接1箇所当たりの耐力を向上させて、設計自由度や施工性を向上させるニーズがある。できる限り溶接金属の円形外周を大きくして、溶接金属とデッキプレートが結合する面積を大きくし、接合耐力を大きくしたいが、焼き抜き栓溶接の施工性を考慮すると難しい現状がある。
【0015】
すなわち、一般的に、上述した従来技術で推奨される「溶接棒の種類」、「溶接機」、及び「標準溶接条件」で溶接アーク長さを約3mmに保持しながら10mm程度の円を描いて10秒間溶接したときの溶接棒の消耗長さが、45~53mmであると、おおよそ18mm以上の余盛径を確保できるとされている。このとき、「溶接棒の種類」、「溶接機」、及び「標準溶接条件」と同条件で余盛径をより大きくしようとすると、溶接時間が長くなり、溶接入熱が高くなって、溶接欠陥が出来やすくなることが懸念され、余盛径を18mm以上と定められた背景がある。なお、溶接条件を調整すれば、焼き抜き栓溶接の余盛径寸法を大きくしても溶接欠陥を発生しづらくすることは不可能ではないが、汎用的でない溶接棒や溶接機若しくは一般的でない溶接条件の設定が必要となるため、施工性やコストを考慮すると現実的ではない。
【0016】
また、デッキプレートの主流はプレメッキ材料であるが、焼き抜き栓溶接でデッキプレートを溶かして孔を空けると、メッキが飛散するため、焼き抜き栓溶接は気を付けて施工しないと溶融不良等を引き起こす可能性がある。但し、溶接技術が高ければ、ミスなく施工出来て所定の接合耐力を確保することはできる。なお、特許文献1には、この問題点を解消するため、溶接技術が高くない作業者でも、容易に施工を行うことができる溶接用治具が開示されている。
【0017】
さらに、焼き抜き栓溶接の形状を輪や渦巻などの形状にして、円形の外周を大きくする方法も考えられるが、溶接金属を盛る前にデッキプレートが焼き切れているかを視認すること自体が難しいので、結局のところ現実的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、施工性が良く、比較的低コストで実施でき、デッキプレートと支持部材との間の接合耐力を容易に大きくすることができる、デッキプレートと支持部材の接合構造及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
第1発明に係るデッキプレートと支持部材の接合構造は、デッキプレートの下面が支持部材の上面に重ねられ、当該デッキプレートと当該支持部材とが溶接によって接合されたデッキプレートと支持部材の接合構造であって、前記デッキプレート側に孔が設けられており、前記デッキプレートと前記支持部材との重なり部分において、前記孔の全周又は一部と重なるように溶接ビードを形成して溶接されていることを特徴とする。
【0021】
第2発明に係るデッキプレートと支持部材の接合構造は、第1発明において、前記溶接ビードは、中央に前記支持部材の上面が露出した隙間を有することを特徴とする。
【0022】
第3発明に係るデッキプレートと支持部材の接合構造は、第1発明又は第2発明において、前記デッキプレートの前記孔は、円形、楕円形、正方形、又は長方形であることを特徴とする。
【0023】
第4発明に係るデッキプレートと支持部材の接合方法は、デッキプレートの下面を支持部材の上面に重ね、当該デッキプレートと当該支持部材とを溶接によって接合するデッキプレートと支持部材の接合方法であって、前記デッキプレート側に孔を設ける工程と、前記支持部材の上面に前記デッキプレートの下面を重ねる工程と、前記デッキプレートと前記支持部材との重なり部分において、前記デッキプレートの前記孔の全周又は一部と重なるように、中央に前記支持部材の上面が露出した隙間を有する溶接ビードを形成するように溶接を行う工程と、を備えていることを特徴とする。
【0024】
第5発明に係るデッキプレートと支持部材の接合方法は、第4発明において、前記デッキプレートの前記孔は、当該デッキプレートを、デッキを施工する際の所定の長さに切断後もしくは切断と同時に設けることを特徴とする。
【0025】
第6発明に係るデッキプレートと支持部材の接合方法は、第4発明において、前記デッキプレートの前記孔は、当該デッキプレートのエンドクローズ加工時もしくはエンドクローズ加工後に設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
第1発明~第3発明に係るデッキプレートと支持部材の接合構造によれば、デッキプレート側に設ける孔の径を、通常の焼き抜き栓溶接による接合よりも大きくし、一般的な焼き抜き栓溶接で汎用される溶接棒や溶接機を用い、一般的な溶接条件で溶接を行い、デッキプレートと梁とを接合する溶接ビードによるデッキプレートの応力負担面を大きくすることができるので、施工性が良く、比較的低コストで実施でき、デッキプレートと支持部材との間の接合耐力を容易に大きくすることができる。
【0027】
特に、第2発明に係るデッキプレートと支持部材の接合構造によれば、溶接ビードは、中央に前記支持部材の上面が露出した隙間を有する分、余分な溶接金属等を用いずに済み、より低コストで実施することができる。
【0028】
特に、第3発明に係るデッキプレートと支持部材の接合構造によれば、デッキプレート側に設ける孔の形状を円形、楕円形、正方形、又は長方形のように様々にして、デッキプレートと支持部材との間の接合耐力を容易に大きくすることができる。
【0029】
第4発明~第6発明に係るデッキプレートと支持部材の接合方法によれば、デッキプレート側に先行して孔を設け、この孔の径を、通常の焼き抜き栓溶接による接合よりも大きくし、一般的な焼き抜き栓溶接で汎用される溶接棒や溶接機を用い、一般的な溶接条件で溶接を行い、デッキプレートと支持部材とを接合する溶接ビードによるデッキプレートの応力負担面を大きくすることができるので、施工性が良く、比較的低コストで実施でき、デッキプレートと梁との間の接合耐力を容易に大きくすることができる。
【0030】
特に、第5発明に係るデッキプレートと支持部材の接合方法によれば、デッキプレートの孔は、デッキプレートを、デッキプレートを施工する際の所定の長さに切断後もしくは切断と同時に設けるので、デッキプレートの孔を、デッキプレートと支持部材の接合作業前に容易に先行して設けることができる。さらに、第5発明に係るデッキプレートと支持部材の接合方法によれば、デッキプレートの孔を先行して設けるので、現場ではなく、工場等で予め設けることができるため、端空き距離を確実に確保でき、端抜けによる接合部耐力不足を防ぐことができる。また、デッキプレート幅方向における接合間隔や、デッキプレート長手方向における支持スパンを設計通りに精度良く施工することができる。
【0031】
特に、第6発明に係るデッキプレートと支持部材の接合方法によれば、デッキプレートの孔は、デッキプレートのエンドクローズ加工時もしくはエンドクローズ加工後に設けるので、デッキプレートの孔を、デッキプレートと支持部材の接合作業前に容易に先行して設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るデッキプレートと支持部材の接合構造を適用した合成デッキ床板の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1において、本発明の実施形態に係るデッキプレートと支持部材の接合構造が適用される部分を拡大して示す部分拡大斜視図である。
【
図3】
図3(a)は、本発明の実施形態に係るデッキプレートと支持部材の接合構造の要部を拡大して示す平面図であり、
図3(b)は、
図3(a)におけるA-A線矢視断面図である。
【
図4】
図4(a)は、比較例のデッキプレートと梁の接合構造の要部を拡大して示す平面図であり、
図4(b)は、
図4(a)におけるB-B線矢視断面図である。
【
図5】
図5は、デッキプレートをエンドクローズ加工した際の部分拡大図である。
【
図6】
図6(a)~
図6(c)は、デッキプレートの孔を円形とした場合の実施例を示す説明図である。
【
図7】
図7(a)~
図7(d)は、デッキプレートの孔を楕円形とした場合の実施例を示す説明図である。
【
図8】
図8(a)~
図8(c)は、デッキプレートの孔を正方形とした場合の実施例を示す説明図である。
【
図9】
図9(a)~
図9(d)は、デッキプレートの孔を長方形とした場合の実施例を示す説明図である。
【
図10】
図10(a)は、本発明の他の実施形態に係るデッキプレートと支持部材の接合構造の要部を拡大して示す平面図であり、
図10(b)は、
図10(a)におけるC-C線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を適用して例示した実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0034】
[実施形態]
先ず、本発明の実施形態に係るデッキプレートと支持部材の接合構造について説明する。
【0035】
図1は、本発明の実施形態に係るデッキプレートと支持部材の接合構造を適用した合成デッキ床板の概略構成を示す斜視図である。
図2は、
図1において、本発明の実施形態に係るデッキプレートと支持部材の接合構造が適用される部分を拡大して示す部分拡大斜視図である。
図3(a)は、本発明の実施形態に係るデッキプレートと支持部材の接合構造の要部を拡大して示す平面図であり、
図3(b)は、
図3(a)におけるA-A線矢視断面図である。
【0036】
本発明の実施形態に係るデッキプレートと支持部材の接合構造10Aは、
図1に示すように、鉄骨骨組みであるH形鋼からなる支持部材1とコンクリート3が上部に打設されたデッキプレート2からなる合成デッキ床板100において、支持部材1とデッキプレート2とを接合するために用いられている。なお、
図1では、この実施形態に係るデッキプレートと支持部材の接合構造10Aが分かりやすいように、コンクリート3を一部破断して示した。
【0037】
具体的には、この実施形態に係るデッキプレートと支持部材の接合構造10Aは、
図2に示すように、山部21と谷部22とが連続してなる断面波形のデッキプレート2の下面2aが支持部材1の上側フランジ部の上面1aに重ねられ、デッキプレート2と支持部材1とが溶接によって接合されている。
【0038】
より具体的には、この実施形態に係るデッキプレートと支持部材の接合構造10Aは、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、デッキプレート2側に孔20が設けられており、デッキプレート2と支持部材1との重なり部分において、デッキプレート2の円形の孔20の全周と重なるように、中央に支持部材1の上面1aが露出した隙間Gを有する溶接金属からなるドーナツ状の溶接ビードB1が形成されるように溶接された構成である。このドーナツ状の溶接ビードB1は、
図3(b)に示すように、孔20の全周において、その上部は、デッキプレート2の上面より高く盛り上がり、その下部は、支持部材1の上面1a内まで達した断面略円形状とされている。
【0039】
なお、隙間Gを溶接金属等で塞いで実施してもよい。
【0040】
ここで、一般的な焼き抜き栓溶接によるデッキプレートと支持部材の接合構造10´は、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、デッキプレート2と支持部材1との重なり部分において、円形の溶接金属からなる溶接ビードB2が形成されるように溶接された構成である。この円形の溶接ビードB2は、
図4(b)に示すように、その全体の上部は、デッキプレート2の上面より高く盛り上がり、その全体の下部は、特に中央がより深く梁1の上面1a内まで達した断面形状とされている。
【0041】
この実施形態に係るデッキプレートと支持部材の接合構造10Aと、一般的な焼き抜き栓溶接によるデッキプレートと支持部材の接合構造10´とを比較する。すると、(a/2)2π=(c/2)2π-(b/2)2π(aは、デッキプレートと支持部材の接合構造10´における溶接ビードB2の径、bは、デッキプレートと支持部材の接合構造10Aにおける溶接ビードB1の内径、cは、デッキプレートと支持部材の接合構造10Aにおける溶接ビードB1の外径)で、同じ面積の溶接金属を有していても、この実施形態に係るデッキプレートと支持部材の接合構造10Aにおける溶接ビードB1の外径の方が、一般的な焼き抜き栓溶接によるデッキプレートと支持部材の接合構造10´における溶接ビードB2の径よりも大きく、より大きな応力を負担できることが分かる。
【0042】
次に、本発明の実施形態に係るデッキプレートと支持部材の接合方法について説明する。
【0043】
この実施形態に係るデッキプレートと支持部材の接合方法では、先ず、デッキプレート2側に孔20を設ける。続いて、支持部材1の上面1aにデッキプレート2を重ねる。そして、一般的な焼き抜き栓溶接で汎用される不図示の溶接棒や溶接機を用い、一般的な溶接条件で、デッキプレート2と支持部材1との重なり部分において、デッキプレート2の孔20の全周と重なるように、中央に支持部材1の上面1aが露出した隙間Gを有する溶接ビードB1を形成するように溶接を行うと、
図3(a)及び
図3(b)に示したようなデッキプレートと支持部材の接合構造10Aとなる。
【0044】
デッキプレート2側に孔20を設けるに際しては、図示は省略したが、孔20は、デッキプレート2を、合成デッキ床板100を施工する際の所定の長さに切断後もしくは切断と同時に設けるとよい。
【0045】
また、
図5に示すように、デッキプレート2に、デッキプレート2の山部21の端部21aを塞ぐエンドクローズ加工を施す際は、孔20は、デッキプレート2のエンドクローズ加工時もしくはエンドクローズ加工後に、山部21と連続する谷部22の底部に設けるとよい。
【0046】
次に、
図6~
図9を用い、この実施形態に係るデッキプレートと支持部材の接合構造10Aの実施例について説明する。
【0047】
デッキプレート2に設ける孔20は、円形とし、溶接ビードB1は
図6(a)に示すように、孔20の全周に重なるように必ずしも設ける必要はなく、
図6(b)及び
図6(c)に示すように、孔20の一部と重なるように設けて実施してもよい。
【0048】
デッキプレート2に設ける孔20は、
図7(a)~
図7(d)に示めすように、楕円形とし、溶接ビードB1は
図7(a)及び
図7(b)に示すように、孔20の全周に重なるように必ずしも設ける必要はなく、
図7(c)及び
図7(d)に示すように、孔20の一部と重なるように設けて実施してもよい。また、
図7(a)及び
図7(b)と
図7(c)及び
図7(d)に示すように、孔20の方向も、長径側をせん断方向としたり、短径側をせん断方向としたりすることができ、方向性も問わず実施することができる。
【0049】
デッキプレート2に設ける孔20は、正方形とし、溶接ビードB1は
図8(a)に示すように、孔20の全周に重なるように必ずしも設ける必要はなく、
図8(b)及び
図8(c)に示すように、孔20の一部と重なるように設けて実施してもよい。
【0050】
デッキプレート2に設ける孔20は、
図9(a)~
図9(d)に示めすように、長方形とし、溶接ビードB1は
図9(a)及び
図9(b)に示すように、孔20の全周に重なるように必ずしも設ける必要はなく、
図9(c)及び
図9(d)に示すように、孔20の一部と重なるように設けて実施してもよい。また、
図9(a)及び
図9(b)と
図9(c)及び
図9(d)に示すように、孔20の方向も、長辺側をせん断方向としたり、短辺側をせん断方向としたりすることができ、方向性も問わず実施することができる。
【0051】
なお、
図10(a)及び
図10(b)に示した他の実施形態に係るデッキプレートと支持部材の接合構造10Bなども、本発明に含まれる。
【0052】
すなわち、この実施形態に係るデッキプレートと支持部材の接合構造10Bでは、例えば、溶接技術が高くない作業者などが作業を行い、
図10(a)及び
図10(b)に示すように、溶接金属からなる溶接ビードB1の一部しか、デッキプレート2の孔20と重なっておらず、溶接ビードB1の他の部分は、梁1の上面1aを横切って設けられた構成である。
【0053】
以上説明した本発明の実施形態に係るデッキプレートと支持部材の接合構造10Aによれば、デッキプレート2側に設ける孔20の径を、通常の焼き抜き栓溶接による接合よりも大きくし、一般的な焼き抜き栓溶接で汎用される溶接棒や溶接機を用い、一般的な溶接条件で溶接を行い、デッキプレート2と支持部材1とを接合する溶接ビードB1によるデッキプレート2の応力負担面を大きくすることができる。このため、この実施形態に係るデッキプレートと支持部材の接合構造10Aによれば、施工性が良く、比較的低コストで実施でき、デッキプレート2と支持部材1との間の接合耐力を容易に大きくすることができる。
【0054】
すなわち、このため、この実施形態に係るデッキプレートと支持部材の接合構造10Aによれば、デッキプレート2と支持部材1との間の接合耐力が大きな合成デッキ床板100を構築することができる。
【0055】
また、この実施形態に係るデッキプレートと支持部材の接合構造10Aによれば、デッキプレート2側に設ける孔20の形状を円形、楕円形、正方形、又は長方形のように様々にして、デッキプレート2と支持部材1との間の接合耐力を容易に大きくすることができる。
【0056】
本発明の実施形態に係るデッキプレートと支持部材の接合方法によれば、デッキプレート2側に先行して孔20を設け、この孔20の径を、通常の焼き抜き栓溶接による接合よりも大きくし、一般的な焼き抜き栓溶接で汎用される溶接棒や溶接機を用い、一般的な溶接条件で溶接を行い、デッキプレート2と支持部材1とを接合する溶接ビードB1によるデッキプレート2の応力負担面を大きくすることができる。このため、この実施形態に係るデッキプレートと支持部材の接合方法によれば、施工性が良く、比較的低コストで実施でき、デッキプレート2と支持部材1との間の接合耐力を容易に大きくすることができる。さらに、この実施形態に係るデッキプレートと支持部材の接合方法によれば、デッキプレート2の孔20を先行して設けるので、現場ではなく、工場等で予め設けることができるため、端空き距離を確実に確保でき、端抜けによる接合部耐力不足を防ぐことができる。また、デッキプレート幅方向における接合間隔や、デッキプレート長手方向における支持スパンを設計通りに精度良く施工することができる。
【0057】
また、この実施形態に係るデッキプレートと支持部材の接合方法によれば、デッキプレート2の孔20は、デッキプレート2を、合成デッキ床板100を施工する際の所定の長さに切断後もしくは切断と同時に設けることができるので、デッキプレート2の孔20を、デッキプレート2と支持部材の接合作業前に容易に先行して設けることができる。
【0058】
また、この実施形態に係るデッキプレートと支持部材の接合方法によれば、デッキプレート2の孔20は、デッキプレート2のエンドクローズ加工時もしくはエンドクローズ加工後に設けることもできるので、この場合も、デッキプレート2の孔20を、デッキプレート2と支持部材1の接合作業前に容易に先行して設けることができる。
【0059】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
100 合成デッキ床板
10A デッキプレートと支持部材の接合構造
10B デッキプレートと支持部材の接合構造
1 支持部材
1a 支持部材の上面
2 デッキプレート
2a デッキプレートの下面
20 孔
21 山部
21a 山部の端部
22 谷部
3 コンクリート
G 隙間
B1 溶接ビード