(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147104
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】冷却塔、充填材、冷却塔の管理方法
(51)【国際特許分類】
F28F 27/00 20060101AFI20231004BHJP
F28F 25/08 20060101ALN20231004BHJP
【FI】
F28F27/00 501Z
F28F27/00 501A
F28F27/00 501E
F28F25/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054672
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000229047
【氏名又は名称】日本スピンドル製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 耀大
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、冷却塔の管理において、洗浄頻度や充填材の交換時期などを適切に管理することにより、充填材間の目詰まりの発生や、管理コストの増加を抑制することができる冷却塔を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、液体を冷却するための冷却塔であって、冷却ファンを駆動する駆動部と、前記駆動部の運転状況を検知する検知部と、前記検知部の検知結果に基づいて充填材の状態を予測する予測部と、を備えることを特徴とする、冷却塔を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を冷却するための冷却塔であって、
冷却ファンを駆動する駆動部と、
前記駆動部の運転状況を検知する検知部と、
前記検知部の検知結果に基づいて充填材の状態を予測する予測部と、を備えることを特徴とする、冷却塔。
【請求項2】
充填材を備え、
前記充填材は、充填材の設置状態又は充填材の種類を識別するための識別部を有することを特徴とする、請求項1に記載の冷却塔。
【請求項3】
前記識別部で得られた情報に基づいて、前記予測部の機能を調整することを特徴とする、請求項2に記載の冷却塔。
【請求項4】
前記予測部によって予測された充填材の状態をユーザーに通知することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の冷却塔。
【請求項5】
液体を冷却するための冷却塔であって、
充填材と、
前記充填材の状態を予測する予測部と、を備え、
前記充填材は、充填材の設置状態又は充填材の種類を識別するための識別部を有し、前記識別部の情報に基づいて前記予測部の機能を調整することを特徴とする、冷却塔。
【請求項6】
液体を冷却するための冷却塔であって、
充填材を備え、
前記充填材は、充填材の種類を識別するための識別部を有し、前記識別部の情報に基づいて前記充填材の状態を管理することを特徴とする、冷却塔。
【請求項7】
液体を冷却するための冷却塔に設置する充填材であって、充填材の設置状態又は充填材の種類を識別するための識別部を有することを特徴とする、充填材。
【請求項8】
液体を冷却するための冷却塔の管理方法であって、
冷却ファンを駆動する駆動部の運転状況を検知する検知ステップと、
前記検知ステップの検知結果に基づいて充填材の状態を予測する予測ステップと、を備えることを特徴とする、冷却塔の管理方法。
【請求項9】
液体を冷却するための冷却塔の管理方法であって、
充填材の設置状態又は充填材の種類を識別する識別ステップと、
充填材の状態を予測する予測ステップと、
前記識別ステップで得られた情報に基づいて前記予測ステップの機能を調整する機能調整ステップと、を備えることを特徴とする、冷却塔の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を冷却するための冷却塔、及び、冷却塔の管理方法に関するものである。更に詳しくは、温度が上昇した使用済み冷却水を外気と接触させることで温度を低下させて循環利用するための冷却塔、及び、冷却塔に使用する充填材の管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷却塔は、気液接触用の充填材に散布された液体を、塔内に導入される外気により冷却するものである。冷却塔は、充填材が相互に所定の間隔を有して取り付けられ、各充填材間に外気を導入するように設計されている。一般的には、冷却するための液体が充填材の上部より供給され、その表面を流下する間に横方向より導入される外気により冷却される。冷却塔において、充填材の上を流れる液体の量が減少した場合、流体が流れなくなった部分に液体中の成分が析出する場合がある。例えば、液体として水が利用する場合、カルシウムやシリカなどの析出によって、充填材間に目詰まりが生じ、冷却塔の性能が低下するなどの問題がある。
【0003】
この問題に対して、例えば、特許文献1には、充填材への液体の供給において、冷却塔の内側に位置する部分よりも乾きやすい冷却塔の外側に近い部分に対して優先的に流体を供給するという発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
冷却塔の管理において、充填材間に目詰まりが生じた場合には、充填材の洗浄や交換などのメンテナンスを行っているが、洗浄頻度や充填材の交換時期は、充填材の形状によって様々である。一方、充填材は、形状により冷却効率が変わることから、様々な形状のものが流通しており、冷却塔メーカーの提供する充填材とは異なる形状の充填材が使用される場合がある。このような場合には、冷却塔の管理において、充填材の洗浄頻度や交換時期などが不適切になることがあり、例えば、充填材間に目詰まりを発生させてしまったり、充填材の交換頻度を過剰に短く設定してしまい、冷却塔の管理コストが増大したりするなどの課題がある。
【0006】
本発明の課題は、冷却塔の管理において、洗浄頻度や充填材の交換時期などを適切に管理することにより、充填材間の目詰まりの発生や、管理コストの増加を抑制することができる冷却塔を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、冷却ファンの駆動部の運転状況を検知することにより、目詰まりの状況などの充填材の状態を予測できるという知見に至り、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の冷却塔及び冷却塔の管理方法である。
【0008】
上記課題を解決するための本発明の冷却塔は、液体を冷却するための冷却塔であって、冷却ファンを駆動する駆動部と、前記駆動部の運転状況を検知する検知部と、前記検知部の検知結果に基づいて充填材の状態を予測する予測部と、を備えることを特徴とするものである。
この冷却塔によれば、冷却ファンの駆動部における負荷を監視しつつ、充填材の状態も予測することができるため、簡素な構成で、冷却ファンと充填材の状態を管理することができるという効果を奏する。
【0009】
また、本発明の冷却塔の一実施態様によれば、充填材を備え、前記充填材は、充填材の設置状態又は充填材の種類を識別するための識別部を有することを特徴とするものである。
この特徴によれば、識別部を有する充填材を冷却塔に取り付けた際に、識別部により充填材の設置状態や種類が認識されるため、充填材の設置状態や種類に適した管理方法を適用することが可能となる。
【0010】
また、本発明の冷却塔の一実施態様によれば、識別部の情報に基づいて、予測部の機能を調整することを特徴とするものである。
この特徴によれば、認識部で充填材の設置状態や種類を認識することができるため、充填材が正しく取り付けられていない場合や非正規品の充填材などが設置された場合には、予測部の機能が停止又は制限され、冷却塔の運転トラブルの発生を防止することができる。言い換えれば、充填材が正しく設置され、又は、正規品の充填材を設置することで、予測部は、精度の良い充填材の状態の予測を行うことができるので、冷却塔の管理において、洗浄頻度や充填材の交換時期などを適切に管理することができ管理コストの増加を抑制することができる冷却塔を提供することができる。
【0011】
また、本発明の冷却塔の一実施態様によれば、予測部によって予測された充填材の状態をユーザーに通知することを特徴とするものである。
この特徴によれば、充填材の状態を迅速に知ることができる。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の冷却塔は、液体を冷却するための冷却塔であって、充填材と、前記充填材の状態を予測する予測部と、を備え、前記充填材は、充填材の設置状態又は充填材の種類を識別するための識別部を有し、前記識別部の情報に基づいて前記予測部の機能を調整することを特徴とするものである。
この冷却塔によれば、識別部を有する充填材を冷却塔に取り付けた際に、識別部により充填材の設置状態や種類が認識されるため、充填材の設置状態や種類に適した管理方法を適用することが可能となる。また、認識部で充填材の設置状態や種類を認識することができるため、充填材が正しく取り付けられていない場合や非正規品の充填材などが設置された場合には、予測部の機能が停止又は制限され、冷却塔の運転トラブルの発生を防止することができる。言い換えれば、充填材が正しく設置され、又は、正規品の充填材を設置することで、予測部は、精度の良い充填材の状態の予測を行うことができるので、冷却塔の管理において、洗浄頻度や充填材の交換時期などを適切に管理することができ管理コストの増加を抑制することができる冷却塔を提供することができる。
【0013】
上記課題を解決するための本発明の冷却塔は、液体を冷却するための冷却塔であって、充填材を備え、前記充填材は、充填材の種類を識別するための識別部を有し、前記識別部の情報に基づいて前記充填材の状態を管理することを特徴とするものである。
この冷却塔によれば、識別部を有する充填材を冷却塔に取り付けた際に、識別部により充填材の種類が認識されるため、充填材の種類に適した管理方法を適用することが可能となり、充填材間の目詰まりの発生や、管理コストの増加を抑制することができる。
【0014】
上記課題を解決するための本発明の充填材は、液体を冷却するための冷却塔に設置する充填材であって、充填材の設置状態又は充填材の種類を識別するための識別部を有することを特徴とするものである。
この充填材によれば、識別部を有するため、充填材を冷却塔に取り付けた際に、当該識別部により充填材の設置状態や種類が認識され、充填材の起動や充填材の種類に適した管理方法を適用することが可能となり、充填材間の目詰まりの発生や、管理コストの増加を抑制することができる。
【0015】
上記課題を解決するための本発明の冷却塔の管理方法は、液体を冷却するための冷却塔の管理方法であって、冷却ファンを駆動する駆動部の運転状況を検知する検知ステップと、前記検知ステップの検知結果に基づいて充填材の状態を予測する予測ステップと、を備えることを特徴とするものである。
この冷却塔の管理方法によれば、冷却ファンの駆動部における負荷を監視しつつ、充填材の状態も予測することができるため、簡素な構成で、冷却ファンと充填材の状態を管理することができるという効果を奏する。
【0016】
上記課題を解決するための本発明の冷却塔の管理方法は、液体を冷却するための冷却塔の管理方法であって、充填材の設置状態又は充填材の種類を識別する識別ステップと、充填材の状態を予測する予測ステップと、前記識別ステップで得られた情報に基づいて前記予測ステップの機能を調整する機能調整ステップと、を備えることを特徴とするものである。
この冷却塔の管理方法によれば、識別部を有する充填材を冷却塔に取り付けた際に、識別部により充填材の設置状態や種類が認識されるため、充填材の設置状態や種類に適した管理方法を適用することが可能となる。また、認識部で充填材の設置状態や種類を認識することができるため、充填材が正しく取り付けられていない場合や非正規品の充填材などが設置された場合には、予測部の機能が停止又は制限され、冷却塔の運転トラブルの発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、冷却塔の管理において、洗浄頻度や充填材の交換時期などを適切に管理することにより、充填材間の目詰まりの発生や、管理コストの増加を抑制することができる冷却塔を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第一の実施態様の冷却塔の構造を示す概略説明図である。
【
図2】本発明の第一の実施態様の冷却塔に使用する充填材の構造を示す概略説明図である。(A)充填材の表面の構造を示す概略説明図である。(B)
図2(A)中のX-X断面図である。
【
図3】本発明の第一の実施態様の冷却塔に取り付けられた充填材の給気口側の側面図である。
【
図4】本発明の第二の実施態様の冷却塔の構造を示す概略説明図である。
【
図5】本発明の第三の実施態様の冷却塔の構造を示す概略説明図である。
【
図6】本発明の第四の実施態様の冷却塔の構造を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る冷却塔及び充填材の実施態様を詳細に説明する。
なお、実施態様に記載する冷却塔及び充填材については、本発明に係る冷却塔及び充填材を説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。
また、本発明の冷却塔の管理方法の説明は、冷却塔の装置の構成の説明に置き換えるものとする。例えば、「検知部」の説明は、「冷却ファンを駆動する駆動部の運転状況を検知する検知ステップ」の説明に置き換えられ、「予測部」の説明は、「検知ステップの検知結果に基づいて充填材の状態を予測する予測ステップ」に置き換えられ、「機能調整部」の説明は、「識別ステップで得られた情報に基づいて予測ステップの機能を調整する機能調整ステップ」などに置き換えられることができる。その他、各構成の説明についても同様である。
【0020】
〔第一の実施態様〕
図1は、本発明の第一の実施態様の冷却塔1Aの構造を示す概略説明図である。冷却塔は、処理水を空気と接触させることにより、処理水の一部が蒸発させ、その気化熱により処理水自体を冷却するための装置である。第一の実施態様の冷却塔1Aは、充填材の上を流下する処理水に対して、冷却塔の側面から流入した外気が充填材を横切るように流通するクロスフロー型冷却塔であるが、処理水と空気の流れ方向は特に限定されるものではない。例えば、処理水が上から下へ流下するのに対して、空気の流れを下から上に流通させて熱交換を行っても良い。
【0021】
冷却塔の主な用途は、液体を冷却するための装置であれば、特に制限されないが、例えば、空調用の冷却水の冷却や、生産プロセス用の潤滑油や炉体の冷却水の冷却などが挙げられる。
【0022】
図1に示すように、冷却塔1Aは、矩形状の塔本体(ケーシング)の対向する2つの側面に沿って、それぞれ2つの充填材2A、2Bが収納されている。
充填材2A、2Bの上部には、充填材2A、2Bに処理水を散布するための給水槽13を備えており、給水槽13の底部には、多数の通孔15が形成されている。また、給水槽13には、処理水を給水槽13に供給するための給水管14を備えている。給水管14から給水槽13に供給された処理水は、通孔15から充填材2A、2Bの上部に散布され、充填材2A、2Bの表面を流下する。
【0023】
また、冷却塔1Aは、矩形状の塔本体(ケーシング)の対向する2つの側面に外気を導入するための給気口10、中央上部に排気口8が形成されており、排気口8には、冷却ファン2が設置されている。冷却ファン2を用いて冷却塔1Aの内部の空気を排気口8から排気することにより、給気口10から冷却塔1Aの内部に外気が導入される。導入された外気は、充填材2A、2Bを通過し、充填材2A、2Bの表面を流れる処理水と熱交換を行い、処理水を冷却する。
【0024】
なお、給気口10には、ルーバー11が設置されている。ルーバー11は、導入される外気の流れ方向を整え、充填材2A、2Bの表面に均等に外気を通過させることができる。また、ルーバー11により、外部からの異物の侵入を防止することができる。
【0025】
また、充填材2A、2Bと排気口8の間には、空気中に含まれる水滴を除去することが可能なエリミネータを設置してもよい。エリミネータを設置することにより、充填材1A、1Bを通過した空気に含まれる処理水を回収し、排気口8から処理水が流出することを防止することができる。
【0026】
冷却塔1Aの底部には、処理水を回収するための貯水槽16、貯水槽16から処理水を排出するための排水管17を備えている。充填材2A、2Bを流下する間に外気により冷却された処理水や、エリミネータに捕集された処理水などは、貯水槽16に集められ、排水管17から冷却塔1Aの外部に排出する。排出された処理水は、ビルの空調や冷暖房設備等の冷却水として再利用される。
【0027】
(充填材)
充填材2A、2Bは、複数枚の板状の充填材により構成されている。
図2(A)、
図2(B)に示すように、板状の充填材2Aは、表面に凹凸があり、処理水流通路18が形成されている。板状の充填材は、表面に凹凸を有することにより、処理水と空気の接触面積を向上し、冷却効率を高めることができる。
【0028】
充填材2A、2Bの形状は、処理水と外気の接触の効率を向上するという観点から、通常は板状であるが、角柱状などでもよい。板状の充填材2A、2Bの材質は、一般的に硬質ポリ塩化ビニルに代表される合成樹脂や金属を原料として種々の形状に成形される。
【0029】
また、
図3に示すように、板状の充填材2Aは、複数枚が並べて立設されており、充填材2Aの間隙に通気路19が形成されている。充填材2Aの表面を流下する処理水は、通気路19を通過する空気と接触することにより、一部が気化することにより冷却される。なお、
図2、
図3では、充填材2Aについて説明したが、充填材2Bも充填材2Aと左右対称に構成されている。
【0030】
本発明の充填材2A、2Bは、それぞれ識別部3を有しており、冷却塔1Aには、識別部3が設置されたことを認識する認識部4を備えている。これにより、充填材が冷却塔に正しく設置されたかどうかを認識することができる。識別部3と認識部4は、充填材の設置状態が識別できる機能を有するものであればよく、例えば、鍵と鍵穴のように、物理的形状による識別機能を有するものや、光学センサなどのカメラによって充填材の設置状態を識別するものでもよい。
【0031】
また、識別部3には、充填材2A、2Bの種類に関する情報が記録されていてもよく、認識部4は、この識別部3から充填材の種類に関する情報を読み取り、充填材の種類を認識する。これにより、本発明の冷却塔1Aは、充填材の種類を認識することが可能となり、充填材の種類に応じた冷却塔の運転を管理することができる。
識別部3により識別する充填材の種類に関する情報とは、例えば、製造者、型番、製造ロット、製造年月日などの情報である。識別部3により、冷却塔提供者が製造する充填材(正規品の充填材)と、冷却塔提供者とは異なる者が製造する充填材(非正規品の充填材)を区別したり、正規品の充填材の型番を区別したりすることができる。
識別部3の充填材の種類に関する情報は、例えば、ICタグや、バーコードなどが挙げられる。その他、鍵と鍵穴のように、物理的形状により充填材の種類を識別するものでもよい。
識別部3の位置は
図1や
図2Aのように充填材の右上や左上に配置されても良く、中央に配置されても良い。識別部3は、充填材1枚につき、1か所に限らず、複数か所も受けても良い。複数か所設けた方が、識別部の識別精度が向上することは言うまでもない。
識別部3は、充填材1枚毎につき1個の識別部を有していても良いし、積層された充填板2A、2Bにそれぞれ代表として1つの識別部3を有しても良い。あるいは、冷却塔1基につき、代表として1つの識別部3を有しても良い。
【0032】
(冷却ファン)
冷却ファン2は、冷却塔1Aの内部に空気の流れを形成するための構成である。
図1の黒塗り矢印に示すように、冷却ファン2を駆動すると、排気口9から冷却塔1Aの内部の空気が排気され、それにより、給気口10から外気が流入する。流入した外気は、充填材2A、2Bを通過して排気口9に流れる。
【0033】
冷却ファン2を駆動するための駆動部6は、例えば、モーターなどが挙げられる。駆動部6は、冷却ファン2を駆動するものであれば特に制限されないが、例えば、インバーターなどにより排気量を一定に保つための出力制御を行うことが好ましい。排気量を定量制御することにより、処理水を安定的に冷却することができる。
【0034】
冷却ファン2の駆動部6には、運転状況を検知する検知部7と、検知部7の検知結果に基づいて充填材2A、2Bの状態を予測する予測部8を備えている。また、予測部8は、充填材の有する識別部3の情報に基づいて予測部8の機能を調整する機能調整部12を備えている。
【0035】
(検知部)
検知部7は、駆動部6における充填材の目詰まりに関する情報を取得するための構成である。駆動部6における充填材の目詰まりに関する情報とは、定量制御された冷却ファン2の負荷を示す指標であり、例えば、駆動部6のモーター電流値や、駆動部6の温度などが挙げられる。冷却ファン2の負荷を素早く検知するという観点から、モーター電流値を検知することが好ましい。
【0036】
第一の実施態様の検知部7は、例えば、定量制御された冷却ファン2の駆動部6のモーター電流値を検知結果として取得するものである。充填材2A、2Bが目詰まりを生じると、冷却ファン2による排気量が低下するため、駆動部6の負荷が上昇してモーター電流値が高くなる。そのため、予測部8では、検知部7で得られた検知結果を利用して、充填材の目詰まりの状況を予測することができる。
駆動部6のモーター電流値は、冷却ファン2の運転の異常も監視することができるため、予測部8を設けることにより、駆動部6のモーター電流値で、冷却ファン2の異常の検知と充填材の目詰まりの検知を同時に行うことができる。
【0037】
(予測部)
予測部8は、検知部7で得られた検知結果を利用して、充填材の目詰まりの状況を予測するものである。充填材の状態を予測する手段は、特に制限されないが、例えば、モーター電流値に対する充填材の状態を予め確認し、所定のモーター電流値となった場合に、充填材がメンテナンスの必要な状態であると予測する手段や、交換又は洗浄の直後のモーター電流値から所定のモーター電流値が上昇した場合に、充填材がメンテナンスの必要な状態であると予測する手段などが挙げられる。予測部8を設けることにより、充填材の目詰まりの状況に関する情報を簡便に得ることができる。
【0038】
予測部8では、充填材の予測結果を客先やメンテナンスをする会社等に表示画面やメッセージで知らせることができる。例えば、予測部8により得られた充填材の目詰まりの状況に関する情報を、有線通信手段又は無線通信手段により管理者などのユーザーに通知してもよいし、現場作業の操作端末に表示してもよい。
【0039】
(機能調整部)
機能調整部12は、充填材の有する識別部3の情報に基づいて予測部8の機能を調整するものである。例えば、充填材2A、2Bを冷却塔1Aに設置すると、充填材の識別部3と冷却塔1Aの認識部4により充填材が正しく設置されたことを認識し、この情報に基づいて予測部8が機能するように調整する。これにより、充填材が正しく取り付けられていない場合には、予測部8の機能が停止又は制限され、冷却塔の運転トラブルの発生を防止することができる。
また、識別部3の充填材の種類に関する情報を認識部4で読み取り、この情報に基づいて予測部8が機能するように調整してもよい。これにより、非正規品の充填材などが設置された場合には、予測部8の機能が停止又は制限され、冷却塔の運転トラブルの発生を防止することができる。言い換えれば、充填材が正しく設置され、又は、正規品の充填材を設置することで、予測部は、精度の良い充填材の状態の予測を行うことができるので、冷却塔の管理において、洗浄頻度や充填材の交換時期などを適切に管理することができ管理コストの増加を抑制することができる冷却塔を提供することができる。
【0040】
〔第二の実施態様〕
図4は、本発明の第二の実施態様の冷却塔1Bの構造を示す概略説明図である。第二の実施態様の冷却塔1Bは、第一の実施態様の冷却塔1Aから検知部7、予測部8、及び機能調整部12を除き、充填材の種類を識別するための識別部3と、識別部3の充填材の種類に関する情報を読み取る認識部4と、認識部4により得られた情報に基づいて充填材の状態を管理するための管理部5を備えるものである。その他の構成は、第一の実施態様の冷却塔1Aと同様であるため、説明は省略する。
【0041】
(管理部)
認識部4により読み取られた充填材の種類に関する情報は、管理部5に送られる。管理部5は、充填材の種類に対応して充填材の状態を管理するための構成である。充填材の状態の管理とは、例えば、充填材の交換時期や洗浄の頻度などの充填材のメンテナンスに関する管理のほか、処理水の給水量や外気の給気量の調整など、析出を防止するための運転制御に関するものでもよい。その他、非正規品の充填材を使用した場合には、管理対象外として、交換時期の管理を停止したり、交換時期を非正規品の充填材用の期間で管理したりしてもよい。交換時期の管理を停止することにより、誤って非正規品を使用した場合の冷却塔の運転トラブルを防止することができる。また、交換時期を非正規品の充填材用の期間として管理することにより、正規品の充填材の交換期間より短く、安定した運転が保障された期間で交換を促すことができる。
【0042】
管理部5における充填材の状態の管理では、充填材の目詰まりに関する情報や、処理水の析出に関する情報などを利用してもよい。
充填材の目詰まりに関する情報とは、充填材の目詰まりの状況を示す情報であり、例えば、冷却ファン2の駆動部6の運転状況を検知する検知部7の検知結果や、充填材の空気の流れ方向前段と後段との差圧などが挙げられる。
処理水の析出に関する情報とは、処理水の析出の発生に影響する情報であり、例えば、処理水の温度、処理水のイオン濃度、外気の温度や湿度などが挙げられる。
充填材の目詰まりに関する情報や、処理水の析出に関する情報を利用することにより、より精密に充填材の状態を管理することが可能となる。
【0043】
充填材は、様々な形状のものがあり、表面の形状によって乾燥しやすい部位も異なるため、充填材のメンテナンスにおいては、充填材の種類によって、充填材の洗浄頻度や交換頻度を決定する必要がある。本発明の冷却塔及び充填材によれば、冷却塔に取り付けられた充填材の種類を認識し、その種類に応じた管理をすることができる。
【0044】
管理部5により得られた充填材の交換時期や洗浄の頻度などの充填材のメンテナンス関する情報や、析出を防止するための運転制御に関する情報は、有線通信手段又は無線通信手段により管理者などのユーザーに通知してもよいし、現場作業の操作端末に表示してもよい。また、これらの管理に関する情報に基づいて、冷却塔の自動運転制御を行ってもよい。
【0045】
〔第三の実施態様〕
図5は、本発明の第三の実施態様の冷却塔1Cの構造を示す概略説明図である。第三の実施態様の冷却塔1Cは、第一の実施態様の冷却塔1Aから認識部4、識別部3、及び機能調整部12を除き、予測部8で得られた充填材の目詰まりの状況に関する情報を利用して充填材の状態を管理するための管理部5を備えるものである。その他の構成は、第一の実施態様の冷却塔1Aと同様であるため、説明は省略する。
【0046】
第三の実施態様の冷却塔1Cによれば、充填材の目詰まりの状況に関する情報は、管理部5に送られ、充填材の交換時期や洗浄の頻度などの充填材のメンテナンスに関する管理や、析出を防止するための運転制御に関する管理などに利用することができる。例えば、管理部5では、駆動部6のモーター電流値を用いて、充填材の目詰まりの状況を把握し、洗浄や交換などの充填材のメンテナンスが必要な時期を決定する。これにより、適切な充填材の管理を行うことができる。
【0047】
管理部5では、洗浄や交換などの充填材のメンテナンスが必要な時期を決定した後で、客先やメンテナンスをする会社等に表示画面やメッセージで知らせることができる。例えば、管理部5により得られた充填材の交換時期や洗浄の頻度などの充填材のメンテナンス関する情報や、析出を防止するための運転制御に関する情報を、有線通信手段又は無線通信手段により管理者などのユーザーに通知してもよいし、現場作業の操作端末に表示してもよい。また、これらの管理に関する情報に基づいて、冷却塔の自動運転制御を行ってもよい。
【0048】
〔第四の実施態様〕
図6は、本発明の第四の実施態様の冷却塔1Dの構造を示す概略説明図である。第四の実施態様の冷却塔1Dは、第二の実施態様の冷却塔1Bに、検知部7及び予測部8を設けたものである。その他の構成は、第二の実施態様の冷却塔1Bと同様であるため、説明は省略する。
【0049】
第四の実施態様の冷却塔1Dによれば、予測部8で得られた充填材の目詰まりの状況に関する情報は、管理部5に送られ、充填材の種類に関する情報や処理水の析出に関する情報と共に、充填材の交換時期や洗浄の頻度などの充填材のメンテナンスに関する管理に利用することができる。例えば、管理部5では、充填材の種類に応じた冷却塔の管理において、さらに駆動部6のモーター電流値から予測された充填材の目詰まりの状況から、洗浄や交換などの充填材のメンテナンスが必要な時期を適切に管理することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の冷却塔は、液体を冷却するための処理に利用することができる。具体的には、ビルの空調や冷暖房設備等の冷却水の冷却に利用することができる。
また、本発明の冷却塔及び充填材は、充填材の種類に応じた適切な管理を行うために利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1A,1B…冷却塔、2…冷却ファン、3…識別部、4…認識部、5…管理部、6…駆動部、7…検知部、8…予測部、9…排気口、10…給気口、11…ルーバー、12…機能調整部、13…給水槽、14…給水管、15…通孔、16…貯水槽、17…排水管、処理水流通路18、通気路19